(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836631
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】水平複合給電構造体
(51)【国際特許分類】
H01M 50/20 20210101AFI20210222BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20210222BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20210222BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20210222BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20210222BHJP
H01M 10/6555 20140101ALN20210222BHJP
H01M 10/0565 20100101ALN20210222BHJP
H01M 50/10 20210101ALN20210222BHJP
H01M 10/6567 20140101ALN20210222BHJP
H01M 10/6557 20140101ALN20210222BHJP
H01M 10/6561 20140101ALN20210222BHJP
H01M 10/0566 20100101ALN20210222BHJP
H01M 10/0562 20100101ALN20210222BHJP
H01M 10/64 20140101ALN20210222BHJP
【FI】
H01M2/10 E
H01M2/10 M
H01M2/20 A
H01M10/04 Z
H01M2/26 A
!H01M10/613
!H01M10/6555
!H01M10/0565
!H01M2/02 L
!H01M10/6567
!H01M10/6557
!H01M10/6561
!H01M10/0566
!H01M10/0562
!H01M10/64
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-146655(P2019-146655)
(22)【出願日】2019年8月8日
(65)【公開番号】特開2020-24922(P2020-24922A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】107127703
(32)【優先日】2018年8月8日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】107135860
(32)【優先日】2018年10月11日
(33)【優先権主張国】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シュ−ナン
【審査官】
前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−073368(JP,A)
【文献】
特開2017−168266(JP,A)
【文献】
特開2013−206821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20−50/298
H01M 50/50−50/598
H01M 10/00−10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の第1絶縁層と、
前記第1絶縁層に対向して配置された1枚の第2絶縁層と、
相互に対向する、前記第1絶縁層の表面上と前記第2絶縁層の第2表面上にそれぞれ配置された2枚の導電パターン層と、
複数の電気化学系エレメント群とを備え、絶縁層は前記1枚の第1絶縁層と前記1枚の第2絶縁層との2枚のみである水平複合給電構造体であって、
前記複数の電気化学系エレメント群は、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に挟まれて、前記電気化学系エレメント群は、前記2枚の導電パターン層を介して、前記給電構造体の内部に接続されて直列および/または並列接続を形成しており、
前記電気化学系エレメント群のそれぞれは、1つ以上の電気化学系エレメントで形成され、
前記電気化学系エレメントは、前記複数の電気化学系エレメントの電解質系を個々に分離するためのパッケージ層を側壁上に備え、
隣接する電気化学系エレメント群の間に、電荷移動を除く電気化学反応を起こさず、
前記電気化学系エレメント群のそれぞれの両最外部側の電気化学系エレメントは、前記2枚の導電パターン層を集電層として直接使用する、水平複合給電構造体。
【請求項2】
前記電気化学系エレメント群のそれぞれが2つ以上の電気化学系エレメントで形成されている場合、
前記複数の電気化学系エレメントは縦に積み重ねられており、
隣接する電気化学系エレメント同士は、共通集電層を共有している、請求項1に記載の水平複合給電構造体。
【請求項3】
前記電気化学系エレメントが、
前記隣接する前記導電パターン層または前記共通集電層と接触する第1活物質層と、
他方の隣接する導電パターン層または前記共通集電層に接触する第2活物質層と、
前記第1活物質層と前記第2活物質層との間に挟まれた分離層と、
前記第1活物質層内と前記第2活物質層内とに配置された前記電解質系とを備える、請求項2に記載の水平複合給電構造体。
【請求項4】
前記同じまたは異なる導電パターン層に接続された第1導電性リードと第2導電性リードとをさらに備える、請求項1に記載の水平複合給電構造体。
【請求項5】
前記第1導電性リードと前記第2導電性リードは、それらと接続された前記導電パターン層と一体的に形成されている、請求項4に記載の水平複合給電構造体。
【請求項6】
前記水平複合給電構造体が複数必要な場合、前記複数の水平複合給電構造体は、前記第1導電性リードおよび前記第2導電性リードを用いて、外部で直列および/または並列に接続されている、請求項4に記載の水平複合給電構造体。
【請求項7】
隣接する前記電気化学系エレメント群の間に位置する複数の放熱チャネルをさらに備える、請求項1に記載の水平複合給電構造体。
【請求項8】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層に対向して配置された第2絶縁層と、
相互に対向する、前記第1絶縁層の表面上と前記第2絶縁層の第2表面上にそれぞれ配
置された2つの導電パターン層と、
複数の電気化学系エレメント群とを備える水平複合給電構造体であって、
前記複数の電気化学系エレメント群は、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に挟ま
れて、前記電気化学系エレメント群は、前記2つの導電パターン層を介して、前記給電構
造体の内部に接続されて直列および/または並列接続を形成しており、
前記電気化学系エレメント群のそれぞれは、1つ以上の電気化学系エレメントで形成さ
れ、
前記電気化学系エレメントは、前記複数の電気化学系エレメントの電解質系を個々に分
離するためのパッケージ層を側壁上に備え、
隣接する電気化学系エレメント群の間に、電荷移動を除く電気化学反応を起こさず、
前記電気化学系エレメント群のそれぞれの両最外部側の電気化学系エレメントは、前記
2つの導電パターン層を集電層として直接使用し、
前記電気化学系エレメント群に対向する前記第1絶縁層および/または前記第2絶縁層の表面に、複数の位置決め部材が形成され、
前記電気化学系エレメント群の位置を制限するために、前記複数の位置決め部材が前記導電パターン層の外側に露出している、水平複合給電構造体。
【請求項9】
前記電解質系が、ゲル、液体、擬似固体、固体の電解質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の水平複合給電構造体。
【請求項10】
前記複数の電気化学系エレメントが、直列接続を形成するために、前記共通集電層に接触するように異なる極性を有する前記第1活物質層および前記第2活物質層を使用する、請求項3に記載の水平複合給電構造体。
【請求項11】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層に対向して配置された第2絶縁層と、
相互に対向する、前記第1絶縁層の表面上と前記第2絶縁層の第2表面上にそれぞれ配
置された2つの導電パターン層と、
複数の電気化学系エレメント群とを備える水平複合給電構造体であって、
前記複数の電気化学系エレメント群は、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に挟ま
れて、前記電気化学系エレメント群は、前記2つの導電パターン層を介して、前記給電構
造体の内部に接続されて直列および/または並列接続を形成しており、
前記電気化学系エレメント群のそれぞれは、1つ以上の電気化学系エレメントで形成さ
れ、
前記電気化学系エレメントは、前記複数の電気化学系エレメントの電解質系を個々に分
離するためのパッケージ層を側壁上に備え、
隣接する電気化学系エレメント群の間に、電荷移動を除く電気化学反応を起こさず、
前記電気化学系エレメント群のそれぞれの両最外部側の電気化学系エレメントは、前記
2つの導電パターン層を集電層として直接使用し、
前記パッケージ層が、シリコーン層と、前記シリコーン層の両側にある2つの変成シリコーン層とを含む、水平複合給電構造体。
【請求項12】
前記放熱チャネル内部に流体が加えられている、請求項7に記載の水平複合給電構造体。
【請求項13】
前記導電パターン層および/または前記共通集電層の材料が、ステンレス鋼またはグラファイトである、請求項2に記載の水平複合給電構造体。
【請求項14】
前記流体が気体または液体である、請求項12に記載の水平複合給電構造体。
【請求項15】
前記第1導電性リード、前記第2導電性リード、および前記導電パターン層の材料が異なる場合、それらは、物理的または化学的に接続される、請求項4に記載の水平複合給電構造体。
【請求項16】
はんだ付け、溶接、導電性接着剤、または導電性布によって前記第1導電性リードおよび前記第2導電性リードが前記導電パターン層に接続されている、請求項15に記載の水平複合給電構造体。
【請求項17】
前記導電パターン層および/または前記共通集電層は、1つ以上の接着剤と混合された、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、およびそれらの合金からなる群より選択される金属粉末を噴霧およびカレンダー加工することによって製造される、請求項2に記載の水平複合給電構造体。
【請求項18】
前記導電パターン層および/または前記共通集電層は、高電圧および低電圧に耐え、酸化反応を起こさない材料から形成される、請求項2に記載の水平複合給電構造体。
【請求項19】
前記電気化学系エレメント群が複数の前記電気化学系エレメントによって形成される場合、任意の前記電気化学系エレメント群における前記複数の前記電気化学系エレメントは、並列および/または直列に電気的に接続されている、請求項3に記載の水平複合給電構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、給電構造体に関する。本開示は特に、電気化学系エレメントを直列に接続し、さらに給電構造体内で電気化学系エレメント群を並列および/または直列に同時に接続することにより高電圧、高容量、そして3次元化された水平複合給電構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油化学燃料の枯渇や環境保全への意識の広がりにより、石油化学燃料を動力源として利用して大量の温室効果ガスを排出するものについて、人々は生活の利便性と環境保全とのバランスを考え直さざるを得なくなっている。重要な輸送車両としての自動車は、主な点検すべき対象の1つになっている。そのため、世界的な省エネルギー化および炭素削減への動向の下、世界中の多くの国が、二酸化炭素削減の重要な目標として自動車の電化を設定した。残念ながら、電気自動車は、実用化において多くの問題に直面している。例えば、給電エレメントの容量が、耐久性を制限する。その結果、容量を増やして走行距離を延ばすために、より多くのバッテリを直列または並列に接続しなければならなくなる。
【0003】
走行距離を延ばすために車の重量を減らす目的において、リチウムイオン二次電池のような高エネルギー密度を有する軽量の二次電池は、電気自動車の電池として最良の選択肢となる。それでもなお、安全かつ安定した電源を形成するために複数のリチウムイオン二次電池をどのように組み立てるかは、人々にとって緊急課題となっている。
【0004】
まず、一般的な方法を示す
図1Aおよび
図1Bを参照されたい。複数の電池エレメント71から成る組を複数並列に接続した後、電池セル73を封止して形成するためにハウジング72が使用される。そして、十分な電圧に達するように、複数の電池セル73のハウジング72から突き出た導電性リード74を外部で直列に接続する。これにより、車両用電池モジュール75が作られる。別の方法では、
図2Aおよび
図2Bに示すように、複数の電池エレメント71を覆うために、単一のハウジング72が採用される。すなわち、電池セル76の電圧を増加させるために、内部直列接続が採用されている。次いで、自動車用の電池モジュール77を形成するのに十分な容量に達するように、複数の電池セル76が並列に外部で接続される。残念ながら、現在の電解質は、約5ボルトにしか耐えられない。さらに、内部構造の問題に起因して、電解質の閉鎖系を形成することは困難である。電解質の耐えうる範囲を電圧がいったん超えてしまうと、電解質は分解し、電池モジュール77を故障させる。さらに悪いことに、電池が爆発することもある。したがって、このような製品は市場には存在しない。
【0005】
米国特許出願第2004/0091771号によれば、隣接する電池モジュールは、共通の集電層を共用する。この方法を用いることにより、上述の電解質が分解する問題を解決することができる。残念ながら、上記共通の集電層への直列接続に起因して、設計の柔軟性は低くなる。内部直列接続のみが採用可能となる。電池モジュールを形成するために、複数の電池セルの外部並列接続を採用する必要が依然として存在する。
【0006】
さらに、台湾特許出願第106136071号の複合電池セルにおいて、高電圧かつ高単位容量の電池セルを提供するために、直接に電池セル内で直列接続および並列接続を実施することができ、これにより、従来技術における外部接続に起因する低性能および容量密度低下の欠点を解決できる。この技術では、直列接続および/または並列接続のために多大な数の給電エレメントを縦に積み重ねることによって、給電エレメント群が高容量および高電圧を達成する。
【0007】
しかしながら、金属物体が刺さると、穴が開くことで引き起こされる高電圧の降下は、避けられず、完全固体、擬似固体(固体/液体)、または液体の電解質系にとって極めて危険である。これは、特に、多大な数の給電エレメントを内部で縦に積み重ねることによって形成された電池セルにとって危険である。
【0008】
上記欠点に対して、本開示は、金属物体が電池エレメントに刺さることで引き起こされる安全上の懸念を回避するための新規な水平複合給電構造体を提供する。
【発明の概要】
【0009】
本開示の目的は、縦に積み重ねられる電気化学系エレメントの数を減らし、金属物体が電池エレメントに刺さることによって引き起こされる安全上の問題を回避する目的で、複数の電気化学系エレメント群を電気的に接続するために水平方向の直列接続および/または並列接続を採用する水平複合給電構造体を提供することである。
【0010】
本開示の他の目的は、水平複合給電構造体を提供することにある。第1絶縁層と第2絶縁層とは、それぞれ上部と下部とに配置される。前記第1絶縁層と第2絶縁層との間には、水平方向に延び、直列および/または並列に接続された複数の電気化学系エレメント群が配置されている。前記第1絶縁層と第2絶縁層とを用いることにより、外部の金属物体が電池セルに刺さることによって引き起こされる潜在的な損傷を防止することができる。
【0011】
本開示の他の目的は、水平複合給電構造体を提供することにある。隣接する電気化学系エレメント間に電荷移動を除く電気化学反応は発生しない。その結果、給電エレメントは、電解質が許容する最大電圧の制限なく、直列および/または並列に接続し得る。これにより、容量密度および電圧を向上することができる。
【0012】
本開示のさらに他の目的は、水平複合給電構造体を提供することにある。隣接する電気化学系エレメント群の間には、放熱用経路として機能する複数のチャネルが形成されている。
【0013】
本開示のさらなる目的は、水平複合給電構造体を提供することである。隣接する電気化学系エレメント間の集電層は接続のために共用される。接触領域は、従来技術に係るニッケル板はんだ付けによる接触領域よりもはるかに広い。これにより、電気化学系エレメント群の内部抵抗を大幅に低減することができる。また、電気化学系エレメント群によって形成されるパワーモジュールの性能はほとんど低下しない。さらに、抵抗の低減により、充放電速度が大幅に早くなり、加熱の問題が大幅に低減される。その結果、電気化学系エレメント群の冷却系は簡略化でき、容易に管理および制御できる。これにより、複合給電構造体全体の信頼性および安全性を高めることができる。
【0014】
上記の目的を達成するために、本開示は、第1絶縁層と、第2絶縁層と、2つの導電パターン層と、複数の電気化学系エレメント群とを備える水平複合給電構造体を提供する。前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層に対向して配置される。前記2つの導電パターン層は、前記第1絶縁層の表面上と前記第2絶縁層の表面上とにそれぞれ配置され、互いに対向している。前記複数の電気化学系エレメント群は、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に配置され、前記導電パターン層を介して直列および/または並列に接続される。各電気化学系エレメント群は、1つ以上の電気化学系エレメントによって形成される。パッケージ層が各電気化学系エレメントの周囲に配置されているため、隣接する電解質系エレメント間で電荷移動以外の循環は生じない。その結果、給電エレメントは、電解質が許容する最大電圧値に制限されないだけでなく、直列および/または並列に同時に接続することができる。各電気化学系エレメントは、分離層と、2つの活物質層と、電解質系とを含む。2つの活物質層は、分離層の両側にそれぞれ配置される。電解質系は、活物質層内に配置される。各電気化学系エレメント群の両最外部側の電気化学系エレメントは、上記導電パターン層を集電層として採用している。
【0015】
本開示が提供する目的、技術、特徴および効果の理解のために、具体的な実施形態を以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】従来技術の第1の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
【
図1B】従来技術の第1の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
【
図2A】従来技術の第2の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
【
図2B】従来技術の第2の実施形態に係る電池セルおよび電池モジュールの概略図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る横型水平複合給電構造体の概略図である。
【
図4A】本開示に係る電気化学系エレメントおよびパッケージ層の構造概略図である。
【
図4B】本開示に係る電気化学系エレメントおよびパッケージ層の別の構造概略図である。
【
図5A】水平複合給電構造体の電気化学系エレメント群が複数の電気化学系エレメントを直列に接続することによって形成される、
図3の実施形態の概略図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る水平複合給電構造体の複数の電気化学系エレメントの内部並列接続を示す概略図である。
【
図7】本開示の別の実施形態に係る水平複合給電構造体の概略図である。
【
図8A】本開示の一実施形態に係る複数の水平複合給電構造体の外部直列接続を示す概略図である。
【
図8B】本開示の一実施形態に係る複数の水平複合給電構造体の外部並列接続を示す概略図である。
【
図9】本開示の別の実施形態に係る水平複合給電構造体の概略図である。
【
図10】本開示の他の実施形態に係る水平複合給電構造体の概略図である。
【
図11】本開示の他の実施形態に係る水平複合給電構造体の概略図である。
【
図12】本開示に係る電気化学系エレメント群における複数の電気化学系エレメントの直列および/または並列電気接続図である。
【
図13】本開示に係る電気化学系エレメント群における複数の電気化学系エレメントの直列および/または並列電気接続図である。
【
図14】本開示に係る電気化学系エレメント群における複数の電気化学系エレメントの直列および/または並列電気接続図である。
【
図15】本開示に係る電気化学系エレメントの共通集電層上に形成されたタブの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
高電圧および高容量の需要に対応して、複数の電気化学系エレメントが、縦に積み重ねられ、直列に接続される。これら複数の電気化学系エレメントに金属の鋭利な物体が刺さることで引き起こされる安全上の問題を考慮して、本開示は、穴が開くことによる問題を解決するための新規な水平複合給電構造体を提供する。
【0018】
本開示は主に、複数の電気化学系エレメント群を備える水平複合給電構造体を開示する。上記電気化学系エレメント群は、縦方向に互いに直列および/または並列に接続された1つ以上の電気化学系エレメントを備える。そして、複数の導電パターン層を介して複数の電気化学系エレメント群を水平方向に直列または並列に互いに接続した後、第1導電端子および第2導電端子を電気化学系エレメント群に接続して、複合給電構造体を形成する。すなわち、上記複合給電構造体の内部では、直列接続と並列接続とを同時に実施することができる。本開示に係る電気化学系エレメント群を形成する電気化学系エレメントは、互いに電解質系を共有しない。さらなる説明のために図面を用いる。上記複合給電構造体はエネルギーを貯蔵することができる供給エレメント、および電池またはコンデンサなどの外部供給デバイスであり得る。
【0019】
まず、
図3を参照されたい。
図3は、本開示の第1の実施形態に係る水平複合給電構造体の概略図を示す。
図3に示すように、本開示に係る水平複合給電構造体10は主に、第1絶縁層12と、第2絶縁層14と、パターン導電層16(16a、16b、16c)と、別のパターン導電層18(18a、18b)と、複数の電気化学系エレメント群20とを備えている。第2絶縁層14は、第1絶縁層12と水平方向に対向している。導電パターン層16は、第1絶縁層12の内側で水平方向に延在する第1表面12s上に配置される。導電パターン層18は、第2絶縁層14の内側で水平方向に延在する第2表面14s上に配置される。導電パターン層16は、導電パターン層18に対向している。第1及び第2の導電パターン層16、18の材料は、金属および任意の導電性材料からなる群より選択され得る。複数の電気化学系エレメント群20は、第1絶縁層12と第2絶縁層14との間に挟まれており、直列接続を生じるために導電パターン層16、18を介して異なる極性に電気的に接続される。説明の便宜上、説明のための以下の実施形態では、電池を採用している。以下の実施形態が本開示の範囲を限定するために用いられるものではないことは当業者に周知である。
【0020】
このような電気化学系エレメント群20は、1つ以上の電気化学系エレメント22によって形成されている。例えば、
図3において、水平複合給電構造体10は、4つの電気化学系エレメント群20を直列に接続して形成されている。これらの電気化学系エレメント群20はそれぞれ、電気化学系エレメント22によって形成されている。上記電気化学系エレメント22の構造を
図4Aに示す。各電気化学系エレメント22は、第1活物質層225と、分離層226と、第2活物質層227と、第1活物質層225および第2活物質層227内に配置された電解質系とを備える。第1活物質層225は第1集電層16に接続され、第2活物質層227は第2集電層18に接続される。分離層226は、第1活物質層225と第2活物質層227との間に位置する。パッケージ層23は、隣接する電気化学系エレメントの電解質系が電荷移動を除いて循環しないように、各電気化学系エレメント22の周囲に配置される。電気化学反応がなければ、電気化学系エレメントは、電解質が許容する最大電圧に限定されず、直列および/または並列に同時に接続することができる。
【0021】
イオンが通過できる微小孔を有する分離層226の材料は、ポリマー材料、セラミック材料、およびガラス繊維材料からなる群より選択され得る。上記微小孔は、貫通孔または非線形孔であってもよい。あるいは、上記微小孔は、多孔質材料で作られていてもよい。さらに、基板の微小孔の内側に多孔質セラミック絶縁材料を配置することができる。これらのセラミック絶縁材料は、マイクロメートルグレードまたはナノメートルグレードの二酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化ケイ素(SiO
2)、またはアルキル化セラミック粒子などの材料によって形成され得る。上記セラミック絶縁材料は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニリデンフロリド‐co‐ヘキサフルオロプロピレン(PVDF‐HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリル酸接着剤、エポキシ、ポリエチレン・オキシド(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、またはポリイミド(PI)などの高分子接着剤を更に含んでいてもよい。
【0022】
上記電解質系は、第1活物質層225および第2活物質層227内に配置される。電解質系の形態は、液体状態、擬似固体状態、ゲル状態、固体状態、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。活物質層225、227の活物質は、利用(給電)のために化学エネルギーを電気エネルギーに変換したり、貯蔵(充電)のために電気エネルギーを化学エネルギーに変換したりすることができる。また、活物質層225、227の活物質は、イオン伝導と輸送とを同時に行うこともできる。隣接する集電層を介して、発生した電子を外部に導くことができる。
【0023】
パッケージ層23の材料は、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、熱可塑性ポリイミド、シリコーン、アクリル樹脂、または紫外線硬化接着剤を含むことができる。上記パッケージ層23は、その両端が電気化学系エレメント22の両側にある集電層に接着されて、電気化学系エレメント22の周囲に配置される。本実施形態によれば、パッケージ層23は、他の電気化学系エレメント22の電解質系との循環および電解質の漏れを回避する目的で導電パターン層16、18とパッケージ層23との間に電解質系を密封するため、導電パターン層16、18に接着される。これにより、電気化学系エレメント22は、独立した完全な給電モジュールとなる。
【0024】
パッケージ層23の封止効果を向上するために、パッケージ層23が3つの層を有するように設計することができる。
図4Bを参照されたい。最上層23aおよび最下層23bは変成シリコーンであり、中間層はシリコーン層23cである。両側の変成シリコーン層23a、23bは、不均一材料を接着するための付加型および縮合型シリコーンの比率を調節することによって改質されている。この設計を使用することによって、界面における結合性(コヒージョン)が増大する。同時に、全体的な外観がより完全になり、生産歩留まりが向上する。さらに、この設計は、水分の浸透を阻止できる。内部では、主構造として機能するシリコーン層23cが極性溶媒およびプラスチック剤によって引き起こされる損傷を阻止できる。その結果、封止構造全体をより完全なものとすることができる。
【0025】
また、説明および識別を容易にするために、水平複合給電構造体を説明するための図中の電気化学系エレメント22には、
図4Aおよび
図4Bに示した電気化学系エレメント22の詳細な構成要素を示す代わりに、電気極性を示す正負の電気極性を明確にする単純な正負の符号を用いる。当業者は、正負の極性の意味を分かっている。そのため、詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
図5Aおよび
図5Bに示すように、一つ電気化学系エレメント群20は、縦に積み重ねられた複数の電気化学系エレメント22を逆極性に直列に接続することによって形成される。電気化学系エレメント群20の両最外部側にある電気化学系エレメント22の外側には、導電パターン層16、18が集電層として直接用いられている。2つの積み重ねられた電気化学系エレメント22は、電子を隔離し、収集するのに共通集電層19を用いている。これにより、隣接する電気化学系エレメント22の一方の第2活物質層227と他方の第1活物質層225とが共通集電層を介して電気的に接続される。例えば、図示するように、第1活物質層225は正極層であり、第2活物質層227は負極層である。次に、最上部の電気化学系エレメント22の第2活物質層227が共通集電層19に接触する。上記最上部の電気化学系エレメント22に隣接する(下部の)電気化学系エレメント22の第1活物質層225が上記共通集電層19に接触する。このように順に積み重ねることにより、直列接続の電気化学系エレメント群20を形成することができる。各電気化学系エレメント22の電解質系は循環しないので、隣接する電気化学系エレメント22間に電荷移動を除く電気化学反応は発生しない(すなわち、イオンは移動も伝導もしない)。したがって、複数の電気化学系エレメント22が高電圧を生じるように直列に接続されている場合でも、個々の電気化学系エレメント22内部の電解質系は影響を受けない。内部電圧は、単独の電気化学系エレメント22の電圧のままで維持される。その結果、電解質系の最大電圧(一般に約5ボルト)に限定されず、複数の電気化学系エレメント22を直列に積み重ねることにより、高電圧を有する給電エレメント群20を形成することができる。さらに、隣接する電気化学系エレメント22間の集電層は、接続のために共有される。接触領域は、従来技術に係るニッケル板はんだ付けによる接触領域よりもはるかに広い。これにより、電気化学系エレメント群の内部抵抗を大幅に低減することができる。また、電気化学系エレメント群によって形成されるパワーモジュールの性能はほとんど低下しない。さらに、抵抗の低減により、充放電速度が大幅に早くなり、加熱の問題が大幅に低減される。その結果、電気化学系エレメント群の冷却系は簡略化でき、容易に管理および制御できる。これにより、複合給電構造体全体の信頼性および安全性を高めることができる。
【0027】
正極と負極(活物質層225、227)を同時に接触させる必要があるため、上述のような導電パターン層16、18および/または共通集電層19の材料は、高電圧および低電圧に耐えられなければならず、かつ、酸化反応が起こってはならない。このような材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)またはグラファイトが挙げられる。さらに、上記材料は、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、およびそれらの合金からなる群より選択される金属粉末であり得る。接着剤と混合された金属粉末を噴霧またはカレンダー加工することによって、導電パターン層16、18および/または共通集電層19を製造することができる。
【0028】
本開示に係る水平複合給電構造体10はさらに、第1導電性リード24と、第2導電性リード26とを備えている。
図3において、第1導電性リード24および第2導電性リード26は導電パターン層16に同時に電気的に接続される。無論、第1導電性リード24と第2導電性リード26とをそれぞれ異なる導電パターン層に接続することもできる。例えば、
図6に示すように、第1導電性リード24が導電パターン層16に電気的に接続され、第2導電性リード26は導電パターン層18に電気的に接続される。
【0029】
さらに、第1導電性リード24および第2導電性リード26は、それらと電気的に接続された導電パターン層16、18と一体的に形成することができる。
図7に示すように、導電パターン層16aの一部は、第1絶縁層12の外側に延伸し、第1導電性リード24として機能し、導電パターン層16cの一部は第1絶縁層12の外側に延伸し、第2導電性リード26として機能する。すなわち、パターニングプロセスの間に、第1導電性リード24のパターンおよび第2導電性リード26のパターンが確保される。
【0030】
上記の一体的に形成する方法を採用せずに、第1導電性リード24および第2導電性リード26が形成される場合、第1導電性リード24および第2導電性リード26の材料は、導電パターン層16、18の材料とは異なり得る。さらに、直接接触は、はんだ材料の使用有無にかかわらずはんだ付けによって、または溶融法によって形成され得る。あるいは、導電性銀製接着剤または導電性布を採用することができる。
【0031】
本開示に係る水平複合給電構造体のアーキテクチャの下で、電池モジュールの総容量または総電圧を増加させるために唯一すべきことは、第1導電性リード24および第2導電性リード26を使用することによって、複数の水平複合給電構造体10の外部直列/並列接続を実施することである。これにより、電池モジュールの総容量または総電圧を増加させることができる。例えば、
図8Aに示すように、複数の水平複合給電構造体10を外部で直列に接続することにより、総電圧を増加させることができる。
図8Bに示すように、複数の水平複合給電構造体10を外部で並列に接続することにより、総容量を増加させることができる。
【0032】
単一の水平複合給電構造体の電圧を高くするには、単に電気化学系エレメント群20を追加すればよい。例えば、
図9に示すように、
図3に対して2つの電気化学系エレメント群20を追加し、導電パターン層16、18を介して直列に接続する。
【0033】
図6を参照されたい。この水平複合給電構造体10は、2つの電気化学系エレメント群20を使用して、導電パターン層16、18を介して同じ極性を並列に接続することによって、新エレメント群セット28を形成する。そして、新エレメント群セット28をエレメントとして用いる。導電パターン層16、18を介して上記エレメントの逆極性を接続することにより、直列接続が生じる。さらに、新エレメント群セット28は電気化学系エレメントに統合することができるが、新エレメント群セット28が分離されていれば隙間30の数を増加させることができる。
【0034】
図10を参照されたい。接続された電気化学系エレメント群20間の隙間は、水平複合給電構造体10用の放熱チャネルとして機能できる。電気化学系エレメント群20と対向する第1絶縁層12および/または第2絶縁層14の表面には、複数の位置決め部材32が形成されている。位置決め部材32は、電気化学系エレメント群20の位置を制限するために、導電パターン層16、18の外側に露出される。例えば、位置決め部材32の存在は、導電パターン層16、18を正しい位置に固定するのに役立つ。さらに、放熱効果を増大させるために、気体または液体などの流体を上記隙間に加えることができる。
【0035】
本開示の利点をさらに説明する。例えば、台湾特許出願第106136071号の複合給電構造体によれば、24個の電気化学系エレメントが縦方向に直列に接続され、24×4.2ボルトの電圧値を生じる。本開示に係る水平複合給電構造体を採用することによって、同じ電圧値および同数の電気化学系エレメントであれば、
図9に示すように、導電パターン層16、18を介して、24個の個々の電気化学系エレメントを水平方向に逆極性に接続することができる。あるいは、
図11に示すように、導電パターン層16、18を介して、12組の積み重ねられた電気化学系エレメントを水平方向に逆極性に接続することができる。あるいは、別の数の積み重ねられた電気化学系エレメントを採用することもできる。このアーキテクチャの下で、縦に積み重ねられた24個の電気化学系エレメントの代わりに、上記水平複合給電構造体に鋭利な金属物体34が外側から刺さった場合、刺さるものは、ほんの数個の積み重ねられたものである。これにより、直列に積み重ねられた多大な数の電気化学系エレメントに穴が開くリスクを効果的に回避することができる。
【0036】
次に、電気化学系エレメント群20が2つ以上の電気化学系エレメント22で形成される場合の複数の電気化学系エレメント22の直列および/または並列の構成について説明する。
【0037】
図5Aを参照されたい。
図5Aにおいて、電気化学系エレメント群20の複数の電気化学系エレメント22は、電気的に直列かつ逆極性に接続されている。
図12を参照すると、電気化学系エレメント群20の複数の電気化学系エレメント22は、電気的に並列かつ同極性に接続されている。
図13を参照すると、電気化学系エレメント群20の複数の電気化学系エレメント22は、まず並列に接続され、次に直列に接続されることにより混合法で接続されている。
図14を参照すると、電気化学系エレメント群20の複数の電気化学系エレメント22は、まず直列に接続され、次に並列に接続されることにより混合法で接続されている。このような混合接続法では、電気化学系エレメント22の正負電極(集電層)を対応する導電パターン層に接続するために、適切な配線78を用いることができる。さらに、配線78と電気化学系エレメント22の集電層または上記共通集電層19とを簡便に接続するために、
図15に示すように、集電層に突起タブ79を配置することができる。突き出る突起タブ79は、電気接続に用いることができる。
【0038】
要約すると、本開示は、複数の電気化学系エレメント群を備える水平複合給電構造体を提供する。前記電気化学系エレメント群は、所定の電圧および容量に到達するように、導電パターン層を介して、水平拡張法で直列および/または並列に内部で接続される。さらに、複数の水平複合給電構造体の外部での直列接続および/または並列接続は、水平複合給電構造体の第1導電性リードおよび第2導電性リードを介して実施できる。さらに、本開示に係る水平複合給電構造体は、金属物体が上記水平給電構造体に刺さることで引き起こされうる潜在的な損傷を効果的に防止するために、上部および下部に第1絶縁層および第2絶縁層を備える。
【0039】
さらに、刺し傷を効果的に阻止することに加えて、複数の給電構造体10が外部で直列および/または並列に接続された場合に、本開示に係る第1絶縁層12および第2絶縁層14は、導電パターン層同士の電気的接触に対する阻止層として機能することができる。
【0040】
したがって、本開示はその新規性、非自明性、および有用性により、法的要件に適合する。しかし、前述の説明は、本開示の実施形態に過ぎず、本開示の範囲および幅を限定するために用いられるものではない。本開示の特許請求の範囲に記載された形状、構造、特徴、または精神に従ってなされた同等の変更または修正は、本開示に添付の特許請求の範囲に含まれる。