特許第6836456号(P6836456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836456
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/02 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   F16K15/02
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-95492(P2017-95492)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-194018(P2018-194018A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】杉江 悠一
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−501366(JP,A)
【文献】 実開昭53−062927(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00−15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体の第1流入口、流出口、並びに、前記第1流入口および流出口に連通する弁室が形成されたケーシングと、
前記弁室に設けられ、前記第1流入口を開閉する弁部と、
前記ケーシング内に設けられ、前記第1流体を拡散させる第1羽根車と
前記ケーシング内に前記第1流入口と同軸に設けられると共に回転自在に設けられ、前記第1羽根車が同軸に固定される軸と、
前記軸において前記第1羽根車よりも上流側の部分に同軸に固定され、前記第1流体の流れによって回転する第2羽根車とを備えている
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
請求項に記載の逆止弁において、
前記第1流入口と流出口とは、互いに軸心が直交しており、
前記ケーシングには、前記流出口に前記弁室を介して連通し、且つ、前記流出口と同軸に形成された第2流体の第2流入口が設けられ、
前記第1羽根車は、前記弁室に位置し、前記第2流体の流れによって回転可能に構成されている
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
請求項またはに記載の逆止弁において、
前記第1流入口の内縁部には、円環状の弁座が形成され、
前記弁部は、前記第1流入口と同軸の円盤状に形成されると共に、前記軸において前記第1羽根車と前記第2羽根車との間に同軸に固定され、
前記軸は、前記弁部が前記第1流入口の軸心方向に変位して前記弁座に離着座することにより前記第1流入口を開閉するように、前記第1流入口の軸心方向に変位自在に設けられている
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項4】
請求項に記載の逆止弁において、
前記第1羽根車は、前記弁部の下流側面に一体に形成され、
前記第2羽根車と前記弁部とは、互いに隙間を置いて設けられている
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項5】
請求項またはに記載の逆止弁において、
前記第2羽根車は、上流側に頂部が位置し前記第1流入口の軸心方向に延びる円錐形状に形成された本体と、該本体の円錐面に設けられた羽根とを有している
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項6】
請求項に記載の逆止弁において、
前記第1羽根車は、前記弁部の下流側面に連続して形成され、該下流側面から下流側へいくに従って外径が大きくなる円錐台状に形成された本体と、該本体の円錐面に設けられた羽根とを有している
ことを特徴とする逆止弁。
【請求項7】
請求項乃至の何れか1項に記載の逆止弁において、
前記第1流入口は、軸心が上下方向に延びており、前記弁室の下方に設けられ、
前記弁部は、該弁部、前記軸、前記第1羽根車および前記第2羽根車の自重によって、前記第1流入口を閉じる方へ付勢されている
ことを特徴とする逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、蒸気使用機器等で発生したドレンが回収管に回収されるものが知られている。この特許文献1のものでは、蒸気使用機器で蒸気の凝縮により発生した高温のドレンが、分岐管のスチームトラップ等を介して回収管に流れ、回収管のドレンと合流して回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭50−55701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような回収管では衝撃(ウォーターハンマー)が発生する虞がある。スチームトラップから排出された高温のドレンは、一部が再蒸発して蒸気(フラッシュ蒸気)となる場合がある。その蒸気が回収管に流入すると、回収管では比較的大きな蒸気の塊(空間)が形成される。その蒸気の塊は低温のドレンと接して急激に凝縮し、そのため、蒸気が存在していた空間は一気に真空状態になる。この真空状態の空間にドレンが一気に流れ込み、ドレン同士が衝突したり、ドレンが管壁に衝突したりすることによって、ウォーターハンマーが発生する。
【0005】
また、分岐管やスチームトラップ等においてもウォーターハンマーが発生する虞がある。回収管から分岐管に低温ドレンが逆流した場合、分岐管やスチームトラップ等に存在する蒸気が低温ドレンと接して急激に凝縮する。そうすると、上記と同様、ウォーターハンマーが発生する虞がある。大きなウォーターハンマーが発生すると、騒音や管の損傷を招く虞がある。
【0006】
本願に開示の技術は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体の逆流を防止すると共に、下流側におけるウォーターハンマーの発生を抑制することができる逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の逆止弁は、ケーシングと、弁部と、第1羽根車とを備えている。前記ケーシングは、第1流体の第1流入口、流出口、並びに、前記第1流入口および流出口に連通する弁室が形成されている。前記弁部は、前記弁室に設けられ、前記第1流入口を開閉するものである。前記第1羽根車は、前記ケーシング内に設けられ、前記第1流体を拡散させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本願の逆止弁によれば、流体の逆流を防止することができると共に、下流側におけるウォーターハンマーの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るドレン回収システムの概略構成を示す配管系統図である。
図2図2は、実施形態に係る逆止弁の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、実施形態に係る逆止弁を上流側から視て示す概略の正面図である。
図4図4は、実施形態に係る逆止弁を上流側の上方から視て示すものであり、一部を省略して示す斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る逆止弁を上流側の下方から視て示すものであり、一部を省略して示す斜視図である。
図6図6は、実施形態に係る逆止弁が閉じられた状態を示す図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0011】
本実施形態のドレン回収システム1は、蒸気によって対象物を加熱すると共に、それによって発生したドレンを回収するものである。図1に示すように、ドレン回収システム1は、蒸気供給管11と、蒸気使用機器13と、ドレン回収管14と、複数のドレン排出管16と、本願の請求項に係る逆止弁20とを備えている。
【0012】
蒸気供給管11は、蒸気使用機器13に接続されている。蒸気供給管11は、例えばボイラー設備(図示省略)に接続されており、ボイラー設備で生成された蒸気が蒸気使用機器13に供給される。蒸気供給管11には、蒸気の圧力を調節する減圧弁12が設けられている。蒸気使用機器13は、例えば熱交換器であり、蒸気供給管11から供給された蒸気が対象物に放熱して凝縮し、対象物が加熱される。蒸気は、凝縮することによってドレン(復水)になる。つまり、蒸気使用機器13では蒸気の凝縮潜熱が対象物に付与され、対象物が潜熱加熱される。
【0013】
ドレン回収管14は、蒸気使用機器13に接続されている。ドレン回収管14では、蒸気使用機器13で蒸気の凝縮により発生したドレンが回収される。ドレン回収管14には、液体圧送装置15が設けられている。液体圧送装置15は、蒸気使用機器13で発生したドレンをドレン回収管14を通じて下流側へ圧送するポンプである。例えば、液体圧送装置15では、蒸気使用機器13のドレンがドレン回収管14を介して流入し、一時的に貯留される。ドレンの貯留量が所定量になると、液体圧送装置15に高圧の作動気体が導入され、貯留されていたドレンが作動気体の圧力によって下流側へ圧送される。ドレンが圧送されると、再び蒸気使用機器13からドレンが液体圧送装置15に流入して貯留される。こうして、液体圧送装置15では、ドレンの流入と、ドレンの圧送(排出)とが交互に行われる。
【0014】
複数のドレン排出管16は、蒸気供給管11とドレン回収管14との間に接続されている。具体的に、ドレン排出管16は、上流端が蒸気供給管11に接続され、下流端が逆止弁20を介してドレン回収管14に接続されている。複数のドレン排出管16は、互いに間隔(例えば、20〜30m)を置いて設けられている。ドレン排出管16は、蒸気供給管11で発生したドレンをドレン回収管14に流すためのものである。つまり、蒸気供給管11において蒸気の一部が凝縮しドレンになる場合があり、そのドレンはドレン排出管16および逆止弁20を介してドレン回収管14に回収される。
【0015】
ドレン排出管16の途中には、スチームトラップ17が設けられている。スチームトラップ17は、蒸気供給管11で発生したドレンがドレン排出管16を介して流入する。スチームトラップ17は、その上下流の圧力差(上流側の圧力と下流側の圧力との差)によって、流入したドレンのみを下流側へ自動的に排出するものである。なお、実際、スチームトラップ15には蒸気混じりのドレンが流入する。こうして、蒸気供給管11で発生したドレンは、ドレン回収管14において蒸気使用機器13で発生したドレンと合流し下流側へ圧送される。なお、ドレン回収管14は蒸気供給管11よりも下方に位置し、ドレン排出管16は大半が上下に延びており、その下流端は上向きに折り曲げられて逆止弁20にその下方から接続されている。
【0016】
〈逆止弁の構成〉
逆止弁20は、ドレン回収管14とドレン排出管16との接続部に設けられている。逆止弁20は、ドレン排出管16からドレン回収管14へ向かう流体の流れを許容する一方、ドレン回収管14からドレン排出管16へ向かう流体の流れ(逆流)を阻止するものである。さらに、逆止弁20は、ドレン排出管16において発生した蒸気、即ちスチームトラップ17から排出されたドレンの一部が再蒸発してなる蒸気(フラッシュ蒸気)を外方向に拡散させるものである。なお、ここでいう液体であるドレンおよび気体である蒸気(フラッシュ蒸気)は流体の一例である。
【0017】
図2図6に示すように、逆止弁20は、ケーシング21と、弁体30とを備えている。弁体30はケーシング21内に設けられている。図2図6では、上側が上部であり、下側が下部である。また、図2および図5では、第1流入口22の軸心方向においては下側が上流側であり上側が下流側であり、第2流入口23および流出口24の軸心方向においては左側が上流側であり右側が下流側である。
【0018】
ケーシング21は、略T字状に形成され、内部に流体の流路が形成されている。具体的に、ケーシング21には、2つの流入口(第1流入口22、第2流入口23)と、1つの流出口24とが形成されている。第2流入口23および流出口24は、互いに同軸の円形に形成されている。第1流入口22は、円形に形成されており、軸心が第2流入口23および流出口24の軸心と直交している。第1流入口22にはドレン排出管16が接続され、第2流入口23および流出口24にはドレン回収管14が接続されている。つまり、第1流入口22にはドレン排出管16の流体(高温のドレンや蒸気)が流入し(図2に示す白抜きの矢印)、第2流入口23にはドレン回収管14の流体(低温のドレン)が流入する(図2に示す黒色の太い矢印)。ドレン排出管16から第1流入口22に流入する流体は本願の請求項に係る第1流体に相当し、ドレン回収管14から第2流入口23に流入する流体は本願の請求項に係る第2流体に相当する。
【0019】
ケーシング21には、第2流入口23と流出口24との間に弁室25が形成されている。弁室25は、第2流入口23および流出口24と同軸の略円柱状に形成されている。ケーシング21では、第1流入口22と第2流入口23と流出口24とが互いに弁室25を介して連通している。ケーシング21では、第1流入口22、第2流入口23、流出口24および弁室25が流体の流路を構成している。弁室25には、弁座26が設けられている。具体的に、第1流入口22は、上流側から順に連続して形成された、入口部22a、中間部22bおよび出口部22cを有している。入口部22aは円柱状に形成され、中間部22bは下流側へいくに従って内径が大きくなるテーパ状に形成されている。出口部22cは、円柱状に形成され、内径が入口部22aの内径よりも大きく形成され中間部22bの最大内径よりも小さく形成されている。入口部22a、中間部22bおよび出口部22cは互いに同軸に形成されており、これらの軸心が第1流入口22の軸心である。第1流入口22では、出口部22cが弁室25に開口している。弁室25に開口する出口部22c(第1流入口22)の内縁部には、出口部22c(第1流入口22)と同軸の円環状の弁座26が形成されている。
【0020】
弁体30は、軸31と、弁部32と、第1羽根車41と、第2羽根車35とを有している。軸31、弁部32、2つの羽根車35,41は、互いが一体に設けられている。
【0021】
軸31は、ドレン排出管16における上下流方向(即ち、上下方向)に延びており、第1流入口22と同軸に設けられている。軸31の上端部は、ケーシング21において弁室26の上部に設けられた支持部27によって支持されている。詳しくは、軸31の上端部は支持部27に設けられた挿入孔27aに挿入されている。軸31の下端部は、第1流入口22における出口部22cに設けられた支持部28によって支持されている。支持部28には、流体が流通可能な複数の流通孔28aが設けられている(図4図5を参照)。
【0022】
弁部32は、円盤形(ディスク形)に形成された板状部材であり、軸31の途中において軸31と同軸に設けられている。つまり、弁部32は軸心がドレン排出管16における上下流方向(即ち、上下方向)に延びる円盤状に形成されている。弁部32は、第1流入口22の下流側(上方)に設けられており、弁座26に離着座して第1流入口22(出口部22c)を開閉するものである。
【0023】
第2羽根車35は、本体36と羽根37を有し、軸31に設けられている。第2羽根車35は、弁部32よりも上流側(弁部32の下方)に弁部32と隙間45を置いて設けられている。本体36は、上流側に頂部38が位置し上下流方向に延びる円錐形状に形成されている。つまり、本体36は上流側(下方)へいくに従って外径が小さくなる円錐形に形成されている。本体36(第2羽根車35)は、軸31と同軸に設けられている。羽根37は、本体36の円錐面に複数設けられている。羽根37は、円錐形の頂部38から下流側(上方)へ向かって螺旋状に延びる線形部材であり、円錐面に対する垂直断面が四角形状に形成されている。第2羽根車35の最大外径は、弁室25に開口する出口部22cの内径よりも小さい。
【0024】
第1羽根車41は、本体42と羽根43を有し、軸31に設けられている。第1羽根車41は、弁部32よりも下流側(弁部32の上方)に弁部32と一体に形成されている。本体42は、弁部32の下流側面(図2において上側の面)に連続して形成されている。本体42は、弁部32の下流側面から下流側(上方)へいくに従って外径が大きくなるやや扁平な円錐台状に形成されている。本体42(第1羽根車41)は、軸31と同軸に設けられている。羽根43は、本体42の円錐面に複数設けられている。羽根43は、円錐面の稜線に対し傾いて延びる線形部材であり、円錐面に対する垂直断面が四角形状に形成されている。なお、羽根37,43におけるそれぞれの円錐面に対する垂直断面は例えば三角形状や台形形状であってもよい。
【0025】
このように、軸31には、上流側(下方)から順に、第2羽根車35、弁部32および第1羽根車41が固定され、これらは軸31(第1流入口22)と同軸に設けられている。軸31は、その軸心周りに回転自在に、且つ、その軸心方向(第1流入口22の軸方向)に変位自在に設けられている。つまり、弁部32および2つの羽根車35,41は、軸31を中心として回転自在に設けられ、且つ、ドレン排出管16における上下流方向(上下方向)に変位自在に設けられている。
【0026】
弁部32は、上下流方向に変位することによって第1流入口22(出口部22c)を開閉するように構成されている。つまり、弁部32が上流側へ変位して弁座26に着座すると、第1流入口22は閉じられる。弁部32が下流側へ変位して弁座26から離座すると、第1流入口22は開く。弁部32は、弁部32、軸31、第2羽根車35および第1羽根車41の自重によって上流側(即ち、第1流入口22を閉じる方)へ付勢されている。つまり、弁部32を第1流入口22を閉じる方へ付勢する付勢力として、弁体30全体の自重が用いられている。第2羽根車35の最大外径は、弁部32の外径よりも小さく、第1羽根車41の最小外径よりも小さい。
【0027】
図2に示すように、弁部32が弁座26から離座したときは、第2羽根車35は第1流入口22(出口部22c)と弁室25とに跨った状態になる。第1羽根車41は全体が常に弁室25に位置している。第2羽根車35は、第1流入口22に流入してきた流体の圧力を受けて弁体30全体を回転駆動させる駆動部を構成している。弁体30全体が回転することにより、第1羽根車41も回転する。第1羽根車41は、回転することによって、流体を外側に拡散するように構成されている。つまり、第1流入口22に流入した蒸気によって第2羽根車35が回転する。そして、第2羽根車35から隙間45へ通り抜けた蒸気は、第1羽根車41の回転によって拡散される。また、第1羽根車41は、第2流入口23から流出口24へ向かうドレンの流れによっても回転するように構成されている。つまり、第1羽根車41は、第2流入口23から流出口24へ流れるドレンが接することによって弁体30全体を回転駆動させる駆動部を構成している。
【0028】
このように構成された逆止弁20では、上流側(ドレン排出管16側)の流体圧力が、下流側(ドレン回収管14側)の流体圧力よりも高くなると、弁部32(弁体30)が下流側へ変位して離座し、第1流入口22が開く(図2に示す状態)。これにより、ドレン排出管16からドレン回収管14へ向かうドレンの流れが許容される。また、上流側(ドレン排出管16側)の流体圧力が、下流側(ドレン回収管14側)の流体圧力よりも低くなると、弁部32(弁体30)が上流側へ変位して着座し、第1流入口22が閉じられる(図6に示す状態)。そのため、ドレン回収管14からドレン排出管16へ向かうドレンの流れ(逆流)が阻止される。なお、上述した下流側の流体圧力には付勢力である弁体30全体の自重が含まれるとする。
【0029】
逆止弁20によって上述した逆流が阻止されることにより、スチームトラップ17の下流側の流体圧力が上昇してスチームトラップ17におけるドレンの排出動作が困難となる状態が回避される。また、逆止弁20によって上述した逆流が阻止されることにより、スチームトラップ17において衝撃(ウォーターハンマー)が発生することが抑制される。
【0030】
即ち、スチームトラップ17には、蒸気供給管11からドレンだけでなく高温の蒸気も流入するため、比較的大きな蒸気の塊(空間)が存在する。上述した逆流が許容された場合、ドレン回収管14から低温のドレンがスチームトラップ17に流入してしまう。そうすると、スチームトラップ17では、蒸気が低温のドレンと接して急激に凝縮し、そのため、蒸気が存在していた空間は一気に真空状態になる。この真空状態の空間にドレンが一気に流れ込み、ドレン同士が衝突したり、ドレンがスチームトラップ17のケーシングの内面に衝突したりすることによって、衝撃(ウォーターハンマー)が発生する。本実施形態によれば、こうしたウォーターハンマーの虞が回避される。
【0031】
次に、逆止弁20が開きドレン排出管16からドレン回収管14へ向かうドレンの流れが許容されている場合について説明する。スチームトラップ17から排出されたドレンは、逆止弁20の第1流入口22に流入する。第1流入口22に流入したドレンは、弁室25において第2流入口23から流入したドレン回収管14の低温ドレンと合流し、流出口24からドレン回収管14に流出する。こうして、蒸気供給管11で発生したドレンが回収される。
【0032】
スチームトラップ17から排出されたドレンの一部は再蒸発して蒸気(フラッシュ蒸気)となる場合がある。これは、蒸気供給管11からスチームトラップ17に流入するドレンは高温であるところ、その高温のドレンがスチームトラップ17から排出されて圧力が低下することによるものである。再蒸発した蒸気は、逆止弁20の第1流入口22に流入する。
【0033】
逆止弁20では、第1流入口22に流入した蒸気流れによって、第2羽根車35が回転する。第1流入口22に流入した蒸気は、第2羽根車35から隙間45を通り抜けた後、回転している第1羽根車41に当たることによって旋回し拡散される。また、第2流入口23に流入したドレンが第1羽根車41に当たることによっても、第1羽根車41に回転力が付与される。蒸気は、拡散されることにより、細かく分散される。分散された蒸気は、弁室25に流れて低温のドレンと合流し、流出口24からドレン回収管14に流出する。
【0034】
こうして、蒸気が逆止弁20で細かく分散されてドレン回収管14に流れることにより、ドレン回収管14において発生する衝撃(ウォーターハンマー)が抑制される。即ち、蒸気が分散されずにドレン回収管14に流れた場合、ドレン回収管14では蒸気の流入に伴って比較的大きな蒸気の塊(空間)が形成される。この蒸気の塊は、その周囲の低温ドレンによって冷却されて急激に凝縮し、そのため、蒸気が存在していた空間は一気に真空状態になる。この真空状態の空間に周囲のドレンが一気に流れ込み、ドレン同士が衝突したり、ドレンがドレン回収管14の管壁に衝突したりすることによって、衝撃(ウォーターハンマー)が発生する。
【0035】
本実施形態では、蒸気が逆止弁20によって細かく分散されてドレン回収管14に流入するため、ドレン回収管14において大きな蒸気の塊(空間)が形成され難くなる。そのため、蒸気の急激な凝縮によって発生する真空の空間は小さいものとなる。したがって、騒音や管の損傷を引き起こすような大きなウォーターハンマーの発生が抑制される。つまり、ウォーターハンマーの大きさが小さくなる。
【0036】
また、下方の第1流入口22から弁室25に流れた蒸気は、ドレンとの密度差により浮上する。そのため、蒸気と低温ドレンとの接触面積が多くなり、蒸気の凝縮作用が促進される。したがって、弁室25では大きな蒸気の塊が形成される前に、蒸気は凝縮しドレンとなる。これは、ドレン回収管14に流れた蒸気についても同様である。
【0037】
以上のように、上記実施形態の逆止弁20は、蒸気(第1流体)の第1流入口22と、流出口24と、第1流入口22と流出口24とに連通する弁室25とが形成されたケーシング21と、弁室25に設けられ、第1流入口22を開閉する弁部32と、ケーシング21内に設けられ、蒸気を拡散させる第1羽根車41とを備えている。
【0038】
上記の構成によれば、ドレンの逆流を阻止することができる一方、流入した蒸気を第1羽根車41の回転により旋回させて拡散させることができる。蒸気は拡散されることにより細かく分散される。そのため、低温ドレンが流れるドレン回収管14に蒸気を細かく分散させて流入させることができる。これにより、ドレン回収管14において大きな蒸気の塊(空間)が形成されることを抑制することができる。そのため、逆止弁20の下流側であるドレン回収管14において、蒸気の塊が急激に凝縮することに起因するウォーターハンマーの発生を抑制またはウォーターハンマーの大きさを小さくすることができる。よって、ウォーターハンマーに起因する騒音や管の損傷を抑制することができる。
【0039】
また、上記実施形態の逆止弁20は、ケーシング21内に第1流入口22と同軸に設けられると共に回転自在に設けられ、第1羽根車41が同軸に固定される軸31を備えている。さらに逆止弁20は、軸31において第1羽根車41よりも上流側の部分に同軸に固定され、蒸気(第1流体)の流れによって回転する第2羽根車35を備えている。この構成によれば、蒸気の流れを利用して第2羽根車35を回転させ、その第2羽根車35の回転に伴い第1羽根車41を回転させることができる。
【0040】
また、上記実施形態の逆止弁20において、第1流入口22と流出口24とは互いに軸心が直交しており、ケーシング21には、流出口24に弁室25を介して連通し、且つ、流出口24と同軸に形成されたドレン回収管14の低温ドレン(第2流体)の第2流入口23が設けられている。そして、第1羽根車41は、弁室25に位置し、低温ドレンの流れによって回転可能に構成されている。この構成によれば、第2流体の流れ、即ち第2流入口23から流出口24へ向かうドレン回収管14のドレンの流れを利用して第1羽根車41を回転させることができる。
【0041】
また、上記実施形態の逆止弁20では、弁部32が弁座25から離座したとき、第2羽根車35は第1流入口22(出口部22c)と弁室25とに跨って位置するように構成されている。そのため、第2羽根車35は第2流体が当たることによっても回転する。したがって、第2羽根車35を第1流体の流れだけでなく第2流体の流れによっても回転させることができる。
【0042】
また、上記実施形態の逆止弁20において、弁部32は、第1流入口22と同軸の円盤状に形成されると共に、軸31において第1羽根車41と第2羽根車35との間に同軸に固定されている。さらに逆止弁20において、軸31は、弁部32が第1流入口22の軸心方向に変位して弁座26に離着座することにより第1流入口22を開閉するように、第1流入口22の軸心方向に変位自在に設けられている。
【0043】
上記の構成によれば、弁部32が弁座26から離座すると、弁部32の外周側に隙間ができ、その隙間から流体が下流側へ流れる。一方、第1流体は第2羽根車35の回転によって外周側へ向かって流れようとするためスムーズに弁部32と弁座26との隙間から流出する。これにより、逆止弁20における流通抵抗を緩和することができる。
【0044】
特に、第2羽根車35は、上流側に頂部38が位置し第1流入口22の軸心方向に延びる円錐形状に形成された本体36と、本体36の円錐面に設けられた羽根37とを有している。そのため、第1流体は第2羽根車35によって弁部32の外周側に向かって流れる環状流となる。したがって、第1流体をよりスムーズに弁部32と弁座26との隙間から流出させることができる。
【0045】
また、上記実施形態の逆止弁20において、第2羽根車35と弁部32とは互いに隙間45を置いて設けられている。この構成によれば、第2流入口23から流入した第2流体は第1羽根車41の下流側(上側)の領域だけでなく上流側(隙間45)の領域も通って流出口24へ流れる。そのため、第2流体が第1羽根車41または第2羽根車35に当たることによって起こる第2流体の流れの停滞を緩和することができる。つまり、第1羽根車41または第2羽根車35へ向かう第2流体の流れを活性化させることができる。これにより、第1羽根車41または第2羽根車35を回転させる力をより得ることができる。したがって、蒸気をより拡散させることができる。
【0046】
また、上記実施形態の逆止弁20において、第1羽根車41は、弁部32の下流側面に連続して形成され、該下流側面から下流側へいくに従って外径が大きくなる円錐台状に形成された本体42と、該本体42の円錐面に設けられた羽根43とを有している。この構成によれば、第2羽根車35によって旋回された蒸気を第1羽根車41の回転によってより旋回させることができる。そのため、蒸気をより拡散させることができる。
【0047】
また、上記実施形態の逆止弁20において、第1流入口22は、軸心が上下方向に延びており、弁室25の下方に設けられている。さらに弁部32は、弁部32、軸31、第1羽根車41および第2羽根車35の自重によって、第1流入口22を閉じる方へ付勢されている。そのため、付勢部材を別途設けなくてもよい。
【0048】
(その他の実施形態)
本願に開示の技術は、上記実施形態において以下のような構成としてもよい。例えば、上記実施形態では第1羽根車41を弁部32に一体形成するようにしたが、第1羽根車41と弁部32とを互いに隙間を置いて設けるようにしてもよい。
【0049】
また、第1羽根車41は、上記実施形態で説明した形態に限らず、回転することによって流体を拡散させることができれば如何なる形態でもよい。第2羽根車35は、上記実施形態で説明した形態に限らず、第1流体または第2流体の流れによって回転することができれば如何なる形態であってもよい。例えば、第2羽根車35は円錐台状に形成し、第1羽根車41は円柱状に形成するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態の逆止弁20において、第2羽根車35を省略するようにしてもよい。この場合、第1羽根車41は第2流入口23から流入した第2流体(ドレン)の流れによって回転する。そして、第1羽根車41の回転によって蒸気が旋回し拡散される。
【0051】
また、上記実施形態の逆止弁20では、拡散させる流体として蒸気を例示して説明したが、本願に開示の技術はこれに限らず、急激な凝縮によってウォーターハンマーを引き起こすような気体であれば如何なるものを対象としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願に開示の技術は、逆止弁について有用である。
【符号の説明】
【0053】
20 逆止弁
21 ケーシング
22 第1流入口
23 第2流入口
24 流出口
25 弁室
26 弁座
31 軸
32 弁部
35 第2羽根車
36 本体
37 羽根
38 頂部
41 第1羽根車
42 本体
43 羽根
45 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6