特許第6836441号(P6836441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836441
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】パターン積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/332 20130101AFI20210222BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 41/193 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 41/45 20130101ALI20210222BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20210222BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01L41/332
   H01L41/113
   H01L41/193
   H01L41/45
   G06F3/041 660
   G06F3/041 495
   G06F3/041 600
   B23K26/351
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-61612(P2017-61612)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-164051(P2018-164051A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直之
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝伸
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−134452(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/002604(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0328328(US,A1)
【文献】 特開2004−306127(JP,A)
【文献】 特開2007−079161(JP,A)
【文献】 特開2005−310771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
B23K 26/351
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する圧電層と、前記圧電層の厚み方向一方側に配置される透明導電層とを備える積層体を用意する工程、
前記透明導電層をパターニングする導電層パターニング工程、および、
前記圧電層をパターニングする圧電層パターニング工程
を備え、
前記圧電層パターニング工程が、レーザーを前記圧電層に照射することによりエッチングする工程であり、
前記レーザーが、パルスレーザーであり、
前記レーザーのピークパワーが、5.0MW以上、80MW以下であり、
前記レーザーのラインエネルギーが、0.5mJ/mm以上、5.0mJ/mm未満であることを特徴とする、パターン積層体の製造方法。
【請求項2】
前記パルスレーザーが、ピコ秒パルスレーザーまたはフェムト秒パルスレーザーであることを特徴とする、請求項1に記載のパターン積層体の製造方法。
【請求項3】
前記導電層パターニング工程および前記圧電層パターニング工程を同時に実施することを特徴とする、請求項1または2に記載のパターン積層体の製造方法。
【請求項4】
前記積層体が、前記圧電層の厚み方向他方側に配置される基材フィルムをさらに備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパターン積層体の製造方法。
【請求項5】
前記積層体が、前記基材フィルムの厚み方向他方側に配置される第2透明導電層をさらに備えることを特徴とする、請求項4に記載のパターン積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネル機能を備える画像表示装置に、圧電体を利用したタッチパネル用フィルムを用いることが知られている。このようなタッチパネル用フィルムは、画面にタッチされる位置の検出に加えて、タッチされる圧力の強さに応じた検出を可能としている。具体的には、タッチパネル画面の所定の箇所を指で軽くタッチすることにより、タッチ箇所の認識(所定ボタンの選択など)を実行させ、続いて、その箇所を指で力強くタッチすることにより、別の指令(決定など)を実行させることができる。
【0003】
特許文献1には、ポリフッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体を含有する圧電体層と、圧電体層の一方の表面上に設けられた第1の電極と、圧電体層の他方の表面上に設けられた第2の電極とを含むタッチパネルが記載されている。特許文献1のタッチパネルでは、図1に示されるように、X軸方向に細長く延びる複数の第1電極と、Y軸方向に細長く延びる複数の第2電極とが、それぞれ、圧電層の一方面および他方面に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−26938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のタッチパネルでは、圧電体層は、面方向に連続した一枚のシートから構成されているため、タッチ(押圧)した箇所以外にも面方向に電圧が伝わってしまい、タッチ位置を誤検出しやすい。そこで、一枚の圧電体層をエッチングして、独立した複数のパターンされた圧電部に形成することが検討されている。これにより、タッチを検知した圧電部のみを検知し、他の独立した圧電部への電圧の伝導を防止できるため、タッチ位置の検出精度を向上できる。
【0006】
しかしながら、ポリフッ化ビニリデン系共重合体は、耐久性および耐熱性に優れた樹脂であるため、従来のエッチング方法、特に、余分な排出液(エッチング液)を発生させないドライエッチング方法では、ポリフッ化ビニリデン系共重合体を主成分とする圧電体層を十分にエッチングすることができない不具合が生じている。
【0007】
本発明は、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する圧電層を容易にかつ確実にパターニングできるパターン積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する圧電層と、前記圧電層の厚み方向一方側に配置される透明導電層とを備える積層体を用意する工程、前記透明導電層をパターニングする導電層パターニング工程、および、前記圧電層をパターニングする圧電層パターニング工程を備え、前記圧電層パターニング工程が、レーザーを前記圧電層に照射することによりエッチングする工程であり、前記レーザーが、パルスレーザーであり、前記レーザーのピークパワーが、5.0MW以上であり、前記レーザーのラインエネルギーが、0.5mJ/mm以上、5.0mJ/mm未満である、パターン積層体の製造方法を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記パルスレーザーが、ピコ秒パルスレーザーまたはフェムト秒パルスレーザーである、[1]に記載のパターン積層体の製造方法を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記導電層パターニング工程および前記圧電層パターニング工程を同時に実施する、[1]または[2]に記載のパターン積層体の製造方法を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、前記積層体が、前記圧電層の厚み方向他方側に配置される基材フィルムをさらに備える、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のパターン積層体の製造方法を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、前記積層体が、前記基材フィルムの厚み方向他方側に配置される第2透明導電層をさらに備える、[4]に記載のパターン積層体の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパターン積層体の製造方法によれば、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する圧電層を容易かつ確実にパターニングすることができる。そのため、パターン積層体を容易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1A図1Cは、本発明パターン積層体の製造方法の一実施形態を示し、図1Aは、用意工程、図1Bは、第1パターニング工程、図1Cは、第2パターニング工程を示す。
図2図2は、第1パターニング工程で使用するレーザー走査装置の概略構成図を示す。
図3図3は、図1Cの工程によって得られるパターン積層体の平面図を示す。
図4図4は、図3に示すパターン積層体を備える圧力センサーの概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1Aにおいて、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。また、図1Aにおいて、紙面左右方向は、左右方向(第1方向に直交する第2方向)であり、紙面左側が左側(第2方向一方側)、紙面右側が右側(第2方向他方側)である。また、図1Aにおいて、紙厚方向は、前後方向(第1方向および第2方向に直交する第3方向)であり、紙面手前側が前側(第3方向一方側)、紙面奥側が後側(第3方向他方側)である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
【0016】
<一実施形態>
図1A図1Cは、本発明のパターン積層体の製造方法の一実施形態を示す。パターン積層体10の製造方法は、用意工程、および、パターニング工程を備える。
【0017】
1.用意工程
用意工程では、第1積層体(非パターン積層体)1を用意する。
【0018】
第1積層体1は、基材フィルム2と、基材フィルム2の上側(厚み方向一方側)に配置される圧電層3と、圧電層3の上側に配置される第1透明導電層4と、基材フィルム2の下側(厚み方向他方側)に配置される第2透明導電層5とを備える。具体的には、第1積層体1は、第2透明導電層5と、基材フィルム2と、圧電層3と、第1透明導電層4とをこの順に備える。好ましくは、第1積層体1は、第2透明導電層5、基材フィルム2、圧電層3および第1透明導電層4のみからなる。
【0019】
(基材フィルム)
基材フィルム2は、フィルム形状を有しており、面方向(前後方向および左右方向)に連続した一枚のフィルムから構成されている。
【0020】
基材フィルム2は、好ましくは、透明性を有する高分子フィルムである。高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー(COP)などのオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂などが挙げられる。高分子フィルムは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0021】
透明性、耐熱性、機械的強度などの観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられ、より好ましくは、PETが挙げられる。
【0022】
基材フィルム2の厚みは、機械的強度、耐擦傷性、タッチパネル用フィルムとした際の打点特性などの観点から、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、150μm以下である。
【0023】
(圧電層)
圧電層3は、基材フィルム2の上側に、基材フィルム2の上面と接触するように、配置されている。より具体的には、圧電層3は、基材フィルム2と第1透明導電層4との間に、基材フィルム2の上面および第1透明導電層4の下面と接触するように、配置されている。
【0024】
圧電層3は、フィルム形状を有しており、面方向(前後方向および左右方向)に連続した一枚のフィルムから構成されている。圧電層3は、後述するパターニング工程によってパターニングされる前の非パターン層である。
【0025】
圧電層3は、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する。すなわち、圧電層3は、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する材料から形成されている。これにより、透明性、圧電性、耐熱性、耐久性および成膜性に優れる圧電層とすることができる。
【0026】
フッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンを含有するモノマーの重合体であり、具体的には、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0027】
他のモノマーとしては、例えば、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、パーフルオロプロピルビニルエーテルなどが挙げられる。他のモノマーは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、トリフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンの少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
共重合体としては、具体的には、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンオキシド共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。
【0029】
好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体が挙げられ、より好ましくは、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体が挙げられる。これらのフッ化ビニリデン系樹脂を用いることにより、圧電層3のヘイズ値を小さくし、かつ、全光線透過率を高くできるため、パターン積層体10の透明性が優れる。
【0030】
フッ化ビニリデン系樹脂が、共重合体である場合、フッ化ビニリデンの含有モル比は、例えば、40モル%以上、好ましくは、50%モル以上であり、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、85モル%以下である。
【0031】
具体的には、フッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデン−とトリフルオロエチレン共重合体である場合、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとのモル比は、全体を100として、例えば、(40〜95):(60〜5)であり、好ましくは、(50〜85):(50〜15)である。
【0032】
フッ化ビニリデン系樹脂が、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体である場合、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのモル比は、全体を100として、例えば、(50〜80):(15〜35):(1〜15)であり、好ましくは、(63〜65):(27〜29):(6〜10)である。
【0033】
圧電層3が、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有するとは、圧電層3が、フッ化ビニリデン系樹脂を、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上、さらに好ましくは、100質量%含有することを意味する。
【0034】
なお、圧電層3が、フッ化ビニリデン系樹脂以外の成分を含有する場合、その成分としては、例えば、チタン酸バリウムなどの無機圧電材料、例えば、ポリ乳酸、ポリ尿素などの、フッ化ビニリデン系樹脂以外の有機圧電材料、例えば、圧電材料以外の有機成分および無機成分などが挙げられる。
【0035】
圧電層3の厚みは、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは、5μm以下である。圧電層3の厚みを上記範囲とすることにより、光学特性(ヘイズ値、全光線透過率)および圧電性能を良好にすることができる。
【0036】
(第1透明導電層)
第1透明導電層4は、第1積層体1の最上層であって、具体的には、第1透明導電層4は、圧電層3の上側に、圧電層3の上面と接触するように、配置されている。
【0037】
第1透明導電層4は、フィルム形状を有しており、面方向(前後方向および左右方向)に連続した一枚のフィルムから構成されている。第1透明導電層4は、後述するパターニング工程によってパターニングされる前の非パターン層である。
【0038】
第1透明導電層4を構成する材料は、透明導電材料であり、好ましくは、導電性無機酸化物が挙げられる。
【0039】
導電性無機酸化物としては、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)などのインジウム含有酸化物、例えば、アンチモン−スズ複合酸化物(ATO)などのアンチモン含有酸化物などが挙げられる。好ましくは、インジウム含有酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、ITOが挙げられる。これにより、その透明性、導電性および耐久性に優れる。
【0040】
第1透明導電層4の材料としてITOを用いる場合、酸化スズ(SnO)含有量は、酸化スズおよび酸化インジウム(In)の合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、13質量%以下である。
【0041】
「ITO」は、少なくともインジウム(In)とスズ(Sn)とを含む複合酸化物であればよく、これら以外の追加成分を含むこともできる。追加成分としては、例えば、In、Sn以外の金属元素が挙げられ、具体的には、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、W、Fe、Pb、Ni、Nb、Cr、Gaなどが挙げられる。
【0042】
第1透明導電層4は、結晶質および非晶質のいずれであってもよい。第1透明導電層4は、好ましくは、結晶質からなり、より具体的には、結晶質ITO層である。これにより、第1透明導電層4の透明性および導電性をより一層良好にすることができる。
【0043】
第1透明導電層4の材料が結晶質であることは、例えば、第1透明導電層4がITO層である場合は、20℃の塩酸(濃度5質量%)に15分間浸漬した後、水洗・乾燥し、15mm程度の間の端子間抵抗を測定することで判断できる。具体的は、塩酸(20℃、濃度:5質量%)への浸漬・水洗・乾燥後に、15mm間の端子間抵抗が10kΩ以下である場合、ITO層が結晶質であるものとする。
【0044】
第1透明導電層4の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、15nm以上であり、また、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。
【0045】
(第2透明導電層)
第2透明導電層5は、第1積層体1の最下層であって、具体的には、第2透明導電層5は、基材フィルム2の下側に、基材フィルム2の下面と接触するように、配置されている。
【0046】
第2透明導電層5は、フィルム形状を有しており、面方向(前後方向および左右方向)に連続した一枚のフィルムから構成されている。第2透明導電層5は、後述するパターニング工程によってパターニングされる前の非パターン層である。
【0047】
第2透明導電層5を構成する材料は、第1透明導電層4と同様の透明導電材料が挙げられる。好ましくは、インジウム含有酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、ITOが挙げられ、最も好ましくは、結晶ITOが挙げられる。これにより、第2透明導電層5を透明導電層とすることができ、かつ、その透明性、導電性および耐久性が優れる。
【0048】
第2透明導電層5の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、15nm以上であり、また、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。
【0049】
(第1積層体の製造方法)
まず、基材フィルム2を用意し、基材フィルム2の上面全面に圧電層3を形成する。
【0050】
圧電層3の形成方法としては、例えば、塗布法、転写法などの湿式法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式法が挙げられる。好ましくは、生産効率、生産設備などの観点から、湿式法が挙げられる。
【0051】
塗布法では、例えば、圧電材料と溶媒とを含有するコーティング液を基材フィルム2の上面に塗布し、次いで、コーティング液を乾燥する。
【0052】
転写法では、例えば、圧電材料からなる公知または市販の圧電シートを、接着剤などを介して、基材フィルム2の上面に貼り合わせる。
【0053】
次いで、乾式法により、圧電層3の上面に第1透明導電層4を、基材フィルム2の下面に第2透明導電層5を形成する。
【0054】
乾式法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。この方法により、薄膜の透明導電層を確実に形成することができる。
【0055】
次いで、第1透明導電層4および第2透明導電層5を構成する材料がITOなどの非晶質体である場合は、必要に応じて、加熱工程を実施する。これにより、非晶質体を結晶化することができる。
【0056】
このようにして、第2透明導電層5、基材フィルム2、圧電層3および第1透明導電層4を順に備える第1積層体1を得る。
【0057】
2.パターニング工程
パターニング工程は、圧電層3および第1透明導電層4をパターニングする第1パターニング工程、および、第2透明導電層5をパターニングする第2パターニング工程を備える。
【0058】
(第1パターニング工程)
第1パターニング工程では、圧電層3および第1透明導電層4を同時にパターニングして、パターン圧電層6およびパターン第1透明導電層7を得る。すなわち、導電層パターニング工程および圧電層パターニング工程を同時に実施する。
【0059】
具体的には、パルスレーザーを、第1積層体1の第1透明導電層4に照射することにより、第1透明導電層4および圧電層3を同時にエッチングする。すなわち、レーザー走査装置を用いて、パルスレーザーを、第1積層体1の第1透明導電層4の上面に走査させる。
【0060】
レーザー走査(スキャン)装置の一例としてガルバノスキャナシステム20を図2に示す。
【0061】
ガルバノスキャナシステム20は、レーザー発振器21と、複数のミラー22と、集光レンズ23とを備えている。
【0062】
レーザー発振器21は、パルスレーザーを照射する装置であり、好ましくは、ピコ秒パルスレーザー、フェムト秒パルスレーザーが挙げられ、より好ましくは、フェムト秒パルスレーザーが挙げられる。上記パルスレーザーを用いることにより、多光子吸収過程に基づくアブレーションプロセスを誘発できるため、難加工性材料からなる部材や、加工性が異なる材料からなる積層体などを高精度でかつ一括で容易にエッチングすることができる。
【0063】
レーザー発振器21の媒質としては、例えば、Nd:YAG、Nd:YVO、Nd:YLF、Yb:KGW、Ti:Al、Yb:ファイバー、Er:ファイバー、Cr:フォルステライトなどが挙げられる。
【0064】
パルスレーザーの波長(λ)は、例えば、紫外線域、可視光域、近赤外領域のいずれであってもよいが、エッチング性の観点から、好ましくは、100nm以上、より好ましくは、150nm以上、さらに好ましくは、400nm以上であり、また、例えば、2000nm以下、好ましくは、1000nm以下、より好ましくは、600nm以下である。
【0065】
パルスレーザーのパルス幅(t)は、例えば、50ピコ秒以下、好ましくは、10ピコ秒以下である。また、下限は、例えば、0.1フェムト秒以上、好ましくは、10フェムト秒以上である。
【0066】
パルスレーザーのピークパワー(pp)は、5.0MW以上であり、好ましくは、10MW以上である。また、パルスレーザーのピークパワー(pp)は、例えば、80MW以下、好ましくは、60MW以下、より好ましくは、30MW以下である。ピークパワーは、レーザーパルスの瞬間的な尖頭出力を意味し、パルスエネルギーをパルス幅で除したパラメータ(PE/t)である。ピークパワーが上記下限以上であると、フッ化ビニリデン系樹脂含有の圧電層3を十分にエッチングできる。すなわち、基材フィルム2上に、不要な樹脂が残存することを抑制する。一方、ピークパワーが上記上限以下であると、圧電層3の下側に配置される基材フィルム2の破損をより確実に抑制することができる。また、レーザーの集光スポット径に対して、過度に面方向に圧電層3をエッチングすることを抑制でき、所望幅にエッチングすることができる。
【0067】
パルスレーザーのラインエネルギー(LE)は、0.5mJ/mm以上、5.0mJ/mm未満である。好ましくは、1.0mJ/mm以上であり、また、好ましくは、4.0mJ/mm以下、より好ましくは、3.0mJ/mm以下である。ラインエネルギーは、単位長さ当たりに投入されるエネルギーを意味し、パワーを走査速度で除して、パス回数で乗じたパラメータ(P×n/v)である。ラインエネルギーが上記下限以上であると、圧電層3を十分にエッチングできる。一方、ラインエネルギーが上記上限以下であると、基材フィルム2の破損をより確実に抑制することができる。また、レーザーの集光スポット径に対して、過度に面方向に圧電層3をエッチングすることを抑制でき、所望幅にエッチングすることができる。
【0068】
パルスレーザーのパワー(P)は、例えば、0.01W以上であり、好ましくは、0.05W以上であり、また、例えば、10W以下、好ましくは、1W以下である。
【0069】
パルスレーザーの繰り返し周波数(f)は、例えば、1kHz以上、好ましくは、10kHz以上であり、また、例えば、10000kHz以下、好ましくは、1000kHz以下、より好ましくは、100kHz以下である。繰り返し周波数は、1秒あたりにレーザー発振器21から出射されるレーザーのパルス数を意味する。
【0070】
パルスレーザーのショットピッチ(sp)は、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。ショットピッチは、パルスと、その次のバルスとの間隔を意味し、走査速度を繰り返し周波数で除したパラメータ(v/f)である。
【0071】
パルスレーザーのパルスエネルギー(PE)は、例えば、1μJ以上、好ましくは、3μJ以上であり、また、例えば、500μJ以下、好ましくは、300μJ以下、より好ましくは、100μJ以下である。
【0072】
パルスレーザーの空間強度分布は、ガウス分布型分布(すなわち、ガウシアンビーム)であってもよく、また、トップハット分布型分布(すなわち、トップハットビーム)であってもよい、また、パルスレーザーのビーム形状は、例えば、丸形状、四角形状などが挙げられる。
【0073】
複数のミラー22は、Xスキャンミラー24、および、Yスキャンミラー25を備えている。複数のミラー22の角度を図示しない駆動部(モーター)で調節することによって、XY方向(前後方向および左右方向)において、第1積層体1のエッチング位置(走査位置)を決定する。
【0074】
Xスキャンミラー24は、ガルバノミラーであって、レーザー発振器21から照射されたパルスレーザーを前方向)に反射する。
【0075】
Yスキャンミラー25は、ガルバノミラーであって、Xスキャンミラー24によって反射されたパルスレーザーを下方向に反射させる。
【0076】
集光レンズ23は、Yスキャンミラー24によって反射されたパルスレーザーを集光して、第1積層体1の第1透明導電層4の上面に、そのパルスレーザーを照射する。
【0077】
集光レンズ23としては、好ましくは、Fθレンズが挙げられる。Fθレンズなどの集光レンズ23は、対象物である第1積層体1に、パルスレーザーの焦点が合うように設定する。例えば、テレセントリシティ(対象物へのレーザー光の入射角と対象物の垂線との角度差)が5度以内となるように、集光レンズ23の種類および位置を設定する。
【0078】
集光スポット径は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、30μm以下である。集光スポット径は、集光レンズ23によって集光され、第1積層体1の表面に照射されるパルスレーザーの大きさを意味する。
【0079】
集光スポット径は、例えば、集光レンズ23の焦点距離や、レーザー発振器21から照射されるレーザーのビーム径によって調整することができる。また、ビーム径の調整には、例えば、複数枚のレンズを組み合わせたビームエキスパンダを用いることができる。集光スポット径によって、エッチングされるエッチング幅が決定される。
【0080】
このような装置および設定条件にて、パルスレーザーを第1積層体1の第1透明導電層4の上面に走査させる。具体的には、所望パターンを有するパターン圧電層6およびパターン第1透明導電層7を形成する場合には、所望パターン以外の領域にパルスレーザーを走査させる。
【0081】
パルスレーザーの走査としては、(1)第1積層体1をステージ(図示せず)上に固定し、複数のミラー22を駆動させることにより、第1積層体1に集光されるパルスレーザーの位置を移動させる方法、(2)複数のミラー22を固定し、第1積層体1を移動させる方法のいずれであってもよい。(2)の場合、長尺な帯状の第1積層体1を用いたロールトゥロール工程により、第1積層体1の表面にパルスレーザーを照射することもできる。
【0082】
走査速度(v)は、例えば、10mm/s以上、好ましくは、50mm/s以上であり、また、例えば、1000mm/s以下、好ましくは、500mm/以下である。走査速度は、第1積層体1と、その表面に照射されるパルスレーザーとの相対速度を意味する。
【0083】
パルスレーザーのパス回数(n)は、1回でもよく、また、複数回(例えば、2回以上、10回以下)であってもよい。パス回数は、同一照射条件で、第1積層体1の同一領域に対して、パルスレーザーを繰り返し照射する回数を意味する。
【0084】
これにより、パルスレーザーが走査された走査領域において、圧電層3および第1透明導電層4がエッチングされ、除去される。その結果、走査領域において、基材フィルム2の上面が露出される。
【0085】
なお、広幅のエッチングを実施するには、面方向に走査領域をずらした複数回の走査を実施する。例えば、特定直径(例えば、14μm)の集光スポット径でパルスレーザーを第1積層体1に対して一方向(例えば、前後方向)に走査した後、その特定直径と同一のピッチ(例えば、14μm)で、一方向と直交する直交方向(例えば、左右方向)にずらして、再度、一方向に走査する。これにより、より広い幅(例えば、28μm)でエッチングすることができる。
【0086】
また、パルスレーザーによって分解された分解物(圧電層3および第1透明導電層4の材料)が、レーザー走査装置や第1積層体1に付着することを抑制するために、必要に応じて、例えば、アシストガスを走査領域に送風してもよい。アシストガスとしては、例えば、窒素などの不活性ガス、例えば、空気、酸素などの活性ガスなどが挙げられる。
【0087】
このようにして、第2透明導電層5と、基材フィルム2と、パターン圧電層6と、パターン第1透明導電層7とを順に備える第2積層体(パターン中間積層体)9を得る。
【0088】
第2積層体9において、パターン圧電層6およびパターン第1透明導電層7とは、厚み方向に投影したときに、一致する。すなわち、パターン圧電層6およびパターン第1透明導電層7は、平面視において、同一形状を有している。より具体的には、パターン圧電層6の側端面は、パターン第1透明導電層7の側端面と、面一となっている。
【0089】
第1パターニング工程後、分解物などの残渣を除去するために、必要に応じて、第2積層体9を洗浄してもよい。洗浄方法としては、例えば、薬液中への浸漬、シャワー、超音波洗浄などのウェット洗浄、例えば、プラズマ、UVオゾン、超音波エアー、ブラシ、粘着テープなどを用いたドライ洗浄が挙げられる。ウェット洗浄を実施した場合、必要に応じて、乾燥工程を実施する。
【0090】
なお、上記方法では、複数のミラー22を備えるガルバノスキャナシステムを用いているが、ポリゴンミラー(多面鏡)を備えるスキャナシステムを用いて、レーザーを第1積層体1に走査させることもできる。
【0091】
(第2パターニング工程)
第2パターニング工程では、第2透明導電層5をパターニングして、パターン第2透明導電層8を得る。
【0092】
第2透明導電層5をパターニングする方法としては、第2積層体9の第2透明導電層5を、所望のパターンのマスクを用いて被覆し、続いて、マスクから露出する第2透明導電層5をエッチングする。
【0093】
エッチング方法としては、ドライエッチングおよびウェットエッチングのいずれであってもよいが、好ましくは、ウェットエッチングが挙げられる。
【0094】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液が挙げられる。
【0095】
これにより、第2透明導電層5がパターニングされて、パターン第2透明導電層8が形成される。
【0096】
その結果、図1Cに示すように、パターン第2透明導電層8と、基材フィルム2と、パターン圧電層6と、パターン第1透明導電層7とを順に備えるパターン積層体10を得る。
【0097】
なお、第1透明導電層4および圧電層3をドライエッチング(レーザーエッチング)によりエッチングする一方、第2透明導電層5をウェットエッチングすれば、第1透明導電層4および圧電層3を精度よくパターニングできながら、第2透明導電層5を効率よくパターンニングして製造効率を向上させることができる。
【0098】
(パターン積層体)
パターン積層体10は、図3および図1C図3のA−A断面図)に示すように、パターン第2透明導電層8と、基材フィルム2と、パターン圧電層6と、パターン第1透明導電層7とを順に備える。
【0099】
(基材フィルム)
基材フィルム2は、パターン積層体10の機械強度を確保する基材である。基材フィルム2は、パターン圧電層6、パターン第1透明導電層7およびパターン第2透明導電層8を支持している。
【0100】
基材フィルム2は、フィルム形状を有しており、面方向(前後方向および左右方向)に連続した一枚のフィルムから構成されている。基材フィルム2は、パターン積層体10の外形形状をなしている。
【0101】
(パターン圧電層)
パターン圧電層6は、パターン積層体10に圧力が印加された際に、電圧を生じさせるための層である。
【0102】
パターン圧電層6は、複数の圧電部11と、複数の配線下部12とを備えている。
【0103】
複数の圧電部11は、互いに独立しており、平面視略中央部において、前後方向および左右方向に互いに間隔を隔てて、整列配置されている。複数の圧電部11は、後述する第1電極部13と対応するように、配置されている。具体的には、複数の圧電部11は、複数の第1電極部13と1対1対応するように配置されている。すなわち、圧電部11の数は、第1電極部13の数と同数であり、各圧電部11は、各第1電極部13の下側に配置されている。
【0104】
圧電部11は、それぞれ、平面視略矩形状(正方形状)を有しており、互いに同一のパターン(平面視における形状および大きさ)となるように形成されている。圧電部11のパターンは、第1電極部13のパターンと同一である。すなわち、厚み方向に投影したときに、圧電部11は、第1電極部13と一致する。
【0105】
複数の配線下部12は、後述する複数の第1配線部14を支持するために、複数の第1配線部14に対応して配置されている。配線下部12は、一端が圧電部11の端縁に接続し、途中が基材フィルム2の側端部(左端部または右端部)に位置し、その他端が基材フィルム2の前端縁に位置するように、配置されている。配線下部12のパターンは、第1配線部14と同一のパターンである。
【0106】
(パターン第1透明導電層)
パターン第1透明導電層7は、電圧が生じたパターン圧電層6から電流を取り出すための層である。
【0107】
パターン第1透明導電層7は、複数の第1電極部(第1導電部)13と、複数の第1配線部14とを備えている。
【0108】
複数の第1電極部13は、互いに独立しており、平面視略中央部において、前後方向および左右方向に互いに間隔を隔てて、整列配置されている。複数の第1電極部13は、上記したように、複数の圧電部11と対応するように、配置されている。第1電極部13は、それぞれ、平面視略矩形状(正方形状)を有しており、互いに同一のパターンとなるように形成されている。第1電極部13のパターンは、圧電部11のパターンと同一である。
【0109】
複数の第1配線部14は、一端が第1電極部13の端縁に接続し、途中が基材フィルム2の側端部(左端部または右端部)に位置し、その他端が基材フィルム2の前端縁に位置するように、配置されている。
【0110】
(パターン第2透明導電層)
パターン第2透明導電層8は、パターン第1透明導電層7と対をなし、電圧が生じたパターン圧電層6から電流を取り出すための層である。
【0111】
第2透明導電層8は、複数の第2電極部(第2導電部)15と、複数の第2配線部16とを備えている。
【0112】
複数の第2電極部15は、互いに独立しており、底面視略中央部において、前後方向および左右方向に互いに間隔を隔てて、整列配置されている。複数の第2電極部15は、複数の圧電部11と対応するように、配置されている。具体的には、複数の第2電極部15は、複数の圧電部11と1対1対応するように配置されている。すなわち、複数の第2電極部15の数は、圧電部11の数と同数であり、各第2電極部15は、各圧電部11の下側に、基材フィルム2を介して配置されている。
【0113】
第2電極部15は、それぞれ、平面視略矩形状(正方形状)を有しており、互いに同一のパターンとなるように形成されている。第2電極部15のパターンは、圧電部11および第1電極部13のパターンと同一である。すなわち、厚み方向に投影したときに、第2電極部15は、圧電部11および第1電極部13と一致する。
【0114】
複数の第2配線部16は、一端が第2電極部15の端縁に接続し、途中が基材フィルム2の側端部(左端部または右端部)に位置し、その他端が基材フィルム2の前端縁に位置するように、配置されている。
【0115】
パターン積層体10の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0116】
このようなパターン積層体10は、圧力センサー17の一部品として好適に用いることができる。
【0117】
圧力センサー17は、図4に示すように、パターン積層体10と、複数の電圧計18と、集積回路(図示せず)とを備えている。
【0118】
複数の電圧計18は、複数の圧電部11に対応して、第1配線部14または第2配線部16の途中に設けられている。なお、圧力センサー17において、第2配線部16は、接地されている。
【0119】
このパターン積層体10を備えた圧力センサー17は、例えば、タッチパネル用フィルムとして好適に使用できる。
【0120】
<作用効果>
そして、このパターン積層体10の製造方法によれば、圧電層3と、圧電層3の上側に配置される第1透明導電層4と、圧電層3の下側に配置される基材フィルム2と、基材フィルム2の下側に配置される第2透明導電層5とを備える第1積層体1を用意する用意工程、第1透明導電層4および圧電層3を同時にパターニングする第1パターニング工程、および、第2透明導電層5をパターニングする第2パターニング工程を備える。また、第1パターニング工程において、パルスレーザーを第1透明導電層4および圧電層3に照射することによりエッチングする工程であり、パルスレーザーのピークパワーが、5.0MW以上であり、パルスレーザーのラインエネルギーが、0.5mJ/mm以上、5.0mJ/mm未満である。
【0121】
そのため、パターン圧電層6と、パターン圧電層6の上側に配置されるパターン第1透明導電層7とを、容易かつ確実に製造することができる。
【0122】
特に、フッ化ビニリデン系樹脂を主成分として含有する圧電層3および第1透明導電層4を同時にパターニングすることができる。その結果、パターニング工程数を低減することができ、パターン積層体10を簡便に製造することができる。
【0123】
また、パターン圧電層6の下側に配置される基材フィルム2のエッチングを抑制することができるため、基材フィルム2の破損を抑制することができる。その結果、パターン積層体10の強度を担保することができる。
【0124】
また、パターン圧電層6およびパターン第1透明導電層7を、平面視において、同一形状に形成することができる。そのため、パターン第1透明導電層7(特に第1電極部13)と基材フィルム2との間に、電荷が蓄えられ易い余分な空気層(空間)を形成させない。したがって、パターン第1透明導電層7と基材フィルム2との間に、パターン圧電層6以外の不要な電荷の発生を抑制できるため、ノイズを抑制することができる。また、パターン第1透明導電層7(特に端面)をパターン圧電層6によって確実に保持でき、パターン第1透明導電層7の破損を抑制することができる。
【0125】
このようにして得られるパターン積層体10では、パターン第1透明導電層7が、複数の独立した第1電極部13を有しており、パターン圧電層6が、複数の第1電極部13に対応して、複数の独立した圧電部11を有している。
【0126】
すなわち、複数の圧電部11が、複数の第1電極部13に対応しながら、隣接する圧電部11と独立して存在しているため、一の圧電部11に発生する電圧は、他の隣接する独立した圧電部11に伝導しない。よって、タッチを検知した圧電部11は、他の独立した圧電部11に対して、電圧の発生の影響を及ぼさず、タッチを検知した圧電部11以外に電圧が発生しない。したがって、タッチを検知した圧電部11から発生した電流のみを、その上面に配置される第1電極部13を通じて、検知することができる。その結果、タッチの誤検出を抑制できる。
【0127】
また、パターン積層体10は、パターン圧電層6の下側に配置される基材フィルム2をさらに備える。このため、パターン積層体10の機械的強度が増加しており、耐久性に優れる。
【0128】
また、パターン第2透明導電層8は、複数の独立した第1電極部13に対応して、複数の独立した第2電極部15を有している。このため、パターン積層体10は、各圧電部11に対して、それぞれ第1電極部13および第2電極部15を備える。したがって、各圧電部11に対応して、一つの独立した回路を形成することができるため、隣接する圧電部11に対する影響を抑制することができる。よって、ノイズ低減を低減することができ、タッチ位置の誤検出をより確実に抑制することができる。
【0129】
<変形例>
次に、一実施形態の変形例を示す。なお、以降の各図において、上記と同様の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0130】
(1)図1A図1Cに示す方法では、圧電層3および第1透明導電層4を同時にパターニングしているが、例えば、図示しないが、圧電層3および第1透明導電層4を別々にパターニングすることができる。
【0131】
すなわち、まず、第1透明導電層4をパターニングする第1透明導電層パターニング工程を実施した後に、圧電層3をパターニングする圧電層パターニング工程を実施してもよい。
【0132】
このとき、第1透明導電層パターニング工程は、上記した一実施形態の第2パターニング工程と同様の工程が挙げられる。
【0133】
圧電層パターニング工程は、上記した第1パターニング工程と同様の工程が挙げられる。
【0134】
パターニング工程数を低減することができる観点、および、パターン圧電層6およびパターン第1透明導電層7の形状を同一にできる観点から、好ましくは、図1A図1Cに示す実施形態が挙げられる。
【0135】
(2)図1Aに示す実施形態では、第1積層体1が、第2透明導電層5を備え、かつ、パターン積層体10の製造方法が、第2パターニング工程を備えているが、例えば、図示しないが、第1積層体1が、第2透明導電層5を備えず、かつ、パターン積層体10の製造方法が、第2パターニング工程を備えなくてもよい。
【0136】
圧力センサー17として好適に使用できる観点から、好ましくは、上記した図1A図1Cに示す実施形態が挙げられる。
【0137】
(3)図1A図1Cに示す実施形態では、第1積層体1およびパターン積層体10が、基材フィルム2を備えているが、例えば、図示しないが、第1積層体1およびパターン積層体10は、基材フィルム2を備えなくてもよい。
【0138】
パターン積層体10の強度を担保する観点、作業性の観点から、好ましくは、図1A図1Cに示す実施形態が挙げられる。
【0139】
(4)図3に示す実施形態では、パターン圧電層6、パターン第1透明導電層7、および、パターン第2透明導電層8は、それぞれ、平面視において、略矩形状の圧電部11、第1電極部13および第2電極部15を備えているが、その形状は限定されず、例えば、図示しないが、六角形状、菱形状、円形状などに形成されていてもよい。
【0140】
また、複数の圧電部11のサイズは、互いに同一であるが、例えば、図示しないが、異なるサイズであってもよく、具体的には、中央部の圧電部11のサイズを大きくして、外縁部の圧電部11のサイズを小さくしてもよい。第1電極部13および第2電極部15についても同様である。
【実施例】
【0141】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0142】
実施例1
PETフィルム(厚み23μm)の上面に、フッ化ビニリデン系樹脂(ポリフッ化ビニリデン)からなる圧電層(厚み5μm)およびインジウム−スズ複合酸化物(ITO)からなる第1透明導電層(厚み30nm)を順に積層した。また、PETフィルムの下面に、PETフィルムの下面に、ITOからなる第2透明導電層(厚み30nm)を積層した。その後、積層体を加熱して、第1および第2透明導電層のITOを結晶化した。これにより、第1積層体(非パターン積層体)を得た。
【0143】
図2に示すガルバノスキャナ装置を用意した。次いで、パルスレーザーの条件などを表1に示す条件に設定して、第1積層体の上面(第1透明導電層の表面)にパルスレーザーを格子状に走査して、第1透明導電層および圧電層をエッチングした。
【0144】
パルスレーザーの走査領域を観察した。その結果を表1に示す。
【0145】
(実施例2〜4)
パルスレーザーの条件などを表1に示す条件に設定した以外は、実施例1と同様にして、非パターン積層体の上面をエッチングした。その結果を表1に示す。
【0146】
(比較例1〜8)
パルスレーザーの条件などを表1に示す条件に設定した以外は、実施例1と同様にして、非パターン積層体の上面をエッチングした。なお、比較例6では、パルスレーザーの代わりに、半導体レーザーを使用した。その結果を表1に示す。
【0147】
表1において、第1透明導電層および圧電層を確実にエッチングされており、かつ、PETフィルムに破損が観察されなかった場合を○と評価した。
【0148】
圧電層がほとんどエッチングされていなかった場合を×(パターン1)と評価した。
【0149】
圧電層がエッチングされていたが、エッチングが不十分であった場合を×(パターン2)と評価した。
【0150】
走査領域以外の領域にも過度にエッチングがされて、所望パターンへの確実なエッチングができなかった場合を×(パターン3)と評価した。
【0151】
PETフィルムの大きな破損が観察された場合を×(パターン4)と評価した。
【0152】
【表1】
【符号の説明】
【0153】
1 第1積層体
2 基材フィルム
3 圧電層
4 第1透明導電層
5 第2透明導電層
6 パターン圧電層
7 パターン第1透明導電層
8 パターン第2透明導電層
10 パターン積層体
図1
図2
図3
図4