【実施例】
【0048】
以下の各実施例と各比較例のポリエステル光学フィルム(単に光学膜と称される)は、以下の評価方法により評価される。
【0049】
(1)
光透過率及びヘイズ測定
Tokyo Denshoku Co., Ltd. Haze Meter(型式TC−HIII)を採用して、光学膜サンプルの光透過率及びヘイズ値を測定し、その方法はJIS K7705規格に準ずる。光透過率が高くてヘイズ値が低いほど、光学膜の光学性質が良くなると表す。
【0050】
(2)
光学ゴムに対する密着性測定
LiangHong社製露光機(型式Model F300S+AJ−6−UVL)を採用し、光学膜サンプルの塗布面の、拡散膜又は輝度上昇フィルム用のアクリレートUVゴムに対する接着性を測定し、その方法はASTM D3359規格に準ずる。12号のコートバーによって、国内で生産された拡散膜又は輝度上昇フィルム用の光学ゴムを光学膜サンプルの塗布面に塗布した後、UV露光機で露光して乾燥し、クロスカッターで100の碁盤目を作製した後、更に3Mの600型テープで100の碁盤目の試料に貼り付け、密着させた後、テープを引き離して接着性評価を行った。
【0051】
(3)
UV光で照射された後の光学ゴムに対する密着性測定
光学膜サンプルの塗布面については、まずUV光によって500mJ/cm2の露光エネルギーで露光し、その後、上記した測定方法(2)で光学ゴム密着性を測定し、光学ゴム密着性を評価した。
【0052】
(4)
コート層の充填粒子分散性測定
光学膜サンプルの塗布面については、Hitachi S5000型走査型電子顕微鏡を利用してその充填粒子の分散性を測定し、まずサンプルをカーボンゴムに固定し、更に金属メッキ機で金又は白金の薄膜をメッキし、10000倍の測定倍率で観察した。
【0053】
(5)
コート層のスティッキング防止性の温度
WIYI社のヒートシール測定機(型式HST−H3)によって、光学膜サンプルのコート層のスティッキング防止性の温度を測定した。測定条件:光学膜サンプルを2枚採取し、サンプルのコート膜の面を対向させ、ヒートシール圧力2MPa、ヒートシール時間2分間で、異なる温度でのスティッキング防止性測定を行った。ヒートシールした後、2枚のサンプルを容易に分離できて表面に跡もない場合の温度を、光学膜サンプルのコート層のスティッキング防止性の限界温度として記録した。
【0054】
アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂の予製
【0055】
(1)プレポリマーの調製
PTMG2000(ポリエーテルジオール、分子量2000)100g、1,4−BG(1,4−ブタンジオール、分子量90)6.5gを順に反応器に加え、均一速度の攪拌で80℃に昇温した後、イソホロンジイソシアネート43gを加え、85〜90℃に昇温して同温度で2〜3時間反応した。
【0056】
(2)プレポリマーの希釈と鎖延長
そして、粘度を低減させるように、メチルメタクリレート(MMA)140g、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)8g、のエチルアクリレート(EA)4.8gをバッチで加えて希釈して、プレポリマーに更にエチルジアミノエタンスルホン酸ナトリウム(AAS)10gを加え、そして25〜40分間反応した。
【0057】
(3)水分散
反応が完了した後、ステップ(2)で得られたプレポリマーを室温まで降温し、500rpmの回転数で回転しながら、脱イオン水300gを加え、更にエチレンジアミン1gを加えて約30分間鎖延長反応し、スルホネート型水溶性ポリウレタンのエマルジョンを調製した。
【0058】
(4)アクリレート合成
高速攪拌で、乳化剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SLS)4.8gをステップ(3)スルホネート型水溶性ポリウレタンのエマルジョンに加え、50〜70℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム水溶液(APS)0.40gを滴下し、そして75〜85℃に昇温し、同温度で1〜3時間維持し、50〜70℃に降温した後、t−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液(TBHP)0.12g、及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(SFS)0.12gを加え、30分間を反応してアクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂を得た。
【0059】
実施例1
PETパレットを十分に乾燥した後、押し出し機にフィードして溶融して押し出し、表面温度が25℃であるチルロールを経由して冷却及び硬化させ、未延伸のPETシート(Sheet)を得、加熱後、4倍の延伸倍率で縦方向一軸延伸し、一軸延伸PET膜を製造した。
【0060】
以下の成分を均一に攪拌して調製された水溶性塗布液を採取した。
【0061】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.5g
(2)メラミン系架橋剤 1.0g
(3)アニオン界面活性剤A0.05g、ノニオン界面活性剤B0.45g、ケイ素含有化合物0.05g、及び高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.05gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.10gと30nmシリカ粒子B0.40gを変性した充填粒子混合液 2.1g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 81.89g
【0062】
予め製造された一軸延伸PET膜の片面に塗布処理を行い、予製された水溶性塗布液を一軸延伸PET膜に均一に塗布した後、塗布が完了した一軸延伸PET膜を固定治具で105℃の加熱ゾーンにガイドし、乾燥してコート層の水分を除去した後、更に125℃の加熱ゾーンに送り、3.5倍で横方向延伸された後、片面にコート層を有する二軸延伸PET膜を製造し、更に235℃で8秒間処理し、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。
【0063】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0064】
実施例2
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更された。
【0065】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.75g
(2)メラミン系架橋剤0.8g、及びオキサゾリン系架橋剤0.5g
(3)アニオン界面活性剤A0.25g、ノニオン界面活性剤B0.25g、ケイ素含有化合物0.05g、及び高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.05gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.10gと30nmシリカ粒子B0.25gを変性してなった充填粒子混合液 1.95g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 81.49g
【0066】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0067】
実施例3
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更された。
【0068】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂8.0g
(2)メラミン系架橋剤1.0g、及びオキサゾリン系架橋剤0.5g
(3)アニオン界面活性剤A0.45g、ノニオン界面活性剤B0.05g、ケイ素含有化合物0.05g、及び高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.05gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.30gと30nmシリカ粒子B0.10gを変性して調製された充填粒子混合液 2.0g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 81.99g
【0069】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0070】
実施例4
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更された。
【0071】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.5g
(2)オキサゾリン系架橋剤 1.0g
(3)アニオン界面活性剤A0.45g、ノニオン界面活性剤B0.05g、ケイ素含有化合物0.1g、及びの高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.0gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.40gと30nmシリカ粒子B0.10gを変性してなった充填粒子混合液 2.1g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 81.89g
【0072】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0073】
実施例5
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更された。
【0074】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.75g
(2)メラミン系架橋剤0.5g、及びオキサゾリン系架橋剤 0.8g
(3)アニオン界面活性剤A0.05g、ノニオン界面活性剤B0.45g、ケイ素含有化合物0.1g及び高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.0gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.10gと30nmシリカ粒子B0.40gを変性して調製された充填粒子混合液 2.1g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 81.34g
【0075】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0076】
実施例6
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで両面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更された。
【0077】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.0g
(2)のメラミン系架橋剤0.5g、及びのオキサゾリン系架橋剤 1.0g
(3)アニオン界面活性剤A0.25g、ノニオン界面活性剤B0.25g、ケイ素含有化合物0.1g、及び高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.0gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.15gと30nmシリカ粒子B0.30gを変性して調整された充填粒子混合液 2.05g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 81.94g
【0078】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0079】
比較例1
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更され、そして、充填粒子は変性されない。
【0080】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.5g
(2)メラミン系架橋剤 1.0g
(3)30nmシリカ粒子B 0.4g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 83.59g
【0081】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0082】
比較例2
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更され、そして、充填粒子は変性されない。
【0083】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.5g
(2)メラミン系架橋剤 1.0g
(3)100nmシリカ粒子A0.10gと30nmシリカ粒子B0.3g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びのケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g、
(5)水溶媒 83.59g
【0084】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0085】
比較例3
実施例1と同じ製造方法で、膜厚50μmで片面にコート層を有するポリエステル光学フィルムを製造した。ただし、水溶性塗布液は、以下の成分を均一に攪拌して調製されたものに変更された。
【0086】
(1)アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂 8.50g
(2)メラミン系架橋剤 0.1g
(3)のアニオン界面活性剤A0.05g、のノニオン界面活性剤B0.45g、のケイ素含有化合物0.05g及びの高分子ポリマー(ポリエステル樹脂)1.05gを処理剤として、100nmシリカ粒子A0.10gと30nmシリカ粒子B0.40gを変性して調製された充填粒子混合液 2.1g
(4)触媒0.1g、i−プロパノール5g、ブチルセルロース1.4g、及びケイ素又はフッ素含有助剤化合物0.01g
(5)水溶媒 82.79g
【0087】
ポリエステル光学フィルムの物理的性質を測定し、測定結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
結果の検討
1.実施例1〜6で製造されたポリエステル光学フィルムのコート層成分において、アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂が添加され、液晶ディスプレーのバックライトモジュール基材として利用される場合、ポリエステル光学フィルムのコート層の、光学ゴムに対する密着性及びUV光で照射された後の光学ゴムに対する密着性はいずれも好ましい。
また、コート層成分における無機粒子は表面変性剤で変性された後、コート層における分散性が良好であるため、ポリエステル光学フィルムによる製品の光透過率が好ましくてヘイズが好ましい。また、コート層成分における無機粒子として、異なる粒子径の無機粒子をブレンドして利用することによって、PET基材の滑り性を改良すると共に、ポリエステル光学フィルムのコート層についてスティッキング防止性の温度を向上させることができる。
比較例1〜2で製造されたポリエステル光学フィルムのコート層成分において、無機粒子は表面変性されないが、ポリエステル光学フィルム製品の光透過率が劣ってヘイズも劣る。
2.充填粒子混合液における無機粒子の粒子径が大きいほど、ポリエステル光学フィルム製品のコート層のスティッキング防止性の温度が高くなり、実施例3及び4のポリエステル光学フィルム製品は、コート層に大きい粒子径の無機粒子が用いられ、コート層のスティッキング防止性の温度が100℃以上と高いである。それに対して、比較例1のポリエステル光学フィルム製品は、コート層に大きい粒子径の無機粒子が用いられなく、表面変性剤を添加して変性することもなく、コート層のスティッキング防止性の温度が70℃と劣るが、本発明の改良しようとする主な項目の1つである。
3.比較例3で製造されたポリエステル光学フィルムは、コート層の成分において異なる粒子径の無機粒子をブレンドして利用し、表面変性剤も添加して変性し、コート層分散性が良好であるという効果を得たが、架橋剤の添加量の不足のため、コート層が反応し切れなく、コート層のスティッキング防止性の温度はやはい劣る。
【0090】
総じて言えば、本発明のポリエステル光学フィルム製品のコート層成分としては、アクリレートでグラフト変性されたポリウレタン樹脂、架橋剤、表面変性された無機粒子溶液、及び他の添加剤などからなり、ポリエステル光学基材に塗布して形成されるポリエステル光学フィルムのコート層によって、ポリエステル光学フィルムの透明性、ヘイズ、接着性、滑り性、及びスティッキング防止性などの特性を著しく改良できる。