特許第6836718号(P6836718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836718
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20210222BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B60K35/00 A
   G02B27/01
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-99314(P2017-99314)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-192962(P2018-192962A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小池 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高頭 克衛
【審査官】 菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234114(JP,A)
【文献】 特開平09−156399(JP,A)
【文献】 特開2014−085539(JP,A)
【文献】 実開昭54−158162(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3174297(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表す表示光を出射する表示器と、
前記表示光を反射する反射部と、
前記反射部に設けられた被支持部と、
前記被支持部を回転軸として回転可能に支持する支持部と、
前記被支持部を前記支持部に押し付ける弾性部材と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記弾性部材は、一端側に貫通穴部が形成され、他端側にフック部が形成された板バネであり、
前記フック部が係止される係止部と、前記貫通穴部を介して前記弾性部材がネジ固定されるネジ穴部と、が前記回転軸と直交して前記支持部を挟むように設けられ、
前記弾性部材の前記フック部と前記貫通穴部の間にある押圧部により前記被支持部を前記支持部に押し付け、
前記弾性部材は、持ち手部が一端部に形成されている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
画像を表す表示光を出射する表示器と、
前記表示光を反射する反射部と、
前記反射部に設けられた被支持部と、
前記被支持部を回転軸として回転可能に支持する支持部と、
前記被支持部を前記支持部に押し付ける弾性部材と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記弾性部材は、一端側に貫通穴部が形成され、他端側にフック部が形成された板バネであり、
前記フック部が係止される係止部と、前記貫通穴部を介して前記弾性部材がネジ固定されるネジ穴部と、が前記回転軸と直交して前記支持部を挟むように設けられ、
前記弾性部材の前記フック部と前記貫通穴部の間にある押圧部により前記被支持部を前記支持部に押し付け、
前記弾性部材は、前記貫通穴部と前記押圧部の間に屈曲部が形成されている、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、持ち手部が一端部に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記反射部を収容する筐体を備え、
前記反射部は前記ネジ穴部を介して前記筐体にネジ固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の画像を表す表示光を反射する反射部材を回転可能に支持する支持構造を有するヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射部材を回転可能に支持する第2支持部と、反射部材の他端部に設けられ第2支持部に支持される第2被支持部と、が実質的に点接触または線接触して組み付けられると共に、第2弾性部材S2によって反射部材の回転軸と直交する方向に第2支持部と第2被支持部とを互いに押し付ける、反射部材の支持構造を有するヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)が開示されている。このHUD装置の構成によれば、車両の走行などにより生じた揺れが伝達してHUD装置が振動しても反射部材の振動が抑制されて、視認される表示像のぶれが低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−85539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第2支持部と第2被支持部とを挟む断面略コの字状の板バネである第2弾性部材を弾性変形させて組み付けなければならず組み付け性に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、HUD装置外部から与えられた振動により異音が発生する虞を低減しつつ組み付け性の良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を表す表示光を出射する表示器と、
前記表示光を反射する反射部と、
前記反射部に設けられた被支持部と、
前記被支持部を回転軸として回転可能に支持する支持部と、
前記被支持部を前記支持部に押し付ける弾性部材と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記弾性部材は、一端側に貫通穴部が形成され、他端側にフック部が形成された板バネであり、
前記フック部が係止される係止部と、前記貫通穴部を介して前記弾性部材がネジ固定されるネジ穴部と、が前記回転軸と直交して前記支持部を挟むように設けられ、
前記弾性部材の前記フック部と前記貫通穴部の間にある押圧部により前記被支持部を前記支持部に押し付け、
前記弾性部材は、持ち手部が一端部に形成されている、
ように構成する。
【0007】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を表す表示光を出射する表示器と、
前記表示光を反射する反射部と、
前記反射部に設けられた被支持部と、
前記被支持部を回転軸として回転可能に支持する支持部と、
前記被支持部を前記支持部に押し付ける弾性部材と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記弾性部材は、一端側に貫通穴部が形成され、他端側にフック部が形成された板バネであり、
前記フック部が係止される係止部と、前記貫通穴部を介して前記弾性部材がネジ固定されるネジ穴部と、が前記回転軸と直交して前記支持部を挟むように設けられ、
前記弾性部材の前記フック部と前記貫通穴部の間にある押圧部により前記被支持部を前記支持部に押し付け、
前記弾性部材は、前記貫通穴部と前記押圧部の間に屈曲部が形成されている、
ように構成する。
【0008】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の
前記弾性部材は、持ち手部が一端部に形成されている、
ように構成することが好ましい。
【0009】
本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
前記反射部を収容する筐体を備え、
前記反射部は前記ネジ穴部を介して前記筐体にネジ固定される、
ように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、HUD装置外部から与えられた振動により異音が発生する虞を低減しつつ組み付け性の良好なヘッドアップディスプレイ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るHUD装置の構成概略図。
図2】同HUD装置の反射部及び反射部回転機構の斜視図。
図3】同HUD装置の反射部及び反射部回転機構の分解斜視図。
図4】同HUD装置の支持体の分解斜視図。
図5】同HUD装置の支持構造を示す側面図。
図6】同HUD装置の支持構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るHUD装置100を添付図面を参照して説明する。
【0013】
HUD装置100は、図1,2に示すように、筐体1と、表示器2と、平面鏡3と、凹面鏡(反射部)4と、反射部回転機構5と、図示しない回路基板と、を備える。
【0014】
HUD装置100は、表示器2に所定の画像を表示することにより出射した表示光Lを、平面鏡3と凹面鏡4とで反射させ、HUD装置100が搭載される車両の風防ガラスに照射する。風防ガラスに照射された表示光Lは、車両の搭乗者から見て風防ガラスの前方に虚像として視認される。所定の画像は、例えば、車両の走行速度やエンジン回転数などの車両情報を表す画像である。
【0015】
筐体1は、表示器2と、平面鏡3と、凹面鏡4と、反射部回転機構5と、回路基板(図示せず)を収容する。筐体1は、表示器2が出射した表示光Lの乱反射による迷光を抑制するため、内面が黒色の合成樹脂で構成されている。筐体1は、風防ガラスと対向する部分に、表示光Lを筐体1外に出射する開口部10が形成されている。開口部10は、アクリル樹脂などの透光性樹脂製のカバー11で覆われている。
【0016】
表示器2は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。表示器2は、回路基板から伝送された映像信号に応じた画像を表示して表示光Lを出射する。
【0017】
平面鏡3は、表示器2が出射した表示光Lを凹面鏡4に反射させる。平面鏡3により、表示光Lの光路を折り曲げて、筐体1内でより長くの光路長を確保できる。表示器2から風防ガラスに至るまでの光路長を長くすることで、虚像を風防ガラスから遠方に表示できる。
【0018】
凹面鏡4は、平面鏡3が反射した表示光Lを拡大して風防ガラスに向けて反射する。また、凹面鏡4の凹面は、湾曲した風防ガラスの形状による歪みを相殺する凹面形状となっている。
【0019】
凹面鏡4は、反射部回転機構5に回転可能に支持され、反射部回転機構5の動力により回転軸AX周りに回転する。凹面鏡4は、回転軸AX周りに回転することで、風防ガラスに出射される表示光Lの位置を上下に調整できる。この調整により、搭乗者の視線の高さに合った適切な位置に虚像を表示できる。
【0020】
凹面鏡4は、合成樹脂製の凹状の基材の表面に、反射膜を形成した鏡部40を有する。この鏡部40は、合成樹脂製のホルダ部41に接着固定されている。
【0021】
ホルダ部41は、一端部(−X方向側端部)に第1被支持体6が取り付けられ、他端部(+X方向側端部)に第2被支持部80が形成されている。第1被支持体6には、後述する第1支持体7の動力を伝達するギヤ部62が形成されている。
【0022】
反射部回転機構5は、第1支持体7と、第2支持体9と、から構成されている。第1支持体7及び第2支持体9は、筐体1にネジで固定されている。
【0023】
第1支持体7は、モータ71と、ギヤ72と、スイッチ77と、を有し、第1被支持体を回転軸AX周りに回転可能に支持する。モータ71は、凹面鏡4を回転軸AX周りに回転させるための動力を生む、ステッピングモータである。ギヤ72は、モータ71の回転に伴って回転し、ギヤ部62と噛み合うギヤであり、ギヤ部62に動力が伝わることにより凹面鏡4は回転する。スイッチ77は、モータ71の回転によりギヤ部62が所定の位置まで回転すると、ギヤ部62の下端部62aと接触し、オンされる。このスイッチ77がオンされた位置を基点にモータ71の回転量を数えることで凹面鏡4の回転位置を正確に把握できる。
【0024】
第1被支持体6と第1支持体7には、第1支持体7と第1被支持体6とを互いに押圧して固定する第1弾性部材S1が取り付けられている。
【0025】
第2支持体9は、図4に示すように、支持部90と、ネジ穴部91と、係止部92と、第2弾性部材S2を有する。第2支持体9は、第2被支持部80を回転軸AX周りに回転可能に支持する。
【0026】
支持部90は、第2被支持部80を支持する軸受である。ネジ穴部91は、第2弾性部材S2と共に第2支持体9を筐体1にネジ固定するための穴である。係止部92は、後述する第2弾性部材S2のフック部S22が係止される貫通穴である。
【0027】
第2弾性部材S2は、一端側(+Z方向側)に貫通穴部S21を有し、他端部(−Z方向側端部)にフック部S22を有する板バネである。第2弾性部材S2は、フック部S22が係止部92に挿通された状態で、貫通穴部S21とネジ穴部91にネジBを挿通して固定すると、押圧部S23が支持部90に支持された第2被支持部80に当接する。つまり、回転軸AXと直交して支持部90を挟むように貫通穴部S21とフック部S22が形成され、支持部90に対向する位置に押圧部S23が位置する。これにより、第2被支持部80が支持部90に押し付けられる。
【0028】
また、第2弾性部材S2は、貫通穴部S21と押圧部S23との間に、屈曲部S24が形成されている。図6(a)に示すように、この屈曲部S24が形成されていない場合においては、ネジBによる締め付けにより第2弾性部材S2が貫通穴部S21を中心に歪みが生じると、第2被支持部80と押圧部S23との間に隙間Gが生じる可能性がある。この場合、車両の走行などにより生じた揺れが伝達してHUD装置100が振動すると、異音が生じる。
一方で、図6(b)に示すように、屈曲部S24が形成されている場合においては、ネジBによる締め付けにより第2弾性部材S2が貫通穴部S21を中心に歪みが生じても、この歪みが屈曲部S24より他端側(−Z方向側)の押圧部S23に伝わらず、第2被支持部80と押圧部S23との間に隙間Gが生じる虞が少ない。
【0029】
さらに、第2弾性部材S2の一端部(+Z方向側端部)には、上方(+Y方向)に向かって屈曲して延びる持ち手部S25を有する。HUD装置100を組立する作業者は、この持ち手部S25を持って組み付けることができるため、組み付け性が良好となる。
【0030】
第1被支持体6と第1支持体7には、モータ71からギヤ部62に動力を伝達する経路におけるバックラッシュを低減する方向に互いに引き合う第3弾性部材S3が取り付けられている。
【0031】
以上のように、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置100は、画像を表す表示光Lを出射する表示器2と、表示光Lを反射する反射部4と、反射部4に設けられた被支持部80と、被支持部80を回転軸AXとして回転可能に支持する支持部90と、被支持部80を支持部90に押し付ける弾性部材S2と、を備えたヘッドアップディスプレイ装置100である。また、弾性部材S2は、一端側に貫通穴部S21が形成され、他端側にフック部S22が形成された板バネである。そして、フック部S22が係止される係止部92と、貫通穴部S21を介して弾性部材S2がネジ固定されるネジ穴部91と、が回転軸AXと直交して支持部90を挟むように設けられており、弾性部材S2のフック部S22と貫通穴部S21の間にある押圧部S23により被支持部80を支持部90に押し付ける、ように構成した。
このように構成することで、断面略コの字状の板バネで挟む構成に比べ、弾性変形させて組み付ける必要がなくなるため、組み付け性が改善した。
【0032】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置100は、弾性部材S2の貫通穴部S21と押圧部S23の間に屈曲部S24が形成されている。
このように構成することで、ネジBによる締め付けトルクが強すぎて第2弾性部材S2が貫通穴部S21を中心に歪みが生じても、この歪みが屈曲部S24より他端側(−Z方向側)の押圧部S23に伝わらず、第2被支持部80と押圧部S23との間に隙間Gが生じる虞が少ない。つまり、組み付け時のネジBの組付けトルクの制限が緩和され、組み付け性が良好である。
【0033】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置100は、弾性部材S2の一端部に持ち手部S25が形成されている。
このように構成することで、この持ち手部S25を持って組み付けることができるため、組み付け性が良好である。
【0034】
また、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置100は、反射部4がネジ穴部91を介して筐体1にネジ固定される。
このように構成することで、弾性部材S2を第2支持体9にネジ固定する工程と、第2支持体9を筐体1にネジ固定する工程が、1つの工程ででき、組み付け性が良好である。
【0035】
以上、本発明の一実施形態に係るHUD装置100を説明した。本発明は、HUD装置100に限定されるものでなく、主旨を逸脱しない範囲で実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、車両に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に適している。
【符号の説明】
【0037】
100 :HUD装置(ヘッドアップディスプレイ装置)
1 :筐体
2 :表示器
3 :平面鏡
4 :凹面鏡(反射部)
80 :第2被支持部(被支持部)
9 :第2支持体
90 :支持部
91 :ネジ穴部
92 :係止部
S2 :弾性部材
S21 :貫通穴部
S22 :フック部
S23 :押圧部
S24 :屈曲部
S25 :持ち手部
図1
図2
図3
図4
図5
図6