【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]組換え成熟レニンの調製
(1)組換えプロレニンの精製
Hisタグ標識プロレニン発現CHO細胞を高密度培養用ユニットAD1000を使用し、無血清培地BD select(BD Biosciences)で1週間培養した。培養上清を回収し、4℃、1000rpm、10分で遠心し、上清を回収した。上清をHisタグ精製用のアフィニティカラム(Talon Metal Affinity Resin(Clontech))に通した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、150mMイミダゾール溶液で溶出し、溶出液を1mLずつ、10フラクション回収した。回収したフラクションについてSDS-PAGE解析を実施し、プロレニンが溶出されていることを確認した後、全てのフラクションをまとめて、PBSで一晩透析を実施した。翌日、透析後の溶液を回収し、限外濾過カラム(Amicon Ultra 10K)を使用して濃縮し、プロレニン溶液を回収した。
【0046】
(2)組換え成熟レニンの精製
(1)で精製した組換えプロレニンに、重量比1:50となるようにトリプシン(Sequencing grade modified Trypsin, Promega)溶液(0.1mg/mL, 50mM Acetate)を添加し、4℃で1時間反応させ、15000rpm,RT,5分遠心して上清を回収した。回収した上清について、20mM Tris-HCl(pH7.0)溶液でゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Superdex75 10/300)により精製を行った。SDS-PAGEによりフラクション解析を行い、成熟レニンが含まれるフラクションを回収した。回収した溶液について、PBSで一晩透析した。翌日、透析後の溶液を回収し、限外濾過カラム(Amicon Ultra 10K)を使用して濃縮を行った。
【0047】
(3)組換えプロレニンおよび組換え成熟レニンのSDS-PAGE解析
20μg/mLに調整した組換え成熟レニン溶液および組換えプロレニン溶液に、等量の100mM DTTを含む2×SDS-PAGE sample buffer(2×Laemmli sample buffer, BioRad)を添加し、95℃,5分で変性させた。調製したサンプルを10μL/laneでSDS-PAGE用のプレキャストゲル(Mini-PROTEAN PGX Precast Gel 4-20%)に添加した。ゲルを泳動装置にセットし、定電圧、200Vで24分間泳動した。ゲルを超純水で洗浄後、GelCode Blue Safe Proteinstain(Thermo Scientific)を添加して室温で2時間程度染色を行った。染色したゲルを超純水で脱色し、撮像した。その結果、組換えプロレニンおよび組換え成熟レニンが精製されていることが確認された(
図1)。
【0048】
[実施例2]成熟レニン特異的な抗体の取得
(1)マウス免疫
7-8週齢のBALB/cマウスおよびICRマウス(メス)に50μg/bodyの組換え成熟レニンとフロイント完全アジュバントの等量エマルジョンを腹腔投与した。以後2週間おきに、50μg/bodyの組換え成熟レニンとフロイント不完全アジュバントの等量エマルジョンを抗体価の上昇が確認されるまで2-5回腹腔投与した。
【0049】
(2)抗成熟レニン抗体産生ハイブリドーマの作製
十分な抗体価の上昇が確認されたマウスに、50μg/bodyの組換え成熟レニン溶液を腹腔投与した。3-4日後マウス脾臓を摘出し、脾臓細胞と、前もってRPMI1640で培養していたミエローマ細胞P3U1とPEGを用いて融合を実施した。融合後7-14日後の培養上清を、抗マウスイムノグロブリン抗体を固相化し、洗浄したプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、市販のビオチン化試薬(Sulfo-NHS-LC biotin, Thermo Scientific)でビオチン化した組換えレニン溶液(1μg/mL)もしくはビオチン化プロレニン溶液を添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、POD標識のストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、ABTSもしくはTMBを添加し、発色反応を行った。1.5M シュウ酸水溶液もしくは0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止し、405nmもしくは450nmの吸光を測定した。レニンに対する反応の高いクローンを選択し、限界希釈によるクローニングを経てモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを樹立した。
【0050】
(3)抗成熟レニン抗体の精製
ハイブリドーマを無血清培地で1-2週間ほど培養し、その培養上清を回収した。培養上清をProtein Gカラムに通し、抗体を結合させた。PBSによる洗浄後、溶出液(0.2M Glycine-HCl, pH2.5)で抗体を溶出し、中和液(1M Tris-HCl, pH9.0)を添加して中和した。抗体溶液をPBSで一晩透析し、限外濾過カラムで濃縮した。
【0051】
(4)ビオチン化成熟レニンおよびビオチン化プロレニンに対する反応性の検討
PBSで希釈した2μg/mLの抗マウスイムノグロブリン抗体溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSをアッセイプレートに添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSで希釈した抗成熟レニン抗体溶液を添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSで希釈した1μg/mLのビオチン化レニンおよびビオチン化プロレニンを添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識のストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。その結果、複数のクローンがビオチン化成熟レニンに対して高い特異性を示した(
図2)。
【0052】
[実施例3]市販抗体の反応性検討
PBSで希釈した2μg/mLの抗マウスイムノグロブリン抗体溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBEをアッセイプレートに添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSで希釈した1μg/mLの各市販抗体および自社抗体を添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSで希釈した1μg/mLのビオチン化レニンおよびビオチン化プロレニンを添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識のストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄した後、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。その結果、市販抗体11-6が成熟レニンに対して高い特異性を示した(
図3)。
【0053】
[実施例4]市販抗体の組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるアリスキレン添加時のレニン濃度の測定
(1)レニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの市販抗体12-12をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBEをアッセイプレートに添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した1μg/mLの組換え成熟レニン溶液と、200, 40, 8, 1.6, 0.32ng/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識市販抗体11-6をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0054】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加した。次いで、20μLの20μMレニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加し、さらに、20μLの組換え成熟レニン溶液とアリスキレン溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)およびレニン濃度キャリブレーターを添加した。37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0055】
その結果、市販抗体12-12と11-6の組み合わせサンドイッチELISAでは、アリスキレン添加時にレニン濃度とレニン活性が相関を示さなかった(
図4)。
【0056】
[実施例5]自社抗体RREN33H11とRREN21E10-19の組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるアリスキレン添加時のレニン濃度の測定
(1)レニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体RREN33H11溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した1μg/mLの組換え成熟レニン溶液と、200, 40, 8, 1.6, 0.32ng/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0057】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加した。次いで、20μLの20μMレニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加し、さらに、20μLの組換え成熟レニン溶液とアリスキレン溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)およびレニン濃度キャリブレーターを添加した。37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0058】
その結果、成熟レニンに対する特異性を指標に樹立した自社抗体RREN33H11とRREN21E10-19の組み合わせサンドイッチELISAでも、アリスキレン添加時にレニン濃度とレニン活性は相関を示さなかった(
図5)。
【0059】
[実施例6]アリスキレン添加時におけるビオチン化レニン捕捉能を用いたスクリーニング法の確立および活性型レニン特異的抗体の取得
(1)アリスキレン添加時におけるビオチン化レニン捕捉能の測定
PBSで希釈した2μg/mLの抗レニン抗体溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈し1μg/mLのビオチン化成熟レニン溶液と200ng/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものを添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0060】
その結果、アリスキレン添加時のビオチン化成熟レニン捕捉能を測定することで、アリスキレン存在時の成熟レニンに対する反応性を指標としたスクリーニング系を構築できた。また、アリスキレン添加時に成熟レニンに対する反応性が著しく減少するクローンが得られた(
図6)。
【0061】
[実施例7]自社抗体rREN-I-115とRREN21E10-19の組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるアリスキレン添加時のレニン濃度の測定
(1)レニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体rREN-I-115溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した1μg/mLの組換え成熟レニン溶液と、200, 40, 8, 1.6, 0.32ng/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0062】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加した。次いで、20μLの20μM レニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加し、さらに、20μLの組換え成熟レニン溶液とアリスキレン溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)およびレニン濃度キャリブレーターを添加した。37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0063】
その結果、アリスキレン存在下の成熟レニンに対する反応性を指標に選択した自社抗体rREN-I-115とRREN21E10-19の組み合わせサンドイッチELISAでは、レニン濃度とレニン活性が強い相関を示した(
図7)。
【0064】
[実施例8]自社抗体RREN63A8とRREN21E10-19との組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるアリスキレン添加時のレニン濃度の測定
(1)レニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体RREN63A8溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した1μg/mLの組換え成熟レニン溶液と、200, 40, 8, 1.6, 0.32ng/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0065】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加した。次いで、20μLの20μMレニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加し、さらに、20μLの組換え成熟レニン溶液とアリスキレン溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)およびレニン濃度キャリブレーターを添加した。37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0066】
その結果、rREN-I-115同様、アリスキレン存在時の成熟レニンに対する反応性を指標に選択したクローンRREN63A8を用いて組んだサンドイッチELISAでは、レニン濃度とレニン活性が相関を示した(
図8)。
【0067】
[実施例9]市販抗体12-12と11-6の組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるレニン阻害剤III添加時のレニン濃度の測定
(1)レニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの市販抗体12-12をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBEをアッセイプレートに添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した200ng/mLの組換え成熟レニン溶液と、2000, 400, 80, 16, 3.2ng/mLのレニン阻害剤III溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識市販抗体11-6をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0068】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加した。次いで、20μLの20μMレニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加し、さらに、20μLの組換え成熟レニン溶液とレニン阻害剤III溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)およびレニン濃度キャリブレーターを添加した。37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0069】
その結果、市販抗体の組み合わせは、レニン阻害ペプチド添加時にもレニン濃度とレニン活性の相関を示さなかった(
図9)。
【0070】
[実施例10]自社抗体rREN-I-115もしくはRREN33H11とRREN21E10-19の組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるレニン阻害剤III添加時のレニン濃度の測定
(1)レニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体rREN-I-115もしくはRREN33H11溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した200ng/mLの組換え成熟レニン溶液と、2000, 400, 80, 16, 3.2ng/mLのレニン阻害剤III溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0071】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加した。次いで、20μLの20μM レニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加し、さらに、20μLの組換え成熟レニン溶液とレニン阻害剤III溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)およびレニン濃度キャリブレーターを添加した。37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0072】
その結果、アリスキレン添加時同様、RREN33H11の組み合わせはレニン活性との相関を示さなかったが、rREN-I-115の組み合わせはレニン活性と強い相関を示した(
図10)。
【0073】
[実施例11]自社抗体rREN-I-115とRREN21E10-19の組み合わせを用いたサンドイッチELISAによるアリスキレン添加時のプロレニン濃度の測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体rREN-I-115もしくはRREN33H11溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した200, 50, 8, 0.4ng/mLの組換えプロレニン溶液と、10μg/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0074】
その結果、rREN-I-115とRREN21E10-19の組み合わせを用いたサンドイッチELISAでは、アリスキレンと結合したプロレニンも測定しないことが確認された(
図11)。
【0075】
[実施例12] エピトープの同定
(1)レニン切断断片の作成
全長のレニン遺伝子配列を適当に断片化(図のA, B, C, D, E, A3, A13, A23)し、末端に制限酵素消化サイトが付加したレニン断片配列を作製した(
図12)。GST発現ベクターに、これらレニン断片配列を制限酵素を用いて導入し、N末端にGSTが融合したレニン切断断片発現ベクターを作製した。作製した発現ベクターを大腸菌DH5αに遺伝子導入し、プラスミドの増幅を行った。得られたプラスミドを大腸菌BL21に導入し、LB培地にて一晩振盪培養した。その後、菌液を10倍希釈になるようにLB培地で希釈し、1時間振盪培養した。1mM IPTGで発現誘導し、さらに3時間振盪培養した。15000rpm、室温、1分間遠心して菌体を回収した。菌体に0.01% Tween 20含有PBSを300μL添加し、懸濁液を15分間超音波破砕した。超音波破砕液を15000rpm、室温、10分間遠心して上清を回収し、切断断片液とした。
【0076】
(2)ウェスタン・ブロッティングによるエピトープの同定
切断断片液に半量の3×SDS-PAGEサンプルバッファーを添加し、96℃で5分間加熱変性した。調製したサンプルをSDS-PAGE用ゲル(Mini PROTEAN TGX Precast Gel, 4-20%, Bio rad)に7.5μL(25μL culture分)添加し、定電圧200Vで30分間泳動した。SDS-PAGE用ゲルをi-Blot(Thermo scientific)を用いてPVDF膜に転写し、そのPVDF膜を1% スキムミルク含有PBSに浸してブロッキングを行った。PVDF膜を1μg/mLのRREN63A8及び抗GST抗体(GST2-1)を含む1%スキムミルク含有PBSに浸して振盪し、一次反応を行った。PVDF膜をPBS-Tで5分間、3回洗浄し、1% スキムミルク含有PBSで1000倍に希釈したPOD標識抗マウス抗体液に浸して振盪し、二次反応を行った。PVDF膜をTween 20含有PBSで5分間、3回洗浄し、PVDF膜に発光基質(ECL Prime, GE Healthcare)を添加し、余分な液を除いてからLAS500(GE Healthcare)で発光を確認した。
【0077】
その結果、RREN63A8は、REN-A、A13、A23、A3のそれぞれを認識したが、REN-B、C、D、Eは認識しなかった(
図13)。RREN63A8は、REN-A3を認識することから、レニンアミノ酸配列の30番目から86番目の57アミノ酸の範囲を認識することが示された。さらに、REN-Dを認識しないことから、レニンアミノ酸配列30番目から57番目の28アミノ酸の範囲を認識する可能性も示唆された。
【0078】
(3)抗体同士の阻害試験
PBSで2μg/mLに希釈した3種類の自社抗体(rREN-d-104-1、rREN-I-115、RREN63A8)をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBEをアッセイプレートに添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈した200ng/mLのレニンと、1% BSA-PBSで希釈した800μg/mLの3種類の自社抗体もしくは1% BSA-PBSを等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈した1μg/mLのビオチン化RREN21E10-19を添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識のストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0079】
その結果、3種類の抗体すべての組み合わせで、抗原とともに添加した阻害抗体により反応が阻害された(
図14)。これにより、rREN-d-104-1およびrREN-I-115は、RREN63A8と同一のエピトープを認識することが示された。
【0080】
[実施例13] 自社抗体rREN-I-115もしくはRREN33H11とRREN21E10-19の組み合わせサンドイッチによるVTP-27999添加レニン濃度測定
(1)レニン濃度測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体rREN-I-115もしくはRREN33H11溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した200ng/mLの組換えレニン溶液と、100, 20, 4, 0.8, 0.16, 0nMのVTP-27999溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0081】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加し、次いで、20μLの20μM レニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加した。さらに、20μLの組換えレニン溶液とVTP-27999溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)及びレニン濃度キャリブレーターを添加し、37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0082】
その結果、アリスキレン添加時同様、RREN33H11の組み合わせはレニン活性との相関を示さなかったが、rREN-I-115の組み合わせはレニン活性と強い相関を示した(
図15)。
【0083】
[実施例14] 自社抗体rREN-d-104-1とRREN21E10-19との組み合わせサンドイッチによるアリスキレン添加レニン濃度の測定
(1)レニン濃度測定
PBSで希釈した2μg/mLの自社抗体RREN63A8溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、PBSで希釈した400ng/mLの組換えレニン溶液と、200, 40, 8, 1.6, 0.32ng/mLのアリスキレン溶液を等量ずつ混和したものをアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSで希釈したPOD標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。PBS-Tで3回洗浄し、TMBを添加し、発色反応を行った。0.5M H2SO4を添加し、発色反応を停止して、450nmの吸光を測定した。
【0084】
(2)レニン活性の測定
160μLのアッセイバッファー(50mM Tris, 0.1M NaCl, 10mM EDTA)を白色プレートに添加し、次いで、20μLの20μM レニン蛍光基質(DMSO, Cayman Chemical)を添加した。さらに、20μLの組換えレニン溶液とアリスキレン溶液を等量ずつ混和したもの(濃度測定に使用したものと同様のサンプル)及びレニン濃度キャリブレーターを添加し、37℃で1時間反応させ、490nmの蛍光(励起光:340nm)を検出した。
【0085】
その結果、rREN-I-115同様、アリスキレン存在時のレニンに対する反応性を指標に選択したクローンrREN-d-104-1を用いて組んだサンドイッチELISAでは、レニン濃度とレニン活性が相関を示した(
図16)。
【0086】
[実施例15] アリスキレン添加検体のレニン濃度測定
PBSで希釈した5μg/mLの市販抗体12-12、または自社抗体rREN-I-115、RREN33H11、もしくはrREN-d-104-1溶液をアッセイプレートに添加し、固相化した。PBS-Tで3回洗浄し、1% BSA-PBSを添加し、ブロッキングを行った。PBS-Tで3回洗浄し、含有する成熟レニンがすでに値付けされた2種類の市販のヒト血漿にアリスキレンを1000nMとなるように添加し、約1時間室温で静置したものを検体希釈液(富士レビオ社製)で5倍に希釈してアッセイプレートに添加し、一次反応を行った。洗浄液(富士レビオ社製)で3回洗浄し、2% BSAを含むTris緩衝液で1μg/mLに希釈したビオチン化標識11-6もしくはビオチン化標識RREN21E10-19をアッセイプレートに添加し、二次反応を行った。洗浄液(富士レビオ社製)で3回洗浄し、2% BSAを含むTris緩衝液で0.01μg/mLに希釈したALP標識ストレプトアビジン溶液を添加し、三次反応を行った。洗浄液(富士レビオ社製)で3回洗浄し、基質液(富士レビオ社製)を添加し、37℃で5分間反応させた後、化学発光を検出した。
【0087】
その結果、組換えレニンにアリスキレンを添加したとき同様、市販抗体12-12と11-6の組み合わせ、または、自社抗体RREN33H11とRREN21E10-19の組み合わせは、アリスキレン添加時のレニン濃度はほとんど変わらなかったが、rREN-I-115またはrREN-d-104-1を含む組み合わせでは、アリスキレン添加時にレニン濃度が減少した(
図17)。
【0088】
このことから、アリスキレンが結合して活性を持たないレニンを、rREN-I-115およびrREN-d-104-1が認識していないことが示された。