特許第6836595号(P6836595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836595予め接着されたワイヤ要素を含む織布又は編布を含むタイヤ用に意図された組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836595
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】予め接着されたワイヤ要素を含む織布又は編布を含むタイヤ用に意図された組立体
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/40 20060101AFI20210222BHJP
   B60C 3/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B29D30/40
   B60C3/02 B
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-531218(P2018-531218)
(86)(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公表番号】特表2019-502571(P2019-502571A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】FR2016053450
(87)【国際公開番号】WO2017103491
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年10月10日
(31)【優先権主張番号】1562630
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】リゴ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルコ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ダジュー ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー マガリー
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭54−024761(JP,B1)
【文献】 米国特許第01426763(US,A)
【文献】 特開2009−269410(JP,A)
【文献】 特表2005−500932(JP,A)
【文献】 米国特許第02506861(US,A)
【文献】 国際公開第2014/103841(WO,A1)
【文献】 特開昭55−127205(JP,A)
【文献】 特開2011−178308(JP,A)
【文献】 特開昭59−063203(JP,A)
【文献】 特開平10−076807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00−30/72
B60C1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ(20)集成体(24)の製造のための方法であって、前記集成体(24)は、 ・1本以上の第1の糸様要素(64、66)を含む第1の織布又は編布(26)と、
・1本以上の第2の糸様要素(68、70)を含む第2の織布又は編布(28)と、
・前記第1及び第2の織布又は編布(26、28)を共に接続する支持要素(32)を含む支持構造体(30)と、
を含み、
この方法において、
・各第1の糸様要素(64、66)は、少なくとも1層の第1の接着剤組成物で被覆され、各第2の糸様要素(68、70)は、少なくとも1層の第2の接着剤組成物で被覆され、
・各第1及び第2の被覆された糸様要素(64、66、68、70)は、次いで熱処理されて、各第1及び第2の接着剤組成物を架橋させ、
・各第1及び第2の被覆され熱処理された糸様要素(64、66、68、70)は、次いで前記支持要素(32)と共に組み立てられて、前記集成体(24)を形成する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の架橋した接着剤組成物は、実質的に同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各第1及び第2の糸様要素(64、66、68、70)はテキスタイルである、請求項1〜請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
各支持要素(32)は、糸様支持要素(32)である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各糸様支持要素(32)は、テキスタイルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各糸様支持要素(32)は、前記糸様支持要素(32)に沿って移動しながら、前記第1の織布又は編布(26)から前記第2の織布又は編布(28)に向かって、及び前記第2の織布又は編布(28)から前記第1の織布又は編布(26)に向かって交互に延びる、請求項4〜請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
各第1の糸様要素(64、66)は、第1の接着プライマーの層で直接被覆され、前記第1の接着プライマーの前記層は、前記第1の接着剤組成物の前記層で被覆される、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
各第2の糸様要素(68、70)は、第2の接着プライマーの層で直接被覆され、前記第2の接着プライマーの前記層は、前記第2の接着剤組成物の前記層で被覆される、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
各支持要素(32)は、糸様支持要素(32)であり、
・各糸様支持要素(32)は、第3の接着剤組成物の少なくとも1層で被覆され、
・各被覆された糸様支持要素(32)は、次いで熱処理されて、前記第3の接着剤組成物を架橋させ、
・各被覆され熱処理された糸様支持要素(32)は、次いで前記第1及び第2の被覆され、かつ、熱処理された糸様要素(64、66、68、70)と共に組み立てられて、前記集成体(24)を形成する、
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
タイヤ(20)の製造のための方法であって、
集成体(24)又は組立体が、回転軸の周りの略回転体であるコンフェクションシリンダの周りに巻き付けられ、
前記集成体(24)は、
・1本以上の第1の糸様要素(64、66)を含む第1の織布又は編布(26)であって、各第1の糸様要素(64、66)が第1の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆された、第1の織布又は編布(26)と、
・1本以上の第2の糸様要素(68、70)を含む第2の織布又は編布(28)であって、各第2の糸様要素(68、70)が第2の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆された、第2の織布又は編布(28)と、
・前記第1及び第2の織布又は編布(26、28)を共に接続する支持要素(32)を含む支持構造体(30)と、
を含み、
前記組立体(90)は、
・それぞれ第1及び第2のポリマー組成物(34、36)の第1及び第2の層(33、35)と、
・集成体(24)と、
を含み、当該集成体(24)において、
・前記第1の織布又は編布(26)は、前記第1のポリマー組成物(34)によって少なくとも部分的に含浸され、前記組立体(90)の第1の含浸織り又は編み構造体(25)を形成し、
・前記第2の織布又は編布(28)は、前記第2のポリマー組成物(36)によって少なくとも部分的に含浸され、前記組立体(90)の第2の含浸織り又は編み構造体(27)を形成し、
前記タイヤ(20)は、
・前記第1の織布又は編布(26)と、第1のポリマー組成物(34)の第1の層とを含み、前記第1の織布又は編布(26)が前記第1のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第1の回転構造体(25’)と、
・前記第2の織布又は編布(28)と、第1のポリマー組成物(36)の第2の層とを含み、前記第2の織布又は編布(28)が前記第2のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第2の回転構造体(27’)であって、前記第1の回転構造体(25’)の半径方向内側に配置された第2の回転構造体(27’)と、
・前記第1の回転構造体(25’)の半径方向外側に配置されたクラウン回転構造体(55)と、
・前記第1の回転構造体(25’)の内面(42)及び前記第2の回転構造体(27’)の内面(46)によって画定された、内部環状空間(52)と、
・前記第1の半径方向外部回転構造体(25’)の各軸方向端部(44)と、前記第2の回転構造体(27’)の各軸方向端部(48)とを共に接続するとともに前記内部環状空間(52)を画定する2つのサイドウォール(50)であって、前記内部環状空間(52)は、膨張ガスによって加圧することができる閉キャビティを形成する、2つのサイドウォール(50)と、
を含み、
・前記内部環状空間(52)が形成され、
・前記内部環状空間を開放するために、第1及び第2の織布又は編布(26、28)の少なくとも一方が、前記回転軸に対して半径方向に分離される
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、タイヤ集成体(tyre assemblage)、タイヤ、タイヤ集成体の製造のための方法、及びタイヤの製造のための方法である。
【0002】
本発明は、車両に装備することを意図したタイヤの分野に関する。タイヤは、好ましくは乗用車用に設計されるが、二輪車、大型車、農業用車両、土木機械若しくは航空機のような他の任意の型式の車両、又はより一般的には任意の回転装置に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
従来のタイヤは、ホイールリムに装着され、膨張ガスによって加圧され、荷重の作用下で地面上で押しつぶされることが意図された、円環面形の構造である。地面と接触することが意図されるその走行面上の任意の点において、タイヤは、二重の曲率、すなわち円周方向曲率及び子午線方向曲率を有する。円周方向曲率は、タイヤの回転方向でタイヤの走行面に接する円周方向と、タイヤの回転軸線に対して垂直な半径方向とで定められる円周面内の曲率を意味するものとして理解される。子午線方向曲率は、タイヤの回転軸線に平行な軸方向と、タイヤの回転軸線に対して垂直な半径方向とで定められる子午面又は半径面内の曲率を意味するものとして理解される。
【0004】
以下、「半径方向内部又は半径方向外部」という表現は、それぞれ「タイヤの回転軸線に近い方又は回転軸線から遠い方」を意味するものと理解される。「軸方向内部又は軸方向外部」という表現は、それぞれ「タイヤの赤道面に近い方又は赤道面から遠い方」を意味するものと理解され、タイヤの赤道面は、タイヤの走行面の中央を通り、かつタイヤの回転軸線に対して垂直な平面である。
【0005】
水平な地面上での円周面及び子午面におけるタイヤの扁平化は、タイヤが地面と接するパッチの境界に位置する走行面の点における円周方向曲率半径及び子午線方向曲率半径によってそれぞれ条件づけられることが知られている。ある点における曲率は、数学的な意味で曲率半径の逆数なので、この扁平化は、その曲率半径が大きいほど、すなわち曲率が小さいほどますます緩やかになる。タイヤの扁平化は、タイヤの性能品質、特に転がり抵抗、グリップ、摩耗及び雑音に対する影響を有することもまた知られている。
【0006】
したがって、タイヤの専門家である当業者は、摩耗、グリップ、耐久性、転がり抵抗及び雑音(このリストは網羅的ではない)といったタイヤの期待される性能品質間の良好な妥協を得ることを探求して、従来のタイヤの扁平化を最適化するための代替的な解決策を開発してきた。
【0007】
最新技術の従来のタイヤは、その取付けリム上に装着されるとともにその推奨動作圧まで膨張したタイヤがその使用荷重を受けたとき、トレッドの肩部として知られる軸方向端部において一般に高い子午線方向曲率すなわち小さい子午線方向曲率半径を有する。取付けリム、動作圧及び使用荷重は、例えば欧州タイヤ及びリム技術機構(European Tyre and Rim Technical Organisation)(ETRTO)などの規格によって定められている。
【0008】
従来のタイヤは、加荷重(load applied)を、トレッドの軸方向端部すなわち肩部と、タイヤを取付けリムに確実に機械的接続するためのビードにトレッドを接続するサイドウォールとによって、本質的に支持する。従来のタイヤは、肩部における子午線方向曲率が小さく、一般に子午線方向での扁平化を得ることが困難であることが知られている。
【0009】
特許文献1は、エラストマー材料で作られた環状本体であって、トレッドを含むことができるタイヤの外周の半径方向外部円筒部分と、ホイールリムに装着することが意図された半径方向内部円筒部分とを含むものを有するタイヤを記載する。円周方向に沿って離間した複数の壁が半径方向内部円筒部分から半径方向外部円筒部分へ延びており、荷重の支持に備える。さらに、サイドウォールが2つのそれぞれ半径方向内部及び半径方向外部円筒部分を接続し、トレッドとサイドウォールとの組み合わせで閉キャビティを形成するように、かつそれによりタイヤが加圧されることを可能にするようになっている。しかしながら、かかるタイヤは、従来のタイヤと比べて高重量を有し、その重い性質ゆえに大量のエネルギーを損失しやすく、そのことがその耐久性及び寿命を制限しかねない。
【0010】
特許文献2は、2つのサイドウォールと支持構造体とによって接続された2つの環状シェル、すなわち1つは内側すなわち半径方向内部の環状シェル、1つは外側すなわち半径方向外部の環状シェルを含む、タイヤ構造体を記載する。この発明によれば、支持構造体は、加圧され、タイヤの環状容積を複数のコンパートメント又はセルに分割し、サイドウォールは、支持構造体に接続され又は一体化される。この場合、加荷重は、支持構造体とサイドウォールとの両方によって支持される。コンタクトパッチ内の圧力の分布は、コンタクトパッチの軸方向幅において均一ではなく、サイドウォールと支持構造体との間の接続のせいで子午線方向の扁平化が困難であることに起因して肩部で圧力が高まる。これらの肩部で高まった圧力は、トレッドの肩部の顕著な摩耗を発生させやすい。
【0011】
特許文献3は、コンプライアントバンドと、コンプライアントバンドからハブまで半径方向内方に延びた複数のスポークとを含む、コンプライアントホイールを記載する。コンプライアントバンドは、接地面に適合すること及び障害物を包み込むことが意図される。スポークは、張力がかかった地面と接触していないスポークによって、コンプライアントバンドとハブとの間で支持荷重を伝達する。かかるコンプライアントホイールは、実質的に円筒形の外周を保証するために、スポークの分布の最適化を必要とする。さらに、コンプライアントホイールは、従来のタイヤに比べて比較的高い重量を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4 235 270号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/087291号
【特許文献3】国際公開第2005/007422号
【特許文献4】国際公開第2013/017421号
【特許文献5】国際公開第2013/017422号
【特許文献6】国際公開第2013/017423号
【特許文献7】国際公開第2015/007641号
【特許文献8】国際公開第2015/007642号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、タイヤが荷重を受けたときにトレッドの改善された扁平化を可能にする、タイヤ集成体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による集成体の製造のための方法
この目的で、本発明の主題は、タイヤ集成体の製造のための方法であり、この集成体は、
・1本以上の第1の糸様要素を含む第1の織布又は編布と、
・1本以上の第2の糸様要素を含む第2の織布又は編布と、
・第1及び第2の織布又は編布を共に接続する支持要素を含む支持構造体と、
を含み、
この方法において、
・各第1の糸様要素は、少なくとも1層の第1の接着剤組成物で被覆され、各第2の糸様要素は、少なくとも1層の第2の接着剤組成物で被覆され、
・次いで、各第1及び第2の被覆された糸様要素は、熱処理されて、各第1及び第2の接着剤組成物を架橋させ、
・次いで、各被覆され熱処理された第1及び第2の糸様要素は、支持要素と共に組み立てられて、集成体を形成する。
【0015】
本発明によるタイヤ集成体の原理は、第1及び第2の織布又は編布を接続する支持要素を含む支持構造体であって、ひとたび集成体がタイヤ内に配置されると、コンタクトパッチの外側に位置する支持要素の部分の張力によって、タイヤにかかる荷重を支持することが可能であり、コンタクトパッチ内に位置する支持要素は、圧縮荷重を受けると座屈するので加荷重の支持に寄与しない、支持構造体を有することである。
【0016】
本発明による方法によれば、集成体の幾何学的性質は、各第1及び第2の接着剤組成物を架橋させることを可能にする熱処理段階の間に変化しない。なぜなら、接着剤組成物で被覆された糸様要素を熱処理すると、その長さの変化のみならずその機械的性質、特に伸びの変化が観察されるからである。それゆえ、集成体を形成し、次いで被覆された第1及び第2の糸様要素の熱処理段階を実行することによれば、各第1及び第2の糸様要素の幾何学的形状のみならず集成体の幾何学的形状、ひいてはひとたび集成体をタイヤ内に組み入れたときの動作が、両方とも変化することになるであろう。本発明による方法においては、各第1及び第2の糸様要素の個別の被覆段階及び個別の熱処理段階は、集成体の形成段階の前に行われるので、各第1及び第2の糸様要素の個別の幾何学的性質は、集成体の形成段階の前に変更され、その組立段階は、各糸様要素が受けた変化を考慮しながら行われる。かくしてタイヤ内の集成体の期待される動作が実際に得られる。
【0017】
加えて、各第1及び第2の糸様要素の個別の被覆段階及び個別の熱処理段階を集成体の形成段階の前に行うという事実は、各第1及び第2の織布又は編布の糸様要素の絡合箇所における付着点の形成を回避することを可能にする。
【0018】
いくつかの実施形態を想定することができる。好ましい実施形態において、集成体は、第1及び第2の織布を含む。別の実施形態において、集成体は、第1及び第2の編布を含む。さらに別の実施形態において、集成体は、織布及び編布を含む。
【0019】
好ましくは、第1の織布又は編布は、1本以上の第1の糸様要素で形成される。好ましくは、第2の織布又は編布は、1本以上の第2の糸様要素で形成される。
【0020】
好ましい実施形態において、支持構造体は、複数の同一の支持要素、すなわちその幾何学的特性及び構成材料が同一である支持要素を含む。
【0021】
支持要素は、第1及び第2の織布又は編布によって画定された空間内で、機械的に接続されるのではなく、対を形成するように配置される。それゆえ、支持要素は、機械的な観点では独立に挙動する。例えば、支持要素は、網目又は格子を形成するように共に接続されるものではない。
【0022】
「糸様(threadlike)要素」は、断面がいかなる形状であっても、例えば円形、楕円形、矩形若しくは正方形、さらには扁平であっても、その断面に対して非常に長いあらゆる細長い要素を意味するものとして理解され、この糸様要素は、例えば撚糸とすること又はウェーブ状とすることが可能である。その形状が円形の場合、その直径は、好ましくは5mm未満であり、より好ましくは100μmから1.2mmまでにわたる範囲内である。
【0023】
有利には、第1及び第2の架橋した接着剤組成物は、実質的に同一である。
【0024】
好ましくは、各第1及び第2の糸様要素は、テキスタイルであり、すなわち非金属性であり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリビニルアルコール、セルロース、鉱物繊維、天然繊維、エラストマー材料又はこれら材料の混合物から選択される材料で作られる。ポリエステルの中でも、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)又はPPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。ポリアミドの中でも、ポリアミド4−6、6、6−6(ナイロン)、11又は12などの脂肪族ポリアミド、及びアラミドなどの芳香族ポリアミドを挙げることができる。
【0025】
例えば、各第1及び第2の糸様要素は、共に撚合された又は撚合されていない、1本以上のモノフィラメント又はマルチフィラメントのテキスタイル繊維を含む、テキスタイル集成体である。それゆえ、一実施形態において、繊維が互いに実質的に平行な集成体を有することが可能である。別の実施形態において、繊維がらせん状に巻かれた集成体を有することも可能である。さらに別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、モノフィラメントからなる。各モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維は、5μmと20μmとの間、例えば10μmの直径を持つ。
【0026】
別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、金属性であり、例えば金属モノフィラメントの集成体であり、各金属モノフィラメントは、典型的には50μm未満、例えば10μmの直径を持つ。一実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、いくつかの金属モノフィラメントの集成体からなる。別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、金属モノフィラメントからなる。
【0027】
好ましい実施形態において、各支持要素は、糸様支持要素である。
【0028】
「糸様要素」は、断面がいかなる形状であっても、例えば円形、楕円形、矩形若しくは正方形、さらには扁平であっても、その断面に対して非常に長いあらゆる細長い要素を意味するものとして理解され、この糸様要素は、例えば撚糸とすること又はウェーブ状とすることが可能である。これが円形の場合、その直径は、好ましくは5mm未満であり、より好ましくは100μmから1.2mmまでにわたる範囲内である。
【0029】
糸様支持要素、特に支持部分は、典型的には、その平均断面SP(これは糸様支持要素を第1及び第2の織布又は編布に平行かつ第1及び第2の織布又は編布の間に含まれるすべての面で切断することによって得られる断面の平均である)の固有最小寸法Eが、好ましくは第1及び第2の織布又は編布の2つの内面間の最大間隔(これはひとたび集成体がタイヤ内に配置されたときの内部環状空間の平均半径方向高さHに対応する)の高々0.02倍に等しく、その平均断面SPのアスペクト比Kが、好ましくは高々3に等しい。支持要素の平均断面SPの固有最小寸法Eが内部環状空間の平均半径方向高さHの高々0.02倍に等しいことで、大きい体積を有するあらゆる重い支持要素が除外される。換言すれば、各支持要素は、糸様である場合、半径方向に高度の細長さを有し、そのことによりコンタクトパッチを通過するときに座屈することが可能になる。座屈は可逆的であるので、コンタクトパッチの外側では各支持要素はその初期の幾何学的形状に戻る。かかる支持要素は、良好な疲労強度を有する。その平均断面SPのアスペクト比Kが高々3に等しいことは、その平均断面SPの固有最大寸法Lが、その平均断面SPの固有最小寸法Eの高々3倍に等しいことを意味する。
【0030】
糸様支持要素は、糸様タイプの機械的挙動を有し、すなわち、その平均ラインに沿った張力又は圧縮力のみを受けることができる。
【0031】
支持構造体のすべての糸様支持要素が必ずしも同一の長さLPを有するわけではないことに留意されたい。
【0032】
好ましくは、各糸様支持要素は、テキスタイルであり、すなわち非金属性であり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリビニルアルコール、セルロース、鉱物繊維、天然繊維、エラストマー材料又はこれら材料の混合物から選択される材料で作られる。ポリエステルの中でも、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)又はPPN(ポリプロピレンナフタレート)を挙げることができる。ポリアミドの中でも、ポリアミド4−6、6、6−6(ナイロン)、11又は12などの脂肪族ポリアミド、及びアラミドなどの芳香族ポリアミドを挙げることができる。
【0033】
例えば、各糸様支持要素は、共に撚合された又は撚合されていない、1本以上のモノフィラメント又はマルチフィラメントのテキスタイル繊維を含む、テキスタイル集成体である。それゆえ、一実施形態において、繊維が互いに実質的に平行な集成体を有することが可能である。別の実施形態において、繊維がらせん状に巻かれた集成体を有することも可能である。さらに別の実施形態において、各糸様支持要素は、モノフィラメントからなる。各モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維は、5μmと20μmとの間、例えば10μmの直径を持つ。
【0034】
別の実施形態において、各糸様支持要素は、金属性であり、例えば金属モノフィラメントの集成体であり、各金属モノフィラメントは、典型的には50μm未満、例えば10μmの直径を持つ。一実施形態において、各糸様支持要素は、いくつかの金属モノフィラメントの集成体からなる。別の実施形態において、各糸様支持要素は、金属モノフィラメントからなる。
【0035】
一実施形態において、各糸様支持要素は、糸様支持要素に沿って移動しながら、第1の織布又は編布から第2の織布又は編布に向かって、及び第2の織布又は編布から第1の織布又は編布に向かって交互に延びる。
【0036】
さらにより好ましくは、各糸様支持要素は、各第1及び第2の織布又は編布と織り交ぜられる(interlaced)。かかる集成体は、単一の製織段階で製造することが可能であるという利点を持つ。しかしながら、集成体を2段階で、すなわち第1及び第2の織布又は編布を製造する第1の製造段階と、1本又は複数本の糸様支持要素を第1及び第2の織布又は編布と織り交ぜる第2段階とで製造することを想定することも可能である。どちらの場合でも、各支持要素と各第1及び第2の織布又は編布とを織り交ぜることは、各第1及び第2の織布又は編布内に各支持要素を確実に機械的固定すること、及びそれにより支持構造体に所望の機械的性質を与えること可能にする。
【0037】
好ましくは、糸様支持要素は、
・第1及び第2の織布又は編布の間に延びる少なくとも1つの糸様支持部分と、
・糸様支持要素をそれぞれ第1及び第2の織布又は編布内で固定するための、糸様支持部分をそれぞれ第1及び第2の織布又は編布内へ延長する少なくとも第1及び第2の糸様部分と、
を含む。
【0038】
第1及び第2の織布又は編布の内面を互いに接続する各糸様支持部分は、その長さLPと、その平均断面SPとによって幾何学的に特徴づけることができ、平均断面SPは、糸様支持部分を第1及び第2の織布又は編布に平行かつ第1及び第2の織布又は編布の間に含まれるすべての面で切断することによって得られる断面の平均である。支持要素及び糸様支持部分の断面が変化しない最も多くの場合において、平均断面SPは、この変化しない断面に等しい。
【0039】
各糸様支持部分の平均断面SPは、固有最大寸法L及び固有最小寸法Eを含み、それらの比K=L/Eは、アスペクト比として知られる。例として、dに等しい直径を有する円形平均断面SPは、アスペクト比K=1を有し、長さL及び幅lを有する矩形平均断面SPは、アスペクト比K=L/lを有し、長軸A及び短軸aを有する楕円平均断面SPは、アスペクト比K=A/aを有する。
【0040】
好ましい実施形態において、第1の織布又は編布は、互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第1のファミリーと、互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である。
【0041】
好ましい実施形態において、第2の織布又は編布は、互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第1のファミリーと、互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である。
【0042】
この好ましい実施形態において、織布は、当業者に知られているように、第1及び第2のファミリーの糸様要素の絡合を特徴づける織りを含む。実施形態によれば、この織りは、平織、綾織又は朱子織タイプである。好ましくは、タイヤ用途での良好な機械的性質を与えるために、織りは平織タイプである。
【0043】
別の実施形態において、第1及び/又は第2の織布又は編布は、織り交ぜられたループを含む編布である。
【0044】
好ましくは、第1のファミリーの第1及び第2の糸様要素は、第1の方向に沿って延び、第2のファミリーの第1及び第2の糸様要素は、第2の方向に沿って延び、第1及び第2の方向は、互いに70°から90°までの範囲の角度を成す。
【0045】
それゆえ、第1の織布又は編布(26)が互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第1のファミリーと互いに実質的に平行な第1の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である好ましい実施形態において、各第1の糸様固定部分は、第1の織布の第1の糸様要素の第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の、第1の糸様要素の少なくとも1本の周りに、少なくとも部分的に巻き付けられる。
【0046】
第2の織布又は編布(28)が互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第1のファミリーと互いに実質的に平行な第2の糸様要素の第2のファミリーとの絡合を含む織布である好ましい実施形態において、各第2の糸様固定部分は、第2の織布の第2の糸様要素の第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の、第2の糸様要素の少なくとも1本の周りに少なくとも部分的に巻き付けられる。
【0047】
さらにより好ましくは、各第1のファミリーが第1及び第2の経糸様要素からなり、第2のファミリーが第1及び第2の緯糸様要素からなるとき、各第1及び第2の糸様固定部分は、それぞれ各第1及び第2の織布の第1及び第2の緯糸様要素の周りに、少なくとも部分的に巻き付けられる。別の実施形態において、各第1及び第2の糸様固定部分は、それぞれ各第1及び第2の織布の第1及び第2の経糸様要素の周りに少なくとも部分的に巻き付けられる。
【0048】
かかる織布の引張り剛性及び引張り破断荷重などの機械的特性は、第1のファミリーの糸様要素の趣旨又は第2のファミリーの糸様要素の趣旨に従って、テキスタイル糸様要素の場合には、tex又はg/1000mで表される番手、cN/texで表されるテナシティ、及び%で表される標準収縮などの糸様要素の特性に依存し、これら糸様要素は、糸数/dmで表される所与の密度で分布している。これらすべての特性は、糸様要素の構成材料及びその製造方法に依存する。
【0049】
好ましくは、第1の織布は主略方向(main general direction)に沿って延びており、第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の第1の糸様要素は、第1の織布の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す方向に沿って延びる。さらにより好ましくは、第1のファミリーは第1の経糸様要素からなり、第2のファミリーは第1の緯糸様要素からなり、第1の経糸様要素は、第1の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。さらにより好ましくは、第1の緯糸様要素は、第1の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。
【0050】
好ましくは、第2の織布は主略方向に沿って延びており、第1及び第2のファミリーの少なくとも一方の第2の糸様要素は、第2の織布の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す方向に沿って延びる。さらにより好ましくは、第1のファミリーは第2の経糸様要素からなり、第2のファミリーは第2の緯糸様要素からなり、経糸様要素は、第2の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。さらにより好ましくは、第2の緯糸様要素は、第2の織布の主方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度を成す。
【0051】
主略方向は、織布がその最大長さに従ってそれに沿って延びる概略の方向を意味するものとして理解される。
【0052】
一実施形態において、各第1の糸様要素は、第1の接着プライマーの層で直接被覆され、第1の接着プライマーの層は、第1の接着剤組成物の層で被覆される。
【0053】
一実施形態において、各第2の糸様要素は、第2の接着プライマーの層で直接被覆され、第2の接着プライマーの層は、第2の接着剤組成物の層で被覆される。
【0054】
各第1及び第2の接着プライマーは、例えば、エポキシ樹脂及び/又はイソシアネート化合物であり、これは随意にブロック化される。使用される各第1及び第2の接着剤組成物は、従来のRFL(レソルシノール/ホルムアルデヒドラテックス)接着剤、又は代替的に特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に記載されている接着剤とすることができる。
【0055】
別の実施形態において、各第1及び第2の糸様要素は、それぞれ各第1及び第2の接着剤組成物の層で直接被覆される。
【0056】
これが上記実施形態の1つ又はその他における場合、第1及び第2の糸様要素の表面を物理的手段によって、例えば電子線などの放射線による処理又はプラズマによる処理の使用によって、活性化することが有利であり得る。
【0057】
一実施形態において、各支持要素は、糸様支持要素であり、
・各糸様支持要素は、第3の接着剤組成物の少なくとも1層で被覆され、
・次いで、各被覆された糸様支持要素は、熱処理されて、第3の接着剤組成物を架橋させ、
・次いで、各被覆され熱処理された糸様支持要素は、第1及び第2の被覆され熱処理された糸様要素と共に組み立てられて、集成体を形成する。
【0058】
本発明による集成体
本発明の別の主題は、タイヤ集成体であり、この集成体は、
・1本以上の第1の糸様要素を含む第1の織布又は編布であって、各第1の糸様要素が第1の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆された、第1の織布又は編布と、
・1本以上の第2の糸様要素を含む第2の織布又は編布であって、各第2の糸様要素が第2の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆された、第2の織布又は編布と、
・第1及び第2の織布又は編布を共に接続する支持要素を含む支持構造体と、
を含み、この集成体は、前記請求項のいずれかに記載の方法によって得ることができる。
【0059】
各第1及び第2の糸様要素の個別の被覆段階及び個別の熱処理段階を集成体の形成段階の前に行うという事実は、各第1及び第2の織布又は編布の糸様要素の絡合箇所における付着点の形成を回避することを可能にする。それゆえ、一方で、本発明による集成体の各第1及び第2の織布又は編布は、それぞれ第1及び第2の糸様要素間で、それぞれ第1及び第2の接着剤組成物に起因する付着点を実質的に有さない。他方、第1及び第2の補強要素には、それぞれ各第1及び第2の接着剤組成物が個別により良く浸透し、これは、第1及び第2の補強要素が各第1及び第2の織布を形成した後で被覆された場合に絡合箇所においてそれぞれ各第1及び第2の接着剤組成物による浸透が悪影響を受けることとは対照的である。
【0060】
本発明の更なる主題は、タイヤ集成体であり、この集成体は、
・1本以上の第1の糸様要素を含む第1の織布又は編布であって、各第1の糸様要素が第1の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆されており、第1の接着剤組成物の層による各第1の糸様要素の個別の被覆段階と、それに続く各第1の被覆された糸様要素の個別の熱処理段階との後で得られる、第1の織布又は編布と、
・1本以上の第2の糸様要素を含む第2の織布又は編布であって、各第2の糸様要素が第2の架橋した接着剤組成物の少なくとも1層で被覆されており、第2の接着剤組成物の層による各第2の糸様要素の個別の被覆段階と、それに続く各第2の被覆された糸様要素の個別の熱処理段階との後で得られる、第2の織布又は編布と、
・第1及び第2の織布又は編布を共に接続する支持要素を含む支持構造体と、
を含む。
【0061】
本発明による組立体
本発明の付加的な主題は、タイヤ組立体であり、この組立体は、
・それぞれ第1及び第2のポリマー組成物の第1及び第2の層と、
・上記定義のような集成体と
を含み、ここで
・第1の織布又は編布は、第1のポリマー組成物によって少なくとも部分的に含浸され、該組立体の第1の含浸織り又は編み構造体を形成し、
・第2の織布又は編布は、第2のポリマー組成物によって少なくとも部分的に含浸され、該組立体の第2の含浸織り又は編み構造体を形成する。
【0062】
一実施形態において、各ポリマー組成物は、少なくとも1種のエラストマー、好ましくはジエンエラストマーを含む。ジエンタイプのエラストマー又はゴム(これら2つの用語は同義語である)は、一般に、ジエンモノマー(2つの共役又は非共役炭素−炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的に得られる(すなわちホモポリマー又はコポリマー)エラストマーを意味するものと理解される。この組成物は、このとき未硬化状態(raw state)又は硬化状態のどちらであってもよい。
【0063】
特に好ましくは、ゴム組成物のジエンエラストマーは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。かかるコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)及びかかるコポリマーの混合物からなる群から選択される。
【0064】
各ポリマー組成物は、ただ1種類のジエンエラストマー又はいくつかの種類のジエンエラストマーの混合物を含むことができ、1種類又は複数種類のエラストマーをジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマー、実際にはエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーと組み合わせて使用することが可能である。
【0065】
さらに、この実施形態において、各ポリマー組成物は、エラストマー、好ましくはジエンエラストマーに加えて、補強用充填材、例えばカーボンブラック、架橋系、例えば加硫系、及び種々の添加剤を含む。
【0066】
別の実施形態において、各ポリマー組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーは、定義により、熱溶融性である。かかる熱可塑性ポリマーの例は、脂肪族ポリアミド例えばナイロン、ポリエステル例えばPET又はPEN、及び熱可塑性エラストマーである。
【0067】
熱可塑性エラストマー(「TPE」と略記される)は、熱可塑性ブロックに基づくブロックコポリマーの形態で提供されるエラストマーである。熱可塑性ポリマーとエラストマーとの間の中間的な構造を有するものとして、これらは、公知の方法で、剛性の熱可塑性(特にポリエステル)配列を可撓性のエラストマー配列(例えば、不飽和TPEの場合にはポリブタジエン若しくはポリイソプレン配列、又は飽和TPEの場合にはポリ(エチレン/ブチレン)配列)で接続して形成される。上記TPEブロックコポリマーが一般に2つのガラス転移ピークの存在によって特徴づけられるのは、この理由によるものであり、第1のピーク(低い方の、一般的には負の温度)はTPEコポリマーのエラストマー配列に関連し、第2のピーク(高い方の、正の温度、TPSタイプの好ましいエラストマーの場合には典型的には80℃を上回る)は、TPEコポリマーの熱可塑性(例えばスチレンブロック)部分に関連する。これらのTPEエラストマーは、多くの場合、可撓性セグメントによって接続された2つの剛性セグメントを有する3ブロックエラストマーである。剛性及び可撓性セグメントは、線形、星形又は分枝構造で配置することができる。これらのTPEエラストマーは、単一の剛性セグメントが可撓性セグメントに接続された2ブロックエラストマーであってもよい。典型的には、これらのセグメント又はブロックの各々は、少なくとも5より多くの、一般には10より多くの基本単位(例えば、スチレン/イソプレン/スチレンブロックコポリマーの場合にはスチレン単位及びイソプレン単位)を含む。
【0068】
好ましくは、熱可塑性エラストマーは、不飽和である。不飽和TPEエラストマーは、定義により、かつ周知のように、エチレン性不飽和を設けた、すなわち(共役又は非共役)炭素−炭素二重結合を含むTPEエラストマーを意味すると理解され、逆に「飽和」TPEエラストマーは、当然、かかる二重結合を有さないTPEエラストマーである。
【0069】
第1及び第2のポリマー組成物は、異なっていてもよく又は同一であってもよい。例えば、第1のポリマー組成物は、ジエンエラストマーを含むことができ、第2のポリマー組成物は、熱可塑性エラストマーを含むことができ、逆もまた成り立つ。
【0070】
本発明によるタイヤ
本発明はまた、上記定義のような集成体又は上記定義のような組立体を含むタイヤに関する。
【0071】
一実施形態において、タイヤは、
・第1の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第1の層とを含み、第1の織布又は編布が第1のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第1の回転構造体と、
・第2の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第2の層とを含み、第2の織布又は編布が第2のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第2の回転構造体であって、第1の回転構造体の半径方向内側に配置された第2の回転構造体と、
・第1の回転構造体の半径方向外側に配置されたクラウン回転構造体と、
・第1の回転構造体の内面及び第2の回転構造体の内面によって画定された、内部環状空間と、
・第1の半径方向外部回転構造体の各軸方向端部と、第2の回転構造体の各軸方向端部とを共に接続するとともに、内部環状空間を画定する2つのサイドウォールであって、内部環状空間は、膨張ガスによって加圧することができる閉キャビティを形成する、2つのサイドウォールと、
を含む。
【0072】
タイヤの第2の半径方向内部回転構造体を形成する第2の含浸織り又は編み構造体は、他の機能の中でも特に、集成体したがってタイヤと、装着手段との接合を提供することが意図される。タイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、他の機能の中でも特に、集成体とクラウン回転構造体との接合を提供することが意図される。
【0073】
好ましくは、各サイドウォールは曲線長さLFを有するので、各サイドウォールの曲線長さLFは、有利には内部環状空間の平均半径方向高さHの1.05倍、好ましくは1.15倍に少なくとも等しい。さらにより有利には、各サイドウォールの曲線長さLFは、内部環状空間の平均半径方向高さHの少なくとも1.3倍に等しくかつ高々1.6倍に等しい。このサイドウォール長さの特性は、曲率が低すぎることが原因でサイドウォールの変形がタイヤ型装置の子午線方向の扁平化を損なうことがないことを保証する。
【0074】
有利には、サイドウォールは、集成体に直接接合されず、好ましくは支持要素に直接接合されない。サイドウォールは、それ自体の構造的剛性に応じて、荷重の支持に部分的に寄与する。しかしながら、サイドウォールは、独立した機械的挙動を有し、支持構造体の機械的挙動を妨害しない。サイドウォールは、一般に、少なくとも1種のエラストマー材料を含み、随意に補強材を含むことができる。
【0075】
膨張ガスによる有効に加圧されている場合、タイヤは、圧力に起因する空気的剛性(pneumatic stiffness)を示し、これもまた加わった荷重の支持に寄与することになる。通常、乗用車での使用の場合、圧力は、少なくとも0.5バールに等しく、好ましくは少なくとも1バールに等しい。圧力が高いほど、加荷重の支持に対する空気的剛性の寄与が大きくなり、それに応じて、加荷重の支持に対する支持構造体及び/又はサイドウォール及び/又はそれぞれ半径方向外部及び半径方向内部回転構造体の構造的剛性の寄与が小さくなる。加圧がなく、かつサイドウォールの構造的剛性が低い場合には、支持構造体及びそれぞれ半径方向外部及び半径方向内部回転構造体がいやおうなく事実上すべての荷重の支持を提供することになり、サイドウォールは、主としてタイヤの外部の要素による可能性のある衝撃に対する保護の役割のみを有する。
【0076】
タイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、タイヤの回転軸線と一致した回転軸を持つ。タイヤの第2の半径方向内部回転構造体を形成する第2の含浸織り又は編み構造体は、タイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体と同軸である。
【0077】
内部環状空間は、平均半径方向高さHを有する。タイヤが公称半径方向荷重ZNを受けて接地表面積Aで平坦な地面に接触しているとき、第1の織布又は編布を介して地面に接触しているタイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の部分に接続している支持要素は、圧縮下で座屈し、地面と接触していないタイヤの第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の部分に接続している支持要素の少なくとも一部は、張力下にある。
【0078】
加負荷に耐えるために、第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の単位表面積当たりの糸様支持部分の、1/m2で表される平均表面密度Dは、少なくとも(S/SE)*Z/(A*Fr)に等しく、ここでSはクラウン回転構造体の半径方向内部面の表面積(m2)であり、SEは、第1の半径方向外部(これは第1のバンドの外面である)回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の外面と、クラウン回転構造体の半径方向内部面との間の結合表面積(m2)であり、ZNは、タイヤに加わる公称半径方向荷重(N)であり、Aは、タイヤの接地表面積(m2)であり、Frは、各支持部分の破断荷重(N)である。公称半径方向荷重ZNは、そのタイヤの推奨使用荷重である。接地表面積Aは、公称半径方向荷重ZNの作用下でタイヤが地面上で押しつぶされる表面積である。
【0079】
Dが少なくとも(S/SE)*Z/(A*Fr)に等しいという表現は、具体的には、支持部分の平均表面密度が、公称半径方向荷重ZNが増大するにつれて、及び/又は、クラウン回転構造体の半径方向内部面と第1の半径方向外部回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体との重なり度を表すSE/S表面比が減少するにつれて、増大することを反映している。支持部分の平均表面密度Dは、支持部分の引張り破断荷重Frが増大するにつれて減少する。
【0080】
かかる支持部分の平均表面密度Dは、一方で、コンタクトパッチの外側の張力下にある支持要素が公称半径方向荷重ZNを支持すること、他方で、コンタクトパッチ内の圧縮下にある支持要素がトレッドの扁平化を円周面内及び子午面内の両方で保証することを可能にし、これは最新技術の公知のタイヤと比べて改善されたものである。
【0081】
一般に、支持部分の表面密度は、円周方向及び軸方向の両方で不変であり、すなわち支持部分の分布は円周方向及び軸方向の両方で一様であり、したがって平均表面密度Dはこの不変の表面密度と等しい。不変の表面密度の利点は、トレッドの幾何学的形状を、最新技術の他のタイヤと比べて「波打ち(rippling)」の影響が少ない事実上円筒形にすることを助長することである。
【0082】
しかしながら、いくつかの実施形態において、支持部分の表面密度は、円周方向及び/又は軸方向に可変であってもよく、すなわち支持部分の分布は円周方向及び/又は軸方向で必ずしも一様ではなく、そのため支持部分の平均表面密度Dという特性が導入される。
【0083】
1/m2で表される支持部分の表面密度Dは、有利には少なくとも3*(S/SE)*Z/(A*Fr)に等しい。支持部分の表面密度が高いほど、地面コンタクトパッチ内の圧力の均質化を改善し、加荷重に関して、及び耐久性に関して、より高い安全係数が保証される。
【0084】
1/m2で表される支持部分の表面密度Dは、より有利には少なくとも6*(S/SE)*Z/(A*Fr)に等しい。支持部分の表面密度がさらに高いほど、地面コンタクトパッチ内の圧力の均質化をさらに改善し、加荷重に関して、及び耐久性に関して、安全係数をさらに高めることを可能にする。
【0085】
1/m2で表される支持部分の平均表面密度Dは、有利には少なくとも5000に等しい。
【0086】
いくつかの実施形態において、表面積SEは、表面積Sに実質的に等しく、すなわち第1の半径方向外部の第1の織布又は編布回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、クラウン回転構造体の内部面と完全に重なっている。これらの条件下で、支持部分の最小平均表面密度Dは、Z(A*Fr)に等しい。
【0087】
他の実施形態において、SEはSと異なり、さらにはSE<Sである。なぜなら、第1の含浸織り又は編み構造体は、必ずしも(軸方向及び/又は円周方向に)連続的である必要はなく、織布又は編布の部分を並置したものからなるものであってもよいからである。この場合、表面積SEは、第1の半径方向外部回転構造体(これは第1の層の外面である)を形成する第1の含浸織り又は編み構造体の外面と、クラウン回転構造体の半径方向内部面との間の結合表面積の合計である。それゆえ、SE<Sのとき、第1の半径方向外部の第1の織り又は編み構造体回転構造体を形成する第1の含浸織り又は編み構造体は、クラウン回転構造体の半径方向内部面と完全には重ならず、すなわち部分的に重なる。
【0088】
この設計は、有利には、独立して製造することができるとともにタイヤの製造中に単一ブロックで組み込むことができる集成体を有することを可能にする。使用される集成体は、加硫、接着剤接合、又は第1及び第2のポリマー組成物の第1及び第2の層を接合するためのその他の任意の方法によって、タイヤの他の要素と一体化することができる。
【0089】
第1の半径方向外部の織布又は編布及び第2の半径方向内部の織布又は編布は、支持要素とそれぞれ半径方向外部及び半径方向内部回転構造体との間の界面としての役割を果たすので、これらは直接接触しない。
【0090】
説明したタイヤによって、トレッドの軸方向端部における子午線方向曲率半径の増大による、特に子午面におけるトレッドの扁平化の改善が観察される。
【0091】
この結果、特に、地面コンタクトパッチ内の圧力の均質化がもたらされ、これはタイヤの摩耗及びグリップの観点での寿命の増大に寄与する。
【0092】
タイヤの振動的及び音響的な快適性の改善に寄与する、固有振動周波数の増大もまた観察される。
【0093】
最後に、かかるタイヤの転がり抵抗は、実質的に低減し、これは車両の燃料消費の削減にとって好適である。
【0094】
本発明によるタイヤの製造のための方法
本発明の更なる主題は、タイヤの製造のための方法であり、ここで
・上記定義のような集成体又は組立体が、回転軸の周りの略回転体であるコンフェクションシリンダ(confection cylinder)の周りに巻き付けられ、
・第1及び第2の織布又は編布の少なくとも一方が、前記回転軸に対して半径方向に分離される。
【0095】
一実施形態において、タイヤは、
・第1の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第1の層とを含み、第1の織布又は編布が第1のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第1の回転構造体と、
・第2の織布又は編布と、第1のポリマー組成物の第2の層とを含み、第2の織布又は編布が第2のポリマー組成物で少なくとも部分的に含浸された、第2の回転構造体であって、第1の回転構造体の半径方向内側に配置された第2の回転構造体と、
・第1の回転構造体の内面及び第2の回転構造体の内面によって画定された、内部環状空間と、
・第1の回転構造体の各軸方向端部と、第2の回転構造体の各軸方向端部とを共に接続するとともに、内部環状空間を画定する2つのサイドウォールであって、内部環状空間は、膨張ガスによって加圧することができる閉キャビティを形成する、2つのサイドウォールと、
を含み、その方法において、
・内部環状空間が形成され、
・内部環状空間が拡張される。
【0096】
好ましくは、内部環状空間を形成するために、各サイドウォールは、内部環状空間を形成するように第1及び第2の回転構造体の各軸方向端部に接合される。
【0097】
有利には、内部環状空間は、内部環状空間の膨張ガスによる加圧によって拡張される。
【0098】
好ましくは、内部環状空間が拡張された後、クラウン回転構造体が第1の回転構造体の半径方向外側に巻き付けられる。
【0099】
本発明は、単に非限定的な例として与えられるとともに図面を参照して行われる以下の説明を読むと、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】本発明の第1の実施形態によるタイヤの部分斜視図である。
図2】押しつぶされた状態の図1のタイヤの円周方向断面図である。
図3図1のタイヤの子午線断面図である。
図4】本発明による集成体の織布の1つの平面図である。
図5】断面P−Pに沿った、図4の本発明による集成体を含む本発明による組立体の断面図である。
図6図1のタイヤの支持構造体の支持要素の図である。
図7】タイヤの製造後の図4及び図5の集成体の一部を可視化した図1のタイヤの部分子午線断面図である。
図8図1のタイヤ及び最新技術の基準タイヤの歪みの関数としての加荷重の変化の比較標準曲線を示す。
図9図1のタイヤ及び最新技術の基準タイヤに対する加荷重の関数としてのコーナリング剛性の変化の比較標準曲線を示す。
図10A】本発明によるタイヤの製造のための方法中の本発明による集成体及び組立体の拡張を示す。
図10B】本発明によるタイヤの製造のための方法中の本発明による集成体及び組立体の拡張を示す。
図10C】本発明によるタイヤの製造のための方法中の本発明による集成体及び組立体の拡張を示す。
図11】本発明の第2の実施形態によるタイヤの、図1と類似した図である。
図12図11のタイヤの、図7と類似した図である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
本発明によるタイヤの実施例
タイヤの通常の軸方向(YY’方向沿い)、半径方向(ZZ’方向沿い)及び円周方向(XX’方向沿い)の配向にそれぞれ対応した基準座標系X、Y、Zを図中に表示した。
【0102】
全般的な符号20で示される本発明の第1の態様によるタイヤを図1に示した。タイヤ20は、軸方向YY’に対して実質的に平行な軸の周りの略回転体である。タイヤ20は、この例では乗用車のためのものであることが意図される。図1において、タイヤ20は、この例ではホイールリムである装着手段22に装着され、これにより車両用の装着組立体23を形成する。
【0103】
タイヤ20は、第1の含浸織り又は編み構造体25と、第2の含浸織り又は編み構造体27とを含む、集成体24を含む。第2の含浸織り又は編み構造体27は、第1の含浸織り又は編み構造体25に対して半径方向内側に配置される。適切な場合において、各第1及び第2の構造体25、27は、含浸織り構造体である。代替的な形態において、第1及び第2の構造体25、27は、含浸編み構造体である。
【0104】
図5に示すように、第1の含浸織り構造体25は、第1の織布又は編布26、この例では織布26と、第1のポリマー組成物34の第1の層33とを含み、第1の織布26は、第1のポリマー組成物34で少なくとも部分的に含浸されている。第2の含浸織り構造体27は、第2の織布又は編布28、この例では織布28と、第2のポリマー組成物36の第2の層35とを含み、第2の織布28は、第2のポリマー組成物36で少なくとも部分的に含浸されている。代替的な形態において、各第1及び第2の構造体25、27は、それぞれ各ポリマー組成物34、36で少なくとも部分的に含浸された編布を含む。
【0105】
タイヤ20において、第1の織布26は、第2の織布28に対して半径方向外側に配置される。各第1及び第2のポリマー組成物34、36は、例えば、少なくとも1種のエラストマー、好ましくはジエンエラストマー、例えば天然ゴムを含む、エラストマー組成物を含む。
【0106】
タイヤ20内で、第1の含浸織り構造体25は、第1の回転構造体25’を形成し、第2の含浸織り構造体27は、第1の回転構造体25’の半径方向内側に配置された第2の回転構造体27’を形成する。
【0107】
集成体24はまた、第1及び第2の織布26、28を共に接続する支持要素32を含む、支持構造体30を含む。支持構造体30は、この例では複数の支持要素32で形成される。
【0108】
さらに、タイヤ20は、第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の半径方向外側に配置された、クラウン回転構造体55を含む。クラウン回転構造体55は、図1及び図5に示すように、円周方向補強材54及びトレッド58を含む。クラウン回転構造体55は、半径方向内部面59と、トレッド58の外部面によって形成された半径方向外部面60とを含む。
【0109】
円周方向補強材54は、ポリマー組成物、例えば、少なくとも1種のエラストマー、好ましくはジエンエラストマー、例えば天然ゴムを含む、エラストマー組成物を含み、その中に当業者に公知のいくつかの金属又はテキスタイル補強要素56が埋設される。
【0110】
円周方向補強材54は、タイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の半径方向外側に配置される。トレッド58は、地面に接触することが意図される。トレッド58は、ポリマー組成物、例えば、少なくとも1種のエラストマー、好ましくはジエンエラストマー、例えば天然ゴムを含む、エラストマー組成物で形成される。トレッド58は、円周方向補強材54の半径方向外側に配置される。
【0111】
図1及び図5に示すように、タイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25、タイヤ20の第2の半径方向内部回転構造体27’を形成する第2の含浸織り構造体27、及びクラウン回転構造体55は、共通の回転軸、適切な場合にはタイヤ20の回転軸線YY’を持つ。
【0112】
タイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25は、内面42及び外面43、並びに2つの軸方向端部44を持つ。内面42は、第1の織布26の内面であり、外面43は、第1の層33の外面である。タイヤ20内で、内面42は、外面43の半径方向内側に配置され、外面43は、クラウン回転構造体55の半径方向内部面に接触する。
【0113】
タイヤ20の第2の半径方向外部回転構造体27’を形成する第2の含浸織り構造体27は、内面46及び外面47、並びに2つの軸方向端部48を持つ。内面46は、第2の織布28の内面であり、外面47は、第2の層35の外面である。タイヤ20内で、内面46は、外面47の半径方向外側に配置される。
【0114】
2つの面42及び46は互いに対面し、かつ互いに実質的に平行である。タイヤ20内で、各表面42、46は、タイヤ20の軸YY’の周りに回転円筒を描く。
【0115】
図1を参照すると、タイヤ20は、2つのサイドウォール50も含む。各サイドウォール50は、タイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の各軸方向端部44と、タイヤ20の第2の半径方向内部回転構造体27’を形成する第2の含浸織り構造体27の各軸方向端部48とを共に接続する。
【0116】
タイヤ20はまた、一方で各内面42及び46によって画定され、他方で2つのサイドウォール50で画定された、内部環状空間52を含む。内部環状空間52は、膨張ガス、例えば空気によって加圧することができる閉キャビティを形成する。支持要素32は、内部環状空間52内で対を形成して独立している。
【0117】
この第1の実施形態において、集成体24は、タイヤ20の2つのサイドウォール50の間で軸方向に連続様式で延びている。集成体24は、タイヤ20の回転軸YY’の周りを円周方向に1回巻いて延びており、図7に示すように、軸方向に連続した集成体バンド51を形成するようになっている。
【0118】
図2及び図3において、タイヤ20は、公称半径方向荷重ZNを受けた状態で示されている。タイヤ20は、円周方向長さXAを有する接地表面積Aによって、平坦な地面に接している。トレッドを介して地面に接触しているタイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の部分に接続している支持要素32は、圧縮下で座屈し、一方、地面と接触していないタイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の部分に接続している支持要素32の少なくとも一部は、張力下にある。
【0119】
タイヤ20内に配置される前の第1の織布26の外面53を図4に示した。ポリマー組成物34の第1の層33の表示は、記述を明瞭にするためにあえて省略した。本発明による集成体及び組立体90を図5に示した。
【0120】
第1の織布26は、第1の経糸様要素として知られる第1の糸様要素64の第1のファミリーと、第1の緯糸様要素として知られる第1の糸様要素66の第2のファミリーとの絡合を含む。第1の織布26の第1の経糸様要素64は、互いに実質的に平行であり、「経糸」方向に沿って延びる。第1の織布26の第1の緯糸様要素66は、互いに実質的に平行であり、「緯糸」方向に沿って延びる。第1の糸様要素64、66は、少なくとも1層の第1の架橋した接着剤組成物で被覆されており、第1の接着剤組成物の層による各第1の糸様要素64、66の個別の被覆段階と、それに続く各第1の被覆された糸様要素64、66の個別の熱処理段階との後で得られる。適切な場合において、各第1の糸様要素64、66は、この例ではエポキシ樹脂とブロック化イソシアネートとに基づくプライマーである第1の接着プライマーの層で被覆され、この接着プライマーの層自体が、この例ではRFLタイプの接着剤である第1の接着剤組成物で被覆される。
【0121】
第2の織布28は、第2の経糸様要素として知られる第2の糸様要素68の第1のファミリーと、第2の緯糸様要素として知られる第2の糸様要素70の第2のファミリーとの絡合を含む織布である。第2の織布28の第2の経糸様要素68は、互いに実質的に平行であり、「経糸」方向に沿って延びる。第2の織布28の第2の緯糸様要素70は、互いに実質的に平行であり、「緯糸」方向に沿って延びる。第2の糸様要素68、70は、少なくとも1層の第2の架橋した接着剤組成物で被覆されており、第2の接着剤組成物の層による各第2の糸様要素68、70の個別の被覆段階と、それに続く各第2の被覆された糸様要素68、70の個別の熱処理段階との後で得られる。適切な場合において、各第2の糸様要素68、70は、この例ではエポキシ樹脂とブロック化イソシアネートとに基づくプライマーである第2の接着プライマーの層で被覆され、この接着プライマーの層自体が、この例ではRFLタイプの接着剤である第2の接着剤組成物で被覆される。
【0122】
適切な場合において、第1及び第2の接着プライマーは同一である。第1及び第2の接着剤組成物は同一である。
【0123】
各第1及び第2の織布26、28内で、経糸及び緯糸方向は、互いに70°から90°までの範囲の角度を成す。適切な場合において、この角度は実質的に90°に等しい。
【0124】
第1の及び第2の糸様要素64、66、68、70は、すべて実質的に同一である。各第1及び第2の糸様要素64、66、68、70は、この例ではポリエチレンテレフタレート(PET)製の、テキスタイル糸様要素である。適切な場合において、各第1の及び第2の糸様要素64、66、68、70は、170texに等しい線密度及び66cN/texに等しいテナシティを持つ、紡糸様要素である。
【0125】
支持要素32は、糸様支持要素である。各糸様支持要素32は、糸様支持要素32に沿って移動しながら、第1の織布26から第2の織布28に向かって、及び第2の織布28から第1の織布26に向かって交互に延びている。加えて、各糸様支持要素32は、第1の織布26及び第2の織布28と織り交ぜられる。各糸様支持要素32は、この例ではポリエチレンテレフタレート(PET)製の、テキスタイル糸様支持要素である。適切な場合において、各支持要素は、55texに等しい線密度及び54cN/texに等しいテナシティを持つ、紡糸様要素である。記載の実施形態において、糸様支持要素32は、接着剤組成物の層を有さない。
【0126】
各糸様支持要素32は、第1及び第2の織布26、28の間、特に内面42と46との間に延びる、糸様支持部分74を含む。各糸様支持要素32は、糸様支持要素32をそれぞれ第1の織布26及び第2の織布28の中で固定するための第1及び第2の糸様部分76、78を含む。各第1及び第2の糸様固定部分76、78は、支持部分74をそれぞれ第1の織布26及び第2の織布28内へ延長する。各第1及び第2の糸様固定部分76、78は、それぞれ各第1の織布26及び各第2の織布28の経糸様要素64、68の第1のファミリーの幾本かの糸様要素の周りに、少なくとも部分的に巻き付けられる。したがって、各糸様固定部分76、78は、2つの糸様支持部分74を一緒に接続する。
【0127】
糸様支持要素32の糸様固定部分76は、図4及び7に示される。
【0128】
図4において、第1の織布26及び第2の織布28は、両方とも、第1及び第2の織布26、28の長手縁部に対して実質的に平行な主略方向Gに沿って延びている。第1の半径方向外部の織布26の第1の経糸様要素64は、第1の織布26に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度A1を成す方向に沿って延びる。第1の半径方向外部の織布26の第1の緯糸様要素66は、第1の織布26の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度A2を成す方向に沿って延びる。
【0129】
同様に、第2の半径方向内部の織布28の第2の経糸様要素68は、第2の半径方向内部の織布28の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度A3を成す方向に沿って延びる。第2の半径方向内部の織布28の第2の緯糸様要素70は、第1の織布26の主略方向に対して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度A4を成す方向に沿って延びる。適切な場合、A1=A2=A3=A4=45°である。
【0130】
糸様支持要素32の糸様支持部分74を図6に示した。糸様支持部分74は、固有最小寸法E及び固有最大寸法Lによって定められる円形平均断面SPを持ち、これら寸法は提示した例では両方ともその円の直径に等しく、かつ、そのL/Eに等しい(それゆえこの場合には1に等しい)アスペクト比Kによって特徴づけられる。加えて、糸様支持部分74の平均断面SPの固有最小寸法E、すなわちこの場合にはその直径は、内部環状空間52の平均半径方向高さHの高々0.02倍に等しい。支持部分74は、内部環状空間52の平均高さHに少なくとも等しい長さLPを有する。糸様固定部分76、78は、同じ円形平均断面SP、及び同じ平均断面SPの固有最小寸法Eを持つ。
【0131】
タイヤ20を、図7に、第1の織布26がタイヤ20内に配置されたときにその内面53が見えるように部分的に示した。
【0132】
第1の織布26の第1の経糸様要素64は、タイヤ20の円周方向XX’に対して角度A1より小さい角度B1を成す方向に沿って延びる。同様に、第1の織布26の第1の緯糸様要素66は、タイヤ20の円周方向XX’に対して角度A2より小さい角度B2を成す方向に沿って延びる。
【0133】
第2の半径方向内部の織布28の第2の経糸様要素68は、タイヤ20の円周方向XX’に対して角度B3を成す方向に沿って延びる。同様に、第2の半径方向内部の織布28の第2の緯糸様要素70は、タイヤ20の円周方向XX’に対して角度B4を成す方向に沿って延びる。
【0134】
適切な場合において、各角度B1、B2は、それぞれ各角度A1、A2より小さく、少なくとも10°に等しくかつ45°未満であり、この例ではB1=B2=38°である。各角度B3、B4は、それぞれ各角度A3、A4と実質的に等しく、少なくとも10°に等しくかつ45°以下であり、この例ではB3=B4=45°である。
【0135】
その剛性特性を図8及び図9に提示したタイヤ20は、それぞれ333mm及び298mmに等しい平均半径並びに両方とも250mmに等しい軸方向幅を有する、第1及び第2の半径方向外部及び半径方向内部回転構造体25’、27’を含む。内部環状空間52は、35mmに等しい平均半径方向高さHを有する。タイヤ20は、1.5バールと2.5バールとの間の圧力まで膨張され、600daNに等しい半径方向荷重ZNを受ける。
【0136】
図8は、本発明Iによるタイヤ及び最新技術の基準タイヤRについて、mmで表した歪みFの関数として、daNで表した加荷重Zの変化の2つの比較標準曲線を提示する。図8は、所与の半径方向荷重Zに対して、本発明のIによるタイヤの方が基準タイヤRよりも歪みFが小さいことを示す。換言すれば、本発明Iによるタイヤの半径方向剛性は、基準タイヤRの半径方向剛性より大きい。
【0137】
図9は、本発明Iによるタイヤ及び最新技術の基準タイヤRについて、Nで表した加荷重の関数として、N/°で表したコーナリング剛性ZDの変化の2つの比較標準曲線を提示する。図9は、所与の半径方向荷重Zに対して、本発明のIによるタイヤの方が基準タイヤRよりもコーナリング剛性ZDが大きいことを示す。
【0138】
本発明による製造方法を、ここで図10A図10B及び図10Cを参照して説明する。
【0139】
集成体24の形成前の段階において、各第1の及び第2の糸様要素64、66、68、70は、接着プライマーの層及び接着剤組成物の層で被覆される。このために、第1の及び第2の糸様要素64、66、68、70は、まず、エポキシ樹脂(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、約1%)及びイソシアネート化合物(ブロック化カプロラクタム、約5%)に基づく第1の水性浴(約94%の水)内で接着プライマーの層で直接被覆される。接着プライマーの層は、次いで接着剤組成物、この例ではレソルシノール(約2%)、ホルムアルデヒド(約1%)及びゴムラテックス(NR、SBR及びVP−SBRゴム、約16%)に基づくRFL接着剤(水の重量に対して約81%)の層で被覆される。プライマー及び接着剤組成物の層は、次いで、例えば140℃の乾燥オーブン内で30秒間、乾燥される。第1及び第2の被覆された糸様要素64、66、68、70は、次いで第1及び第2の被覆された糸様要素64、66、68、70を240℃の処理オーブンに30秒間通すことによって熱処理され、プライマーの層及び接着剤の層を架橋させる。
【0140】
次いで、集成体24の形成段階において、第1の糸様要素64、66を組み立てて第1の織布26を形成し、第2の糸様要素68、70を組み立てて第2の織布28を形成する。支持要素32も、第1及び第2の織布26、28と共に組み立てる。例として記載する実施形態において、第1及び第2の被覆され熱処理された糸様要素64、66、68、70を単一段階で、したがって同時に支持要素32と共に組み立てて、集成体24を形成する。別の実施形態において、各第1及び第2の織布26、28は、まず別々に形成され、次いで第1及び第2の織布26、28が支持要素32で共に接続される。本発明による集成体24の形成段階は、織布の分野の当業者に公知の方法で実行される。
【0141】
次いで、第1及び第2の織布26、28の含浸段階において、各第1及び第2の織布26、28は、それぞれ第1及び第2のポリマー組成物34、36で含浸され、第1及び第2のバンド33、35を形成するとともに第1及び第2の含浸織り構造体25、27を構築する。
【0142】
図10Aに示す本発明による組立体90がこのとき得られる。糸様支持部分74の、支持要素32の伸びによる表面破断荷重Fsは、Fs=Fr・Dによって定義され、ここでFrは、各糸様支持部分74のNで表した破断荷重であり、Dは、第1の含浸織り構造体25の単位表面積当たりの糸様支持部分74の1/m2で表した平均表面密度である。
【0143】
第1の実施形態において、糸様支持要素32は、個々に同一である。各支持要素32は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製であり、7*10-82に等しい平均断面SP及び470MPaに等しい破断応力Fr/SPを持つ。第1の含浸織り構造体25の単位表面積当たり及び第2の含浸織り構造体27の単位表面積当たりの糸様支持部分74の平均表面密度Dは、85000ヤーン/m2に等しい。破断荷重Frは、33Nに等しい。
【0144】
タイヤ20を装着することを意図した装着手段の直径と等しい直径のコンフェクションシリンダが使用可能である。コンフェクションシリンダは、タイヤ20の回転軸YY’と同軸の回転軸の周りの略回転体である。図10Aの組立体90は、このコンフェクションシリンダに巻き付けられる。本発明による組立体90は、次いでタイヤ20の回転軸YY’の周りに軸方向に連続した円筒形の巻きを形成し、その軸方向幅は、トレッド58の軸方向の50%以上、好ましくは75%以上である。この場合、組立体90は、円筒形に1回巻き付けることによって配置される。円筒形に1回巻き付けることで目標とする組立体90の軸方向幅を得られるので、全幅敷設(full−width laying)という表現が使用される。全幅敷設の利点は、製造生産性である。他方、全幅敷設は、必然的に、組立体20の円周方向端部の間に、円周方向に沿って、特に巻きの端部において、少なくとも1つの重なり領域すなわち溶着領域が存在することを含意する。組立体90は、互いに実質的に垂直な経糸様要素64、68と緯糸様要素66、70とが、タイヤ20の円周方向XX’に対して実質的に45°に等しい角度A1、A2、A3、A4を成すように敷設される。
【0145】
次いで内部環状空間52が形成される。このために、記載の実施形態において、各サイドウォール50が第1の含浸織り構造体25及び第2の含浸織り構造体27の各軸方向端部44、48に接合され、内部環状空間52を形成する。
【0146】
第1及び第2の含浸織り構造体25、27の少なくとも一方、適切な場合には第1の含浸織り構造体25のみが、次いでタイヤ20の回転軸に対して半径方向に分離される。このために、記載の実施形態において、内部環状空間52は、内部環状空間52の膨張ガス、例えば空気による加圧によって拡張される。図10Bに示す本発明による組立体90がこのとき得られる。各糸様支持部分74は、まだ折り畳まれた又は可撓性の状態である。
【0147】
その後、第1及び第2の含浸織り構造体25、27の少なくとも一方、適切な場合には第1の含浸織り構造体25のみをタイヤ20の回転軸YY’に対して半径方向に分離し続けると、内部環状空間52は、膨張ガスによる加圧によって拡張される。図10Cに示す組立体がこのとき得られ、この組立体において、各糸様支持部分74は実質的に張りつめた状態にある。
【0148】
第1及び第2の含浸織り構造体25、27の少なくとも一方をタイヤ20の回転軸YY’に対して半径方向分離することは、一般にコンフォメーションとして知られ、その間に、タイヤ20の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の直径、したがって第1の織布26の直径は増大し、他方、タイヤ20の第2の半径方向内部回転構造体27’を形成する第2の含浸織り構造体27の直径、したがって第2の織布28の直径は、実質的に一定のままである。タイヤ20の回転軸YY’に対する第1の織布26の半径方向距離は、コンフォメーションの間に著しく増大し、その円周方向長さも同様であり、第1の経糸様要素64及び第1の緯糸様要素66がタイヤ20の円周方向XX’に対して成す角度は、初期には45°に等しいが、コンフォメーション後には減少して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しくなり、この例ではB1=B2=38°に等しくなる。タイヤ20の回転軸YY’に対する第2の織布28の半径方向距離は、コンフォメーションの間、実質的に一定のままであり、その円周方向長さは実質的に変わらず、第2の経糸様要素68及び第2の緯糸様要素70がタイヤ20の円周方向XX’に対して成す角度は、初期には45°に等しく、コンフォメーション後も実質的に45°に等しいままであり、この例ではB3=B4=45°である。
【0149】
次いでクラウン回転構造体55が、第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の半径方向外側に巻き付けられる。
【0150】
その後、内部環状空間52は、周囲大気圧まで減圧される。タイヤ20は、このとき未硬化状態で得られる。最後に、硬化状態のタイヤ20を得るために、タイヤ20は、例えば加硫によって架橋される。
【0151】
第2の実施形態によるタイヤ20を図11及び図12に示した。前の図面に示した要素と同様の要素を同一の符号で示す。
【0152】
第1の実施形態によるタイヤとは異なり、第2の実施形態によるタイヤ20において、集成体24は、タイヤ20の2つのサイドウォール50の間で軸方向に不連続様式で延びている。集成体24は、タイヤ20の回転軸YY’の周りを円周方向に数回巻いて延びており、軸方向に不連続な集成体ストリップ92の巻きを形成するようになっている。
【0153】
したがって、図12に示すように、組立体90は、タイヤ20の軸の周りに集成体ストリップ92のらせん状の巻きを形成するように巻き付けられ、ストリップ92の軸方向部分94が軸方向に並置される。ストリップは、トレッド58の軸方向に対して高々30%に等しい限定された軸方向幅を有するとともにトレッド58の円周の2倍に少なくとも等しい長大な長さを有する組立体90を意味するものとして理解されるので、敷設されるストリップは、ロール形態で貯蔵することができる。したがって、かかるストリップは、巻きを解いて、タイヤ20の回転軸を回転軸として有するらせん状にされる。ストリップのらせん巻きの回数は、目標とするらせん巻きの合計の軸方向幅と、支持要素32の密度とによって決定される。ストリップの敷設は、連続的、すなわちストリップ部分がその軸方向端部で対を形成して接触してもよく、又は不連続的、すなわちストリップ部分94の軸方向端部が実質的に非ゼロの間隔を空けて離間されてもよい。ストリップで敷設することの利点は、巻きの端部において、軸方向ストリップ部分の間に、円周方向における重なり領域すなわち溶着領域が存在しないことである。
【0154】
ストリップタイプの設計において、タイヤ20の半径方向外部織布の第1の半径方向外部回転構造体25’を形成する第1の含浸織り構造体25の外面43と、クラウン回転構造体55の半径方向内部面59との結合表面積SEは、並置されたストリップ92の軸方向部分94の結合表面積の合計である。
【0155】
ストリップ92は、タイヤ20の回転軸の周りにらせん状に巻き付けられ、コンフォメーション前には、第1の織布26の第1の経糸様要素64及び第1の緯糸様要素66は、円周方向XX’に対してそれぞれ少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度A1、A2を成す方向に沿って延びるようになっており、第2の半径方向内部の織布28の第2の経糸様要素68及び第2の緯糸様要素70は、第2の半径方向内部の織布28の主略方向に対してそれぞれ少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しい角度A3、A4を成す方向に沿って延びるようになっている。適切な場合には、A1=A2=A3=A4=45°である。
【0156】
第1の実施形態の場合と同様に、コンフォメーション後に第1の経糸様要素64及び第1の緯糸様要素が円周方向XX’に対して成す角度は、初期には45°に等しいが、コンフォメーション後には減少して少なくとも10°に等しくかつ高々45°に等しくなり、この例ではB1=B2=38°である。第2の経糸様要素68及び第2の緯糸様要素70がタイヤ20の円周方向XX’に対して成す角度は、初期には45°に等しく、そして実質的に45°に等しいままである。
【0157】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。
【0158】
実施形態であって、
・各糸様支持要素が第3の接着剤組成物の少なくとも1層で被覆され、
・各被覆された糸様支持要素が次いで熱処理されて、第3の接着剤組成物を架橋させ、
・各被覆され熱処理された糸様支持要素は、次いで第1及び第2の糸様要素と共に組み立てられて集成体を形成する、
実施形態を想定することが可能である。
【0159】
したがって、この実施形態において、各糸様支持要素は、第3の接着剤組成物の少なくとも1層によって被覆されており、第3の接着剤組成物の層による各糸様支持要素の個別の被覆段階と、それに続く各被覆された糸様支持要素の個別の熱処理段階とによって得られる。
【0160】
この実施形態において、集成体の形成段階中に、各被覆され熱処理された糸様支持要素を、第1及び第2の被覆され熱処理された糸様要素と組み合わせて、集成体を形成する。
【符号の説明】
【0161】
20:タイヤ
24:集成体
25:第1の含浸織り又は編み構造体
25’:第1の回転構造体
26:第1の織布又は編布
27:第2の含浸織り又は編み構造体
27’:第2の回転構造体
28:第2の織布又は編布
30:支持構造体
32:支持要素
33:第1のポリマー組成物の第1の層
34:第1のポリマー組成物
35:第2のポリマー組成物の第2の層
36:第2のポリマー組成物
42:第1の含浸織り又は編み構造体25の内面
43:第1の含浸織り又は編み構造体25の外面
44:第1の含浸織り又は編み構造体25の軸方向端部
46:第2の含浸織り又は編み構造体27の内面
48:第2の含浸織り又は編み構造体27の軸方向端部
47:第2の含浸織り又は編み構造体27の外面
50:サイドウォール
52:内部環状空間
55:クラウン回転構造体
58:トレッド
59:クラウン回転構造体55の半径方向内部面
60:クラウン回転構造体55の半径方向外部面
64、66:第1の糸様要素
68、70:第2の糸様要素
74:糸様支持部分
76、78:第1及び第2の糸様部分
90:タイヤ組立体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12