特許第6836591号(P6836591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836591撮像素子用光電変換素子用材料及びそれを含む光電変換素子
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  • 特許6836591-撮像素子用光電変換素子用材料及びそれを含む光電変換素子 図000041
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836591
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】撮像素子用光電変換素子用材料及びそれを含む光電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/42 20060101AFI20210222BHJP
   H01L 27/30 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01L31/08 T
   H01L27/30
   H01L27/146 C
【請求項の数】15
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-528542(P2018-528542)
(86)(22)【出願日】2017年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2017025882
(87)【国際公開番号】WO2018016465
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2020年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-141373(P2016-141373)
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-166546(P2016-166546)
(32)【優先日】2016年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-237629(P2016-237629)
(32)【優先日】2016年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-102724(P2017-102724)
(32)【優先日】2017年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】新見 一樹
(72)【発明者】
【氏名】刀祢 裕介
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 秀典
【審査官】 山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−246140(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/163349(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0142792(US,A1)
【文献】 IZAWA, T. et al.,Molecular Modification of 2,7-Diphenyl[1]benzothieno[3,2-b]benzothiophene(DPh-BTBT) with Diarylamino Substituents: From Crystalline Order to Amorphous State in Evaporated Thin Films,CHEMISTRY LETTERS,2009年 3月28日,Vol.38, No.5,pp.420-421
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48、27/146、27/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式(1)中、R及びRは独立して置換若しくは無置換のベンゾチエニル基、置換若しくは無置換のベンゾフラニル基、又は置換若しくは無置換のベンゾチアゾール基を表す。)で表される化合物を含む撮像素子用光電変換素子用材料。
【請求項2】
式(1)の化合物が下記式(2)
【化2】

(式(2)中、R及びRは請求項1に記載の式(1)におけるR及びRと同じ意味を表す。)で表される化合物である請求項1に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
【請求項3】
式(2)の化合物が下記式(3)
【化3】

(式(3)中、R及びRは請求項1に記載の式(1)におけるR及びRと同じ意味を表す。)で表される化合物である請求項2に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
【請求項4】
及びRが、置換若しくは無置換のベンゾ[b]フラニル基、置換若しくは無置換のベンゾ[b]チエニル基、又は置換若しくは無置換の2−ベンゾ[d]チアゾール基を表す請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子。
【請求項6】
p型有機半導体材料とn型有機半導体材料を有する光電変換素子であって、p型有機半導体材料が請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子。
【請求項7】
(A)第一の電極膜、(B)第二の電極膜及び該第一の電極膜と該第二の電極膜の間に配置された(C)光電変換部を有する光電変換素子であって、該(C)光電変換部が少なくとも(c−1)光電変換層及び(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層を含んでなり、かつ該(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が請求項1乃至4のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子。
【請求項8】
(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が電子ブロック層である請求項7に記載の撮像素子用光電変換素子。
【請求項9】
(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が正孔ブロック層である請求項7に記載の撮像素子用光電変換素子。
【請求項10】
(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が電子輸送層である請求項7に記載の撮像素子用光電変換素子。
【請求項11】
(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が正孔輸送層である請求項7に記載の撮像素子用光電変換素子。
【請求項12】
更に、(D)正孔蓄積部を有する薄膜トランジスタ及び(E)該薄膜トランジスタ内に蓄積された電荷に応じた信号を読み取る信号読み取り部を有する請求項5乃至11のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子。
【請求項13】
(D)正孔蓄積部を有する薄膜トランジスタが、更に(d)正孔蓄積部と第一の電極膜及び第二の電極膜のいずれか一方とを電気的に接続する接続部を有する請求項12に記載の撮像素子用光電変換素子。
【請求項14】
請求項5乃至13のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子を複数アレイ状に配置した撮像素子。
【請求項15】
請求項5乃至13のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子又は請求項14に記載の撮像素子を含む光センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換素子、撮像素子、光センサー及び有機半導体デバイス等に用い得る新規な縮合多環芳香族化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロニクスデバイスへの関心が高まっている。その特徴としてはフレキシブルであり、大面積化が可能であること、更にはエレクトロニクスデバイス製造プロセスにおいて安価で高速の印刷方法を可能にすることが挙げられる。代表的な有機エレクトロニクスデバイスとしては有機EL素子、有機太陽電池素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ素子などが挙げられる。特に、有機EL素子を備えるフラットパネルディスプレイは、次世代ディスプレイ用途のメインターゲットとして期待され、携帯電話のディスプレイやTVなどに応用され、更に高機能化を目指した開発が継続されている。有機太陽電池素子などはフレキシブルで安価なエネルギー源として用いられ、有機トランジスタ素子などは、それを備えるフレキシブルなディスプレイや安価なICに関して研究開発がなされている。
【0003】
有機エレクトロニクスデバイスの開発には、そのデバイスを構成する材料の開発が非常に重要である。そのため各分野において数多くの材料が検討されているが、従来の材料では十分な性能を有しているとは言えないため、現在でも各種デバイスに有用な材料の開発が精力的に行われている。その中で、ベンゾチエノベンゾチオフェン等を母骨格とした化合物も有機エレクトロニクス材料として開発されており(特許文献1乃至3)、ベンゾチエノベンゾチオフェンのアルキル誘導体は、印刷プロセスで半導体薄膜を形成するのに十分な溶媒溶解度を有するが、アルキル鎖長に対する縮環数が相対的に少ないことにより低温で相転移を起こしやすく、有機エレクトロニクスデバイスの耐熱性が劣ることが問題であった。
【0004】
また、近年の有機エレクトロニクス素子の中で、有機光電変換素子は、次世代の撮像素子への展開が期待されており、いくつかのグループからその報告がなされている。例えば、キナクリドン誘導体、又はキナゾリン誘導体を光電変換素子に用いた例(特許文献4)、キナクリドン誘導体を用いた光電変換素子を撮像素子へ応用した例(特許文献5)、ジケトピロロピロール誘導体を用いた例(特許文献6)がある。一般的に、撮像素子は、高コントラスト化、省電力化を目的として、暗電流を低減することによって、性能は向上すると考えられている。そこで、暗時の光電変換部からのリーク電流を減らすため、光電変換部と電極部間に、正孔ブロック層、又は電子ブロック層を挿入する手法が用いられる。
【0005】
正孔ブロック層及び電子ブロック層は、有機エレクトロニクスデバイスの分野では一般に広く用いられており、それぞれ、デバイスを構成する積層膜において、電極又は導電性を有する膜と、それ以外の膜との界面に配置され、正孔又は電子の逆移動を制御する機能を有する膜である。正孔ブロック層及び電子ブロック層は、不必要な正孔又は電子の漏れを調整するものであり、デバイスの用途により、耐熱性、透過波長、成膜方法等の特性を考慮し、選択して用いられる。しかしながら、特に光電変換素子用途の材料の要求性能は高く、従来の正孔ブロック層又は電子ブロック層では、リーク電流防止特性、プロセス温度に対する耐熱性、可視光透明性などの面で、十分な性能を有しているとは言えず、商業的に活用されるに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−258592号公報
【特許文献2】WO2008−047896号
【特許文献3】WO2010−098372号
【特許文献4】特許第4945146号公報
【特許文献5】特許第5022573号公報
【特許文献6】特開2008−290963号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,2006,128(39),12604.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、正孔又は電子リーク防止特性、正孔又は電子輸送特性、プロセス温度に対する耐熱性、可視光透明性等に優れた、光電変換素子や、移動度や耐熱性に優れた有機トランジスタ等をはじめとする種々のエレクトロニクスデバイスに用い得る材料としての縮合多環芳香族化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意努力した結果、下記式(1)で表される化合物を用いることにより前記諸課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである。
[1]下記式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、R及びRは独立して置換又は無置換のヘテロ環縮合芳香族基を表す。)で表される化合物を含む撮像素子用光電変換素子用材料、
[2]式(1)の化合物が下記式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(式(2)中、R及びRは前項[1]に記載の式(1)におけるR及びRと同じ意味を表す。)で表される化合物である前項[1]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料、
[3]式(2)の化合物が下記式(3)
【0014】
【化3】
【0015】
(式(3)中、R及びRは前項[1]に記載の式(1)におけるR及びRと同じ意味を表す。)で表される化合物である前項[2]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料、
[4]R及びRが、硫黄原子又は酸素原子を含むヘテロ環縮合芳香族基を表す前項[1]及至[3]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料、
[5]R及びRが、置換若しくは無置換のフラン縮合芳香族基、置換若しくは無置換のチオフェン縮合芳香族基、又は置換若しくは無置換のチアゾール縮合芳香族基を表す前項[4]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料、
[6]R及びRが、置換若しくは無置換のベンゾ[b]フラン、置換若しくは無置換のベンゾ[b]チオフェン、又は置換若しくは無置換の2−ベンゾ[d]チアゾール基を表す前項[5]に記載の撮像素子用光電変換素子用材料、
[7]前項[1]及至[6]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子、
[8]p型有機半導体材料とn型有機半導体材料を有する光電変換素子であって、p型有機半導体材料が前項[1]及至[6]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子、
[9](A)第一の電極膜、(B)第二の電極膜及び該第一の電極膜と該第二の電極膜の間に配置された(C)光電変換部を有する光電変換素子であって、該(C)光電変換部が少なくとも(c−1)光電変換層及び(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層を含んでなり、かつ該(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が前項[1]乃至[6]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子、
[10](c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が電子ブロック層である前項[9]に記載の撮像素子用光電変換素子、
[11](c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が正孔ブロック層である前項[9]に記載の撮像素子用光電変換素子、
[12](c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が電子輸送層である前項[9]に記載の撮像素子用光電変換素子、
[13](c−2)光電変換層以外の有機薄膜層が正孔輸送層である前項[9]に記載の撮像素子用光電変換素子、
[14]更に、(D)正孔蓄積部を有する薄膜トランジスタ及び(E)該薄膜トランジスタ内に蓄積された電荷に応じた信号を読み取る信号読み取り部を有する前項[7]乃至[13]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子、
[15](D)正孔蓄積部を有する薄膜トランジスタが、更に(d)正孔蓄積部と第一の電極膜及び第二の電極膜のいずれか一方とを電気的に接続する接続部を有する前項[14]に記載の撮像素子用光電変換素子、
[16]前項[7]及至[15]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子を複数アレイ状に配置した撮像素子、及び
[17]前項[7]及至[15]のいずれか一項に記載の撮像素子用光電変換素子又は前項[16]に記載の撮像素子を含む光センサー。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、正孔又は電子のリーク防止性や輸送性、更には耐熱性や可視光透明性等の要求特性に優れた、式(1)で表される化合物を使用した新規な撮像素子用光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の撮像素子用光電変換素子の実施態様を例示した断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づくものであるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。
【0019】
本発明の撮像素子用光電変換素子用材料の特徴は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことにある。
【0020】
【化4】
【0021】
上記式(1)中のR及びRは独立して置換又は無置換のヘテロ環縮合芳香族基を表す。
【0022】
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基とは、ヘテロ環縮合芳香族から水素原子を一つ除いた残基を意味し、その具体例としては、ベンゾチエニル基、ナフトチエニル基、アントラチエニル基、ベンゾジチエニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾトリチエニル基、チエノチエニル基、ベンゾフラニル基、ナフトフラニル基、アントラフラニル基、ベンゾジフラニル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾトリフラニル基、ベンゾチアゾール基、ナフトチアゾール基、アントラチアゾール基、ベンゾジチアゾール基、ベンゾトリチアゾール基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾピロリル基、インドレニル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾリル基、キサンテニル基及びチオキサンテニル基等が挙げられる。これらのうち、ヘテロ環としてチオフェン環、フラン環又はチアゾール環を有するヘテロ環縮合芳香族基が好ましく、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基又はベンゾチアゾール基がより好ましく、2−ベンゾ[b]チエニル基、2−ベンゾ[b]フラニル基又は2−ベンゾ[d]チアゾール基が更に好ましく、2−ベンゾ[d]チアゾール基が特に好ましい。また、R及びRの両者は互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0023】
ここで、「置換又は無置換のヘテロ環縮合芳香族基」とは、ヘテロ環縮合芳香族基上の水素原子が置換基で置換されたヘテロ環縮合芳香族基又はヘテロ環縮合芳香族基上の水素原子が置換基で置換されていないヘテロ環縮合芳香族基を意味する。ヘテロ環縮合芳香族基が置換基を有する場合は、少なくとも一種の置換基を有していればよく、置換位置と置換基数も特に制限されない。
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基に制限はないが、例えばアルキル基、アルコキシ基、芳香族基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられる。
【0024】
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれにも限定されない。R及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、sec−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、sec−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、ドコシル基、n−ペンタコシル基、n−オクタコシル基、n−トリコンチル基、5−(n−ペンチル)デシル基、ヘネイコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、ノナコシル基、n−トリアコンチル基、スクアリル基、ドトリアコンチル基及びヘキサトリアコンチル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素数1乃至36のアルキル基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1乃至24のアルキル基であることが好ましく、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1乃至20のアルキル基であることがより好ましく、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1乃至12のアルキル基であることが更に好ましく、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1乃至6のアルキル基であることが特に好ましく、直鎖又は分岐鎖状の炭素数1乃至4のアルキル基であることが最も好ましい。中でも、炭素数1乃至2の直鎖上又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。また、環状アルキル基については、シクロペンチル基、シクロへキシル基等の炭素数5乃至10の環状アルキル基が好ましく、炭素数5乃至6の環状のアルキル基がより好ましい。
【0025】
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルコキシ基の具体例としては,メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、t−ペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、iso−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基、ドコシルオキシ基、n−ペンタコシルオキシ基、n−オクタコシルオキシ基、n−トリコンチルオキシ基、5−(n−ペンチル)デシルオキシ基、ヘネイコシルオキシ基、トリコシルオキシ基、テトラコシルオキシ基、ヘキサコシルオキシ基、ヘプタコシルオキシ基、ノナコシルオキシ基、n−トリアコンチルオキシ基、スクアリルオキシ基、ドトリアコンチルオキシ基及びヘキサトリアコンチルオキシ基等の炭素数1乃至36のアルコキシ基が挙げられ、炭素数1乃至24のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1乃至20のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1乃至12のアルコキシ基であることが更に好ましく、炭素数1乃至6のアルコキシ基であることが特に好ましく、炭素数1乃至4のアルコキシ基であることが最も好ましい。
【0026】
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としての芳香族基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基等の芳香族炭化水素基のみならず、上記したヘテロ環縮合芳香族基が挙げられ、芳香族炭化水素基であることが好ましい。ヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としての芳香族基は置換基を有していてもよく、該有していてもよい置換基としては、式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基と同じものが挙げられる。
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルキル置換アミノ基は、モノアルキル置換アミノ基及びジアルキル置換アミノ基の何れにも制限されず、これらアルキル置換アミノ基におけるアルキル基としては、式(1)のR及びR表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルキル基と同じものが挙げられる。
【0027】
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアリール置換アミノ基は、モノアリール置換アミノ基及びジアリール置換アミノ基の何れにも制限されず、これらアリール置換アミノ基におけるアリール基としては、式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基の項に記載した芳香族炭化水素基と同じものが挙げられる。
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアシル基としては、式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基の項に記載した芳香族炭化水素基又は式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基の項に記載したアルキル基が、カルボニル基(=CO基)と結合した置換基が挙げられる。
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としてのアルコキシ基がカルボニル基と結合した置換基が挙げられる。
式(1)のR及びRが表すヘテロ環縮合芳香族基が有する置換基としては、アルキル基、芳香族基、ハロゲン原子又はアルコキシル基であることが好ましく、ハロゲン原子又は無置換の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、フェニル基又はビフェニル基であることが更に好ましい。
【0028】
式(1)におけるR及びRとしては、両者が同一の、置換若しくは無置換の2−ベンゾ[b]チエニル基、置換若しくは無置換の2−ベンゾ[b]フラニル基、又は置換若しくは無置換の2−ベンゾ[d]チアゾール基であることが好ましく、両者が同一の無置換のベンゾ[b]チエニル基、無置換の2−ベンゾ[b]フラニル基又は無置換の2−ベンゾ[d]チアゾール基であることがより好ましく、両者が同一の無置換の2−ベンゾ[d]チアゾール基であることが更に好ましい。
【0029】
上記式(1)におけるフェニル基の置換位置は特に制限されないが、式(1)中の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンにおける2,7位であることが好ましい。即ち、式(1)で表される化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
式(2)中、R及びRは式(1)におけるR及びRと同じ意味を表し、好ましいものも式(1)におけるR及びRと同じである。
即ち、式(2)で表される化合物としては、式(2)におけるR及びRの両者が、上記した式(1)における「好ましい態様」乃至「最も好ましい態様」のものが好ましい。
【0032】
上記式(2)におけるR及びRの置換位置は特に制限されないが、式(2)中の[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンに置換するフェニル基におけるパラ位であることが好ましい。即ち、式(2)で表される化合物としては、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0033】
【化6】
【0034】
式(3)中、R及びRは式(1)におけるR及びRと同じ意味を表し、好ましいものも式(1)におけるR及びRと同じである。
即ち、式(3)で表される化合物としては、式(3)におけるR及びRの両者が、上記した式(1)における好ましい乃至最も好ましい態様のものが好ましい。
【0035】
式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0036】
【化7】
【化8】
【0037】
【化9】
【化10】
【0038】
【化11】

【化12】
【0039】
【化13】
【化14】
【化15】
【0040】
【化16】
【化17】
【0041】
【化18】
【化19】
【0042】
【化20】
【化21】
【0043】
【化22】
【化23】
【0044】
【化24】
【化25】
【0045】
【化26】
【化27】
【0046】
【化28】

【化29】

【化30】

【化31】
【0047】
式(1)で表される化合物は、特許文献1、特許文献6及び非特許文献1に開示された公知の方法などにより合成することができる。例えば以下のスキームによる合成方法が挙げられる。原料としてニトロスチルベン誘導体(A)を用いて、ベンゾチエノベンゾチオフェン骨格(D)を形成し、これを還元することによりアミノ化物(E)が得られる。この化合物(E)をハロゲン化してやればハロゲン化物(F)(以下のスキームのハロゲン化物(F)のハロゲンの一例としてヨウ素化物を記載したが、これに限定されるものではない。)が得られ、この化合物(F)を更にホウ酸誘導体とカップリングをしてやれば式(1)で表される化合物を得ることが可能である。なお、特許文献5の方法によれば、対応するベンズアルデヒド誘導体から式(1)で表される化合物を1ステップで製造できるため、より効率的である。
【0048】
【化32】
【0049】
式(1)で表される化合物の精製方法は、特に限定されず、再結晶、カラムクロマトグラフィー、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用できる。また必要に応じてこれらの方法を組み合わせることができる。
【0050】
本発明の撮像素子用光電変換用素子(以下、単に「光電変換素子」ということもある。)は、対向する(A)第一の電極膜と(B)第二の電極膜との二つの電極膜間に、(C)光電変換部を配置した素子であって、(A)第一の電極膜又は(B)第二の電極膜の上方から光が光電変換部に入射されるものである。(C)光電変換部は前記の入射光量に応じて電子と正孔を発生するものであり、半導体により前記電荷に応じた信号が読み出され、光電変換膜部の吸収波長に応じた入射光量を示す素子である。光が入射しない側の電極膜には読み出しのためのトランジスタが接続される場合もある。光電変換素子は、アレイ状に多数配置されている場合は、入射光量に加え入射位置情報をも示すため、撮像素子となる。また、より光源近くに配置された光電変換素子が、光源側から見てその背後に配置された光電変換素子の吸収波長を遮蔽しない(透過する)場合は、複数の光電変換素子を積層して用いても良い。可視光領域にそれぞれ異なる吸収波長を有する複数の光電変換素子を積層して用いることにより、多色の撮像素子(フルカラーフォトダイオードアレイ)とすることができる。
【0051】
本発明の撮像素子用光電変換素子用材料は、上記(C)光電変換部を構成する層の材料に用いられる。
(C)光電変換部は、(c−1)光電変換層と、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、結晶化防止層及び層間接触改良層等からなる群より選択される一種又は複数種の(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層とからなることが多い。本発明の撮像素子用光電変換素子材料は(c−1)光電変換層及び(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層のいずれにも用いることができるが、(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層に用いることが好ましい。
【0052】
本発明の撮像素子用光電変換素子が有する(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜は、後述する(C)光電変換部に含まれる(c−1)光電変換層が正孔輸送性を有する場合や、(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層(以下、光電変換層以外の有機薄膜層を、単に「(c−2)有機薄膜層」とも表記する)が正孔輸送性を有する正孔輸送層である場合は、該(c−1)光電変換層や該(c−2)有機薄膜層から正孔を取り出してこれを捕集する役割を果たし、また(C)光電変換部に含まれる(c−1)光電変換層が電子輸送性を有する場合や、(c−2)有機薄膜層が電子輸送性を有する電子輸送層である場合は、該(c−1)光電変換層や該(c−2)有機薄膜層から電子を取り出してこれを吐出する役割を果たすものである。よって、(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜に用い得る材料は、ある程度の導電性を有するものであれば特に限定されないが、隣接する(c−1)光電変換層や(c−2)有機薄膜層との密着性や電子親和力、イオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選択することが好ましい。(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜に用い得る材料としては、例えば、酸化錫(NESA)、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)及び酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、白金、クロム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル及びタングステン等の金属;ヨウ化銅及び硫化銅等の無機導電性物質;ポリチオフェン、ポリピロール及びポリアニリン等の導電性ポリマー;炭素等が挙げられる。これらの材料は、必要により複数を混合して用いてもよいし、複数を2層以上に積層して用いてもよい。(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜に用いる材料の導電性についても、光電変換素子の受光を必要以上に妨げなければ特に限定されないが、光電変換素子の信号強度や、消費電力の観点からできるだけ高いことが好ましい。例えばシート抵抗値が300Ω/□以下の導電性を有するITO膜であれば(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜として充分機能するが、数Ω/□程度の導電性を有するITO膜を備えた基板の市販品も入手可能となっていることから、このような高い導電性を有する基板を使用することが望ましい。ITO膜(電極膜)の厚さは導電性を考慮して任意に選択することができるが、通常5乃至500nm、好ましくは10乃至300nm程度である。ITOなどの膜を形成する方法としては、従来公知の蒸着法、電子線ビーム法、スパッタリング法、化学反応法及び塗布法等が挙げられる。基板上に設けられたITO膜には必要に応じUV−オゾン処理やプラズマ処理等を施してもよい。
【0053】
(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜のうち、少なくとも光が入射する側のいずれか一方に用いられる透明電極膜の材料としては、ITO、IZO、SnO、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)等が挙げられる。(c−1)光電変換層の吸収ピーク波長における透明電極膜を介して入射した光の透過率は、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0054】
また、検出する波長の異なる光電変換層を複数積層する場合、それぞれの光電変換層の間に用いられる電極膜(これは(A)第一の電極膜及び(B)第二の電極膜以外の電極膜である)は、それぞれの光電変換層が検出する光以外の波長の光を透過させる必要があり、該電極膜には入射光の90%以上を透過する材料を用いることが好ましく、95%以上の光を透過する材料を用いることがより好ましい。
【0055】
電極膜はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーでこれらの電極膜を作製することにより、電極膜が設けられる基板に対するプラズマによる影響が低減され、光電変換素子の光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、電極膜の成膜時にプラズマが発生しないか、又はプラズマ発生源から基板までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基板に到達するプラズマが減ぜられるような状態を意味する。
【0056】
電極膜の成膜時にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置等が挙げられる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法といい、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法という。
【0057】
成膜中プラズマを減ずることができるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)としては、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着装置等が考えられる。
【0058】
透明導電膜を電極膜(例えば第一の導電膜)とした場合、DCショート、あるいはリーク電流の増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層に発生する微細なクラックがTCO(Transparent Conductive Oxide)などの緻密な膜によって被覆され、透明導電膜とは反対側の電極膜(第二の導電膜)との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較的劣る材料を電極に用いた場合、リーク電流の増大は生じにくい。電極膜の膜厚を、光電変換層の膜厚(クラックの深さ)に応じて制御することにより、リーク電流の増大を抑制することができる。
【0059】
通常、導電膜を所定の値より薄くすると、急激な抵抗値の増加が起こる。本実施形態の撮像素子用光電変換素子における導電膜のシート抵抗は、通常100乃至10000Ω/□であり、膜厚の自由度が大きい。また、透明導電膜が薄いほど吸収する光の量が少なくなり、一般に光透過率が高くなる。光透過率が高くなると、光電変換層で吸収される光が増加して光電変換能が向上するため非常に好ましい。
【0060】
本発明の撮像素子用光電変換素子が有する(C)光電変換部は、少なくとも(c−1)光電変換層及び(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層を含む。
(C)光電変換部を構成する(c−1)光電変換層には一般的に有機半導体膜が用いられるが、その有機半導体膜は一層、又は複数の層であってもよく、一層の場合は、p型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はそれらの混合膜(バルクヘテロ構造)が用いられる。一方、複数の層である場合は、一般的に2乃至10層程度であり、p型有機半導体膜、n型有機半導体膜、又はそれらの混合膜(バルクヘテロ構造)のいずれかを積層した構造であり、層間にバッファ層が挿入されていてもよい。
【0061】
(c−1)光電変換層の有機半導体膜には、吸収する波長帯に応じ、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、カルバゾール誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェニルブタジエン誘導体、スチリル誘導体、キノリン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポルフィリン誘導体、フラーレン誘導体や金属錯体(Ir錯体、Pt錯体、Eu錯体など)等を用いることができる。
【0062】
本発明の撮像素子用光電変換素子において、(C)光電変換部を構成する(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層は、(c−1)光電変換層以外の層、例えば、電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、結晶化防止層又は層間接触改良層等としても用いられる。特に電子輸送層、正孔輸送層、電子ブロック層及び正孔ブロック層からなる群より選択される一種以上の薄膜層として用いることにより、弱い光エネルギーでも効率よく電気信号に変換する素子が得られるため好ましい。
【0063】
電子輸送層は、(c−1)光電変換層で発生した電子を(A)第一の電極膜又は(B)第二の電極膜へ輸送する役割と、電子輸送先の電極膜から(c−1)光電変換層に正孔が移動するのをブロックする役割とを果たす。
正孔輸送層は、発生した正孔を(c−1)光電変換層から(A)第一の電極膜又は(B)第二の電極膜へ輸送する役割と、正孔輸送先の電極膜から(c−1)光電変換層に電子が移動するのをブロックする役割とを果たす。
電子ブロック層は、(A)第一の電極膜又は(B)第二の電極膜から(c−1)光電変換層への電子の移動を妨げ、(c−1)光電変換層内での再結合を防ぎ、暗電流を低減する役割を果たす。
正孔ブロック層は、(A)第一の電極膜又は(B)第二の電極膜から(c−1)光電変換層への正孔の移動を妨げ、(c−1)光電変換層内での再結合を防ぎ、暗電流を低減する機能を有する。
正孔ブロック層は正孔阻止性物質を単独又は二種類以上積層する、又は混合することにより形成される。正孔阻止性物質としては、正孔が電極から素子外部に流出するのを阻止することができる化合物であれば限定されない。正孔ブロック層に使用することができる化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物の他に、バソフェナントロリン及びバソキュプロイン等のフェナントロリン誘導体、シロール誘導体、キノリノール誘導体金属錯体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、キノリン誘導体などが挙げられ、これらのうち、一種又は二種以上を用いることができる。
【0064】
上記一般式(1)で表される化合物を含む(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層は、特に正孔ブロック層として好適に用いることができる。リーク電流を防止するという観点からは正孔ブロック層の膜厚は厚い方が好ましいが、光入射時の信号読み出しの際に充分な電流量を得るという観点からは膜厚はなるべく薄い方が好ましい。これら相反する特性を両立するために、一般的には(c−1)光電変換層及び(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層を含む(C)光電変換部の膜厚が5乃至500nm程度であることが好ましい。なお、一般式(1)で表される化合物が用いられる層が、どのような働きをするかは、光電変換素子に他にどのような化合物を用いるかで変わってくる。
また、正孔ブロック層及び電子ブロック層は、(c−1)光電変換層の光吸収を妨げないために、光電変換層の吸収波長の透過率が高いことが好ましく、また薄膜で用いることが好ましい。
【0065】
薄膜トランジスタは、光電変換部により生じた電荷に基づき、信号読み取り部へ信号を出力する。薄膜トランジスタは、ゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極、及びドレイン電極を有し、活性層は、シリコン半導体、酸化物半導体又は有機半導体により形成されている。
【0066】
薄膜トランジスタに用いられる活性層を酸化物半導体により形成すれば、アモルファスシリコンの活性層に比べて電荷の移動度がはるかに高く、低電圧で駆動させることができる。また、酸化物半導体を用いれば、通常、シリコンよりも光透過性が高く、可撓性を有する活性層を形成することができる。また、酸化物半導体、特にアモルファス酸化物半導体は、低温(例えば室温)で均一に成膜が可能であるため、プラスチックのような可撓性のある樹脂基板を用いるときに特に有利となる。また、複数の二次受光画素を積層させるため、上段の二次受光画素を形成する際に下段の二次受光画素が影響を受ける。特に光電変換層は熱の影響を受けやすいが、酸化物半導体、特にアモルファス酸化物半導体は低温成膜が可能であるため有利である。
【0067】
活性層を形成するための酸化物半導体としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が更に好ましい。In−Ga−Zn−O系酸化物半導体としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される酸化物半導体が好ましく、特に、InGaZnO がより好ましい。この組成のアモルファス酸化物半導体の特徴としては、電気伝導度が増加するにつれ、電子移動度が増加する傾向を示す。
【0068】
信号読み取り部は、光電変換部に生成及び蓄積される電荷又は前記電荷に応じた電圧を読み取る。
【0069】
図1に本発明の撮像素子用光電変換素子の代表的な素子構造を詳細に説明するが、本発明はこれらの構造に限定されるものではない。図1の態様例においては、1が絶縁部、2が一方の電極膜(上部電極、第一の電極膜又は第二の電極膜)、3が電子ブロック層(又は正孔輸送層)、4が光電変換層、5が正孔ブロック層(又は電子輸送層)、6が他方の電極膜(下部電極、第二の電極膜又は第一の電極膜)、7が絶縁基材又は他光電変換素子をそれぞれ表す。読み出しのトランジスタ(図中には未記載)は、2又は6いずれかの電極膜と接続されていればよく、例えば、光電変換層4が透明であれば、光が入射する側とは反対側の電極膜の外側(電極膜2の上側、又は電極膜6の下側)に成膜されていてもよい。光電変換素子を構成する光電変換層以外の薄膜層(電子ブロック層や正孔ブロック層等)が光電変換層の吸収波長を極度に遮蔽しないものであれば、光が入射する方向は上部(図1における絶縁部1側)又は下部(図1における絶縁基板7側)のいずれでもよい。
【0070】
本発明の撮像素子用光電変換素子における(c−1)光電変換層及び(c−2)光電変換層以外の有機薄膜層の形成方法には、一般的に、真空プロセスである抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、溶液プロセスであるキャスティング、スピンコーティング、ディップコーティング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等のコーティング法や、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法等、更にはこれらの手法を複数組み合わせた方法を採用しうる。各層の厚みは、それぞれの物質の抵抗値・電荷移動度にもよるので限定することはできないが、通常は1乃至5000nmの範囲であり、好ましくは3乃至1000nmの範囲、より好ましくは5乃至500nmの範囲である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。実施例中、部は特に指定しない限り質量部を、%は質量%を表す。
実施例中に記載のブロック層は正孔ブロック層及び電子ブロック層のいずれでもよい。光電変換素子の作製はグローブボックスと一体化した蒸着機で行い、作製した光電変換素子は窒素雰囲気のグローブボックス内で密閉式のボトル型計測チャンバー(株式会社エイエルエステクノロジー製)に光電変換素子を設置し、電流電圧の印加測定を行った。電流電圧の印加測定は、特に指定のない限り、半導体パラメータアナライザ4200−SCS(ケースレーインスツルメンツ社)を用いて行った。入射光の照射は、特に指定のない限り、PVL−3300(朝日分光社製)を用い、照射光波長550nm、照射光半値幅20nmにて行った。実施例中の明暗比は光照射を行った場合の電流値を暗所での電流値で割ったものを示す。
【0072】
合成例1(2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]フラン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成(具体例のNo.1で表される化合物))
工程1(2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]フランの合成)
DMF(920部)に、一般に入手可能なベンゾ[b]フラン−2−イルボロン酸(14.8部)、パラ−ブロモヨードベンゼン(25.8部)、リン酸三カリウム(110部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(2.8部)を混合し、窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(920部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をメタノールで洗浄し乾燥することにより、2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]フラン(6.6部、収率26%)を得た。
【0073】
工程2(2−(4−(ベンゾ[b]フラン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(240部)に、工程1で得られた2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]フラン(5.0部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(5.6部)、酢酸カリウム(3.5部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.5部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、シリカゲル20部を加え、5分間撹拌した。その後、固形分をろ別し、溶媒を減圧除去することにより2−(4−(ベンゾ[b]フラン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(5.2部、収率88%)を得た。
【0074】
工程3(2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]フラン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(200部)に、水(6.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(3.0部)、工程2で得られた2−(4−(ベンゾ[b]フラン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(5.0部)、リン酸三カリウム(20部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.4部)を混合し、窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(200部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトンで洗浄し乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.1で表される化合物(2.0部、収率50%)を得た。
【0075】
合成例2(2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成(具体例のNo.5で表される化合物))
工程4(2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]チオフェンの合成)
DMF(300部)に、一般に入手可能なベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(5.0部)、パラ―ブロモヨードベンゼン(7.9部)、リン酸三カリウム(34部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.84部)を混合し、窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(300部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をメタノールで洗浄し乾燥することにより、2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]チオフェン(5.7部、収率70%)を得た。
【0076】
工程5(2−(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(240部)に、工程例4で得られた2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]チオフェン(5.3部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(5.6部)、酢酸カリウム(3.5部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.5部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、シリカゲル20部を加え、5分間撹拌した。その後、固形分をろ別し、溶媒を減圧除去することにより2−(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(4.5部、収率73%)を得た。
【0077】
工程6(2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(170部)に、水(5.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(2.6部)、工程5で得られた2−(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(4.5部)、リン酸三カリウム(18部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.35部)を混合し、窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(170部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトンで洗浄し乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.5で表される化合物(1.6部、収率46%)を得た。
【0078】
合成例3(2,7−ビス(4−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成(具体例のNo.29で表される化合物))
工程7(2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾールの合成)
トルエン(240部)に、一般に入手可能な2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[d]チアゾール(5.3部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(5.6部)、酢酸カリウム(3.5部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.5部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、シリカゲル20部を加え、5分間撹拌した。その後、固形分をろ別し、溶媒を減圧除去することにより2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール(4.9部、収率80%)を得た。
【0079】
工程8(2,7−ビス(4−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(170部)に、水(5.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(2.6部)、工程7で得られた2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール(4.5部)、リン酸三カリウム(18部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.35部)を混合し、窒素雰囲気下、90℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(170部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトンで洗浄し乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.29で表される化合物(1.8部、収率52%)を得た。
【0080】
合成例4 (2,7−ビス(4−(5−ベンゾ[b]チエニル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
工程9(2−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(200部)に、5−ブロモベンゾ[b]チオフェン(10.0部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(14.3部)、酢酸カリウム(9.2部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(1.1部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で2時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、固形分をろ別し、生成物を含むろ液を得た。次いで、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;トルエン)にて精製し、溶媒を減圧除去することにより、2−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(11.7部、収率96%)を得た。
【0081】
工程10(5−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]チオフェンの合成)
DMF(230部)に、工程9で得られた2−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(11.5部)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(12.5部)、リン酸三カリウム(18.7部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.6部)を混合し、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、水(200部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分を水、メタノールの順序で洗浄することで、5−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]チオフェン(12.0部、収率94%)を得た。
【0082】
工程11(2−(4−(5−ベンゾ[b]チエニル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(200部)に、工程10で得られた5−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[b]チオフェン(12.0部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(14.5部)、酢酸カリウム(9.3部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(1.2部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、固形分をろ別し、生成物を含むろ液を得た。次いで、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;トルエン)にて精製し、溶媒を減圧除去した。得られた淡橙色固体をメタノールで洗浄することで、2−(4−(5−ベンゾ[b]チエニル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(7.4部、収率53%)を得た。
【0083】
工程12(2,7−ビス(4−(5−ベンゾ[b]チエニル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(200部)に、水(10.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(3.7部)、工程11で得られた2−(4−(5−ベンゾ[b]チエニル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(6.3部)、リン酸三カリウム(6.4部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.5部)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(150部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトン、DMFで洗浄し、乾燥した後、昇華精製を行うことにより、目的の化合物(2.0部、収率51%)を得た。
【0084】
合成例5 (2,7−ビス(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成(具体例のNo.69で表される化合物))
工程13(2−(4−ブロモフェニル)ナフト[1,2−b]チオフェンの合成)
DMF(190部)に、公知の方法により合成された2−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(6.0部)、パラ―ブロモヨードベンゼン(5.5部)、水(5.0部)、リン酸三カリウム(22.9部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.6部)を混合し、窒素雰囲気下、70℃で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(190部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をメタノールで洗浄し乾燥することにより、2−(4−ブロモフェニル)ナフト[1,2−b]チオフェン(3.0部、収率47%)を得た。
【0085】
工程14(2−(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(110部)に、工程13で得られた2−(4−ブロモフェニル)ナフト[1,2−b]チオフェン(2.8部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.5部)、酢酸カリウム(1.6部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.22部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、シリカゲル20部を加え、5分間撹拌した。その後、固形分をろ別し、溶媒を減圧除去することにより2−(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.2部、収率69%)を得た。
【0086】
工程15(2,7−ビス(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(100部)に、水(2.6部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(1.2部)、工程14で得られた2−(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0部)、リン酸三カリウム(8.1部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.2部)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(100部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトンで洗浄し乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.69で表される化合物(0.4部、収率26%)を得た。
【0087】
合成例6 (2,7−ビス(4−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成(具体例のNo.20で表される化合物))
工程16(2−(4−ブロモフェニル)ナフト[2,3−b]チオフェンの合成)
2−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの代わりに、公知の方法により合成された2−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを使用したこと以外は工程13に準じて合成を行うことで、2−(4−ブロモフェニル)ナフト[2,3−b]チオフェン(3.5部、収率55%)を得た。
【0088】
工程17(2−(4−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
2−(4−ブロモフェニル)ナフト[1,2−b]チオフェンの代わりに、工程16で得られた2−(4−ブロモフェニル)ナフト[2,3−b]チオフェンを使用したこと以外は工程14に準じて合成を行うことで、2−(4−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(3.7部、収率58%)を得た。
【0089】
工程18(2,7−ビス(4−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
2−(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの代わりに、工程17で得られた2−(4−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを使用したこと以外は工程15に準じて合成を行うことで、上記具体例のNo.20で表される化合物(0.6部、収率39%)を得た。
【0090】
合成例7 (2,7−ビス(4−(ベンゾ[d]オキサゾール−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(具体例のNo.30で表される化合物)の合成)
工程19(2−(ベンソ[d]オキサゾール−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(500部)に、2−(4−ブロモフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール(10部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(10.8部)、酢酸カリウム(6.9部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(1.0部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、シリカゲル20部を加え、5分間撹拌した。その後、固形分をろ別し、溶媒を減圧除去することにより2−(ベンソ[d]オキサゾール−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(11.4部、収率99%)を得た。
【0091】
工程20(2,7−ビス(4−(ベンゾ[d]オキサゾール−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(430部)に、水(11部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(4.9部)、工程19で得られた2−(ベンソ[d]オキサゾール−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(8.0部)、リン酸三カリウム(34部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.8部)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(430部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトンで洗浄し乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.30で表される化合物(3.6部、収率57%)を得た。
【0092】
合成例8 (2,7−ビス(4−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(具体例のNo.83で表される化合物)の合成)
工程21(5−フェニルベンゾ[b]チオフェンの合成)
DMF(500部)に、5−ブロモベンゾ[b]チオフェン(20部)、フェニルボロン酸(13.7部)、リン酸三カリウム(113部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3.0部)を混合し、窒素雰囲気下、70℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(500部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分を水とアセトンで洗浄し乾燥を行うことにより、5−フェニルベンゾ[b]チオフェン(13.3部、収率67%)を得た。
【0093】
工程22(2−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
テトラヒドロフラン(300部)に、工程21で得られた5−フェニルベンゾ[b]チオフェン(12.6部)を混合した。0℃に冷却した混合液へノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.6M、28部)を加え、窒素雰囲気下、1時間撹拌した。得られた混合液へイソプロポキシボロン酸ピナコール(16部)を加え、室温で12時間撹拌した。得られた反応液へ水(100部)を加え、溶媒を減圧留去することで生じた固形分をろ過分取した。得られた固形分を水で洗浄し乾燥を行うことにより、2−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(11.4部、収率57%)を得た。
【0094】
工程23(2−(4−ブロモフェニル)−5−フェニルベンゾ[b]チオフェンの合成)
DMF(300部)に、水(8.0部)、工程22で得られた2−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(10部)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(8.4部)、リン酸三カリウム(36部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.0部)を混合し、窒素雰囲気下、70℃で3時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、水(300部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分を水、メタノールの順序で洗浄することで、2−(4−ブロモフェニル)−5−フェニルベンゾ[b]チオフェン(9.2部、収率85%)を得た。
【0095】
工程24(2−(4−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(300部)に、工程23で得られた2−(4−ブロモフェニル)−5−フェニルベンゾ[b]チオフェン(8.5部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(6.9部)、酢酸カリウム(4.4部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(0.64部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、シリカゲル20部を加え、5分間撹拌した。その後、固形分をろ別し、溶媒を減圧除去することにより2−(4−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(5.2部、収率55%)を得た。
【0096】
工程25(2,7−ビス(4−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(200部)に、水(5.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(1.8部)、工程24で得られた2−(4−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(4.5部)、リン酸三カリウム(15部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.4部)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(200部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトンで洗浄し乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.83で表される化合物(1.5部、収率50%)を得た。
【0097】
合成例9 (2,7−ビス(4−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(具体例のNo.72で表される化合物)の合成)
工程26(2−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(100部)に、3−ブロモジベンゾ[b,d]フラン(5.0部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(6.2部)、酢酸カリウム(4.0部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.5部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で5時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、固形分をろ別し、生成物を含むろ液を得た。次いで、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;トルエン)にて精製し、溶媒を減圧除去することにより、2−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(3.8部、収率64%)を得た。
【0098】
工程27(3−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]フランの合成)
DMF(60部)に、工程26で得られた2−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(3.8部)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(3.7部)、リン酸三カリウム(5.5部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.4部)を混合し、窒素雰囲気下、60℃で2時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、水(200部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分を水、メタノールの順序で洗浄することで、3−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]フラン(2.7部、収率64%)を得た。
【0099】
工程28(2−(4−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(50部)に、工程27で得られた3−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]フラン(2.7部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.5部)、酢酸カリウム(1.6部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.2部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で8時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、固形分をろ別し、生成物を含むろ液を得た。次いで、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;トルエン)にて精製することで、2−(4−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.8部、収率90%)を得た。
【0100】
工程29(2,7−ビス(4−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(80部)に、水(8.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(1.5部)、工程28で得られた2−(4−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.8部)、リン酸三カリウム(2.6部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.2部)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(100部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトン、DMFで洗浄し、乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.72で表される化合物(0.9部、収率41%)を得た。
【0101】
合成例10 (2,7−ビス(4−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(具体例のNo.71で表される化合物)の合成)
工程30(2−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(100部)に、3−ブロモジベンゾ[b,d]チオフェン(5.0部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(5.8部)、酢酸カリウム(3.7部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.4部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で4時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、固形分をろ別し、生成物を含むろ液を得た。次いで、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;トルエン)にて精製し、溶媒を減圧除去することにより、2−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.3部、収率39%)を得た。
【0102】
工程31(3−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェンの合成)
DMF(40部)に、工程30で得られた2−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.3部)、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン(2.1部)、リン酸三カリウム(3.0部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.3部)を混合し、窒素雰囲気下、60℃で3時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、水(60部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分を水、メタノールの順序で洗浄することで、3−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(2.5部、収率99%)を得た。
【0103】
工程32(2−(4−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの合成)
トルエン(50部)に、工程31で得られた3−(4−ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]チオフェン(2.5部)、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.2部)、酢酸カリウム(1.4部)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.2部)を混合し、窒素雰囲気下、還流温度で8時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、固形分をろ別し、生成物を含むろ液を得た。次いで、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液;トルエン)にて精製することで、2−(4−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0部、収率71%)を得た。
【0104】
工程33(2,7−ビス(4−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェンの合成)
DMF(60部)に、水(8.0部)、特許第4945757号に記載の方法で合成した2,7−ジヨード[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(1.0部)、工程32で得られた2−(4−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(2.0部)、リン酸三カリウム(1.8部)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.1部)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で6時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、水(100部)を加え、固形分をろ過分取した。得られた固形分をアセトン、DMFで洗浄し、乾燥した後、昇華精製を行うことにより、上記具体例のNo.71で表される化合物(0.4部、収率26%)を得た。
【0105】
実施例1(光電変換素子の作製及びその評価)
ITO透明導電ガラス(ジオマテック株式会社製、ITO膜厚150nm)に、2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)を、ブロック層として抵抗加熱真空蒸着により50nm成膜した。次に、前記のブロック層の上に、光電変換層としてキナクリドンを100nm真空成膜した。最後に、前記の光電変換層の上に、電極としてアルミニウムを100nm真空成膜し、本発明の撮像素子用光電変換素子を作製した。ITOとアルミニウムを電極として、5Vの電圧を印加したときの明暗比は6.7×10であった。
【0106】
実施例2(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]フラン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例1で得られたNo.1で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は4.2×10であった。
【0107】
実施例3(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例3で得られたNo.29で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は2.5×10であった。
【0108】
実施例4(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(5−ベンゾ[b]チエニル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例4で得られた化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は5.0×10であった。
【0109】
実施例5(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(ナフト[1,2−b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例5で得られたNo.69で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は8.4×10であった。
【0110】
実施例6(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(ナフト[2,3−b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例6で得られたNo.20で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は4.5×10であった。
【0111】
実施例7(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(ベンゾ[d]オキサゾール−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例7で得られたNo.30で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は3.5×10であった。
【0112】
実施例8(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(5−フェニルベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例8で得られたNo.83で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は1.0×10であった。
【0113】
実施例9(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(3−ジベンゾ[b,d]フラン)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例9で得られたNo.72で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は1.2×10であった。
【0114】
実施例10(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(4−(3−ジベンゾ[b,d]チオフェン)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例10で得られたNo.71で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は9.2×10であった。
【0115】
比較例1(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)を使用しないこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は4.7であった。
【0116】
比較例2(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ジフェニル[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(下記式(11)で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は600であった。
【0117】
【化33】
【0118】
比較例3(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は31であった。
【0119】
比較例4(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(9−フェナントレニル)−[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(下記式(12)で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は690であった。
【0120】
【化34】
【0121】
比較例5(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(1−ナフチル)−[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(下記式(13)で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は240であった。
【0122】
【化35】
【0123】
比較例6(光電変換素子の作製及びその評価)
2,7−ビス(4−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)フェニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(合成例2で得られたNo.5で表される化合物)の代わりに、2,7−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)−[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン(下記式(14)で表される化合物)を使用したこと以外は、実施例1に準じて評価を行ったところ、5Vの電圧を印加したときの明暗比は47であった。
【0124】
【化36】
【0125】
上記の実施例1乃至9の評価において得られた明暗比は撮像素子用光電変換素子として明らかに優れた特性を示した。また、いずれも実用的な可視光透明性を有していた。
【0126】
上記の評価結果より、式(1)で表される化合物を含む本発明の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる実施例の撮像素子用光電変換素子が、比較例の撮像素子用光電変換素子よりも優れた特性を有することは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上のように、式(1)で表される化合物を含む本発明の撮像素子用光電変換素子用材料を含んでなる撮像素子用光電変換素子は、有機光電変換特性に優れた性能を有しており、高解像度と高応答性を有する有機撮像素子はもとより有機EL素子、有機太陽電池素子及び有機トランジスタ素子等の有機エレクトロニクスデバイス、光センサー、赤外センサー、紫外センサー、X線センサーやフォトンカウンター等のデバイスやそれらを利用したカメラ、ビデオカメラ、赤外線カメラ等の分野への応用が期待される。
【符号の説明】
【0128】
1 絶縁部
2 上部電極
3 電子ブロック層又は正孔輸送層
4 光電変換部
5 正孔ブロック層又は電子輸送層
6 下部電極
7 絶縁基材又は他光電変換素子
図1