(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、従来の血流調整装置は、人工透析用のシャントの血流を零または少量に抑えた状態と、十分な血流量を確保した状態と、の2つの状態の間で、血流を切り替えることを目的としている。このため、特許文献1に記載の血流調整装置では、所望の血流量に多段階または無段階に調整することが困難である。
【0006】
しかしながら、例えば、レシピエント肝臓を残した肝臓の異所性移植の実験を行う場合、ドナー肝臓への血流量を確保するためにレシピエント肝臓に流入する血流量を所定の血流量に減少させることが望ましい。このため、所望の血流量に調整できることが求められる。また、このような実験では、レシピエント肝臓に流入する血流量を、長時間(例えば数日)をかけて徐々に減少させる場合がある。このように、当該血流量を必要に応じて増減させることができることがより望ましい。また、開腹手術を行うことなく、血流量を変更できることがさらに望ましい。しかしながら、従来の血流調整装置では、開腹することなく血流量を確認することが困難である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、血管の血流量を所望の血流量に調整可能な血流調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、生体の血管に取り付けられ、前記血管の血流量を調整するための血流調整装置であって、前記血管の周囲を囲み、開閉可能な筒状部と、前記筒状部の内側に配置され、前記血管を押圧可能な押圧部と、
前記筒状部の内側に配置され、前記血管の血流量を測定する血流量測定部と、前記血流量測定部からの信号に基づいて前記押圧部の押圧力を制御する制御部と、を有
し、前記血流量測定部は、前記押圧部よりも、前記血管の下流側に配置される。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の血流調整装置であって、前記押圧部は、内部に流体を貯留可能なバルーンである。
【0010】
本願の第3発明は、第2発明の血流調整装置であって、前記押圧部は、前記筒状部の内側の全周に配置される。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明または第2発明の血流調整装置であって、前記押圧部は、押圧状態において、前記血管に対向する部分が平面状である。
【0012】
本願の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの血流調整装置であって、前記押圧部の前記血管に対する接触領域が線状である。
【0013】
本願の第6発明は、第1発明ないし第5発明のいずれかの血流調整装置であって、前記制御部に外部から信号を入力する入力部と、信号を伝達する通信線と、をさらに有し、前記筒状部、前記押圧部および前記血流量測定部と、前記制御部および前記入力部とは離間して配置され、前記押圧部および前記血流量測定部は、前記通信線を介して前記制御部と電気的に接続される、血流調整装置。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1発明ないし第6発明によれば、血管を押圧する際に、血流量測定部の測定した血流量信号に基づいて、押圧部の押圧力を制御する。これにより、血管の血流量を所望の血流量となるように調整可能である。
【0015】
特に、本願の第3発明によれば、押圧部が血管の周方向の全体を押圧することにより、血管に周方向に均等に圧力が加わる。これにより、血管の周方向の一部のみに圧力がかかって血管が損傷するのが抑制される。
【0016】
特に、本願の第4発明によれば、血管を平面によって押圧することにより、血管に皺が生じるのを抑制できる。したがって、血管の血流量をほぼ零としやすい。
【0017】
特に、本願の第5発明によれば、押圧部と血管に対する接触領域が軸方向に狭い。これにより、血管の圧迫状態が、結紮糸を用いて血管を結紮する場合と近似する。その結果、血管の血流を遮断しやすくできる。
【0018】
特に、本願の第6発明によれば、一旦押圧部を血管の周囲に配置すれば、血管の周囲に触れることなく、体表や体外に配置された制御部を操作することにより、血流量を変更できる。したがって、低侵襲で血流量を変更可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願において「ドナー」および「レシピエント」は、ヒトであってもよいし、非ヒト動物であってもよい。また、非ヒト動物は、マウスおよびラットを含む齧歯類、ブタ(ミニブタ含む)、ヤギおよびヒツジを含む有蹄類、イヌを含む食肉類、サル、ヒヒおよびチンパンジーを含む非ヒト霊長類、ウサギ、その他の非ヒトほ乳動物であってもよいし、ほ乳動物以外の動物であってもよい。
【0021】
<1.血流調整装置の構成>
はじめに、本発明の一実施形態に係る血流調整装置1の構成について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、血流調整装置1の構成を概念的に示した斜視図である。
図2は、血流調整装置1の本体部2を開いた状態における斜視図である。
図3および
図4は、血流調整装置1の本体部2の使用時における断面図である。なお、
図3は、バルーン23を膨らませていない状態を示しており、
図4は、バルーン23が中程度膨らんだ状態を示している。
図5は、血流調整装置1の構成を示したブロック図である。
【0022】
この血流調整装置1は、生体の血管に取り付けられ、当該血管の血流量を調整するための装置である。
図1に示すように、血流調整装置1は、本体部2と、配線部3と、制御部10(
図5参照)を有するコントローラ部4とを有する。本体部2は、血流量調整を行う対象となる血管90の周囲に取り付けられる。コントローラ部4は、体表付近や体外に配置され、外部からの操作が可能である。配線部3は、本体部2とコントローラ部4との間を繋ぐ。
【0023】
図2に示すように、本体部2は、筒状部21、血流量測定部22、およびバルーン23を有する。
【0024】
筒状部21は、筒状の部材である。本実施形態の筒状部21は、特に、円筒状である。本体部2が血管90に装着されると、筒状部21は血管90の周囲を囲む。筒状部21は、例えば、医療用プラスチックや医療用ステンレスによって形成される。ここで、以下では、筒状部21の延びる方向を軸方向、筒状部21の外周に沿う方向を周方向と称する。
【0025】
筒状部21は、第1筒状部211および第2筒状部212から構成される。第1筒状部211および第2筒状部212はそれぞれ、軸方向から見て、筒状部21をほぼ半分に分割したものである。第1筒状部211と第2筒状部212の周方向の一方の端部は、互いに蝶番のように可動固定される。また、第1筒状部211と第2筒状部212の周方向の他方の端部は、固定機構(図示せず)により固定可能である。固定機構には、例えば、スナップフィットなどが用いられる。これにより、筒状部21は、開閉可能に構成される。なお、筒状部21の開閉機構は、上記の機構に限られない。
【0026】
血流量測定部22は、筒状部21の内部に配置され、血管90の血流量を測定する。血流量測定部22は、発信部221および受信部222を有する。この血流量測定部22は、レーザ式の血流計測装置である。このため、発信部221には、半導体レーザ等のレーザが用いられる。また、受信部222には、フォトダイオード等の受光素子が用いられる。なお、血流量測定部22には、電磁波や超音波を用いた他の種類の血流計測装置が用いられてもよい。本実施形態では、発信部221は第1筒状部211の内側に配置され、受信部222は第2筒状部212の内側に配置される。
【0027】
バルーン23は、筒状部21の内部に配置される。バルーン23は、本体部2の内部に配置された血管90を押圧可能な押圧部である。本実施形態のバルーン23は、ラテックス等の伸縮性の高い医療用ゴムにより形成される。なお、バルーン23は、膨張・収縮可能なものであれば、折畳み構造を有する伸縮性の低い材料により形成されていてもよい。
【0028】
バルーン23は、内部に流体を貯留可能である。バルーン23は、その内部に流体が供給されることによって膨張し、内部から流体が回収されることによって収縮する。本実施形態ではバルーン23の内部に供給される流体として気体が用いられる。しかしながら、バルーン23の内部に供給される流体は、液体であってもよい。
【0029】
また、押圧部として機能するものであれば、バルーン23に代えて、その他の構成が採用されてもよい。押圧部が、例えば、血管90との接触面を有する接触部材と、接触部材を血管へ向かって押圧するバネ等の弾性部材と、接触部材を血管から離間させる方向へと引っ張るケーブル等の部材とを組み合わせたものにより構成されていてもよい。
【0030】
図3および
図4に示すように、本実施形態のバルーン23は、第1バルーン231と第2バルーン232とに分かれている。第1バルーン231は、第1筒状部211の内側に配置される。第2バルーン232は、第2筒状部212の内側に配置される。
【0031】
本実施形態のバルーン23は、
図4に示すように、少なくとも膨らんだ状態において、筒状部21の内側の全周に配置される。バルーン23が膨らむと、
図4に示すように、バルーン23が血管90の周方向の全体に接触するとともに、血管90を押圧する。このように、血管90の周方向の全体を押圧することにより、血管90に周方向に均等に圧力が加わる。その結果、血管90の周方向の一部のみに圧力がかかって血管90が損傷するのが抑制される。
【0032】
血流調整装置1の使用時には、
図2に示すように、血流量測定部22がバルーン23よりも血管90の下流側に位置するように、本体部2を配置する。これにより、血流量測定部22は、バルーン23において押圧された箇所よりも下流側における血流量を計測できる。
【0033】
配線部3は、
図1および
図5に示すように、通信線31と、流体管32と、カバー33とを有する。通信線31は、血流量測定部22と制御部10とを電気的に接続し、信号を伝達する。流体管32は、バルーン23と、コントローラ部4の後述するバルーン駆動機構43とを管路接続する。カバー33は、通信線31および流体管32を覆う。
【0034】
本実施形態の配線部3は、本体部2付近において二股に分かれている。二股に分かれた配線部3の一方において、通信線31は血流量測定部22の発信部221に接続し、流体管32は第1バルーン231に接続する。また、二股に分かれた配線部3の他方において、通信線31は血流量測定部22の受信部222に接続し、流体管32は第2バルーン232に接続する。
【0035】
図1および
図5に示すように、コントローラ部4は、表示部41と、入力部42と、バルーン駆動機構43と、制御部10とを有する。
【0036】
表示部41は、制御部10からの信号に基づいて、文字などの情報を表示する。表示部41には、例えば、血管90の設定血流量や、血流量測定部22の計測した血管90の現在の血流量などが表示される。表示部41には、例えば、液晶パネルが用いられる。
【0037】
入力部42は、外部から制御部10へ目標血流量等の指令信号を入力する。本発明の入力部42は、外部の機器と接続するための複数の端子421である。この端子421を入力用の外部機器と接続し、端子421を介して制御部10へ指令信号が入力される。なお、入力部42は、プッシュボタンであってもよい。また、入力部42は、無線電波を受信する受信装置であってもよい。
【0038】
バルーン駆動機構43は、バルーン23の内部に流体を供給したり、バルーン23の内部から流体を回収したりする部位である。バルーン駆動機構43とバルーン23とは、配線部30の流体管32を介して流体のやりとりを行う。
【0039】
本実施形態では、バルーン23の内部、あるいは、バルーン23の内部と連通する箇所に、圧力計(図示せず)が設けられる。これにより、バルーン23内の圧力から、バルーン23の膨張状態を推測できる。例えば、バルーン23が膨張していない状態から、徐々にバルーン23を膨張させる場合、バルーン23が血管90の押圧を開始した時点で、バルーン23内の圧力が上昇する。なお、バルーン23内に供給する流体を気体にすると、当該流体が液体である場合に比べて圧力応答性が高くなる。
【0040】
制御部10は、血流調整装置1内の各部を動作制御するための部位である。本実施形態の制御部10は、マイクロコントローラにより構成されている。しかしながら、制御部10は、電子回路またはコンピュータにより構成されていてもよい。
図5に示すように、制御部10は、血流量測定部22、表示部41、入力部42およびバルーン駆動機構43と、それぞれ電気的に接続されている。
【0041】
制御部10は、入力部42から入力された目標血流量および血流量測定部22からの測定信号に基づいて、バルーン駆動機構43を動作させてバルーン23の押圧力を制御する。
【0042】
この血流調整装置1では、上記のように、血管90を押圧する際に、血流量測定部22の測定した血流量信号に基づいて、押圧部であるバルーン23の押圧力を制御する。これにより、血管90の血流量を所望の血流量となるように調整可能である。
【0043】
また、この血流調整装置1では、本体部2とコントローラ部4とが配線部3を介して繋がっている。これにより、一旦本体部2を血管90の周囲に配置すれば、血管の周囲に触れることなく、体表や体外に配置されたコントローラ部4を操作することにより、血流量を変更できる。したがって、低侵襲で血流量を変更可能である。
【0044】
<2.肝臓の異所性移植における血流調整装置の使用>
次に、血流調整装置1を用いた肝臓の異所性移植について、
図6および
図7を参照しつつ説明する。
図6は、血流調整装置1を用いた肝臓の異所性移植の流れを示したフローチャートである。
図7は、血流調整装置1を用いた肝臓の異所性移植において、肝臓付近の様子を示した概略図である。
【0045】
なお、ここで説明する肝臓の異所性移植は、例えば、肝臓保存方法や肝臓培養方法を検証するための動物実験などで実施される。具体的には、レシピエントの肝臓91(以下、「レシピエント肝91」と称する)を全て残したままで、ドナーの肝臓92(以下、「ドナー肝92」と称する)を移植する。そして、肝機能を徐々にレシピエント肝91からドナー肝92へと移行し、その後、レシピエント肝91を摘出する。
【0046】
血流調整装置1を用いた肝臓の異所性移植では、まず、ドナーからドナー肝92を摘出する(ステップS11)。
【0047】
次に、ドナー肝92をレシピエントへ異所性移植するとともに、レシピエントの門脈911に血流調整装置1を装着する(ステップS12)。
【0048】
異所性移植では、具体的には、ドナー肝92から延びるドナーの門脈921を、レシピエントの門脈911に端側吻合する。また、ドナー肝92から延びる肝動脈922を、レシピエントの肝動脈912に端側吻合する。そして、ドナー肝92から延びる下大静脈923を、レシピエントの肝下部下大静脈(IH−IVC)913に端側吻合する。なお、レシピエントの肝下部下大静脈(IH−IVC)913に吻合する下大静脈923は、ドナー肝92から延びる肝上部下大静脈(SH−IVC)および肝下部下大静脈(IH−IVC)のどちらであってもよい。
【0049】
そして、レシピエントの門脈911のうち、ドナーの門脈921との吻合箇所よりもレシピエント肝91側に、血流調整装置1を装着する。その後、レシピエントの閉腹処置を行う。
【0050】
ステップS12の移植術完了後、3日間〜7日間の間、徐々にレシピエント肝91に繋がる門脈911の血流量を低下させる(ステップS13)。これにより、肝機能を徐々にレシピエント肝91からドナー肝92へと移行する。
【0051】
ドナーの門脈921はレシピエントの門脈911の側部に繋がっている。このため、レシピエントの門脈911からレシピエント肝91へと向かう血流量をコントロールしない場合、ドナーの門脈921を介してドナー肝92へと向かう血流量は、レシピエント肝91へと向かう血流量と比べて小さい。そこで、レシピエント肝91へと向かう血流量を、血流調整装置1を用いて制限することにより、ドナー肝92へと向かう血流量を確保できる。
【0052】
例えば、移行期間が7日間である場合、ステップS12の移植術完了後間もなく、血流調整装置1において血流量が100%から80%となるように調整を行う。その後、3日後に65%、5日後に30%、7日後に0%となるように調整を行う。そして、血流量が0%となった後にステップS14のレシピエント肝91の摘出処置を行う(ステップS14)。
【0053】
なお、ステップS13の移行期間中、上記のように段階的に血流量を調整するのではなく、無段階で次第に血流量が変化するように設定してもよい。また、移行期間は7日間に限られず、適宜設定されてよい。
【0054】
また、血流調整装置1において血流量を0%とした場合、レシピエント肝91への門脈911経由の血流は停止するものの、肝動脈912経由の血流は確保されている。このため、レシピエント肝91の組織が壊死するという問題はほとんど生じない。
【0055】
このように、異所性移植において、レシピエント肝91からドナー肝92へと肝機能を徐々に移行させる際には、本発明の血流調整装置1が有用である。
【0056】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0057】
図8および
図9は、一変形例に係る血流調整装置の本体部2Aの断面図である。なお、
図8は、バルーン23Aを膨らませていない状態を示しており、
図9は、バルーン23Aが中程度膨らんだ状態を示している。上記の実施形態では、バルーン23Aが筒状部21Aの内側の周方向の一部のみに配置される。このように、押圧部であるバルーン23Aは、筒状部21Aの周方向の一部のみに配置されてもよい。
【0058】
図10および
図11は、他の変形例に係る血流調整装置の本体部2Bの断面図である。なお、
図10は、バルーン234Bを膨らませていない状態を示しており、
図11は、バルーン234Bが8割程度膨らんだ状態を示している。
図10および
図11の例では、筒状部21Bが略四角筒状である。また、押圧部23Bは、押圧板233Bおよびバルーン234Bを有する。押圧板233Bの一方側の面は、バルーン234Bの一部に固定されている。押圧板233Bの他方側の面は、平面状である。また、押圧板233Bと対向する筒状部21Bの内周面210Bも、平面状である。血管90Bは、対向する押圧板233Bと内周面210Bとの間に配置される。このため、押圧状態において、押圧部23Bのうち血管90Bに対向する部分が平面状である。
【0059】
バルーン234Bが膨らむと、押圧板233Bは、内周面210Bへ向かって移動する。これにより、血管90Bは、押圧板233Bと内周面210Bとによって挟まれ、押圧される。このように、血管90Bを2つの対向する平面で挟んで押圧することにより、血管90Bに皺が生じるのを抑制できる。このため、血管90Bの血流量をほぼ零としやすい。上記の実施形態では、押圧部がバルーン23のみで構成されていた。このため、バルーン23が直接血管90に接触していた。バルーン23は、その性質上、血管90への接触面を平面状に保つのが困難である。これに対して、
図10および
図11の例では、血管90Bを2平面で挟んで押圧することができる。
【0060】
図12は、他の変形例に係る血流調整装置の本体部2Cの斜視図である。
図12の例では、バルーン23Cは、少なくとも膨らんだ状態において、筒状部21Cの内側の全周に配置される。また、バルーン23Cの軸方向の幅は、筒状部21Cの内周面の半径よりも小さい。これにより、バルーン23Cの血管に対する接触領域が線状となる。すなわち、バルーン23Cの血管に対する接触領域が、軸方向に狭い。これにより、血管の圧迫状態が、結紮糸を用いて血管を結紮する場合と近似する。血管の状態によっては、押圧部であるバルーン23Cとの接触面積が広いと血管に皺が寄って、血流を完全に遮断することが困難となる場合がある。このように、血管と、押圧部であるバルーン23Cとの接触面積を小さくすることにより、血流を遮断しやすくできる。
【0061】
図13は、他の変形例に係る血流調整装置の本体部2Dの斜視図である。
図13の例では、本体部2Dは、上流側バルーン235Dと、下流側バルーン236Dとを有する。下流側バルーン236Dは、軸方向において、血流量測定部22Dと上流側バルーン235Dとの間に配置される。この血流調整装置の使用時には、血管の上流側から下流側へ向かって、上流側バルーン235D、下流側バルーン236D、血流量測定部22Dの順に配置される。
【0062】
このように、軸方向の異なる位置に、2つの押圧部である上流側バルーン235Dおよび下流側バルーン236Dを配置することにより、2つのバルーン235D,236Dの一方に不具合があった場合であっても、血流量の調整を行うことができる。通常使用時には、2つのバルーン235D、236Dの両方を使用してもよいし、いずれか一方のみを使用して、不具合が生じた場合のみ他方を使用してもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、本発明に係る血流調整装置を、肝臓の異所性移植に用いたが、本発明はこれに限らない。血流調整装置を用いて血流量を調整する血管は、肝臓に繋がる血管に限られない。
【0064】
また、本発明に係る血流調整装置を、例えば、生体肝移植において、透析によるドナー肝の培養を行うために用いてもよい。その場合、レシピエントの肝臓の門脈に血流調整装置を取り付けた状態で、ドナーから摘出した移植用の肝臓(ドナーの肝臓の一部)へと透析を行う。具体的には、移植用の肝臓にレシピエントの体内から血液を供給し、肝臓を通過した血液をレシピエントの体内へと還流させる。
【0065】
このようにすれば、移植前に、移植用の肝臓を培養して大きくさせることができる。このため、比較的小さな外側区域グラフトまたは左葉グラフトをドナーから摘出した場合であっても、移植時には摘出時より大きく培養された肝臓をレシピエントに移植することができる。このため、ドナーへの負担が軽減するとともに、レシピエントにより肝機能の高い肝臓を移植することができる。また、開腹手術を行う前に、レシピエントの血液と、移植用の肝臓との適合性をある程度判断することができる。このため、レシピエントの肝臓を摘出してしまう前に適合性判断をある程度できることにより、レシピエントの生存率を高めることができる。
【0066】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。