(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記参照点を利用する工程は、更に、前記圧電起動機構、前記バルブ閉鎖構造及び前記バルブシートのうちの少なくとも1つの摩耗特性を決定するべく、前記参照点を利用する工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記電圧データ及び前記位置データを用いる工程は、更に、前記1または複数の構成要素の摩耗特性を決定するために前記電圧データ及び前記位置データを用いる工程を有する
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1、
図1A及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に従う噴射システム10は、全体的に、制御要素14に通信可能に結合された噴射ディスペンサ12を備えている。噴射ディスペンサ12は、圧電起動機構16、バルブ閉鎖構造18、バルブシート22を含むノズルハブ20、を有している。具体的には、バルブ閉鎖構造18は、駆動ピン24及びポペット弁26を含んでいる。噴射ディスペンサ12は、好適な流体源30から流体供給導管32を通して、圧力下で流体材料38を受容する。駆動ピン24は、圧電起動機構16の動作によって駆動されて、ポペット弁26の先端70をバルブシート22に向けて移動させて、所定量の流体材料38をディスペンスさせる。
【0031】
圧電起動機構16は、圧電スタック91a、91b(以下、集約的に圧電スタック91aと称される)を有する圧電アクチュエータ34と、プランジャ99と、非対称撓み部94と、を含んでいる。撓み部94は、アクチュエータ本体98の一体部品であり、その中に圧電起動機構16が全体的に配置されていて、当該撓み部94をプランジャ99に接続する結合要素97を含んでいる。圧電アクチュエータ34内のバネ102は、プランジャ99及び圧電スタック91にバネ力を適用し、それらを圧縮状態に維持する。
【0032】
圧電スタック91を含む圧電アクチュエータ34を利用することは、噴射ディスペンサ12がバルブ閉鎖構造18の極めて具体的な位置制御を有することを許容する。なぜなら、圧電アクチュエータ34に適用される電圧は、圧電アクチュエータ34によって生成される力に比例するからである。具体的には、ある電圧が圧電スタック91に適用される時、圧電アクチュエータ34は伸長するが、当該長さの変化は適用される電圧の量に比例する。この比例関係のために、噴射システム10は、出口部40を通してディスペンス(投与)される流体材料38の動作プロファイルを微細に制御可能である。空気圧アクチュエータは、そのような比例関係を示さない。
【0033】
プランジャ99は、圧電スタック91を非対称撓み部94に接続する機械的インタフェースとして機能する。バネ102は、アセンブリ内で圧縮されており、当該バネ102によって生成されるバネ力は、圧電スタック91に一定の負荷(ロード)を適用し、これが圧電スタック91の予負荷となっている。非対称撓み部94は、金属材料からなり得て、駆動ピン24の下方先端に対向する駆動ピン24の一端に物理的に固定されたアーム100を有する。非対称撓み部94は、圧電スタック91の相対的に小さい変位を駆動ピン24の有用な変位に変換する機械的増幅器として機能する。駆動ピン24の有用な変位は、圧電スタック91の変位よりも顕著に大きい。
【0034】
圧電アクチュエータ34の圧電スタック91は、従来技術のように、導電体層と交互の圧電セラミック層からなる積層体である。バネ102からのバネ力は、圧電スタック91の積層された層を、圧縮の安定状態に維持する。圧電スタック91内の導電体は、制御要素14と関連する駆動回路に電気的に結合されている。これは、パルス幅変調、周波数変調、あるいはそれらの組合せ、を伴う従来周知の態様で、電流制限された出力信号を供給する。電力が駆動回路から周期的に供給される時、電界が確立されて、圧電スタック91内の圧電セラミック層の寸法を変える。
【0035】
圧電スタック91によって経験される寸法変化は、非対称撓み部94によって機械的に増幅されて、駆動ピン24をその長手方向軸に平行な方向に直線的に移動させる。圧電スタック91の圧電セラミック層が伸長する時、バネ102は、当該伸長力によって圧縮されて、非対称撓み部94は固定の回動軸回りに回動して、駆動ピン24の上向きのポペット弁から離れる方向の移動を引き起こす。これは、付勢要素39がポペット弁26をバルブシート22から離れるように移動する、ということを許容する。駆動ピン24は、駆動ピンガイド50によってガイドされる。起動力が除去されて圧電スタック91の圧電セラミック層が収縮することが許容されると、バネ102が伸長して、非対称撓み部94が回動して、駆動ピン24を下向きにポペット弁26と接触するように移動させ、ポペット弁26をバルブシート22に接触させて材料の液滴を噴射する。このように、エネルギ解除状態では、圧電アクチュエータ34がバルブを正常な閉鎖位置に維持する。動作時、圧電スタック91がエネルギ供給されエネルギ解除されることに伴って、非対称撓み部94が固定の回動軸回りに間欠的に両方向に揺動し、駆動ピン24をポペット弁26と接触及び接触解除するように移動させて、迅速に材料の液滴を噴射する。
【0036】
圧電起動機構16及びディスペンサ12は、一般的に、幾つかの実施形態において、代替的に、圧電スタック91が伸長する時に駆動ピン24が下向きに移動してポペット弁26と接触して出口部40から一定量の材料をディスペンスさせる、というように構成され得る。逆に、適用される電力が圧電スタック91から除去されて圧電スタック91が収縮することが許容されると、駆動ピン24は上向きに移動してポペット弁26から離れる。これにより、そのような実施形態では、圧電アクチュエータ34の圧電スタック91に適用される電圧は、駆動ピン24のポペット弁26に向かう下向き移動に対応する。
【0037】
バルブ閉鎖構造18が圧電起動機構16によって移動されている時、センサ装置48が、バルブ閉鎖構造18(例えば駆動ピン24及び/またはポペット弁26のような、その構成要素を含む)の位置を検出する。幾つかの特徴において、センサ装置48は、バルブ閉鎖構造18に直接的または間接的に取り付けられ得る。ターゲット(不図示)が、バルブ閉鎖構造18上に載置され得て、センサ装置48は、当該センサ装置48に対する当該ターゲットの位置を読み取る。例えば、
図1は、駆動ピン24上に設けられた線(不図示)を用いて位置及び動作を読み取るリニアエンコーダであるセンサ装置48を図示している。これにより、センサ装置48は、バルブ閉鎖構造18が移動されている時、当該バルブ閉鎖構造18の位置及び速度が判定(測定)されることを許容する。他の実施形態では、センサ装置48は、ポペット弁26の位置及び速度を、付加的または代替的に検知し得る。更に、バルブ閉鎖構造18の位置及び速度は、渦電流センサや光学近接センサのような、様々な他のタイプの位置フィードバック装置を用いて測定され得る。
【0038】
図2は、閉鎖位置での噴射ディスペンサ12の詳細図を示している。図示のように、流体カートリッジ56が、噴射ディスペンサ12に取り付けられており、カートリッジ本体57とバルブ閉鎖構造18の一部、具体的にはポペット弁26として図示、とを含んでいる。
図1及び
図2は流体カートリッジ56を含む噴射ディスペンサ12を図示しているが、流体カートリッジ56は必須ではなく、他の好適な構造によって置換され得る。更なる詳細は、2015年6月4日出願の「噴射流体材料のための噴射カートリッジ及び関連する方法」という名称の本件出願人の係属中の米国特許出願第14/730,522号において見られる。当該文献は、ここでの参照により、本件明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。
【0039】
図3は、圧電アクチュエータ34に適用された電圧(電圧データ76)であって、ディスペンサのディスペンシング周期を形成する時間に亘ってプロットされた電圧のグラフを示している。
図3のグラフは、前述の代替的なディスペンサ12の構成を考慮している。そこでは、圧電アクチュエータ34に適用される電圧(及びその結果としてのその伸長)が、駆動ピン24を下向きに移動させてポペット弁26に接触させる。逆に、当該代替構成における圧電アクチュエータ34への電圧の除去ないし低減(及びその結果としてのその収縮)は、駆動ピン24を上向きに移動させてポペット弁26から離反させ、ポペット弁26をバルブシート22から係合解除させる。
【0040】
元の噴射プロファイル58を調整して較正噴射プロファイル60を得るための例示的な方法を説明する前に、元の噴射プロファイル58と較正された噴射プロファイル60の特徴を最初に説明しておくことは、利益がある。本明細書で用いられるように、「プロファイル」とは、ある時間(バルブ閉鎖構造18の単一の完全な上下往復に対応する時間)に亘って圧電アクチュエータ34に適用される電圧の範囲に言及している。これは、完全なディスペンシング動作を達成するため、複数回繰り返され得る。元の噴射プロファイル58は、全体として、噴射システム10を較正する及び/または噴射システム10の摩耗程度を確認するためにここで説明される1または複数の方法が採用される前の、最初の作動プロファイルに言及している。較正された噴射プロファイル60は、全体として、前述の方法の1または複数が実施された後に決定され、好適には例えばバルブシート22に対するポペット弁26の最適なシール係合に関して噴射システム10の改善された動作を提供する、という作動プロファイルに言及している。
【0041】
元の噴射プロファイル58は、開放プロファイル62、定刻部64、及び、閉鎖プロファイル66からなっており、様々な異なる態様で生成され得る。例えば、制御要素14に関連するグラフィックユーザインタフェース(不図示)を用いて、開始電圧36、終了電圧68、開始電圧36から終了電圧68までの時間(の長さ)、遷移時間、を選択することによって、ユーザが開放プロファイル62を規定する。遷移時間は、開放プロファイル62の開始時と終了時に利用される時間(の長さ)である。閉鎖プロファイル66は、同様の態様で規定され得る。閉鎖プロファイル66の終了電圧68は、典型的には、開放プロファイル62の開始電圧36と同一である。ユーザは、また、シールオフセット電圧(Vso)を提供し得る。これは、以下により詳細に説明される。開放プロファイル62及び閉鎖プロファイル66が一旦生成されると、当該開放プロファイル62及び閉鎖プロファイル66は、元の噴射プロファイル58のライブラリ内に記憶される。当該開放プロファイル62及び閉鎖プロファイル66は、単一ファイル内に共に記憶される。ユーザは、プロファイルを選択した後で、定刻部64を選択し得る。それは、本明細書で用いられるように、開放プロファイル62の開始時から閉鎖プロファイル66の開始時までの時間(の長さ)に言及している。更に、定刻部64は、開放プロファイル62と関連する時間よりも大きい。
【0042】
前述の元の噴射プロファイル58に関して、例示的な一例を提供することが有益である。
図3の参照を継続して、最大の噴射プロファイル電圧は、閉鎖位置にバルブ閉鎖構造18を保持するために圧電アクチュエータ34に適用される。図示のように、開放プロファイル62は、閉鎖位置にある時に45ボルトで開始する。開放プロファイル62は、その後、200ミリ秒で5ボルトまで低下して、ポペット弁26をバルブシート22から離反するように移動する。各端部において、遷移時間は75ミリ秒である。閉鎖プロファイル66に関して、例えば、バルブ閉鎖構造18は、5ボルトの開放位置でバルブシート22から分離されていて、100ミリ秒で45ボルトまで上昇し、ポペット弁26をバルブシート22に向けて移動させる。各端部において、遷移時間は25ミリ秒である。
【0043】
前述の元の噴射プロファイル58に関して、関連する電圧測定が、
図3の参照を継続して、ここで説明される。様々な例示的な方法が、元の噴射プロファイル58に基づく較正噴射プロファイル60における閉鎖電圧(Vc)を決定するために利用され得る。閉鎖電圧(Vc)は、好適には所望の力及び速度で、バルブ閉鎖構造18の先端70が最初にバルブシート22に衝突する電圧である。シールオフセット電圧(Vso)は、シール電圧(Vs)を達成するために閉鎖電圧(Vc)に適用される付加的な電圧である。当該シール電圧(Vs)において、漏洩なく閉じるべく、バルブ閉鎖構造18の先端70に十分な力が適用される。シールオフセット電圧(Vso)は、少なくとも、ディスペンスされる流体材料38のタイプと、当該流体材料38の圧力と、に依存して、概して5ボルト〜30ボルトの範囲である。前述のように、シールオフセット電圧(Vso)は、典型的には、本明細書で説明される各方法を通して、公知の定数であって、ユーザによって制御要素14に最初に入力され得る。閉鎖電圧(Vc)、シールオフセット電圧(Vso)、及び、シール電圧(Vs)は、数式 Vs=Vc+Vso によって相関している。幾つかの実施形態では、シールオフセット電圧(Vso)が負の値であり得ることが、理解されるであろう。例えば、
図1及び
図1Aに図示されたディスペンサ12の形態では、駆動ピン24及びポペット弁25の下向きの移動が圧電アクチュエータ34に適用される電圧の低減に対応する。
【0044】
閉鎖電圧(Vc)を決定する例示的な方法が、説明される。1つの例示的な実施形態では、センサ装置48が、バルブ閉鎖構造18(例えば駆動ピン24またはポペット弁26)の1または複数の連続的な非変化位置を示す時、これらの位置の最初に対応する電圧測定値が、閉鎖電圧(Vc)であると考えられる。別の例示的な実施形態では、
図5に図示されて後に詳述されるように、閉鎖電圧(Vc)は、バルブ閉鎖構造18の対応する測定位置に対してプロットされた適用電圧のグラフにおいて、第1傾向線72の第2傾向線74との交点を確認することによって決定される。閉鎖電圧(Vc)を決定するいずれの例示的な方法を用いても、参照点(RP)が決定され得る。参照点(RP)は、閉鎖電圧(Vc)と、当該閉鎖電圧(Vc)に対応するバルブ閉鎖構造18(例えばポペット弁26)の位置と、を反映する。以下に説明される例示的な方法400(
図4)では、元の噴射プロファイル58が、少なくとも部分的に閉鎖電圧(Vc)及び/または参照点(RP)に基づいて、較正噴射プロファイル60を得るべく較正される。
【0045】
図4は、噴射システム10の元の噴射プロファイル58を調整ないし較正する例示的な方法400を図示している。工程402において、電圧が圧電アクチュエータ34に適用され、バルブ閉鎖構造18(例えばポペット弁26)が非衝突位置52と衝突位置54との間で移動される。本明細書で用いられるように、衝突位置54は、バルブ閉鎖構造18の少なくとも一部が物理的にバルブシート22に衝突している位置に言及している。一方、非衝突位置52は、バルブ閉鎖構造18のいずれの部分もバルブシート22に衝突していない位置に言及している。バルブ閉鎖構造18が非衝突位置52で始動して衝突位置54へ移動するのか、衝突位置54で始動して非衝突位置へ移動するのか、は問題でない。両方の構成のいずれも好適である。
【0046】
工程404において、センサ装置48は、バルブ閉鎖構造18がセンサ装置48に対して移動される時、バルブ閉鎖構造18の位置を検出する。工程406において、例えば制御要素14が、センサ装置48から得られた信号を用いて、圧電アクチュエータ34に適用されて知られていた電圧に基づいて、位置データ78(
図5または
図6)及び電圧データ76(
図5または
図6)をそれぞれ生成する。付加的に、速度データ(不図示)も、バルブ閉鎖構造18がセンサ装置48に対して移動される時に、生成され得る。これは、参照点(RP)及び/または閉鎖電圧(Vc)が、電圧データ76、位置データ78及び速度データを用いて確立されることを可能にする。
【0047】
工程408において、例えば制御要素14によって、電圧データ76及び位置データ78の解析に基づいて、参照点(RP)が決定される。参照点(RP)は、様々な方法を用いて決定され得る。例えば、位置データ78に対して電圧データ76をプロットすることによって決定され得る。位置データ78は、非衝突位置データ及び衝突位置データを含む。
【0048】
工程410において、制御要素14は、例えば、工程408で決定された参照点(RP)に少なくとも部分的に基づいて、閉鎖電圧(Vc)を決定する。例えば、参照点(RP)は、位置成分と電圧成分との両方を含んでおり、閉鎖電圧(Vc)は当該電圧成分から確認され得る。
【0049】
工程411において、シール電圧(Vs)が、少なくとも部分的に閉鎖電圧(Vc)に基づいて決定される。例えば、シール電圧(Vs)は、数式 Vs=Vc+Vso に従って、閉鎖電圧(Vc)及びシールオフセット電圧(Vso)を用いて決定され得る。幾つかの特徴において、シールオフセット電圧(Vso)は、ディスペンシング動作を生じさせるために利用されないかも知れない。そのような特徴においては、シール電圧(Vs)が有効にゼロであるので、シール電圧(Vs)は閉鎖電圧(Vc)に等しい。
【0050】
工程412において、シール電圧(Vs)は、較正された噴射プロファイル60を決定するために利用される。特に、元の噴射プロファイル58は、少なくとも部分的にシール電圧(Vs)に基づいて、較正された噴射プロファイル60に変換(シフト)される。例えば、較正噴射プロファイル60がシール電圧(Vs)に等しい開始電圧36及び/または終了電圧68を含むように、元の噴射プロファイル58が較正噴射プロファイル60に変換(シフト)される。
【0051】
図5は、元の噴射プロファイル58を較正するために、第1傾向線72と第2傾向線74との交点を用いる例示的な一例を提供している。
図5に示されたグラフは、圧電アクチュエータ34への電圧の適用がバルブ閉鎖構造18の上向きのバルブシート22から離れる移動を引き起こし、適用電圧の除去ないし低減がバルブ閉鎖構造18の下向きのバルブシート22に向かう移動に帰結する、というディスペンサに対応している。これは、
図1及び
図1Aに図示されたディスペンサ12の場合と同様である。当該グラフは、圧電アクチュエータ34に適用される電圧に対するバルブ閉鎖構造18の位置を示している。シール電圧(Vs)が最大噴射プロファイル電圧である
図3と異なり、
図5では、シール電圧(Vs)は最小噴射プロファイル電圧である。ここで、開始電圧36は0ボルトである。バルブ閉鎖構造18は、衝突電圧に対して相対的なある電圧を用いて、所定の位置においてバルブシート22から分離される。図示のように、衝突位置54においては、バルブ閉鎖構造18は、0ボルト〜60ボルトの電圧範囲内で、ほんの数ミクロンだけ移動する。シール機能は、この電圧範囲内で生じる。より低い電圧が、より高いシール力に対応している。非衝突位置52では、バルブ閉鎖構造18は、電圧が70ボルト〜110ボルトの範囲に増大する時、バルブシート22から離れるように移動する。60ボルト〜70ボルトの範囲において、シール状態から移動状態への遷移がある。シール電圧(Vs)が最小電圧である当該較正の場合、閉鎖電圧(Vc)は、バルブ閉鎖構造18の先端70がバルブシート22に最後まで衝突(当接)している電圧である。制御要素14は、例えば、衝突位置データの略直線部分から、好適には直線傾向線である第1傾向線72を生成する。制御要素14は、例えば、また、非衝突位置データの略直線部分から、好適には直線傾向線である第2傾向線74を生成する。具体的には、
図5は、y=0.1x+997ミクロン という第1の直線的な傾向線と、y=3.24x+799.4ミクロン という第2の直線的な傾向線と、を有する。直線式を用いる傾向線が図示されて説明されるが、傾向線は、代替的に、より高次の(higher order)ないし区分的な(piecewise)数式を用いてもよい。
【0052】
図5の参照を継続して、制御要素14は、例えば、第1傾向線72の第2傾向線74との交点を決定する。この交点は、閉鎖電圧(Vc)を有する参照点(RP)として考慮される。参照点(RP)(及び/またはそれに具現化された閉鎖電圧(Vc))は、較正噴射プロファイル60を決定するために利用される。具体的には、
図5の参照点(RP)は、1003.3ミクロン及び62.9ボルトで生じる。結果として、元の噴射プロファイル58は、較正噴射プロファイル60が閉鎖電圧(Vc)とシールオフセット電圧(Vso)との和(すなわちシール電圧(Vs))に対応する最大電圧(または最小電圧、ディスペンサ12の形態に依存する)を含む、というような較正噴射プロファイル60に変換(シフト)される。
図5に関して考慮された噴射システム10のために前述されたように、シール電圧(Vs)は閉鎖電圧(Vc)より小さいので、シールオフセット電圧(Vso)は負の値である。
【0053】
図6は、方法400の少なくとも一部の実施についての別の例示的な一例を図示している。具体的には、
図6は、圧電アクチュエータ34に適用される電圧(すなわち電圧データ76)に対してバルブ閉鎖構造18の測定位置(すなわち位置データ78)をプロットするグラフを示している。
図6のグラフは、圧電アクチュエータ34への電圧の適用(及びその結果としてのその伸長)が駆動ピン24の下向きのポペット弁26との接触をもたらす移動を引き起こす、という代替的な前述のディスペンサ12の形態に対応している。
【0054】
図6において、電圧は、100の増分段階(インクリメントステップ)を経て、20ボルトから110ボルトまで増大する。これは、各段階が0.9ボルトだけ電圧を増大させる、ということに帰結する(100段階/(110ボルト−20ボルト))。バルブ閉鎖構造18の先端70は、閉鎖電圧(Vc)においてバルブシート22に衝突する。具体的には、位置データ78が分析される時、1または複数の連続的な非変化位置が参照点(RP)(及び従って閉鎖電圧(Vc))を提示する。連続的な非変化位置の数は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を用いてユーザによって選択され得る。最初の位置が、約55ボルトの閉鎖電圧(Vc)を有する参照点(RP)である。4つの非変化位置が適切であると見出だされているが、より多いかより少ない非変化位置が所望されてもよい。そして、前述のように、元の噴射プロファイル58は、少なくとも部分的に当該決定された閉鎖電圧(Vc)に基づいて、較正噴射プロファイル60に変換(シフト)される。
【0055】
噴射プロファイルを較正する当該方法400は、多くの利点をもたらす。最初に、当該方法は、複数の噴射システム10に亘るより一貫した噴射結果をもたらし、様々な噴射システム10に幅広く適用され得る。所与のハードウェア要素のセットにおいて、衝突位置は、約40μmまで変化する。これは、
図1の噴射システム10の約20ボルトに対応する。これは、単一の噴射プロファイルを用いて多数の噴射システム10の噴射プロファイルを規定しようとする時、特に問題である。これに対して、当該方法は、ピーク電圧及び衝突電圧が、各個別の噴射システム10のために、及び、噴射システム10内のハードウェア要素の各個別の配置のために、調整されることを許容する。同様に、個別の要素を共に較正することによって、要素の許容誤差要求が低減され得る。これは、転じて、ハードウェア要素に関連する製造コストを低減する。
【0056】
当該方法は、ハードウェア要素の摩耗(の影響)を低減し得て、ハードウェア要素の関連する交換コストを低減し得る。ハードウェア要素は、例えば、バルブシート22、バルブ閉鎖構造18、及び、圧電起動機構16である。更に、当該方法を予防的メンテナンスルーチンの一部として周期的に利用することによって、方法400は、噴射システム10の製品寿命に亘って、より一貫した噴射をもたらす。なぜなら、ハードウェア要素の摩耗は、相対的な位置及び閉鎖電圧(Vc)を変化させるからである。このことは、開放中においてバルブ閉鎖構造18がバルブシート22から移動する距離、バルブ閉鎖構造18がバルブシート22から離れている時間(の長さ)、及び、バルブ閉鎖構造18が閉鎖時にバルブシート22に接触する速度、が噴射プロセスの体積及び一貫性に大いに影響するために、重要である。閉鎖電圧(Vc)に対して噴射プロファイルを較正することによって、これは、噴射システム10の製品寿命内での特性(パフォーマンス)の一貫性を改善する。更に、バルブシート22は、典型的には、バルブ閉鎖構造18との繰り返される接触によってより迅速に摩耗するので、バルブシート22は、しばしば、例えば圧電起動機構16やバルブ閉鎖構造18のような他の要素よりも前に交換される必要がある。
【0057】
当該方法400は、元の噴射プロファイル58が、ディスペンスされる流体材料38の特定の材料特性を考慮して較正されることを許容する。例えば、シール力を増大させながら衝突速度を低減することが、低粘度の流体材料に関して所望され得る。これは、出口部40から流体材料38を十分に噴射するために要求される速度が、低減されるからである。更に、低粘度の流体材料にとっては、出口部40を介しての流体材料38の不所望の漏れを防止するべく、シール力を増大することが望ましい。本明細書で用いられるように、低粘度の流体材料は、一般に、約100センチポワーズ未満の粘度を有する。逆に、高粘度の流体材料にとっては、シール力を低減させながら衝突速度を増大することが所望され得る。本明細書で用いられるように、高粘度の流体材料は、一般に、約1000センチポワーズより大きい粘度を有する。
【0058】
図7乃至
図9は、噴射システム10が参照カートリッジ80を含む、別の例示的な実施形態を図示している。具体的には、
図7及び
図8は、シリンダ82、機械的ストッパ84及びホルダー86を有する参照カートリッジ80を図示している。参照カートリッジ80は、好適には、新しい流体カートリッジ56として同じ場所に位置決めされる。図示のように、機械的ストッパ84は、好適には高精度に製造された、公知の寸法のブロックである。
【0059】
参照カートリッジ80を噴射システム10内に組み込むことは、流体カートリッジ56と噴射ディスペンサ12の残部との間の相対的な摩耗を決定する「マスター較正」を提供する。参照カートリッジ80は、例えばバルブ閉鎖構造18及び/または圧電起動機構16のようなシステム10の他の要素の摩耗を決定するためにも利用され得る。
図9は、駆動ピン24としてバルブ閉鎖構造18を図示しているが、バルブ閉鎖構造18は、当業者に公知の要素、例えばポペット弁、ニードル、プランジャ及び/またはボール、の任意の好適な組合せを含み得る。
【0060】
図10は、非衝突較正位置にあるバルブ閉鎖構造18から所定距離離れて位置決めされた機械的ストッパ84を有する参照カートリッジ80を用いて噴射システム10を較正する例示的な方法1000を図示している。工程1002において、特に
図1ではポペット弁26として図示されたバルブ閉鎖構造18の一部を含む流体カートリッジ56が、噴射システム10から取り外されて、参照カートリッジ80が、
図9に図示されるように噴射システム10内に挿入される。これらの要素を取り外して、それらを参照カートリッジ80で置換することは、流体カートリッジ56(例えばバルブシート22)による変動付与を低減して、より少ない要素によるより正確な較正を許容する。工程1004において、電圧が圧電アクチュエータ34に適用され、バルブ閉鎖構造18が非衝突較正位置と衝突較正位置との間で移動される。本明細書で用いられるように、衝突較正位置は、バルブ閉鎖構造18の少なくとも一部が機械的ストッパ84に衝突している位置である。一方、非衝突較正位置は、バルブ閉鎖構造18のいずれの部分も機械的ストッパ84に衝突していない位置である。バルブ閉鎖構造18が非衝突較正位置で始動して衝突較正位置へ移動するのか、衝突較正位置で始動して非衝突較正位置へ移動するのか、は問題でない。具体的には、
図9は、
図1に図示されたバルブシート22に接触するバルブ閉鎖構造18のポペット弁26の代わりに、機械的ストッパ84に接触する閉鎖構造18の駆動ピン24を図示している。
【0061】
工程1006において、センサ装置48は、バルブ閉鎖構造18が工程1004の適用電圧のために起動される間、直接的あるいは間接的に、バルブ閉鎖構造18の位置を検出する。例えば、センサ装置48は、例えば駆動ピン24のようなバルブ閉鎖構造18の位置を検出し得る。工程1008において、電圧較正データが、工程1004において圧電アクチュエータ34に適用されて知られていた電圧に基づいて生成され、位置較正データが、バルブ閉鎖構造18の検出された位置に基づいて生成される。電圧較正データ及び位置較正データの生成は、バルブ閉鎖構造18の移動の測定と同時に、あるいは当該測定の後に、生じ得る。
【0062】
工程1010において、例えば制御要素14が、電圧較正データ及び位置較正データを用いて、マスター参照点(MRP)を確立する。マスター参照点(MRP)を決定する方法は、方法400に関連して前述された参照点(RP)の決定方法と類似した態様で、実施され得る。両方法とも閉鎖電圧(Vc)を決定することを求めるが、当該例示的な方法では、閉鎖電圧(Vc)は、バルブ閉鎖構造18の少なくとも一部が機械的ストッパ84に最初または最後(要素の配置に依存する)に衝突する時に、決定される。
【0063】
工程1012において、制御要素14は、マスター参照点(MRP)を用いて、当該マスター参照点を以下に説明されるような履歴データと比較することによって、噴射システム10の1または複数の摩耗特性を決定する。更に、方法1000は、ある要素のある摩耗特性が許容範囲外にあるか、ある要素が予防的メンテナンスを必要としている時、ユーザに警報を出す工程を含み得る。例えば、ユーザは、制御要素14に関連するグラフィックユーザインタフェースを介して、警報され得る。当該方法は、また、バルブ閉鎖構造18が機械的ストッパ84に衝突する回数を追跡する工程と、要素の有用な製品寿命を決定する工程と、電圧較正データ及び位置較正データ並びに前記回数を用いて予防的メンテナンスのスケジュール及びルーチンを決定する工程と、を含み得る。
【0064】
噴射システム10を較正するべく参照カートリッジ80を利用することは、ハードウェア要素がそれらの利用可能な製品寿命の終わりに近いか否かを決定することを助ける。このマスター較正は、噴射ディスペンサ12の全体の摩耗を決定するが、圧電起動機構16とバルブ閉鎖構造18との間の相対的な摩耗を決定しない。もっとも、参照カートリッジ80が新しかった時から、及び様々な他の時から、参照カートリッジ80に関連する閉鎖電圧(Vc)を記憶することは、摩耗の追跡を許容し、予防的メンテナンスを高めることを許容する。例えば、マスター参照点(MRP)は、ある時間(の長さ)に亘って複数回決定され得て、記憶され得る。現時点のマスター参照点(MRP)が、その時に決定され得て、記憶されていたマスター参照点(MRP)の1または複数と比較され得る。現時点のマスター参照点(MRP)と1または複数の記憶されていたマスター参照点(MRP)とに差異が認められる場合、当該差異が、ディスペンサ12の1または複数の要素の摩耗を提示し得る。
【0065】
更に、流体カートリッジ56及び/またはバルブ閉鎖構造18の交換された要素に対応する閉鎖電圧(Vc)を参照カートリッジ80に対応する閉鎖電圧(Vc)と比較することは、流体カートリッジ56及び/またはバルブ閉鎖構造18の交換された要素の摩耗を追跡する。それは、バルブシート22の摩耗を含む。例えば、参照カートリッジ80が、機械的ストッパ84の(駆動ピン24に対する)相対位置が非摩耗状態のポペット弁26の相対位置に合致する、というように構成されている場合、参照カートリッジ80に対応する閉鎖電圧(Vc)と当該時点のポペット弁26に対応する以前に記録された閉鎖電圧(Vc)との間の差異が、交換されたポペット弁26及び/または交換されたバルブシート22の摩耗を提示し得る。同様に、そのような差異は、圧電起動機構16(またはその要素)の摩耗をも提示し得る。なぜなら、例えば、より多くの電圧が、今や摩耗している圧電アクチュエータ34を同じ距離に亘るように伸長するために、要求され得るからである。
【0066】
他の例示的な実施形態では、非衝突較正位置にあるバルブ閉鎖構造18から所定距離離れて位置決めされた機械的ストッパ84を有する噴射システム10の、ユーザによる作動方法をも開示される。本実施形態では、ユーザは、制御要素14に電子的に接続されたグラフィカルユーザインタフェース(不図示)を用いて、様々なパラメータを制御要素14内に入力する。例示であって限定ではないが、ユーザは、流体タイプ、噴射周波数、及び/または、液滴サイズを入力する。少なくとも部分的に、ユーザによって提供されたパラメータに基づいて、制御要素14は、圧電起動機構16の圧電アクチュエータ34に電圧を適用して、バルブ閉鎖構造18を、非衝突較正位置と衝突較正位置との間で移動させることによって、較正噴射プロファイル60を決定する。本実施形態では、衝突較正位置は、噴射システム10の特定の形態に従って、バルブ閉鎖構造18が機械的ストッパ84と衝突するか、それとの接触を離れる場所において発生する。本方法は、制御要素14を用いて、噴射システム10較正プロファイルを適用する工程を含んでいる。本方法は、圧電アクチュエータ34に電圧を適用して、バルブ閉鎖構造18を、当該バルブ閉鎖構造18がバルブシート22と衝突していない非衝突較正位置と、バルブ閉鎖構造18がバルブシート22と衝突している衝突位置54と、の間で移動させることによって、噴射プロファイルを決定する工程を含んでいる。本方法は、較正噴射プロファイル60を噴射システム10に適用する工程を含んでいる。摩耗が推奨されたレベルを超える時、あるいは、予防的メンテナンスが要求される時、ユーザに警告するべく、グラフィカルユーザインタフェース上での警告や聴覚音が、制御要素14によって生成され得る。
【0067】
図11は、ユーザによって特定されるバルブ閉鎖構造18のストローク長さを用いて噴射システム10を較正する、及び/または、噴射システム10の摩耗を決定する、例示的な方法1100を図示している。当該方法1100は、例えば、噴射システム10の、圧電起動機構16、バルブ閉鎖構造18及び/または他の要素における変動(バラツキ)を考慮するために利用され得る。例えば、繰り返される使用のため、あるいは、製造時の単なる僅かなバラツキのため、システムの「ゲイン」は変動し得る。すなわち、適用電圧の単位毎に圧電起動機構16によって引き起こされる変位量は、個々のシステム毎に変動し得る。
【0068】
工程1102において、バルブ閉鎖構造18の所望のストローク長さが、ユーザから受容される。当該所望のストローク長さは、例えば、ポペット弁26の最上非衝突位置からバルブシート22との衝突位置までの所望のストローク長さを特定し得る。幾つかの特徴において、ユーザは、更に、噴射システム10の動作に関連するシールオフセット電圧(Vso)または他のパラメータを入力し得る。工程1102は、方法1100の他の工程と同様、制御要素14を介して実施され得る。
【0069】
工程1104において、電圧が圧電アクチュエータ34に適用され、バルブ閉鎖構造18(例えばポペット弁26)が非衝突位置と衝突位置との間で(あるいは逆に)移動される。工程1106において、バルブ閉鎖構造18の位置が、バルブ閉鎖構造18が非衝突位置と衝突位置との間で(あるいは逆に)移動される時、センサ装置48によって検出される。工程1108において、工程1104において圧電アクチュエータ34に適用されて知られていた電圧に基づいて、また、工程1106において検出された位置に基づいて、電圧データ及び位置データ78が生成される。
【0070】
工程1110において、電圧データ及び位置データの解析に基づいて、参照点(RP)が決定される。参照点(RP)は、
図4に示された方法400並びに
図5及び
図6の例に関連して前述されたのと類似の態様で、決定され得る。参照点(RP)に基づいて、閉鎖電圧(Vc)が付加的に決定され得る。例えば、参照点(RP)の電圧成分が、閉鎖電圧(Vc)を提示し得る。
【0071】
工程1112において、トップ電圧(Vt)を決定するために、電圧データ及び位置データが解析される。トップ電圧(Vt)は、それが圧電アクチュエータ34に適用される時、工程1102においてユーザから受容した所望のストローク長さを提供する電圧である。特には、トップ電圧(Vt)は、バルブ閉鎖構造18(例えばポペット弁26)のバルブシート22に対する最大の上向き行程を提供する電圧である。従って、「トップ」電圧という用語となっている。従って、トップ電圧(Vt)は、圧電アクチュエータ34に適用される電圧がバルブ閉鎖構造18をバルブシート22から離れるように移動させるディスペンサ12、例えば
図1及び
図1Aに図示されたディスペンサ12、のための噴射プロファイルにおいて適用される最大電圧であり得る。逆に、トップ電圧(Vt)は、圧電アクチュエータ34に適用される電圧がバルブ閉鎖構造18をバルブシート22に向けて移動させるディスペンサ12のための噴射プロファイルにおいて適用される最小電圧であり得る。
【0072】
工程1114において、閉鎖電圧(Vc)及び/または参照点(RP)は、元の噴射プロファイル58を第1較正噴射プロファイル60aに変換(シフト)するために、利用される。第1較正噴射プロファイル60aの決定は、方法400の工程412並びに
図3、
図5及び
図6にて提示された例にて説明された較正噴射プロファイル60の決定と類似の態様で、実施され得る。例えば、第1較正噴射プロファイル60aは、閉鎖電圧(Vc)と等しい、あるいはシールオフセット電圧(Vso)が与えられているかアクセス可能である場合にはシール電圧(Vs)等しい、開始電圧及び/または終了電圧を当該第1較正噴射プロファイル60aが有する、というように決定され得る。
【0073】
工程1116において、トップ電圧(Vt)は、第2較正噴射プロファイル60bを決定するために利用される。具体的には、第1較正噴射プロファイル60aが、閉鎖電圧(Vc)(またはシール電圧(Vs)、場合による)に対して引き延ばしまたは圧縮されて、当該第2較正噴射プロファイル60bの最小電圧(適用電圧がバルブ閉鎖構造18のバルブシート22に向けた下向き移動を引き起こすディスペンサ12において)または最大電圧(適用電圧がバルブ閉鎖構造18のバルブシート22から離れる上向き移動を引き起こすディスペンサ12において)がトップ電圧(Vt)に等しい、というように第2較正噴射プロファイル60bを形成する。工程1114及び工程1116は、
図11に図示されるのとは異なって、逆順でも実施され得る。例えば、元の噴射プロファイル58は、最初に、トップ電圧(Vt)に基づいて引き延ばしまたは圧縮され得て、その結果としてのプロファイルが、その後、閉鎖電圧(Vc)及び/またはシール電圧(Vs)に従ってシフトされ得る。同様に、工程1114及び工程1116は、同時に実施されてもよい。
【0074】
図12及び
図13を参照して、方法1100の例示的な一例が提供される。
図12は、
図3に多くの点で類似しており、元の噴射プロファイル58、第1較正噴射プロファイル60a、及び、第2較正噴射プロファイル60bを図示している。
図13は、
図6に多くの点で類似しており、電圧データ76に対してプロットされた測定位置データ78のグラフ(チャート)を含んでいる。
図13のグラフは、非接触位置52にある間(すなわち、バルブ閉鎖構造18がバルブシート22に向かって移動中)のデータと、接触位置54にある間のデータと、を含んでいる。非接触位置にある間のグラフ線の傾斜は、当該特定のディスペンサ12の電圧に対する変位量の「ゲイン」として考慮され得る。
【0075】
最初に、ユーザは、例えば制御要素14を介して、バルブ閉鎖構造18の所望のストローク長さ1302として50ミクロンの入力と、約5ボルトのシールオフセット電圧(Vso)と、を提供する。電圧が圧電アクチュエータ34に適用され、バルブ閉鎖構造18の位置がセンサ装置48によって検出され、位置データ78及び電圧データ76が生成される。より詳細に前述された方法を用いて、電圧データ76及び位置データ78が解析されて、
図13に示された参照点(RP)が決定される。ここでは、約55ボルトと約1145ミクロンの変位量とに対応している。
【0076】
参照点(RP)の閉鎖電圧(Vc)(55ボルト)に基づいて、第1較正噴射プロファイル60aが決定される。第1較正噴射プロファイル60aは、元の噴射プロファイル58をシフトすることによって、当該第1較正噴射プロファイル60aの最大電圧が閉鎖電圧(Vc)とシールオフセット電圧(Vso)との和であるシール電圧(Vs)に等しい、というように決定される。当該例では、第1較正噴射プロファイル60aの最大電圧は、60ボルト(55ボルト+5ボルト)である。
【0077】
第2較正噴射プロファイル60bは、少なくとも部分的にトップ電圧(Vt)に基づいて決定される。特に、第2較正噴射プロファイル60bは、第1較正噴射プロファイル60aを引き延ばしまたは圧縮することによって、当該第2較正噴射プロファイル60bの最大電圧がトップ電圧(Vt)に等しい、というように決定される。トップ電圧(Vt)は、
図13のグラフデータの解析によって決定され得る。例えば、すでに決定された参照点(RP)に関して、所望のストローク長さ1302(すなわちバルブ閉鎖構造18の位置変化)が参照点(RP)の位置から減算され得る。ここで、これは、1095μm(1145μm−50μm=1095μm)の位置に帰結するだろう。1095μmの位置は、グラフ内のデータ線において相互参照されて、1095μmの位置が約37ボルトのトップ電圧(Vt)に対応することが決定される。
【0078】
トップ電圧(Vt)を決定する別の技術として、非接触位置52にある間の
図13のグラフのデータは、傾向線に外挿(近似)され得る。当該傾向線は、yを測定位置、xを電圧、mを傾斜、cをある定数として、y=mx+cの形態で表現され得る。トップ電圧(Vt)は、前述の数式のyを1095μm(すなわち、参照点(RP)の位置と特定の所望のストローク長さ1302との間の差異)にセットして、xを解くことによって、決定され得る。これが、トップ電圧(Vt)を生成するであろう。トップ電圧(Vt)を決定するためのこれら及び他の技術は、ソフトウェアを介して実装され得ることが、理解されるであろう。それは、制御要素13によって実行され得る。
【0079】
図12に見られるように、トップ電圧(Vt)が37ボルトに決定されると、第2較正噴射プロファイル60bの最小電圧が37ボルトに等しい、というように、第1較正噴射プロファイル60aが第2較正噴射プロファイル60bに圧縮され得る。
【0080】
図14は、
図7乃至
図9に図示したような非衝突較正位置にあるバルブ閉鎖構造18から所定距離離れて位置決めされた機械的ストッパ84を有する参照カートリッジ80を用いて、噴射システム10を較正する、及び/または、噴射システム10の摩耗特性(電気劣化を含む)を決定する例示的な方法1400を図示している。
【0081】
工程1402において、流体カートリッジ56が噴射システム10から取り外されて、参照カートリッジ80に置換される。工程1404において、電圧が圧電アクチュエータ34に適用され、バルブ閉鎖構造18が非衝突較正位置と衝突較正位置との間で移動される。本明細書で用いられるように、衝突較正位置は、バルブ閉鎖構造18の少なくとも一部が機械的ストッパ84に衝突している位置である。一方、非衝突較正位置は、バルブ閉鎖構造18のいずれの部分も機械的ストッパ84に衝突していない位置である。例えば、
図1に図示された形態のバルブシート22に接触するポペット弁26の代わりに、駆動ピン24が衝突位置において機械的ストッパ84に接触し得る。
【0082】
工程1406において、センサ装置48は、バルブ閉鎖構造18が工程1404の適用電圧のために起動される間、直接的あるいは間接的に、バルブ閉鎖構造18の位置を検出する。工程1408において、電圧較正データが、工程1404において圧電アクチュエータ34に適用されて知られていた電圧に基づいて生成され、位置較正データが、バルブ閉鎖構造18の検出された位置に基づいて生成される。電圧較正データ及び位置較正データの生成は、バルブ閉鎖構造18の移動の測定と同時に、あるいは当該測定の後に、生じ得る。
【0083】
工程1410において、参照「ゲイン」が決定される。参照ゲインは、圧電アクチュエータ34に適用された電圧に対するバルブ閉鎖構造18の変位量の比を反映するものである。例えば、較正位置データと較正電圧データとが、
図6または
図13に図示された位置データ78及び電圧データ76と同様の態様で互いに対してプロットされ得て、非衝突較正位置に対応するそのようなグラフのデータ線が、傾向線を決定するために解析され得る。当該傾向線の傾斜が、参照ゲインを提示し得る。参照ゲインは、後の利用のために記憶され得る。例えば、1または複数の記憶されたゲインと、現在の参照ゲインとが、比較される。
【0084】
工程1412において、参照ゲインは、ディスペンサ12またはその要素、バルブシート22、バルブ閉鎖構造18、圧電起動機構16を含む、の摩耗特性(電気劣化を含む)を決定するために利用される。例えば、参照ゲインは、「正常」ゲインを反映する予め決定されたゲイン範囲に対して比較され得る。参照ゲインが予め決定されたゲイン範囲外である場合、これは、ディスペンサ12またはその要素が有害な摩耗に苦しんでいることを提示し得て、メンテナンスまたは交換を要求し得る。別の例として、現在の参照ゲインが、同一のディスペンサ12の過去の参照ゲインに対して比較され得る。現在の参照ゲインと過去の参照ゲインとの間の差異が予め決定された閾値よりも大きい場合、これも、摩耗を提示し得る。摩耗特性の決定時、ユーザは、例えば制御要素14に関連するグラフィックユーザインタフェースまたは音響信号を介して、通知され得る。
【0085】
本明細書において言及されるように、制御要素14は、1または複数のプロセッサを有する任意のタイプの処理装置(または計算装置)であり得る。例えば、制御装置14は、個別のプロセッサ、ワークステーション、モバイル装置、コンピュータ、コンピュータのクラスタ(房)、セットトップボックス、ゲームコンソール、または、少なくとも1つのプロセッサを有する他の装置、であり得る。一実施形態では、1より多い制御要素14が、同一の処理装置上に実装され得る。そのような処理装置は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、または、それらの組合せ、を含み得る。ソフトウェアは、1または複数のアプリケーションと、オペレーションシステム(OS)と、を含み得る。ハードウェアは、プロセッサ、メモリ、及び/または、グラフィカルユーザインタフェースを含み得るが、それらに限定はされない。制御要素14は、ディスペンサ12の一部として配置され得る、及び/または、ディスペンサ12とは別体の要素として配置され得る。
【0086】
本発明は、特定の実施形態についての記述によって説明され、当該実施形態は、かなり詳しく説明された。しかしながら、添付の特許請求の範囲の請求項の範囲を、そのような詳細に制限することや、何らかの態様で限定することは、意図されていない。ここで説明された様々な特徴は、単独でも、任意の組合せでも、利用可能である。付加的な利点及び修正は、当業者にとって容易である。本発明は、その広い観点では、特定の詳細や代表的な装置及び方法や図示の例に限定されない。従って、本発明の概念の範囲または精神から逸脱することなく、そのような詳細からの発展がなされ得る。