特許第6836791号(P6836791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836791パーフルオロアルキル化化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836791
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】パーフルオロアルキル化化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/26 20060101AFI20210222BHJP
   C07C 17/358 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 25/13 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 29/32 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 33/42 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 41/32 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 49/227 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 67/293 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 67/333 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 69/753 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 69/78 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 303/40 20060101ALI20210222BHJP
   C07C 311/16 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 203/02 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 203/24 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 203/26 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 207/48 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 209/10 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 209/34 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 209/48 20060101ALI20210222BHJP
   C07D 279/02 20060101ALI20210222BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210222BHJP
【FI】
   C07C17/26
   C07C17/358
   C07C21/18
   C07C22/08
   C07C25/13
   C07C29/32
   C07C33/42
   C07C41/32
   C07C43/225 C
   C07C45/68
   C07C49/227
   C07C67/293
   C07C67/333
   C07C69/753 Z
   C07C69/78
   C07C303/40
   C07C311/16
   C07D203/02
   C07D203/24
   C07D203/26
   C07D207/48
   C07D209/10
   C07D209/34
   C07D209/48
   C07D279/02
   !C07B61/00 300
【請求項の数】9
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-556033(P2017-556033)
(86)(22)【出願日】2016年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2016086837
(87)【国際公開番号】WO2017104589
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-244124(P2015-244124)
(32)【優先日】2015年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袖岡 幹子
(72)【発明者】
【氏名】河村 伸太郎
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−280250(JP,A)
【文献】 特開2008−137992(JP,A)
【文献】 ZHONG, S et al.,Metal-free radical perfluoroalkylation of (hetero)arenes,RSC Advances,2014年12月15日,Vol. 5,pp. 6255-6258
【文献】 HAYAKAWA, Y et al.,Trifluoromethylation by bis(trifluoroacetyl)peroxide of polymers bearing benzene rings,Polymer,2001年,Vol. 42,pp. 4081-4086
【文献】 SAWADA, H et al.,TRIFLUOROMETHYLATION OF AROMATIC COMPOUNDS WITH BIS(TRIFLUOROACETYL) PEROXIDE,Journal of Fluorine Chemistry,1990年,Vol. 46,pp. 423-431
【文献】 JENSEN, KL et al.,A General Strategy for the Synthesis of Enantiomerically Pure Azetidines and Aziridines through Nickel-Catalyzed Cross-Coupling,Chemistry A European Journal,2015年 3月27日,Vol. 21,pp. 7379-7383
【文献】 KAWAMURA, S et al.,N-Heterocycle-Forming Amino/Carboperfluoroalkylations of Aminoalkenes by Using Perfluoro Acid Anhydrides: Mechanistirc Studies and Applications Directed Toward Perfluoroalkylated Compound Libraries,The Journal of Organic Chemistry,2017年,Vol. 82,pp. 12539-12553
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、炭素−炭素不飽和結合、及び/又は芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含む化合物とを銅触媒の存在下で反応させることを含むパーフルオロアルキル化化合物の製造方法であって、前記炭素−炭素不飽和結合、及び/又は芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含む化合物が炭素−炭素不飽和結合を含み、芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含まない化合物である場合、当該化合物は、
次式(II):
−CH(R)−C(R)=CH (II)
(式中、Rは有機基を表し、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物、又は
次式(IV):
−NH−X−C(R)=CH(R) (IV)
(式中、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、Rは置換基を表し、Xは鎖員1〜4の連結基を表し、RとXは連結して、C(R)=CHとともに5〜7員環を形成してもよい。)
で示される化合物である、パーフルオロアルキル化化合物の製造方法
【請求項2】
ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドがパーフルオロアルカン酸無水物及び尿素−過酸化水素複合体から生成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(II):
−CH(R)−C(R)=CH (II)
(式中、Rは有機基を表し、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物とを反応させて、
次式(III):
−C(R)=C(R)−CH−Rf (III)
(式中、Rf、R、R及びRは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(IV):
−NH−X−C(R)=CH(R) (IV)
(式中、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、Rは置換基を表し、Xは鎖員1〜4の連結基を表し、RとXは連結して、C(R)=CHとともに5〜7員環を形成してもよい。)
で示される化合物とを反応させて、
次式(V):
【化1】

(式中、Rf、R、R、R及びXは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(VI):
Ar−H (VI)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表す。)
で示される化合物とを反応させて、
次式(VII):
Ar−Rf (VII)
(式中、Rf及びArは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
銅触媒が[Cu(CHCN)]PFである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(VIII):
Ar−X−C(R)=CH (VIII)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表し、Xは鎖員2又は3の連結基を表し、Rは水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物とを銅触媒の不存在下で反応させて、
次式(IX):
【化2】

(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表し、隣接位で閉環しており、Rf、X及びRは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する方法。
【請求項8】
次式(X):
Rf−CO−O−CO−Rf (X)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と尿素−過酸化水素複合体とを−60℃〜−10℃で反応させて、次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは前記と同義である。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドを生成させる第1工程と、
前記ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと次式(VI):
Ar−H (VI)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表す。)
で示される化合物とを10℃〜100℃で反応させて、
次式(VII):
Ar−Rf (VII)
(式中、Rf及びArは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する第2工程を含むパーフルオロアルキル化化合物の製造方法。
【請求項9】
次式(V−1):
【化3】

(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、R、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、RとRは連結して、5〜7員環を形成してもよく、Rは置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換のフェニル基を表す。)
で示されるアジリジン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロアルキル化化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルキル基、特にトリフルオロメチル基は、農薬、医薬、機能性材料などに含まれる重要な官能基として知られており、様々な化合物への効率的な導入方法が求められている。
【0003】
トリフルオロメチル基がベンゼン環等の芳香環に直接結合した構造を有する化合物からなる医薬品は多数知られており、例えば、フルフェナム酸(非ステロイド性抗炎症剤)、レゴラフェニブ(抗悪性腫瘍剤)が挙げられる。
【0004】
また、sp炭素上にトリフルオロメチル基が結合した構造を有する化合物としては、例えば、プロスルフロン(除草剤)、フルララネル(殺虫剤)、トルプロカルブ(殺菌剤)、7-methoxy-2-methyl-3-(6,6,6-trifluorohexyl)-4(1H)-quinolone(抗マラリア剤;非特許文献1)が挙げられる。
【0005】
1−トリフルオロメチル−1,2−ベンゾヨードキソール−3(1H)−オン(Togni試薬II)はTogniらによって開発された求電子的トリフルオロメチル化試薬で、オレフィン類との反応に用いた場合に、アリル位にトリフルオロメチル基が導入された化合物を与えることが報告されている(非特許文献2)。
【0006】
しかしながら、Togni試薬IIには、価格が高く、爆発の危険性がある等の課題がある。
【0007】
非特許文献3には、金属触媒の不存在下に、尿素−過酸化水素複合体(10当量)に対し、ジクロロメタン中、0℃においてパーフルオロアルカン酸無水物(20当量)を10分かけて添加した後、同温度条件下において系中で発生させたビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと芳香族化合物を1〜2時間反応させて対応するパーフルオロアルキル化化合物を得たことが記載されている。また、同手法は種々の複素環及び電子豊富な芳香環に対して適用されているが、その収率は複素環においては最大50%、ベンゼン環においては最大36%に留まっている。また、大過剰量の尿素−過酸化水素複合体を必要とし、室温にすると反応が進行しなくなることが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R. W. Winter, et al., Exp Parasitol. 118, 487 (2008).
【非特許文献2】A. Togni, et al., Chem. Rev. 115, 650 (2014).
【非特許文献3】S. Braese, et al., RSC Adv. 5, 6255 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らが、非特許文献3の実験項に従ってtert−ブチルベンゼンを基質として反応を実施したところ、26%(o−:m−:p−=56:34:10)(ジクロロメタン中、25℃、3h)でしか目的生成物を得られなかった。
【0010】
本発明は、安価かつ安全に、パーフルオロアルキル化化合物を効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、炭素−炭素不飽和結合、及び/又は芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含む化合物とを銅触媒の存在下で反応させることを含むパーフルオロアルキル化化合物の製造方法。
(2)ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドがパーフルオロアルカン酸無水物及び尿素−過酸化水素複合体から生成される前記(1)に記載の方法。
(3)次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(II):
−CH(R)−C(R)=CH (II)
(式中、Rは有機基を表し、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物とを反応させて、
次式(III):
−C(R)=C(R)−CH−Rf (III)
(式中、Rf、R、R及びRは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(IV):
−NH−X−C(R)=CH(R) (IV)
(式中、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、Rは置換基を表し、Xは鎖員1〜4の連結基を表し、RとXは連結して、C(R)=CHとともに5〜7員環を形成してもよい。)
で示される化合物とを反応させて、
次式(V):
【化1】
(式中、Rf、R、R、R及びXは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する前記(1)又は(2)に記載の方法。
(5)次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(VI):
Ar−H (VI)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表す。)
で示される化合物とを反応させて、
次式(VII):
Ar−Rf (VII)
(式中、Rf及びArは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する前記(1)又は(2)に記載の方法。
(6)銅触媒が[Cu(CHCN)]PFである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、
次式(VIII):
Ar−X−C(R)=CH (VIII)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表し、Xは鎖員2又は3の連結基を表し、Rは水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物とを銅触媒の不存在下で反応させて、
次式(IX):
【化2】
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表し、隣接位で閉環しており、Rf、X及びRは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する方法。
(8)次式(X):
Rf−CO−O−CO−Rf (X)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と尿素−過酸化水素複合体とを−60℃〜−10℃で反応させて、次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは前記と同義である。)
で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドを生成させる第1工程と、
前記ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと次式(VI):
Ar−H (VI)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表す。)
で示される化合物とを10℃〜100℃で反応させて、
次式(VII):
Ar−Rf (VII)
(式中、Rf及びArは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する第2工程を含むパーフルオロアルキル化化合物の製造方法。
(9)次式(V−1):
【化3】
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、R、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、RとRは連結して、5〜7員環を形成してもよく、Rは置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基又は置換もしくは非置換のフェニル基を表す。)
で示されるアジリジン誘導体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安価かつ安全に、パーフルオロアルキル化化合物を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願第一の発明は、ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、炭素−炭素不飽和結合、及び/又は芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含む化合物とを銅触媒の存在下で反応させることを含むパーフルオロアルキル化化合物の製造方法である。
【0014】
前記ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドとしては、好ましくは、次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示される化合物が挙げられる。
【0015】
本願第二の発明は、前記式(I)で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、前記式(VIII)で示される化合物とを銅触媒の不存在下で反応させて、前記式(IX)で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する方法である。
【0016】
本願第三の発明は、前記式(X)で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と尿素−過酸化水素複合体とを−60℃〜0℃、好ましくは−60℃〜−10℃で反応させて、前記式(I)で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドを生成させる第1工程と、前記ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと前記式(VI)で示される化合物とを0℃〜100℃、好ましくは10℃〜100℃で反応させて、前記式(VII)で示されるパーフルオロアルキル化化合物を製造する第2工程を含むパーフルオロアルキル化化合物の製造方法である。
【0017】
本願第四の発明は、前記式(V−1)で示されるアジリジン誘導体である。前記式(V−1)で示されるアジリジン誘導体は、様々な化合物に変換できるので、医薬中間体などとして極めて有用である。
【0018】
前記式(I)においてRfで表される炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロシクロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロイソブチル基、パーフルオロ−sec−ブチル基、パーフルオロ−tert−ブチル基、パーフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロプロピルメチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルプロピル基、パーフルオロネオペンチル基、パーフルオロ−1−メチルブチル基、パーフルオロ−2−メチルブチル基、パーフルオロ−3−メチルブチル基、パーフルオロシクロブチルメチル基、パーフルオロ−2−シクロプロピルエチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロ−1−メチルペンチル基、パーフルオロ−2−メチルペンチル基、パーフルオロ−3−メチルペンチル基、パーフルオロイソヘキシル基、パーフルオロ−1,1−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,2−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−2,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−3,3−ジメチルブチル基、パーフルオロ−1−エチルブチル基、パーフルオロ−2−エチルブチル基、パーフルオロ−1,1,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1,2,2−トリメチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−1−メチルプロピル基、パーフルオロ−1−エチル−2−メチルプロピル基又はパーフルオロシクロヘキシル基が挙げられる。
【0019】
本願第一の発明において、「炭素−炭素不飽和結合」とは、ベンゼン環等の芳香環内の炭素−炭素二重結合を除くが、非芳香族性の二重結合又は三重結合であれば、芳香環、カルボニル基、カルボキシル基等との共役の有無は問わない。
【0020】
前記炭素−炭素不飽和結合を含む化合物としては、好ましくは、
次式(II):
−CH(R)−C(R)=CH (II)
(式中、Rは有機基を表し、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物、
次式(IV):
−NH−X−C(R)=CH(R) (IV)
(式中、R及びRは同一又は異なり、水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、Rは置換基を表し、Xは鎖員1〜4の連結基を表し、RとXは連結して、C(R)=CHとともに5〜7員環を形成してもよい。)
で示される化合物が挙げられる。
【0021】
芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含む化合物としては、好ましくは、次式(VI):
Ar−H (VI)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表す。)
で示される化合物が挙げられる。
【0022】
本願第一の発明において、基質となる化合物が「炭素−炭素不飽和結合」と「芳香環に結合した水素原子を有する芳香環」の両者を含む場合、前者に対する反応が優先する。
【0023】
本願第二の発明は、基質として、次式(VIII):
Ar−X−C(R)=CH (VIII)
(式中、Arは置換又は非置換の芳香族基を表し、Xは鎖員2又は3の連結基を表し、Rは水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表す。)
で示される化合物を用いる。
【0024】
本願第三の発明は、基質として、前記式(VI)で示される化合物を用いる。
【0025】
前記式(II)において、Rで表される有機基としては、特に制限はなく、例えば、置換又は非置換の炭化水素基又は複素環基が挙げられる。前記炭化水素基は、鎖員又は側鎖に酸素原子、イオウ原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0026】
前記炭化水素基としては、例えばC1−20−アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、トリル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)が挙げられる。前記炭化水素基は、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、水酸基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、C1−6−アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)、オキソ基、複素環基等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0027】
例えば、置換されたC1−20−アルキル基としては、−(CH−Hal(式中、nは1〜20の整数を表し、Halはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)を表す。)、−(CH−OH(式中、nは1〜20の整数を表す。)、−(CHn−2−COCH(式中、nは1〜20の整数を表す。)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記複素環基としては、例えば、フリル基等の含酸素複素環基が挙げられる。
【0029】
前記炭化水素基又は複素環基は、芳香族基、アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基等のC1−6−脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等のアロイル基)、アシルオキシ基(例えばホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基等のC1−6−脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、トルオイルオキシ基等のアロイルオキシ基)、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、C1−6−アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
前記式(II)、(III)、(IV)、(V)、(V−1)、(VIII)、(IX)等においてR、R、R、R、Rで表されるC1−6−アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。前記C1−6−アルキル基は、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、水酸基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、C1−6−アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)、オキソ基、芳香族基、複素環基等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0031】
前記式(IV)及び(V)においてRで表される置換基としては、例えば3,5−ジフェニルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、ピペリジル基、メシル基(Ms)、トシル基(Ts)、トリフルオロメタンスルホニル基(Tf)、4−メトキシベンゼンスルホニル基、4−フルオロベンゼンスルホニル基、4−ブロモベンゼンスルホニル基、4−ニトロベンゼンスルホニル基が挙げられる。
【0032】
前記式(V−1)において、R、R及びRは、好ましくは水素原子であり、Rで表される置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基としては、好ましくはメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられ、置換もしくは非置換のフェニル基としては、好ましくはフェニル基、トリル基、4−メトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ニトロフェニル基が挙げられる。
【0033】
前記式(IV)、(V)、(VIII)又は(IX)においてX又はXで表される連結基を形成する鎖員は、炭素原子、窒素原子、酸素及びイオウ原子から選択され得るが、好ましくは炭素原子を含む。前記連結基は、例えば前記の置換又は非置換のC1−6−アルキル基からなる側鎖を有してもよく、前記側鎖はスピロ環構造をとってもよく、またシクロアルカン環、ベンゼン環、複素環等が縮環した構造をとってもよい。好ましい連結基としては、置換又は非置換のアルキレン基が挙げられる。前記式(IV)及び(V)においてXで表される連結基の鎖員は、1〜4、好ましくは1〜3である。
前記式(IV)及び(V)において、RとXは連結して、C(R)=CHとともに5〜7員環を形成してもよい。例えば、RとXが連結して、C(R)=CHとともに6員環を形成する場合の前記式(IV)で示される化合物としては、下記式の化合物が挙げられる。
−NH−CH(R)CHCH−C(R)=CH(R) (IV−1)
(式中、Rは水素原子又は置換もしくは非置換のC1−6−アルキル基を表し、Rは置換基を表し、RとRは連結して6員環を形成する。)
【0034】
前記式(VI)、(VII)、(VIII)及び(IX)においてArで表される芳香族基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;フリル基等の含酸素芳香族複素環基が挙げられる。
【0035】
前記芳香族基は、芳香族基、アシル基(例えばホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基等のC1−6−脂肪族アシル基;ベンゾイル基、トルオイル基等のアロイル基)、アシルオキシ基(例えばホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基等のC1−6−脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、トルオイルオキシ基等のアロイルオキシ基)、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、C1−6−アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基)等から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
本願第一及び第二の発明において、ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドの製法としては、特に制限はなく、例えば、パーフルオロアルカン酸無水物と、過酸化物、例えば過酸化水素、尿素−過酸化水素複合体、トリフェニルホスフィンオキシド−過酸化水素複合体、アミンオキシド−過酸化水素複合体、tert−ブチルペルオキシド、過酢酸とを反応させる方法が挙げられ、これらの方法で予め調製し、保存したものを用いることもできるが、工程の簡略化及び調製段階における好収率の点からin situでパーフルオロアルカン酸無水物及び尿素−過酸化水素複合体から生成させることが好ましい。
【0037】
前記ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドとしては、好ましくは、次式(I):
Rf−CO−OO−CO−Rf (I)
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。)
で示される化合物が挙げられ、当該化合物(I)は、好ましくは、次式(X):
Rf−CO−O−CO−Rf (X)
(式中、Rfは前記と同義である。)
で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と尿素−過酸化水素複合体とを反応させることにより得られる。この際の反応温度は、ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドの分解の点から−60℃〜−10℃であることが好ましく、−50℃〜−30℃であることが更に好ましい。
【0038】
本願第三の発明では、前記と同様の理由で、第1工程において、前記式(X)で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と尿素−過酸化水素複合体とを−60℃〜−10℃、好ましくは−50℃〜−20℃で反応させる。
【0039】
前記式(X)で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と尿素−過酸化水素複合体との量比は、当量比で、通常3:1〜20:1、好ましくは4:1〜10:1、更に好ましくは5:1〜10:1である。
【0040】
前記式(X)で示されるパーフルオロアルカン酸無水物と基質との量比は、当量比で、通常20〜3:1、好ましくは10〜6:1であり、尿素−過酸化水素複合体と基質との量比は、当量比で、通常5〜1:1、好ましくは3〜1:1である。
【0041】
本願第一、第二及び第三の発明は、反応を溶媒中又は無溶媒下で行うことができる。
【0042】
反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンが挙げられる。
【0043】
本願第一の発明においては、ビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、炭素−炭素不飽和結合、及び/又は芳香環に結合した水素原子を有する芳香環を含む化合物とを銅触媒の存在下で反応させる。銅触媒の不存在下では目的物がほとんど得られず、副反応も生じる。
【0044】
前記銅触媒としては、1価又は2価の銅の塩又は錯塩であれば特に制限はないが、例えばハロゲン化銅(I)(例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I))、ハロゲン化銅(II)(例えば、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II))、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、2−チオフェンカルボン酸銅(I)(CuTC)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、[Cu(CHCN)]PF(tetrakis(acetonitrile)copper(I) hexafluorophosphate)、好ましくは[Cu(CHCN)]PFが挙げられる。前記銅触媒の使用量は、通常1〜30mol%、好ましくは10〜20mol%である。
【0045】
本願第一の発明におけるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと前記基質化合物との反応の反応温度は、通常−5℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃であり、反応時間は、通常2〜24時間、好ましくは2〜4時間である。
【0046】
本願第二の発明においては、前記式(I)で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと、前記式(VIII)で示される化合物とを銅触媒の不存在下で反応させる。銅触媒の存在下では目的物が21%しか得られず、副反応も生じる。
【0047】
本願第二の発明におけるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと前記基質化合物との反応の反応温度は、通常−5℃〜100℃、好ましくは0℃〜90℃であり、反応時間は、通常5分〜48時間、好ましくは2〜24時間である。
【0048】
本願第三の発明では、目的物を効率よく製造する点から、第2工程において、第1工程で生成された前記式(I)で示されるビス(パーフルオロアルカノイル)パーオキシドと前記式(VI)で示される化合物とを0℃〜100℃、好ましくは20℃〜90℃で反応させる。本反応は、銅触媒の不存在下でも行うことができるが、前記銅触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0049】
前記の反応で得られる生成物における窒素原子等が保護基で保護されている場合には、必要に応じて、常法に従って脱保護することができる。
【0050】
前記のようにして得られる生成物を精製するには、通常用いられる手法、例えばシリカゲル等を担体として用いたカラムクロマトグラフィーや蒸留、又はヘキサン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、水、又はこれらの混合溶媒等を用いた再結晶法によればよい。カラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、ヘキサン、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2015−244124の明細書に記載される内容を包含する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)6,6,6−トリフルオロ−3−ヘキセニルベンゾエートの合成
【化4】
【0053】
(1)尿素−過酸化水素複合体(23mg,0.24mmol)のジクロロメタン(0.5mL)懸濁液にトリフルオロ酢酸無水物(282μL,2.0mmol)を−40℃でゆっくりと加えた。同じ温度で1時間撹拌後、安息香酸4−ペンテニル(1a)(32mg,0.2mmol,濃度0.4M)及び[Cu(CHCN)]PF(8mg,0.02mmol)を加えた。次いで、この混合物を直ちに40℃に加温し、3時間撹拌した。酢酸エチル5mLで希釈後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、次いで飽和炭酸カリウム水溶液で反応を停止させた。水層を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を留去した。粗生成物を、シリカゲルを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=5/95)に付し、目的化合物を無色油状物として得た(収量49mg、収率95%、E/Z比=78/22)。
【0054】
(2)ジクロロメタンの使用量を0.25mL(基質(1a)濃度0.2M)として、触媒の種類を変更した以外は前記(1)と同様にして反応を行った。結果を表1に示す。表1中のentry No.2は前記(1)に相当する。
【0055】
【表1】
a:収率及びE/Z比は、それぞれH NMR分析及び19F NMR分析により求めた。
b:反応はジクロロメタン中、基質(1a)濃度0.4Mで行った。
c:単離後の収率
【0056】
表1に示す結果から、銅触媒、特に[Cu(CHCN)]PFがトリフルオロメチル基を導入するための触媒として優れていることがわかる。
【0057】
一方、触媒を用いずに前記と同様に処理したところ、以下に示すように目的化合物はほとんど得られなかった。
【0058】
【化5】
【0059】
(3)前記(2)の表1中のentry No.1における銅触媒([Cu(CHCN)]PF)の使用量を変更した以外は前記entry No.1と同様にして反応を行った。結果を表2に示す。表2中のentry No.2は表1中のentry No.1に相当する。
【0060】
【表2】
【0061】
触媒量を減らした場合においても好収率で目的生成物が得られた。
【0062】
(4)前記(3)の表2中のentry No.2及びentry No.4におけるトリフルオロ酢酸無水物(TFAA)及びジクロロメタンの使用量を変更した以外は前記entry No.2又はentry No.4と同様にして反応を行った。結果を表3に示す。なお、表3中のentry No.3における尿素−過酸化水素複合体の使用量は1.5当量とした。表3中のentry No.1及びentry No.2は、それぞれ表2中のentry No.2及びentry No.4に相当する。
【0063】
【表3】
【0064】
(実施例2)各種パーフルオロアルキル化化合物の合成
下記に記載しない限り、実施例1(1)の条件を用いて、各種パーフルオロアルキル化化合物を合成した。結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
a:E/Z比は19F NMR分析により求めた
b:反応はジクロロメタン中、基質濃度0.2M、0℃で行った。
c:触媒は20mol%用いた。
d:粗生成物はEtN/SiOで処理して加水分解した。
【0066】
(実施例3)トリフルオロメチル化含窒素複素環化合物の合成
基質としてN−トシル−N−(4−ペンテニル)アミンを用いた以外は実施例1(1)と同様にして反応を行ったところ、以下に示すように、トリフルオロメチル化含窒素複素環化合物を好収率(82%)で得た。
【0067】
【化6】
【0068】
(実施例4)1-tosyl-2-(2,2,2-trifluoroethyl)aziridineの合成
基質濃度を1.0M、反応時間を7分とし、基質にN−トシルアリルアミンを用いて実施例1(1)と同様に反応を行ったところ、以下に示すように、トリフルオロメチル化アジリジンを高収率(87%)で得た。同様の反応は、4当量のTFAA及び1.2当量の尿素過酸化水素を0.4Mジクロロメタン中、0℃で1時間の撹拌を行った後、10mol%の銅触媒及び基質を加えて0℃で1時間反応させた場合も同等な収率(91%)で目的生成物を得ることができる。
【0069】
【化7】
【0070】
(実施例5)各種トリフルオロメチル化含窒素複素環化合物の合成
基質の種類を変更する以外は実施例3又は実施例4と同様に処理することにより以下の化合物を製造することができる。
【0071】
【化8】
a:1,2−ジクロロエタン溶媒中、反応温度60℃
b:銅触媒20mol%
c:トリフルオロ酢酸無水物10mol%
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表し、Tsはトシル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を表し、Rは水素原子又は置換基を表す。)
【0072】
(実施例6)アジリジンの誘導化
実施例4で合成したアジリジン生成物は、種々の求核剤による開環反応によって様々なトリフルオロメチルアミン類へと誘導化できる。更に、トリプタミン生成物はトシル基の脱保護の後、ピクテ・スペングラー反応によって、医薬等の生理活性分子として知られているテトラヒドロハルミンやスピロインドロン骨格を有する化合物を合成することができる。
【0073】
【化9】
【0074】
(実施例7)芳香族化合物のトリフルオロメチル化
(1)基質をtert−ブチルベンゼンに用いた以外は実施例1と同様の反応条件で反応を行った。収率はGCMS分析によって求めた。
結果を以下に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
銅触媒を使用しない場合の収率が20%(o−:m−:p−=57:35:8)であるのに対して、20mol%銅触媒存在下で反応させた場合、62%(o−:m−:p−=57:35:8)と好収率で目的生成物が得られた。また、銅触媒の不存在下の場合でも、反応時間を長くすれば、銅触媒を用いた場合と同等な収率で目的生成物が得られることが分かった。銅触媒を用いることにより反応時間が短縮できることがわかる。
【0077】
(2)前記(1)の表5中のentry No.2における溶媒であるジクロロメタンを使用せずに反応を行ったところ、以下に示すように、69%(o−:m−:p−=57:34:9)と好収率で目的生成物が得られた。
【0078】
【化10】
【0079】
(実施例8)パーフルオロアルキル化環状化合物の合成
(1)実施例1において、安息香酸4−ペンテニルの代わりに5−(p−トリル)−1−ペンテン(濃度0.2M)を用いて、[Cu(CHCN)]PFの存在下及び不存在下で同様に処理したところ、以下に示すように、銅触媒の不存在下でパーフルオロアルキル化と同時に分子内環化が生じ、トリフルオロメチル化環状化合物3cが好収率で得られた。
【0080】
【化11】
【0081】
(2)前記(1)における5−(p−トリル)−1−ペンテンを、芳香環とともに末端二重結合を有する他の化合物に代えて、以下に示す種々のパーフルオロアルキル化環状化合物を得た。
【0082】
【化12】
a:基質濃度0.4M
b:基質濃度0.02M
c:1,2-ジクロロエタン溶媒中、反応温度60℃
d:基質には無保護の2-アリルアニリンを用いた。
【0083】
前記の実施例で合成された化合物のうち、新規物質である化合物の化合物名、構造式及び物性を以下に示す。
【0084】
1-methyl-4-(6,6,6-trifluoro-3-hexenyl)benzene (2c):
【化13】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.30-2.40 (overlap, 5H), 2.66 (m, 2H), 2.76 (m, 2H), 5.41 (E-isomer, dt, J = 15.4, 7.1 Hz; Z-isomer, overlap, 1H), 5.74 (E-isomer, dt, J = 15.4, 6.8 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 7.05-7.30 (overlap, 4H)
13C NMR (E-isomer; 100 MHz, CDCl3)
21.1, 34.5, 35.1, 37.5 (q, J = 28.9 Hz), 118.3 (q, J = 3.9 Hz), 126.2 (q, J = 276 Hz), 128.4 (2C), 129.2 (2C), 135.5, 137.6, 138.4
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
E-isomer, -66.5 (t, 10.8 Hz); Z-isomer, -66.1 (t, 10.8 Hz)
【0085】
15,15,15-trifluoro-12-pentadecen-2-one (2d):
【化14】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.20-1.43 (overlap, 12H), 1.56 (m, 2H), 2.04 (m, 2H), 2.13 (s, 3H), 2.42 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.76 (E-isomer, m, 2H), 2.84 (Z-isomer, m, 2H), 5.36 (E-isomer, dtt, J = 15.2, 7.0, 1.5 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 5.68 (E-isomer, dt, J = 15.2, 7.1 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H)
13C NMR (E-isomer, 100 MHz, CDCl3)
24.0, 29.0, 29.1, 29.3, 29.5 (3C), 29.9, 32.4, 37.5 (q, J = 28.9 Hz), 43.9, 117.6 (q, J = 3.9 Hz), 126.2 (q, J = 276 Hz), 138.6, 209.5
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
E-isomer, -66.6 (t, 10.8 Hz); Z-isomer, -66.1 (t, 10.8 Hz)
【0086】
N-phenyl-N-(6,6,6-trifluoro-3-hexenyl)trifluoroacetamide (2h):
【化15】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.36 (E-isomer, m, 2H), 2.39 (Z-isomer, m, 2H), 2.72-2.88 (m, 2H), 3.79 (Z-isomer, t, J = 7.7 Hz, 2H), 3.83 (E-isomer, t, J = 7.2 Hz, 2H), 5.48 (E-isomer, dtt, J = 15.4, 7.0, 1.4 Hz, 1H), 5.54 (Z-isomer, dtt, J = 10.9, 7.4, 1.6 Hz, 1H), 5.67 (E-isomer, dt, J = 15.4, 7.0 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 7.18-7.24 (m, 2H), 7.40-7.49 (m, 3H)
13C NMR (E-isomer, 100 MHz, CDCl3)
30.3, 37.4 (q, J = 29.9 Hz), 50.8, 116.4 (q, J = 288 Hz), 121.0 (q, J = 2.9 Hz), 125.9 (q, J = 276 Hz), 128.5 (2C), 129.3 (2C), 129.6, 133.8, 138.9, 156.8 (q, J = 35.6 Hz)
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
E-isomer, -67.2 (s, 3F), -66.5 (t, 11.6 Hz, 3F)
Z-isomer, -67.2 (s, 3F), -66.1 (t, 11.6 Hz, 3F)
【0087】
4-methyl-N-(7,7,7-trifluoro-4-heptenyl)benzenesulfonamide (2i):
【化16】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.57 (m, 2H), 2.06 (m, 2H), 2.43 (s, 3H), 2.68-2.85 (m, 2H), 2.90-2.98 (m, 2H), 4.35-4.53 (br, 1H), 5.34 (E-isomer, m, 1H), 5.41 (Z-isomer, m, 1H), 5.60 (E-isomer, dt, J = 15.4, 6.6 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 7.31 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.74 (d, J = 8.1 Hz, 2H)
13C NMR (E-isomer, 100 MHz, CDCl3)
21.6, 28.8, 29.4, 37.3 (q, J = 28.9 Hz), 42.5, 118.9 (q, J = 2.9 Hz), 126.0 (q, J = 276 Hz), 127.2 (2C), 129.8 (2C), 136.7, 137.0, 143.6
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
E-isomer, -66.5 (t, 10.8 Hz); Z-isomer, -66.0 (t, 10.8 Hz)
【0088】
4-methyl-N-(7,7,8,8,8-pentafluoro-4-octenyl)benzenesulfonamide (2i’):
【化17】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.56 (m, 2H), 2.07 (m, 2H), 2.43 (s, 3H), 2.62-2.83 (m, 2H), 2.90-2.96 (m, 2H), 4.70-4.76 (br, 1H), 5.34 (E-isomer, dt, J = 15.3, 7.2 Hz, 1H), 5.41 (Z-isomer, br, 1H), 5.60 (E-isomer, dt, J = 15.3, 6.9 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 7.31 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.75 (d, J = 8.4 Hz, 2H)
13C NMR (E-isomer, 100 MHz, CDCl3)(シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
21.6, 28.9, 29.5, 34.5 (t, J = 22.2 Hz), 42.6, 117.9 (t, J = 3.9 Hz), 127.2 (2C), 129.8 (2C), 135.4, 137.2, 143.6
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
E-isomer, -117.2 (m, 2F), -84.7 (m, 3F); Z-isomer, -116.9 (m, 2F) -84.8 (m, 3F)
【0089】
4-methyl-N-(7,7,8,8,9,9,9-heptafluoro-4-nonenyl)benzenesulfonamide (2i’’):
【化18】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.57 (m, 2H), 2.06 (m, 2H), 2.42 (s, 3H), 2.65-2.87 (m, 2H), 2.88-2.98 (m, 2H), 4.92 (br, 1H), 5.34 (E-isomer, dt, J = 15.4, 7.1 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 5.60 (E-isomer, dt, J = 15.4, 6.9 Hz, 1H; Z-isomer, overlap, 1H), 7.30 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.76 (d, J = 8.1 Hz, 2H)
13C NMR (E-isomer, 100 MHz, CDCl3)(シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
21.5, 28.8, 29.5, 34.5 (t, J = 22.2 Hz), 42.5, 117.7 (t, J = 4.9 Hz), 127.2 (2C), 129.8 (2C), 135.6, 137.4, 143.6
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
E-isomer, -127.4 (m, 2F), -114.2 (m, 2F), -80.6 (m, 3F);
Z-isomer, -127.2 (m, 2F), -113.9 (m, 2F), -80.5 (m, 3F)
【0090】
7-fluoro-1-(2,2,2-trifluoroethyl)-1,2,3,4-tetrahydronaphtalene (3j):
【化19】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.77-1.94 (m, 4H), 2.30-2.51 (m, 2H), 2.66-2.79 (m, 2H), 3.18 (m, 1H), 6.80-6.87 (m, 2H), 7.03 (dd, J = 9.4, 6.2 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
18.9, 27.7, 28.7, 32.5 (br), 40.8 (q, J = 27.0 Hz), 113.7 (d, J = 21.2 Hz), 114.8 (d, J = 20.2 Hz), 126.9 (q, J = 277 Hz), 130.9 (d, J = 7.7 Hz), 132.7 (d, J = 2.9 Hz), 140.5 (d, J = 6.7 Hz), 161.2 (d, J = 244 Hz)
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-63.8 (t, J = 11.6 Hz, 3F), -116.9 (m, 1F)
【0091】
7-methoxy-1-(2,2,2-trifluoroethyl)-1,2,3,4-tetrahydronaphtalene (3k):
【化20】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.73-1.99 (m, 4H), 2.30-2.52 (m, 2H), 2.62-2.79 (m, 2H), 3.13-3.22 (m, 1H), 3.78 (s, 3H), 6.66 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.72 (dd, J = 8.4, 2.6 Hz, 1H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
19.3, 27.8, 28.6, 32.6 (q, J = 1.9 Hz), 40.9 (q, J = 27.0 Hz), 55.4, 112.7, 113.5, 127.1 (q, J = 277 Hz), 129.3, 130.4, 139.8, 157.9
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-63.8 (t, 11.6 Hz)
【0092】
7-methyl-1-(2,2,3,3,3-pentafluoropropyl)-1,2,3,4-tetrahydronaphtalene (3c’):
【化21】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.73-2.01 (m, 4H), 2.20-2.49 (m, 5H), 2.63-2.80 (m, 2H), 3.21-3.34 (m, 1H), 6.90-6.99 (m, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)(シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
19.2, 21.1, 28.4 (m), 28.9, 31.1 (br), 37.5 (t, J = 20.2 Hz), 127.4, 129.3, 129.5, 134.2, 135.8, 138.8
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-117.0 (m, 2F), -85.6 (m, 3F)
【0093】
7-methyl-1-(2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl)-1,2,3,4-tetrahydronaphthalene (3c’’):
【化22】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.73-2.01 (m, 4H), 2.25-2.50 (m, 5H), 2.64-2.81 (m, 2H), 3.23-3.37 (m, 1H), 6.88-6.99 (m, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)(シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
19.2, 21.2, 28.5 (m), 31.0 (br), 37.4 (t, J = 20.2 Hz), 127.4, 129.3, 129.5, 134.2, 135.8, 138.8
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-127.7 (m, 2F), -114.0 (m, 2F), -80.3 (m, 3F)
【0094】
1-tosyl-2-(2,2,2-trifluoroethyl)aziridine:
【化23】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.16 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 2.16-2.40 (m, 2H), 2.45 (s, 3H), 2.75 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 2.89-2.95 (m, 1H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.82 (d, J = 8.0 Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
21.8, 31.9, 32.0 (q, J = 3.9 Hz), 36.3 (q, J = 29.9 Hz), 125.3 (q, J = 277 Hz),128.3 (2C), 129.9 (2C), 134.5, 145.2
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-65.3 (t, J = 10.1 Hz)
【0095】
1-((4-methoxyphenyl)sulfonyl)-2-(2,2,2-trifluoroethyl)aziridine:
【化24】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.16 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 2.18-2.34 (m, 2H), 2.73 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 2.86-2.92 (m, 1H), 3.90 (s, 3H), 7.02 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.87 (d, J = 9.0 Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
31.9, 33.0 (q, J = 3.9 Hz), 36.3 (q, J = 29.9 Hz), 56.8, 114.5 (2C), 125.3 (q, J = 277 Hz), 128.8, 130.5 (2C), 164.1
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-65.3 (t, J = 10.1 Hz)
【0096】
1-((4-bromophenyl)sulfonyl)-2-(2,2,2-trifluoroethyl)aziridine:
【化25】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.20 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 2.23-2.32 (m, 2H), 2.79 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 2.94-3.00 (m, 1H), 7.71 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 7.81 (d, J = 8.7 Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
32.0, 33.4 (q, J = 4.8 Hz), 36.3 (q, J = 29.9 Hz), 125.2 (q, J = 275 Hz),129.4, 129.7 (2C), 132.6 (2C), 136.6
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-65.3 (t, J = 10.1 Hz)
【0097】
1-((4-fluorophenyl)sulfonyl)-2-(2,2,2-trifluoroethyl)aziridine:
【化26】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.20 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 2.22-2.32 (m, 2H), 2.80 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 2.92-2.98 (m, 1H), 7.21-7.27 (m, 2H), 7.95-8.00 (m, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
32.0, 33.4 (q, J = 3.9 Hz), 36.3 (q, J = 28.9 Hz), 116.7 (d, J = 23.1 Hz, 2C), 125.1 (q, J = 277 Hz), 131.1 (d, J = 9.6 Hz, 2C), 133.6, 156.7
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-65.3 (t, J = 10.1 Hz, 3H), -102.8 (m, 1H)
【0098】
1-mesyl-2-(2,2,2-trifluoroethyl)aziridine:
【化27】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.18 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 2.21-2.50 (m, 2H), 2.72 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 2.86-2.94 (m, 1H), 3.08 (s, 3H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
30.5, 33.1 (q, J = 3.9 Hz), 36.3 (q, J = 28.9 Hz), 39.7, 125.5 (q, J = 277 Hz)
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-65.0 (t, J = 10.1 Hz)
【0099】
7-tosyl-2-(trifluoromethyl)-7-azabicyclo[4.1.0]heptane:
【化28】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.11-1.40 (m, 2H), 1.50-1.60 (m, 1H), 1.65-1.80 (m, 2H), 1.99-2.10 (m, 1H), 2.28-2.41 (m, 1H), 2.45 (s, 3H), 2.97 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.13 (m, 1H),7.35 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.80 (d,J = 8.1 Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
16.4,20.5 (q, J = 1.9 Hz), 21.8, 22.6, 37.3 (q, J = 3.9 Hz), 39.1, 39.2 (q, J = 27.0 Hz), 126.8 (q, J = 279 Hz), 127.9 (2C), 129.9 (2C), 135.1, 144.8
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-72.0 (d, J = 10.1 Hz)
【0100】
2-(2,2,3,3,3-pentafluoropropyl)-1-tosylaziridine:
【化29】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.03-2.15 (m, 1H), 2.17 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 2.29-2.43 (m, 1H), 2.46 (s, 3H), 2.76 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 2.97-3.04 (m, 1H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.0 Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) (シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
21.8, 32.2 (t, J = 5.8 Hz), 32.3, 33.5 (t, J = 22.2 Hz), 128.2 (2C), 130.0 (2C),134.5, 145.2
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-85.4 (m, 3F), -117.3 (m, 2F)
【0101】
2-(2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl)-1-tosylaziridine:
【化30】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.06-2.23 (m, 1H), 2.17 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 2.30-2.42 (m, 1H), 2.46 (s, 3H), 2.76 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 2.98-3.05 (m, 1H), 7.36 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.83 (d, J = 8.0 Hz, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) (シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
21.8, 32.1 (t, J = 4.8 Hz), 32.2, 33.6 (t, J = 21.2 Hz), 128.2 (2C), 129.9 (2C),134.5, 145.0
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-80.4 (m, 3F), -114.3 (m, 2F), -127.5 (m, 2F)
【0102】
1-mesyl-2-(2,2,2-trifluoroethyl)pyrrolidine:
【化31】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.87-2.01 (overlap, 3H), 2.14 (m, 1H), 2.24 (m, 1H), 2.85 (overlap, 4H), 3.31 (m, 1H), 3.41 (m, 1H), 3.89 (m, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
24.6, 31.8 (q, J = 1.2 Hz), 35.0, 40.3 (q, J = 27.0 Hz), 48.8, 54.8 (q, J = 2.9 Hz), 125.6 (q, J = 277 Hz)
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-63.5 (t, J = 10.9 Hz)
【0103】
1-tosyl-2-(2,2,2-trifluoromethyl)octahydro-1-indole:
【化32】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
0.91-1.42 (overlap, 6H), 1.63 (m, 1H), 1.80 (m, 2H), 2.21-2.35 (m, 2H), 2.36-2.43 (overlap, 4H), 2.80 (m, 1H), 3.27 (m, 1H), 4.15 (m,1H), 7.28 (d, J = 8.2 Hz, 2H),7.70 (d, J = 8.2 Hz,2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
21.7, 25.1, 25.2, 29.4, 29.9, 37.8, 41.3 (q, J = 27.0 Hz),42.9, 55.5 (q, J = 2.9 Hz), 66.0, 126.1 (q, J = 277 Hz), 127.2 (2C), 129.8 (2C), 139.4, 143.3
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-63.1 (t, J = 11.0 Hz)
(diastereomer)
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
0.91-1.42 (overlap, 6H), 1.70 (m, 1H), 1.80 (overlap, 3H), 2.21-2.25 (m, 2H),245 (s, 3H), 2.55 (m, 1H), 2.88 (m, 1H), 3.77 (m, 1H), 7.35 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.68 (overlap, 2H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
21.7, 24.7, 25.4, 29.6, 32.8, 34.5, 41.2 (q, J = 27.0 Hz), 42.9, 55.1 (q, J = 2.9 Hz), 66.5, 126.1 (q, = J = 277 Hz), 128.0 (2C), 129.9 (2C), 132.9, 144.0
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-63.7 (t, J = 11.0 Hz)
【0104】
5-chloro-1-tosyl-2-(2,2,2-trifluoroethyl)indole:
【化33】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.38 (s, 3H), 2.44 (m, 1H), 2.76 (dd, J = 16.8, 3.3 Hz, 1H), 2.88-2.99 (overlap, 2H), 4.42 (m, 1H), 7.03 (m, 1H), 7.21 (overlap, 3H), 7.54 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.62 (d, J = 8.6 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
21.7, 34.1 (q, J = 1.5 Hz), 40.7 (q, J = 26.9 Hz), 57.2 (q, J = 3.2 Hz), 118.3, 125.6, 125.6 (q, J =276 Hz), 127.3 (2C), 128.4, 130.1 (2C), 130.5, 132.7, 133.9, 139.6, 144.8
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-62.9 (t, J = 10.9 Hz)
【0105】
4-(2,2,3,3,3-pentafluoropropyl)-6-methyl-1,2-benzothiazinane dioxide:
【化34】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.32-2.61 (m, 2H), 2.41 (s, 3H), 3.31-3.36 (m, 1H), 3.73 (m, 1H), 4.08 (m, 1H), 4.76 (m, 1H), 7.06 (s, 1H), 7.26 (d, J = 8.2 Hz,1 H), 7.74 (d, J = 8.2 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) (シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
21.7, 31.1, 34.9 (t, J = 21.1 Hz), 45.3, 124.8, 129.4, 129.7, 135.0, 137.3, 143.8
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-85.4 (m, 3F), -116.6 (m, 2F)
【0106】
4-(2,2,3,3,4,4,4-heptafluorobutyl)-6-methyl-1,2-benzothiazinane dioxide:
【化35】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.40-2.64 (m, 2H), 2.41 (s, 3H), 3.33-3.38 (m, 1H), 3.73 (m, 1H), 4.07 (m, 1H), 4.70 (m, 1H), 7.06 (s, 1H), 7.27 (d, J = 8.0 Hz,1 H), 7.75 (d, J = 8.0 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) (シグナルの強度が低く、カップリングが複雑なため、パーフルオロアルキル基の炭素は指定できなかった。)
21.7, 31.0, 34.9 (t, J = 21.1 Hz), 45.4, 124.8, 129.4, 129.7, 135.0, 137.3, 143.8
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-80.1 (m, 3F), -113.4 (m, 2F), -127.3 (m, 2F)
【0107】
1-trifluoroacetyl-5-chloro-3-(2,2,2-trifluoroethyl)indoline:
【化36】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
2.30-2.45 (m, 1H), 2.60-2.75 (m, 1H), 3.74-3.86 (m, 1H), 4.09 (dd, J = 11.6, 6.8 Hz, 1H), 4.51 (m,1H),7.25 (m, 1H), 7.31(dd, J = 8.7, 2.1 Hz, 1H), 8.73 (d, J = 8.7 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
35.1, 38.5 (q, J = 28.9 Hz), 54.0 (q, J = 1.9 Hz), 116.0 (q, J = 287 Hz), 119.2, 124.3, 126.0 (q, J = 277 Hz), 129.3, 131.6, 134.3, 140.0, 154.2 (q, J = 38.5 Hz)
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-64.6 (t, J = 10.1 Hz, 3F), -72.4 (s, 3F)
【0108】
1-trifluoroacetyl-5-ethoxycarbonyl-3-(2,2,2-trifluoroethyl)indoline:
【化37】
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
1.39 (t, J =7.1 Hz, 3H), 2.03-2.45 (m, 1H), 2.69-2.82 (m, 1H), 3.38 (m, 1H), 4.12 (m, 1H), 4.37 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.54 (m, 1H), 7.92 (s, 1H), 8.04 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 8.24 (d, J = 8.5 Hz, 1H)
13C NMR (100 MHz, CDCl3)
14.5, 35.0, 38.6 (q, J = 28.9 Hz), 54.0 (q, J = 1.9 Hz), 61.5, 115.9 (q, J = 288 Hz), 117.8, 125.3, 126.1 (q, J = 277 Hz), 128.5, 131.4, 132.8, 145.0, 154.5 (q, J = 38.5 Hz), 165.7
19F NMR (376 MHz, CDCl3)
-64.6 (t, J = 10.1 Hz, 3F), -72.5 (s, 3F)
【0109】
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。