(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836507
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】紫外可視分光法による原油のキャラクタリゼーション
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20210222BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20210222BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
G01N21/33
G01N21/359
G01N21/27 Z
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-535749(P2017-535749)
(86)(22)【出願日】2016年1月5日
(65)【公表番号】特表2018-505402(P2018-505402A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2016012167
(87)【国際公開番号】WO2016112002
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】62/099,669
(32)【優先日】2015年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511304464
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オメル,レファ
(72)【発明者】
【氏名】アル−ハッジ,アドナン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミスン,ゴードン
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−513785(JP,A)
【文献】
特開2008−164614(JP,A)
【文献】
特開平10−082774(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0156241(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0211329(US,A1)
【文献】
米国特許第06711532(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 33/00−33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外/可視分光データに基づいて、所与の蒸留重量パーセントに対する模擬蒸留温度を、原油、ビチューメン、重油、頁岩油から得られる天然に存在する炭化水素から選択され密度によって特徴づけられる油サンプルに与えるためのシステムであって:
計算モジュール、ならびに前記油サンプルの所定の波長範囲内で検出された吸光度の値を示す紫外/可視分光データを含むデータを格納する不揮発性メモリデバイスと;
前記メモリに結合されているプロセッサと;
吸光度の値を示す前記データから前記所与の蒸留重量パーセントに対する累積および規格化紫外/可視吸光度を計算し、かつ与える第1の計算モジュールと;および
前記所与の蒸留重量パーセントに対する前記紫外/可視吸光度、および前記油サンプルの密度の関数として模擬蒸留温度を計算し、かつ与える第2の計算モジュールと
を含むシステム。
【請求項2】
前記油サンプルから得られる紫外可視分光データを出力する紫外可視分光装置をさらに含み、
前記不揮発性メモリデバイスは、計算モジュール、ならびに前記油サンプルの所定の波長範囲内で検出された吸光度の値を示す紫外/可視分光データを含む前記紫外可視分光データを格納するものである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2の計算モジュールは、線形回帰法を用いて得られる1組の所定の定数係数を有する多変数多項式であって前記所与の蒸留重量パーセントに対する前記紫外/可視吸光度、および前記油サンプルの前記密度を変数とする多変数多項式を用いて前記模擬蒸留温度を計算し、かつ与えるものである請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の計算モジュールは、DTを前記蒸留重量パーセント、K
SD、X1
SD、X2
SD、X3
SD、X4
SD、X5
SD、X6
SD、X7
SD、X8
SD、およびX9
SDを定数、DENを前記油サンプルの前記密度(単位はKg/L)、UVVWLをDTでの波長としたときに、以下の式を用いて前記模擬蒸留温度(T
DT)を計算するものである請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
コンピュータを操作して、原油、ビチューメン、重油、頁岩油から得られる天然に存在する炭化水素から選択され密度によって特徴づけられる油サンプルに、紫外/可視分光データに基づいて所与の蒸留重量パーセントに対する模擬蒸留温度を与えるための方法であって:
前記コンピュータに、前記油サンプルの所定の波長範囲内で検出された吸光度の値を示す紫外/可視分光データを入力する工程と;
吸光度の値を示す前記データから前記所与の蒸留重量パーセントに対する累積および規格化紫外/可視吸光度を計算し、かつ与える工程と;および
前記所与の蒸留重量パーセントに対する前記紫外/可視吸光度、および前記油サンプルの密度の関数として模擬蒸留温度を計算し、かつ与える工程と
を含む方法。
【請求項6】
前記油サンプルの所定の波長範囲内で検出された吸光度の値を示す紫外/可視分光データを得る工程と;および
前記コンピュータに前記得られた紫外/可視分光データを入力する工程と;
をさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記模擬蒸留温度を計算する前記工程は、線形回帰法を用いて得られる1組の所定の定数係数を有する多変数多項式であって前記所与の蒸留重量パーセントに対する前記紫外/可視吸光度、および前記油サンプルの前記密度を変数とする多変数多項式を用いるものである請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記模擬蒸留温度(T
DT)は、DTを前記蒸留重量パーセント、K
SD、X1
SD、X2
SD、X3
SD、X4
SD、X5
SD、X6
SD、X7
SD、X8
SD、およびX9
SDを定数、DENを前記油サンプルの前記密度(単位はKg/L)、UVVWLをDTでの波長としたときに、以下の式を用いて計算されるものである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記油サンプルを溶媒に溶解させることにより、紫外/可視分光分析のために前記油サンプルを調製する工程をさらに含む請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
使用される前記溶媒は、パラフィン系溶媒および極性溶媒の混合物である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記パラフィン系溶媒は、5個〜20個の炭素原子を有するものである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記極性溶媒は、該極性溶媒のヒルデブランド溶解度係数または二次元溶解度パラメータに基づいて選択されるものである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記極性溶媒の前記二次元溶解度パラメータは、複合溶解度パラメータおよび力場の溶解度パラメータである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記極性溶媒の前記複合溶解度パラメータは、水素結合および電子供与体−受容体相互作用を表すものである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記極性溶媒の前記力場の溶解度パラメータは、ファンデルワールス相互作用に基づくものである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記パラフィン系溶媒 対 前記極性溶媒の比率は、90:10以上である請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記油サンプルが原油である請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記所定の波長範囲が200〜500nm、特定の実施形態では220〜400nmである請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記油サンプルは、分光のために油溶液に調製されるものである請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記油サンプルから製造され得る製品の性質を前記模擬蒸留温度から決定する工程と、
前記製品を最も効率的かつ効果的に処理できる適切な精製技術を決定する工程と、
を含む請求項5〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記油サンプルから製造され得る製品の性質を前記模擬蒸留温度から決定し、前記製品を最も効率的かつ効果的に処理できる適切な精製技術を決定する計算モジュール
を含む請求項1〜4,17〜19のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記油サンプルが原油である請求項5〜16,20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記所定の波長範囲が200〜500nm、特定の実施形態では220〜400nmである請求項5に記載の方法。
【請求項24】
前記油サンプルは、分光のために油溶液に調製されるものである請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の説明]
本出願は、2015年1月5日に出願された米国特許仮出願第62/099,669号明細書の利益を主張するものであり、その開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、紫外可視分光法による原油およびその留分のサンプルの評価のための方法およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
原油は、約15百万年〜5億年前の泥およびシルトの連続層の下に埋もれた水生生物(主に海洋生物)および/または陸生植物が分解および変化したものである。それらは本質的に、数千もの異なる炭化水素の非常に複雑な混合物である。供給源に応じて、原油は主に、さまざまな比率の直鎖および分岐鎖パラフィン、シクロパラフィンならびにナフテン、芳香族および多核芳香族炭化水素を含む。これらの炭化水素は、分子中の炭素原子の数および配置に応じて、標準状態の温度および圧力下で、気体、液体または固体であり得る。
【0004】
原油は、ある地理区から別の地理区および油田ごとに物理的および化学的特性が大きく異なる。原油は通常、含有する炭化水素の性質にしたがって3つのグループ(パラフィン系、ナフテン系、アスファルト系)およびそれらの混合物に分類される。その違いは、さまざまな分子のタイプおよびサイズの異なる比率による。ある原油は主としてパラフィンを含み、別の原油は主としてナフテンを含む。パラフィン系であれナフテン系であれ、ある原油は、多量のより軽質な炭化水素を含むことができて、移動性であるか、または溶解ガスを含むことができる;別の原油は、主としてより重質な炭化水素からなり、溶解ガスをほとんどまたは全く含まない高粘性であり得る。原油は、原油留分の精製処理に影響する量の硫黄、窒素、ニッケル、バナジウムおよび他の元素を含むヘテロ原子も含むことができる。軽質原油またはコンデンセートは、0.01W%という低濃度の硫黄を含み得る;一方、重質原油は5〜6W%も含み得る。同様に、原油の窒素含有量は0.001〜1.0W%の範囲であり得る。
【0005】
原油の性質は、ある程度、それから製造され得る製品の性質および特別な用途に対するそれらの適合性を支配する。ナフテン系原油は、ワックスのためのパラフィン系原油であるアスファルトビチューメンの製造に、より適している。ナフテン系原油、芳香族系のものはなおさらそうであるが、温度に敏感な粘度を有する潤滑油を与える。しかし、現代の精製法では、多くの所望のタイプの製品を製造するためのさまざまな原油の使用における柔軟性はより大きい。
【0006】
油井で製造されるとき、原油は通常、不定量のスイートガスおよびサワーガス、ならびに総溶解固形分(TDS)の高い生成塩水を伴う。原油は通常、油井からのその製造後、直ちに安定化され、脱塩される。
【0007】
原油分析は、ベンチマークの目的で原油の性質を確認する伝統的な方法である。原油には真沸点(TBP)蒸留および分留が行われ、異なる沸点留分を与える。原油蒸留は、米国標準試験協会(ASTM)法D 2892を用いて行われる。一般的な留分およびその公称沸点を表1に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
次いで、該当する場合、これらの原油留分の収率、組成、物理的特性および指標特性が、原油分析ワークアップ計算中に求められる。原油分析において得られる典型的な組成および特性情報を表2に示す。
【0010】
【表2】
【0011】
必要な蒸留留分の数および分析の数のために、原油分析のワークアップは費用と時間がかかる。
【0012】
典型的な製油所では、メタン、エタン、プロパン、ブタン類および硫化水素、ナフサ(36℃〜180℃)、ケロシン(180℃〜240℃)、軽油(240℃〜370℃)および常圧残油(>370℃)を含むサワーガスおよび軽質炭化水素を分離するために、原油がまず常圧蒸留塔で分留される。常圧蒸留塔からの常圧残油は、製油所の構成に応じて、燃料油として使用されるか、真空蒸留ユニットに送られる。真空蒸留から得られる主要製品は、370℃〜520℃の範囲の沸点を有する炭化水素を含む真空軽油と、520℃を超える沸点を有する炭化水素を含む減圧残油である。原油分析データは、精製者が原油留分の一般的な組成および特性を理解するのに役立ち、したがって、留分を適切な精製ユニットで最も効率的かつ効果的に処理できる。
【0013】
有機化学の分野では、従来から、分子内の電子遷移を扱う紫外可視分光光度法が紫外領域(200nm〜400nm)で強く吸収する芳香族および芳香族複素環化合物に関する特有の情報を提供してきた。これにもかかわらず、原油の複雑な分子的性質のために、これらの油の紫外可視スペクトルは、しばしば特徴のない、不明瞭なスペクトルとして記述される。
【0014】
新規の迅速かつ直接的な方法は、全原油の分析によって原油の組成と特性をよりよく理解するのに役立ち、生産者、販売者、精製者および/または他の原油使用者の費用、努力および時間の大幅な節約になる。したがって、異なる供給源からの原油留分の特性を求め、それらの沸点特性および/または性質に基づいて原油留分を分類するための改善されたシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
原油サンプルの1つまたは複数の所与の蒸留重量パーセントに対して1つまたは複数の蒸留温度を与えるためのシステムおよび方法が提供され、これらを用いて模擬蒸留曲線を生成することができる。原油サンプルの模擬蒸留温度は、原油サンプルの紫外/可視分光測定から得られる密度およびデータの関数として与えられる。この相関は、分留/蒸留(原油分析)を行わずに軽油指標特性に関する情報も与え、生産者、精製者および販売者が油質をベンチマークし、その結果、通例となっている広範で時間がかかる原油分析を実施することなく油を評価するのに役立つ。
【0016】
本発明の別の利点および特徴は、添付の図面を参照して考慮されるとき、以下の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書に記載の通り調製された原油サンプル溶液の典型的な紫外可視分光データをプロットした図である。
【
図2】本明細書のシステムおよび方法を用いて原油サンプルの蒸留データを特徴付けるために実施されるステップのプロセスフロー図である。
【
図3】1つの実施形態にしたがって本発明を実施するためのシステムの構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書のシステムおよび方法において、スペクトルは、適した既知の、または開発予定の紫外可視分光光度法によって得られる。紫外領域(200nm〜400nm)で強く吸収する芳香族および芳香族複素環化合物に関する特有の情報を提供するために、本明細書の方法およびシステムにしたがい、原油のサンプルに対して紫外可視分光光度法が実施される。特定の個々の芳香族化合物および成分は、明確に定義された波長に極大を有する。原油の紫外スペクトルから既知の芳香族化合物および成分の波長の極大が評価および抽出される。これらの極大を用いて、原油の芳香族含有量の指数が式で表される。これらの指数を用いて、油サンプルの模擬蒸留データを得ることができる。提供される方法およびシステムによれば、この情報が、紫外可視走査によって、従来の分析法と比べて比較的迅速かつ安価に得られる。
【0019】
炭化水素油のサンプルから得られる紫外/可視分光データおよびサンプルの密度に基づいて炭化水素油の沸点分布を測定するための方法が提供される。サンプルは、紫外/可視分光分析のために調製される。サンプルのスペクトルデータは、紫外/可視分光分析によって得られる。サンプルの紫外/可視分光分析によって得られるコンピュータスペクトルデータは、コンピュータに入力される。紫外/可視分光データからの炭化水素油の累積紫外/可視吸光度が計算される。炭化水素油の累積紫外/可視吸光度は、100W%に対して規格化される。
波長は、0.5、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、99.5W%点で求められる。炭化水素油の沸点分布は、規格化紫外/可視データおよび炭化水素油の密度から計算される。
【0020】
このシステムおよび方法は、原油、ビチューメン、重油、頁岩油から、ならびに水素化処理、水素化加工、流動接触分解、コーキングおよびビスブレーキングまたは石炭液化を含む精製プロセスユニットから得られる天然に存在する炭化水素に適用できる。
【0021】
図1は、本明細書の1つの実施形態による方法におけるプロセスフローチャートを示す。原油サンプルを調製し、200〜500nmの間で、特定の実施形態では220〜400nmの間で紫外可視分光光度法により分析した。ステップ210において、原油サンプルの密度が得られる。
【0022】
ステップ220において、5個〜20個の炭素原子を有するパラフィン系溶媒および極性溶媒の2部溶媒系(例えば、90:10%v/vの比率)に原油のサンプルを溶解させることにより、溶液が調製される。特定の実施形態では、効果的なパラフィン系溶媒にはイソオクタンが含まれる。特定の実施形態では、効果的な極性溶媒にはジクロロメタンが含まれる。
【0023】
極性溶媒の使用は、原油サンプルからのアスファルテンの沈殿を防ぎ、すべての溶液が測定のために半透明になるようにする。極性溶媒は、そのヒルデブランド溶解度係数またはその二次元溶解度パラメータに基づいて選択される。全般的なヒルデブランド溶解度係数は、周知の極性の尺度であり、多数の化合物について計算されている。例えば、Journal of Paint Technology,Vol.39,No.505(1967年2月)を参照されたい。溶媒は、その二次元溶解度パラメータによっても記述することができる。例えば、I.A.Wiehe,「Polygon Mapping with Two−Dimensional Solubility Parameters」,I&EC Research,34,661−673(1995)を参照されたい。水素結合および電子供与体−受容体相互作用を表す複合溶解度パラメータ成分は、ある分子の原子と別の分子の第2の原子との間の特定の配向を必要とする相互作用エネルギーの目安である。ファンデルワールス相互作用および双極子相互作用を表す力場の溶解度パラメータは、分子の配向の変化によって破壊されない液体の相互作用エネルギーの目安である。
【0024】
原油溶液の紫外吸光度は、例えば、従来の1cmの石英セル内で測定される。サンプルの吸光度値は、所定の範囲、例えば、200〜500nmの間、特定の実施形態では220〜400nmの間で、所定の間隔(例えば、偶数、奇数または任意の数の間隔)で合計される。
【0025】
ステップ230において、希薄溶液中の1つまたは複数の原油のサンプルが、紫外可視分光光度法によって波長200〜500nmで、特定の実施形態では220〜400nmで分析される。
【0026】
ステップ240において、密度およびスペクトルデータがコンピュータに入力される。
【0027】
ステップ250において、所与の蒸留重量パーセントでの蒸留温度が、既知の重量パーセント吸光度値での
波長および密度の関数として計算される。
【0028】
式(1)を用いて所与の蒸留重量パーセントに対する蒸留温度が計算され、与えられる:
式中:
DTは蒸留重量パーセントであり、K
SD、X1
SD、X2
SD、X3
SD、X4
SD、X5
SD、X6
SD、X7
SD、X8
SDおよびX9
SDは定数であり、DENはサンプルの密度(Kg/L)であり、UVVWLはDTでの
波長である。
【0029】
それによって計算モジュールを実施することができるコンピュータシステム300の例示的なブロック図を
図2に示す。コンピュータシステム300は、中央処理装置などのプロセッサ310、入力/出力インタフェース320およびサポート回路330を含む。コンピュータ300が人間との直接対話を必要とする特定の実施形態では、ディスプレイ340と、キーボード、マウスまたはポインタなどの入力装置350も設けられる。ディスプレイ340、入力装置350、プロセッサ310、入力/出力インタフェース320およびサポート回路330は、メモリユニット370にも接続するバス360に接続されて示されている。メモリ370は、プログラム記憶メモリ380およびデータ記憶メモリ390を含む。ただし、コンピュータ300は、ディスプレイ340および入力装置350の直接ヒューマンインタフェースコンポーネントと共に示してあるが、モジュールのプログラミングならびにデータのインポート(importation)およびエクスポート(exportation)は、例えば、コンピュータ300がネットワークに接続され、プログラミング操作およびディスプレイ操作が別の関連するコンピュータ上で行われるか、またはプログラマブルロジックコントローラをインタフェースすることが当技術分野において周知である着脱可能な入力装置を介して行われるインタフェース320上でも実現することができることに留意されたい。
【0030】
プログラム記憶メモリ380およびデータ記憶メモリ390はそれぞれ揮発性(RAM)および不揮発性(ROM)メモリユニットを含むことができて、ハードディスクおよびバックアップ記憶容量も含むことができて、プログラム記憶メモリ380およびデータ記憶メモリ390の両方を単一のメモリデバイスにまとめることも、複数のメモリデバイスに分けることもできる。プログラム記憶メモリ380は、ソフトウェアプログラムモジュールおよび関連データを格納し、特に、模擬蒸留データを得るための(1つまたは複数の)計算モジュールを格納する。データ記憶メモリ390は、原油サンプルの密度、本システムの1つまたは複数のモジュールによって使用される紫外吸光度データまたはその一部、および本システムの1つまたは複数のモジュールによって生成される計算されたデータを含む、本システムの1つまたは複数のモジュールによって使用および/または生成されるデータを格納する。
【0031】
本明細書のシステムおよび方法にしたがって計算され、与えられた結果は、本明細書に記載の使用のために表示、音声出力、印刷および/またはメモリに格納される。
【0032】
コンピュータシステム300は、パソコン、ミニコンピュータ、ワークステーション、メインフレーム、プログラマブルロジックコントローラなどの専用コントローラまたはこれらの組み合わせなどの任意の汎用または専用コンピュータにすることができることを理解されたい。コンピュータシステム300は、例示目的で、単一のコンピュータユニットとして示しているが、このシステムは、処理負荷およびデータベースサイズ、例えば、処理されるサンプルの総数およびシステム上に保持される結果に応じて規模を変えることができるコンピュータのグループ/ファームを含むことができる。コンピュータシステム300は、一般的なマルチタスクコンピュータとして役目を果たすことができる。
【0033】
コンピューティングデバイス300は、好ましくは、例えば、プログラム記憶メモリ390に格納され、揮発性メモリからプロセッサ310によって実行されるオペレーティングシステムをサポートする。本システムおよび方法によれば、オペレーティングシステムは、デバイス300を(1つまたは複数の)計算モジュールにインタフェースするための命令を含む。本発明の実施形態によれば、オペレーティングシステムは、コンピュータシステム300をインターネットおよび/またはプライベートネットワークにインタフェースするための命令を含む。
【0034】
[実施例]
表3は、220〜400nmの波長範囲におけるアラビアの重質原油のサンプルの値を表にした一例である。このデータは
図1の曲線に示してある。
【0036】
0.8828kg/ltの密度および5W%=94℃;10W%=138℃;20W%=204℃;30W%=267℃;40W%=326℃;50W%=384℃;60W%=446℃;70W%=513℃;80W%=592℃の模擬蒸留曲線を有する原油サンプルを紫外/可視分光光度計で分析し、
波長範囲2
00〜500
nmでスペクトルを得た。サンプルの累積紫外/可視吸光度を紫外/可視スペクトルデータから計算し、規格化した;補間法および/または数値法を以下の通り用いて、%吸光度対
波長の概略を得た:
【0037】
線形回帰によって得られた以下の一定値を用いて、50W%点での温度を予測した:
K
SD=1.683972E+04
X1
SD=2.995790E+07
X2
SD=−1.393801E+05
X3
SD=6.969095E+08
X4
SD=2.209817E+05
X5
SD=5.872777E+07
X6
SD=7.016542E+10
X7
SD=9.510150E+04
X8
SD=1.472998E+07
X9
SD=2.637995E+07
【0038】
50%の蒸留重量パーセントDTでの上述の定数を用いて、蒸留重量パーセント50%での模擬蒸留温度が計算され、412.4℃が与えられる。0.5、5、10、20、30、40、50、60、70、80W%点での温度が計算され、実際のデータと比較される。完全な一致が得られた。
【0039】
代替の実施形態では、本発明を、コンピュータ化された計算システムと共に使用するためのコンピュータプログラム製品として実施することができる。本発明の機能を定義するプログラムは、任意の適切なプログラミング言語で書くことができて、以下を含むが、これらには限定されない任意の形式でコンピュータに送ることができることを当業者であれば容易に理解するであろう:(a)書き込み不可能な記憶媒体(例えば、ROMまたはCD−ROMディスクなどの読み出し専用メモリデバイス)に恒久的に格納された情報;(b)書き込み可能な記憶媒体(例えば、フロッピーディスクおよびハードドライブ)に変更可能に格納された情報;および/または(c)ローカルエリアネットワーク、電話網、またはインターネットなどの公衆網などの通信媒体を通じてコンピュータに伝えられる情報。本発明の方法を実施するコンピュータ可読命令を運ぶとき、そのようなコンピュータ可読媒体は、本発明の代替の実施形態を表す。
【0040】
本明細書に一般的に示されるように、システムの実施形態は、そこで具体化されるコンピュータ可読コード手段を有するコンピュータ使用可能媒体を含むさまざまなコンピュータ可読媒体を組み込むことができる。記載されたさまざまなプロセスに関連するソフトウェアは、ソフトウェアがロードおよび起動される多種多様なコンピュータアクセス可能媒体において具体化することができることを当業者は理解されよう。In re Beauregard、35 USPQ2d 1383(米国特許第5710578号明細書)にしたがい、本発明は、本発明の範囲内に、このタイプのコンピュータ可読媒体を企図および包含する。特定の実施形態では、In re Nuijten、500 F.3d 1346(Fed.Cir.2007)(米国特許出願第09/211928号明細書)にしたがい、本特許請求の範囲は、媒体が有形かつ非一時的であるコンピュータ可読媒体に限定される。
【0041】
本発明のシステムおよび方法は、添付の図面を参照して説明されてきた;しかし、変更は当業者には明らかになるであろう。本発明の保護の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。