(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スライド支持機構(40)は、ロストアーム(20)又は駆動アーム(30)に形成された前記アーム長方向に延びる長孔(42)と、長孔(42)に前記アーム長方向にスライド可能に挿通されたロストアーム(20)の揺動軸(43)とで構成された請求項1記載の内燃機関の可変動弁機構。
ロストアーム(20)が外れ位置(p2)に配されるロストモーション時におけるカム(10)のノーズ作用時にロストアーム(20)が当接可能なガイド(38)が駆動アーム(30)に設けられ、
ロストアーム(20)は、ロストモーション時においては、カム(10)のベース円作用時には、リターンスプリング(52)の付勢力によりアクチュエータ(56)に押し付けられることで該付勢力に抗して外れ位置(p2)に維持され、カム(10)のノーズ作用時には、リターンスプリング(52)の付勢力によりガイド(38)に押し付けられることて該付勢力に抗して外れ位置(p2)に維持されるように構成された請求項1又は2記載の内燃機関の可変動弁機構。
ロストアーム(20)が外れ位置(p2)に配されるロストモーション時には、ロストアーム(20)は、カム(10)のベース円作用時及びノーズ作用時のいずれの時においても、リターンスプリング(52)の付勢力によりアクチュエータ(56)に押し付けられて前記押圧され続けることで該付勢力に抗して外れ位置(p2)に維持されるように構成され、
前記押圧の解除は、ベース円作用時に行われるように制御される請求項1又は2記載の内燃機関の可変動弁機構。
駆動アーム(30)は受けピン(36)を備え、受けピン(36)の外周面におけるロストアーム(20)の揺動方向のうちの戻り方向側の部分が受け部(37)を構成し、受けピン(36)の外周面における外れ位置(p2)側の部分がガイド(38)を構成した請求項3記載の内燃機関の可変動弁機構。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で、アクチュエータが、駆動アーム及びロストアームと切り離されて設けられているのは、アームを軽量化及び簡素化できるからである。他方、スプリングは、駆動アーム及びロストアームと切り離されて設けられていてもよいが、駆動アーム又はロストアームに設けられていることが好ましい。スプリングは、軽いので、両アームから切り離して設けて両アームを若干軽量化するよりも、いずれかのアームに設けて、可変動弁機構の全体構造をシンプルにした方が利点が大きいからである。
【0011】
本発明の具体的な態様として、次の態様を例示する。
[
a]ロストアームが外れ位置に配されるロストモーション時におけるカムのノーズ作用時にロストアームが当接可能なガイドが駆動アームに設けられ、ロストアームは、ロストモーション時においては、カムのベース円作用時には、リターンスプリングの付勢力によりアクチュエータに押し付けられることで該付勢力に抗して外れ位置に維持され、カムのノーズ作用時には、リターンスプリングの付勢力によりガイドに押し付けられることで該付勢力に抗して外れ位置に維持されるように構成された態様(実施例2)。
[
b]ロストアームが外れ位置に配されるロストモーション時においては、ロストアームは、カムのベース円作用時及びノーズ作用時のいずれの時においても、リターンスプリングの付勢力によりアクチュエータに押し当てられて前記押圧され続けることで該付勢力に抗して外れ位置に維持されるように構成され、前記押圧の解除は、ベース円作用時に行われるように制御される態様(実施例1)。
【0012】
[
a]によれば、ロストモーション時におけるノーズ作用時にアクチュエータによる押圧を解除しても、ロストアームはガイドにより外れ位置に維持されつつ揺動して、ベース円作用時に受け位置にスライドする。そのため、必ずベース円作用時に該押圧を解除する必要はなく、ノーズ作用時をも含む任意のタイミングで該押圧を解除できる。そのため、アクチュエータの制御が簡単になると共に、切替時間を短縮できる。他方、[
b]によれば、このようなガイドが不要になる。
【0013】
駆動アームの具体的な態様は、特に限定されないが、駆動アームは受けピンを備え、受けピンの外周面におけるロストアームの揺動方向のうちの戻り方向側の部分が受け部を構成し、受けピンの外周面における外れ位置側の部分がガイドを構成した態様を例示する。
【0014】
アクチュエータは、特に限定されないが、電磁ソレノイドや油圧機構やモータ機構などを備えたものを例示する。
【0015】
ロストアームが受け位置及び外れ位置の各位置にスライドしたときのバルブの駆動状態は、特に限定されないが、次の態様を例示する。
[ア]ロストアームが受け位置にスライドすると、カムのプロフィールに従いバルブを駆動する駆動状態になり、ロストアームが外れ位置にスライドすると、該駆動を休止する休止状態になる態様。
[イ]可変動弁機構は、前記カムである第一カムと、第一カムよりもノーズが低い、駆動アームを駆動する第二カムとを備え、ロストアームが受け位置にスライドすると、第一カムのプロフィールに従いバルブを駆動する第一駆動状態になり、ロストアームが外れ位置にスライドすると、第二カムのプロフィールに従いバルブを駆動する第二駆動状態になる態様。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の可変動弁機構を図面を参照に説明する。但し、本発明は実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【0017】
図1(a)は、実施例1の可変動弁機構1においてロストアーム20をアーム先端側にスライドさせた状態を示す側面断面図であり、
図1(b)は、ロストアーム20をアーム基端側にスライドさせた状態を示す側面断面図である。
図1(a)(b)とも、ロストアーム20の幅方向中央部で可変動弁機構1を切って側方からみた図である。この可変動弁機構1は、バルブスプリング(図示略)が取り付けられた内燃機関のバルブ70を断続的に押圧することで、バルブスプリングとの共働でバルブ70を開閉する。この可変動弁機構1は、カムシャフト9に設けられたカム10と、カム10に押圧されて揺動するロストアーム20と、揺動するとバルブ70を駆動する駆動アーム30と、駆動アーム30に対してロストアーム20をそのアーム長方向にスライド可能に支持したスライド支持機構40と、該スライド支持機構40に従ってロストアーム20をそのアーム長方向にスライドさせるスライド作動装置50とを備えている。
【0018】
カムシャフト9は、ロストアーム20の幅方向に延びるシャフトであって内燃機関が2回転する毎に1回点する。カム10は、断面形状が円形のベース円11と、ベース円11から突出したノーズ12とを含み構成されている。
【0019】
ロストアーム20は、ロストアーム本体21と、その先端部にローラシャフト27及びベアリング26を介して回転可能に取り付けられたローラ25とを備えている。このローラ25にベース円11が当接する時がベース円作用時であり、ノーズ12が当接する時がノーズ作用時である。ロストアーム20は、ローラ25にベース円11とノーズ12とが交互に当接することで揺動する。
【0020】
駆動アーム基部31の下面には、上方に凹んだ半球状凹部32が設けられ、その半球状凹部32にラッシュアジャスタ60のプランジャ61の上端部にある半球部62が挿入されることで、駆動アーム30がプランジャ61に揺動可能に支持されている。駆動アーム先部35の上面には、ロストアーム20が当接可能な受け部37が形成され、駆動アーム先部35の下面にはバルブ70のステムエンドが当接している。
【0021】
スライド支持機構40は、ロストアーム20に形成されたそのアーム長方向に延びる長孔42と、駆動アーム30に設けられて長孔42にその孔長方向(前記アーム長方向)にスライド可能に挿通されたロストアーム20の揺動軸43とで構成されている。ロストアーム20は、アーム先端側にスライドすると、先部が駆動アーム30の受け部37に上方から当接するようになる。この当接するようになる位置が受け位置p1である。また、ロストアーム20は、アーム基端側にスライドすると、先部が駆動アーム30の受け部37に当接しなくなる。この当接しなくなる位置が外れ位置p2である。
【0022】
スライド作動装置50は、ロストアーム20を受け位置p1と外れ位置p2とにスライドさせる装置であって、ロストアーム20を受け位置p1側(アーム先端側)に付勢するリターンスプリング52と、ロストアーム20を外れ位置p2側(アーム基端側)に押圧するアクチュエータ56とを備えている。リターンスプリング52は、駆動アーム30に設けられたスプリングリテーナ51に外嵌されたコイル部54と、コイル部54の基端から延びて駆動アーム30に当接したスプリング基部53と、コイル部54の先端から延びてロストアーム20に当接したスプリング先部55とを備えている。アクチュエータ56は、ボディ57と、ボディ57に挿入されたロッド58とを備えている。そのボディ57の内部には、アクチュエータ56をONにした時にボディ57からロッド58を繰り出すための電磁ソレノイド(図示略)と、アクチュエータ56をOFFにした時にボディ57にロッド58を退入させるためのスプリング(図示略)とが設置されている。
【0023】
図2(a)は、ロストアーム本体21を示す斜視図である。ロストアーム本体21は、左右方向に間隔をおいて並設されたロストアーム側部23と、左右のロストアーム側部23の基端部どうしを繋ぐロストアーム基部22とを含み構成されている。左右のロストアーム側部23の先部には、ローラシャフトを取り付けるためのシャフト孔28が貫設されている。長孔42は、左右のロストアーム側部23の基部側に貫設されている。
【0024】
図2(b)は、ロストアーム20と駆動アーム30とを示す斜視図である。ロストアーム20は、駆動アーム30の内側に配されるインナアームであり、駆動アーム30は、ロストアーム20の外側に配されるアウタアームである。駆動アーム30は、ロストアーム20の左右両側方に配される左右の駆動アーム側部33と、駆動アーム側部33の先端部どうしを繋ぐ駆動アーム先部35と、左右の駆動アーム側部33の基端部どうしを繋ぐ駆動アーム基部31とを含み構成されている。揺動軸43及びスプリングリテーナ51は、左右の駆動アーム側部33の基端側を幅方向に貫通する形で、該基端側に変位しないように取り付けられている。
【0025】
図3は、ロストアーム20を受け位置p1から外れ位置p2にスライドさせるときを示している。具体的には、
図3(a)に示すようにアクチュエータ56をOFFにすることでロストアーム20を受け位置p1に配した状態から、アクチュエータ56をONにする。そのアクチュエータ56のONは、ベース円作用時及びノーズ作用時のいずれのタイミングで行われてもよいが、ノーズ作用時にはロストアーム20と受け部37との間に荷重がかかるため、ロストアーム20はスライドできず、そのためロッド58も繰り出すことができない。よって、いずれにせよ、
図3(b)に示すようにベース円作用時に、ロッド58が繰り出すことでロストアーム20が外れ位置p2にスライドする。
【0026】
ロストアーム20が外れ位置p2にスライドすると、
図3(c)に示すように駆動アーム30に対してロストアーム20が揺動(ロストモーション)する休止状態に切り替わる。なお、ロストアーム20が外れ位置p2にスライドした後は、ベース円作用時にもノーズ作用時にも、ロストアーム20は、リターンスプリング52の付勢力によりロッド58に押し付けられることで該付勢力に抗して外れ位置p2に維持される。
【0027】
図4は、ロストアーム20を外れ位置p2から受け位置p1にスライドさせるときを示している。具体的には、
図4(a)に示すようにアクチュエータ56をONにすることでロストアーム20を外れ位置p2に配した状態(ロストモーション時)におけるベース円作用時に、
図4(b)に示すようにアクチュエータ56をOFFにしてロッド58を退入させる。それにより、リターンスプリング52の付勢力でロストアーム20が受け位置p1にスライドする。このスライド(アクチュエータ56のOFF)は、必ずベース円作用時に行われるように制御される。よって、ロストアーム側部23の先端が駆動アーム先部35にアーム基端側(外れ位置p2側)から衝突することはない。
【0028】
ロストアーム20が受け位置p1にスライドすると、
図4(c)に示すようにロストアーム側部23の先部が駆動アーム30の受け部37を押し下げるようになることで、両アーム20,30が一緒に揺動する駆動状態に切り替わる。なお、該
図4(c)は、両アーム20,30が最大限リフト方向側に揺動してバルブ70を最大限リフトしている状態を示している。この状態においても、ロッド58の繰出方向の延長線上に、ロストアーム側部23の先端上部がかかる。そのため、ロストアーム20を再び外れ位置p2にスライドさせるときには、上記のとおり、任意のタイミングでアクチュエータ56をONにすることができる。但し、上記のとおり、たとえノーズ作用時にアクチュエータ56をONにしても、必ずベース円作用時にロストアーム20がスライドする。
【0029】
本実施例によれば、受け部37を駆動アーム30に変位しないように設け、ロストアーム20を受け位置p1と外れ位置p2とに変位させることでバルブ70の駆動状態を切り替えるので、従来のように駆動アーム30の内部に、切替ピン(スライド可能な受け部)や、それをスライド可能に保持するピン保持部を設ける必要がない。そのため、駆動アーム30を軽量化、簡素化できると共に、駆動アーム30の製造コストを低減することができる。
【実施例2】
【0030】
次に実施例2を説明する。本実施例は、実施例1と比較して、次に示す点で相違し、その他の点で同様である。
図5(a)は、本実施例の可変動弁機構2においてロストアーム20をアーム先端側にスライドさせた状態を示す側面断面図であり、
図5(b)は、ロストアーム20をアーム基端側にスライドさせた状態を示す側面断面図である。
図5(a)(b)とも、ロストアーム20の幅方向中央部で可変動弁機構2を切って側方からみた図である。駆動アーム側部33の先部には、受けピン36が取り付けられている。その受けピン36の外周面における上部分は、受け部37を構成している。また、その受けピン36の外周面におけるアーム基端側(外れ位置p2側)の部分は、ロストモーション時にロストアーム20が当接するガイド38を構成している。
【0031】
図6(a)は、ロストアーム本体21を示す斜視図であり、
図6(b)は、ロストアーム20と駆動アーム30とを示す斜視図である。受けピン36は、左右の駆動アーム側部33の先部を幅方向に貫通する形で、該先部に変位しないように取り付けられている。この受けピン36は、駆動アーム側部33の先部に対して、回動可能であっても、回動不能であってもよい。
【0032】
図7は、ロストアーム20を受け位置p1から外れ位置p2にスライドさせるときを示している。具体的には、
図7(a)に示すようにアクチュエータ56をOFFにすることでロストアーム20を受け位置p1に配した状態から、アクチュエータ56をONにする。そのアクチュエータ56のONは、ベース円作用時及びノーズ作用時のいずれのタイミングで行われてもよいが、ノーズ作用時にはロストアーム20と受け部37との間に荷重がかかるため、ロストアーム20はスライドできず、そのためロッド58も繰り出すことができない。よって、いずれにせよ、
図7(b)に示すようにベース円作用時に、ロッド58が繰り出すことでロストアーム20が外れ位置p2にスライドする。そのスライド後のベース円作用時には、ロストアーム20は、リターンスプリング52の付勢力によりロッド58に押し付けられることで該付勢力に抗して外れ位置p2に維持される。
【0033】
ロストアーム20が外れ位置p2にスライドすると、
図7(c)に示すように駆動アーム30に対してロストアーム20が揺動(ロストモーション)する休止状態に切り替わる。そして、ノーズ作用時には、ロストアーム20は、リターンスプリング52の付勢力によりガイド38(受けピン36のアーム基端側)に押し付けられることて該付勢力に抗して外れ位置p2に維持される。
【0034】
図8は、ロストアーム20を外れ位置p2から受け位置p1にスライドさせるときを示している。具体的には、
図8(a)に示すように、アクチュエータ56をOFFにしてロッド58を退入させる。この退入は、カム10のベース円作用時に行ってもノーズ作用時に行ってもよいが、該図は、ノーズ作用時に行った場合を示している。この場合、リターンスプリング52の付勢力によりロストアーム20がガイド38(受けピン36のアーム基端側)に押し付けられることで、ベース円作用時になるまでは、ロストアーム20は該付勢力に抗して外れ位置p2に維持されつつ駆動アーム30に対して揺動(ロストモーション)する。従って、先にロッド58だけ退入する。そして、ベース円作用時に、
図8(b)に示すように、リターンスプリング52の付勢力によりロストアーム20が受け位置p1(アーム先端側)にスライドする。よって、ロストアーム側部23の先端が駆動アーム先部35にアーム基端側から衝突することはない。
【0035】
ロストアーム20が受け位置p1にスライドすると、
図8(c)に示すように、ロストアーム側部23の先部が駆動アーム30の受け部37(受けピン36の上面)を押し下げるようになることで、両アーム20,30が一緒に揺動する駆動状態に切り替わる。
【0036】
本実施例によれば、ガイド38が設けられているので、ロストモーション時におけるノーズ作用時にアクチュエータ56をOFFにしてその押圧を解除しても、ロストアーム20はガイド38により外れ位置p2に維持されつつ揺動して、ベース円作用時に受け位置p1にスライドする。そのため、必ずしもベース円作用時にアクチュエータ56をOFFにする必要はなく、ノーズ作用時をも含む任意のタイミングでアクチュエータ56をOFFにすることができる。そのため、アクチュエータ56の制御が簡単になると共に、切替時間を短縮でき、より高回転での切替が可能になる。
【0037】
実施例1,2は、例えば次のように変更してもよい。
[変更例1]受けピン36にガイド38を設ける代わりに、駆動アーム先部35又は駆動アーム側部33にガイド38を設けてもよい。
[変更例2]ロストアーム本体21に長孔42を設け、駆動アーム30に揺動軸43を変位しないように取り付ける代わりに、ロストアーム本体21に揺動軸43を変位しないように取り付け、駆動アーム30に長孔42を設けてもよい。
[変更例3]カムシャフト9に、カム10よりもノーズが低い、駆動アーム30を駆動する第二カムを設けることで、ロストアーム20が外れ位置p2にスライドすると、休止状態になる代わりに、第二カムのプロフィールに従いバルブ70を駆動する第二駆動状態になるようにしてもよい。