【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例中、部及び%は特に断りのない限り、それぞれ重量部及び重量%を示す。
【0055】
製造例1
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−1)の合成〕
ガラス製オートクレーブに、トルエン137.0g(ビスフェノール類に対して40%)、ビスフェノールA(三菱化学株式会社製「ビスフェノールA」)342.4g(1.50mol)を仕込み、窒素置換を行った後、75℃まで昇温し、ビスフェノールAをトルエンに分散させた。ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液を2.73g添加した。
再度窒素置換を行い、EOを75〜95℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。反応中、適宜サンプリングし、GCで反応物のビスフェノールへの付加モル分布を追跡し、1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは139.9g(3.18mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒、溶剤等を留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−1)を得た。
この(A−1)をGCにて分析したところ、得られた(A−1)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.02であり、単分散度は97.4%であった。
【0056】
製造例2
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−2)の合成〕
ガラス製オートクレーブに、実施例1で得られた(A−1)85.6g(後に加えるビスフェノールAに対して25重量%)を溶融させて反応系の溶媒として入れた。110℃まで加熱してこれを溶融した後、ビスフェノールA342.4g(1.50mol)を仕込み、窒素置換を行った後、95℃まで冷却し、ビスフェノールAを分散させた。ここに水酸化ナトリウム0.30gを添加した。
再度窒素置換を行い、EOを75〜95℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。反応中、適宜サンプリングし、GCで反応物のビスフェノールへの付加モル分布を追跡した。1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは150.5g(3.42mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−2)を得た。
この(A−2)をGCにて分析したところ、得られた(A−2)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.09であり、単分散度は82.5%であった。
【0057】
製造例3
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−3)の合成〕
製造例2で滴下反応させたEOの量を154.0g(3.50mol)として、1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した以外は製造例2と同様にして反応させた。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−3)を得た。
この(A−3)をGCにて分析したところ、得られた(A−3)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.10であり、単分散度は81.3%であった。
【0058】
製造例4
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−4)の合成〕
製造例1で滴下反応させたEOの量を124.8g(2.84mol)として、1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した以外は製造例1と同様にして反応させた。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−4)を得た。
この(A−4)をGCにて分析したところ、得られた(A−4)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は0.91であり、単分散度は88.3%であった。
【0059】
製造例5
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−5)の合成〕
製造例2で用いた水酸化ナトリウムの量を0.27gに代えた以外は製造例2と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了し、要したEOは、121.8g(2.77mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−5)を得た。
この(A−5)をGCにて分析したところ、得られた(A−5)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.03であり、単分散度は80.5%であった。
【0060】
製造例6
〔ビスフェノールBのEO付加物(A−6)の合成〕
製造例1で用いたビスフェノールAをビスフェノールB(東京化成工業株式会社製)363.4g(1.50mol)に代えた以外は製造例1と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは150.8g(3.43mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒、溶剤等を留去し、ビスフェノールBのEO付加物(A−6)を得た。
この(A−6)をGCにて分析したところ、得られた(A−6)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.03であり、単分散度は96.7%であった。
【0061】
製造例7
〔ビスフェノールEのEO付加物(A−7)の合成〕
製造例1で用いたビスフェノールAをビスフェノールE(本州化学工業株式会社製「ビスフェノールE」)321.4g(1.50mol)に代えた以外は製造例1と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは150.6g(3.42mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒、溶剤等を留去し、ビスフェノールEのEO付加物(A−7)を得た。
この(A−7)をGCにて分析したところ、得られた(A−7)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.03であり、単分散度は96.4%であった。
【0062】
製造例8
〔ビスフェノールFのEO付加物(A−8)の合成〕
製造例1で用いたビスフェノールAをビスフェノールF(本州化学工業株式会社製「ビスフェノールF」)300.4g(1.50mol)に代えた以外は製造例1と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは150.3g(3.42mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒、溶剤等を留去し、ビスフェノールFのEO付加物(A−8)を得た。
この(A−8)をGCにて分析したところ、得られた(A−8)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.02であり、単分散度は97.5%であった。
【0063】
製造例9
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−9)の合成〕
製造例2で用いた水酸化ナトリウムをトリメチルアミン40%水溶液0.22gに代えた以外は製造例2と同様にして反応させた。
反応後、15時間後でも1モル付加物が13%であり、0.1%以下になるまでは相当の時間を要することが予想され、実用的ではないと判断し、反応を打ち切った。この段階までに滴下したEOは、132g(3.00mol)であった。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−9)を得た。
この(A−9)をGCにて分析したところ、得られた(A−9)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は0.98であり、単分散度は78.9%であった。
【0064】
製造例10
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−10)の合成〕
製造例2で用いた水酸化ナトリウムの量を0.24gに代えた以外は製造例2と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了し、要したEOは、121.8g(2.77mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−10)を得た。
この(A−10)をGCにて分析したところ、得られた(A−10)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は0.89であり、単分散度は80.3%であった。
【0065】
製造例11
〔ビスフェノールAのEO付加物(A−11)の合成〕
製造例2で滴下反応させたEOの量を157.5g(3.58mol)として、1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した以外は製造例2と同様にして反応させた。
反応後、燐酸で触媒を中和し、130〜160℃、減圧下で未反応EOを留去し、ビスフェノールAのEO付加物(A−11)を得た。
この(A−11)をGCにて分析したところ、得られた(A−11)の水酸基あたりのEO平均付加モル数は1.12であり、単分散度は80.1%であった。
【0066】
製造例12
〔p−フタル酸のEO付加物(A−12)の合成〕
製造例1で用いたビスフェノールAをp−フタル酸(東京化成工業株式会社製)249.2g(1.50mol)に代えた以外は製造例1と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは149.2g(3.39mol)であり、反応時間は6時間であった。
反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒、溶剤等を留去し、p−フタル酸のEO付加物(A−12)を得た。
【0067】
製造例13
〔1,4−ジヒドロキシベンゼンのEO付加物(A−13)の合成〕
製造例1で用いたビスフェノールAを1,4−ジヒドロキシベンゼン(東京化成工業株式会社製)165.2g(1.50mol)に代えた以外は製造例1と同様にして反応させた。
1モル付加物が0.1%以下になった時点で反応を終了した。要したEOは151.2g(3.44mol)であり、反応時間は7時間であった。
反応後、130〜160℃、減圧下で未反応EO、触媒、溶剤等を留去し、1,4−ジヒドロキシベンゼンのEO付加物(A−13)を得た。
【0068】
実施例1〜26、比較例1〜3
[ホットメルト接着剤(H)の調製]
攪拌機、コンデンサー、温度計を備えたフラスコに、表1に記載の配合部数の芳香環を有するポリオール(A)、グリコール(C)及び高分子ポリオール(D)を一括で投入し、105℃で均一攪拌後、80℃まで冷却して、水分を測定した。表1に記載の配合部数のジイソシアネート(B)とウレタン化触媒(日東化成株式会社製「ネオスタンU−600」)0.01部を仕込み、窒素気流下、攪拌、混合して温度を100〜160℃に保ちながら、8時間反応させることで目的とする熱可塑性ウレタン樹脂(F−1)〜(F−26)及び比較用の熱可塑性樹脂(F'−1)〜(F'−3)を得た。これらを本発明のホットメルト接着剤(H−1)〜(H−26)及び比較用のメルト接着剤(H'−1)〜(H'−3)とした。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表1〜3に記載の(B)、(C)、(D)、(E)、(B’)及び(C’)は以下を使用した。
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(B−1):住化コベストロウレタン株式会社製「デスモジュールH」
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(B−2):東ソー株式会社製「ミリオネートMT」
ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(B−3):住化コベストロウレタン株式会社製「デスモジュールW」
イソホロンジイソシアネート(B’−1):住化コベストロウレタン株式会社製「デスモジュールI」
1,4−ブタンジオール(C−1)::三菱化学株式会社製「14BG」
1,6−ヘキサンジオール(C−2):宇部興産株式会社製「1,6−ヘキサンジオール」
1,8−オクタンジオール(C−3):東京化成工業株式会社製
ヘキサエチレングリコール(C−4):東京化成工業株式会社製
1,5−ネオペンチルグリコール(C’−1):東京化成工業株式会社製
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(D−1):三菱化学株式会社製「PTMG 1000」
ポリプロピレングリコール(D−2):三洋化成工業株式会社製「プライムポールPX−1000」(1級OH基率:70モル%)
ポリエステルポリオール(D−3):東ソー株式会社製「ニッポラン 164」
ポリプロピレングリコール(D−4):三洋化成工業株式会社製「サンニックスPP−1000」(1級OH基率:2モル%)
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(D−5):三菱化学株式会社製「PTMG 650」
ポリエステルポリオール(D−6):東ソー株式会社製「ニッポラン 136」
ウレタン化触媒(E):日東化成株式会社製「ネオスタン U−600」
【0073】
表1〜3に記載のポリオール[(A)+(C)+(D)]の水分量(%)は、カールフィッシャー水分計(容量滴定方式)を使用して測定した。カールフィッシャー水分計は、京都電子工業株式会社製:カールフィッシャー水分計(MKS−500)を用いた。希釈溶剤としてメタノールを用いて、測定試料約1gを有効数字4桁まで精秤し、メタノール中に投入し、1分間攪拌した。攪拌後、適定によって求められた水分量を読み取った。
なお、この計算における(C)には(C’)を含む。
【0074】
ホットメルト接着剤(H−1)〜(H−26)及び比較用のメルト接着剤(H'−1)〜(H'−3)について、以下の方法で性能評価を行った結果を表1〜3に示す。
【0075】
評価方法は、次の通りである。
ホットメルト接着剤(H−1)〜(H−26)及び比較用のメルト接着剤(H'−1)〜(H'−3)について、以下では単に接着剤という。
(1)150℃溶融粘度
JIS−K7117(1999年)に準拠し、B型粘度計(東機産業株式会社製「RB−80H」)を用いて150℃での粘度を測定した。
【0076】
(2)融点
示差走査熱量測定(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製「Q20」)における吸熱ピークより求めた。
【0077】
(3)引張破断強度
接着剤を厚さ1mmになるようにプレス機(テスター産業株式会社製「SA−302 卓上型テストプレス」)を使用して230℃でプレスすることで樹脂フィルムを作成し、塗膜の引張破断強度をJIS K 7311(1995年)に準拠して測定した。
【0078】
(4)温度依存性
下記の測定条件で、−20℃及び70℃での、接着剤の貯蔵弾性率(G’)を測定し、G'(−20℃)/G'(70℃)を求めて温度依存性を評価した。この数値が100以下であると温度依存性が少ないと評価した。
貯蔵弾性率(G’)は、樹脂フィルムを「(3)引張破断強度」と同じ方法でプレスし下記サンプルサイズに切り抜いて作製し、粘弾性を以下の測定条件で測定することによって求めた。
<粘弾性測定条件>
測定装置:Rheogel−E4000[株式会社UBM製]
測定治具:固体せん断
測定温度:−20〜130℃
昇温速度:5℃/min
測定周波数:10Hz
サンプルサイズ:約7mm(縦)×約6mm(横)
【0079】
(5)シャープメルト性
上記の測定条件で、70℃及び「(2)融点」で測定した融点+20℃での、接着剤の貯蔵弾性率(G’)を測定し、G'(70℃)/G'(融点+20℃)を求めてシャープメルト性を評価した。この数値が80以上であるとシャープメルト性が良好と評価した。
【0080】
(6)接着力(80℃)
接着剤を、2枚のPETフィルム(厚さ100μm)の間に挟みこみ、厚みが1mmとなるように貼り合わせてサンプルを作製した。上記サンプルを200mm×25mmの大きさに裁断し、引張試験機を用い、測定温度(80℃)で引っ張り速度100mm/分の条件でT型剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。
【0081】
<ウレア基含有量>
ウレア基含有量は、窒素分析計[ANTEK7000(アンテック社製)]によって定量されるN原子含量と
1H−NMRによって定量されるウレタン基とウレア基の比率から算出する。
1H−NMR測定については、「NMRによるポリウレタン樹脂の構造研究:武田研究所報34(2)、224−323(1975)」に記載の方法で行う。すなわち
1H−NMRを測定して、脂肪族イソシアネートを使用した場合、化学シフト6ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト7ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を測定し、該重量比と上記のN原子含量及びアロハネート基及びビューレット基含量からウレタン基及びウレア基含量を算出する。芳香族イソシアネートを使用した場合、化学シフト8ppm付近のウレア基由来の水素の積分量と化学シフト9ppm付近のウレタン基由来の水素の積分量の比率からウレア基とウレタン基の重量比を算出し、該重量比と上記のN原子含量からウレア基含有量を算出する。
【0082】
ホットメルト接着剤(H−1)〜(H−26)は、温度依存性が少ないため、これを使用した製品の品質安定性に優れる。そして、ホットメルト接着剤として使用した際には、接着力が安定する。さらに、引張破断強度にも優れる。