【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による集成体の製造のための方法
この目的で、本発明の主題は、タイヤ集成体の製造のための方法であり、この集成体は、
・1本以上の第1の糸様要素を含む第1の織布又は編布と、
・1本以上の第2の糸様要素を含む第2の織布又は編布と、
・第1及び第2の織布又は編布を共に接続する支持要素を含む支持構造体と、
を含み、
この方法において、
・各第1の糸様要素は、少なくとも1層の第1の接着剤組成物で被覆され、各第2の糸様要素は、少なくとも1層の第2の接着剤組成物で被覆され、
・次いで、各第1及び第2の被覆された糸様要素は、熱処理されて、各第1及び第2の接着剤組成物を架橋させ、
・次いで、各被覆され熱処理された第1及び第2の糸様要素は、支持要素と共に組み立てられて、集成体を形成する。
【0015】
本発明によるタイヤ集成体の原理は、第1及び第2の織布又は編布を接続する支持要素を含む支持構造体であって、ひとたび集成体がタイヤ内に配置されると、コンタクトパッチの外側に位置する支持要素の部分の張力によって、タイヤにかかる荷重を支持することが可能であり、コンタクトパッチ内に位置する支持要素は、圧縮荷重を受けると座屈するので加荷重の支持に寄与しない、支持構造体を有することである。
【0016】
本発明による方法によれば、集成体の幾何学的性質は、各第1及び第2の接着剤組成物を架橋させることを可能にする熱処理段階の間に変化しない。なぜなら、接着剤組成物で被覆された糸様要素を熱処理すると、その長さの変化のみならずその機械的性質、特に伸びの変化が観察されるからである。それゆえ、集成体を形成し、次いで被覆された第1及び第2の糸様要素の熱処理段階を実行することによれば、各第1及び第2の糸様要素の幾何学的形状のみならず集成体の幾何学的形状、ひいてはひとたび集成体をタイヤ内に組み入れたときの動作が、両方とも変化することになるであろう。本発明による方法においては、各第1及び第2の糸様要素の個別の被覆段階及び個別の熱処理段階は、集成体の形成段階の前に行われるので、各第1及び第2の糸様要素の個別の幾何学的性質は、集成体の形成段階の前に変更され、その組立段階は、各糸様要素が受けた変化を考慮しながら行われる。かくしてタイヤ内の集成体の期待される動作が実際に得られる。
【0017】
加えて、各第1及び第2の糸様要素の個別の被覆段階及び個別の熱処理段階を集成体の形成段階の前に行うという事実は、各第1及び第2の織布又は編布の糸様要素の絡合箇所における付着点の形成を回避することを可能にする。
【0018】
いくつかの実施形態を想定することができる。好ましい実施形態において、集成体は、第1及び第2の織布を含む。別の実施形態において、集成体は、第1及び第2の編布を含む。さらに別の実施形態において、集成体は、織布及び編布を含む。
【0019】
好ましくは、第1の織布又は編布は、1本以上の第1の糸様要素で形成される。好ましくは、第2の織布又は編布は、1本以上の第2の糸様要素で形成される。
【0020】
好ましい実施形態において、支持構造体は、複数の同一の支持要素、すなわちその幾何学的特性及び構成材料が同一である支持要素を含む。
【0021】
支持要素は、第1及び第2の織布又は編布によって画定された空間内で、機械的に接続されるのではなく、対を形成するように配置される。それゆえ、支持要素は、機械的な観点では独立に挙動する。例えば、支持要素は、網目又は格子を形成するように共に接続されるものではない。
【0022】
「糸様(threadlike)要素」は、断面がいかなる形状であっても、例えば円形、楕円形、矩形若しくは正方形、さらには扁平であっても、その断面に対して非常に長いあらゆる細長い要素を意味するものとして理解され、この糸様要素は、例えば撚糸とすること又はウェーブ状とすることが可能である。その形状が円形の場合、その直径は、好ましくは5mm未満であり、より好ましくは100μmから1.2mmまでにわたる範囲内である。
【0023】
有利には、第1及び第2の架橋した接着剤組成物は、実質的に同一である。
【0024】
好ましくは、各第1及び第2の糸様要素は、テキスタイルであり、すなわち非金属性であり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリビニルアルコール、セルロース、鉱物繊維、天然繊維、エラストマー材料又はこれら材料の混合物から選択される材料で作られる。ポリエステルの中でも、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)又はPPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。ポリアミドの中でも、ポリアミド4−6、6、6−6(ナイロン)、11又は12などの脂肪族ポリアミド、及びアラミドなどの芳香族ポリアミドを挙げることができる。
【0025】
例えば、各第1及び第2の糸様要素は、共に撚合された又は撚合されていない、1本以上のモノフィラメント又はマルチフィラメントのテキスタイル繊維を含む、テキスタイル集成体である。それゆえ、一実施形態において、繊維が互いに実質的に平行な集成体を有することが可能である。別の実施形態において、繊維がらせん状に巻かれた集成体を有することも可能である。さらに別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、モノフィラメントからなる。各モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維は、5μmと20μmとの間、例えば10μmの直径を持つ。
【0026】
別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、金属性であり、例えば金属モノフィラメントの集成体であり、各金属モノフィラメントは、典型的には50μm未満、例えば10μmの直径を持つ。一実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、いくつかの金属モノフィラメントの集成体からなる。別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、金属モノフィラメントからなる。
【0027】
好ましい実施形態において、各支持要素は、糸様支持要素である。
【0028】
「糸様要素」は、断面がいかなる形状であっても、例えば円形、楕円形、矩形若しくは正方形、さらには扁平であっても、その断面に対して非常に長いあらゆる細長い要素を意味するものとして理解され、この糸様要素は、例えば撚糸とすること又はウェーブ状とすることが可能である。これが円形の場合、その直径は、好ましくは5mm未満であり、より好ましくは100μmから1.2mmまでにわたる範囲内である。
【0029】
糸様支持要素、特に支持部分は、典型的には、その平均断面S
P(これは糸様支持要素を第1及び第2の織布又は編布に平行かつ第1及び第2の織布又は編布の間に含まれるすべての面で切断することによって得られる断面の平均である)の固有最小寸法Eが、好ましくは第1及び第2の織布又は編布の2つの内面間の最大間隔(これはひとたび集成体がタイヤ内に配置されたときの内部環状空間の平均半径方向高さHに対応する)の高々0.02倍に等しく、その平均断面S
Pのアスペクト比Kが、好ましくは高々3に等しい。支持要素の平均断面S
Pの固有最小寸法Eが内部環状空間の平均半径方向高さHの高々0.02倍に等しいことで、大きい体積を有するあらゆる重い支持要素が除外される。換言すれば、各支持要素は、糸様である場合、半径方向に高度の細長さを有し、そのことによりコンタクトパッチを通過するときに座屈することが可能になる。座屈は可逆的であるので、コンタクトパッチの外側では各支持要素はその初期の幾何学的形状に戻る。かかる支持要素は、良好な疲労強度を有する。その平均断面S
Pのアスペクト比Kが高々3に等しいことは、その平均断面S
Pの固有最大寸法Lが、その平均断面S
Pの固有最小寸法Eの高々3倍に等しいことを意味する。
【0030】
糸様支持要素は、糸様タイプの機械的挙動を有し、すなわち、その平均ラインに沿った張力又は圧縮力のみを受けることができる。
【0031】
支持構造体のすべての糸様支持要素が必ずしも同一の長さL
Pを有するわけではないことに留意されたい。
【0032】
好ましくは、各糸様支持要素は、テキスタイルであり、すなわち非金属性であり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリビニルアルコール、セルロース、鉱物繊維、天然繊維、エラストマー材料又はこれら材料の混合物から選択される材料で作られる。ポリエステルの中でも、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)又はPPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。ポリアミドの中でも、ポリアミド4−6、6、6−6(ナイロン)、11又は12などの脂肪族ポリアミド、及びアラミドなどの芳香族ポリアミドを挙げることができる。
【0033】
例えば、各糸様支持要素は、共に撚合された又は撚合されていない、1本以上のモノフィラメント又はマルチフィラメントのテキスタイル繊維を含む、テキスタイル集成体である。それゆえ、一実施形態において、繊維が互いに実質的に平行な集成体を有することが可能である。別の実施形態において、繊維がらせん状に巻かれた集成体を有することも可能である。さらに別の実施形態において、各糸様支持要素は、モノフィラメントからなる。各モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維は、5μmと20μmとの間、例えば10μmの直径を持つ。
【0034】
別の実施形態において、各糸様支持要素は、金属性であり、例えば金属モノフィラメントの集成体であり、各金属モノフィラメントは、典型的には50μm未満、例えば10μmの直径を持つ。一実施形態において、各糸様支持要素は、いくつかの金属モノフィラメントの集成体からなる。別の実施形態において、各糸様支持要素は、金属モノフィラメントからなる。
【0035】
一実施形態において、各糸様支持要素は、糸様支持要素に沿って移動しながら、第1の織布又は編布から第2の織布又は編布に向かって、及び第2の織布又は編布から第1の織布又は編布に向かって交互に延びる。
【0036】
さらにより好ましくは、各糸様支持要素は、各第1及び第2の織布又は編布と織り交ぜられる(interlaced)。かかる集成体は、単一の製織段階で製造することが可能であるという利点を持つ。しかしながら、集成体を2段階で、すなわち第1及び第2の織布又は編布を製造する第1の製造段階と、1本又は複数本の糸様支持要素を第1及び第2の織布又は編布と織り交ぜる第2段階とで製造することを想定することも可能である。どちらの場合でも、各支持要素と各第1及び第2の織布又は編布とを織り交ぜることは、各第1及び第2の織布又は編布内に各支持要素を確実に機械的固定すること、及びそれにより支持構造体に所望の機械的性質を与えること可能にする。
【0037】
好ましくは、糸様支持要素は、
・第1及び第2の織布又は編布の間に延びる少なくとも1つの糸様支持部分と、
・糸様支持要素をそれぞれ第1及び第2の織布又は編布内で固定するための、糸様支持部分をそれぞれ第1及び第2の織布又は編布内へ延長する少なくとも第1及び第2の糸様部分と、
を含む。
【0038】
第1及び第2の織布又は編布の内面を互いに接続する各糸様支持部分は、その長さL
Pと、その平均断面S
Pとによって幾何学的に特徴づけることができ、平均断面S
Pは、糸様支持部分を第1及び第2の織布又は編布に平行かつ第1及び第2の織布又は編布の間に含まれるすべての面で切断することによって得られる断面の平均である。支持要素及び糸様支持部分の断面が変化しない最も多くの場合において、平均断面S
Pは、この変化しない断面に等しい。
【0039】
各糸様支持部分の平均断面S
Pは、固有最大寸法L及び固有最小寸法Eを含み、それらの比K=L/Eは、アスペクト比として知られる。例として、dに等しい直径を有する円形平均断面S
Pは、アスペクト比K=1を有し、長さL及び幅lを有する矩形平均断面S
Pは、アスペクト比K=L/lを有し、長軸A及び短軸aを有する楕円平均断面S
Pは、アスペクト比K=A/aを有する。
【0040】
好ましい実施形態において、第1の織布又は編布は、互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第1のファミリーと、互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である。
【0041】
好ましい実施形態において、第2の織布又は編布は、互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第1のファミリーと、互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である。
【0042】
この好ましい実施形態において、織布は、当業者に知られているように、第1及び第2のファミリーの糸様要素の絡合を特徴づける織りを含む。実施形態によれば、この織りは、平織、綾織又は朱子織タイプである。好ましくは、タイヤ用途での良好な機械的性質を与えるために、織りは平織タイプである。
【0043】
別の実施形態において、第1及び/又は第2の織布又は編布は、織り交ぜられたループを含む編布である。
【0044】
好ましくは、第1のファミリーの第1及び第2の糸様要素は、第1の方向に沿って延び、第2のファミリーの第1及び第2の糸様要素は、第2の方向に沿って延び、第1及び第2の方向は、互いに70°から90°までの範囲の角度を成す。
【0045】
それゆえ、第1の織布又は編布(26)が互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第1のファミリーと互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である好ましい実施形態において、各第1の糸様固定部分は、第1の織布の第1の糸様要素の第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の、第1の糸様要素の少なくとも1本の周りに、少なくとも部分的に巻き付けられる。
【0046】
第2の織布又は編布(28)が互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第1のファミリーと互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である好ましい実施形態において、各第2の糸様固定部分は、第2の織布の第2の糸様要素の第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の、第2の糸様要素の少なくとも1本の周りに少なくとも部分的に巻き付けられる。
【0047】
さらにより好ましくは、各第1のファミリーが第1及び第2の経糸様要素からなり、第2のファミリーが第1及び第2の緯糸様要素からなるとき、各第1及び第2の糸様固定部分は、それぞれ各第1及び第2の織布の第1及び第2の緯糸様要素の周りに、少なくとも部分的に巻き付けられる。別の実施形態において、各第1及び第2の糸様固定部分は、それぞれ各第1及び第2の織布の第1及び第2の経糸様要素の周りに少なくとも部分的に巻き付けられる。
【0048】
かかる織布の引張り剛性及び引張り破断荷重などの機械的特性は、第1のファミリーの糸様要素の趣旨又は第2のファミリーの糸様要素の趣旨に従って、テキスタイル糸様要素の場合には、tex又はg/1000mで表される番手、cN/texで表されるテナシティ、及び%で表される標準収縮などの糸様要素の特性に依存し、これら糸様要素は、糸数/dmで表される所与の密度で分布している。これらすべての特性は、糸様要素の構成材料及びその製造方法に依存する。
【0049】
好ましくは、第1の織布は主略方向(main general direction)に沿って延びており、第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の第1の糸様要素は、第1の織布の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す方向に沿って延びる。さらにより好ましくは、第1のファミリーは第1の経糸様要素からなり、第2のファミリーは第1の緯糸様要素からなり、第1の経糸様要素は、第1の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。さらにより好ましくは、第1の緯糸様要素は、第1の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。
【0050】
好ましくは、第2の織布は主略方向に沿って延びており、第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の第2の糸様要素は、第2の織布の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す方向に沿って延びる。さらにより好ましくは、第1のファミリーは第2の経糸様要素からなり、第2のファミリーは第2の緯糸様要素からなり、経糸様要素は、第2の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。さらにより好ましくは、第2の緯糸様要素は、第2の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。
【0051】
主略方向は、織布がその最大長さに従ってそれに沿って延びる概略の方向を意味するものとして理解される。
【0052】
一実施形態において、各第1の糸様要素は、第1の接着プライマーの層で直接被覆され、第1の接着プライマーの層は、第1の接着剤組成物の層で被覆される。
【0053】
一実施形態において、各第2の糸様要素は、第2の接着プライマーの層で直接被覆され、第2の接着プライマーの層は、第2の接着剤組成物の層で被覆される。
【0054】
各第1及び第2の接着プライマーは、例えば、エポキシ樹脂及び/又はイソシアネート化合物であり、これは随意にブロック化される。使用される各第1及び第2の接着剤組成物は、従来のRFL(レソルシノール/ホルムアルデヒドラテックス)接着剤、又は代替的に特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に記載されている接着剤とすることができる。
【0055】
別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、それぞれ各第1及び第2の接着剤組成物の層で直接被覆される。
【0056】
これが上記実施形態の1つ又はその他における場合、第1及び第2の糸様要素の表面を物理的手段によって、例えば電子線などの放射線による処理又はプラズマによる処理の使用によって、活性化することが有利であり得る。
【0057】
一実施形態において、各支持要素は、糸様支持要素であり、
・各糸様支持要素は、第3の接着剤組成物の少なくとも1層で被覆され、
・次いで、各被覆された糸様支持要素は、熱処理されて、第3の接着剤組成物を架橋させ、
・次いで、各被覆され熱処理された糸様支持要素は、第1及び第2の被覆され熱処理された糸様要素と共に組み立てられて、集成体を形成する。
【0058】
本発明による集成体
本発明の別の主題は、タイヤ集成体であり、この集成体は、
・1本以上の第1の糸様要素を含む第1の織布又は編布であって、各第1の糸様要素が第1の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆された、第1の織布又は編布と、
・1本以上の第2の糸様要素を含む第2の織布又は編布であって、各第2の糸様要素が第2の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆された、第2の織布又は編布と、
・第1及び第2の織布又は編布を共に接続する支持要素を含む支持構造体と、
を含み、この集成体は、前記請求項のいずれかに記載の方法によって得ることができる。
【0059】
各第1及び第2の糸様要素の個別の被覆段階及び個別の熱処理段階を集成体の形成段階の前に行うという事実は、各第1及び第2の織布又は編布の糸様要素の絡合箇所における付着点の形成を回避することを可能にする。それゆえ、一方で、本発明による集成体の各第1及び第2の織布又は編布は、それぞれ第1及び第2の糸様要素間で、それぞれ第1及び第2の接着剤組成物に起因する付着点を実質的に有さない。他方、第1及び第2の補強要素には、それぞれ各第1及び第2の接着剤組成物が個別により良く浸透し、これは、第1及び第2の補強要素が各第1及び第2の織布を形成した後で被覆された場合に絡合箇所においてそれぞれ各第1及び第2の接着剤組成物による浸透が悪影響を受けることとは対照的である。
【0060】
本発明の更なる主題は、タイヤ集成体であり、この集成体は、
・1本以上の第1の糸様要素を含む第1の織布又は編布であって、各第1の糸様要素が第1の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆されており、第1の接着剤組成物の層による各第1の糸様要素の個別の被覆段階と、それに続く各第1の被覆された糸様要素の個別の熱処理段階との後で得られる、第1の織布又は編布と、
・1本以上の第2の糸様要素を含む第2の織布又は編布であって、各第2の糸様要素が第2の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆されており、第2の接着剤組成物の層による各第2の糸様要素の個別の被覆段階と、それに続く各第2の被覆された糸様要素の個別の熱処理段階との後で得られる、第2の織布又は編布と、
・第1及び第2の織布又は編布を共に接続する支持要素を含む支持構造体と、
を含む。
【0061】
本発明による組立体
本発明の付加的な主題は、タイヤ組立体であり、この組立体は、
・それぞれ第1及び第2のポリマー組成物の第1及び第2の層と、
・上記定義のような集成体と
を含み、ここで
・第1の織布又は編布は、第1のポリマー組成物によって少なくとも部分的に含浸され、該組立体の第1の含浸織り又は編み構造体を形成し、
・第2の織布又は編布は、第2のポリマー組成物によって少なくとも部分的に含浸され、該組立体の第2の含浸織り又は編み構造体を形成する。
【0062】
一実施形態において、各ポリマー組成物は、少なくとも1種のエラストマー、好ましくはジエンエラストマーを含む。ジエンタイプのエラストマー又はゴム(これら2つの用語は同義語である)は、一般に、ジエンモノマー(2つの共役又は非共役炭素−炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的に得られる(すなわちホモポリマー又はコポリマー)エラストマーを意味するものと理解される。この組成物は、このとき未硬化状態(raw state)又は硬化状態のどちらであってもよい。
【0063】
特に好ましくは、ゴム組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。かかるコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)及びかかるコポリマーの混合物からなる群から選択される。
【0064】
各ポリマー組成物は、ただ1種類のジエンエラストマー又はいくつかの種類のジエンエラストマーの混合物を含むことができ、1種類又は複数種類のエラストマーをジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマー、実際にはエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーと組み合わせて使用することが可能である。
【0065】
さらに、この実施形態において、各ポリマー組成物は、エラストマー、好ましくはジエンエラストマーに加えて、補強用充填材、例えばカーボンブラック、架橋系、例えば加硫系、及び種々の添加剤を含む。
【0066】
別の実施形態において、各ポリマー組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーは、定義により、熱溶融性である。かかる熱可塑性ポリマーの例は、脂肪族ポリアミド例えばナイロン、ポリエステル例えばPET又はPEN、及び熱可塑性エラストマーである。
【0067】
熱可塑性エラストマー(「TPE」と略記される)は、熱可塑性ブロックに基づくブロックコポリマーの形態で提供されるエラストマーである。熱可塑性ポリマーとエラストマーとの間の中間的な構造を有するものとして、これらは、公知の方法で、剛性の熱可塑性(特にポリエステル)配列を可撓性のエラストマー配列(例えば、不飽和TPEの場合にはポリブタジエン若しくはポリイソプレン配列、又は飽和TPEの場合にはポリ(エチレン/ブチレン)配列)で接続して形成される。上記TPEブロックコポリマーが一般に2つのガラス転移ピークの存在によって特徴づけられるのは、この理由によるものであり、第1のピーク(低い方の、一般的には負の温度)はTPEコポリマーのエラストマー配列に関連し、第2のピーク(高い方の、正の温度、TPSタイプの好ましいエラストマーの場合には典型的には80℃を上回る)は、TPEコポリマーの熱可塑性(例えばスチレンブロック)部分に関連する。これらのTPEエラストマーは、多くの場合、可撓性セグメントによって接続された2つの剛性セグメントを有する3ブロックエラストマーである。剛性及び可撓性セグメントは、線形、星形又は分枝構造で配置することができる。これらのTPEエラストマーは、単一の剛性セグメントが可撓性セグメントに接続された2ブロックエラストマーであってもよい。典型的には、これらのセグメント又はブロックの各々は、少なくとも5より多くの、一般には10より多くの基本単位(例えば、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーの場合にはスチレン単位及びイソプレン単位)を含む。
【0068】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、不飽和である。不飽和TPEエラストマーは、定義により、かつ周知のように、エチレン性不飽和を設けた、すなわち(共役又は非共役)炭素−炭素二重結合を含むTPEエラストマーを意味すると理解され、逆に「飽和」TPEエラストマーは、当然、かかる二重結合を有さないTPEエラストマーである。
【0069】
第1及び第2のポリマー組成物は、異なっていてもよく又は同一であってもよい。例えば、第1のポリマー組成物は、ジエンエラストマーを含むことができ、第2のポリマー組成物は、熱可塑性エラストマーを含むことができ、逆もまた成り立つ。
【0070】
本発明によるタイヤ
本発明はまた、上記定義のような集成体又は上記定義のような組立体を含むタイヤに関する。
【0071】
一実施形態において、タイヤは、
・第1の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第1の層とを含み、第1の織布又は編布が第1のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第1の回転構造体と、
・第2の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第2の層とを含み、第2の織布又は編布が第2のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第2の回転構造体であって、第1の回転構造体の半径方向内側に配置された第2の回転構造体と、
・第1の回転構造体の半径方向外側に配置されたクラウン回転構造体と、
・第1の回転構造体の内面及び第2の回転構造体の内面によって画定された、内部環状空間と、
・第1の半径方向外部回転構造体の各軸方向端部と、第2の回転構造体の各軸方向端部とを共に接続するとともに、内部環状空間を画定する2つのサイドウォールであって、内部環状空間は、膨張ガスによって加圧することができる閉キャビティを形成する、2つのサイドウォールと、
を含む。
【0072】
タイヤの第2の半径方向内部回転構造体を形成する第2の含浸織り又は編み構造体は、他の機能の中でも特に、集成体したがってタイヤと、装着手段との接合を提供することが意図される。タイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、他の機能の中でも特に、集成体とクラウン回転構造体との接合を提供することが意図される。
【0073】
好ましくは、各サイドウォールは曲線長さL
Fを有するので、各サイドウォールの曲線長さL
Fは、有利には内部環状空間の平均半径方向高さHの1.05倍、好ましくは1.15倍に少なくとも等しい。さらにより有利には、各サイドウォールの曲線長さL
Fは、内部環状空間の平均半径方向高さHの少なくとも1.3倍に等しくかつ高々1.6倍に等しい。このサイドウォール長さの特性は、曲率が低すぎることが原因でサイドウォールの変形がタイヤ型装置の子午線方向の扁平化を損なうことがないことを保証する。
【0074】
有利には、サイドウォールは、集成体に直接接合されず、好ましくは支持要素に直接接合されない。サイドウォールは、それ自体の構造的剛性に応じて、荷重の支持に部分的に寄与する。しかしながら、サイドウォールは、独立した機械的挙動を有し、支持構造体の機械的挙動を妨害しない。サイドウォールは、一般に、少なくとも1種のエラストマー材料を含み、随意に補強材を含むことができる。
【0075】
膨張ガスによる有効に加圧されている場合、タイヤは、圧力に起因する空気的剛性(pneumatic stiffness)を示し、これもまた加わった荷重の支持に寄与することになる。通常、乗用車での使用の場合、圧力は、少なくとも0.5バールに等しく、好ましくは少なくとも1バールに等しい。圧力が高いほど、加荷重の支持に対する空気的剛性の寄与が大きくなり、それに応じて、加荷重の支持に対する支持構造体及び/又はサイドウォール及び/又はそれぞれ半径方向外部及び半径方向内部回転構造体の構造的剛性の寄与が小さくなる。加圧がなく、かつサイドウォールの構造的剛性が低い場合には、支持構造体及びそれぞれ半径方向外部及び半径方向内部回転構造体がいやおうなく事実上すべての荷重の支持を提供することになり、サイドウォールは、主としてタイヤの外部の要素による可能性のある衝撃に対する保護の役割のみを有する。
【0076】
タイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、タイヤの回転軸線と一致した回転軸を持つ。タイヤの第2の半径方向内部回転構造体を形成する第2の含浸織り又は編み構造体は、タイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体と同軸である。
【0077】
内部環状空間は、平均半径方向高さHを有する。タイヤが公称半径方向荷重Z
Nを受けて接地表面積Aで平坦な地面に接触しているとき、第1の織布又は編布を介して地面に接触しているタイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の部分に接続している支持要素は、圧縮下で座屈し、地面と接触していないタイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の部分に接続している支持要素の少なくとも一部は、張力下にある。
【0078】
加負荷に耐えるために、第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の単位表面積当たりの糸様支持部分の、1/m
2で表される平均表面密度Dは、少なくとも(S/S
E)*Z/(A*Fr)に等しく、ここでSはクラウン回転構造体の半径方向内部面の表面積(m
2)であり、S
Eは、第1の半径方向外部(これは第1のバンドの外面である)回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の外面と、クラウン回転構造体の半径方向内部面との間の結合表面積(m
2)であり、Z
Nは、タイヤに加わる公称半径方向荷重(N)であり、Aは、タイヤの接地表面積(m
2)であり、Frは、各支持部分の破断荷重(N)である。公称半径方向荷重Z
Nは、そのタイヤの推奨使用荷重である。接地表面積Aは、公称半径方向荷重Z
Nの作用下でタイヤが地面上で押しつぶされる表面積である。
【0079】
Dが少なくとも(S/S
E)*Z/(A*Fr)に等しいという表現は、具体的には、支持部分の平均表面密度が、公称半径方向荷重Z
Nが増大するにつれて、及び/又は、クラウン回転構造体の半径方向内部面と第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体との重なり度を表すS
E/S表面比が減少するにつれて、増大することを反映している。支持部分の平均表面密度Dは、支持部分の引張り破断荷重Frが増大するにつれて減少する。
【0080】
かかる支持部分の平均表面密度Dは、一方で、コンタクトパッチの外側の張力下にある支持要素が公称半径方向荷重Z
Nを支持すること、他方で、コンタクトパッチ内の圧縮下にある支持要素がトレッドの扁平化を円周面内及び子午面内の両方で保証することを可能にし、これは最新技術の公知のタイヤと比べて改善されたものである。
【0081】
一般に、支持部分の表面密度は、円周方向及び軸方向の両方で不変であり、すなわち支持部分の分布は円周方向及び軸方向の両方で一様であり、したがって平均表面密度Dはこの不変の表面密度と等しい。不変の表面密度の利点は、トレッドの幾何学的形状を、最新技術の他のタイヤと比べて「波打ち(rippling)」の影響が少ない事実上円筒形にすることを助長することである。
【0082】
しかしながら、いくつかの実施形態において、支持部分の表面密度は、円周方向及び/又は軸方向に可変であってもよく、すなわち支持部分の分布は円周方向及び/又は軸方向で必ずしも一様ではなく、そのため支持部分の平均表面密度Dという特性が導入される。
【0083】
1/m
2で表される支持部分の表面密度Dは、有利には少なくとも3*(S/S
E)*Z/(A*Fr)に等しい。支持部分の表面密度が高いほど、地面コンタクトパッチ内の圧力の均質化を改善し、加荷重に関して、及び耐久性に関して、より高い安全係数が保証される。
【0084】
1/m
2で表される支持部分の表面密度Dは、より有利には少なくとも6*(S/S
E)*Z/(A*Fr)に等しい。支持部分の表面密度がさらに高いほど、地面コンタクトパッチ内の圧力の均質化をさらに改善し、加荷重に関して、及び耐久性に関して、安全係数をさらに高めることを可能にする。
【0085】
1/m
2で表される支持部分の平均表面密度Dは、有利には少なくとも5000に等しい。
【0086】
いくつかの実施形態において、表面積S
Eは、表面積Sに実質的に等しく、すなわち第1の半径方向外部の第1の織布又は編布回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、クラウン回転構造体の内部面と完全に重なっている。これらの条件下で、支持部分の最小平均表面密度Dは、Z(A*Fr)に等しい。
【0087】
他の実施形態において、S
EはSと異なり、さらにはS
E<Sである。なぜなら、第1の含浸織り又は編み構造体は、必ずしも(軸方向及び/又は円周方向に)連続的である必要はなく、織布又は編布の部分を並置したものからなるものであってもよいからである。この場合、表面積S
Eは、第1の半径方向外部回転構造体(これは第1の層の外面である)を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の外面と、クラウン回転構造体の半径方向内部面との間の結合表面積の合計である。それゆえ、S
E<Sのとき、第1の半径方向外部の第1の織り又は編み構造体回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、クラウン回転構造体の半径方向内部面と完全には重ならず、すなわち部分的に重なる。
【0088】
この設計は、有利には、独立して製造することができるとともにタイヤの製造中に単一ブロックで組み込むことができる集成体を有することを可能にする。使用される集成体は、加硫、接着剤接合、又は第1及び第2のポリマー組成物の第1及び第2の層を接合するためのその他の任意の方法によって、タイヤの他の要素と一体化することができる。
【0089】
第1の半径方向外部の織布又は編布及び第2の半径方向内部の織布又は編布は、支持要素とそれぞれ半径方向外部及び半径方向内部回転構造体との間の界面としての役割を果たすので、これらは直接接触しない。
【0090】
説明したタイヤによって、トレッドの軸方向端部における子午線方向曲率半径の増大による、特に子午面におけるトレッドの扁平化の改善が観察される。
【0091】
この結果、特に、地面コンタクトパッチ内の圧力の均質化がもたらされ、これはタイヤの摩耗及びグリップの観点での寿命の増大に寄与する。
【0092】
タイヤの振動的及び音響的な快適性の改善に寄与する、固有振動周波数の増大もまた観察される。
【0093】
最後に、かかるタイヤの転がり抵抗は、実質的に低減し、これは車両の燃料消費の削減にとって好適である。
【0094】
本発明によるタイヤの製造のための方法
本発明の更なる主題は、タイヤの製造のための方法であり、ここで
・上記定義のような集成体又は組立体が、回転軸の周りの略回転体であるコンフェクションシリンダ(confection cylinder)の周りに巻き付けられ、
・第1及び第2の織布又は編布の少なくとも一方が、前記回転軸に対して半径方向に分離される。
【0095】
一実施形態において、タイヤは、
・第1の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第1の層とを含み、第1の織布又は編布が第1のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第1の回転構造体と、
・第2の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第2の層とを含み、第2の織布又は編布が第2のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第2の回転構造体であって、第1の回転構造体の半径方向内側に配置された第2の回転構造体と、
・第1の回転構造体の内面及び第2の回転構造体の内面によって画定された、内部環状空間と、
・第1の回転構造体の各軸方向端部と、第2の回転構造体の各軸方向端部とを共に接続するとともに、内部環状空間を画定する2つのサイドウォールであって、内部環状空間は、膨張ガスによって加圧することができる閉キャビティを形成する、2つのサイドウォールと、
を含み、その方法において、
・内部環状空間が形成され、
・内部環状空間が拡張される。
【0096】
好ましくは、内部環状空間を形成するために、各サイドウォールは、内部環状空間を形成するように第1及び第2の回転構造体の各軸方向端部に接合される。
【0097】
有利には、内部環状空間は、内部環状空間の膨張ガスによる加圧によって拡張される。
【0098】
好ましくは、内部環状空間が拡張された後、クラウン回転構造体が第1の回転構造体の半径方向外側に巻き付けられる。
【0099】
本発明は、単に非限定的な例として与えられるとともに図面を参照して行われる以下の説明を読むと、より良く理解されるであろう。