(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
基材の表面に金属の層を形成し鏡面状態にする方法として、めっき加工や真空蒸着等がある。一般的にめっき加工としては、例えば装飾めっきとして、ニッケル、クロム、金、銀又は黄銅等を、電気めっきや無電解めっきを含む湿式めっきや、溶融めっき、溶射法又は気相めっきを含む乾式めっきで基材の表面に金属層を形成させるめっき加工技術が実施されている。
【0003】
また、真空蒸着としては、一般的に真空中で蒸着金属を加熱し、気化、昇華させ気体分子となった蒸着金属が、基材に衝突、付着することによって金属の蒸着被膜を形成する技術が実施されている。
【0004】
特許文献1には、基材上に薄片状金属顔料と、分子量1500 以下の硬化性モノマーと、溶媒とを含む塗料組成物を塗布する工程と、塗布された塗膜を55〜65℃で3〜5分間加熱させて乾燥させて硬化させる工程とを有する、金属調表面を有する物品の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、アルコール溶媒中にスチレン−無水マレイン酸樹脂構造を有し、前記無水マレイン酸の一部が末端水酸基のポリアルキレングリコール又は末端アミノ基のポリアルキレングリコ ールで変性されているものからなる酸価が150以下の高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀及び炭酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物を分散させたアルコール 溶液を用い、前記アルコール溶液中に超音波を照射することにより、銀ナノ粒子が分散したアルコール溶液を得ることからなる銀鏡膜層形成用組成液を基材の表面にスプレー塗装する工程と、前記スプレー塗装された銀鏡膜層形成用組成液を常温下で乾燥する工程と、を備える銀鏡膜層の形成方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
湿式めっきの場合には、めっき液槽、電極及び電力などの設備を要し、めっき排水は環境汚染の原因とねるので排水処理が必要となるという問題があり、気相めっきの場合も真空蒸着法であれば真空装置や加熱設備が必要になるなど、いずれにしても高額なめっき設備を必要とする問題があった。
【0008】
真空蒸着の場合には、真空装置や加熱装置を要し、空気の埃が付着して基材表面にブツ(成膜表面にできる小さい突起物)ができるのを防ぐために密閉空間を確保しなければならないという問題があった。また、真空蒸着やめっきを行うためには被対象物(本発明の基材に該当)が例えば自動車に装着された部品である場合には、その被対象物を外さなければならないという問題もあった。
【0009】
特許文献1の金属調表面を有する物品の製造方法は、塗膜を55〜65℃で3〜5分間加熱させて乾燥させて硬化させる工程を含むので、加熱設備が必要になるという問題や、物品の表面に金属調光沢ができるが人の容姿や物の像を映し得る鏡面にはなっていないという問題があった。
【0010】
特許文献2の銀鏡膜層の形成方法は、銀ナノ粒子が含有されたアルコール溶液中に超音波を照射するので、超音波設備が必要になるという問題があった。
【0011】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、真空装置、加熱設備や超音波設備等のめっき設備又は真空蒸着装置を必要とせずに、金属鏡面を形成させたい部品を取り外すことなく装着したままの状態で、空気中に埃が浮遊する空間であっても基材の表面を鏡面状態にする金属鏡面形成コーティング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の金属鏡面形成コーティング方法は、扁平状、平板状又は球形状の金属粒子
、及び、前記金属粒子を基材に接着させることを目的とする接着用組成物を含み、かつ研磨剤を含まないコーティング組成物を、基材の表面に塗布した、又は、塗布しながら、前記表面上の前記コーティング組成物に対して、バフによる塗り拡げ作業及び押圧作業を実施しながら前記バフを移動させることにより、前記表面上に前記金属粒子を貼り付けて金属層を形成し、前記金属層表面が鏡に映るのと同じレベルで映る鏡面になる金属粒子層形成工程を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の金属鏡面形成コーティング方法は、請求項
1において、前記コーティング組成物塗布前に、前記基材の表面にアンダーコート塗布するアンダーコート塗布工程を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の金属鏡面形成コーティング方法は、請求項
1又は2において、形成された前記金属粒子層の表面に、トップコートを塗布するトップコート塗布工程を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の金属鏡面形成コーティング方法は、基材の表面に扁平状、平板状又は球形状の金属粒子を平滑に貼り付けることができ、人の容姿や物の像をくっきりと映すことができる鏡面をつくることができるという効果を奏する。
【0016】
また、基材の表面に鏡面仕上げの金属粒子層を形成するためには、一般的にはめっき専用の特殊な建物内に設置する酸洗設備、電気めっき液槽、加温設備や超音波設備を必要とし電力費も高くかかるのに対して、また真空蒸着の場合は真空装置や加熱装置を必要とするのに対して、本発明の金属鏡面形成コーティング方法は、酸洗設備や電気めっき液槽を設置していない場所で、かつクリーンルームでなく真空でない作業環境、すなわち一般的な作業環境で常温で鏡面の金属粒子層を形成させることができ、電力費もほとんどかからないという効果を奏する。
【0017】
また、クリーンルームでなく真空でない作業環境で作業することから、空気中の埃が基材の表面上に付着するが、その場合は形成される金属粒子層の膜厚が薄いので、目視で視認可能な又は光の反射で存在が視認可能な大きさの塵は付着しないという効果を奏する。万一、小さい塵が付着しても鏡面としての映りにはほとんど影響を与えないという効果を奏する。
【0018】
さらに、基材の形態は平面状や曲面状等いかなる形状の面状であってもよく、例えば基材の事例として自動車のドア取手とする場合に、真空蒸着やめっきの場合は自動斜のドアからドア取手を外さねばならないが、本発明の場合は自動車にドア取手を装着させた状態で実施することができるという顕著な効果を奏する。
【0019】
さらに、基材を、太陽光を透過させる物として例えば透明なガラスとした場合には、前記ガラス表面に本発明の金属鏡面形成コーティング方法を実施することにより、透明性を有しながら遮熱効果を有するとともに、明るい側から金属鏡面形成コーティング方法を実施したガラスを通して暗い側を見たときは光の反射により暗い側が見えにくくなるが、逆に暗い側から金属鏡面形成コーティング方法を実施したガラスを通して明るい側を見たときは前記金属鏡面形成コーティング方法を実施前とほぼ同じレベルで見えるという効果を奏する。
【0020】
また、コーティング組成物に含有されている金属粒子が押圧を加えられて前記基材の表面上に接着した後に、前記金属粒子を前記基材表面に固定させ、かつ剥がれないようにするという効果を奏する。
【0021】
請求項
2に記載の金属鏡面形成コーティング方法は、基材の表面にアンダーコートすることにより密着性を向上させる効果を奏する。
【0022】
請求項
3に記載の金属鏡面形成コーティング方法は、人の容姿や物の像を映し得る高い鏡面状態を長期に亘って持続させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の金属鏡面形成コーティング方法の工程のフローを示す図である。
【
図2】2層の金属粒子層形成工程の手順のフローを示す図である。
【
図3】1層の金属粒子層形成工程の手順のフローを示す図である。
【
図4】金属粒子層形成工程のコーティング組成物と回転式ポリッシャー使用状態を示す図である。
【
図5】金属粒子層形成工程のコーティング組成物と回転式ポリッシャー使用状態を示す図である。
【
図7】基材の表面に金属粒子層を形成させた状態を示す側面図である。
【
図8】金属粒子が扁平状又は平板状の場合で、1層目の金属粒子層形成工程の説明図で、(a)が基材表面にコーティング材を塗布した図で、(b)が回転式ポリッシャーで押圧作業と塗り拡げ作業を実施しようとする図で、(c)が1層目の金属粒子層が形成された状態の説明図である。
【
図9】金属粒子が扁平状又は平板状の場合で、2層目の金属粒子層形成工程の説明図で、(a)が基材表面にコーティング材を塗布した図で、(b)が回転式ポリッシャーで押圧作業と塗り拡げ作業を実施しようとする図で、(c)が2層目の金属粒子層が形成された状態の説明図である。
【
図10】金属粒子が扁平状又は平板状の場合で、3層目の金属粒子層形成工程の説明図で、(a)が基材表面にコーティング材を塗布した図で、(b)が回転式ポリッシャーで押圧作業と塗り拡げ作業を実施しようとする図で、(c)が3層目の金属粒子層が形成された状態の説明図である。
【
図11】金属粒子が球形状の場合の金属粒子層が形成された状態を示す側面の説明図である。
【
図12】ポリッシャーのバフの種類の事例の説明図で、(a)がバフ形状が円板状の場合、(b)がバフ形状が円錐状の場合を示す図である。
【
図13】自動車部品の塗装面という素材に対して、実施例と比較例の鏡としての映り具合の効果を比較した写真で、左側の写真が比較例で、右側が実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の金属鏡面形成コーティング方法1は、例えば
図6に示すような基材8表面に金属層50を形成させる方法であり、例えばめっき専用工場のような酸洗設備や電気めっき液槽等の設置を必要とせず、真空の密閉空間を必要とせず、一般的な作業空間で、常温で、基材8表面に金属層を形成することができる。
【0025】
本発明の金属鏡面形成コーティング方法1は金属粒子層形成工程3を備える。
図1に示すように、アンダーコート塗布工程2、金属粒子層形成工程3、トップコート塗布工程4を備えてもよい。また、アンダーコート塗布工程2と金属粒子層形成工程3の組み合わせでもよく、金属粒子層形成工程3とトップコート塗布工程4の組み合わせでもよい。
【0026】
本発明の金属鏡面形成コーティング方法1は、扁平状、平板状又は球形状の金属粒子9を含むコーティング組成物7を、基材8の表面に塗布した、又は、塗布しながら、前記表面上の前記コーティング組成物7に対して、バフ6による塗り拡げ作業及び押圧作業を実施しながら前記バフ6を移動させることにより、前記表面上に前記金属粒子9を貼り付けて金属層50を形成する金属粒子層形成工程3を備える。
【0027】
前記基材8は、
図6に示すような平面状や曲面状等の形態を有し、その表面状態は凹凸がある状態や平滑の状態等がある。いずれにしても基材8の表面に、バフ6により塗り拡げ作業と押圧P作業とを同時に実施することが可能な形態や表面状態であればいずれの形態や表面状態でもよい。また、前記基材8の材質は表面に金属層50を形成可能な材質であればよく、前記素材8の表面状態は素材のみならず塗装、めっき、樹脂等でもよい。
【0028】
前記基材8としては、例えば自動車の塗装面(バックミラーの部位、ドア取手、フロントフェンダーのタイヤアーチ部、リアフェンダーのタイヤアーチ部、ドア等)、建物のドア取手、引き戸の取手、装飾品の平面状・曲面状であって金属・樹脂部分、身の回り品の平面状・曲面状であって金属・樹脂部分等、金属製や樹脂製の平面状や曲面状の部位であればよい。いずれであっても、例えば基材8が自動車のサイドミラーの塗装面部位である場合に基材8となるサイドミラーの塗装面部位を取り外さずそのまま自動車に装着させた状態で本発明の金属鏡面形成コーティング方法1を実施することができる。
【0029】
前記金属粒子9は、金属粒子であればよいが、好ましくは例えばニッケル、銅、銀、金、クロム、コバルト、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金のうちの少なくとも1つ以上の元素を含む金属粒子9が該当する。また、前記金属粒子9の厚み、大きさや形状は、厚みが100nm以下、好ましくは厚さが50nm以下、より好ましくは厚さが30nm以下で、大きさが、一次粒子径が0.01μm〜100μm、好ましくは一次粒子径が0.5μm〜30μm、より好ましくは一次粒子径が1μm〜15μmの扁平状、平面状又は球形状である。さらに、前記金属粒子9としては、樹脂やガラス粒子に金属を被覆した粒子、金属に樹脂やシリカを被覆した粒子、又は、それらに着色した粒子も含む。
【0030】
前記コーティング組成物7には、前記金属粒子9を含有させ、前記金属粒子9を前記基材8に接着させることを目的とする接着用組成物を含有させている。前記接着用組成物は前記コーティング組成物7に溶け込んだ状態又は粒状の状態がある。そして、前記コーティング組成物7は、前記金属粒子9を5〜70重量%、接着用組成物を2〜20重量%、石油系溶剤、アルコール系溶剤又は水を10〜93重量%を含有する。
【0031】
前記接着用組成物としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、及び、フッ素樹脂の内の少なくとも1種以上の材質が含有されている。
【0032】
基材8の表面に塗布した前記表面上の前記コーティング組成物7に対して、バフ6による塗り拡げ作業及び押圧作業を同時に実施するとは、
図4に示すように、前記基材8の表面に前記コーティング組成物7を塗布し、基材8の表面に塗布されたコーティング組成物7に対して、バフ6を押圧Pで押し当てて、回転Rや往復(図示なし)による塗り拡げを加えることをいう。この場合は、コーティング組成物7を基材8の表面に塗布した後に、バフ6を使用して基材8の表面に対して塗り拡げ及び押圧を加える。
【0033】
基材8の表面に塗布しながら、前記表面上の前記コーティング組成物7に対して、バフ6による塗り拡げ作業及び押圧作業を同時に実施するとは、
図5に示すように、バフ6に前記コーティング組成物7を塗布し、前記コーティング組成物7を付着させたバフ6を基材9の表面に押圧Pで押し当てて基材9の表面に前記コーティング組成物7をバフ6により塗布しながら回転Rや往復(図示なし)の塗り拡げを加えることをいう。この場合は、コーティング組成物7をバフ6の表面に塗布した後に、バフ6を使用して基材8の表面に対して塗り拡げ及び押圧を加える。
【0034】
前記バフ6の塗り拡げ作業及び押圧作業を同時に実施するために使用する器具としては、円板型バフを取付可能な回転式ポリッシャー、円筒型又は円錐型バフを取付可能な回転式ドリルドライバー、平面型バフを取付可能な往復動する、例えばパッドが前後左右に振れるオービタルサンダー、パッドが前後往復運動をする往復直線運動式サンダー等の振動工具がある。
【0035】
前記回転式ポリッシャー5としては、ダブルアクションポリッシャー、ギアアクションポリッシャー、又は、シングルアクションポリッシャーが該当するが、バフ6を取付けられ回転Rと押圧Pを加えることができる器工具であればこれ以外の器工具でもよい。
【0036】
前記回転Rは、200〜16000rpmがよく、好ましくは1000〜10000rpm、さらに好ましくは2000〜8000rpmがよい。また、押圧Pは、8.0〜2500kg/m
2、好ましく50〜500kg/m
2、さらに好ましくは100〜300kg/m
2がよい。往復動の速度は前記回転速度と同じ速度が好ましい。また、往復動は、往復回数が100〜10000回/分がよく、好ましくは500〜8000回/分、さらに好ましくは1000〜3000回/分がよい。
【0037】
前記バフ6は、ウレタンバフ6、羊毛フェルトバフ6、又は、綿バフ6が該当する。前記バフ6の形態としては、例えば
図12(a)に示すような、裏面に硬板62を具備可能な円板状、あるいは、
図12(b)に示すように、中心部に硬い回転軸61を具備可能な円錐状や円筒状(図示なし)が該当するが、前記バフ6の表面側を基材8に対して押圧可能な形態であればいずれの形態でもよい。
【0038】
前記バフ6が、
図12(a)に示すような円板状の場合は基材8の表面形状が面形状を形成されている場合に適し、
図12(b)に示すような円錐状の場合は穴の内壁面やスリット部分等のバフが使用される空間が狭い場合に適し、円錐状なのでスリット幅が狭い部位から比較的広い部位まで押圧及び塗り拡げを加えることが可能である。
【0039】
次に、アンダーコート塗布工程2について説明する。アンダーコートは、基材8表面上に前記コーティング組成物7を塗布する前準備として、前記基材8表面への密着性を向上させる目的で使用するものであり、前記基材8の表面に塗布する。
【0040】
次に、金属粒子層形成工程3について説明する。金属粒子層形成工程3は基材8の表面に金属層50を形成する工程である。前記金属層50は、1層でも2層でも3層でも何層でもよい。
【0041】
まず、金属層の1層目手順10について説明する。
図2又は
図3に示すように、まず手順11aとして、
図8(a)に示すように、基材8表面に金属粒子9及び接着用組成物を含有するコーティング組成物7を塗布する。
【0042】
前記手順11aのところは、
図3に示すように手順11bとして、バフ6表面にコーティング組成物7を塗布してもよい。
図5において、基材8の表面で、バフ6が接していない範囲には、コーティング組成物7は塗布されておらず、バフ6にコーティング組成物7が塗布されている。手順11a又は手順11bともに基材8表面とバフ6との間にコーティング組成物7を介在するようにすればいずれの手順でもよい。
【0043】
次に、手順12として、
図8(b)に示すように、ポリッシャー5で回転R又は往復動の塗り拡げと、押圧Pとを同時に加える。ポリシャー5を回転R又は往復動させながら前記コーティング組成物7を前記基材8の表面に貼り付けるように押圧Pを加える。
【0044】
次に、手順13として、金属層50を形成したい基材8の表面全体に均一に、前記金属粒子9を貼り付けるように、ポリッシャー5で回転R又は往復動(図示なし)と、押圧Pとを同時に加えながら移動させる。この手順13を繰り返し実施すると、前記金属粒子9を前記基材8の表面に貼り付かせ、前記コーティング組成物7の成分の揮発性成分が蒸発し、押圧と塗り拡げという力により溶剤が揮発し接着用組成物によって金属粒子9を基材8の表面に固定させることができる。次に、手順14として、
図8(c)に示すように、基材8表面に金属粒子9の層が形成された金属層50の1層目51が完成する。
【0045】
前記1層目の状態は、
図8(c)に示すように、金属層50の1層目51はほぼ全域に亘って金属粒子9が貼り付けられているが、一部ではあるが貼り付けられていない範囲がある。よって、1層目51のみでも光沢があり鏡面仕上げ範囲ができるが、基材8の表面全域に金属層50を形成するにはさらに2層目52、3層目53を形成させる。
【0046】
次に、金属層50の2層目手順20について説明する。2層目手順20は1層目手順10と同じ手順の繰り返しを実施する。
図9(a)に示すように、手順11として、1層目51の表面にコーティング組成物7を塗布する。次に、手順12として、
図9(b)に示すように、ポリッシャー5で回転R又は往復動(図示なし)の塗り拡げと、押圧Pとを同時に加える。ポリシャー5を回転R又は往復動させながら前記コーティング組成物7を前記1層目51の表面に貼り付けるように押圧Pを加える。
【0047】
次に、手順13として、1層目51の表面全体に均一に、前記コーティング組成物7を貼り付けるように、ポリッシャー5で回転R又は往復動(図示なし)と、押圧Pとを同時に加えながら移動させる。次に、手順14として、
図9(c)に示すように、1層目51の表面に金属粒子9の層が形成された金属層50の2層目52が完成する。
【0048】
次に、金属層50の3層目手順について説明する。3層目手順は1層目手順10と同じ手順の繰り返しを実施する。
図10(a)に示すように、手順11として、2層目52の表面にコーティング組成物7を塗布する。次に、手順12として、
図10(b)に示すように、ポリッシャー5で回転R又は往復動の塗り拡げと、押圧Pとを同時に加える。ポリシャー5を回転R又は往復動させながら前記コーティング組成物7を前記基材8の表面に貼り付けるように押圧Pを加える。
【0049】
次に、手順13として、2層目52の表面全体に均一に、前記コーティング組成物7を貼り付けるように、ポリッシャー5で回転R又は往復動(図示なし)と、押圧Pとを同時に加えながら移動させる。次に、手順14として、
図10(c)又は
図7に示すように、2層目52の表面に金属粒子9の層が形成された金属層50の3層目53が完成する。
【0050】
さらに、4層目、5層目を積層させてもよい。積層する層の数は金属層50の厚みや光沢から任意に設定すればよい。多層になるほど金属粒子9が基材8表面上に厚く貼りついているので、人の容姿や物の像を映し得る高い鏡面状態を作り出す鏡面ができる。
【0051】
金属粒子9が基材8表面上に貼りついている状態は、例えば金属粒子9が球形状の場合は
図11に示すように基材8の表面に球形状の金属粒子9が貼りついている。また、例えば金属粒子9が扁平状又は平板状の場合は
図10(c)に示すように基材8の表面に扁平状又は平板状の金属粒子9が貼りついている。このように貼りつかせることによって鏡面をつくることができる。
【0052】
次に、金属粒子層形成工程3後に、トップコートを塗布するトップコート塗布工程4を設ける。コーティング組成物は透明なコーティング組成物を使用する。鏡面を長期間維持させる場合には実施するのが好ましい。
【0053】
本発明の金属鏡面形成コーティング方法1の実施前の基材8には人の顔がほとんど映らなかったのが、本発明の金属鏡面形成コーティング方法1を実施後の基材8の表面の金属層50に人の顔が鏡に映るのと同じレベルで映させることができる。
【0054】
次に、実施例を示す。本発明は実施例に限定されない。
【0055】
実施例Uとして、基材8である自動車塗装板(縦200mm、横100mm、厚さ0.8mm)の表面に、金属粒子9として銀粒子を含有し、接着用組成物としてシリコーン樹脂を含有したコーティング組成物7を、バフ6として円形のテーパーウレタンバフを装着したダブルアクションポリッシャーのバフ面に塗布して、前記基材8である前記自動車塗装板の表面に対して、前記コーティング組成物7の溶剤がほぼ蒸発するまで押圧と塗り拡げを加えて金属層50を形成した。その金属層50の表面状態は、
図13の実施例Uに示すように、「実施例」の文字M1とリンゴR1がともに鏡面に輪郭もクッキリと映っていることが明確にわかる。
【0056】
比較例Hとして、基材8である自動車塗装板(縦200mm、横100mm、厚さ0.8mm)の表面に、研磨剤をバフ6として円形のテーパーウレタンバフを装着したダブルアクションポリッシャーのバフ面に塗布して、前記基材8である前記自動車塗装板の表面に対して押圧と研磨を加えて平滑な面を形成した。その平滑な面の表面状態は、
図13の比較例Hに示すように、「実施例」の文字M2とリンゴR2がともに前記平滑な面にうっすらとしか映らないことが示唆されている。
【0057】
したがって、同じ基材8である自動車塗装板に本発明の金属鏡面形成コーティング方法1で金属粒子層50を形成した実施例Uは、同じ基材8である自動車塗装板を研磨剤で研磨して平滑な面を形成した比較例Hに比較して、鏡面の映りレベルにおいて際立つ有利な効果が得られた。