特許第6836503号(P6836503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836503ゲル、ゲルの製造方法、レンズ、コンタクトレンズ表面改質剤、重合性組成物及び重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836503
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ゲル、ゲルの製造方法、レンズ、コンタクトレンズ表面改質剤、重合性組成物及び重合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20210222BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20210222BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20210222BHJP
   C08K 5/5425 20060101ALI20210222BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20210222BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20210222BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20210222BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   C08L33/06
   C08K5/103
   C08K5/07
   C08K5/5425
   C08F220/18
   C08F2/48
   G02B1/04
   G02C7/04
【請求項の数】14
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2017-523643(P2017-523643)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2016066888
(87)【国際公開番号】WO2016199755
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-115458(P2015-115458)
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513133022
【氏名又は名称】JSRライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日向寺 慧
(72)【発明者】
【氏名】磯 和宏
(72)【発明者】
【氏名】須田 清
(72)【発明者】
【氏名】林 直樹
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6001200(JP,B2)
【文献】 特開2006−312664(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/117898(WO,A1)
【文献】 特開2012−111939(JP,A)
【文献】 特開2004−137403(JP,A)
【文献】 特表2012−522852(JP,A)
【文献】 特開平10−096878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aと、
親水性モノマーを架橋剤と共に重合したポリマーbと、を含むことを特徴とする、
ゲル。
(A)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、下記式(3)で表される繰り返し単位(A−2)、下記式(4)で表される繰り返し単位(A−3)、下記式(5)で表される繰り返し単位(A−4)、下記式(6)で表される繰り返し単位(A−5)、下記式(7)で表されるベタイン性繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、及び下記式(8)で表されるカチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上の親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【化1】
〔式(3)中、
6は、水素原子又はメチル基を示し、
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
【化2】
〔式(4)中、
12は、水素原子又はメチル基を示し、
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化3】
〔式(5)中、
15は、水素原子又はメチル基を示し、
16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
【化4】
〔式(6)中、
18は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
【化5】
〔式(7)中、
Yは、−(C=O)O-、−(O=S=O)O-、−O(O=S=O)O-、−(S=O)O-、−O(S=O)O-、−OP(=O)(OR24)O-、−OP(=O)(R24)O-、−P(=O)(OR24)O-、又は−P(=O)(R24)O-を示し(R24は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
19は、水素原子又はメチル基を示し、
20及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【化6】
〔式(8)中、
25は、水素原子又はメチル基を示し、
26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR31−、*−NR31−(C=O)−(R31は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(8)中のR25が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
28、R29及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【請求項2】
前記重合体aの存在下で前記親水性モノマーを前記架橋剤と共に重合した、請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
前記繰り返し単位(A−1)が、下記式(2)で表されるものである、請求項1又は2に記載のゲル。
【化7】
〔式(2)中、
1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、
3は、水素原子又はメチル基を示し、
4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR5−、*−NR5−(C=O)−(R5は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(2)中のR3が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
nは、平均値で2〜100を示す。〕
【請求項4】
前記繰り返し単位(B)が、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基又は炭素数5〜30のアルカノイル基で構成される繰り返し単位である、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項5】
前記繰り返し単位(B)が、下記式(10)で表されるものである、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【化8】
〔式(10)中、
32は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
33は、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基を示し、
34は、水素原子又はメチル基を示し、
35は、−O−、**−(C=O)−O−、**−(C=O)−NR36−、**−NR36−(C=O)−(R36は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、**は、式(10)中のR34が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
mは、平均値で2〜100を示す。〕
【請求項6】
前記重合体aが、下記式(11)で表される繰り返し単位(C−1)及び下記式(12)で表される基を側鎖の末端に有する繰り返し単位(C−2)から選ばれる1種以上の繰り返し単位(C):60質量%以下を更に有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【化9】
〔式(11)中、
37は、水素原子又はメチル基を示し、
38は、−O−、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR40−、***−NR40−(C=O)−(R40は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、***は、式(11)中のR37が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
39は、炭素数4〜30の炭化水素基を示す。〕
【化10】
〔式(12)中、
41は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
42及びR43は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の有機基を示し、
44、R45及びR46は、それぞれ独立して、−OSi(R493(R49は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の有機基を示す)又は炭素数1〜10の有機基を示し、
rは、平均値で0〜200を示す。〕
【請求項7】
前記重合体aが、非網目状の重合体である、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項8】
前記重合体aを0.01〜40質量%含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項9】
更に、シリコーン化合物を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項10】
前記ポリマーbが、重合性官能基を有するシリコーン化合物を、前記親水性モノマー及び前記架橋剤と共に重合したものである、請求項1〜のいずれか1項に記載のゲル。
【請求項11】
ポリマーを含むゲルの製造方法であって、
下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aの存在下で、
親水性モノマーを架橋剤と共に重合してポリマーとすることを特徴とする、
ゲルの製造方法。
(A)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、下記式(3)で表される繰り返し単位(A−2)、下記式(4)で表される繰り返し単位(A−3)、下記式(5)で表される繰り返し単位(A−4)、下記式(6)で表される繰り返し単位(A−5)、下記式(7)で表されるベタイン性繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、及び下記式(8)で表されるカチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上の親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【化11】
〔式(3)中、
6は、水素原子又はメチル基を示し、
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
【化12】
〔式(4)中、
12は、水素原子又はメチル基を示し、
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化13】
〔式(5)中、
15は、水素原子又はメチル基を示し、
16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
【化14】
〔式(6)中、
18は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
【化15】
〔式(7)中、
Yは、−(C=O)O-、−(O=S=O)O-、−O(O=S=O)O-、−(S=O)O-、−O(S=O)O-、−OP(=O)(OR24)O-、−OP(=O)(R24)O-、−P(=O)(OR24)O-、又は−P(=O)(R24)O-を示し(R24は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
19は、水素原子又はメチル基を示し、
20及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【化16】
〔式(8)中、
25は、水素原子又はメチル基を示し、
26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR31−、*−NR31−(C=O)−(R31は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(8)中のR25が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
28、R29及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のゲルを含むことを特徴とする、
レンズ。
【請求項13】
コンタクトレンズである、請求項12に記載のレンズ。
【請求項14】
下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aと、
親水性モノマーと、
架橋剤と、を含むことを特徴とする、
重合性組成物。
(A)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、下記式(3)で表される繰り返し単位(A−2)、下記式(4)で表される繰り返し単位(A−3)、下記式(5)で表される繰り返し単位(A−4)、下記式(6)で表される繰り返し単位(A−5)、下記式(7)で表されるベタイン性繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、及び下記式(8)で表されるカチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上の親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【化17】
〔式(3)中、
6は、水素原子又はメチル基を示し、
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
【化18】
〔式(4)中、
12は、水素原子又はメチル基を示し、
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕
【化19】
〔式(5)中、
15は、水素原子又はメチル基を示し、
16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
【化20】
〔式(6)中、
18は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
【化21】
〔式(7)中、
Yは、−(C=O)O-、−(O=S=O)O-、−O(O=S=O)O-、−(S=O)O-、−O(S=O)O-、−OP(=O)(OR24)O-、−OP(=O)(R24)O-、−P(=O)(OR24)O-、又は−P(=O)(R24)O-を示し(R24は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
19は、水素原子又はメチル基を示し、
20及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【化22】
〔式(8)中、
25は、水素原子又はメチル基を示し、
26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR31−、*−NR31−(C=O)−(R31は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(8)中のR25が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
28、R29及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル、ゲルの製造方法、レンズ、コンタクトレンズ表面改質剤、重合性組成物及び重合体に関する。より詳細には、コンタクトレンズ材料などとして有用なゲル、ゲルの製造方法、レンズ、コンタクトレンズ表面改質剤、重合性組成物及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは含水性コンタクトレンズ(ソフトコンタクトレンズが含まれる)と非含水性コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズが含まれる)に大別され、含水性コンタクトレンズは、一般に、非含水性コンタクトレンズよりも装着感が良好であるという利点がある。
しかしながら、従来の含水性コンタクトレンズは含水性が高いため、レンズの乾燥が早い、酸素透過性が低下する場合がある等の問題があった。
【0003】
そこで、低含水性でありながら高い酸素透過性をもつシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが開発され、近年ではこれがコンタクトレンズの主流となっている。しかしながら、シリコーンハイドロゲルは、これに含まれるシリコーン鎖が疎水性を示すため、装着感が良好でない、脂質がつきやすいという問題があった。これらを放置してそのまま継続使用した場合、眼精疲労、くもり、視力矯正力の低下、角膜に対する悪影響等が生じる恐れがある。
【0004】
斯様な背景の下、レンズ表面の親水性を向上させること、脂質等の汚れの付着を防止すること、或いは潤滑性を付与することなどを目的として、レンズ材料の改質技術が開発されている。例えば、特許文献1には、眼用レンズ表面に高周波プラズマ又はエキシマ光を照射し、親水性モノマー溶液を接触させた後、紫外線を照射して、親水性モノマーを眼用レンズ表面へ固定化(グラフト重合)させる技術が開示されている。また、特許文献2では、プラズマ重合反応により眼用レンズ表面を炭素被覆し、更に親水性モノマーをグラフト重合させることにより、レンズ表面を改質している。
【0005】
また、特許文献3では、特定の双性イオンモノマーを、シリコーンモノマーとともに塊状重合させることで、シリコーンハイドロゲルレンズ表面の親水性改善を図っている。
【0006】
その他、コンタクトレンズ表面の親水性改善のため、コンタクトレンズ用の洗浄液や保存液、コーティング剤が種々提案されている。例えば、コンタクトレンズ用洗浄液として、ノニオン性界面活性剤であるポリ(オキシエチレン)−ポリ(オキシプロピレン)ブロックコポリマー(ポロキサマーやポロキサミン)が、これまで広く使用されてきた(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−337298号公報
【特許文献2】特表2003−500507号公報
【特許文献3】日本国特許第4733471号明細書
【特許文献4】米国特許第6037328号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、プラズマ照射装置や紫外線照射装置などの整備が必要であり、製造工程数も増加するため、コスト増は不可欠である。また、このような表面改質工程ののちには未反応モノマーを除去するための洗浄工程も必要となる。この洗浄は、微生物繁殖に対する防御手段が不可欠で、細心の注意が必要である。よって、特許文献1及び2に記載の技術では、コスト上大きな問題となりうる。
また、特許文献3に記載の手法で改質されたレンズは、表面親水性や潤滑性、装用感の点で満足できるものではなかった。
さらに、特許文献4に記載のノニオン性界面活性剤は、レンズ表面を親水性化する性能、潤滑性を付与する性能については十分なものでなかった。また、脂質がレンズ表面に付着した後にこれを洗浄する性能を備えるものの、防汚性については不十分であった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、コンタクトレンズ材料などとして有用なゲルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、親水性モノマーを架橋剤と共に重合したポリマーに加えて、特定の重合体を含むゲルが、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、コンタクトレンズ材料などとして有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<14>を提供するものである。
【0012】
<1> 下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aと、親水性モノマーを架橋剤と共に重合したポリマーbと、を含むことを特徴とする、ゲル(以下、本発明のゲルとも称する)。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【0013】
<2> 前記重合体aの存在下で前記親水性モノマーを前記架橋剤と共に重合した、<1>に記載のゲル。
【0014】
<3> 前記繰り返し単位(A)が、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、下記式(3)で表される繰り返し単位(A−2)、下記式(4)で表される繰り返し単位(A−3)、下記式(5)で表される繰り返し単位(A−4)、下記式(6)で表される繰り返し単位(A−5)、下記式(7)で表されるベタイン性繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、及び下記式(8)で表されるカチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上である、<1>又は<2>に記載のゲル。
【0015】
【化1】
【0016】
〔式(3)中、
6は、水素原子又はメチル基を示し、
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
【0017】
【化2】
【0018】
〔式(4)中、
12は、水素原子又はメチル基を示し、
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0019】
【化3】
【0020】
〔式(5)中、
15は、水素原子又はメチル基を示し、
16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
【0021】
【化4】
【0022】
〔式(6)中、
18は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
【0023】
【化5】
【0024】
〔式(7)中、
Yは、−(C=O)O-、−(O=S=O)O-、−O(O=S=O)O-、−(S=O)O-、−O(S=O)O-、−OP(=O)(OR24)O-、−OP(=O)(R24)O-、−P(=O)(OR24)O-、又は−P(=O)(R24)O-を示し(R24は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
19は、水素原子又はメチル基を示し、
20及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【0025】
【化6】
【0026】
〔式(8)中、
25は、水素原子又はメチル基を示し、
26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR31−、*−NR31−(C=O)−(R31は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(8)中のR25が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
28、R29及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【0027】
<4> 前記繰り返し単位(A−1)が、下記式(2)で表されるものである、<3>に記載のゲル。
【0028】
【化7】
【0029】
〔式(2)中、
1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、
3は、水素原子又はメチル基を示し、
4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR5−、*−NR5−(C=O)−(R5は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(2)中のR3が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
nは、平均値で2〜100を示す。〕
【0030】
<5> 前記繰り返し単位(B)が、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基又は炭素数5〜30のアルカノイル基で構成される繰り返し単位である、<1>〜<4>のいずれかに記載のゲル。
【0031】
<6> 前記繰り返し単位(B)が、下記式(10)で表されるものである、<1>〜<4>のいずれかに記載のゲル。
【0032】
【化8】
【0033】
〔式(10)中、
32は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
33は、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基を示し、
34は、水素原子又はメチル基を示し、
35は、−O−、**−(C=O)−O−、**−(C=O)−NR36−、**−NR36−(C=O)−(R36は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、**は、式(10)中のR34が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
mは、平均値で2〜100を示す。〕
【0034】
<7> 前記重合体aが、下記式(11)で表される繰り返し単位(C−1)及び下記式(12)で表される基を側鎖の末端に有する繰り返し単位(C−2)から選ばれる1種以上の繰り返し単位(C):60質量%以下を更に有する、<1>〜<6>のいずれかに記載のゲル。
【0035】
【化9】
【0036】
〔式(11)中、
37は、水素原子又はメチル基を示し、
38は、−O−、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR40−、***−NR40−(C=O)−(R40は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、***は、式(11)中のR37が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
39は、炭素数4〜30の炭化水素基を示す。〕
【0037】
【化10】
【0038】
〔式(12)中、
41は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
42及びR43は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の有機基を示し、
44、R45及びR46は、それぞれ独立して、−OSi(R493(R49は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の有機基を示す)又は炭素数1〜10の有機基を示し、
rは、平均値で0〜200を示す。〕
【0039】
<8> 前記重合体aが、非網目状の重合体である、<1>〜<7>のいずれかに記載のゲル。
【0040】
<9> 前記重合体aを0.01〜40質量%含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載のゲル。
【0041】
<10> 更に、シリコーン化合物を含有する、<1>〜<9>のいずれかに記載のゲル。
【0042】
<11> 前記ポリマーbが、重合性官能基を有するシリコーン化合物を、前記親水性モノマー及び前記架橋剤と共に重合したものである、<1>〜<9>のいずれかに記載のゲル。
【0043】
<12> ポリマーを含むゲルの製造方法であって、下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aの存在下で、親水性モノマーを架橋剤と共に重合してポリマーとすることを特徴とする、ゲルの製造方法(以下、本発明のゲルの製造方法とも称する)。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【0044】
<13> <1>〜<11>のいずれかに記載のゲルを含むことを特徴とする、レンズ(以下、本発明のレンズとも称する)。
【0045】
<14> コンタクトレンズである、<13>に記載のレンズ。
【0046】
<15> 下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aを含有することを特徴とする、コンタクトレンズ表面改質剤(以下、本発明のコンタクトレンズ表面改質剤とも称する)。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【0047】
<16> 下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体aと、親水性モノマーと、架橋剤と、を含むことを特徴とする、重合性組成物(以下、本発明の重合性組成物とも称する)。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【0048】
<17> 下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有することを特徴とする、重合体(以下、本発明の重合体とも称するが、重合体aと同義である)。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
【発明の効果】
【0049】
本発明のゲルは、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、しかもこれら各特性の持続性も高い。したがって、本発明のゲルは、コンタクトレンズ材料などとして有用である。
また、本発明のゲルの製造方法によれば、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れるゲルを簡便に且つ低コストで製造できる。
また、本発明のレンズは、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、しかもこれら各特性の持続性も高い。
また、本発明の重合体、コンタクトレンズ表面改質剤を用いることにより、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、しかもこれら各特性の持続性も高いレンズが得られる。
また、本発明の重合性組成物を用いることにより、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、しかもこれら各特性の持続性も高いゲルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
〔ゲル〕
本発明のゲルは、下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有する重合体a(以下、単に重合体aとも称する)と、親水性モノマーを架橋剤と共に重合したポリマーb(以下、単にポリマーbとも称する)と、を含むことを特徴とするものである。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
なお、本明細書における物を製法で特定する記載は、不可能・非実際的事情が存在することによるものである。
【0051】
<重合体a>
本発明のゲルに使用される重合体aは、上記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と上記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有するものである。斯かる重合体aは、コンタクトレンズ表面等を改質する改質剤として作用し、コンタクトレンズ表面改質用重合体、コンタクトレンズ表面改質剤等として有用である。
【0052】
(繰り返し単位(A))
繰り返し単位(A)は、親水性繰り返し単位であればよいが、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基で構成される繰り返し単位(A−1)、下記式(3)で表される繰り返し単位(A−2)、下記式(4)で表される繰り返し単位(A−3)、下記式(5)で表される繰り返し単位(A−4)、下記式(6)で表される繰り返し単位(A−5)、下記式(7)で表されるベタイン性繰り返し単位(A−6)、アニオン性繰り返し単位(A−7)、及び下記式(8)で表されるカチオン性繰り返し単位(A−8)から選ばれる1種以上であるのが好ましい。
なお、本明細書において、親水性とは、水との親和力が強い性質を持つことを意味する。具体的には1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万程度のもの)とした場合に、常温(25℃)において純水100gに対して1g以上溶解する場合にはその繰り返し単位は親水性である。
【0053】
【化11】
【0054】
〔式(3)中、
6は、水素原子又はメチル基を示し、
7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
【0055】
【化12】
【0056】
〔式(4)中、
12は、水素原子又はメチル基を示し、
13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0057】
【化13】
【0058】
〔式(5)中、
15は、水素原子又はメチル基を示し、
16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
【0059】
【化14】
【0060】
〔式(6)中、
18は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
【0061】
【化15】
【0062】
〔式(7)中、
Yは、−(C=O)O-、−(O=S=O)O-、−O(O=S=O)O-、−(S=O)O-、−O(S=O)O-、−OP(=O)(OR24)O-、−OP(=O)(R24)O-、−P(=O)(OR24)O-、又は−P(=O)(R24)O-を示し(R24は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
19は、水素原子又はメチル基を示し、
20及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【0063】
【化16】
【0064】
〔式(8)中、
25は、水素原子又はメチル基を示し、
26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR31−、*−NR31−(C=O)−(R31は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(8)中のR25が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
28、R29及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
【0065】
(繰り返し単位(A−1))
繰り返し単位(A−1)は、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基で構成されるものである。
繰り返し単位(A−1)としては、下記式(1)で表される構造を側鎖に含む繰り返し単位が挙げられる。式(1)で表される構造を側鎖中に有する繰り返し単位となるポリマー種としては公知のものを用いることができ、中でも、(メタ)アクリレート系のポリマー種、(メタ)アクリルアミド系のポリマー種、スチレン系のポリマー種等が好ましい。これらの中でも、下記式(2)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0066】
【化17】
【0067】
〔式(1)中、
1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、
nは、平均値で2〜100を示す。〕
【0068】
【化18】
【0069】
〔式(2)中、
3は、水素原子又はメチル基を示し、
4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR5−、*−NR5−(C=O)−(R5は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(2)中のR3が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
その他の記号は式(1)中の記号と同義である。〕
【0070】
ここで、式(1)及び(2)中の各記号について説明する。
1は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、n個のR1は同一でも異なっていてもよい。
1で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
また、R1で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、親水性化性能等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
【0071】
また、R2は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。R2で示されるアルキル基の炭素数は、入手容易性、親水性化性能等の観点から、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。また、R2で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
斯様なR2の中でも、入手容易性、親水性化性能等の観点から、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0072】
また、R4は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR5−、*−NR5−(C=O)−又はフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0073】
また、上記R5で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0074】
上記R5における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0075】
上述のようなR4の中でも、親水性化性能等の観点から、*−(C=O)−O−、フェニレン基が好ましく、*−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0076】
nは、平均値で2〜100を示すが、好ましくは平均値で4〜90であり、より好ましくは平均値で8〜90であり、更に好ましくは平均値で8〜60であり、更に好ましくは平均値で8〜40であり、特に好ましくは平均値で9〜25である。
なお、本明細書における各「平均値」はNMRで測定できる。例えば、上記式(2)の構造について、1H−NMRを測定し、R1の炭素数2〜4のアルカンジイル基と、R2の炭素数1〜4のアルキル基の末端のメチル基との、それぞれのプロトンピークの積分値を比較することで、nの平均値を算出可能である。
【0077】
斯様な繰り返し単位(A−1)を誘導するモノマーとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、繰り返し単位(A−1)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。これらの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0078】
(繰り返し単位(A−2))
繰り返し単位(A−2)は、上記式(3)で表されるものである。
式(3)中、R7は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示す。なお、R7が複数ある場合、R7は同一でも異なっていてもよい。
また、R7で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
また、R7で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、親水性化性能等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
【0079】
また、R8は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示す。
8で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは2又は3であり、特に好ましくは2である。
また、R8で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、上記R7で示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
【0080】
また、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示すが、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。斯かる炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
また、上記炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。
上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0081】
また、qは、平均値で1〜10を示すが、好ましくは平均値で1〜7であり、より好ましくは平均値で1〜4であり、更に好ましくは1である。
【0082】
なお、繰り返し単位(A−2)は、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、水酸化物イオン等の対イオンを有していてもよい。
【0083】
斯様な繰り返し単位(A−2)を誘導するモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられ、繰り返し単位(A−2)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0084】
(繰り返し単位(A−3))
繰り返し単位(A−3)は、上記式(4)で表されるものである。
式(4)中、R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。
【0085】
13、R14で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。
また、上記R13、R14で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
【0086】
また、R13、R14で示されるヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、ヒドロキシアルキル基の好適な具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基が挙げられる。なお、ヒドロキシアルキル基におけるヒドロキシ基の置換位置は任意である。
【0087】
斯様な繰り返し単位(A−3)を誘導するモノマーとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、繰り返し単位(A−3)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0088】
(繰り返し単位(A−4))
繰り返し単位(A−4)は、上記式(5)で表されるものである。
式(5)中、R16及びR17は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。斯かるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜2である。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基が挙げられる。
【0089】
斯様な繰り返し単位(A−4)を誘導するモノマーとしては、4−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0090】
(繰り返し単位(A−5))
繰り返し単位(A−5)は、上記式(6)で表されるものである。
式(6)中、R18は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。斯かるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは3〜5である。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基が挙げられる。
【0091】
斯様な繰り返し単位(A−5)を誘導するモノマーとしては、1−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が挙げられ、繰り返し単位(A−5)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0092】
(繰り返し単位(A−6))
繰り返し単位(A−6)は、上記式(7)で表されるベタイン性繰り返し単位である。
式(7)中、Yとしては、−(C=O)O-が好ましい。なお、R24で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、式(7)中、R20及びR21は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
また、上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0093】
また、式(7)中、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。当該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
22及びR23で示される炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0094】
なお、繰り返し単位(A−6)は、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、水酸化物イオン等の対イオンを有していてもよい。
【0095】
斯様な繰り返し単位(A−6)を誘導するモノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−プロピルスルホベタイン等の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられ、繰り返し単位(A−6)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0096】
(繰り返し単位(A−7))
繰り返し単位(A−7)は、アニオン性繰り返し単位である。
繰り返し単位(A−7)としては、酸性基を有する繰り返し単位が挙げられる。
また、繰り返し単位(A−7)としては、導入の容易さ、安全性の観点から、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーに由来する単位が好ましい。
また、酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基又はこれらの塩などが挙げられ、これらを1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。なお、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0097】
繰り返し単位(A−7)を誘導するモノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその塩;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸又はその塩;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基含有重合性不飽和モノマー又はその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー又はその塩が挙げられる。また、繰り返し単位(A−7)を誘導するモノマーは、アクリル酸エステルの加水分解物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸の酸無水物の加水分解物;グリシジルメタクリレートや(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル等のエポキシ基への酸性基含有チオールの付加物などを用いて得ることもできる。繰り返し単位(A−7)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
これらの中でも、導入の容易さ、反応性の観点から、アクリル酸、メタアクリル酸が好ましい。
【0098】
(繰り返し単位(A−8))
繰り返し単位(A−8)は、上記式(8)で表されるカチオン性繰り返し単位である。
式(8)中、R26は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR31−、*−NR31−(C=O)−又はフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0099】
また、上記R31で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0100】
上記R31における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0101】
式(8)中、R27は、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
また、上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0102】
式(8)中、R28、R29及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。当該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
28、R29及びR30で示される炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
なお、繰り返し単位(A−8)は対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲノイオン;硫酸水素イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン;アルキルスルホン酸イオン;ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン等のアリールスルホン酸イオン;2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム等のアルケニルスルホン酸イオン;酢酸イオン等のカルボン酸イオン等が挙げられる。
【0103】
繰り返し単位(A−8)を誘導するモノマーのモノマー種の好適な具体例としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
(メタ)アクリレート類のモノマー種としては、((メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド等の((メタ)アクリロイルオキシC1-10アルキル)トリC1-10アルキルアンモニウムクロライド、((メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の((メタ)アクリロイルオキシC1-10アルキル)ジC1-10アルキルC6-10アラルキルアンモニウムクロライドが挙げられる。(メタ)アクリルアミド類のモノマー種としては、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド等の(3−(メタ)アクリルアミドC1-10アルキル)トリC1-10アルキルアンモニウムクロリド、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド等の(3−(メタ)アクリルアミドC1-10アルキル)ジC1-10アルキルC6-10アラルキルアンモニウムクロリド等が挙げられる。繰り返し単位(A−8)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
これらの中でも、導入の容易さ、反応性の観点から、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0104】
これら繰り返し単位(A−1)〜(A−8)の中でも、親水性化性能、防汚性付与効果及び潤滑性付与効果の観点から、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−3)、繰り返し単位(A−4)、繰り返し単位(A−6)、繰り返し単位(A−7)が好ましく、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−3)、繰り返し単位(A−6)、繰り返し単位(A−7)がより好ましい。中でも、繰り返し単位(A)としては、親水性化性能及び潤滑性付与効果の観点からは、以下の(i)〜(ii)が好ましく、(ii)が特に好ましい。
(i) 繰り返し単位(A−1)及び(A−3)から選ばれる1種以上、好ましくは繰り返し単位(A−3)
(ii) 繰り返し単位(A−1)及び(A−3)から選ばれる1種以上と、繰り返し単位(A−6)及び(A−7)から選ばれる1種以上との組み合わせ、好ましくは繰り返し単位(A−3)と、繰り返し単位(A−6)及び(A−7)から選ばれる1種以上との組み合わせ
【0105】
また、繰り返し単位(A)の合計含有量は、重合体aの全繰り返し単位に対して、2.5〜95質量%であるが、親水性化性能、防汚性付与効果及び潤滑性付与効果の観点から、5〜95質量%が好ましく、20〜95質量%がより好ましく、30〜95質量%が更に好ましく、40〜90質量%が更に好ましい。
また、繰り返し単位(A−1)及び(A−3)から選ばれる1種以上と、繰り返し単位(A−6)及び(A−7)から選ばれる1種以上とを組み合わせて用いる場合、これらの含有量の比率は、ゲルの透明性等の観点から、質量比で、好ましくは60:40〜99.9:0.1であり、より好ましくは75:25〜99:1であり、更に好ましくは80:20〜99:1であり、特に好ましくは85:15〜99:1である。
なお、繰り返し単位(A)の含有量は1H−NMR、13C−NMR等により測定可能である。
【0106】
(繰り返し単位(B))
繰り返し単位(B)は、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位であり、重合体aは、繰り返し単位(B)に該当する繰り返し単位を1種又は2種以上有していてよい。なお、繰り返し単位(B)は親水性繰り返し単位でないものが好ましい。また、上記炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、アリール基の中では、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基が好ましい。
上記アルキル基、アルカノイル基の炭素数は、入手容易性等の観点から、好ましくは6〜25であり、より好ましくは7〜20であり、更に好ましくは8〜18であり、更に好ましくは9〜16であり、特に好ましくは10〜14である。また、アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。これらの中でも、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましく、ラウリル基、ステアリル基がより好ましい。また、アルカノイル基としては、2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基が挙げられる。
また、上記アリール基の炭素数は、好ましくは6〜12である。具体的には、フェニル基が挙げられる。また、上記アリール基は、炭素数1〜30のアルキル基を置換基として有していてもよい。斯かるアルキル基の炭素数としては、3〜24が好ましく、5〜16がより好ましい。なお、斯かる置換アルキル基の置換位置及び置換個数は任意であるが、好適な置換個数は1又は2個である。また、斯様な炭素数1〜30のアルキル基を置換基として有するアリール基としては、ノニルフェニル基が挙げられる。
【0107】
また、繰り返し単位(B)としては、下記式(9)で表される構造を側鎖に含む繰り返し単位が挙げられる。式(9)で表される構造を側鎖中に有する繰り返し単位となるポリマー種としては公知のものを用いることができ、中でも、(メタ)アクリレート系のポリマー種、(メタ)アクリルアミド系のポリマー種、スチレン系のポリマー種等が好ましい。これらの中でも、下記式(10)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0108】
【化19】
【0109】
〔式(9)中、
32は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
33は、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基を示し、
mは、平均値で2〜100を示す。〕
【0110】
【化20】
【0111】
〔式(10)中、
34は、水素原子又はメチル基を示し、
35は、−O−、**−(C=O)−O−、**−(C=O)−NR36−、**−NR36−(C=O)−(R36は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、**は、式(10)中のR34が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
その他の記号は式(9)中の記号と同義である。〕
【0112】
ここで、式(9)及び(10)中の各記号について説明する。
32は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示す。R32で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2又は3であり、より好ましくは2である。
また、R32で示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
なお、m個のR32は同一でも異なっていてもよい。
【0113】
また、R33は、炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基を示す。
33で示されるアルキル基、アルカノイル基の炭素数は、入手容易性等の観点から、好ましくは6〜25であり、より好ましくは7〜20であり、更に好ましくは8〜18であり、更に好ましくは9〜16であり、特に好ましくは10〜14である。
また、R33で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。これらの中でも、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましく、ラウリル基、ステアリル基がより好ましい。
また、R33で示されるアルカノイル基としては、2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基が挙げられる。
【0114】
また、R33で示されるアリール基の炭素数は、好ましくは6〜12である。具体的には、フェニル基が挙げられる。
また、上記アリール基は、炭素数1〜30のアルキル基を置換基として有していてもよい。斯かるアルキル基の炭素数としては、3〜24が好ましく、5〜16がより好ましい。なお、斯かる置換アルキル基の置換位置及び置換個数は任意であるが、好適な置換個数は1又は2個である。
また、斯様な炭素数1〜30のアルキル基を置換基として有するアリール基としては、ノニルフェニル基が挙げられる。
【0115】
上述のようなR33の中でも、入手容易性等の観点から、炭素数5〜30のアルキル基、アリール基が好ましく、炭素数5〜30のアルキル基がより好ましい。
【0116】
また、R35は、−O−、**−(C=O)−O−、**−(C=O)−NR36−、**−NR36−(C=O)−又はフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0117】
また、R36で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0118】
上記R36における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0119】
上述のようなR35の中でも、**−(C=O)−O−、フェニレン基が好ましく、**−(C=O)−O−が特に好ましい。
【0120】
mは、平均値で2〜100を示すが、好ましくは平均値で2〜90であり、より好ましくは平均値で4〜90であり、更に好ましくは平均値で9〜60であり、特に好ましくは平均値で10〜40である。
【0121】
斯様な繰り返し単位(B)を誘導するモノマーとしては、2−エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコールポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレンレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、繰り返し単位(B)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。これらの中でも、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0122】
また、繰り返し単位(B)の合計含有量は、重合体aの全繰り返し単位に対して、2.5〜95質量%であるが、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果及び透明性等の観点から、5〜95質量%が好ましく、5〜80質量%がより好ましく、10〜70質量%が更に好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
なお、繰り返し単位(B)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0123】
(繰り返し単位(C))
本発明で用いる重合体aとしては、下記式(11)で表される繰り返し単位(C−1)及び下記式(12)で表される基を側鎖の末端に有する繰り返し単位(C−2)から選ばれる1種以上の繰り返し単位(C)を有するものが好ましい。重合体aが、斯様な繰り返し単位(C)を備えることにより、ゲルの表面親水性、潤滑性及び防汚性が改善する。
【0124】
【化21】
【0125】
〔式(11)中、
37は、水素原子又はメチル基を示し、
38は、−O−、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR40−、***−NR40−(C=O)−(R40は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、***は、式(11)中のR37が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
39は、炭素数4〜30の炭化水素基を示す。〕
【0126】
【化22】
【0127】
〔式(12)中、
41は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
42及びR43は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の有機基を示し、
44、R45及びR46は、それぞれ独立して、−OSi(R493(R49は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の有機基を示す)又は炭素数1〜10の有機基を示し、
rは、平均値で0〜200を示す。〕
【0128】
(繰り返し単位(C−1))
繰り返し単位(C−1)は、上記式(11)で表されるものである。
【0129】
38は、−O−、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR40−、***−NR40−(C=O)−又はフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
【0130】
また、R40で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。
【0131】
上記R40における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0132】
上述のようなR38の中でも、親水性化性能、防汚性付与効果及び潤滑性付与効果等の観点から、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR40−、フェニレン基が好ましく、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NR40−がより好ましく、***−(C=O)−O−、***−(C=O)−NH−が更に好ましく、***−(C=O)−NH−が特に好ましい。
【0133】
また、R39は、炭素数4〜30の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、環構造を含んでいてもよいが、好ましくはアルキル基である。
また、上記炭化水素基の炭素数は、親水性化性能、防汚性付与効果及び潤滑性付与効果等の観点から、好ましくは6〜24であり、より好ましくは8〜18であり、更に好ましくは8〜14であり、特に好ましくは10〜14である。
上記アルキル基としては、例えば、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、防汚性付与効果等の観点から、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基が好ましく、2−エチルヘキシル基、ラウリル基がより好ましい。
【0134】
斯様な繰り返し単位(C−1)を誘導するモノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、繰り返し単位(C−1)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0135】
(繰り返し単位(C−2))
上記式(12)で表される基を側鎖の末端に有する繰り返し単位となるポリマー種としては公知のものを用いることができ、中でも、(メタ)アクリレート系のポリマー種、(メタ)アクリルアミド系のポリマー種、スチレン系のポリマー種等が好ましい。これらの中でも、下記式(13)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0136】
【化23】
【0137】
〔式(13)中、
47は、水素原子又はメチル基を示し、
48は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR50−、*−NR50−(C=O)−(R50は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(13)中のR47が結合している炭素原子と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
その他の記号は式(12)中の記号と同義である。〕
【0138】
ここで、式(12)及び(13)中の各記号について説明する。
41は、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは2〜8であり、より好ましくは2〜6であり、更に好ましくは2〜4である。
上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が挙げられる。2価の炭化水素基は、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、より好ましくはアルカンジイル基である。斯かるアルカンジイル基の好適な具体例としては、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。
【0139】
また、R42及びR43は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の有機基を示す。なお、R42、R43が複数ある場合、R42は同一でも異なっていてもよく、R43も同一でも異なっていてもよい。
また、上記有機基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは1又は2である。
上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、好ましくはアルキル基である。斯かるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0140】
44、R45及びR46は、それぞれ独立して、−OSi(R493又は炭素数1〜10の有機基を示し、R49は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜8の有機基を示す。
上記R44、R45及びR46で示される有機基、R49で示される有機基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは1又は2である。また、R44、R45及びR46で示される有機基、R49で示される有機基としては、R42で示される有機基と同様のものが挙げられる。
【0141】
また、R44、R45及びR46の中では、親水性化性能の観点から、−OSi(R493が好ましい。また、R49の中では、親水性化性能の観点から、炭素数1〜8の有機基が好ましい。
【0142】
rは、平均値で0〜200を示すが、親水性化性能の観点から、平均値で0〜100が好ましく、平均値で0〜50がより好ましく、平均値で0〜25が更に好ましく、平均値で0〜10が特に好ましい。
なお、R48は上記R38と、R50は上記R40と、それぞれ同様である。
【0143】
これら繰り返し単位(C−1)〜(C−2)の中でも、親水性化性能、防汚性付与効果及び潤滑性付与効果の観点から、式(11)で表される繰り返し単位(C−1)のうちR38が***−(C=O)−NH−の繰り返し単位、式(13)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0144】
斯様な繰り返し単位(C−2)を誘導するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル、(メタ)アクリル酸3−[ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリル]プロピル、シリコーン(メタ)アクリレート(X−22−2475(信越シリコーン社製)、FM−0711(JNC社製)等)等が挙げられ、繰り返し単位(C−2)は、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
【0145】
また、繰り返し単位(C)の合計含有量は、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果及び透明性等の観点から、重合体aの全繰り返し単位に対して、60質量%以下が好ましく、0.1〜50質量%がより好ましく、0.5〜45質量%が更に好ましく、0.5〜40質量%が更に好ましく、0.5〜35質量%が更に好ましく、0.5〜30質量%が更に好ましく、1〜20質量%が更に好ましく、1〜15質量%が更に好ましく、1.5〜15質量%が更に好ましく、1.5〜10質量%が特に好ましい。
なお、繰り返し単位(C)の含有量は、繰り返し単位(A)の含有量と同様にして測定すればよい。
【0146】
また、本発明で用いる重合体aに含まれる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との質量比〔(A):(B)〕としては、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果及び透明性等の観点から、20:80〜95:5が好ましく、30:70〜95:5がより好ましく、40:60〜90:10が更に好ましく、50:50〜90:10が更に好ましく、55:45〜90:10が特に好ましい。
【0147】
また、本発明で用いる重合体aが繰り返し単位(C)を有する場合、質量比〔((A)+(B)):(C)〕としては、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果及び透明性等の観点から、60:40〜99:1が好ましく、70:30〜99:1がより好ましく、75:25〜99:1が更に好ましく、80:20〜98.5:1.5が更に好ましく、85:15〜98.5:1.5が特に好ましい。
また、質量比〔(A):(B)〕が上記質量比〔(A):(B)〕の範囲であり、且つ質量比〔((A)+(B)):(C)〕が上記質量比〔((A)+(B)):(C)〕の範囲であることが特に好ましい。
【0148】
また、本発明で用いる重合体aは共重合体であればよく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
また、重合体aとしては、親水性化性能、防汚性付与効果及び潤滑性付与等の効果の観点から、非網目状の重合体が好ましく、線状又は櫛型の重合体がより好ましい。重合体aがこのような分子構造をもつ場合、ポリマーbの相互網目構造間に重合体a(改質剤)が抱え込まれやすくなり、表面親水性、潤滑性及び防汚性等が更に改善される。なお、線状の重合体とは、線状の分子構造をもつポリマーをいい、長い直鎖状の主鎖とそれに結合した比較的短い側鎖とから構成される構造をもつポリマーを含む概念である。また、櫛型の重合体とは、櫛型の分子構造をもつポリマーをいい、長い直鎖状の主鎖とそれに結合した比較的長い側鎖とから構成される構造をもつポリマーをいう。
【0149】
また、本発明で用いる重合体aの重量平均分子量(Mw)としては、1万〜1000万が好ましく、1万〜500万がより好ましく、1万〜300万が更に好ましく、1万〜200万が特に好ましい。重量平均分子量を斯様な範囲にすることにより、ハンドリング性が向上する。
また、本発明で用いる重合体aの数平均分子量(Mn)としては、1万〜1000万が好ましく、1万〜500万がより好ましく、1万〜300万が更に好ましく、1万〜200万が更に好ましく、1万〜50万が特に好ましい。
また、分子量分布(Mw/Mn)としては、1〜10が好ましく、1〜7がより好ましく、1〜5が特に好ましい。
なお、上記重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布は、後述する実施例に記載の方法に従い測定すればよい。
【0150】
本発明で用いる重合体aは、水溶性でも非水溶性でもよい。なお、本明細書において、水溶性とは、0.5質量%のポリマー固形分となるように重合体を水(25℃)に添加、混合したときに、目視で透明になることをいう。
【0151】
また、重合体aのHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)としては、5〜25が好ましく、8〜23がより好ましく、10〜22が特に好ましい。
本明細書において、HLBは、化合物の有機性の値と無機性の値の比率から算出されるもの(小田式)を意味し、「Formulation Design with Organic Conception Diagram」[1998年、NIHON EMULSION CO.,LTD]に記載の計算方法により算出できる。
【0152】
また、本発明で用いる重合体aは、例えば、各繰り返し単位を誘導するモノマーを混合し、この混合物を、必要に応じて、水、アセトニトリル、エクアミドB−100(出光興産社製)t−ブチルアルコール等の溶媒に溶解させ、重合開始剤を加えてラジカル重合することにより得ることができる。
上記ラジカル重合を行う際に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソジメチルバレロニトリル、過硫酸塩、過硫酸塩一亜硫酸水素塩系等が挙げられる。
また、重合開始剤の仕込み量は、モノマー成分100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。また、重合温度は20〜100℃が好ましく、重合時間は0.5〜48時間が好ましい。
【0153】
重合体a(改質剤)の含有量は、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果、透明性及び酸素透過性等の観点から、ゲル全量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、透明性や適度な硬さとする観点から、ゲル全量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0154】
<ポリマーb>
本発明のゲルは、ポリマーbを含むものである。本発明のゲルに使用されるポリマーbは、親水性モノマー(以下、親水性モノマーcとも称する)を架橋剤(以下、架橋剤dとも称する)と共に重合したものである。
ポリマーbの含有量は、力学的強度、透明性、酸素透過性等の観点から、ゲル全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、また、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果等の観点から、ゲル全量に対して、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下、特に好ましくは99質量%以下である。
【0155】
(親水性モノマーc)
親水性モノマーcは、重合性官能基を有する親水性の化合物であれば特に限定されるものではないが、重合性官能基を1個有する親水性の化合物が好ましい。重合性官能基としては、重合性不飽和結合が好ましい。
【0156】
親水性モノマーcの具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、ビニル安息香酸などの重合性官能基を有するカルボン酸類;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート類;N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロリルピロリドン、N−(メタ)アクリロリルオキシエチルピロリドン、1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−i−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−i−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−n−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−t−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドンなどの重合性官能基を有するピロリドン類;N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドンなどのN−ビニルピペリドン類;N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタムなどのN−ビニルラクタム類;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピペリジン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルフタルイミド、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどのその他の親水性モノマー等が挙げられる。
これら親水性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0157】
これら親水性モノマーの中でも、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果、ゲルやレンズの機械的特性及び保存安定性の観点から、水酸基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が好ましい。
なお、重合性基がメチレン基であるピロリドン誘導体や、窒素置換された(メタ)アクリルアミド類は、ゲルやレンズに本発明の所望の効果を付与でき、後述するシリコーン化合物gとの相溶性も高い。また、酢酸ビニルは酸や塩基によって加水分解を受けるため、このような親水性モノマーを使用した場合、ゲルやレンズを製造した後に酸や塩基で処理することで、ゲルやレンズにさらなる柔軟性及び表面親水性を付与できる。
【0158】
(架橋剤d)
架橋剤dは、重合性官能基を2個以上有するものであればよい。また、重合性官能基としては、重合性不飽和結合が好ましい。
架橋剤dの具体例としては、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)ベンゼン等の重合性官能基を2個有する架橋剤;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の重合性官能基を3個有する架橋剤などが挙げられる。
これら架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0159】
ポリマーbを得る際の架橋剤dの使用量は、親水性モノマーc 100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは5〜15質量部である。
【0160】
ポリマーbは、親水性モノマーcを架橋剤dと共に重合することで合成できる。斯かる重合は常法を適宜組み合わせて行えばよいが、重合体aの存在下で行うのが好ましい。このようにしてポリマーbを合成することにより、ゲル中で、ポリマーbの相互網目構造間に重合体a(改質剤)が抱え込まれるような状態となり、表面親水性、潤滑性及び防汚性が改善されたゲルが調製される。
【0161】
(重合性官能基を有するシリコーン化合物e)
また、ポリマーbは、重合性官能基を有するシリコーン化合物(以下、重合性官能基を有するシリコーン化合物eとも称する)を、親水性モノマーc及び架橋剤dと共に重合したものが好ましい。これにより、得られるゲルやレンズに高い酸素透過性及び柔軟性が付与される。なお、重合性官能基を有するシリコーン化合物eにおける重合性官能基としては、重合性不飽和結合が好ましい。
【0162】
重合性官能基を有するシリコーン化合物eとしては、シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート化合物、シリコーン含有スチレン化合物、シリコーン含有フマル酸ジエステル化合物、ウレタン結合を介してエチレン性不飽和基及びシリコーン構造を有する化合物が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0163】
シリコーン含有アルキル(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチルシロキシジメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチルテトラメチルジシロキシプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシジメチルシリルプロピルグリセリル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルエチルテトラメチルジシロキシメチル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、テトラメチルトリイソプロピルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0164】
シリコーン含有スチレン化合物としては、例えば、下記式(14)で表される化合物などが挙げられる。
【0165】
【化24】
【0166】
〔式(14)中、
p及びsは、それぞれ独立して、1〜15の整数を示し、
tは、0又は1を示す。〕
【0167】
シリコーン含有スチレン化合物の具体例としては、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシジメチルシリルスチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシロキシ]ジメチルシリルスチレン、(トリメチルシロキシ)ジメチルシリルスチレン、ヘプタメチルトリシロキサニルスチレン、ノナメチルテトラシロキサニルスチレン、ペンタデカメチルヘプタシロキサニルスチレン、ヘンエイコサメチルデカシロキサニルスチレン、ヘプタコサメチルトリデカシロキサニルスチレン、ヘントリアコンタメチルペンタデカシロキサニルスチレン、トリメチルシロキシペンタメチルジシロキシメチルシリルスチレン、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シリルスチレン、トリス(トリメチルシロキシ)シロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、ビス(ヘプタメチルトリシロキシ)メチルシリルスチレン、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、トリメチルシロキシビス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、ヘプタキス(トリメチルシロキシ)トリシリルスチレン、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシメチルシリルスチレン、トリス[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シリルスチレン、(トリストリメチルシロキシヘキサメチル)テトラシロキシ[トリス(トリメチルシロキシ)シロキシ]トリメチルシロキシシリルスチレン、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシリルスチレン、ビス(トリデカメチルヘキサシロキシ)メチルシリルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、ヘプタメチルシクロテトラシロキシビス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、トリプロピルテトラメチルシクロテトラシロキサニルスチレン、トリメチルシリルスチレンなどが挙げられる。
【0168】
シリコーン含有フマル酸ジエステル化合物としては、例えば、下記式(15)で表される化合物などが挙げられる。
【0169】
【化25】
【0170】
〔式(15)中、
51〜R56は、それぞれ独立して、メチル基又はトリメチルシロキシ基を示し、
a及びbは、それぞれ独立して、1〜10の整数を示す。〕
【0171】
シリコーン含有フマル酸ジエステル化合物の具体例としては、ビス(3−(トリメチルシリル)プロピル)フマレート、ビス(3−(ペンタメチルジシロキサニル)プロピル)フマレート、ビス(トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル)フマレートなどが挙げられる。
【0172】
ウレタン結合を介してエチレン性不飽和基及びシリコーン構造を有する化合物としては、下記式(16)で表されるポリシロキサンマクロモノマーが挙げられる。
なお、ウレタン結合を介してエチレン性不飽和基及びシリコーン構造を有する化合物は、ウレタン結合及びシロキサン部分を備えることにより、得られるゲルやレンズに、柔軟性、弾力的反発性、酸素透過性を付与するものであり、それと同時に、機械的強度を向上させる作用も有する。すなわち、かかるシリコーン化合物は、分子の両末端に重合性官能基であるエチレン性不飽和基を有し、この重合性官能基を介して他の共重合成分と共重合されるので、得られる分子の架橋による物理的な強化だけでなく、化学的結合による補強効果をゲルやレンズに付与できる。
【0173】
1−U1−(S1−U2j−S2−U3−A2 (16)
【0174】
〔式(16)中、
1は、下記式(17)で表される基を示し、
2は、下記式(18)で表される基を示し、
1は、下記式(19)で表される基を示し、
1及びS2は、それぞれ独立して、下記式(20)で表される基を示し、
2は、下記式(21)で表される基を示し、
3は、下記式(22)で表される基を示し、
jは、0〜10の整数を示す。〕
【0175】
21−Z21−R57− (17)
【0176】
〔式(17)中、
21は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基を示し、
21は、単結合又は酸素原子を示し、
57は、単結合、又は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。〕
【0177】
−R58−Z22−Y22 (18)
【0178】
〔式(18)中、
22は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基を示し、
22は、単結合又は酸素原子を示し、
58は、単結合、又は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示す。〕
【0179】
−X21−E21−X25−R59− (19)
【0180】
〔式(19)中、
21及びX25は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を示し、
21は、−(NH)−(C=O)−(但し、この場合、X21は単結合であり、且つX25は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE21はX25とウレタン結合を形成している。)、−(C=O)−(NH)−(但し、この場合、X21は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基であり、且つX25は単結合である。すなわち、この場合はE21はX21とウレタン結合を形成している。)、又はジイソシアネート由来の2価の基(但し、この場合、X21及びX25は、それぞれ独立して、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE21はX21及びX25の間で2つのウレタン結合を形成している。)を示し、
59は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示す。〕
【0181】
【化26】
【0182】
〔式(20)中、
60〜R65は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基、又はフェニル基を示し、
Kは、10〜100の整数を示し、
Lは、0〜90の整数を示す。
但し、K+Lは、10〜100の整数である。〕
【0183】
−R66−X27−E24−X28−R67− (21)
【0184】
〔式(21)中、
66及びR67は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
27及びX28は、それぞれ独立して、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を示し、
24は、ジイソシアネート由来の2価の基を示す。なお、E24はX27及びX28の間で2つのウレタン結合を形成している。〕
【0185】
−R68−X26−E22−X22− (22)
【0186】
〔式(22)中、
68は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示し、
22及びX26は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を示し、
22は、−(NH)−(C=O)−(但し、この場合、X22は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基であり、且つX26は単結合である。すなわち、この場合はE22はX22とウレタン結合を形成している。)、−(C=O)−(NH)−(但し、この場合、X22は単結合であり、且つX26は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE22はX26とウレタン結合を形成している。)、又はジイソシアネート由来の2価の基(但し、この場合、X22及びX26は、それぞれ独立して、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE22はX22及びX26の間で2つのウレタン結合を形成している。)を示す。〕
【0187】
ここで、式(16)〜(22)中の各記号について説明する。
【0188】
式(16)中、jは0〜10の整数を示すが、親水性モノマーcとの相溶性を良好にし透明性に優れたものとする観点からは、好ましくは0〜5の整数である。
【0189】
式(17)中のY21及び式(18)中のY22は、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基を示すが、親水性モノマーcと容易に共重合しうるという点で、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0190】
式(17)中のZ21及び式(18)中のZ22は、それぞれ独立して、単結合又は酸素原子を示すが、好ましくは酸素原子である。
【0191】
式(17)中のR57及び式(18)中のR58は、それぞれ独立して、単結合、又は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を示すが、炭素数1〜12の2価の炭化水素基が好ましい。斯かる2価の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、また、芳香環を有していてもよいが、好ましくは2価の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルカンジイル基である。また、2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2〜4である。具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。
【0192】
式(19)中のE21及び式(22)中のE22は、それぞれ独立して、−(NH)−(C=O)−、−(C=O)−(NH)−、又はジイソシアネート由来の2価の基を示すが、ジイソシアネート由来の2価の基が好ましい。
式(21)中のE24は、ジイソシアネート由来の2価の基を示す。なお、E24はX27及びX28の間で2つのウレタン結合を形成している。
【0193】
上記E21、E22及びE24における「ジイソシアネート由来の2価の基」を誘導するジイソシアネートは、飽和又は不飽和脂肪族系ジイソシアネートでもよく、脂環式系又は芳香族系ジイソシアネートでもよい。
上記ジイソシアネート由来の2価の基としては、具体的には、エチレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアネートプロパン、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの飽和脂肪族系ジイソシアネート由来の2価の基;1,2−ジイソシアネートシクロヘキサン、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式系ジイソシアネート由来の2価の基;トリレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートナフタレンなどの芳香族系ジイソシアネート由来の2価の基;2,2'−ジイソシアネートジエチルフマレートなどの不飽和脂肪族系ジイソシアネート由来の2価の基が挙げられる。
これらの中では、入手容易性及びゲルやレンズへの強度付与の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート由来の2価の基、トリレンジイソシアネート由来の2価の基、イソホロンジイソシアネート由来の2価の基が好ましい。
【0194】
式(19)中のX21及びX25、並びに式(22)中のX22及びX26は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を示す。
但し、E21が、−(NH)−(C=O)−の場合は、X21は単結合であり、且つX25は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE21はX25とウレタン結合を形成している。また、E21が、−(C=O)−(NH)−の場合は、X21は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基であり、且つX25は単結合である。すなわち、この場合はE21はX21とウレタン結合を形成している。また、E21が、ジイソシアネート由来の2価の基の場合は、X21及びX25は、それぞれ独立して、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE21はX21及びX25の間で2つのウレタン結合を形成している。
また、E22が、−(NH)−(C=O)−の場合は、X22は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基であり、且つX26は単結合である。すなわち、この場合はE22はX22とウレタン結合を形成している。また、E22が、−(C=O)−(NH)−の場合は、X22は単結合であり、且つX26は酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE22はX26とウレタン結合を形成している。また、E22が、ジイソシアネート由来の2価の基の場合は、X22及びX26は、それぞれ独立して、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基である。すなわち、この場合はE22はX22及びX26の間で2つのウレタン結合を形成している。
【0195】
上記式(19)中のX21及びX25、並びに式(22)中のX22及びX26としては、酸素原子、アルキレングリコール基、ポリアルキレングリコール基が好ましい。
また、式(21)中のX27及びX28は、それぞれ独立して、酸素原子、アルキレングリコール基又はポリアルキレングリコール基を示す。
上記X21、X22、X25、X26、X27、及びX28で示されるアルキレングリコール基、ポリアルキレングリコール基の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜6である。また、アルキレングリコール基、ポリアルキレングリコール基としては、以下の式(23)で表されるものが好ましい。
【0196】
−O−(Cx2x−O)y− (23)
【0197】
〔式(23)中、xは、1〜4の整数を示し、yは、1〜5の整数を示す。〕
【0198】
式(19)中のR59、式(21)中のR66及びR67、並びに式(22)中のR68は、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンジイル基を示す。具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0199】
式(20)中のR60〜R65は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基、又はフェニル基を示すが、炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基が好ましい。
60〜R65で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1である。また、R60〜R65で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
60〜R65で示されるフッ化アルキル基としては、−(CH2)α−CβF2β+1(α及びβ、それぞれ独立して、1〜10の整数を示す)で表される基が好ましい。
フッ化アルキル基の具体例としては、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2−(ペルフルオロブチル)エチル基、2−(ペルフルオロオクチル)エチル基などの直鎖状のフッ化アルキル基、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル基などの分岐鎖状のフッ化アルキル基などが挙げられる。
なお、R60〜R65のうち少なくとも1つ以上がフッ化アルキル基の場合には、ゲルやレンズの脂質防汚性が向上する。
【0200】
式(20)中、Kは、10〜100の整数を示し、Lは、0〜90の整数を示すが、K+Lは、10〜100の整数である。K+Lが10〜100の整数であることにより、親水性モノマーcとの相溶性が良好になり透明性に優れたものとなる。また、ゲルやレンズの酸素透過性及び柔軟性も向上する。K+Lとしては、10〜80の整数が好ましい。
【0201】
上記式(16)で表されるポリシロキサンマクロモノマーの代表例としては、下記式(24)又は(25)で表される化合物を挙げられる。
【0202】
【化27】
【0203】
【化28】
【0204】
ポリマーbを得る際に重合性官能基を有するシリコーン化合物eを使用する場合、その使用量は、親水性モノマーc 100質量部に対して、好ましくは50〜150質量部であり、より好ましくは100〜130質量部である。
【0205】
(重合性官能基を有する特性調節化合物f)
また、ポリマーbは、親水性モノマーc、架橋剤d、重合性官能基を有するシリコーン化合物eに加えて、さらに、重合性官能基を有する特性調節化合物(以下、重合性官能基を有する特性調節化合物fとも称する)を共重合させたものでもよい。
重合性官能基を有する特性調節化合物としては、アルキル(メタ)アクリレート、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレート、硬度調節モノマー、重合性紫外線吸収剤、重合性色素、重合性紫外線吸収色素などが挙げられる。
【0206】
アルキル(メタ)アクリレートを使用した場合、眼用レンズの硬度を調節して硬質性や軟質性を付与できる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0207】
フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートを使用した場合、眼用レンズの抗脂質汚染性を向上させることができる。
フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(29)で表される化合物等が挙げられる。
【0208】
CH2=CR81COOCv(2v-w+1)w (29)
【0209】
〔式(29)中、
81は、水素原子又はメチル基を示し、
vは、1〜15の整数を示し、
wは、1〜(2v+1)の整数を示す。〕
【0210】
フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロ−t−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−t−ヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,2,2',2',2'−ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−オクタデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ノナデカフルオロウンデシル(メタ)アクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12−エイコサフルオロドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらフッ素含有アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0211】
硬度調節モノマーを使用した場合、眼用レンズの硬度を調節して硬質性や軟質性を付与できる。
硬度調節モノマーとしては、例えば、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;エチルチオエチル(メタ)アクリレート、メチルチオエチル(メタ)アクリレートなどのアルキルチオアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、イソブチルスチレン、ペンチルスチレン、メチル−α−メチルスチレン、エチル−α−メチルスチレン、プロピル−α−メチルスチレン、ブチル−α−メチルスチレン、t−ブチル−α−メチルスチレン、イソブチル−α−メチルスチレン、ペンチル−α−メチルスチレンなどのスチレン類などが挙げられる。
これら硬度調節モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0212】
重合性紫外線吸収剤、重合性色素及び重合性紫外線吸収色素を使用した場合、眼用レンズに紫外線吸収性を付与でき、また、眼用レンズを着色できる。
【0213】
重合性紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2',4'−ジクロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2'−ヒドロキシ−3'−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]エチル(メタ)アクリレート、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3'−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(2"−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3'−t−ブチルフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−5'−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシメチル安息香酸フェニルなどのサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2−シアノ−3−フェニル−3−(3'−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステルなどのその他の重合性紫外線吸収剤が挙げられる。
これら重合性紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0214】
重合性色素としては、例えば、1−フェニルアゾ−4−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−フェニルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−ナフチルアゾ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(α−アントリルアゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−((4'−(フェニルアゾ)−フェニル)アゾ)−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(2',4'−キシリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、1−(o−トリルアゾ)−2−(メタ)アクリロイルオキシナフタレン、2−(m−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4,6−ビス(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2−(m−ビニルアニリノ)−4−(4'−ニトロフェニルアゾアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチルオキシ)−4−(m−ビニルアニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(p−ビニルアニリノ)−4−(1'−(o−トリルアゾ)−2'ナフチルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、N−(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチル)−3−ビニルフタル酸モノアミド、N−(1'−(o−トリルアゾ)−2'−ナフチル)−6−ビニルフタル酸モノアミド、3−ビニルフタル酸−(4'−(p−スルホフェニルアゾ)−1'−ナフチル)モノエステル、6−ビニルフタル酸−(4'−(p−スルホフェニルアゾ)−1'−ナフチル)モノエステル、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−フェニルアゾフェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(8'−ヒドロキシ−3',6'−ジスルホ−1'−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(1'−フェニルアゾ−2'−ナフチルアゾ)−フェノール、3−(メタ)アクリロイルアミド−4−(p−トリルアゾ)フェノール、2−アミノ−4−(m−(2'−ヒドロキシ−1'−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(2'−ヒドロキシ−1'−ナフチルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(4'−ヒドロキシ−1'−フェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(4'−ヒドロキシフェニルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(m−(3'−メチル−1'−フェニル−5'−ヒドロキシ−4'−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(N−メチル−p−(3'−メチル−1'−フェニル−5'−ヒドロキシ−4'−ピラゾリルアゾ)アニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−(p−フェニルアゾアニリノ)−6−イソプロペニル−1,3,5−トリアジン、4−フェニルアゾ−7−(メタ)アクリロイルアミド−1−ナフトールなどのアゾ系重合性色素;
【0215】
1,5−ビス((メタ)アクリロイルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−アミノ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、5−アミノ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、8−アミノ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ニトロ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、4−ヒドロキシ−1−(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(4'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(3'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−(2'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,4−ビス(4'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5'−ビス(4'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1,5−ビス(4'−イソプロペニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(3'−ビニルベンゾイルアミド)−9,10−アントラキノン、1−メチルアミノ−4−(4'−ビニルベンゾイルオキシエチルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−アミノ−4−(3'−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(4'−ビニルフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(2'−ビニルベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(3'−(メタ)アクリロイルアミノフェニルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−アミノ−4−(3'−(メタ)アクリロイルアミノベンジルアミノ)−9,10−アントラキノン−2−スルホン酸、1−(β−エトキシカルボニルアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1,5−ジ−(β−カルボキシアリルアミノ)−9,10−アントラキノン、1−(β−イソプロポキシカルボニルアリルアミノ)−5−ベンゾイルアミド−9,10−アントラキノン、2−(3'−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3'−(3"−スルホ−4"−アミノアントラキノン−1"−イル)−アミノ−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−(3'−(メタ)アクリロイルアミド−アニリノ)−4−(3'−(3"−スルホ−4"−アミノアントラキノン−1"−イル)−アミノ−アニリノ)−6−ヒドラジノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス−((4"−メトキシアントラキノン−1"−イル)−アミノ)−6−(3'−ビニルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−(2'−ビニルフェノキシ)−4−(4'−(3"−スルホ−4"−アミノアントラキノン−1"−イル−アミノ)−アニリノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジンなどのアントラキノン系重合性色素;o−ニトロアニリノメチル(メタ)アクリレートなどのニトロ系重合性色素;(メタ)アクリロイル化テトラアミノ銅フタロシアニン、(メタ)アクリロイル化(ドデカノイル化テトラアミノ銅フタロシアニン)などのフタロシアニン系重合性色素などが挙げられる。
これら重合性色素は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0216】
重合性紫外線吸収色素としては、例えば、2,4−ジヒドロキシ−3(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−スチレノアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N,N−ジ(メタ)アクリロイルエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(p−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−3−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ−5−(o−(N−エチル−N−(メタ)アクリロイルアミノ)フェニルアゾ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシ‐5−(4−(2−(N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)カルバモイルオキシ)エチル)フェニルアゾ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系の重合性紫外線吸収色素や、2−ヒドロキシ−4−(p−スチレノアゾ)安息香酸フェニルなどの安息香酸系の重合性紫外線吸収色素などが挙げられる。
これら重合性紫外線吸収色素は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0217】
<シリコーン化合物g>
本発明のゲルは、上記各成分に加えて、更に、シリコーン化合物(以下、シリコーン化合物gとも称する)を含んでいてもよい。これにより、得られるゲルやレンズに高い酸素透過性及び柔軟性が付与される。
シリコーン化合物gとしては、上記重合性官能基を有するシリコーン化合物eの他に、非重合性シリコーン化合物(以下、非重合性シリコーン化合物hとも称する)が挙げられる。
シリコーン化合物gの具体例としては、重合性官能基を有するシリコーン化合物eとして挙げた例の他に、下記式(26)又は(27)で表されるものが挙げられる。
【0218】
【化29】
【0219】
〔式(26)中、
69〜R76は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フッ化アルキル基、少なくとも1つのアミノ基を有するアルキル基、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基、少なくとも1つのエポキシ基を有するアルキル基、少なくとも1つのカルボキシ基を有するアルキル基、又はフェニル基を示し、
eは、10〜100の整数を示し、
fは、0〜90の整数を示す。
但し、e+fは、10〜100の整数である。〕
【0220】
【化30】
【0221】
〔式(27)中、
77〜R79は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は下記式(28)で表される基を示し、
gは、5〜100の整数を示し、
hは、0〜100の整数を示す。
但し、R77〜R79のうち少なくとも1つは、下記式(28)で表される基である。〕
【0222】
【化31】
【0223】
〔式(28)中、
80は、水素原子又は炭素数1〜22のアルキル基を示し、
dは、1〜100の整数を示す。〕
【0224】
式(26)中のR69〜R76で示される炭素数1〜6のアルキル基、少なくとも1つのアミノ基を有するアルキル基、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基、少なくとも1つのエポキシ基を有するアルキル基、少なくとも1つのカルボキシ基を有するアルキル基における「アルキル基」は、R60〜R65で示されるアルキル基と同様である。また、式(27)中のR77〜R79で示される炭素数1〜6のアルキル基も、R60〜R65で示されるアルキル基と同様である。
式(26)中のR69〜R76で示されるフッ化アルキル基は、R60〜R65で示されるフッ化アルキル基と同様である。
【0225】
式(28)中のR80で示される炭素数1〜22のアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0226】
なお、重合性官能基を有するシリコーン化合物e、非重合性シリコーン化合物hは、分子中に親水性部分構造を有していてもよい。このようにシリコーン化合物が親水性部分構造を有することにより、シリコーン化合物とポリマーbとの相溶性が向上し、得られるゲルやレンズの表面親水性を改善させることができる。上記親水性部分構造としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリテトラヒドロフラン、ポリオキセタン、ポリオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリジエチルアクリルアミド、ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、これらのブロックポリマーに由来する部分構造などが挙げられる。この親水性部分構造はシリコーン化合物に対して、くし型状に結合していてもよいし、片末端又は両末端に結合していてもよい。この親水性部分構造の分子量は、表面親水性及び透明性の観点から、好ましくは100〜1,000,000であり、より好ましくは1,000〜500,000である。
【0227】
シリコーン化合物gの含有量は、力学的強度、透明性、酸素透過性等の観点から、ゲル全量に対して、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果等の観点から、ゲル全量に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0228】
<特性調節化合物>
なお、本発明のゲルは、特性調節化合物を含んでいてもよい。特性調節化合物としては、重合性官能基を有する特性調節化合物fの他に、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノールなどの非重合性特性調節化合物(以下、非重合性特性調節化合物iとも称する)が挙げられる。
【0229】
そして、本発明のゲルは、表面親水性、潤滑性及び防汚性(特に脂質防汚性)に優れ、しかもこれら各特性の持続性も高い。また、ゲル強度、透明性、酸素透過性にも優れる。
したがって、本発明のゲルは、眼用レンズ材料をはじめとして、細胞や臓器などの培養基材、保存用容器の材料などとして有用である。特に、コンタクトレンズ材料として有用である。
ここで、本明細書において、眼用レンズは、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ等のコンタクトレンズの他、メガネ、眼内レンズ、人工角膜、角膜オンレイ、角膜インレイ等を含む概念であり、また、上記コンタクトレンズは、非含水性、低含水性、高含水性のいずれでもよいが、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが好ましい。本発明のゲルを用いることにより、表面親水性、潤滑性及び防汚性(特に脂質防汚性)に優れるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを提供することもできる。
【0230】
〔レンズ〕
本発明のレンズは、本発明のゲルを含むことを特徴とするものである。レンズとしては、眼用レンズが好ましく、コンタクトレンズがより好ましい。
なお、レンズがフッ素含有陰イオンを含む場合において、レンズの水中での線膨潤係数(以下、係数(I)とも称する)は、フッ素含有陰イオンをフッ素非含有陰イオンに置換した場合のレンズの水中での線膨潤係数(以下、係数(II)とも称する)よりも小さいことが好ましい。また、係数(I)と係数(II)の差は、好ましくは0.005〜0.1である。
これら係数をこのような範囲とすることによって、眼用レンズとした場合の装用感や柔軟性が改善され、また、眼疾患の発生を未然に予防しやすくなる。
【0231】
〔重合性組成物〕
本発明の重合性組成物は、重合体aと、親水性モノマーcと、架橋剤dとを含むことを特徴とするものである。本発明の重合性組成物を使用することにより、表面親水性、潤滑性及び防汚性に優れ、しかもこれら各特性の持続性も高いゲルを得ることができる。
【0232】
重合体a(改質剤)の含有量は、親水性化性能、防汚性付与効果、潤滑性付与効果、透明性及び酸素透過性等の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、透明性や適度な硬さとする観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
親水性モノマーcの含有量は、親水性化性能、安定性及び透明性等の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、また、酸素透過性の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
架橋剤dの含有量は、柔軟性の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、ゲルやレンズの機械的強度及び耐久性の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。
【0233】
また、本発明の重合性組成物は、上記各成分に加えて、シリコーン化合物g、特性調節化合物を含んでいてもよい。シリコーン化合物gとしては、上記重合性官能基を有するシリコーン化合物e、非重合性シリコーン化合物hが挙げられ、特性調節化合物としては、重合性官能基を有する特性調節化合物f、非重合性特性調節化合物iが挙げられる。
シリコーン化合物gの含有量は、酸素透過性及び柔軟性の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、親水性化性能及び透明性等の観点から、重合性組成物全量に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
また、重合性官能基を有する特性調節化合物fとして、アルキル(メタ)アクリレートやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレートを使用する場合、これらの含有量は、重合性組成物全量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。また、重合性官能基を有する特性調節化合物fとして、硬度調節モノマーを使用する場合、その含有量は、重合性組成物全量に対して、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。また、重合性官能基を有する特性調節化合物fとして、重合性紫外線吸収剤、重合性色素及び重合性紫外線吸収色素を使用する場合、これらの含有量は、重合性組成物全量に対して、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましい。
【0234】
〔ゲルの製造方法〕
本発明のポリマーを含むゲルの製造方法は、重合体aの存在下で親水性モノマーcを架橋剤dと共に重合してポリマーbとすることを特徴とするものである。このようにしてポリマーbを合成することにより、ポリマーbの相互網目構造間にゲル中の重合体a(改質剤)が抱え込まれるような状態となり、表面親水性、潤滑性及び防汚性が改善されたゲルが調製される。
【0235】
以下、本発明のゲル及びレンズを製造する方法について具体的に説明する。
本発明のゲル及びレンズは、例えば、重合体a、親水性モノマーc及び架橋剤d、必要に応じてその他の上記各成分(シリコーン化合物gや特性調節化合物)を加えて調製した重合性組成物(本発明の重合性組成物)を、鋳型法にて加熱及び/又は紫外線照射し、共重合させ、次いで水に膨潤させることによって得ることができる。また、紫外線照射に代えて電子線照射による共重合を行うこともできる。
【0236】
重合性組成物中の重合成分を加熱重合させる場合には、例えば、所望のレンズの形状に対応した鋳型内に、重合性組成物及びラジカル重合開始剤を加え、この鋳型を徐々に加熱して重合を行ない、得られたゲルの成形体に、必要に応じて切削加工、研磨加工などの機械的加工を施すことによって、レンズを製造することができる。機械的加工は、成形体の一方又は両方の面の全面にわたって行なってもよいし、成形体の一方又は両方の面の一部に対して行なってもよい。
また、重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法が挙げられる。溶液重合する場合に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどの炭素数1〜4のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶媒が挙げられる。これら溶媒の使用量としては、共重合反応の促進及び反応液における均一性維持の観点から、重合性組成物中の全重合成分100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましい。
また、ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ラジカル重合開始剤の使用量としては、重合性組成物中の全重合成分100質量部に対して、0.001〜2質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。
また、加熱重合における加熱温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜140℃である。また、加熱時間は、好ましくは10〜120分間、より好ましくは20〜60分間である。鋳型内での加熱温度を50℃以上又は加熱時間を10分以上とすることによって、残留モノマー成分の低減を図ることが可能となる。一方、鋳型内での加熱温度を150℃以下又は加熱時間を120分間以下とすることによって、各重合成分の揮発を抑制すると共に、型の変形を防止することができる。
【0237】
重合性組成物中の重合成分を紫外線照射して重合させる場合には、例えば、所望のレンズの形状に対応した鋳型内に、重合性組成物及び光重合開始剤を加え、この鋳型に紫外線を照射して重合を行ない、得られたゲルの成形体に、必要に応じて切削加工、研磨加工などの機械的加工を施すことによって、レンズを製造することができる。機械的加工は、成形体の一方又は両方の面の全面にわたって行なってもよいし、成形体の一方又は両方の面の一部に対して行なってもよい。
また、重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法が挙げられる。溶液重合する場合に用いられる溶媒としては、加熱重合で用いる溶媒と同様のものが挙げられる。
なお、紫外線照射による重合に用いられる鋳型の材質は、重合・硬化に必要な紫外線を透過しうる材質である限り特に限定されるものではなく、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステルなどの汎用樹脂が好ましい。また、ガラスであってもよい。これらの材料を成形、加工することによって、所望の形状を有する鋳型とすることができる。
また、光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系光重合開始剤;メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテルなどのベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノンアクリレート、ベンゾフェノンなどのフェノン系光重合開始剤;2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ジベンゾスバロン、2−エチルアンスラキノンなどのその他の光重合開始剤が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、光重合開始剤と共に、光増感剤を用いてもよい。
これら光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、重合性組成物中の全重合成分100質量部に対して、それぞれ、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0238】
また、照射する紫外線の波長域は、レンズ材料の機能や光重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。紫外線照度は、好ましくは1.0〜50mW/cm2であり、紫外線照射量は、好ましくは0.1〜10J/cm2である。また、紫外線の照射時間は1分間以上が好ましい。なお、異なる照度の紫外線を段階的に照射してもよく、また、紫外線の照射と同時に加熱を行ってもよい。
【0239】
また、安定性や離型性を確保するために、必要に応じて、ヒンダードフェノール系又はホスファイト系酸化防止剤;シリコン系、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、脂肪酸グリセリド系、又は蜜ろうなどの天然油脂系の滑剤や離型剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系又はサリチレート系の光安定剤;ポリアルキレングリコール、脂肪酸グリセリドなどの帯電防止剤などを、本発明の重合性組成物にあらかじめ適宜添加しておいてから、重合反応を行ってもよい。
【0240】
上記にようにして得られたレンズは、水、生理食塩水、バッファー、有機溶剤、これらの混合溶剤などを使用して洗浄してもよい。具体的には、これら溶剤にレンズを浸漬し、これを繰り返すなどすればよい。
また、レンズには、低温プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理などを施してもよい。低温プラズマ処理を施すことにより、表面親水性や防汚性を更に向上させることができる。
低温プラズマ処理は、炭素数1〜6のアルカン、フッ素置換されたアルカン、窒素、酸素、アルゴン、水素、空気、水、シラン又はこれらの混合物などの希薄気体雰囲気下において行うことができる。特に、イオンエッチングによる物理的な表面改質効果とラジカルのインプランテーションによる化学的な表面改質効果が期待されるという理由から、酸素単独、又は酸素と、水、テトラフルオロメタン、有機シラン、メタン、窒素などとの混合物による希薄気体雰囲気下で低温プラズマ処理を行うことが好ましい。低温プラズマ処理は、減圧下で行ってもよいし、大気圧下で行ってもよい。低温プラズマ処理においては、高周波RF(例えば13.56MHz)、低周波AF(例えば15.0〜40.0KHz)、マイクロ波(例えば2.45GHz)にて、出力、処理時間、ガス濃度を適宜調整することにより、表面改質効果を制御することができる。
【0241】
〔重合体及びコンタクトレンズ表面改質剤〕
本発明の重合体は、下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と下記繰り返し単位(B):2.5〜95質量%とを有することを特徴とするものである。当該重合体は、上記重合体aであり、コンタクトレンズ表面改質用重合体、コンタクトレンズ表面改質剤として有用である。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、その側鎖の末端が炭素数5〜30のアルキル基、炭素数5〜30のアルカノイル基、又はアリール基で構成される繰り返し単位
また、本発明のコンタクトレンズ表面改質剤は、上記重合体aを含有することを特徴とするものである。
【実施例】
【0242】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0243】
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
<分子量測定>
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、東ソー社製 TSKgel α−Mカラムを用い、流量:0.5ミリリットル/分、溶出溶媒:NMP溶媒(H3PO4:0.016M、LiBr:0.030M)、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
<NMRスペクトル>
1H−NMRスペクトルは、溶媒及び内部標準物質としてd6−DMSOを用いて、BRUKER製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
【0244】
合成例1 共重合体(N−1)の合成
メトキシポリエチレングリコール(9)モノメタクリレート(M−90G(新中村化学社製)、以下、MPEGMと称する)0.9gと、ラウロキシポリエチレングリコール(30)モノメタクリレート(PLE−1300(日油社製)、以下、LPEGMと称する)1.85gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.03gと、溶媒としてエクアミドB−100(出光興産社製)12gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−1)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−1)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は35質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は65質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−1)の重量平均分子量は111000であり、数平均分子量は23300であり、分子量分布は4.8であった。
【0245】
合成例2 共重合体(N−2)の合成
MPEGM1.20gと、LPEGM1.50gと、アクリル酸2−エチルヘキシル(東京化成社製)0.30gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.03gと、溶媒としてエクアミドB−100(出光興産社製)12gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−2)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−2)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は40質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であり、アクリル酸2−エチルヘキシル由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−2)の重量平均分子量は118000であり、数平均分子量は33800であり、分子量分布は3.5であった。
【0246】
合成例3 共重合体(N−3)の合成
MPEGM2.03gと、LPEGM0.83gと、下記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)0.14gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.03gと、溶媒としてエクアミドB−100(出光興産社製)12gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−3)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−3)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は67.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は27.5質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は5質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−3)の重量平均分子量は133000であり、数平均分子量は39400であり、分子量分布は3.4であった。
【0247】
【化32】
【0248】
合成例4 共重合体(N−4)の合成
ジメチルアクリルアミド((興人社製)以下、DMAAと称する)4.25gと、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン(GLBT(大阪有機化学工業社製)以下、GLBTと称する)0.125gと、LPEGM0.50gと、N−ドデシルアクリルアミド((東京化成社製)以下、DDAAと称する)0.125gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.05gと、溶媒としてアセトニトリル(三菱レーヨン社製)31.05gと純水13.50gを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−4)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−4)において、DMAA由来の繰り返し単位の含有量は85質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−4)の重量平均分子量は515000であり、数平均分子量は128000であり、分子量分布は4.2であった。
【0249】
合成例5 共重合体(N−5)の合成
N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド((興人社製)以下、HEAAと称する)4.00gと、LPEGM5.00gと、DDAA1.00gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.10gと、溶媒としてイソプロパノール(トクヤマ社製)39.10gを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−5)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−5)において、HEAA由来の繰り返し単位の含有量は40質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−5)の重量平均分子量は32000であり、数平均分子量は16000であり、分子量分布は2.0であった。
【0250】
合成例6 共重合体(N−6)の合成
DMAA1.38gと、アクリル酸((東亞合成社製)以下、AAと称する)0.125gと、LPEGM2.75gと、DDAA0.75gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.05gと、溶媒としてアセトニトリル(三菱レーヨン社製)31.05gと純水13.50gを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液に炭酸水素ナトリウム0.153gを加えた後、純水で透析することで、共重合体(N−6)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−6)において、DMAA由来の繰り返し単位の含有量は27.5質量%であり、AA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は55質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は15質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−6)の重量平均分子量は430000であり、数平均分子量は108000であり、分子量分布は4.0であった。
【0251】
合成例7 共重合体(N−7)の合成
MPEGM10.0gと、LPEGM25.0gと、上記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)15.0gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.25gと、溶媒としてアセトニトリル200gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−7)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−7)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は20質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は30質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−7)の重量平均分子量は91000であり、数平均分子量は50500であり、分子量分布は1.8であった。
【0252】
合成例8 共重合体(N−8)の合成
HEAA2.0gと、LPEGM5.0gと、上記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)3.0gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07gと、溶媒としてエタノール39.93gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−8)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−8)において、HEAA由来の繰り返し単位の含有量は20質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は30質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−8)の重量平均分子量は48000であり、数平均分子量は15000であり、分子量分布は3.2であった。
【0253】
合成例9 共重合体(N−9)の合成
DMAA2.25gと、GLBT0.125gと、LPEGM2.50gと、DDAA0.125gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gと、溶媒としてアセトニトリル(三菱レーヨン社製)31.05gと純水13.50gを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−9)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−9)において、DMAA由来の繰り返し単位の含有量は45質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−9)の重量平均分子量は47000であり、数平均分子量は11500であり、分子量分布は4.1であった。
【0254】
合成例10 共重合体(N−10)の合成
DMAA0.25gと、GLBT0.125gと、LPEGM4.50gと、DDAA0.125gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gと、溶媒としてアセトニトリル(三菱レーヨン社製)31.05gと純水13.50gを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、6時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−10)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−10)において、DMAA由来の繰り返し単位の含有量は5質量%であり、GLBT由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は90質量%であり、DDAA由来の繰り返し単位の含有量は2.5質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−10)の重量平均分子量は35000であり、数平均分子量は10400であり、分子量分布は3.4であった。
【0255】
合成例11 共重合体(N−11)の合成
MPEGM15.0gと、LPEGM30.0gと、上記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)5.0gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gと、溶媒としてアセトニトリル200gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−11)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−11)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は30質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は60質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−11)の重量平均分子量は50000であり、数平均分子量は26000であり、分子量分布は1.9であった。
【0256】
合成例12 共重合体(N−12)の合成
MPEGM5.0gと、LPEGM20.0gと、上記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)25.0gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.5gと、溶媒としてアセトニトリル200gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−12)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−12)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は40質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−12)の重量平均分子量は43000であり、数平均分子量は20000であり、分子量分布は2.2であった。
【0257】
合成例13 共重合体(N−13)の合成
HEAA3.0gと、LPEGM6.0gと、上記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)1.0gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07gと、溶媒としてエタノール39.93gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−13)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−13)において、HEAA由来の繰り返し単位の含有量は30質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は60質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−13)の重量平均分子量は45000であり、数平均分子量は15000であり、分子量分布は3.0であった。
【0258】
合成例14 共重合体(N−14)の合成
HEAA1.0gと、LPEGM4.0gと、上記式(X)で示されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)5.0gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.07gと、溶媒としてエタノール39.93gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−14)の分散液を得た。
得られた共重合体(N−14)において、HEAA由来の繰り返し単位の含有量は10質量%であり、LPEGM由来の繰り返し単位の含有量は40質量%であり、シリコーンメタクリレート(X)由来の繰り返し単位の含有量は50質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−14)の重量平均分子量は48300であり、数平均分子量は13200であり、分子量分布は3.7であった。
【0259】
参考例1 共重合体(N−15)の合成
MPEGM2.85gと、アクリル酸2−エチルヘキシル(東京化成社製)0.15gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.03gと、溶媒としてエクアミドB−100(出光興産社製)12gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−15)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−15)において、MPEGM由来の繰り返し単位の含有量は95質量%であり、アクリル酸2−エチルヘキシル由来の繰り返し単位の含有量は5質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−15)の重量平均分子量は115000であり、数平均分子量は26800であり、分子量分布は4.3であった。
【0260】
参考例2 共重合体(N−16)の合成
DMAA2.40gと、アクリル酸2−エチルヘキシル(東京化成社製)0.60gと、重合開始剤として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)0.03gと、溶媒としてエクアミドB−100(出光興産社製)12gとを混合しフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、8時間重合させ、その後室温に冷却した。得られた溶液を純水で透析することで、共重合体(N−16)の水溶液を得た。
得られた共重合体(N−16)において、DMAA由来の繰り返し単位の含有量は80質量%であり、アクリル酸2−エチルヘキシル由来の繰り返し単位の含有量は20質量%であった。なお、これら含有量は1H−NMRにより測定した。
また、得られた共重合体(N−16)の重量平均分子量は49000であり、数平均分子量は14300であり、分子量分布は3.4であった。
共重合体(N−1)〜(N−16)の性状等を以下の表1及び2に示す。
【0261】
【表1】
【0262】
【表2】
【0263】
実施例1 ゲルの作製
共重合体(N−1)の0.5質量%水分散液を凍結乾燥し、共重合体(N−1)の固形分を得た。次いで、下記式(X)で表されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)50質量部、DMAA(興人社製)40質量部、ポリエチレングリコールジメタクリラート n≒4(東京化成工業社製)5質量部、共重合体(N−1)5質量部、及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン1質量部を混合し、ガラスシャーレに流し込み、大気中にてUV照射量:1.5J/cm2となるようにUV照射を行い、重合物を得た。この重合物をイオン交換水で膨潤させた後、PBSで3回洗浄した。その後、PBS中でオートクレーブ滅菌して、ポリマー添加シリコーンハイドロゲルを得た。
【0264】
【化33】
【0265】
実施例2〜14 ゲルの作製
共重合体(N−1)の0.5質量%水分散液を、共重合体(N−2)〜(N−14)の0.5質量%水分散液又は水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリマー添加シリコーンハイドロゲルを得た。
【0266】
比較例1〜2 ゲルの作製
共重合体(N−1)の0.5質量%水分散液を、共重合体(N−15)〜(N−16)の0.5質量%水溶液に変更する以外は、実施例1と同様にしてポリマー添加シリコーンハイドロゲルを得た。
【0267】
比較例3 ゲルの作製
上記式(X)で表されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)50質量部、DMAA(興人社製)40質量部、ポリエチレングリコールジメタクリラート n≒4(東京化成工業社製)5質量部、ポロキサマー407を5質量部、及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン1質量部を混合し、ガラスシャーレに流し込み、大気中にてUV照射量:1.5J/cm2となるようにUV照射を行い、重合物を得た。この重合物をイオン交換水で膨潤させた後、PBSで3回洗浄した。その後、PBS中でオートクレーブ滅菌して、ポリマー添加シリコーンハイドロゲルを得た。
【0268】
試験例1 ポリマー添加シリコーンハイドロゲルの表面親水性試験
各実施例及び比較例で得たポリマー添加シリコーンハイドロゲルをPBSから取り出して、下記の基準にて評価を行なった。評価基準のランクが高いほど表面親水性に優れるといえる。試験結果を表3に示す。
【0269】
(表面親水性評価基準)
ランク
1・・・シリコーンハイドロゲル表面が殆ど濡れず、水を弾いている
2・・・シリコーンハイドロゲル表面の面積の半分以上の濡れが不均一であり、若干水を弾いている
3・・・シリコーンハイドロゲル表面の面積の半分以上が均一に濡れている
4・・・シリコーンハイドロゲル表面が均一に濡れている
【0270】
試験例2 ポリマー添加シリコーンハイドロゲルの潤滑性試験
試験に先立ち、潤滑性試験においてコントロールとして使用するゲル(コントロールゲル)を作製した。すなわち、上記式(X)で表されるシリコーンメタクリレート(東京化成社製)50質量部、DMAA(興人社製)45質量部、ポリエチレングリコールジメタクリラート n≒4(東京化成工業社製)5質量部、及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン1質量部を混合し、ガラスシャーレに流し込み、大気中にてUV照射量:1.5J/cm2となるようにUV照射を行い、重合物を得た。この重合物をイオン交換水で膨潤させた後、PBSで3回洗浄した。その後、PBS中でオートクレーブ滅菌して、コントロールゲルを得た。
各実施例及び比較例で得たポリマー添加シリコーンハイドロゲルについて、乾燥した指で触った際の潤滑性を下記のランク1〜4の基準で10名の被験者に評価してもらい、潤滑性ランクの平均値を算出した。評価基準のランクが高いほど潤滑性に優れるといえる。試験結果を表3に示す。
【0271】
(潤滑性評価基準)
ランク
1・・・コントロールゲルと同等
2・・・コントロールゲルと比較して僅かに潤滑性がある
3・・・全体に軋みなく、コントロールゲルと比較して潤滑性がある
4・・・全体に軋みなく、コントロールゲルと比較して非常に潤滑性がある
【0272】
【表3】
【0273】
表3に示すとおり、実施例1〜14のゲルは、表面親水性及び潤滑性に優れていた。この結果から、合成例1〜14のポリマーを、シリコーンハイドロゲル作製時に添加することにより、優れた表面親水性及び潤滑性が付与されることがわかる。
また、実施例3〜14のゲルは表面親水性に特に優れていた。
【0274】
試験例3 脂質防汚性試験
まず、試験に先立ち、オレイン酸:1.20質量%、リノール酸:1.20質量%、トリパルミチン:16.23質量%、セチルアルコール:4.01質量%、パルミチン酸:1.20質量%、パルミチン酸セチル:16.23質量%、コレステロール:1.60質量%、パルミチン酸コレステロール:1.60質量%及びレシチン:56.71質量%を加熱撹拌によって均一化して脂質液を得て、この脂質液0.5質量部と水99.5質量部とを混合して乳化させた人工脂質溶液を調製した。
次いで、各実施例及び比較例で得たポリマー添加シリコーンハイドロゲルを人工脂質溶液1mLに浸漬し、1時間振とうした後取り出し、PBSで3回洗浄し、減圧乾燥した。その後、シリコーンハイドロゲルをエタノール/ジエチルエーテル(75/25体積%)溶液1mLに浸漬し、30分静置することでシリコーンハイドロゲルに残存する脂質を抽出した。この抽出液0.5mLを試験管に採取し、90℃で溶媒を蒸発させた。
次いで、試験管中に濃硫酸0.5mLを添加し、90℃30分間加熱した。この溶液を室温まで冷却した後、0.6質量%バニリン水溶液/リン酸(20/80体積%)溶液を2.5mL添加し、37℃で15分間保持した。この溶液を室温まで冷却後、540nmにおける吸光度を測定した。脂質濃度既知の溶液を予め前記同様の方法により測定して検量線を作成しておき、前記測定結果の吸光度からシリコーンハイドロゲルに吸着した脂質量を決定した。
試験結果を表4に示す。なお、表中のコントロールは、上記シリコーンハイドロゲルの代わりに試験例2で得たコントロールゲルを用いて上記と同様に試験した結果を示す。また、脂質防汚量はコントロールと比較して低下した脂質付着量を示し、その値が大きい程、脂質防汚性が高いといえる。
【0275】
【表4】
【0276】
表4に示すとおり、実施例1〜14のゲルは、脂質防汚性に優れていた。この結果から、合成例1〜14のポリマーを、シリコーンハイドロゲル作製時に添加することにより、優れた脂質防汚性が付与されることがわかる。
また、実施例2〜14のゲルは脂質防汚性に特に優れていた。