【実施例】
【0044】
実施例のための材料および方法
免疫化およびVHHライブラリ作製
ラマに、0、7、14、21、28および35日目に、精製されたRSV Fタンパク質DS−Cav1 167μgを各回皮下に注射した。DS−Cav1は、融合前コンホメーションで安定化される組換えRSV Fタンパク質である(McLellanら、2013年)。最初の2回の注射は、アジュバントとしてポリ−IC(注射1回当たり375μg)と共に実行し、一方で最後の4回の注射に対してはGerbu LQ#3000を、アジュバントとして使用した。全ての免疫化の前に採血し、血漿を調製して血清転換を評価した。40日目に、抗凝固処理血液100mlを採取して、リンパ球を調製した。
【0045】
末梢血リンパ球からのトータルRNAを、オリゴdTプライマーによる第1鎖cDNA合成の鋳型として使用した。このcDNAを使用して、VHHをコードしている配列をPCRによって増幅し、PstIおよびNotIで消化し、ファージミドベクターpHEN4のPstIおよびNotI部位にクローニングした。エレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)TG1細胞に、組換えpHEN4ベクターを形質転換し、約5×10
8個の独立した形質転換体のVHHライブラリを得た。95個の独立した形質転換体のPCR分析によって明示されるように、形質転換体の87%は、正しい挿入サイズでベクターを保有した。
【0046】
ライブラリ貯蔵物500μlに、VCS M13ヘルパーファージを感染させて、ファージ表面にVHH配列を(M13 PIIIとの融合で)提示させ、その配列を生物パニングに使用した。
【0047】
細胞
Hep−2細胞(ATCC、CCL−23)、ベロ細胞(ATCC、CCL−81)およびHEK−293T細胞(M.Hall博士からの贈与物)を、10%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L−グルタミン、非必須アミノ酸(Invitrogen、Carlsbad、California)および1mMピルビン酸ナトリウムで補充されたDMEM培地中で増殖させた。
【0048】
ウイルス
RSVのAサブタイプであるRSV A2(VR−1540、ATCC、Rockville)およびRSVのBサブタイプであるRSV B49(BE/5649/08臨床株、M.Van Ranst教授から得た、Tanら、2013年)を、1%FCSを含有する増殖培地の存在下で、MOI 0.1で単層のHep−2細胞に感染させることにより増やした。感染5日後に、細胞および増殖培地を採取し、プールし、遠心分離(450×g)によって澄ませた。ウイルスを濃縮するために、澄ませた上清を、10%ポリエチレングリコール(PEG6000)の存在下で、4℃で4時間培養した。遠心分離(3000×gで30分間)後に、ペレットを、20%スクロースを含有するハンクス平衡化塩溶液(HBSS)に再懸濁し、分注し、液体窒素中でスナップ凍結し、−80℃で貯蔵した。
【0049】
RSV中和活性アッセイ
ラマ血漿を、プラークアッセイによってRSV A2およびRSV B49に対する中和活性について試験した。ベロ細胞を、96ウェルプレート(15000個細胞/ウェル)に播種した。次の日、血漿サンプルの希釈系列を、1%ペニシリンおよび1%ストレプトマイシンで補充されたOpti−MEM(Gibco)に調製した(1/4希釈で開始する1/3希釈系列)。同体積のRSV A2懸濁液(1.4PFU/μlに希釈した)またはRSV B49(2.8PFU/μlに希釈した)を、血漿サンプルに添加し、得られた混合物を、37℃で30分間培養した。その後、混合物50μlを、Opti−MEMで洗浄したベロ細胞に添加し、細胞を、37℃で3時間培養した。次に、2%熱不活化FCS、2mM L−グルタミン、非必須アミノ酸および1mMピルビン酸ナトリウムで補充されたDMEM培地中の1.2%アビセル50μlを各ウェルに添加し、感染を37℃で3日間継続させた。ウェルに2%パラホルムアルデヒド溶液50μlを添加することによって、細胞を、室温で30分間固定した。固定後に、細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄し、0.2%トライトンX−100を含むPBS 50μlで10分間透過化し、1%BSAを含有するPBSでブロッキングした。その後、ポリクローナルヤギ抗RSV血清(AB1125、Chemicon International)を添加した(0.5% BSAおよび0.001%トライトンX−100を含有するPBS[PBS/BSA]に1/2000)。PBS/BSAで3回洗浄した後、細胞を、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヤギIgG(SC2020、サンタクルーズ)と30分間培養した。その後ウェルを、PBS/BSAで4回およびPBSで1回洗浄した。最後に、プラークを、TrueBlueペルオキシダーゼ基質(KPL、ゲイサーズバーグ)をアプライすることによって可視化した。粗ピキア・パストリス上清および精製したVHHのRSV中和活性(下記参照)も、このアッセイで決定した。
【0050】
DS−Cav1結合VHHの単離
パニングを1回転実行して、融合前F(DS−Cav1)結合ファージを富化した。マイクロタイタープレート(II型、F96 Maxisorp、Nunc)の1ウェル(ウェルA1)を、PBS中のDS−Cav1 20μgで終夜コーティングした。このウェルを、コーティングしていない陰性対照ウェル(ウェルA12)とともにSEA BLOCKブロッキング緩衝液(Thermo Scientific)で1時間ブロッキングした。次に、SEA BLOCKブロッキング緩衝液100μl体積中の1012ファージを、これら2つのウェルに添加した。1時間後に、結合していないファージ粒子を除去し、ウェルをPBST(PBS+0.5% Tween20)で10回洗浄した。次いで、保持されているファージを、ウェルにTEA溶液(14%トリエチルアミン[Sigma]pH10)100μlからなるアルカリ性溶液を正確に10分間アプライすることによって溶出させた。次いで、解離したファージを、1M TRIS−HCl pH8.0 100μlを含む滅菌チューブに移した。PBS中の溶出したファージの10倍段階希釈物を調製し、この希釈系列10μlを使用して、TG1細胞(ファージディスプレイコンピテント大腸菌細胞)90μlに感染させた。感染を、37℃で30分間させておき、その後細菌を、100μg/mlアンピシリンおよび1%グルコースを含むLB/寒天プレートに播いた。このパニング手順による抗原特異的ファージの富化を、陰性対照ウェルから溶出されたファージミド粒子の数と抗原コートウェルから溶出されたファージミド粒子の数を比較することによって評価した。
【0051】
90個のアンピシリン抵抗性コロニーを、ペリプラズム中のF特異的VHHの存在に対するELISAによるさらなる分析のために無作為に選択した。これらのコロニーを、アンピシリンを含む新しいLB寒天プレートに先ず移し、次いでそれを使用して、24ディープウェルプレート中の100μg/mlアンピシリンを含むテリフィックブロス(TB)培地1mlに接種した。接種したプレートを、振盪しながら37℃で5時間培養した。VHH発現を、1mM濃度までイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによって誘導した。その後プレートを、振盪しながら37℃で終夜培養した。次の日、細菌細胞を、遠心分離(3200rpmで12分間)によってペレット化し、上清を除去した。細胞ペレットを、TES緩衝液(0.2M TRIS−HCl pH8、0.5mM EDTA、0.5Mスクロース)200μlに再懸濁し、プレートを4℃で30分間振盪した。次に、再懸濁した細胞に水を添加して、浸透圧ショックを誘導した。浸透圧ショックは、VHHを含むペリプラズムタンパク質の放出をもたらす。ディープウェルプレートを、振盪しながら4℃で1時間培養し、遠心分離し、ペリプラズム抽出物を含有する上清を回収した。4枚のマイクロタイタープレートを、PBS中で、1ウェル当たりタンパク質100ngで終夜コーティングした。2枚は、融合後コンホメーションのF(McLellanら、2011年)とBSAの交互の列、他の2枚は、DS−Cav1とBSAの交互の列を含む。コーティングしたマイクロタイタープレートを、次いで洗浄し、PBS中の1%粉乳でブロッキングした。マイクロタイタープレートを洗浄した後、ペリプラズム抽出物100μlをウェルに添加し、続いて4℃で1時間培養した。プレートを洗浄し、PBS中の1/2000希釈抗HAモノクローナル抗体(MMS−101P Biolegend)50μlを、プレートに室温で添加し1時間放置した。洗浄後、PBS中のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)連結抗マウスIgG(NXA931、GE Healthcare)1/2000希釈物を添加し、プレートを1時間培養した。次に、プレートを洗浄し、TMB基質(テトラメチルベンジジン、BD OptEIA[商標])50μlを、全てのウェルに添加した。反応を、1M H
2SO
4 50μlの添加によって停止させ、その後450nmの吸光度を、iMark Microplate Absorbance Reader(Bio Rad)で測定した。DS−Cav1または融合後Fに対して得られたOD450値が、BSAに対して得られたOD450値より少なくとも2倍高かった全ペリプラズム画分を、さらなる分析のために選択した。対応する細菌を、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を使用するプラスミド単離のために1/2000アンピシリンを含むLB培地3ml中で増殖させた。クローニングしたVHHのcDNA配列を、M13RSプライマー(5’CAGGAAACAGCTATGACC3’)を使用してサンガー配列決定法によって決定した。
【0052】
ピキア・パストリス発現ベクターへのVHHのクローニングおよびピキア・パストリスの形質転換
VHH配列、ならびにパニング後に保持されたVHH配列を、以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマー(5’GGCGGGTATCTCTCGAGAAAAGGCAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGG3’;5’CTAACTAGTCTAGTGATGGTGATGGTGGTGGCTGGAGACGGTGACCTGG3’)を使用してそれぞれのpHEN4プラスミドからPCR増幅した。得られたPCR産物を、XhoIおよびSpeIで消化し、XhoI/SpeI消化したpKai61骨格にライゲートした。pKai61ベクターの起原については、Schoonoogheら、2009年に記述されている。VHH配列を、S・セレビシエ(S.cerevisiae)a接合因子シグナル配列のわずかに修飾されたバージョンとフレームを合わせてクローニングする。このシグナル配列は、酵母分泌系へタンパク質を導き、ERおよびゴルジにおいてさらにプロセシングされ、細胞外培地への分泌前に完全に除去される。野生型プレプロシグナルとは対照的に、この修飾されたバージョンは、GluAlaリピートをコードする配列を含有しない。(ここでシグナルペプチドは、このリピートを必要とせずにKex2エンドペプチダーゼによって効率的に切断される。)コードされている遺伝子は、C末端6×Hisタグを含有し、メタノール誘導可能なAOX1プロモーターの制御下にある。プラスミドは、細菌および酵母細胞における選択のためにゼオシン抵抗性マーカーを含有する。P.パストリスに形質転換する前に、ベクターを、AOX1プロモーターにおいて(Pmelで)直鎖化して、ゲノムへの安定的な組み込みのために内在性のAOX1遺伝子座における相同組換えを促進させた。得られたベクターを、pKai−DS−Cav1−4、pKai−DS−Cav1−L66、pKai−VHH−F2およびpKai−VHH−F58と命名し、これらを使用して、Lin−Cereghinoら、2005年に記述されているコンデンス形質転換(condensed transformation)プロトコルを使用してピキア・パストリスGS115株の形質転換を行った。
【0053】
ピキア・パストリスによって産生されるVHHの精製
形質転換したピキア・パストリスクローンによるVHHの発現を、2ml培養物で最初に分析した。1日目に、個々の形質転換体を使用して、100μg/mlゼオシン(Life Technologies)を含むYPNG培地(2%ペプトン、1%バクト酵母抽出物、1.34% YNB、0.1Mリン酸カリウムpH6、0.00004%ビオチン、1%グリセロール)2mlを接種し、振盪しながら28℃で24時間培養した。次の日、細胞を、遠心分離(500gで8分間)によってペレット化し、YPNG培地をYPNM培地(2%ペプトン、1%バクト酵母エキス、1.34% YNB、0.1Mリン酸カリウムpH6、0.00004%ビオチン、1%メタノール)で置き換えて、VHH発現を誘導し、培養物を、振盪しながら28℃で72時間培養した。50%メタノール50μlを、72時間、80時間および96時間にて培養物に添加した。メタノール含有培地に移した100時間後に、酵母細胞を、遠心分離(500gで8分間)によってペレット化し、上清を保持してVHHの存在を評価した。粗培地(25μl)を、15% SDS−PAGEゲルにロードし、その後タンパク質の存在を、クーマシーブリリアントブルー染色によって分析した。RSV中和活性を持つVHHを選択するために、上記のプラークアッセイに上清の段階希釈物をアプライすることにより個々のピキア・パストリス形質転換体の粗YPNM上清中のRSV中和活性を決定した。
【0054】
培地中に高レベルのVHHを産したかもしくは高いRSV中和活性を持つピキア・パストリス形質転換体を選択して、100または300mlピキア培養物を使用して拡大した。増殖およびメタノール誘導条件、および培地の回収は、2ml培養物について上述したものと類似した。清澄な培地を、硫酸アンモニウム沈殿(80%飽和)に4℃で4時間供した。不溶性画分を、20000gでの遠心分離によってペレット化し、HisTrap結合緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、0.5M NaCl、20mMイミダゾール、pH7.4)10mlに可溶化し、4℃で10分間遠心分離し、その後上清をHisTrap結合緩衝液で事前に平衡化したHisTrap HPカラム(GE Healthcare)1mlにロードした。少なくとも10カラム体積のHisTrap結合緩衝液でカラムを洗浄した後(吸光度が安定したベースラインに達するまで)、結合しているタンパク質を、HisTrap結合緩衝液中のイミダゾール20mMから開始し、500mMで終了する合計体積20mlにわたる線形のイミダゾール勾配で溶出した。SDS−PAGE分析によって決定した、VHHを含有する画分をプールし、Vivaspinカラム(5kDaカットオフ、GE Healthcare)で2mlに濃縮した。次いで、これらの濃縮画分を、PBS中でSuperdex 75カラムにロードし(160ml、0.8ml/分)、ピーク画分をプールし、5kDaカットオフのVivaspinカラムで濃縮した。プールされた画分のタンパク質濃度を、各VHHにカスタマイズしたパーセント溶液吸光係数を用いてNanoDrop 1000によるA280測定で決定した。プールした濃縮画分を分注し、さらなる使用の前に−80℃で貯蔵した。
【0055】
精製したVHHの50%阻害濃度(IC50)の算出
ピキア・パストリスによって産生された精製したVHHのIC50を決定するために、これらVHHの、Opti−Mem中に調製した3倍段階希釈物を、上記のRSV中和アッセイで評価した。モノクローナルIgG D25およびAM22(Beaumontら、2012年、Spitsら、2013年)(両方ともFの融合前コンホメーションに対して特異的である)を、陽性対照として使用した。α−マクログロブリンに対するVHHであるNB1.12を、陰性対照として使用した。IC50値を、手作業で算出した。
【0056】
DS−Cav1および融合後Fに対するVHHのインビトロ結合
DS−Cav1および融合後Fに対する精製したVHHの結合を、直接ELISAで試験した。マイクロタイタープレート(II型、F96 Maxisorp、Nunc)を、PBS中の1μg/ml DS−Cav1溶液または1μg/ml融合後F溶液100μlでコーティングした。洗浄後に、プレートを、PBS中の4%ミルク200μlで1時間ブロッキングし、その後PBSで1回再び洗浄した。次いで、VHHの1/3希釈系列(30μg/mlから開始する)を、タンパク質でコーティングしたウェルにアプライした。1時間後に、プレートを洗浄し、PBS中の抗ヒスチジンTag抗体(AD1.1.10 AbD Serotec)1/2000希釈物を添加し1時間放置した。洗浄し、HRP連結抗マウスIgG(1/2000希釈物)を添加し1時間放置した後に、上述したPE−ELISAと同じ方法でELISAを展開した。親和性決定のために、StrepTag IIおよび6×HisTagを持つ精製したDS−Cav1を、Biacore X100(GE)を使用して各サイクルにつきおよそ537反応単位(RU)でNTAセンサーチップに捕捉した。NTAセンサーチップを、0.25M EDTA及びその次に0.5mM NiCl2を使用してサイクルの合間に再生した。緩衝液のみのサンプルを、DS−Cav1および参照フローセルに注入し、続けてHBS−P+中に5nM〜39.1pMに2倍段階希釈したNb4またはNb66(1.25nM濃度については2連)を注入した。データを二重参照減算し、Scrubberを使用して1:1結合モデルに当てはめた。
【0057】
RSV F cDNA発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞の表面に発現されるFに対するVHHの結合を、フローサイトメトリーによって評価した。HEK293T細胞に、150mm組織培養プレート当たり4,000,000個細胞で播種し、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega)を用いて、pCAGGS−Fsyn(コドン最適化したRSV F cDNAをコードする)6.4μgによってトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を追跡するために、トランスフェクションを、peGFP−NLS 6.4μgの存在下で実行した。対照トランスフェクションを、peGFP−NLSだけで実行した。トランスフェクション18時間後に、細胞を、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン、0.5mM EDTA[pH8.0])15mlで剥離し、PBSで1回洗浄し、1%BSAを含有するPBS(PBS/BSA)中で30分間培養した。その後、細胞を、
図8に示す異なる濃度で、示したVHHまたはRSV−F特異的マウスモノクローナル抗体(MAB858−1、Chemicon International)と共に、培養した。1時間後に、細胞を、PBS/BSAで1回洗浄し、PBS/BSA中に1/3000希釈した抗ヒスチジンTag抗体と共に1時間培養した。次に、細胞を、PBS/BSAで1回洗浄し、抗マウスIgG Alexa 633を30分間添加した。細胞をPBSで3回洗浄した後、細胞を、FACSCaliburフローサイトメーターを使用して分析した。GFPを発現している細胞の1つを、側方散乱シグナルのピーク表面(peak surface)、前方散乱シグナルのピーク表面およびピーク高ならびに緑色蛍光シグナルのピーク表面に基づいて選択した。最後に、これらGFP陽性単一細胞のAlexa 633蛍光強度シグナルを、測定した。
【0058】
マウス
特定病原体未感染の、雌BALB/cマウスを、Charles River(Charles River Wiga、ズルツフェルト、ドイツ)から入手した。動物を、温度制御環境において12時間明/暗サイクルで飼育し;飼料および水は適宜提供した。動物施設は、フレミッシュ政府ライセンス番号LA1400536の下で運営する。全ての実験は、法律によって指定され、実験動物に関する施設倫理委員会(倫理出願EC2015−019)によって認可された条件下で行われた。
【0059】
VHHおよびモノクローナル抗体の投与ならびにマウスのRSV抗原接種
マウスを、イソフルランによってわずかに麻酔した後、VHH、パリビズマブまたはRSV抗原接種ウイルスを鼻腔内投与した。VHH、パリビズマブ(Synagis、Medimmune)およびRSVウイルスを、PBS中に処方した合計体積50μlで投与し、それらは2つの鼻孔に対して等しく分配した。1,000,000PFUのRSV A2による感染の4時間前に、5匹のマウスの各群は、DS−Cav1−4 30μg、VHH DS−Cav1−L66 30μg、VHH−F2(陰性対照として)30μgまたはパリビズマブ(陽性対照として)30μgを投与した。全ての群が、感染の24時間後に陰性対照VHH−F2 30μgも投与した。
【0060】
プラークアッセイによる肺ウイルス力価の決定
抗原接種の5日後に、マウスを、頚椎脱臼によって屠殺した。マウス肺を、無菌的に除去し、20%スクロースを含有し1%ペニシリンおよび1%ストレプトマイシンで補充されたHBSS 1ml中の滅菌した金属ビーズの存在下でMixer Mill MM 2000(Retsch)による激しい振盪によりホモジナイズした。その後、肺ホモジネートを、4℃での遠心分離(2500rpmで10分間)によって清澄にし、ベロ細胞におけるウイルス滴定用として2連で使用した。単層のベロ細胞を、96ウェルプレート中のペニシリンおよびストレプトマイシンで補充された無血清Opti−MEM培地(Invitrogen)中の肺ホモジネートの段階1:3希釈物50μlにより感染させた。プラークアッセイを、上記の通りさらに処理した。各ウェル内のプラークを計数し、各希釈物について肺(1ml)当たりのPFU数を以下の通り算出した:希釈物中に存在するプラーク数×希釈×20(=合計上清体積1000μl/希釈系列の第1ウェルに感染させるために使用した上清50μl)。次いで、各肺におけるPFU数を、2連の平均として算出した。
【0061】
qRT−PCRによる肺ウイルス力価の決定
qRT−PCRによって肺RSV負荷を決定するために、清澄な肺ホモジネートのトータルRNAを、製造業者の指示に従ってHigh Pure RNA tissue Kit(Roche、マンハイム)を使用することによって調製した。cDNAを、ランダムヘキサマープライマーおよびTranscriptor First strand cDNA synthesis kit(Roche、マンハイム)の使用により調製した。ゲノムRSV M cDNAの相対的レベルを、RSV A2 M遺伝子に特異的なプライマー(5’TCACGAAGGCTCCACATACA3’および5’GCAGGGTCATCGTCTTTTTC3’)ならびに5’末端でフルオレセイン(FAM)によって、および3’末端付近で暗消光色素によって標識されている、ヌクレオチドプローブ(#150 Universal Probe Library、Roche)を使用してqRT−PCRによって決定した。qRT−PCRデータを、各マウスのサンプルに存在するmRPL13A mRNAレベルに対して標準化した。
【0062】
DS−Cav1−結合に対する抗体交差競合
DS−Cav1タンパク質(10μg/ml)を、酢酸緩衝液(pH5.0)中でアミンカップリング反応によってAR2Gバイオセンサーに固定した。反応を、1Mエタノールアミンにより失活させ、次いで、DS−Cav1固定バイオセンサーを、アッセイ緩衝液(1%BSAを含むPBS)で平衡化した。バイオセンサーを、2つの抗体工程の間の短いベースライン工程で競合抗体(アッセイ緩衝液中に35μg/ml)に浸漬し、続いて分析抗体(アッセイ緩衝液中に35μg/ml)に浸漬した。
【0063】
[実施例1]
ラマ血漿におけるRSV中和活性
DS−Cav1による免疫化後のラマにおける体液性抗RSV反応の誘導を評価するために、各免疫化の前後に得られた血漿サンプルを、RSV中和アッセイで試験した。サンプルを、RSV−A2およびRSV B49(RSV Bの臨床株)に対する中和活性について試験した。
図1は、4回目の免疫化後に得られる血漿サンプルの全てが、RSV A2およびRSV B49に対する高い中和活性を有することを例示する。
【0064】
[実施例2]
DS−Cav1特異的VHHの単離
VHHファージライブラリを、DS−Cav1タンパク質に対する1回のパニングに供した。DS−Cav1特異的ファージの富化を、コーティングしていないウェルから溶出されたファージの数とDS−Cav1コーティングしたウェルから溶出されたファージの数を比較することによって評価した。溶出されたファージの数は、アンピシリン抵抗性形質導入単位、すなわちパニング工程において溶出されたファージで形質導入されたTG1のコロニーの数を決定することによって間接的に推定された。この実験は、ファージ集団が、DS−Cav1特異的ファージについて約140倍富化されたことを示唆した。90個のコロニーを無作為に選択し、これらのペリプラズム抽出物中にあるFの融合後コンホメーションに対するFの融合前コンホメーション(DS−Cav1)に特異的なVHHの存在についてELISAによって分析した。このELISAの結果を、
図2に図示する。90個のコロニーのうち、37個のコロニーが、陽性を記録した(10個は、融合前および融合後の両方のFへの結合について陽性を記録し、19個は、融合前Fだけへの結合について陽性を記録し、8個は、融合後Fだけへの結合について陽性を記録した)。融合前または融合後のFへの結合を示唆した全てのコロニーのVHH配列を、決定した。37個中28個のクローンが、固有のVHH配列を有し、さらなる使用ために選択された。これらクローンのVHH配列を、ピキア・パストリス発現ベクターにクローニングし、得られたプラスミドをその後使用してピキア・パストリスの形質転換を行った。
【0065】
[実施例3]
ピキア・パストリス上清における中和活性試験
また、DS−Cav1に対して1回パニングした後に得られたVHH cDNAライブラリを、ピキア・パストリス発現ベクターpKai61にクローニングすることを試みた。この戦略を使用して、個々のピキア・パストリス形質転換体の上清におけるRSV中和活性に基づいて生物学的に関連のあるVHH候補を選択しようと試みた。Fへの結合に基づいて選択した20個の個々のピキア・パストリス形質転換体から、5つがRSV A2に対する中和活性を有し(DS−Cav1−4が最も強力な1つである)、一方pKai61へのライブラリクローニングから得られた18個のクローンからは、1つ(VHH DS−Cav1−L66)のみ中和活性を示した(
図3)。
【0066】
DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66のcDNA配列を、サンガー配列決定法によって決定し、核酸配列および導き出されたアミノ酸配列を
図5に示す。
【0067】
[実施例4]
精製したVHHの産生およびIC50の決定
精製の前に、VHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66は、最も強力な、RSV中和VHHを有し、これら2つのVHHならびに陰性対照VHH F2およびF58を、ピキア・パストリス培養物300ml中で産生し、HisTrap精製により精製した後に、superdex 75サイズ排除クロマトグラフィーを行った(
図4)。VHH F2およびVHH F58は、不活化フニンウイルスで免疫した異なるラマ由来のVHHライブラリから得られた無関係な対照VHHである。インビトロでVHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66はそれぞれ、0.021nMおよび0.032nMのIC50でRSV A2を中和した。RSV B49の中和の場合、VHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66はそれぞれ、0.015nMおよび0.032nMのIC50を示した。VHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66が、ヒトメタ肺炎ウイルスAおよび/またはB血清型を中和し得るかどうか評価するために、GFP発現hMPV組換えウイルス(NL/1/00 A1傍系またはNL/1/99 B1傍系、Bernadette van den HoogenおよびRon Fouchier、ロッテルダム、オランダから親切にも贈られた物)またはGFP−hRSV(A2株、Mark Peeples、コロンバス、オハイオ州、米国から親切にも贈られた物)(MOI 0.3 ffu/細胞)の既定の量を、VHHもしくはmAbの段階希釈物と混合し、Vero−118(hMPV)もしくはHEp−2細胞いずれかの培養物に添加し、96ウェルプレート内で増殖させた。36時間後に、培地を除去し、PBSを添加し、ウェル当たりGFPの蛍光強度をTecanマイクロプレートリーダーM200で測定した。蛍光値を、抗体を含まないウイルス対照のパーセントとしてプロットし、それを使用して、対応するIC50値を算出した。
【0068】
[実施例5]
DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66は、融合前状態のRSV Fに結合するが、融合後状態のRSV Fに結合しない。
【0069】
融合前および融合後のFに対するDS−Cav1−4ならびにDS−Cav1−L66の結合能力を評価するために、いずれかのコンホメーションのFをマイクロタイタープレートに直接コーティングし、VHHの3倍希釈系列を、このプレートに添加するELISAを実行した(
図7A)。VHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66は、コーティングされた融合前Fに特異的に結合し、コーティングされた融合後コンホメーションであるFには結合しないことが判明した。融合前Fタンパク質に対する結合親和性をさらに特徴づけるために、SPRに基づく結合実験を実行した。両方のISVDが、ピコモル濃度の親和性で融合前RSV Fに結合することが判明した。本来二価であるパリビズマブまたはAM14(Gilmanら、2015年)のような従来通りのモノクローナル抗体に反してISVDは一価なので、標的に対してそのような高親和性を示すことは、驚くべきことである。特に、DS−Cav1−4の解離速度は、極めて低い。
【0070】
哺乳動物細胞によって発現されたFへのVHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66の結合も、評価した。HEK293T細胞に、コドン最適化したF cDNAをコードしているpCAGGS−FsynとpeGFP−NLSとを同時トランスフェクトした。細胞を、トランスフェクションの18時間後に回収し、VHH DS−Cav1−4、VHH DS−Cav1−L66、陰性対照VHH F58およびF2ならびにRSV−Fに特異的なモノクローナルマウスIgG抗体で染色した。同時トランスフェクション設定におけるGFP陽性細胞へのVHHの結合を、GFP発現ベクターだけによってトランスフェクトしたGFP陽性細胞への結合と比較した。明らかな結合が、VHH DS−Cav1−4およびVHH DS−Cav1−L66の全ての希釈物でならびにRSV Fに対する陽性対照モノクローナル抗体の最大から3つ目までの濃度で観察された(
図8)。
【0071】
[実施例6]
DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66は、RSV Fの新たなエピトープに結合する
DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66が、最近記述された融合前F特異的エピトープΦに結合するかどうか調査するために、これらのVHHが、RSV融合前Fタンパク質への結合に関してエピトープΦ特異的D25抗体と競合し得るかどうかバイオレイヤー干渉法によって調査した(
図9)。競合アッセイは、いずれのVHHもD25と競合しないことを示す。対照的に、両方のVHHは、互いに競合した。これらの結果は、両方のVHHは、一部重なるエピトープに結合するが、これらのエピトープはD25エピトープΦと異なることを示す。
【0072】
ISVDエピトープのさらなる特徴づけから、DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66が、RSV F上で構造的保存が高い同じエピトープを結合することが確認された(
図11A−D)。
図11Cにおいて、DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66の両方に接触される融合前安定化RSV Fタンパク質(完全オープンリーディングフレーム、インビボプロセシング前、配列番号17)の残基に下線を引く。特に、RSV Fタンパク質の以下のアミノ酸残基は、DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66のエピトープの部分を形成する:T50、G51、W52、S180、G184、V185、P265、I266、T267、N268、D269、Q270、L305、G307、V308、N345、A346、G347、K421、S425、K427、N428、R429、G430、I431、S451、G453、N454、L456、Y458。これらの残基は、DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66両方のエピトープを表す。CDR2ループおよびCDR3ループの結合のさらなる詳細については、
図12(DS−Cav1−4)および
図13(DS−Cav1−L66)に示される。
【0073】
モタビズマブ、AM14、101FおよびDS−Cav1−4との複合体における融合前コンホメーションのFタンパク質の構造から、新たな結合エピトープが明らかになった(
図14)。RSV Fとの共結晶構造が公知である他の全ての抗体は、DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66が結合するエピトープと異なるエピトープに結合する。融合前安定化RSV Fへの結合に関してDS−Cav1−4(すなわちAM14およびパリビズマブ)およびDS−Cav1−L66(すなわちAM14、パリビズマブおよび101F)と競合し、結合エピトープが、共結晶構造分析によって疑いの余地なく決定されている抗体でも、RSV F中の異なるエピトープに結合する。これは、
図14に示される。パリビズマブおよびモタビズマブが、RSV Fにある同じエピトープに結合すること、およびこのエピトープが、RSV Fの融合前および融合後状態に存在することに、留意する。
【0074】
[実施例7]
インビボでのVHHの予防的抗RSV活性試験
VHH DS−Cav1−4またはDS−Cav1−L66の予防的投与が、インビボでRSV抗原接種から保護できるかどうか試験するために、雌のBALB/cマウス(群当たり5匹のマウス)に、1.106PFUのRSV A2による感染の4時間前に、VHH DS−Cav1−4、VHH DS−Cav1−L66、F2 VHHまたはパリビズマブ30μgを鼻腔内投与した。抗原接種の24時間後に、全てのマウスに、F2 VHH 30μgを鼻腔内投与した。抗原接種の5日後に、マウスを屠殺し、肺を、20%スクロース、ペニシリンおよびストレプトマイシンで補充されたHBSS 1ml中でホモジナイズした。肺に高レベルの複製ウイルス(約1×10
5PFU)を示したF2 VHHで処置した群とは対照的に、DS−Cav1−4、DS−Cav1−L66またはパリビズマブで処置したマウスは、それらの肺に検出可能な複製ウイルスを有さなかった(パリビズマブで処置した1匹のマウスを除く)(
図10A)。肺内の複製ウイルスのレベルを定量化するために使用されるプラークアッセイは、中和抗体またはVHHの存在による影響を受ける可能性があるので、肺ホモジネート中のRSV RNAレベルを、qRT−PCRによってさらに定量化した。DS−Cav1−4およびDS−Cav1−L66で処置したマウスは、F2処置対照マウスと比較して、平均して3000分の1より少ないウイルスRNAを示した。パリビズマブで処置したマウスは、F2処置対照マウスと比較して、平均して約100分の1のウイルスRNAを示した。
【0075】
参考文献
【0076】
【表1】