特許第6836559号(P6836559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836559
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/10 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   B25J15/10
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-167717(P2018-167717)
(22)【出願日】2018年9月7日
(65)【公開番号】特開2020-40135(P2020-40135A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2020年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 怜
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−115893(JP,A)
【文献】 特開2002−361588(JP,A)
【文献】 特開平01−240249(JP,A)
【文献】 米国特許第05052736(US,A)
【文献】 米国特許第05150937(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸回りの周方向に相互に間隔をおいて配置され、ワークを把持する3以上の把持部と、
該3以上の把持部を前記所定の軸に近接する閉方向および前記所定の軸から離間する開方向に移動させる駆動部とを備え、
少なくとも1つの前記把持部が、前記ワークと接触する位置において該ワークからの前記所定の軸回りの外力に従って前記所定の軸回りに受動的に揺動自在であり、前記ワークの表面に沿って前記所定の軸回りに揺動しながら前記閉方向または前記開方向に移動するロボットハンド。
【請求項2】
少なくとも他の1つの前記把持部が、前記ワークと接触する位置において前記所定の軸回りに揺動不可である請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記少なくとも1つの把持部を、前記周方向の所定の中立位置に付勢する付勢部材を備える請求項1または請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記少なくとも1つの把持部の前記所定の軸回りの揺動を所定の角度範囲内に制限する揺動制限部材を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記揺動制限部材は、前記少なくとも1つの把持部が前記所定の軸に平行な方向に通過する少なくとも1つの開口部を有し、
前記開口部の幅が、前記所定の軸に向かって漸次小さくまたは漸次大きくなっている請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記開口部が、前記所定の軸側または該所定の軸とは反対側の一端部に、前記少なくとも1つの把持部の前記所定の軸回りの揺動を防止する幅狭部を有する請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記少なくとも1つの把持部が、
前記所定の軸に平行に延びるシャフトと、
該シャフトの外周面に取り付けられ、該シャフトの長手軸回りに回転自在である回転部材とを備え、
該回転部材が、前記所定の軸に平行な方向において、前記揺動制限部材の前記開口部と同一位置に配置されている請求項5または請求項6に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送用のロボットに取り付けられるロボットハンドは、搬送対象のワークに応じて変更される。ロボットハンドは、ワークの形状および寸法に応じて、ワークの種類毎に設計される。したがって、複数種類のロボットハンドを作製しなければならず、コストがかかる。特に、ワークの形状に応じた3次元形状の把持部の加工コストは高い。また、多くのロボットハンドの保管に場所が必要となる。
このような不都合を解消するために、多様なワークに対応可能なロボットハンドが考案されている(特許文献1〜7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−105878号公報
【特許文献2】実開昭60−190591号公報
【特許文献3】特開2011−183474号公報
【特許文献4】特開2005−144575号公報
【特許文献5】実開昭57−166690号公報
【特許文献6】特開平02−298487号公報
【特許文献7】特開平03−294197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜7に記載のロボットハンドは、吸着パッドまたは把持指のような複数の把持部の相対位置を変更することによって、形状および寸法が異なる多様なワークを把持することができる。しかしながら、特許文献1〜7では、ワークの形状および寸法に対して複数の把持部の各々の適切な位置を予め決定し、作業者の手作業によって各把持部を適切な位置に変更するか、または駆動装置によって各把持部の位置を適切に制御する必要がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、把持部の位置をワークの形状および寸法に応じた適切な位置に自動調整し、多様なワークを安定的に把持することができるロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、所定の軸回りの周方向に相互に間隔をおいて配置され、ワークを把持する3以上の把持部と、該3以上の把持部を前記所定の軸に近接する閉方向および前記所定の軸から離間する開方向に移動させる駆動部とを備え、少なくとも1つの前記把持部が、前記ワークと接触する位置において該ワークからの前記所定の軸回りの外力に従って前記所定の軸回りに受動的に揺動自在であり、前記ワークの表面に沿って前記所定の軸回りに揺動しながら前記閉方向または前記開方向に移動するロボットハンドである。
【0007】
本態様に係るロボットハンドは、3以上の把持部の開閉によってワークを把持および解放する。具体的には、内径チャック式の場合、筒状のワークの内側に配置された把持部が開くことにってワークの内面を把持し、把持部が閉じることによってワークを解放する。外径チャック式の場合、ワークの外側に配置された把持部が閉じることによってワークの外面を把持し、把持部が開くことによってワークを解放する。
【0008】
本態様において、少なくとも1つの把持部が、ワークと接触する位置において揺動自在である。内径チャック式の場合、少なくとも1つの把持部は、開方向の移動の途中でワークの内面と接触し、その後、ワークの内面との接触を維持しながらワークの内面の形状に沿って受動的に揺動する。外径チャック式の場合、少なくとも1つの把持部は、閉方向の移動の途中でワークの外面と接触し、その後、ワークの外面との接触を維持しながらワークの外面の形状に沿って受動的に揺動する。このような少なくとも1つの把持部の受動的な揺動によって、3以上の把持部の相対位置がワークの内面または外面の形状および寸法に合わせて変更される。これにより、把持部の位置をワークの形状および寸法に応じた適切な位置に自動調整し、多様なワークを安定的に把持することができる。
【0009】
上記態様において、少なくとも他の1つの前記把持部が、前記ワークと接触する位置において前記所定の軸回りに揺動不可であってもよい。
全ての把持部が揺動自在である場合、ワークを把持した状態で3以上の把持部の配置に過度な偏りが生じ得る。少なくとも1つの把持部が揺動不可であることによって、把持部の配置に過度な偏りが生じることを防ぐことができる。
【0010】
上記態様において、前記少なくとも1つの把持部を、前記周方向の所定の中立位置に付勢する付勢部材を備えていてもよい。
前記少なくとも1つの把持部は、接触するワークから所定の軸回りの外力を受けたときに、付勢部材の付勢力に抗して揺動する。一方、前記少なくとも1つの把持部にワークからの外力が作用していないときには、付勢部材による付勢力によって前記少なくとも1つの把持部を中立位置に保持することができる。
【0011】
上記態様において、前記少なくとも1つの把持部の前記所定の軸回りの揺動を所定の角度範囲内に制限する揺動制限部材を備えていてもよい。
把持部の揺動可能な角度範囲に制限がない場合、3以上の把持部の配置に過度な偏りが生じ得る。揺動制限部材によって把持部の揺動を所定の角度範囲内に制限することで、3以上の把持部の配置に過度な偏りが生じることを防ぐことができる。
【0012】
上記態様において、前記揺動制限部材は、前記少なくとも1つの把持部が前記所定の軸に平行な方向に通過する少なくとも1つの開口部を有し、前記開口部の幅が、前記所定の軸に向かって漸次小さくまたは漸次大きくなっていてもよい。
内径チャック式の場合、開口部の幅は、所定の軸に向かって漸次小さくなる。これにより、把持部が開方向に移動するにつれて、把持部の揺動可能な角度範囲が広がる。外径チャック式の場合、開口部の幅は、所定の軸に向かって漸次大きくなる。これにより、把持部が閉方向に移動するにつれて、把持部の揺動可能な角度範囲が広がる。
【0013】
上記態様において、前記開口部が、前記所定の軸側または該所定の軸とは反対側の一端部に、前記少なくとも1つの把持部の前記所定の軸回りの揺動を防止する幅狭部を有していてもよい。
内径チャック式の場合、把持部が閉じた待機状態において、前記少なくとも1つの把持部は、開口部内の所定の軸側の端部の幅狭部に配置される。外径チャック式の場合、把持部が開いた待機状態において、前記少なくとも1つの把持部は、開口部内の所定の軸とは反対側の端部の幅狭部に配置される。幅狭部において、所定の軸回りの前記少なくとも1つの把持部の両方向の揺動が防止される。これにより、待機状態の把持部を一定位置に保持することができる。
【0014】
上記態様において、前記少なくとも1つの把持部が、前記所定の軸に平行に延びるシャフトと、該シャフトの外周面に取り付けられ、該シャフトの長手軸回りに回転自在である回転部材とを備え、該回転部材が、前記所定の軸に平行な方向において、前記揺動制限部材の前記開口部と同一位置に配置されていてもよい。
この構成によれば、開口部内のシャフトは回転部材を介して揺動制限部材に接触する。把持部は、回転部材の回転によって、揺動制限部材と接触した状態のまま開口部の縁に沿って開方向および閉方向に移動することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、把持部の位置をワークの形状および寸法に応じた適切な位置に自動調整し、多様なワークを安定的に把持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドを上側から見た斜視図である。
図2】図のロボットハンドを下側から見た概略平面図である。
図3図1のロボットハンドに設けられる把持ユニットを上側から見た斜視図である。
図4図1のロボットハンドの揺動支持機構の構成を示す概略断面図である。
図5図1のロボットハンドの変形例を下側から見た概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係るロボットハンド1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るロボットハンド1は、筒状のワークの内面を把持する内径チャック式のハンドである。ロボットハンド1は、図1および図2に示されるように、所定の中心軸A回りの周方向に相互に間隔をおいて配置された3つの把持ユニット2A,2B,2Cと、2つの把持ユニット2A,2Bを中心軸A回りに揺動自在に支持する揺動支持機構3と、2つの把持ユニット2A,2Bの各々の揺動を所定の角度範囲内に機械的に制限する揺動制限部材4と、2つの把持ユニット2A,2Bの各々を所定の中立位置に付勢する付勢部材5と、ロボットハンド1をロボットに取り付けるためのハンドフランジ6とを備えている。
なお、ロボットハンド1に設けられる把持ユニットの数は、4以上であってもよい。また、揺動自在である把持ユニットの数は、1つのみ、または3以上であってもよい。
【0018】
ハンドフランジ6は、ロボットと着脱される部分であり、中心軸Aと同軸の円板状である。以下、中心軸Aに沿う方向において、ハンドフランジ6側をロボットハンド1の上側と定義し、ハンドフランジ6とは反対側(把持部7側)をロボットハンド1の下側と定義する。
【0019】
各把持ユニット2A,2B,2Cは、把持部7と、把持部7を直線移動させる駆動部8とを備えている。
把持部7は、中心軸Aに平行なシャフト9と、シャフト9の下端に固定された先端部10と、シャフト9の外周面に取り付けられた円環状または円筒状の回転部材11とを備えている。
【0020】
先端部10は、ワークを把持する際にワークの内面に密着させられる部分である。
回転部材11は、シャフト9の長手軸回りに回転自在にシャフト9に支持されている。例えば、回転部材11は、ベアリングの外輪である。ベアリングの内輪がシャフト9の外周面に固定され、ベアリングの外輪がシャフト9に対してシャフト9の長手軸回りに回転自在である。中心軸Aに平行な方向において、回転部材11は、後述する揺動制限部材4と同一位置に配置されており、把持部7は回転部材11を介して揺動制限部材4と接触する。
【0021】
駆動部8は、シャフト9の上端を支持し、把持部7を中心軸Aに近接する閉方向および中心軸Aから離間する開方向に移動させる。閉方向および開方向は、中心軸Aに直交する方向である。
【0022】
一例において、駆動部8は、図3に示されるように、シャフト9の上端が固定されたスライダ12と、スライダ12を開方向および閉方向に直線移動させるエアシリンダ13とを備えている。3つのエアシリンダ13は、エア回路(図示略)に接続された第1ポートおよび第2ポートをそれぞれ有している。エア回路を介して3つのエアシリンダ13の第1ポートに同時にエアが供給されることによって、3つの把持部7が相互に同期して開方向に移動し、3つの把持部7が開く。また、エア回路を介して3つのエアシリンダ13の第2ポートに同時にエアが供給されることによって、3つの把持部7が相互に同期して閉方向に移動し、3つの把持部7が閉じる。
なお、駆動部8は、エアシリンダ13に代えて、エアまたは電気を動力源として把持部7を直線移動させることができる他の手段、例えばステッピングモータを備えていてもよい。
【0023】
揺動支持機構3は、図4に示されるように、2つの把持ユニット2A,2Bを、中心軸Aと同軸の中心シャフト14回りに揺動自在に支持している。中心シャフト14は、ハンドフランジ6の下面から下側に向かって延びている。揺動支持機構3は、もう1つの把持ユニット2Cも、中心軸A回りに揺動自在に支持していてもよい。
【0024】
具体的には、揺動支持機構3は、軸受16によって中心シャフト14に支持されたプレート15を備えている。図4は、1つの把持ユニット2Aの揺動支持機構3のみを示している。プレート15は、中心軸Aに直交する方向に延び、プレート15の一端部に把持ユニット2Aが固定され、プレート15の他端部には、中心シャフト14が貫通する穴15aが設けられている。軸受16は、穴15aの内面と中心シャフト14の外面との間に配置されている。軸受16によって、プレート15および把持ユニット2Aは、中心軸A回りの外力に従って中心軸A回りに揺動自在に支持されている。
【0025】
揺動制限部材4は、中心軸Aに沿う方向において先端部10と駆動部8との間の位置に配置された板状の部材である。揺動制限部材4は、中心シャフト14の下端に固定され、中心軸Aに直交する方向に配置されている。図2に示されるように、揺動制限部材4は、周方向に均等に配列された3つの開口部4a,4b,4cを有している。各開口部4a,4b,4cは、揺動制限部材4を板厚方向に貫通し、各開口部4a,4b,4c内をシャフト9が中心軸Aに平行な方向に通過している。
【0026】
中心軸Aに沿う方向に見た平面視において、把持ユニット2A,2Bに対応する2つの開口部4a,4bは、中心軸Aに向かって幅が漸次小さくなる略三角形状であり、中心軸A側に1つの頂点部を有している。各開口部4a,4bは、中心軸A側において閉塞し、中心軸Aとは反対側において開放されている。シャフト9が頂点部よりも外側に配置されている状態において、開口部4aがシャフト9の幅よりも広い幅を有することによって、中心軸A回りのシャフト9の揺動が、開口部4aの幅によって規定される角度範囲内で許容される。
【0027】
中心軸Aに沿う方向に見た平面視において、把持ユニット2Cに対応する1つの開口部4cは、中心軸Aに向かって径方向に真っ直ぐに延びる略矩形状である。開口部4cは、中心軸A側において閉塞し、中心軸Aとは反対側において開放されている。開口部4cは、シャフト9の外径よりもわずかに大きい一定の幅を有し、開口部4c内でのシャフト9の中心軸A回りの揺動が阻止されるようになっている。
【0028】
図2は、3つの把持部7が、中心軸Aに最も近い待機位置に配置された閉状態を示している。閉状態において、3つの把持部7は、開口部4a,4b,4cの中心軸A側の端部の幅狭部4dに配置される。各開口部4a,4b,4cの幅狭部4dは、シャフト9の外径と略等しい幅を有し、中心軸A回りのシャフト9の両方向の揺動を防止する。したがって、閉状態では、各把持部7が待機位置に安定的に保持される。
【0029】
各把持ユニット2A,2Bは、付勢部材5によって、中心軸A回りの周方向の所定の中立位置に付勢されている。把持ユニット2A,2Bが中立位置に配置されているとき、3つの把持ユニット2A,2B,2Cは、中心軸A回りの周方向に等間隔をおいて配置されることが好ましい。付勢部材5は、例えば、コイルばねである。把持ユニット2A,2Bに中心軸A回りの外力が作用しているとき、把持ユニット2A,2Bは、付勢部材5の付勢力に抗して中心軸A回りに揺動する。一方、把持ユニット2A,2Bに中心軸A回りの外力が作用していないとき、または外力が小さいとき、各把持ユニット2A,2Bは、付勢部材5の付勢力によって中立位置に保持される。これにより、把持ユニット2A,2Bの不必要な揺動が防止されるようになっている。
【0030】
図示する例では、各把持ユニット2A,2Bが、シース18内に収容された一対の付勢部材5によって付勢されている。各把持ユニット2A,2Bの周方向の両側には、ハンドフランジ6と揺動制限部材4との間で中心軸Aと平行に延びる一対の支持シャフト17が設けられている。各把持ユニット2A,2Bは、一対の付勢部材5によって一対の支持シャフト17と連結されている。一方の付勢部材5は、把持ユニット2Aまたは2Bを中心軸回りの時計方向に付勢し、他方の付勢部材5は、把持ユニット2Aまたは2Bを中心軸回りの反時計方向に付勢する。
なお、各把持ユニット2A,2Bが、単一の付勢部材5によって付勢されていてもよい。
もう1つの把持ユニット2Cが揺動自在である場合には、把持ユニット2Cも一対の付勢部材5または単一の付勢部材5によって付勢されていてもよい。
【0031】
次に、ロボットハンド1の作用について説明する。
本実施形態に係るロボットハンド1は、ワークの搬送に使用されるロボットに取り付けられる。ロボットは、例えば、6軸の垂直多関節ロボットであり、ロボットアームの先端の手首フランジにロボットハンド1のハンドフランジ6が取り付けられる。ロボットハンド1が手首フランジに取り付けられた状態において、ロボットハンド1の中心軸Aは手首フランジの中心軸(第6軸)と一致する。ロボットは、パラレルリンクロボット等の他の種類のロボットであってもよい。
【0032】
ロボットの動作によって、ロボットハンド1の閉状態の3つの把持部7が筒状のワークの内側に挿入される。次に、駆動部8のエアシリンダ13の第1ポートにエアが供給されることによって3つの把持部7が開き、3つの先端部10がワークの内面に密着することによってワークを把持する。
【0033】
ここで、2つの把持ユニット2A,2Bは、中心軸A回りに揺動自在であり、かつ、付勢部材5によって中立位置に付勢されている。したがって、開く過程において、2つの把持ユニット2A,2Bの把持部7は、ワークの内面に接触するまでは中立位置に沿って開方向に直線移動し、ワークの内面に接触した後にワークの内面の形状に沿って中心軸A回りに受動的に揺動しながら開方向に移動する。一方、1つの把持ユニット2Cは中心軸A回りに揺動不可であるので、把持ユニット2Cの把持部7は開方向に直線移動のみし、中心軸A回りの把持ユニット2Cの把持部7の周方向の位置は一定である。
【0034】
次に、ワークを把持したロボットハンド1は、ロボットの動作によって搬送位置へ搬送される。次に、駆動部8のエアシリンダ13の第2ポートにエアが供給されることによって、3つの把持部7が閉じる。これにより、ワークがロボットハンド1から解放され、搬送位置に載置される。3つの把持部7が閉じる過程において、2つの把持ユニット2A,2Bの把持部7は、付勢部材5の付勢力に従って中心軸A回りに揺動し中立位置に復帰する。
【0035】
このように、本実施形態によれば、3つの把持部7のうちの2つが、ワークと接触し得る位置(幅狭部4dよりも外側の位置)において中心軸A回りに相互に独立に揺動自在である。そして、3つの把持部7が開く過程において、ワークの内面の形状および寸法に合わせて3つの把持部7の相対位置が変化する。これにより、3つの把持部7の相対位置をワークの形状および寸法に応じた適切な位置に自動調整することができる。すなわち、作業者による把持部7の位置の調整やロボットハンド1を制御する制御装置による把持部7の位置の制御無しで、ワークの形状および寸法に応じた3つの把持部7の位置の調整を達成することができる。また、3つの把持部7の相対位置の自動調整によって、ロボットに取り付けられるロボットハンド1の交換無しで、形状および寸法が異なる多様なワークを安定的に把持することができるという利点がある。
【0036】
また、3つの把持部7のうちの1つは中心軸A回りに揺動不可であり、他の2つの把持部7の揺動は開口部4a,4b内に制限される。3つの把持部7の全てが揺動自在である場合、または、2つの把持部7の揺動範囲が制限されていない場合、3つの把持部7の配置に偏りが生じ、その結果、ワークの把持の安定性が低下し得る。本実施形態によれば、3つの把持部7の相対位置に適度な自由度を持たせることができ、ワークの把持の高い安定性を実現することができる。
【0037】
また、各把持部7のシャフト9には回転部材11が設けられ、開口部4a,4b,4c内のシャフト9は回転部材11を介して揺動制限部材4と接触する。したがって、各把持部7は、回転部材11の回転によって、揺動制限部材4と接触した状態のまま滑らかに開方向および閉方向に移動することができるという利点がある。
【0038】
本実施形態においては、ロボットハンド1が、内径チャック式のハンドであることとしたが、これに代えて、ワークの外面を把持する外径チャック式のハンドであってもよい。
図5は、外径チャック式のロボットハンド1の揺動制限部材41を示している。
中心軸Aに沿う方向に見た平面視において、把持ユニット2A,2Bに対応する2つの開口部41a,41bは、中心軸Aに向かって幅が漸次広くなる略三角形状であり、中心軸Aとは反対側に1つの頂点部を有している。各開口部41a,41b,41cの中心軸Aとは反対側の端部は、閉塞し、シャフト9の外径と略等しい幅を有する幅狭部41dである。3つの把持部7が中心軸Aから最も遠い待機位置に配置された開状態において、3つの把持部7は、開口部41a,41b,41cの幅狭部41dに配置され、中心軸A回りの揺動が防止される。
【0039】
外径チャック式の場合、3つの把持部7がワークの外側に配置された状態で3つの把持部7が閉じることによってワークが把持され、3つの把持部7が開くことによってワークが解放される。ここで、3つの把持部7が閉じる過程において、2つの把持ユニット2A,2Bの把持部7がワークの外面の形状に沿って中心軸A回りに受動的に揺動することによって、3つの把持部7の相対位置がワークの形状および寸法に応じた適切な位置に自動調整される。これにより、外面の形状および寸法が異なる多様なワークを3つの把持部7によって安定的に把持することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 ロボットハンド
2A,2B,2C 把持ユニット
3 揺動支持機構
4,41 揺動制限部材
4a,4b,4c,41a,41b,41c 開口部
4d,41d 幅狭部
5 付勢部材
7 把持部
8 駆動部
9 シャフト
11 回転部材
A 中心軸(所定の軸)
図1
図2
図3
図4
図5