(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る希土類磁石粉末、希土類ボンド磁石および希土類ボンド磁石の製造方法について説明する。
【0011】
<実施形態>
[希土類磁石粉末]
実施形態に係る希土類磁石粉末は、R−Fe−B系磁石を含む等方性希土類磁石粉末である。ここで、Rは希土類元素を表す。R−Fe−B系磁石は、具体的には、Nd(ネオジム)−Fe(鉄)−B(ホウ素)系磁石である。Nd−Fe−B系磁石は、三元系正方晶化合物であるNd
2Fe
14B型化合物相を主相として含む。なお、Nd
2Fe
14B型化合物相の存在は、X線回折法により確認できる。また、Nd−Fe−B系磁石は、通常Ndリッチ相などをさらに含んだ複合組織を有している。
【0012】
R−Fe−B系磁石において、より具体的には、Rは、NdとCe(セリウム)とを含むか、あるいは、NdおよびPr(プラセオジム)とCeとを含む。NdおよびPrを含む場合は、これらを混合物であるDi(ジジミウム)として含んでいてもよい。R−Fe−B系磁石は、さらにZr(ジルコニウム)を含む。
【0013】
また、R−Fe−B系磁石は、R−Fe−B系磁石100at%中、Rを9at%以上13at%以下の量で、好ましくは9at%以上13at%未満の量で含む。また、R−Fe−B系磁石は、R−Fe−B系磁石100at%中、Zrを0at%を超え5at%以下の量で、好ましくは1at%以上5at%以下の量で、より好ましくは2at%以上5at%以下の量で含む。また、R−Fe−B系磁石は、Rの合計100at%中、Ceを0at%を超え30at%以下の量で、好ましくは5at%以上30at%以下の量で含む。
【0014】
R−Fe−B系磁石において、Rの量が上記範囲にあると、希土類元素の量が抑えられており、コストの面から好ましい。また、R−Fe−B系磁石のRにおいて、Ndの内、特定の量をCeに置換している。Ceは希土類元素の中でも比較的安い元素であるため、Ceを使用することはコストの面からより好ましい。
【0015】
また、上記のように、R−Fe−B系磁石は、RとしてCeを特定の量で含み、添加元素としてZrを特定の量で含んでいる。これにより、実施形態に係る希土類磁石粉末のキュリー温度を低くできる。実施形態に係る希土類磁石粉末のキュリー温度は、たとえば200℃以上270℃以下である。なお、RとしてCeを用いるか、または添加元素としてZrを用いるか、いずれかのみでもキュリー温度を低下することは可能である。しかしながら、本実施形態のように、特定の量のCeおよび特定の量のZrを組み合わせて用いると、キュリー温度を好適な範囲にできる。上記希土類磁石粉末のキュリー温度は低下しているが、使用温度域以上に制御することで、ボンド磁石としたときに実用的な耐熱性を維持している。また、上記希土類磁石粉末のキュリー温度は適度に低下されているため、後述する着磁方法に好適に用いられる。
【0016】
このように、実施形態に係る希土類磁石粉末によれば、希土類元素の量が少なくすることと、キュリー温度を低くすることとが両立できる。
【0017】
なお、Rの量が9at%よりも少なすぎると、実施形態に係る希土類磁石粉末の保磁力が小さくなる場合がある。Rの量が13at%よりも多すぎると、コストメリットが失われてしまうことや、実施形態に係る希土類磁石粉末の残留磁束密度の低下が生じてしまう場合がある。また、Ceの量が30at%よりも多すぎると、実施形態に係る希土類磁石粉末の残留磁束密度や保磁力の低下が顕著になる場合がある。また、Zrを好ましくは1at%以上、より好ましくは2at%以上の量で含んでいると、実施形態に係る希土類磁石粉末の磁気特性の面からも好ましい。
【0018】
また、R−Fe−B系磁石は、R−Fe−B系磁石100at%中、Bを通常3at%以上10at%以下の量で含む。
【0019】
また、R−Fe−B系磁石において、Rは、Nd、PrおよびCe以外のその他の希土類元素をさらに含んでいてもよい。その他の希土類元素としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。その他の希土類元素は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その他の希土類元素を含む場合は、Rの合計100at%中、その他の希土類元素は、合計で0at%を超え30at%以下の量で含まれていることが好ましい。
【0020】
R−Fe−B系磁石は、Zr以外のその他の添加元素をさらに含んでいてもよい。その他の添加元素としては、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)が挙げられる。その他の添加元素は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その他の添加元素を含む場合は、R−Fe−B系磁石100at%中、その他の添加元素は、合計で0at%を超え10at%以下の量で含まれていることが好ましい。
【0021】
R−Fe−B系磁石において、Co(コバルト)はFeの一部を置換し、磁石のキュリー温度の上昇に寄与することが知られている。そのため、本実施形態に係る希土類磁石粉末にはCoを含まないことが好ましい。
【0022】
R−Fe−B系磁石において、希土類、B及び添加元素以外の残部は、Feおよび工業生産上不可避の元素である。なお、R−Fe−B系磁石は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ところで、耐熱性を有する等方性希土類ボンド磁石には、通常、急冷磁粉の中でも高保磁力な磁粉が使用される。その高い保磁力により、着磁性が悪くなる場合がある。これに対して、特許第4697736号明細書には、極小径・多極といった着磁ピッチの狭いリング状永久磁石などでも、表面磁束密度ピーク値全極の平均値を高くでき、表面磁束密度ピーク値のばらつきを小さくできる永久磁石の着磁方法が記載されている。上記着磁方法では、被着磁物の近傍に着磁用磁界印加手段を配置し、被着磁物を、そのキュリー温度以上からキュリー温度未満まで降温させつつ、その間、被着磁物に着磁磁界を印加し続ける。上記着磁方法によれば、被着磁物である希土類ボンド磁石に含まれる永久磁石粉体の保磁力に依存することなく、高い着磁率が得られる。しかしながら、従来の永久磁石粉体のキュリー温度(たとえば300℃)以上に加熱する必要があるため、ボンド磁石のバインダ樹脂硬化物が高温状態に晒され、該硬化物が劣化する虞がある。また、着磁装置に用いる治具材料などに、高い耐熱性を有する材料を選択する必要がある。したがって、上記着磁方法に用いる永久磁石粉体において、キュリー温度の低下が望まれる。
【0024】
上述のように、実施形態に係る希土類磁石粉末は、キュリー温度が低い。このため、上記着磁方法に好適に用いることができる。すなわち、実施形態に係る希土類磁石粉末は、特定の希土類ボンド磁石の製造方法に用いられることが好ましい。ここで、上記希土類ボンド磁石の製造方法は、上記希土類磁石粉末およびバインダ樹脂の混合物を加圧し、該バインダ樹脂の熱硬化により未着磁の被着磁体を形成する工程と、上記被着磁体を該被着磁体のキュリー温度以上の温度に加熱し、続いて磁界中で該被着磁体を該被着磁体のキュリー温度未満の温度に降温させながら該被着磁体を着磁させる工程とを含む。実施形態に係る希土類磁石粉末は、低いキュリー温度を有するため、従来の永久磁石粉体を使用する場合よりも低い温度で上記着磁方法を実行できる。このため、バインダ樹脂硬化物が高温加熱下で炭化して、希土類ボンド磁石の強度が低下することを抑えられる。また、高温加熱下での希土類磁石粉末の酸化を抑えられる。すなわち、希土類ボンド磁石の磁気特性の低下を抑えられる。なお、上記希土類ボンド磁石の製造方法については、後で詳しく述べる。
【0025】
なお、特許文献1には、高い保磁力および低いキュリー温度を有する希土類磁石粉体、ならびにこの希土類磁石粉体を用いた耐熱性に優れるボンド磁石が記載されている。上記希土類磁石粉体は、R−Fe−B−M(Mは添加元素を表す)系希土類鉄系磁石粉体である。R−Fe−B−M系希土類鉄系磁石粉体において、希土類元素Rの構成比率は13at%以上15at%以下であり、該希土類元素RはNdとPrとCeとを含み、該希土類元素R中、CeはR総量の35%以上65%以下である。また、R−Fe−B−M系希土類鉄系磁石粉体は、液体急冷法により作製されてなる。上記希土類磁石粉体は、保磁力は1000kA/mであり、キュリー温度は従来の磁石粉体よりも低い200℃以上270℃以下である。上記希土類磁石粉体は、比較的安価なCeを多く含んだ構成であるが、全体の希土類量が多いため、高価格になりやすく、必ずしも経済的に優れているとはいえない。また、希土類量が多いため、保磁力は高くなるが、残留磁束密度が低くなる虞がある。
【0026】
また、特許文献2には、急冷凝固プロセスとそれに続く熱処理により製造された磁性材料が記載されている。上記磁性材料は、原子百分率で、以下の組成を有する。
(R
1-aR'
a)
uFe
100-u-v-w-x-yCo
vM
wT
xB
y
【0027】
ここで、Rは、Nd、Pr、Di(ジジミウム、Nd
0.75Pr
0.25の組成を有するNdとPrとの天然混合物)、またはそれらの組合せであり、R'は、La、Ce、Y、またはそれらの組合せであり、Mは、Zr、Nb、Ti、Cr、V、Mo、WおよびHfの1種以上であり、Tは、Al、Mn、CuおよびSiの1種以上である。また、0.01≦a≦0.8、7≦u≦13、0≦v≦20、0.01≦w≦1、0.1≦x≦5、4≦y≦12である。上記磁性材料は、約6.5kG〜約8.5kGの残留磁束密度および約6.0kOe〜約9.9kOeの固有保磁力を示す。また、X線回折により測定した場合に、ほぼ化学量論的なNd
2Fe
14B型の単相微細構造を示す。
【0028】
特許文献2では、具体的には、原子百分率で(MM
1-aLa
a)
11.5Fe
82.5-v-w-xCo
vZr
wAl
xB
6.0の組成を有する合金インゴットを、アーク溶解により製造している。また、特許文献2には、La、Al、ZrおよびCoは、合金粉体の磁気特性を調節するために組み入れることができると記載されている。キュリー温度は約300℃となっている。さらに、特許文献2には、Laに代えてCeを用いてもよいことが記載されている。しかしながら、特許文献2では、Coが必須元素として添加されている。レアメタルであるCoは生産国からの供給懸念が心配される元素であり、その価格が生産国の政情不安により高騰する虞がある。このため、Coを用いると安価な磁性材料とはならない。また、R−Fe−B系磁石材料におけるCoの添加は、キュリー温度を高くする効果を奏するため、上記磁性材料のキュリー温度は低下し難いと考えられる。
【0029】
実施形態に係る希土類磁石粉末は、通常、液体急冷法によって製造される。具体的には、合金作製工程、超急冷工程、粉砕工程および熱処理工程を経て作製される。合金作製工程では、R−Fe−B系磁石に含まれる元素を上述した所定の量となるように秤量し、アーク溶解炉等を用いて溶融させ合金化する。次いで、超急冷工程では、単ロール法により、合金作製工程で得られた合金を溶融させ、銅などでできたロールに溶融合金を噴射することで超急冷し、薄帯を形成する。次いで、粉砕工程では、たとえばピンミルなどの粉砕機で薄帯を粉砕して、フレーク状または粒状の磁石粉末を作製する。次いで、熱処理工程では、上記磁石粉末を真空中または不活性雰囲気下で加熱する。これにより、アモルファス状態である上記磁石粉末の結晶化が進み、硬磁性の発現と組織の均質化が進む。このようにして、希土類元素の量が少なく、かつキュリー温度が低い上記希土類磁石粉末を製造できる。
【0030】
[希土類ボンド磁石]
実施形態に係る希土類ボンド磁石は、上述した希土類磁石粉末を含む。実施形態に係る希土類ボンド磁石は、上述した希土類磁石粉末を用いて、たとえば以下の製造方法によって得られる。
【0031】
上記製造方法は、上記希土類磁石粉末およびバインダ樹脂の混合物を加圧し、該バインダ樹脂の熱硬化により未着磁の被着磁体を形成する工程(被着磁体の形成工程)と、上記被着磁体を該被着磁体のキュリー温度以上の温度に加熱し、続いて磁界中で該被着磁体を該被着磁体のキュリー温度未満の温度に降温させながら該被着磁体を着磁させる工程(被着磁体の着磁工程)とを含む。
【0032】
(被着磁体の形成工程)
被着磁体の形成工程では、まず、上記希土類磁石粉末およびバインダ樹脂を混合した混合物を加圧して圧縮成形体を得る。次いで、上記圧縮成形体を加熱して、バインダ樹脂を熱硬化させて、未着磁の被着磁体を成形する。
【0033】
被着磁体の形成工程で使用されるバインダ樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタンなどが挙げられる。これらのなかでも、耐熱性に優れるため、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。なお、上記熱硬化性樹脂は、室温で固形(粉体状)であっても、液状であってもよい。
【0034】
上記エポキシ樹脂は、分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有していれば、特に限定されない。上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の直鎖型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂;テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0035】
また、上記熱硬化性樹脂を硬化させるため、上記混合物には、硬化剤および/または促進剤を適宜配合する。上記硬化剤および/または促進剤としては、アミン系硬化剤、ジシアンジアミドとその誘導体、フェノールとその誘導体、イソシアネート、ブロックイソシアネート、イミダゾールとその誘導体などが挙げられる。
【0036】
さらに、上記混合物には、本実施形態の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて酸化防止剤、滑剤などの添加剤を適宜配合してもよい。
【0037】
上記混合物におけるバインダ樹脂の配合量は、配合する上記希土類磁石粉末の質量100wt%に対して0.5wt%以上5wt%以下であることが好ましい。バインダ樹脂の含有量が少なすぎると、圧縮成形法を用いて希土類ボンド磁石を作製することが困難になる。一方、バインダ樹脂の含有量が多すぎると、希土類ボンド磁石の磁気特性が低下する虞がある。
【0038】
なお、実施形態に係る希土類ボンド磁石の製造においては、バインダ樹脂として熱可塑性樹脂を用いてもよい。また、バインダ樹脂の代わりに金属バインダを用いてもよい。さらに、成形方法として圧縮成形のみならず、射出成形、ホットプレスなどの各種成形方法を用いてもよい。
【0039】
(被着磁体の着磁工程)
被着磁体の着磁工程では、上記被着磁体の近傍に着磁用永久磁石を配置する。上記被着磁体のキュリー温度以上の温度かつ上記着磁用永久磁石のキュリー温度未満の温度(T
1)に、上記被着磁体を加熱する(ここで、上記着磁用永久磁石のキュリー温度は、上記被着磁体のキュリー温度よりも高い。)。その温度(T
1)から上記被着磁体のキュリー温度未満の温度(T
2)に降温させつつ、その間、上記着磁用永久磁石により、上記被着磁体に着磁磁界を印加し続ける。たとえば、(キュリー温度+30)℃以上の温度(T
1)まで加熱し、(キュリー温度−50℃)以下の温度(T
2)まで冷却する間、上記被着磁体に着磁磁界を印加し続ける。より具体的には、着磁工程は、特許第4697736号明細書および特許第4674799号明細書に記載された装置および手順にて行うことができる。
【0040】
このようにして、室温で十分に着磁された希土類ボンド磁石が製造できる。たとえば、多極着磁されたリング状の希土類ボンド磁石が得られる。製造に用いる希土類磁石粉末は、低いキュリー温度を有するため、従来の永久磁石粉体を使用する場合よりも低い加熱温度(T
1)(たとえば230℃以上300℃以下)で上記着磁方法を実行できる。このため、バインダ樹脂硬化物が高温加熱下で炭化して、希土類ボンド磁石の強度が低下することを抑えられる。また、高温加熱下での希土類磁石粉末の酸化を抑えられる。すなわち、希土類ボンド磁石の磁気特性の低下を抑えられる。
【0041】
なお、実施形態に係る希土類ボンド磁石は、上述した希土類磁石粉末を含んでいればよく、上記着磁工程以外の着磁工程を含む製造方法によって製造された希土類ボンド磁石であってもよい。
【0042】
[実施例]
[参考例1]
液体急冷法によって、Nd
11Fe
83-xB
6Zr
x(x=0)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程では、上記組成となるように配合した原料をアーク溶解炉にて合金化した。次いで、超急冷工程では、単ロール法により、合金作製工程で得られた合金を超急冷し、薄帯を形成した。次いで、粉砕工程では、薄帯を粉砕して磁石粉末を作製した。次いで、熱処理工程では、上記磁石粉末を真空中で加熱した。このようにして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0043】
[参考例2]
Nd
11Fe
83-xB
6Zr
x(x=2)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0044】
[参考例3]
Nd
11Fe
83-xB
6Zr
x(x=5)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0045】
[参考例4]
(Nd
0.7Ce
0.3)
11Fe
83-xB
6Zr
x(x=0)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0046】
[実施例1]
(Nd
0.7Ce
0.3)
11Fe
83-xB
6Zr
x(x=2)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0047】
[実施例2]
(Nd
0.7Ce
0.3)
11Fe
83-xB
6Zr
x(x=5)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0048】
[参考例5]
Nd
11Fe
81-xB
8Zr
x(x=0)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0049】
[参考例6]
Nd
11Fe
81-xB
8Zr
x(x=2)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0050】
[参考例7]
Nd
11Fe
81-xB
8Zr
x(x=5)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0051】
[参考例8]
(Nd
0.7Ce
0.3)
11Fe
81-xB
8Zr
x(x=0)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0052】
[実施例3]
(Nd
0.7Ce
0.3)
11Fe
81-xB
8Zr
x(x=2)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0053】
[実施例4]
(Nd
0.7Ce
0.3)
11Fe
81-xB
8Zr
x(x=5)の組成を有する希土類磁石粉末を作製した。合金作製工程における、原料の配合を変更した以外は、参考例1と同様にして、上記組成を有する希土類磁石粉末を製造した。
【0054】
<キュリー温度(T
c)>
参考例および実施例で得られた希土類磁石粉末について、VSM(振動試料型磁力計)を用いてキュリー温度を測定した。具体的には、VSMにて、着磁した希土類磁石粉末について、室温から温度を上昇させながら磁化の変化を測定した。磁化が概ね0となったときの温度をキュリー温度とした。
【0055】
図1および
図2は、希土類磁石粉末のキュリー温度を示す図である。
図1および
図2は、Bが6at%および8at%それぞれの組成において、Zrの添加量に対するキュリー温度の変化を示している。
図1および
図2において、希土類総量は11at%である。また、破線は、希土類元素がNdのみの場合を示し、実線は、Ndの30at%をCeで置換した場合を示している。
図1および
図2より、Ce置換によって、キュリー温度が低下していることがわかる(Zr添加が0at%のときを参照)。さらに、Zrの添加量が増加するに伴い、希土類磁石粉末のキュリー温度が低下していることがわかる。なお、
図1および
図2からBの添加量の違いによるキュリー温度の変化も見てとれるが、Ce、Zrの添加量によるキュリー温度の変化に比べてその影響は小さいといえる。
【0056】
特許文献1においては、希土類量が13〜15at%であり、Ceの置換量は35〜65%となっている。この場合、Ceの置換量が多いためキュリー温度を200〜270℃という広い範囲で制御できているが、その分磁気特性が低下する場合がある。しかしながら、本実施形態による希土類磁石粉末においては、Zrの添加を必須とすることでCe置換量30%以下でも同等の範囲にてキュリー温度を制御することができる。これにより、磁気特性、特に残留磁束密度の低下を抑制することが可能である。