(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836605
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】燃料タンク内で少なくとも1つのセンサを包囲する容器
(51)【国際特許分類】
B64D 37/16 20060101AFI20210222BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
B64D37/16
F02M37/00 301C
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-568353(P2018-568353)
(86)(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公表番号】特表2019-521900(P2019-521900A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】IB2016001080
(87)【国際公開番号】WO2018002682
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514235879
【氏名又は名称】ゾディアック エアロテクニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ラムレット、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】デルリュー、 ジュリアン
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−014741(JP,A)
【文献】
米国特許第03628758(US,A)
【文献】
特開2008−180115(JP,A)
【文献】
米国特許第03693915(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0035406(US,A1)
【文献】
米国特許第04981366(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02330393(EP,A1)
【文献】
特開2005−043126(JP,A)
【文献】
特開2013−228364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 37/00
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(100)内に固定して配置されるように構成され、かつ、少なくとも1つのセンサ(10)を包囲するように構成された容器(1)であって、前記センサは、前記容器内で前記センサの近くにある燃料量の少なくとも1つのパラメータを測定するようにされており、
− 前記容器(1)に内部の容積(1V)を制限するように配置された、上面(2)、底面(3)および側壁(4)と、
− 前記上面(2)および前記底面(3)が重力方向に沿って互いに離れて位置している状態で前記燃料タンク(100)内に前記容器(1)を固定する手段と、
− 前記容器(1)の内部の、前記容器(1)が前記センサ以外に燃料容量を有するように前記センサに加えて自由空間を含むような寸法とされる前記容積(1V)内に、前記センサ(10)を固定する手段と、
− 前記容器(1)の前記上面(2)を通って配置された少なくとも1つの第1貫通孔(20)と、前記容器の前記底面(3)を通って配置された第2貫通孔(30)と、を有する一組の貫通孔であって、各貫通孔は、燃料が、前記貫通孔を通って、前記容器の内部から前記容器の外部へ、または前記容器の外部から前記容器の内部へ流れるように構成された貫通孔と、
− 前記貫通孔と別の少なくとも1つの燃料入口(50)であって、タンクの燃料補給のために前記燃料入口が燃料補給装置に接続されると前記容器(1)内に燃料を受け入れるように構成された燃料入口と、
を有し、
前記貫通孔は、前記容器(1)が、前記タンク(100)の進行中の燃料補給時に、燃料補給が開始される前に前記容器に最初に収容されていた燃料の代わりに、前記燃料入口(50)を介して現在受け入れられた燃料で次第に満たされ、それによって、前記タンクの燃料補給中に前記センサ(10)によって提供された測定結果が、前記燃料入口を介して現在受け入れられた燃料を表すものとなり、かつ、
前記容器(1)の外部であるが前記容器の近くで前記タンク(100)に収容されている燃料および前記容器に収容されている燃料が、前記燃料入口(50)を介しての燃料の受け入れが停止した後、前記第1貫通孔(20)および前記第2貫通孔(30)を通る燃料の流れによって、同一になるかまたは混合され、それによって、前記タンクの燃料補給が停止した後に前記センサ(10)によって提供された測定結果が、前記容器の外部であるが前記容器の近くで前記タンクに収容される燃料を表すものとなる、
ような寸法とされる容器(1)。
【請求項2】
各燃料入口(50)は、前記燃料入口を介して前記容器(1)内に受け入れられた燃料が、前記容器の側壁(4)に関して接線方向でかつ前記上面(2)の近くで前記容器の内部容積(1V)に入るように配置される、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
各燃料入口(50)は、前記容器(1)の内部容積(1V)内で、かつ、タンク(100)の進行中の燃料補給の間、燃料入口(50)を介して現在受け入れられている燃料と燃料補給が開始される前に前記容器に最初に収容されていた燃料との間に水平な分離ゾーン(FS)が存在し、前記分離ゾーンが次第に上方または下方に移動するように配置される、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記上面(2)は、前記上面の上方に位置する第1の円錐頂点を持つ円錐形であり、前記第1貫通孔(20)は、前記第1の頂点で前記容器(1)の内部容積(1V)内に開口する、請求項1から3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記底面(3)は、前記底面の下方に位置する第2の円錐頂点を持つ円錐形であり、前記第2貫通孔(30)は、前記第2の頂点で前記容器(1)の前記内部容積(1V)内に開口する、請求項1から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記底面(3)に近い前記容器(1)の内部容積(1V)を、前記上面(2)近い高さ(レベル)で前記容器の外側に接続する少なくとも1つの追加の燃料経路(40)をさらに有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記側壁(4)は、前記上面(2)に接続された内側面(4a)と、前記底面(3)に接続された外側面(4b)と、を有し、前記外側面は、前記内側面と前記外側面との間に存在するギャップが前記追加の燃料経路(40)を形成するように前記内側面を囲む、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
燃料タンクセットであって、
− 少なくとも1つの燃料タンク(100)であって、外部燃料供給システム(110)から前記燃料タンク内へ燃料を受け入れさせる燃料補給装置が設けられた燃料タンクと、
− 前記燃料タンク(100)内に固定して配置された、請求項1から7のいずれかに記載の容器(1)と、
− 前記容器(1)の内部容積(1V)内に固定され、燃料パラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサ(10)と、
− 導管(103)であって、前記外部燃料供給システム(110)から前記燃料タンク(100)内に受け入れられた燃料の一部が、前記導管を通って前記容器へ行き、前記燃料タンクの燃料補給中に前記容器の内部容積(1V)を満たすように、前記燃料補給装置を前記容器(1)の前記燃料入口(50)に接続する導管と、
を有する燃料タンクセット。
【請求項9】
航空機またはヘリコプターに搭載されるように設計された、請求項8に記載の燃料タンクセット。
【請求項10】
前記センサ(10)は、燃料温度センサ、燃料密度センサおよび燃料誘電率センサの少なくとも1つを有する、請求項8または9に記載の燃料タンクセット。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載の燃料タンクセットの進行中の燃料補給動作を監視する方法であって、
− 燃料補給が開始された後、前記容器(1)に最初に収容されていた燃料の少なくとも一部が、前記燃料タンク(100)に現在積み込まれている燃料に置き換えられるのに対応する期間、待機することと、
− 燃料補給がまだ続いている間に前記センサ(10)によって提供された燃料パラメータの測定結果が安定したら、現在積み込まれている燃料に前記燃料パラメータの測定結果を割り当てることと、
を含む方法。
【請求項12】
− 前記タンクに収容されている燃料の総量を計算するために、前記タンク(100)の燃料補給の間に収集され、前記燃料補給の間に積み込まれた燃料に割り当てられた少なくとも1つの燃料パラメータの測定結果を使用すること、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内で少なくとも1つのセンサを包囲する容器に関する。また、本発明は、燃料タンクセットおよび進行中の燃料補給動作を監視するプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の燃料タンクに実際に収容されている燃料量をできるだけ正確に知る必要がある。しかし、航空機に積み込まれた燃料量の測定は、通常、例えばコンデンサプローブを用いた液面検出に基づいている。その結果、液体レベル測定値から燃料量を評価するためには、燃料密度を知る必要がある。
【0003】
しかし、航空機の推進に使用される燃料は、例えば、燃料温度の変化または燃料タイプまたは組成の変化、あるいは温度および燃料タイプの両方の変化の組み合わせによって、例えば密度が変化し得ることはよく知られている。
【0004】
更に困難なことが、航空機の燃料タンク内に一度に収容される燃料が、タンク内の温度および燃料タイプの分布に依存して密度が均一でない可能性があるという事実から生じる。実際、一例として、少し前に着陸した航空機に残っている燃料はまだ冷たいので、地上レベルで利用可能な外部燃料供給システムから積み込まれる同じタイプで同じ組成の燃料よりも密度が高い。その結果、航空機の燃料タンク内では、最後の飛行から残っている燃料は、新たな燃料がディフューザを介してタンクに導入されても、燃料補給のために新たに積み込まれた燃料の下に層を形成し、残りの燃料量および積み込まれた燃料量の双方は、全体的な熱平衡が生じた後に初めて混合される。したがって、航空機の燃料タンク内の液体レベルセンサに基づいて燃料補給中または燃料補給の直後に行なわれる燃料レベルの測定は、燃料量の正確な評価につながらない。積み込まれる燃料が、最後の飛行から航空機の燃料タンク内に残っている燃料と、タイプまたは組成、したがって密度が異なるものである場合、同様の困難を伴う。
【0005】
航空機に燃料が実際に供給される前、すなわち、燃料供給システムと航空機との間での燃料の移動において航空機の燃料タンク内に移送される燃料量のパラメータを測定することにより、燃料量のより正確な評価を得ることが可能である。この位置では、移送される燃料は、温度、タイプおよび組成が一定であり、したがって密度が一定であるため、移送される燃料量の評価が正確になる。次に、計算によって、新たに移送された燃料量のそのような評価を、既に積み込まれた燃料量について航空機から利用可能なデータと組み合わせることができる。しかし、多くの既存の燃料供給システムは、航空機とは別個の適切な燃料パラメータ測定手段を備えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この状況から、本発明の1つの目的は、新たに積み込まれた燃料の一部が、既に燃料タンクに収容されている燃料と密度が異なっても、燃料タンクに収容された燃料量の正確な評価を可能とすることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、燃料供給システムが燃料パラメータセンサを備える必要なく、燃料タンクに現在積み込まれている燃料量の少なくとも1つのパラメータを測定することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、外部の燃料供給システムから燃料タンクに移送される燃料に使用される燃料パラメータセンサを、燃料タンクに収容されている燃料を測定するために後でも使用することができることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的または他の目的の少なくとも1つを満たすために、本発明の第1の態様は、燃料タンク内に固定して配置されるように構成された容器を提案する。容器は、容器内のセンサの近くに位置する燃料量の少なくとも1つのパラメータを測定するために特化された少なくとも1つのセンサを包囲するように構成されている。この容器は、
− 容器の内部の容積を制限するように配置された上面、底面および側壁と、
− 上面および底面が重力方向に沿って互いに離れて配置された状態で、燃料タンク内に容器を固定する手段と、
− 容器の内部の、容器がセンサ以外に燃料容積を有するようにセンサに加えて自由空間を含むような大きさである容積内に、センサを固定する手段と、
− 容器の上面を通って配置された少なくとも1つの第1の孔と、容器の底面を通って配置された第2の孔と、を有する一組の貫通孔であって、この貫通孔を通って燃料を容器の内部から外部へまたは容器の外部から容器の内部へ流すように構成された貫通孔と、
− 貫通孔とは別の少なくとも1つの燃料入口であって、この燃料入口がタンク燃料補給のための燃料補給装置に接続されたときに燃料を容器内に受け入れさせるよう構成された燃料入口と、を有する。
【0010】
本発明の更なる特徴によれば、貫通孔は、タンクの継続的な燃料補給時に、燃料補給が開始される前に容器に最初に収容されていた燃料の代わりに、燃料入口を介して現在受け入れられている燃料で容器が徐々に充填されるような大きさである。このようにして、タンクの燃料補給中にセンサによって提供される測定結果は、燃料入口を介して現在受け入れられている燃料を表すようになる。
【0011】
加えて、貫通孔は、容器の外側であるがこれに近いタンク内に含まれる燃料と、容器内に含まれる燃料とが、燃料入口を通る燃料の流入が停止した後に、貫通孔を通る燃料の流れによって同一になるかまたは混合されるような大きさでもある。したがって、タンクの燃料補給が停止した後にセンサによって提供される更なる測定結果は、容器の外側ではあるがそれに近いタンクに収容される燃料を表すようになる。
【0012】
燃料入口から現在受け入れられている燃料に関するセンサ測定値と、容器内に最初に収容されていた燃料に関する測定結果との区別を改善するために、現在受け入れられている燃料および最初に収容されていた燃料は、互いに混合されるべきではない。この目的のために、各燃料入口は、好ましくは、この燃料入口を通って容器に受け入れられる燃料が、容器側壁の接線方向に容器の内部容積を通って容器上面に接近するように配置することができる。このようにして、容器に受け入れられた燃料の流れは平行であり、最初に収容されていた燃料の密度値と比較した、現在受け入れられている燃料の密度値に応じて、最初に収容されていた燃料を第1の孔へ上向きに、または第2の孔へ下向きに押し出す。最も好ましくは、各燃料入口は、容器の内部容積内で、かつ、タンクの進行している燃料補給中に、燃料入口を通って現在受け入れられている燃料と、燃料補給が開始される前に容器内に最初に収容されていた燃料との間に、水平分離ゾーンが存在し、この分離ゾーンが次第に上方または下方へ移動するように配置することができる。
【0013】
本発明の更なる改良は、容器に最初に収容されていた燃料を、現在受け入れられている燃料に完全に置き換えることに特化してもよい。この目的のために、容器の上面は、この上面よりも上に位置する第1の円錐頂点を有する円錐形であってもよい。そして、第1の貫通孔は、この第1の頂点で容器の内部容積内に開口する。同様に、容器の底面は、この底面の下に位置する第2の円錐頂点を有する円錐形であってもよい。そして、第2の貫通孔は、この第2の頂点で容器の内部容積内に開口する。
【0014】
本発明の更なる改良によれば、貫通孔は、底面に近い容器の内部の容積を、容器の上面に近いレベルで容器の外側に接続する少なくとも1つの追加の燃料経路を更に有していてもよい。容器の側壁は、上面に接続された内側面と、底面に接続された外側面とを有していてもよい。このような形態では、外側面は、内側面と外側面との間に存在するギャップが追加の燃料経路を形成するように、内側面を囲む。このようにして、容器の内側から外側への燃料の流れ、またはその逆の流れを改良することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、
− 外部燃料供給システムから燃料タンクに燃料を受け入れさせる燃料補給装置を備えた少なくとも1つの燃料タンクと、
− 第1の発明の態様による容器であって、燃料タンク内に固定して配置された容器と、
− 容器の内部の容積内に固定され、燃料パラメータを測定するように構成された少なくとも1つのセンサと、
− 燃料補給装置を容器の燃料入口に接続する導管であって、外部燃料供給システムから燃料タンクに受け入れられた燃料の一部が導管を通って容器へ流れ、燃料タンクの燃料補給中に容器の内部の容積を満たすようにされた導管と、
を有する燃料タンクセットを提案する。
【0016】
このような燃料タンクセットは、航空機またはヘリコプターに搭載されるように設計されてもよい。
【0017】
センサは、燃料温度センサ、燃料密度センサ、燃料誘電体誘電率センサ、および他の適切なセンサのうち少なくとも1つを有していてもよい。
【0018】
最後に、本発明の第3の態様は、第2の発明の態様による燃料タンクセットの進行中の燃料補給動作を監視するプロセスを提案する。そのようなプロセスは、
− 燃料補給が開始された後、最初に容器に収容されている燃料の少なくとも一部が燃料タンクに現在積み込まれている燃料と置き換えられるのに対応する期間の間、待機することと、
− 燃料がまだ供給されている間に、センサによって提供される燃料パラメータ測定結果が安定したら、これらの測定結果を現在積み込まれている燃料に割り当てることと、
− 任意に、タンクの燃料補給中に収集され、燃料補給中に積み込まれた燃料に割り当てられた少なくとも1つの燃料パラメータ測定結果を使用して、タンクに収容された燃料の総量を計算することと、を含む。
【0019】
この方法はまた、以下の更なる任意のステップ、すなわち、
− 燃料補給を停止した後、タンク内に収容された燃料の少なくとも一部がタンク内の容器を現在囲んでいる燃料と置き換えられるのに対応する期間の間、待機すること、および
− センサによって提供される燃料パラメータ測定結果が安定したら、タンク内の容器を囲む燃料に測定結果を割り当てること、
を含んでもよい。
【0020】
本発明のこれらおよび他の特徴は、本発明の好ましいが限定されない実施形態に関連する添付の図面を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による燃料タンクセットの断面図である。
【
図2】現在積み込まれている燃料が、最初にタンク内に収容されていた燃料より低密度である場合の燃料補給動作中の燃料の流れを示す図である。
【
図3】現在積み込まれている燃料が、最初にタンク内に収容されていた燃料より低密度である場合の燃料補給動作後の燃料の流れを示す図である。
【
図4】現在積み込まれている燃料が、最初にタンク内に収容されていた燃料より高密度である場合の燃料補給動作中の燃料の流れを示す図である。
【
図5】現在積み込まれている燃料が、最初にタンク内に収容されていた燃料より高密度である場合の燃料補給動作後の燃料の流れを示す図である。
【
図6】本発明による燃料タンクセットの測定された燃料パラメータの時系列図である。
【0022】
明確にするために、これらの図に表される要素のサイズは実際の寸法または寸法比に対応していない。また、これらの図の異なるものに示される同じ参照符号は、同一の機能を有する要素の同一の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1によれば、本発明による燃料タンクセットは、燃料タンク100と、燃料補給装置と、導管103と、容器1と、少なくとも1つの燃料パラメータセンサ10とを有する。燃料補給装置は、外部燃料供給システム110に接続され、一時的に燃料補給動作のために使用される。外部燃料供給システム110は、例えば、燃料タンクトラックまたは空港燃料供給ネットワークであってもよい。燃料補給装置は、通常はタンク100の底部100bの近くに配置される拡散器102に通じる補給ライン101を有する。導管103は、拡散器102の上流で補給ライン101と接続し、容器1の内側に位置する燃料入口へ通じる。このようにして、燃料は、拡散器102および容器1の両方を通ってタンク100に受け入れられる。センサ10は、各測定時に容器1内に収容される燃料のパラメータを測定するように、容器1内に固定される。
【0024】
図1の燃料タンクセットは航空機に搭載されていてもよい。燃料は、航空機の推進のために利用可能な任意のタイプのものであってもよい。そして、燃料密度は燃料のタイプによって異なる。例えば、燃料密度は、ともに15℃において、燃料JET−A1では0.775から0.840であり、燃料JP−4では0.751から0.802である。本発明の容器1の実施形態は、そのような燃料密度の変化、すなわち、進行中のタンク100の補給動作中に現在積み込まれている燃料量と、補給動作の開始前に既にタンク100に収容されている燃料量との間に存在する密度差に基づいている。密度差はまた、現在積み込まれている燃料量と既に収容されている燃料との間に存在する温度差、例えば航空機の最後の飛行から残っている冷たい燃料量によるものであってもよい。
【0025】
容器1はまた、好ましくは、タンク100内のタンク底部100bの近くに配置される。参照符号100Vはタンク100の内部容積であるが容器1の外側を示している。
【0026】
センサ10は、少なくとも1つの燃料パラメータ、例えばその温度、密度、誘電率値とも呼ばれる誘電率などを測定するのに特化されている。
【0027】
図2から5を参照すると、容器1は、容器1の内部の容積1Vを囲む、上面2、底面3および側壁4を有する。内部容積1Vは、センサ10に加えて燃料容量を収容するような大きさである。その燃料容量は、例えば、約1リットルから2リットルであってもよい。
【0028】
上面2は、好ましくは上向きに円錐頂点を有する円錐形である。容器1の大まかな方向は、図に示され、gで示されるように、重力方向を向いた垂直方向に関して決定される。上面2には、第1の孔と呼ばれる貫通孔20が設けられている。貫通孔20を有する上面2の円錐形は、燃料補給中に容器1内に軽い燃料が閉じ込められないようにする。
【0029】
底面3もまた好ましくは円錐形であるが、円錐頂点が下向きである。底面3には、符号30で示され第2の孔と呼ばれる別の貫通孔が設けられている。貫通孔30を有する底面3の円錐形は、燃料補給中に容器1内に重い燃料が閉じ込められないようにする。
【0030】
本発明の好ましい形態によれば、容器1の側壁4は、実質的に垂直で互いに平行な2つの側面4aおよび4bを有することができる。内側面とも呼ばれる側面4aは、その上縁が上面2の周縁に接続され、外側面とも呼ばれる側面4bは、その下縁が底面3の周縁に接続されている。両方の側面4aおよび4bは、側面4aおよび4b間に追加の燃料経路を形成するように、側面4bが側面4aを取り囲んで互いに離間している。この追加の燃料経路40は、底面3に近い内部容積1Vを、容器1の外側であるが上面2に近いタンク100の容積100Vに接続する。このために、側面4bは、側面4aの外部に配置される。貫通孔20、30および追加の燃料経路40のそれぞれは、それを通る燃料の自由な流れを可能にする。
【0031】
燃料入口50は、導管103に接続され、タンク100の燃料補給時に積み込まれた燃料の一部が容器1内の容積1Vに導入され、その後、貫通孔20、30および追加の燃料経路40の少なくとも1つを通って流れることによって、容器1の外部のタンク100の容積100Vに流入するように構成されている。好ましくは、燃料入口50は、受け入れられた燃料の流れを好ましくは水平な流れ方向で側壁4近づけて平行に導くように向けられている。また、燃料入口50は、上面2の近くに配置されることが好ましく、それは、軽い燃料はより重い燃料より密度が低いため、燃料入口50を通って現在受け入れられている軽い燃料が、容器1に既に収容されているより重い燃料と混合することを回避できるからである。
【0032】
図2〜5では、FSは、燃料補給動作中に燃料入口50を介して容器1に現在受け入れられている燃料と、燃料補給動作が開始される前に容器1に既に収容されていた燃料との間の分離ゾーンを示している。燃料分離ゾーンFSは、薄い水平な中間層として表されているが、両方の燃料が不均一な割合で混合されている体積の部分に対応して、実際にはより厚くてもよい。しかし、そのような中間層は、容器1の内部高さに関して十分に薄いと考えられる。いずれの状況でも、現在受け入れられている燃料と容器1に既に収容されている燃料との間のより高い密度値を持つ燃料の部分は、燃料分離ゾーンFSの下方に溜まり、すなわち位置し、より低い密度値を持つ燃料の他の部分は、燃料分離ゾーンFSの上方に溜まる、すなわち位置する。
【0033】
図2は、燃料入口50を介して容器1に現在受け入れられている燃料が、燃料補給が開始される前に容器1に既に収容されている燃料よりも密度が低いときの、燃料補給時の燃料分離ゾーンFSの移動を示す。したがって、容器1は最初はより重い燃料で一杯であることがある。燃料補給中、軽い燃料の一部が貫通孔20を通って漏れるが(この位置での矢印を参照)、容器1に収容されている軽い燃料の量は増加する。従って、
図2に示すように、燃料分離ゾーンFSは下方に移動し、同時に、燃料補給が開始される前に容器1に最初に収容されていたより重い燃料は、貫通孔30を通って流出し、場合によっては追加の燃料経路40を通ることもある(この位置での矢印を参照)。燃料入口50を通って受け入れられた軽い燃料は、内側面4aに沿って回転し始め、燃料分離ゾーンFSの上方に溜まり、これを下方に押す。これは、燃料分離ゾーンFSが貫通孔30に到達し、容器1の内容積1Vが軽い燃料で完全に満たされるまで続く。
【0034】
この状況から、
図3は、緩和フローに対応する、燃料補給が停止された後の変遷(
図3の矢印参照)を示す。容器1は、タンク100内で、容器1内に収容されている燃料よりも重い燃料で取り囲まれる。よって、この重い燃料は、貫通孔30を通って容器1内に入り、場合によっては、容器1の外から中へ追加の燃料経路40を通ることもあり、同時に、軽い燃料は20を通って流出する。そして、燃料分離ゾーンFSは上方に戻る。
【0035】
図6の時系列図における実線は、
図2および3を参照して説明したシーケンスの、センサ10によって出力される燃料パラメータの結果の変化を示す。X軸は時間を示し、Y軸は各測定結果が関係する燃料部分を示す。結果遷移は、燃料分離ゾーンFSがセンサ10の測定窓の前を移動する期間に対応する。容器1内の最終の燃料組成は、容器1の外部に最初に存在するものと同一であり、この場合は最初に収容されていた重い燃料に対応する。
【0036】
図4は
図2に対応するが、燃料入口50を通って容器1内に現在受け入れられている燃料は、燃料補給が開始される前に容器1内に既に収容されている燃料より重い状態である。したがって、容器1は最初は軽い燃料で満たされている。燃料補給中、重い燃料の一部は貫通孔30を通って漏れるが(この位置の矢印を参照)、容器1内に収容されている重い燃料の量は時間とともに増加する。したがって、燃料分離ゾーンFSは
図4に示すように上方に移動し、同時に、燃料補給前に容器1内に最初に収容されていた軽い燃料は貫通孔20を通って流出する(この位置の矢印を参照)。燃料入口50を通って受け入れられた重い燃料は、側面4aに沿って回転し始め、次いで、燃料分離ゾーンFSへ下向きに流れ、その下方に溜まり、その結果、燃料分離ゾーンFSは上昇する。これは、燃料分離ゾーンFSが貫通孔20に達し、容器1の内容積1Vが重い燃料で完全に満たされるまで続く。
【0037】
この最後の状況から、
図5は、燃料補給が停止された後の緩和の変遷を示す(
図5の矢印参照)。次に、容器1がタンク100内で、容器1内に収容されている燃料よりも軽い燃料で囲まれている場合、燃料補給は容器1内を重い燃料中に浸漬するのに十分ではなかったので、容器1に収容されている重い燃料は、貫通孔30を通って流出し、同時に、軽い燃料が貫通孔20を通って容器1に入る。したがって、燃料分離ゾーンFSは下方に戻る。
【0038】
図6の時系列図における破線は、
図4および5を参照して説明したシーケンスに関する燃料パラメータの、センサ10によって出力される結果の変化を再び示している。理論は、軽い燃料が新たに追加された場合について既に説明したのと同様である。
【0039】
したがって、密度比較の両方の場合において、燃料入口50を介しての燃料投入は、燃料分離ゾーンFSの一時的な推移を引き起こす。センサ10の前を移動するこの一時的な推移は、燃料補給動作中に新たに積み込まれた燃料に関するパラメータの測定結果を得ることを可能にする。
【0040】
上記の操作が説明されると、液体移送の当業者は、所定の流入量に基づいて、燃料入口50、貫通孔20および30の直径ならびに追加の燃料経路40の総断面積について容易に適切な値を選択することができるであろう。例えば、以下の値が発明者らによって実施された。
燃料注入口50の直径:3L/min(1分あたりのリットル)の流入量で8mm(ミリメートル)
貫通孔20の直径:3L/minの流入量で4.5mm
貫通孔30の直径:3L/minの流入量で4.5mm
追加の燃料経路40の断面積:最大化されて、例えばそれぞれ直径4.5mmの12個の孔を有する
側面4aおよび4bの高さ:例えば100mmであるが、容器1が所望のセンサを囲むのに十分な高さ
センサ10以外の容器1の燃料容量:外側面4bを基準にして1.5L(リットル)。
【0041】
センサ10によって出力された、新たに追加された燃料量に関する燃料パラメータ値がオペレータに提供されると、オペレータは、この追加された燃料量の密度値を得ることができる。そして、この密度値は、タンク内の実際の燃料量の計算のために、燃料補給が開始される前にタンク100内に最初に収容されていた燃料に関するデータ、および更に燃料補給動作の終了後に得られる更なるデータと組み合わせられることができる。これは、特にタンク100内の液体の高さが測定されるときに当てはまる。例えば燃料質量として表される総燃料量は、液体の高さデータ、タンク形状データ、およびタンク内に重ね合わされる燃料層の密度値から、タンク内を上方へ移動するときに高い密度値から低い密度値まで計算できる。そのような計算は航空機運航の当業者にはよく知られているので、それらを再度説明する必要はない。
【0042】
本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明の第2の態様は、述べた利点を維持しつつ修正することができる。特に、上述した値は、説明目的のためだけのものであり、大幅に変更することができる。