【実施例1】
【0010】
図1は、本実施例における列車制御システムの構成例を示す図である。
【0011】
本実施例における列車制御システムは、ダイヤ管理装置100と列車110に搭載される列車制御装置111から構成される。列車110は線路120上を走行する。線路120上には分岐があり、分岐を制御する装置として転てつ器121がある。なお、図では列車110は1編成のみを示しているが、これに限らず、多数の編成を有しても良い。同様に、図では線路120上に分岐及び転てつ器121をそれぞれ1つのみを示しているが、これに限らず、多数の進路を構成するために多数の分岐及び転てつ器121を備えても良い。
【0012】
ダイヤ管理装置100は、列車の運行計画であるダイヤを管理する。ダイヤ管理装置100は、制御対象列車ダイヤ記憶部101と地上通信部102から構成される。
【0013】
制御対象列車ダイヤ記憶部101は、制御対象の列車のダイヤを記憶し、地上通信部102からの要求に従ってダイヤを送信する。また、制御対象列車ダイヤ記憶部101は、更新されたダイヤを地上通信部102から受信し、記憶しているダイヤを更新して記憶する。
【0014】
さらに、制御対象列車ダイヤ記憶部101は、列車の在線する可能性のある範囲である在線範囲を記憶し制御の対象となっている全ての列車の在線範囲である全列車在線範囲を作成し、地上通信部102からの要求に従って全列車在線範囲を送信する。
【0015】
地上通信部102は、列車制御装置111と通信し、列車制御装置111から更新されたダイヤを受信し、制御対象列車ダイヤ記憶部101へ送信する。また、ダイヤを制御対象となっている全ての列車110の列車制御装置111へ送信する。
【0016】
なお、地上通信部102は、無線を用いて列車制御装置111と通信を行うが、線路を経由して通信を行う等、有線で列車制御装置111と通信を行っても良い。
【0017】
さらに、地上通信部102は、列車制御装置111と通信し、列車制御装置111から在線範囲を受信し、制御対象列車ダイヤ記憶部101へ送信する。また、制御対象列車ダイヤ記憶部101へ全列車在線範囲の送信を要求し、受信する。その後、受信した全列車在線範囲を制御対象の全ての列車110の列車制御装置111へ送信する。
【0018】
列車制御装置111は、車上通信部112と車上ダイヤ記憶部113と車上制御部114から構成される。
【0019】
車上通信部112は、車上制御部114からの要求に従って、車上制御部114からダイヤを受信し、ダイヤ管理装置100へ送信する。また、車上通信部112は、ダイヤ管理装置100からダイヤを受信し、車上ダイヤ記憶部113へ送信し、車上制御部114へ送信させる。
【0020】
さらに、車上通信部112は、車上制御部114からの要求に従って、自列車の在線範囲をダイヤ管理装置100へ送信する。また、車上通信部112は、ダイヤ管理装置100から全列車在線範囲を受信し、車上ダイヤ記憶部113へ送信し、車上制御部114へ送信させる。
【0021】
加えて、車上通信部112は、車上制御部114からの指示に従い、転てつ器121と通信し、分岐の制御の指示を行う。
【0022】
車上ダイヤ記憶部113は、車上通信部112からダイヤを受信して記憶し、車上制御部114へ送信する。
【0023】
さらに、車上ダイヤ記憶部113は、車上通信部112から全列車在線範囲を受信して記憶し、車上制御部114へ送信する。
【0024】
車上制御部114は、車上ダイヤ記憶部113からダイヤを受信し、それに従って自列車110を制御する。その際、必要な進路を構成するため、車上通信部112に転てつ器121の制御の指示を行わせる。また、車上制御部114は、既定の事象が発生したときに自列車110のダイヤを修正し、修正したダイヤを車上通信部112によりダイヤ管理装置100へ送信する。
【0025】
さらに、車上制御部114は、自列車110の在線範囲を認識し、自列車110の在線範囲を車上通信部112によりダイヤ管理装置100へ送信させる。また、車上制御部114は、車上ダイヤ記憶部112から全列車在線範囲を受信し、自列車110の在線範囲が他の列車110の在線範囲と重複しない範囲で自列車110の走行を許可する。
転てつ器121は、線路120の進路上の分岐を制御する装置であり、車上通信部112からの指示を受け、分岐を制御する。
【0026】
次に、本実施例における列車制御装置111の動作を説明する。
【0027】
図2は、本実施例における既定の事象が発生したときの車上制御部114の動作例を示すフローチャートである。
【0028】
車上制御部114は、本システムの起動時に本処理(S200)を開始する。
【0029】
S200にて、車上制御部114は、本処理を開始し、S201へ遷移する。
【0030】
S201にて、車上制御部114は、既定の事象が発生したか確認する。車上制御部114は、既定の事象が発生していないとき(S201のNo)、S201へ遷移する。車上制御部114は、既定の事象が発生しているとき(S201のYes)、S202へ遷移する。
【0031】
なお、既定の事象とは、列車制御装置111の制御対象の列車110の運行に支障のある事象をいう。たとえば、列車110の故障、乗客のトラブル等があげられるが、これらに限定するものではない。
【0032】
S202にて、車上制御部114は、ダイヤを修正する。その後、車上制御部114は、S203へ遷移する。
【0033】
ダイヤの修正は次のように行う。
図7はダイヤの修正の例を示す図である。A駅からB駅へ向けて走行中の列車110に既定の事象が発生した場合、列車110の車上制御部114は、安全のため速度を落として次駅であるB駅まで運行を行い、B駅にて運行を取りやめ入区するダイヤを生成する。これを修正したダイヤとする。
【0034】
また、ダイヤの修正は次のように行っても良い。
図8はダイヤの修正の例を示す図である。A駅からB駅へ向けて走行中の列車110に既定の事象が発生した場合、列車110の車上制御部114は、安全のため速度を落として次駅であるB駅まで運行を行い、B駅にて運行を取りやめ入区するダイヤを生成する。この後、B駅にて車両交換可能な車両が存在する場合、車上制御部114は、車両交換ダイヤ(車交ダイヤ)を生成し、これを修正したダイヤとする。
【0035】
なお、B駅にて車両交換可能な車両が存在するかどうかは、後述する全列車在線範囲にて認識することができる。すなわち、
図5のS507にて全列車在線範囲を受信しており、全列車在線範囲は他の車両の在線範囲も含んでいるので、B駅に在線している車両の存在を確認することができる。ダイヤ管理装置100が全列車在線範囲を生成するとき、各列車の状態(乗客を乗せて運行している状態、乗客を降ろして回送列車になっている状態、滞泊している状態、電留線に停車している状態、車庫に入っている状態等)も各列車から受信してそれぞれの列車在線範囲に関連付けることにより、運行に影響の出ない列車(たとえば、乗客を乗せて運行している状態以外の状態かつ運行可能な状態の列車)を認識することができ、そのような列車がB駅に在線しているときに、
図8のようなダイヤを生成することにより適切な車両交換を行うことができる。
【0036】
S203にて、車上制御部114は、修正したダイヤを車上通信部112によりダイヤ管理装置100へ送信する。その後、車上制御部114は、S201へ遷移する。
【0037】
図3は、本実施例におけるダイヤを受信したときの車上制御部114の動作例を示すフローチャートである。
【0038】
車上制御部114は、本システムの起動時に本処理(S300)を開始する。
【0039】
S300にて、車上制御部114は、本処理を開始し、S301へ遷移する。
【0040】
S301にて、車上制御部114は、車上ダイヤ記憶部113からダイヤを受信したか確認する。車上制御部114は、ダイヤを受信したとき(S301のYes)、S302へ遷移する。ダイヤを受信していないとき(S301のNo)、車上制御部114は、S303へ遷移する。
【0041】
S302にて、車上制御部114は、新たに受信したダイヤで自列車110の制御を行う。その後、車上制御部114は、S301へ遷移する。
【0042】
S303にて、車上制御部114は、以前に受信したダイヤで自列車110の制御を行う。車上制御部114は、以前に受信したダイヤが無い場合は制御を行わない。その後、車上制御部114は、S301へ遷移する。
【0043】
自列車110の制御は次のように行う。自列車110の車上制御部114は、ダイヤより走行すべき進路を構成する。たとえば、
図7の元のダイヤに従って運行する場合、列車110がA駅を出発しB駅へ到着するときは、その列車110の車上制御部114は、A駅を出発する前にA駅からB駅までの進路を構成する必要がある。
【0044】
図9は、A駅とB駅の線路および転てつ器の構成の例を示す図である。起点側にA駅があり、終点側にB駅がある。起点側からA駅、A駅からB駅、B駅から終点側の路線は単線である。A駅、B駅は上下線の列車の擦れ違いが可能なように、2線になっている。起点側から終点側への方向を下り線、終点側から起点側への方向を上り線とする。各駅のホームは上の線路が下りホーム、下の線路が上りホームとする。起点側からA駅に進入する際の転てつ器は転てつ器900、A駅から出発して終点方向に向かう際の転てつ器は転てつ器901、起点方向からB駅に進入する際の転てつ器は転てつ器902、B駅から酒店方向に向かう際の転てつ器は転てつ器903である。
【0045】
転てつ器900〜転てつ器903はそれぞれ駅に進入する方向に転換している状態を定位とし、その反対方向に転換している状態を反位とする。
【0046】
この時、車上制御部114はA駅を出発する時刻をダイヤより抽出し、その時刻の一定時間前に進路を構成する。この進路を構成するため、車上制御部114は、転てつ器901を反位、転てつ器902を定位にする指示をそれぞれの転てつ器に送信し、転換完了を確認したときに進路構成完了とする。
【0047】
車上制御部114は、進路構成完了後、A駅を出発する時刻になったときに制御対象の自列車110をA駅から出発させ、B駅に到着させる。B駅からC駅に向かう際も同様である。終点方向から起点方向に向かう列車についても同様に制御する。
【0048】
なお、他の列車により進路を構築できない場合は、進路構築できるようになるまで待つことになる。
図10は、A駅にて先行列車1000と後発列車1001がすれ違うダイヤの例である。先行列車1000がA駅への進入を完了させるまで、B駅からA駅に向かう進路が先行列車1000により構成され、後発列車1001はA駅からB駅に向かう進路を構成できない。先行列車1000がA駅への進入を完了させた後、その進路が解放されるので、後発列車1001はA駅からB駅に向かう進路を構成できる。
【0049】
このように、他の列車が進路を構築している場合はその進路が使用する線路及び転てつ器を使用して進路を構築できない。進路を構築するには、その進路の走行許可が必要になる。この走行許可については後述するS400からS404にて説明する。
【0050】
図4は、本実施例における列車走行許可を更新する車上制御部114の動作例を示すフローチャートである。
【0051】
車上制御部114は、本システムの起動時に本処理(S400)を開始する。
【0052】
S400にて、車上制御部114は、本処理を開始し、S401へ遷移する。
【0053】
S401にて、車上制御部114は、自列車110の在線範囲を認識する。その後、車上制御部114は、S402へ遷移する。
【0054】
在線範囲の認識は次のように行う。図示しないが、列車110は現在位置を取得する装置(たとえばGPS(Global Positioning System)、又は、位置情報に関する情報を送信する地上子を線路上に設置し、列車が地上子を通過したときに位置情報に関する情報を受信して現在位置を認識し、地上子を通過した後は速度発電機等により測定した列車の速度を積分して走行距離を求め、通過した地上子からの相対位置を求める装置など)を備える。S302、S303で行うように、車上制御部114は、駅を出発するとき、次に到着する駅までの進路を構成するが、その構成した進路で走行する線路及び転てつ器を在線範囲とする。ただし、列車がその進路を走行し通過した線路及び転てつ器は在線範囲から除外する。つまり、列車の走行に伴い、この在線範囲に含まれる線路及び転てつ器は減ることになる。
【0055】
S402にて、車上制御部114は、車上通信部112により自列車110の在線範囲をダイヤ管理装置100へ送信させる。その後、車上制御部114は、S403へ遷移する。
【0056】
S403にて、車上制御部114は、全列車在線範囲を受信したか確認する。車上制御部114は、全列車在線範囲を受信したとき(S403のYes)、S404へ遷移する。車上制御部114は、全列車在線範囲を受信していないとき(S403のNo)、S401へ遷移する。
【0057】
S404にて、車上制御部114は、自列車110の走行を許可する範囲を更新する。その後、車上制御部114は、S401へ遷移する。
【0058】
走行を許可する範囲の更新は以下のように行う。
【0059】
全列車在線範囲から、車上制御部114は、他の列車の在線範囲に含まれておらず、自列車110がこれから確保しようとしている進路に含まれる線路と転てつ器を抽出し、これを走行を許可する範囲とする。
【0060】
図10の例では、先行列車1000は、駅Aに進入完了するまで転てつ器901を進路に含んでいるので、転てつ器901はその在線範囲に含まれる。よって、後発列車1001の車上制御部114は、先行列車1000が駅Aに進入完了するまでA駅を出発するための走行を許可する範囲を更新できず、A駅からB駅への進路の構成ができない。
【0061】
先行列車1000が駅Aに進入完了すると、その在線範囲から転てつ器901が外れるので、後発列車1001の車上制御部114は、A駅を出発するための走行を許可する範囲を更新することができ、その範囲としてA駅の下り線、転てつ器901、転てつ器902、B駅下り線を設定でき、在線範囲及び進路も設定できる。
【0062】
図5は、本実施例における車上通信部112の動作例を示すフローチャートである。
【0063】
車上通信部112は、本システムの起動時に本処理(S500)を開始する。
【0064】
S500にて、車上通信部112は、本処理を開始し、S501へ遷移する。
【0065】
S501にて、車上通信部112は、車上制御部114からダイヤの送信要求を受けたか確認する。車上通信部112は、車上制御部114からダイヤの送信要求を受けたとき(S501のYes)、S502へ遷移する。車上通信部112は、車上制御部114からダイヤの送信要求を受けていないとき(S501のNo)、S503へ遷移する。
【0066】
S502にて、車上通信部112は、車上制御部114から受信したダイヤをダイヤ管理装置100へ送信する。その後、車上通信部112は、S503へ遷移する。
【0067】
S503にて、車上通信部112は、ダイヤ管理装置100からダイヤを受信したか確認する。車上通信部112は、ダイヤ管理装置100からダイヤを受信したとき(S503のYes)、S504へ遷移する。車上通信部112は、ダイヤ管理装置100からダイヤを受信していないとき(S503のNo)、S505へ遷移する。
【0068】
S504にて、車上通信部112は、ダイヤ管理装置100から受信したダイヤを車上ダイヤ記憶部113へ送信し、車上制御部114へ送信させる。その後、車上通信部112は、S505へ遷移する。
【0069】
S505にて、車上通信部112は、車上制御部114から自列車の在線範囲の送信要求を受けたか確認する。車上通信部112は、車上制御部114から自列車の在線範囲の送信要求を受けたとき(S505のYes)、S506へ遷移する。車上通信部112は、車上制御部114から自列車の在線範囲の送信要求を受けていないとき(S505のNo)、S507へ遷移する。
【0070】
S506にて、車上通信部112は、自列車の在線範囲をダイヤ管理装置100へ送信する。その後、車上通信部112は、S507へ遷移する。
【0071】
S507にて、車上通信部112は、ダイヤ管理装置100から全列車在線範囲を受信したか確認する。車上通信部112は、ダイヤ管理装置100から全列車在線範囲を受信したとき(S507のYes)、S508へ遷移する。車上通信部112は、ダイヤ管理装置100から全列車在線範囲を受信していないとき(S507のNo)、S501へ遷移する。
【0072】
S508にて、車上通信部112は、全列車在線範囲を車上ダイヤ記憶部113へ送信し、車上制御部114へ送信させる。その後、車上通信部112は、S501へ遷移する。
【0073】
次に、本実施例におけるダイヤ管理装置100の地上通信部102の動作を中心に説明する。
【0074】
図6は、本実施例における地上通信部102の動作例を示すフローチャートである。
【0075】
地上通信部102は、本システムの起動時に本処理(S600)を開始する。
【0076】
S600にて、地上通信部102は、本処理を開始し、S601へ遷移する。
【0077】
S601にて、地上通信部102は、列車制御装置111から更新されたダイヤを受信したか確認する。地上通信部102は、列車制御装置111から更新されたダイヤを受信したとき(S601のYes)、S602へ遷移する。地上通信部102は、列車制御装置111から更新されたダイヤを受信していないとき(S601のNo)、S604へ遷移する。
【0078】
S602にて、地上通信部102は、受信した更新されたダイヤを制御対象列車ダイヤ記憶部101へ送信する。その後、地上通信部102は、S603へ遷移する。
【0079】
S603にて、地上通信部102は、受信した更新されたダイヤを制御対象となっている全ての列車110の列車制御装置111へ送信する。その後、地上通信部102は、S604へ遷移する。
【0080】
S604にて、地上通信部102は、列車制御装置111から在線範囲を受信したか確認する。地上通信部102は、列車制御装置111から在線範囲を受信したとき(S604のYes)、S605へ遷移する。地上通信部102は、列車制御装置111から在線範囲を受信していないとき(S604のNo)、S601へ遷移する。
【0081】
S605にて、地上通信部102は、在線範囲を制御対象列車ダイヤ記憶部101へ送信する。その後、地上通信部102は、S606へ遷移する。
【0082】
S606にて、地上通信部102は、制御対象列車ダイヤ記憶部101へ全列車在線範囲の送信を要求し、受信する。その後、地上通信部102は、S607へ遷移する。
【0083】
S607にて、地上通信部102は、全列車在線範囲を制御対象の全ての列車110の列車制御装置111へ送信する。その後、地上通信部102は、S601へ遷移する。
【0084】
本実施例により、地上側に列車運行管理装置を設けずに、列車運行管理システムを構築することができる。