特許第6836557号(P6836557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836557
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】人間協調ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   B25J19/06
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-161135(P2018-161135)
(22)【出願日】2018年8月30日
(65)【公開番号】特開2020-32488(P2020-32488A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年1月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】般若 剛
(72)【発明者】
【氏名】平川 学
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−177293(JP,A)
【文献】 特開2003−025272(JP,A)
【文献】 特開2015−085492(JP,A)
【文献】 特開2015−123505(JP,A)
【文献】 特表2017−530020(JP,A)
【文献】 特開2016−064474(JP,A)
【文献】 特開2016−120561(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143913(US,A1)
【文献】 特開2013−138793(JP,A)
【文献】 特開2016−072928(JP,A)
【文献】 特開2016−203315(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/060540(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0239815(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0285625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/00−19/06
G05B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
該ロボットを制御する制御装置とを備え、
前記ロボットが、該ロボットに加わる外力を検出するセンサを備え、
前記制御装置が、検出された前記外力が第1閾値以上である場合に前記ロボットの動作を停止し、検出された前記外力が、前記第1閾値を超える第2閾値以上である場合に警告を行う人間協調ロボットシステム。
【請求項2】
前記センサにより検出された前記外力が前記第1閾値より小さい第3閾値以上第1閾値未満である場合に、前記制御装置が、前記外力を低減する方向に前記ロボットを退避動作させる請求項1に記載の人間協調ロボットシステム。
【請求項3】
前記警告が、前記ロボットを振動的に動作させることである請求項1または請求項2に記載の人間協調ロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置が、警報装置を備え、
前記警告が、前記警報装置を作動させることにより行われる請求項1または請求項2に記載の人間協調ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間協調ロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットと人間とが作業空間を共有する人間協調ロボットシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この人間協調ロボットシステムにおいては、ロボットが動作状態を検出する力センサ等の各種センサを備え、各種センサにより検出されるロボットの動作状態に関連する物理量が第1閾値以上かつ第2閾値未満である場合に、ロボットに退避動作を行わせ、物理量が第2閾値以上である場合にはロボットを急停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−64474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の人間協調ロボットシステムにおいては、退避動作を行わせる意図でユーザがロボットを押す場合に、不慣れなユーザはロボットが停止するほど大きな力で押す可能性があり、ロボットが停止した場合にユーザは力が足りないと勘違いしてさらに大きな力で押すことがある。このような場合には、ロボットにかかる負荷が過大となり、ロボットが故障する原因となる。
本発明は、ユーザが不慣れな場合であっても、ロボットに過大な負荷がかかることを防止することができる人間協調ロボットシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ロボットと、該ロボットを制御する制御装置とを備え、前記ロボットが、該ロボットに加わる外力を検出するセンサを備え、前記制御装置が、検出された前記外力が第1閾値以上である場合に前記ロボットの動作を停止し、検出された前記外力が、前記第1閾値を超える第2閾値以上である場合に警告を行う人間協調ロボットシステムである。
【0006】
本態様によれば、ロボットと作業者とが作業空間を共有する場合において、作業者がロボットを押すことによりロボットに外力が作用すると、外力がセンサによって検出され、ロボットが検出された外力に対応した動作を行う。検出された外力が第1閾値以上となる場合には、制御装置がロボットの動作を停止させる。ロボットを押圧しているにも関わらずロボットが停止したときには、慣れている作業者であれば、力のかけすぎであることを認識できる。
【0007】
これに対して不慣れな作業者の場合に、ロボットが停止したのは力が足りないからであると勘違いすることがあり、その場合には作業者により、より大きな外力がロボットに加えられる。この場合において、本態様によれば、センサにより検出された外力が第1閾値を超える第2閾値以上となった場合に、制御装置により警告が発せられる。警告が発せられることにより、作業者が不慣れな場合であっても、何らかの不都合が発生していることを認識させることができ、それ以上の外力が作業者によってロボットに加えられることを防止することができる。
【0008】
上記態様においては、前記センサにより検出された前記外力が前記第1閾値より小さい第3閾値以上第1閾値未満である場合に、前記制御装置が、前記外力を低減する方向に前記ロボットを退避動作させてもよい。
この構成により、作業者はロボットに対し第3閾値以上第1閾値未満の外力を加えることによって、ロボットに退避動作をさせることができ、外力の方向にロボットを移動させることができる。そして、外力が第1閾値以上となったときに、ロボットを停止させることができる。
【0009】
また、上記態様においては、前記警告が、前記ロボットを振動的に動作させることであってもよい。
この構成により、外力が第2閾値以上となったときに、ロボットが振動的に動作させられる。ロボットを一方向に押圧している場合に、ロボットが振動的に動作することは通常では考えられないため、何らかの不具合が発生しているものと作業者に警告することができる。警告を受けた作業者は、それ以上の外力でロボットを押し続けることを止めるため、ロボットに過大な外力がかかることを防止することができる。また、ロボットの動作によって警告することで、警報装置等の設備を新たに設ける必要がなく簡易である。
【0010】
また、上記態様においては、前記制御装置が、警報装置を備え、前記警告が、前記警報装置を作動させることにより行われてもよい。
この構成により、外力が第2閾値以上となったときに、制御装置が警報装置を作動させて警告を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザが不慣れな場合であっても、ロボットに過大な負荷がかかることを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る人間協調ロボットシステムを示す全体構成図である。
図2図1の人間協調ロボットシステムの制御装置を説明するブロック図である。
図3図2の制御装置の判定部による判定手順を説明するフローチャートである。
図4図1の人間協調ロボットシステムのロボットに加わる外力の大きさとロボットの動作との関係を示すグラフである。
図5図1の人間協調ロボットシステムにおいてロボットに第2閾値以上の外力が作用したときの警告動作を説明する図である。
図6図1の人間協調ロボットシステムの変形例を示す全体構成図である。
図7図6の人間協調ロボットシステムの制御装置を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る人間協調ロボットシステム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る人間協調ロボットシステム1は、図1に示されるように、ロボット2と作業者(人間)と作業空間を共有する環境で動作するシステムであり、ロボット2とロボット2を制御する制御装置(制御部)3とを備えている。
【0014】
ロボット2は、例えば、図1に示されるように、6軸の多関節型ロボットである。ロボット2は6個の関節軸に設けられたサーボモータ(図示略)によって、所望の位置および姿勢に動作させることができる。
また、ロボット2は動作状態を検出する各種センサ4を備えている。センサ4には、例えば、ロボット2に作用する外力Fを検出するセンサ4、ロボット2の各関節軸に作用するトルクを検出するトルクセンサ(図示略)、ロボット2の加速度を検出する加速度センサ(図示略)、サーボモータの回転位置を検出するエンコーダ(図示略)等が含まれる。各センサ4は、ロボット2に内蔵されていてもよいし、ロボット2の外部に取り付けられていてもよい。
【0015】
制御装置3は、CPU、RAM、ROMならびに表示装置および入力装置等の外部装置との間で信号またはデータを送受信するインタフェース等のハードウェア構成を有するコンピュータである。
制御装置3は、図2に示されるように、動作プログラムを記憶する記憶部5と、ロボット2に備えられた各種センサ4により検出された情報に基づいて、ロボット2に作用する外力Fを算出する外力算出部6と、算出された外力Fが、第3閾値Th3以上第1閾値Th1未満であるか、第1閾値Th1以上第2閾値Th2未満であるか、または第2閾値Th2以上であるか否かを判定する判定部7と、動作プログラムまたは判定の結果に基づいて、ロボット2を動作させる指令を生成する指令生成部8とを備えている。第2閾値Th2は、ロボット2に損傷が与えられる外力Fよりも十分に小さい値に設定されている。
【0016】
指令生成部8は、動作プログラムに基づく指令を生成してロボット2を通常動作させている状態で、図3に示されるように、センサ4により検出された情報に基づいて外力Fが検出されたか否かを判定し(ステップS1)、外力Fが検出された場合には、外力Fが第3閾値Th3以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0017】
図3および図4に示されるように、外力Fが第3閾値Th3未満である場合には、動作プログラムに基づく通常動作を継続する指令が生成される(ステップS3)。判定部7による判定の結果、外力Fが第3閾値Th3以上である場合には第1閾値Th1以上であるか否か判定され(ステップS4)、第1閾値Th1未満である場合には、「急停止」に比べてより長い停止時間をかけてロボット2を停止させるか、外力Fが小さくなる方向にロボット2を退避動作させる指令を生成する(ステップS5)。
【0018】
判定部7による判定の結果、外力Fが第1閾値Th1以上である場合には第2閾値Th2以上であるか否かが判定され(ステップS6)、第2閾値Th2未満である場合には、指令生成部8は、ロボット2を「急停止」、すなわち、短時間に停止させる指令を生成する(ステップS7)。
【0019】
そして、判定部7による判定の結果、外力Fが第2閾値Th2以上である場合には(ステップS6)、指令生成部8は、警告を行う指令を生成する(ステップS8)。
本実施形態においては、指令生成部8は、サーボモータを振動的に動作させることにより、ロボット2の機体を振動させることにより、ロボット2に接触して、ロボット2を押している作業者に警告を行う指令を生成する。
【0020】
このように構成された本実施形態に係る人間協調ロボットシステム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る人間協調ロボットシステム1において、制御装置3は予め教示された動作プログラムに基づいてロボット2を動作させることにより、作業者と共有した作業空間において作業をしている。
【0021】
この状態において、作業者は何らかの理由によりロボット2を退避させたいときにロボット2の表面を手で、退避させたい方向に直接押す。慣れた作業者である場合には、どの程度の力で押せばロボット2に退避動作させることができるかを認識しており、各種センサ4により検出される外力Fが第3閾値Th3以上第1閾値Th1未満である場合に、ロボット2は退避動作させられる。
【0022】
作業者がロボット2に退避動作させようとしたにもかかわらず、外力Fが第1閾値Th1以上第2閾値Th2未満となった場合には制御装置3はロボット2を急停止させる。慣れた作業者である場合には、ロボット2が急停止することにより、加えた外力Fが大きすぎたことを認識できる。しかしながら、不慣れな作業者である場合には、ロボット2が急停止したときに、加えている外力Fが足りないと勘違いし、さらに大きな外力Fを加えてしまうことが考えられる。
【0023】
本実施形態においては、図5に示されるように、このように停止しているロボット2に作業者がさらに大きな外力を加えることにより、外力Fが第2閾値Th2以上となった場合に、制御装置3がロボット2を振動的に動作させることによって警告する。これにより、作業者が接触しているロボット2の機体が振動するので、作業者は、操作が誤っているものと認識することができる。
すなわち、作業者が不慣れな場合であっても、ロボット2に過大な負荷がかかることを防止することができるという利点がある。
【0024】
また、本実施形態においては、制御装置3が、ロボット2を振動的に動作させることにより接触している作業者に警告を与えることとしたので、特別な警報装置を設置する必要がないという利点もある。
【0025】
なお、本実施形態に係る人間協調ロボットシステム1においては、制御装置3が、ロボット2を振動的に動作させることにより接触している作業者に警告を与える場合を例示したが、これに代えて、図6および図7に示されるように、警報装置9を用意し、警報装置9の作動により警告を与えることにしてもよい。
警報装置9としては、音声を発生するスピーカ、光を点滅あるいは転倒させるライトあるいは警告を表示する表示装置等の任意の警報装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 人間協調ロボットシステム
2 ロボット
3 制御装置(制御部)
4 センサ
9 警報装置
F 外力
Th1 第1閾値
Th2 第2閾値
Th3 第3閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7