特許第6836626号(P6836626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836626第四級アンモニウム塩型界面活性剤の除菌性を向上させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836626
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】第四級アンモニウム塩型界面活性剤の除菌性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 7/00 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   A47K7/00 G
   A47K7/00 E
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-108199(P2019-108199)
(22)【出願日】2019年6月10日
(65)【公開番号】特開2020-199090(P2020-199090A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2020年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三橋 幸子
【審査官】 舟木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−151447(JP,A)
【文献】 特開2018−027916(JP,A)
【文献】 特開2017−101341(JP,A)
【文献】 特開平02−061000(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/179091(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/204019(WO,A2)
【文献】 特開2004−016730(JP,A)
【文献】 特開2005−296240(JP,A)
【文献】 特開2011−030793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00
A47L 13/17
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第四級アンモニウム塩型界面活性剤〔成分(B)〕及び水を含有するとともにエタノールを非含有である液剤(ただし第四級アンモニウム塩及びポリアミノプロピルビグアナイドを含む液剤を除く。)に対して、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸若しくはこれらの酸の塩、又はこれらの酸及び塩から選択される2種以上の組み合わせ〔成分(A)〕、前記液剤中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比〔成分(A)/成分(B)〕を10/1〜3/1の割合で添加することにより、25℃におけるpHを3.0以上6.0未満とするとともに、前記第四級アンモニウム塩型界面活性剤の除菌性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シートに液剤が含浸されてなるウエットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
除菌剤又はアルコール等を含有するウエットシートが知られている。ウエットシートは、キッチン周り、テーブル、家具、電化製品等の汚れを拭きとる際に使用される。それに加えて、ウエットシートは、手、指、口周り等の身体の汚れを拭き取る際にも使用される。口周りを拭くには肌の刺激性が低いことが重要であり、また、体内に入ることも予測できるため、特に安全性が重要である。特許文献1ないし3には、アルコールを含む液剤が含浸されたウエットシートが記載されている。特許文献4には、除菌剤を含む液剤が含浸されたウエットシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−16730号公報
【特許文献2】特開2005−296240号公報
【特許文献3】特開2011−30793号公報
【特許文献4】特開2018−27916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1ないし3に記載のウエットシートは、アルコールを含有しているため、除菌効果は高いものである。しかし身体の汚れを拭き取る際に使用すると、アルコールに対して肌がアレルギー反応を示す場合があり、肌に対する刺激性が低いものとは言えない。
【0005】
特許文献4に記載のウエットシートは、アルコールを含有せず、除菌剤を含有しているので、除菌効果は高いものである。しかし含浸されている除菌剤がアルカリ性のものであるため、肌に対して刺激性を有することがある。
【0006】
したがって本発明の課題は、除菌抗菌効果が高いにもかかわらず、肌に対する刺激性が低いウエットシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、繊維材料からなる基材シートに液剤が含浸されてなるウエットシートであって、
前記液剤は、
(A)乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸若しくはこれらの酸の塩、又はこれらの酸及び塩から選択される2種以上の組み合わせ、
(B)第四級アンモニウム塩型界面活性剤、及び
(C)水、
を含有するとともにエタノールを非含有であり、且つ25℃におけるpHが3.0以上6.0未満である、ウエットシートを提供することにより前記の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い除菌抗菌効果と、肌に対する刺激性が低いこととを両立したウエットシートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のウエットシートは、繊維材料からなる基材シートに液剤が含浸されてなるものである。
【0010】
抗菌効果を付与する観点から、液剤は成分(A)を含有する。(A)としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸若しくはこれらの酸の塩、又はこれらの酸及び塩から選択される2種以上の組み合わせが挙げられる。これらのうち、安心感・安全性の観点から食品がイメージできる、乳酸又はその塩が好ましい。乳酸の中でも、安心感・安全性の観点から食品がイメージできる、発酵によって得られる発酵乳酸が好ましく用いられる。塩としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0011】
液剤中の成分(A)の含有量は、高い抗菌性を付与する観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、そして1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%%以下がより好ましい。かかる成分(A)の含有量の範囲としては、液剤中に、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下である。酸を塩の状態で用いる場合、成分(A)の含有量は、酸に換算した量(酸換算量)とする。成分(A)として2種以上含有する場合、成分(A)の含有量は合計量とする。
【0012】
除菌効果を付与する観点から、液剤は成分(B)を含有する。(B)としては、下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。
【化1】
【0013】
(式中、Rは、炭素数6以上28以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上28以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基がアミド基、エステル基若しくはエーテル基で分断された基を示す。Rは、炭素数1以上28以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数1以上28以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、炭素数1以上28以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルカノール基、又は該アルキル基、該アルケニル基若しくは該アルカノール基がアミド基、エステル基若しくはエーテル基で分断された基を示す。R及びRは、同一の又は異なる炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。Aは、アンモニウムイオンの対イオンであるアニオンを示す。)
一般式(1)において、Rの好ましい態様は、除菌効果を向上させる観点から、直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。また、Rの炭素数は、上記と同様の観点から、6以上28以下が好ましく、12以上18以下がより好ましい。Rは、上記と同様の観点から、直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。また、Rの炭素数は、上記と同様の観点から、6以上28以下が好ましく、12以上18以下がより好ましい。R及びRは、上記と同様の観点から、直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましい。
はアニオンであれば特に限定されない。無機もしくは有機のカルボン酸イオン、スルホン酸イオン、ハロゲンイオンが挙げられ、ハロゲンイオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオンがより好ましく、塩素化物イオンが一層好ましい。
【0014】
液剤中の成分(B)の含有量は、高い除菌性を付与し且つ汚れ除去性を付与する観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、そして0.4質量%以下が好ましく、0.15質量%%以下がより好ましい。かかる成分(B)の含有量の範囲としては、液剤中に、好ましくは0.05質量%以上0.4質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.15質量%以下である。成分(B)として2種以上含有する場合、成分(B)の含有量は合計量とする。
【0015】
液剤中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比〔(A)成分/(B)成分〕は、10/1〜1/1であることが好ましく、10/1〜3/1であることがより好ましい。なお液剤中の成分(A)の含有量が多すぎると口回りの使用感や清拭面の仕上がり性が悪化する。
【0016】
安全性を確保する観点から、液剤は成分(C)として水を含有する。水としては、蒸留水、精製水等が挙げられる。
【0017】
液剤中の成分(C)の含有量は、高い安全性を付与する観点から、97質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、そして99.7質量%以下が好ましく、99.5質量%%以下がより好ましい。かかる成分(C)の含有量の範囲としては、液剤中に、好ましくは97質量%以上99.7質量%以下であり、より好ましくは98質量%以上99.5質量%以下である。
【0018】
液剤は、エタノールを非含有のものである。その結果、ウエットシートは、肌に対する刺激性が低いものとなり、安心して手、指、口周り等の身体の汚れを拭き取る際に使用できる。「エタノールを非含有」とは、液剤がエタノールを全く含有しないこと、及び液剤が不可逆的にエタノールを微量混入することをいい、具体的には液剤中のエタノールの含有量が0.005質量%未満であることをいう。
【0019】
ウエットシートが乾燥し難く、拭き取り面がさらさらする観点、ウエットシートを収容する封入袋又は容器の取り出し口から取り出すときの取り出し性が良好となる観点から、液剤は、成分(A)、(B)及び(C)に加えて、シリコーンを含有することが好ましい。シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
液剤中のシリコーンの含有量は、前記の効果を付与する観点から、0.003質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、そして0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%%以下がより好ましい。かかるシリコーンの含有量の範囲としては、液剤中に、好ましくは0.003質量%以上0.05質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.03質量%以下である。シリコーンとして2種以上含有する場合、シリコーンの含有量は合計量とする。
【0021】
液剤は、上述の成分に加えて、更に当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えばpH調整剤、多価アルコール、防腐剤、芳香剤、色素等が挙げられる。これらの成分は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。液剤中のこれらの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、そして2.7質量%以下が好ましく、1.2質量%%以下がより好ましい。pH調整剤としては、塩酸や硫酸などの無機酸、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基、トリイソプロパノールアミンなどの有機塩基が挙げられる。pH調整剤としては、酸としては硫酸などの無機酸が好ましく、塩基としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基が好ましい。多価アルコールとしては、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。除菌性を阻害させない観点から、2価以上の金属イオンが非含有であることが好ましい。
【0022】
また、液剤は、成分(B)以外の界面活性剤を含有してもよい。成分(B)以外の界面活性剤として、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を含んでいてもよい。両性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。液剤中のこれら該界面活性剤の含有量は、該活性剤量が多くなると浸透性が高まるため肌への刺激性が高まる観点からは非含有が好ましい。しかし、汚れを拭きに使用される観点、および、芳香剤を可溶する観点からは、液剤中のこれら該界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして1.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。特に口周り肌の乾燥によるつっぱり感、かさつき等の違和感を抑制する観点から、液剤中における成分(B)も含めた界面活性剤全体としての含有量は1.0質量%以下であることが好ましい。
【0023】
液剤は、肌への刺激性が低く安全である観点から、25℃におけるpHが、3.0以上6.0未満である。同観点から、25℃における液剤のpHは、4.0以上が好ましく、4.3以上がより好ましく、そして5.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。pHの測定装置としては、例えば、株式会社堀場製作所製のLAQUA F−72を用いることができる。
【0024】
本発明のウエットシートは、安全性の観点から、液剤に含まれるすべての成分が、医薬部外品原料規格2006に記載の純度試験を満たすものであることが好ましい。
【0025】
汚れを除去する機能を発現する観点から、基材シートに含浸されている液剤の割合は、基材シートの質量に対して、100質量%以上とすることが好ましく、200質量%以上とすることが更に好ましく、1000質量%以下とすることが好ましく、500質量%以下とすることが更に好ましい。含浸されている液剤の割合としては、基材シートの質量に対して、好ましくは100質量%以上1000質量%以下であり、より好ましくは200質量%以上500質量%以下である。
【0026】
基材シートとしては、不織布、織布、編み物地等が挙げられる。基材シートとして不織布を用いる場合、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などを用いることができる。また、これらの不織布の複合体を用いても良い。これらの中でも、肌触りが良好である観点から、スパンレース不織布が好ましく使用される。不織布の坪量は、好ましくは20g/m以上200g/m以下であり、より好ましくは30g/m以上100g/m以下である。
【0027】
基材シートがスパンレース不織布である場合、拭きやすさの観点から該スパンレース不織布には複数の開孔が形成されていることが好ましい。複数の該開孔は、シートの平面方向に均一の間隔で配列した状態で形成されていることが好ましいが、平面方向の間隔が不均一であっても構わない。該開孔とは不織布を貫通している孔のことである。平面視した際の開孔の面積は、好ましくは0.3mm以上6mm以下であり、より好ましくは1.2mm以上1.9mm以下である。該開孔の形状は円系もしくは楕円であることが好ましい。楕円の場合の縦横比はMD方向(machine direction)をXとし、CD方向(cross direction)をYとした場合、Xに対するYの比率は好ましくは0.1以上1.0以下であり、より好ましくは0.5以上0.7以下である。不織布としては、該不織布における立体的な開孔を形成した部分が凹部、それ以外の部分が相対的に凸部となっている立体開孔不織布であることが好ましい。基材シートにおける面積当たりの開孔の数は、100cm当たり、好ましくは100個以上2000個以下であり、より好ましくは600個以上1000個以下である。
【0028】
基材シートを構成する繊維としては、再生繊維、天然繊維、合成繊維等が挙げられる。安全性を確保する観点から、再生繊維が含まれていることが好ましい。再生繊維としては、レーヨン繊維、アセテート繊維等が挙げられ、安全性の観点からレーヨン繊維が好ましく使用される。天然繊維としては、木綿、麻、コラーゲン繊維等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0029】
基材シートがレーヨン繊維を含有していると、基材シートに含浸されている液剤が乾燥し難くなるので好ましい。この観点から、基材シートに占めるレーヨン繊維の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、そして100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0030】
ウエットシートは、複数枚が積層された状態で軟質包装材料からなる封入袋に収容された形態に形成することができる。また長尺なシートをロール状態に巻いた状態で容器に収容された形態に形成することができる。
【0031】
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0032】
<1>
繊維材料からなる基材シートに液剤が含浸されてなるウエットシートであって、
前記液剤は、
(A)乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸若しくはこれらの酸の塩、又はこれらの酸及び塩から選択される2種以上の組み合わせ、
(B)第四級アンモニウム塩型界面活性剤、及び
(C)水、
を含有するとともにエタノールを非含有であり、且つ25℃におけるpHが3.0以上6.0未満である、ウエットシート。
【0033】
<2>
前記液剤が水を97質量%以上99.7質量%以下含有する、前記<1>に記載のウエットシート。
<3>
前記液剤が更にシリコーンを含有する、前記<1>又は<2>に記載のウエットシート。
<4>
前記液剤に含まれるすべての成分が、医薬部外品原料規格2006を満たすものである、前記<1>ないし<3>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<5>
前記基材シートの質量に対して100質量%以上1000質量%以下の割合で前記液剤が含浸されている、前記<1>ないし<4>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<6>
前記基材シートが再生繊維を含む、前記<1>ないし<5>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<7>
前記基材シートは、レーヨン繊維及び合成樹脂繊維が混綿されてなるスパンレース不織布からなる、前記<1>ないし<6>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<8>
前記基材シートは、前記レーヨン繊維の割合が50質量%以上100質量%以下であり、且つ複数の開孔が形成されているものである、<7>に記載のウエットシート。
<9>
成分(A)が発酵乳酸である、前記<1>ないし<8>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<10>
前記液剤中の成分(A)の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、そして1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%%以下がより好ましい、前記<1>ないし<9>のいずれか1つに記載のウエットシート。
【0034】
<11>
成分(B)は、下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム塩型界面活性剤であり、
【化2】
一般式(1)において、Rは、直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましく、Rの炭素数は、6以上28以下が好ましく、12以上18以下がより好ましく、Rは、直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましく、Rの炭素数は、6以上28以下が好ましく、12以上18以下がより好ましく、R及びRは、直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基が好ましく、直鎖のアルキル基がより好ましく、Aは、ハロゲンイオンが好ましく、塩化物イオン、臭化物イオンがより好ましく、塩素化物イオンが一層好ましい、前記<1>ないし<10>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<12>
前記液剤中の成分(B)の含有量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、そして0.4質量%以下が好ましく、0.15質量%%以下がより好ましい、前記<1>ないし<11>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<13>
前記液剤中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比〔(A)成分/(B)成分〕は、10/1〜1/1であることが好ましく、10/1〜3/1であることがより好ましい、前記<1>ないし<12>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<14>
前記液剤中の成分(C)の含有量は、97質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、そして99.7質量%以下が好ましく、99.5質量%%以下がより好ましい、前記<1>ないし<13>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<15>
前記液剤が更にシリコーンを含有し、該液剤中の該シリコーンの含有量は、0.003質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、そして0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%%以下がより好ましい、前記<1>ないし<14>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<16>
前記シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサンが挙げられ、これらを、単独又は2種以上を組み合わせて用いる、前記<15>に記載のウエットシート。
<17>
前記液剤は、更にpH調整剤、多価アルコール、防腐剤、芳香剤、色素を含有し、該液剤中のこれらの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、そして2.7質量%以下が好ましく、1.2質量%%以下がより好ましい、前記<1>ないし<16>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<18>
前記液剤は、成分(B)以外の界面活性剤を含有し、該液剤中の該界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして1.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、液剤中における成分(B)も含めた界面活性剤全体としての含有量は1.0質量%以下であることが好ましい、前記<1>ないし<17>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<19>
前記液剤は、25℃におけるpHが、3.0以上6.0未満であり、4.0以上が好ましく、4.3以上がより好ましく、そして5.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましい、前記<1>ないし<18>のいずれか1つに記載のウエットシート。
【0035】
<20>
前記基材シートに含浸されている前記液剤の割合は、該基材シートの質量に対して、100質量%以上とすることが好ましく、200質量%以上とすることが更に好ましく、1000質量%以下とすることが好ましく、500質量%以下とすることが更に好ましい、前記<1>ないし<19>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<21>
前記基材シートは不織布であり、該不織布の坪量は、好ましくは20g/m以上200g/m以下であり、より好ましくは30g/m以上100g/m以下である、前記<1>ないし<20>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<22>
前記基材シートがスパンレース不織布であり、該スパンレース不織布には複数の開孔が形成されている、前記<1>ないし<21>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<23>
平面視した際の前記開孔の面積は、好ましくは0.3mm以上6mm以下であり、より好ましくは1.2mm以上1.9mm以下である、前記<22>に記載のウエットシート。
<24>
前記開孔の形状は円系もしくは楕円であり、楕円の場合の縦横比はMD方向(machine direction)をXとし、CD方向(cross direction)をYとした場合、Xに対するYの比率は好ましくは0.1以上1.0以下であり、より好ましくは0.5以上0.7以下である、前記<22>又は<23>に記載のウエットシート。
<25>
前記基材シートにおける面積当たりの前記開孔の数は、100cm当たり、好ましくは100個以上2000個以下であり、より好ましくは600個以上1000個以下である、前記<22>ないし<24>のいずれか1つに記載のウエットシート。
<26>
前記基材シートがレーヨン繊維を含有しており、該基材シートに占める該レーヨン繊維の割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、そして100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい、前記<1>ないし<25>のいずれか1つに記載のウエットシート。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0037】
〔実施例1ないし10及び比較例1ないし5〕
以下の表1に示す成分を含有する液剤を用いた。基材シートとしてはスパンレース不織布を用いた。スパンレース不織布の質量に対して液剤を250質量%の割合で含浸させて実施例及び比較例のウエットシートを製造した。スパンレース不織布としては、ダイワボウポリテック株式会社製の品番NW−RH3−40Bを用いた。該不織布は、サイズが160mm×140mmであり、坪量が40g/mであり、レーヨン繊維の配合割合が80質量%であった。芯:ポリプロピレン/鞘:ポリエチレンの合成繊維の配合割合が20質量%であった。
【0038】
表1に示す液剤の成分の詳細を以下に示す。何れの成分も医薬部外品原料規格2006に記載の純度試験を満たすものであった。
・乳酸:発酵乳酸、品番PURAC ULTRAPURE90、ピューラック・タイランド社製
・クエン酸:扶桑化学工業株式会社製
・リンゴ酸:扶桑化学工業株式会社製
・酢酸:和光純薬工業株式会社製
・コハク酸:純正化学株式会社製
・第四級アンモニウム塩型界面活性剤:サニゾールC、花王株式会社製
・界面活性剤:エマルゲン109P、花王株式会社製
・多価アルコール:プロピレングリコール、株式会社ADEKA製
・多価アルコール:ジプロピレングリコール、株式会社ADEKA製
・シリコーン:シリコーンKM−72、信越化学工業株式会社製
・pH調整剤:水酸化ナトリウム、南海化学株式会社製
・pH調整剤:硫酸、和光純薬工業株式会社製
・エタノール:和光純薬工業株式会社製
【0039】
実施例及び比較例のウエットシートについて、25℃におけるpHを上述した測定装置を用いて測定した。ウエットシートについて下記に示す除菌試験及び抗菌試験を行い評価した。またウエットシートの肌への刺激性の低さ及び口周りの使用感について下記に示す方法によって評価した。これらの結果を表1に示す。
【0040】
<除菌試験>
日本清浄紙綿類工業会が定める「ウエットワイパー類の除菌性能試験」に準じて実施例及び比較例のウエットシートを評価した。
菌種としては大腸菌及び黄色ブドウ球菌を選定した。各菌の生菌数をそれぞれ1.0〜5.0×10個/mLに調製した。ステンレスプレート上に各菌の調製液をそれぞれ0.01mL滴下した。このプレートを実施例及び比較例のウエットシートを用いて拭き取った。拭き取り操作は、ウエットシートに150gの荷重をかけた状態で、プレート上を約1秒間隔で5往復させて行った。拭取り操作終了後、ウエットシートを5分間放置した後、ストマッカー袋に移し、所定の条件にて菌を洗い出した。さらに所定の条件にて希釈し、一般細菌用のSCDLP寒天培地に接種して、35℃で1日間培養した。培養後、生菌数の測定を行い、菌体数の常用対数値を〔B〕とした。また、対照シートを用いて同様に操作を行い、測定した菌体数の常用対数値を〔A〕とした。尚、対照シートとして、ウエットシートの原料の基材シートを用い、液剤は精製水を使用した。
下記の計算式によって除菌活性値を数値化した。
除菌活性値=A−B
A:対照シートで3回試行した結果における生菌数の常用対数値の平均値
B:実施例及び比較例のウエットシートで3回試行した結果における生菌数の常用対数値の平均値

評価基準:
a:除菌活性値が3.0以上
b:除菌活性値が2.0以上3.0未満
d:除菌活性値が2.0未満
除菌活性値が2.0以上であると、除菌能力が高いことを意味する。
【0041】
<抗菌試験>
JIS Z2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠して、実施例及び比較例のウエットシートを評価した。
菌種としては大腸菌及び黄色ブドウ球菌を選定した。ポリエチレン樹脂からなる5cm×5cmサイズの試料板を、実施例及び比較例のウエットシートで2往復拭き、その後乾燥させた。各菌液を乾燥させたそれぞれの試料板の表面に滴下して植菌した。植菌数は、試料板一枚当たり1.0〜4.0×10個に調製した。試料板上の菌液に密着するようにポリエチレン製のフィルムを配置した。フィルムのサイズは4cm×4cmであった。その後、温度35℃、相対湿度90%以上の環境下で24時間培養した。それをストマッカー袋に移し、所定の条件にて菌を洗い出した。さらに、所定の条件にて希釈し一般細菌用のSCDLP寒天培地に接種して、35℃で1日間培養した。培養後、生菌数の測定を行い、菌体数の常用対数値を〔D〕とした。また、対照シートを用いて同様に操作を行い、測定した菌体数の常用対数値を〔C〕とした。尚、対照シートとして、ウエットシートの原料の基材シートを用い、液剤は精製水を使用した。
下記の計算式によって抗菌活性値を数値化した。
抗菌活性値=C−D
C:対照シートで3回試行した結果における生菌数の常用対数値の平均値
D:実施例及び比較例のウエットシートで3回試行した結果における生菌数の常用対数値の平均値

評価基準:
a:抗菌活性値が3.0以上
b:抗菌活性値が2.0以上3.0未満
d:抗菌活性値が2.0未満
抗菌活性値が2.0以上であると、抗菌能力が高いことを意味する。
【0042】
<抗菌試験:汚濁条件試験>
JIS Z2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」を参考に、汚れの付着時の抗菌試験法を作成し評価した。通常法のJIS Z2801法との相違点は菌液の調整時に0.3%濃度の牛血清アルブミンを添加する。アルブミンを添加することでJIS Z2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」では評価できなかった汚れ付着時の抗菌性が評価できる事から、実施例及び比較例のウエットシートを評価した。尚、対照シートとして、ウエットシートの原料の基材シートを用い、液剤は精製水を使用した。

抗菌活性値=E−F
E:対照シートで3回試行した結果における生菌数の常用対数値の平均値
F:実施例及び比較例のウエットシートで3回試行した結果における生菌数の常用対数値の平均値

評価基準:
a:抗菌活性が3.0以上
b:抗菌活性値が2.0以上
d:抗菌活性値が2.0未満

抗菌試験:汚濁条件試験において 抗菌活性値が2.0以上であると、汚れ存在下においても抗菌効果を発現し抗菌能力が通常の抗菌試験 JIS Z2801「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」で得た結果より抗菌性がより高く、抗菌活性値が3.0以上であると、さらに高い抗菌性であると位置づけを行った。
【0043】
<肌への刺激性の低さ>
実施例及び比較例のウエットシートで手の甲を1秒間に1往復、合計3往復拭き、肌への刺激性の低さを専門パネラー3名で評価した。これらのパネラーの協議により以下の評価基準に従って評価した。

評価基準:
b:シートで拭き上げた後の肌に、つっぱり感やかさつく等の違和感がない
d:シートで拭き上げた後の肌につっぱり感やかさつく等の違和感がある
【0044】
<口周りの使用感>
実施例及び比較例のウエットシートを用い、口周りを1秒間に1回転口周り全体に円を描くように5回転拭き、乾燥後の口周りの、つっぱり感、かさつき感を、専門パネラー3名で評価した。これらのパネラーの協議により以下の評価基準に従って評価した。

評価基準:
b:シートで拭き上げた後のつっぱり感、かさつき感等の違和感がない
d:シートで拭き上げた後のつっぱり感、かさつき感等の違和感がある
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す結果から明らかなとおり、実施例のウエットシートは、何れも、大腸菌及び黄色ブドウ球菌それぞれに対し、除菌能力が高く且つ抗菌能力が高いことが分かった。それに加え、実施例のウエットシートは、何れも、肌への刺激性が低いことが分かった。以上のことから、各実施例のウエットシートは、高い除菌抗菌効果と、肌に対する刺激性が低いこととを両立していることが分かる。これに対し、比較例のウエットシートは、除菌効果が弱いものであったり、或いは肌に対する刺激性が高いものであった。
【0047】
実施例のウエットシートについて、容器からの取り出し性及び清拭面の仕上がり性について下記に示す方法によって評価した。これらの結果を表2に示す。
【0048】
<容器からの取り出し性>
実施例の長尺なウエットシートをロール状態に巻いた状態で容器に収容し、収容された形態のウエットシートの取り出し性を、専門パネラー3名で評価した。これらのパネラーの協議により以下の評価基準に従って評価した。長尺なウエットシートのサイズは160mm×140mmであり、長手方向の一端部側から巻き回してロール状態とした。なお容器としては、蓋は凸版印刷株式会社製、ヒンジ付き射出成型キャップ、ボトルは株式会社本田洋行社製、ブロー成型容器を用いた。

評価基準:
b:異音や引っかかりがなく、スムーズに取り出しやすい
d:異音や、引っかかりがあり、引き出しにくい
【0049】
<清拭面の仕上がり性>
実施例のウエットシートで、30cm×30cmの黒色のプラスチック面を1秒間に1往復、合計3往復で全面を清拭し、乾燥後の黒色のプラスチック面における仕上がり性を、専門パネラー3名で評価した。これらのパネラーの協議により以下の評価基準に従って評価した。

評価基準:
a:肉眼で見える変化がない
b:一方の観察方向から僅かな拭き筋(白色の筋状)認められる
c:数通りの観察方向から拭き筋(白色の筋状)認められる
d:明らかに白化が認められる
【0050】
【表2】
【0051】
表2に示す結果から明らかなとおり、実施例のウエットシートのうち、シリコーンが含有されている実施例1〜14のウエットシートの方が、シリコーンが含有されていない実施例15のウエットシートに比べて、容器からの取り出し性が良好であり、更に清拭面の仕上がり性も良好であることが分かった。