特許第6836787号(P6836787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836787
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】転写テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20210222BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20210222BHJP
   B43L 19/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J201/00
   B43L19/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-149625(P2017-149625)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-26785(P2019-26785A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】301032735
【氏名又は名称】プラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 康夫
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206657(JP,A)
【文献】 特開平04−031477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0205326(US,A1)
【文献】 特開2015−214134(JP,A)
【文献】 特開2001−192625(JP,A)
【文献】 特開2012−079257(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/158578(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0171851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材と、
前記基材の一方面に設けられ、他方面から押圧されることにより被転写面に転写される転写層と、
を有し、
前記転写層は、転写方向に延設され、粘着剤又は接着剤からなる転写列を複数備え、
前記転写列は、複数のブロック部と、該ブロック部同士を接続すると共に前記ブロック部の幅寸法よりも小さい幅寸法を備える複数のブリッジ部と、を有する、
ことを特徴とする転写テープ。
【請求項2】
隣り合う前記転写列は、前記ブロック部がオフセットして配置されることを特徴とする請求項1に記載の転写テープ。
【請求項3】
前記ブロック部は、多角形状に形成され、
前記ブリッジ部は、前記ブロック部の頂部同士を接続することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の転写テープ。
【請求項4】
前記ブロック部は、正六角形であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか記載の転写テープ。
【請求項5】
前記ブリッジ部の幅寸法は、0.05mm以上であって、前記ブロック部の幅寸法の11.5%以上50%以下であることを特徴とする請求項4に記載の転写テープ。
【請求項6】
隣り合う前記転写列の間隔は、前記ブロック部の幅寸法の7.6%〜11.6%であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の転写テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具等で転写することで紙等を貼り合わせることができる転写テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルム状の基材に粘着剤や接着剤により形成される転写層を備える転写テープにおいて、この転写層をブロック状とする転写テープが開示されている。例えば、特許文献1における転写型粘着シート材は、剥離性担体シート上に粘着剤層が形成され、押圧等により粘着剤層が被転写面に転写される。この粘着剤層は、円形状や楕円状、多角形状のドット状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−333556
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被転写面に転写される転写層をドット状に形成すると、剥離性担体シートの全面に粘着剤が形成されたものに比べて、糸引き現象を防止する事ができる。しかしながら、転写層をドット状とすると、転写層が形成されない部分が形成されるため、単位面積当たりの転写層が占める面積(有効塗工面積)が低下して、紙等を貼り合わせる力(貼力)が低下することがあった。貼力を向上させるため、ドット状の隙間を小さくすると、転写層の形成の際に当該隙間が埋まってしまう等の不具合が生じることがあった。
【0005】
本発明は、糸引き現象を防止しつつ、有効塗工面積を向上することができる転写テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る転写テープは、フィルム状の基材と、前記基材の一方面に設けられ、他方面から押圧されることにより被転写面に転写される転写層と、を有し、前記転写層は、転写方向に延設され、粘着剤又は接着剤からなる転写列を複数備え、前記転写列は、複数のブロック部と、該ブロック部同士を接続すると共に前記ブロック部の幅寸法よりも小さい幅寸法を備える複数のブリッジ部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、糸引き現象を防止しつつ、有効塗工面積を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る転写テープを備える塗膜転写具の例を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る転写テープの転写層の塗工パターンを示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る転写テープの図2のIII−III断面を示す図である。
図4A】転写テープの試験における比較例Aの写真を示す図である。
図4B】転写テープの試験における比較例Bの写真を示す図である。
図4C】転写テープの試験における実施例Cの写真を示す図である。
図4D】転写テープの試験における比較例Dの写真を示す図である。
図4E】転写テープの試験における実施例Eの写真を示す図である。
図4F】転写テープの試験における比較例Fの写真を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る転写テープの変形例を示し、(a)〜(e)は、それぞれ変形例1〜5を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、本発明に係る転写テープTは、塗膜転写具10により利用されるものである。塗膜転写具10は、本体ケース1の内部に、未使用の転写テープTが巻装される供給ボビン11と、使用済みの転写テープTが巻装される巻取ボビン12を備える。供給ボビン11と巻取ボビン12は、回転駆動機構により連結される。塗膜転写具10の前端には、転写ローラ13aを備える転写ヘッド13が設けられる。塗膜転写具10を図1における左から右に向けて動かすことにより、供給ボビン11の下側から送り出される転写テープTは、転写ローラ13aを介して供給ボビン11の上側から巻取ボビン12の下側に送り出され、巻取ボビン12の下側から巻き取られる。なお、以下の説明においては、塗膜転写具10で転写作業を行う際に塗膜転写具10を移動させる方向(図1において、左から右)及びその反対方向を転写方向Dという。このような塗膜転写具10により、転写テープTは被転写面Qに転写ヘッド13の転写ローラ13aにより押圧されて、転写テープTの表面に設けられる転写層が被転写面に転写される。
【0010】
図2は、転写テープTを拡大して示す正面図である。図3図2におけるIII−III断面図である。転写テープTは、フィルム状の基材50と、基材50の表面(被転写面Qに対して転写ヘッド13の転写ローラ13aにて対向する面)に設けられる転写層100により形成される。基材50は、透明な樹脂材料を薄いフィルム状としたものであり、その表面には、押圧により転写層100が剥離し易いよう各種コーティングが施される場合もある。転写層100は、基材50の一方面である表面に設けられ、他方面である背面から押圧されることにより被転写面Qに転写される。
【0011】
転写層100は、グラビア印刷により基材50に形成されるものである。ここで、前述の転写方向Dは、グラビア印刷におけるグラビアロール版により転写する方向ともされる。転写層100は、転写方向Dに延設される転写列110を複数備え、所定の厚みで基材50に転写される。各転写列110は、複数のブロック部111と、ブロック部111同士を接続する複数のブリッジ部112を有する。ブロック部111は、多角形状である正六角形とされて、対向する頂部を結ぶ一の線が転写方向Dと平行となるよう配置される。そして、ブリッジ部112は、正六角形とされるブロック部111の頂部同士を接続する。ブリッジ部112は、直線状に形成される。
【0012】
本実施形態の転写テープTによれば、ブロック部111が正六角形とされるので、転写層100の全体としてハニカム状とすることができ、転写テープT及び被転写面Qへの転写後の転写層100の意匠性を高めることができる。さらに、ブロック部111同士を接続するブリッジ部112を備えるので、転写テープTの製造時における転写列110の生成の際に、一方のブロック部111から他方のブロック部111へブリッジ部112を介して転写層(粘着剤等)を流動させることが出来る。従って、転写層100、特にブロック部111に欠損部分を生じさせ難くすることができる。さらにまた、ブロック部111は、ブリッジ部112により頂部同士が接続されるので、ブリッジ部112に向かって幅狭されるので、さらに転写層100の転写時(生成時)における転写層100の流動性を高めることができる。また、所定の間隔で配置されるブロック部111により、転写テープTを転写操作したときの糸引き現象(すなわち、基材50に僅かに残った転写層100と転写された転写層100との間で転写層100が糸状に引かれてしまう現象)が低減される。ここで、ブリッジ部112は、十分幅が狭いので、糸引き現象は生じ難い。
【0013】
また、隣り合う転写列110は、ブロック部111がオフセットして配置される。具体的には、一の転写列110−1と、転写列110−1と隣り合う転写列110−2において、両者ともに、複数のブロック部111はPピッチで等間隔に配置されるが、転写列110−1のブロック部111と転写列110−2のブロック部111は、1/2Pピッチで等間隔とされる。
【0014】
また、隣り合う転写列110の間隔は一定とされる。すなわち、隣り合う転写列110−1と転写列110−2において、転写列110−1のブロック部111と転写列110−2のブリッジ部112との間隔Sと、転写列110−1のブロック部111と転写列110−2のブロック部111との間隔Sとは、同じである。
【0015】
また、転写方向Dと直交する方向のブリッジ部112の幅寸法Wbは、ブロック部111の幅寸法Wmより小さい幅寸法であればブロック部111の糸引き現象を防止しつつ有効塗工面積を増大させることができる。ただし、ブリッジ部112の幅寸法Wbは、ブロック部111の幅寸法Wmの50%以下に設定されると望ましい。これにより、ブロック部111の形状が明瞭に認識できると共に、ブリッジ部112により有効塗工面積を増大させることができる。また、ブリッジ部112の幅寸法Wbは、0.05mm以上とされることが望ましい。ブリッジ部112の幅寸法Wbが0.05mmより小さい場合は、転写層100が形成されない場合があるからである。
【0016】
次に、ブロック部111の幅寸法Wmに対する、隣り合う転写列の間隔の比率である間隔率S(%)と、ブロック部111の幅寸法Wmに対する、ブリッジ部112の幅寸法Wbの比率であるブリッジ幅率W(%)と、有効塗工面積率U(%)を変化させ、その塗工の様子を顕微鏡にて目視確認した試験結果を以下に示す。
【0017】
ここで、間隔率S(%)=間隔S(=S)/ブロック部幅寸法Wm×100であり、ブリッジ幅率W(%)=ブリッジ部幅寸法Wb/ブロック部幅寸法Wm×100であり、有効塗工面積率U(%)は単位面積当たりの転写層が占める割合を示す。
【0018】
また、各転写テープTは以下のように作成した。基材50は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。この基材50に転写層100として、アクリルエマルジョン系の粘着剤を用いた。基材50への転写層100の塗工は、グラビア印刷方式により、塗工スピード30m/minで行った。図4A図4Fに示す写真は、製作した各転写テープTを所定長さ切り取って、鉛筆で粘着剤の塗工部分が黒くなるよう着色して撮影したものである。
【0019】
<試験結果>
【表1】
【0020】
また、図4Aに比較例A、図4Bに比較例B、図4Cに実施例C、図4Dに比較例D、図4Eに実施例E、図4Fに比較例Fとして製作した転写テープTを顕微鏡により拡大した写真を示す。
【0021】
図4A図4Fにおいて、白色の部分は粘着剤が塗工されていない部分である。そして、図4Aの比較例A、図4Bの比較例B、図4Dの比較例Dにおいては、ブロック部111内にも略点状に白色部分が存在する。これは、転写層(粘着剤)の塗工の際に、粘着剤が流動せずに空隙となってしまった部分である。図4Cの実施例Cでも、ブロック部111に白色の点状部分が存在するが、比較例A,B,Dと比べると小さく、許容される程度の大きさである。図4Eの実施例E及び図示しない実施例Gにおいては、ブロック部111内には白色の点状部分は存在しない。これは、前述の通り、ブリッジ部112が粘着剤を流動させる機能を果たしているためである。従って、実施例C、実施例E、実施例Gはブロック部111の塗工状態は良好である。ここで、ブリッジ部の幅寸法は、0.05mm以上であって、ブロック部の幅寸法Wmの11.50%以上50.00%以下であれば適正に塗工された転写テープTを得ることができる。
【0022】
また、有効塗工面積率U(%)に着目すると、間隔率S(%)の値が大きい比較例B,D,Fでは、有効塗工面積率が小さい値となる。従って、ブロック部111の形状を確実に目視可能で、かつ、有効塗工面積を考慮すると、隣り合う転写列110の間隔は、ブロック部111の幅寸法Wbの7.60%〜11.60%であると好ましい。
【0023】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることは無く、種々の形態で実施することができる。例えば、ブロック部111の形状は、種々の形状とすることができる。図5(a)に示す変形例1は、ブロック部111Aを円形とした。図5(b)に示す変形例2ではブロック部111Bを菱形とした。図5(c)に示す変形例3では、正六角形の対向する頂部を結ぶ一の線が、転写方向Dと垂直な方向となるようブロック部111Cを配置した。図5(d)に示す変形例4では、ブロック部111Dを三角形状として、底辺同士及び頂部同士が向かい合うよう配置した。図5(e)に示す変形例5では、ブリッジ部112Eを直線状ではなく、異形とした。
【0024】
また、図5(d)に示す変形例4や図5(e)に示す変形例5で示すように、ブロック部111をオフセットして配置しないこともできる。しかしながら、ブロック部111をオフセットして配置することで、有効塗工面積を向上させることができる。
【0025】
転写層100は、粘着剤により形成したが、接着剤により形成することもできる。また、本実施形態においては、グラビア印刷により基材50に転写層100を形成したが、これに限られず、例えばスクリーン印刷により転写層を形成することもできる。なお、グラビア印刷によれば、耐久性の高いグラビアロール版により基材に転写層を転写するため、大量生産に向いている。一方、スクリーン印刷により転写層を形成する場合には、メッシュ版により転写層を形成するため、多品種少量生産に向いており、転写層の厚みを比較的厚く形成することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 本体ケース 10 塗膜転写具
11 供給ボビン 12 巻取ボビン
13 転写ヘッド 13a 転写ローラ
50 基材 100 転写層
110,110−1,110−2 転写列
111,111A〜D ブロック部
112,112E ブリッジ部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5