特許第6836814号(P6836814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6836814
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/00 20060101AFI20210222BHJP
   F16C 29/04 20060101ALI20210222BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20210222BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20210222BHJP
   F16F 7/08 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B23Q7/00 E
   F16C29/04
   B23Q11/00 A
   F16F15/02 E
   F16F7/08
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-74793(P2020-74793)
(22)【出願日】2020年4月20日
【審査請求日】2020年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501368687
【氏名又は名称】有限会社ニューリー研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴雄
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−140878(JP,A)
【文献】 特開平4−304936(JP,A)
【文献】 特開2013−15377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00
B23Q 11/00
F16C 29/04
F16F 7/08
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を上面に載置するテーブルと、
互いに平行な姿勢で配置された複数の転がりガイドであって、前記テーブルを支持した状態で前記テーブルの平行移動をガイドするように構成された複数の転がりガイドと、
前記複数の転がりガイドの振動を抑制するための制振構造と、を備え、
前記制振構造は、
前記テーブルが平行移動する方向に長手方向を合わせた制振梁であって、前記テーブルが平行移動する方向に対して直交する方向において互いに相反する方向に向けて配置される一対の梁側摺動平面を有する制振梁と、
前記テーブルに取り付けられるとともに、前記テーブルが平行移動する方向に対して直交する方向において前記一対の梁側摺動平面のそれぞれに対して対向配置されている一対の対向摺動平面であって、対向する前記梁側摺動平面に圧接した状態で前記テーブルの平行移動に伴って相対的に摺動する一対の対向摺動平面を有する圧接構造と、を備え、
前記制振梁は、前記テーブルが平行移動する方向に直交し且つ前記梁側摺動平面にも直交する方向での動きが許容されるとともに、前記テーブルが平行移動する方向に直交し且つ前記梁側摺動平面に平行な方向での動きが拘束された状態で支持されている、搬送装置。
【請求項2】
一つの前記制振梁に複数の前記圧接構造が設けられる、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制振構造を複数備える、請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記圧接構造は、
前記制振梁の前記梁側摺動平面に対して接離する方向で往復動するように構成されたピストンを有し、
前記圧接構造の前記対向摺動平面は、前記ピストンの先端面に設けられ且つ前記往復動に伴って、自身の前記対向摺動平面を前記制振梁の前記梁側摺動平面に圧接させた状態と、自身の前記対向摺動平面を前記制振梁の前記梁側摺動平面から退避させた状態とに切替可能である、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記圧接構造は、油室が形成された油室形成部を有し、
前記油室形成部は、前記制振梁の前記梁側摺動平面に対向配置される対向面を有し、
該前記油室形成部の対向面は、前記制振梁の前記梁側摺動平面に接離する方向において弾性変形可能な弾性変形領域が含まれ、
前記圧接構造の前記対向摺動平面は、前記弾性変形領域により構成される、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記圧接構造は、前記油室形成部として、前記制振梁の一方の前記梁側摺動平面に対して配置される前記油室形成部である一方側油室形成部と、前記制振梁の他方の前記梁側摺動平面に対して配置される前記油室形成部である他方側油室形成部と、を有する、
請求項5に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がりガイドを備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械や工作機械による加工対象となるワーク等の搬送対象物を搬送する搬送装置が提供されており、例えば、特許文献1(図1図8参照)に開示されているような、搬送対象物としての被加工物を搭載するテーブル(基台)と、該基台を支持し且つ該基台の平行移動をガイドするように構成された複数の転がりガイドと、を備えた搬送装置(転がり案内装置)が知られている。
【0003】
前記搬送装置において、各転がりガイドは、直線状の軌道台と、軌道台に対して該軌道台の延びる方向に沿ってスライド可能に取り付けられた移動ブロックと、軌道台と移動ブロックとの間に配置された複数のボールと、を備えている。
【0004】
各転がりガイドの軌道台は互いに平行な状態で設置されており、移動ブロックには基台が固定されている。
【0005】
そのため、前記搬送装置によれば、搬送対象物を基台とともに軌道台が延びる方向に沿って真っ直ぐに搬送できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−140878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の搬送装置において、基台には、搬送対象物に生じた振動が伝播したり、転がりガイド上でのスライド時に振動が生じたりすることがあるため、基台の振動により被加工物への加工精度が低下することがあった。そのため、上記従来の搬送装置では、基台の振動を抑えることが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、搬送対象物を載せるテーブルの振動を抑制できる搬送装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送装置は、
搬送対象物を上面に載置するテーブルと、
互いに平行な姿勢で配置された複数の転がりガイドであって、前記テーブルを支持した状態で前記テーブルの平行移動をガイドするように構成された複数の転がりガイドと、
前記複数の転がりガイドの振動を抑制するための制振構造と、を備え、
前記制振構造は、
前記テーブルが平行移動する方向に長手方向を合わせた制振梁であって、前記テーブルが平行移動する方向に対して直交する方向において互いに相反する方向に向けて配置される一対の梁側摺動平面を有する制振梁と、
前記テーブルに取り付けられるとともに、前記テーブルが平行移動する方向に対して直交する方向において前記一対の梁側摺動平面のそれぞれに対して対向配置されている一対の対向摺動平面であって、対向する前記梁側摺動平面に圧接した状態で前記テーブルの平行移動に伴って相対的に摺動する一対の対向摺動平面を有する圧接構造と、を備え、
前記制振梁は、前記テーブルが平行移動する方向に直交し且つ前記梁側摺動平面にも直交する方向での動きが許容されるとともに、前記テーブルが平行移動する方向に直交し且つ前記梁側摺動平面に平行な方向での動きが拘束された状態で支持されている。
【0010】
上記構成の搬送装置によれば、制振梁の梁側摺動平面と、圧接構造の対向摺動平面とが互いに圧接している状態でテーブルに振動が加わると、テーブルに固定されている圧接構造の対向摺動平面と、テーブルや転がりガイドとは別に設けられている制振梁の梁側摺動平面とが接触した状態のまま擦れ合う。このとき、圧接構造の対向摺動平面と制振梁の梁側摺動平面との間には、面方向における摩擦力が生じるため、かかる摩擦力によってテーブルに伝わる振動が減衰する。
【0011】
このように、上記構成の搬送装置は、テーブルに加わった振動を圧接構造の対向摺動平面と制振梁の梁側摺動平面との摩擦によって吸収することで、テーブルの振動を抑えることができるようになっている。
【0012】
本発明の搬送装置では、
一つの前記制振梁に複数の前記圧接構造が設けられていてもよい。
【0013】
このようにすれば、テーブルの振動を抑制する効果をよりいっそう高めることができる。
【0014】
本発明の搬送装置は、
前記制振構造を複数備えていてもよい。
【0015】
このようにすれば、テーブルの振動を抑える効果をより高めることができる。
【0016】
本発明の搬送装置において、
前記圧接構造は、
前記制振梁の前記梁側摺動平面に対して接離する方向で往復動するように構成されたピストンを有し、
前記圧接構造の前記対向摺動平面は、前記ピストンの先端面に設けられ且つ前記往復動に伴って、自身の前記対向摺動平面を前記制振梁の前記梁側摺動平面に圧接させた状態と、自身の前記対向摺動平面を前記制振梁の前記梁側摺動平面から退避させた状態とに切替可能な構成としてもよい。
【0017】
上記構成の搬送装置によれば、ピストンの対向摺動平面を制振梁の梁側摺動平面に圧接させた状態にすれば、テーブルの振動を抑える機能を発揮できる状態になる。
【0018】
また、テーブルの振動を抑える必要のない場面では、ピストンの対向摺動平面を制振梁の梁側摺動平面から退避させることで摺動による摩擦を発生することなく、テーブルを転がりガイドの特徴を生かして高速に水平移動させることが可能となる。
【0019】
本発明の搬送装置において、
前記圧接構造は、油室が形成された油室形成部を有し、
前記油室形成部は、前記制振梁の前記梁側摺動平面に対向配置される対向面を有し、
該前記油室形成部の対向面は、前記制振梁の前記梁側摺動平面に接離する方向において弾性変形可能な弾性変形領域が含まれ、
前記圧接構造の前記対向摺動平面は、前記弾性変形領域により構成される、ようにしてもよい。
【0020】
上記構成の搬送装置によれば、油室内に油を供給すれば、対向面のうち弾性変形領域が前記制振梁の前記梁側摺動平面に向かって膨らむように弾性変形し、該弾性変形領域と前記制振梁の前記梁側摺動平面とが互いに圧接した状態になり摩擦力が発生して制振効果が期待できる。
【0021】
本発明の搬送装置において、
前記圧接構造は、前記油室形成部として、前記制振梁の一方の前記梁側摺動平面に対して配置される前記油室形成部である一方側油室形成部と、前記制振梁の他方の前記梁側摺動平面に対して配置される前記油室形成部である他方側油室形成部と、を有するようにしてもよい。
【0022】
上記構成の搬送装置によれば、油室内に油を供給すれば、対向面のうち弾性変形領域が前記制振梁の前記摺動平面側に向かって膨らむように弾性変形し、該弾性変形領域と前記制振梁の前記梁側摺動平面とが互いに圧接した状態になり摩擦力が発生して制振効果が期待できる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の搬送装置によれば、搬送対象物を載せるテーブルの振動を抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置の外観斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る搬送装置の分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII−III線における断面図である。
図4図4は、図1のIV−IV線における断面図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る搬送装置の外観斜視図である。
図6図6は、図5のVI−VI線における断面図である。
図7図7は、本発明の別の実施形態に係る搬送装置の外観斜視図である。
図8図8は、同実施形態の搬送装置の分解斜視図である。
図9図9は、本発明のさらに別の実施形態の搬送装置の斜視図である。
図10図10は、図9のX−X線での断面図である。
図11図11は、本発明のさらに別の実施形態の搬送装置の外観斜視図である。
図12図12は、図11のXII−XII線での断面図である。
図13図13は、本発明のさらに別の実施形態の搬送装置の説明図である。
図14図14は本発明のさらなる別の実施形態の搬送装置の説明図であり、(a)は制振梁が弾性変形する前の状態の説明図であり、(b)は制振梁が弾性変形した後の状態の説明図である。
図15図15は、本発明のさらなる別の実施形態の搬送装置の制振梁の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態にかかる搬送装置と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0026】
本実施形態に係る搬送装置1は、図1に示すように、搬送対象物を上面20に載置するテーブル2と、互いに平行な姿勢で配置された複数の転がりガイド3であって、テーブル2を支持した状態でテーブル2の平行移動をガイドするように構成された複数の転がりガイド3と、各転がりガイド3に生じる振動を抑制するための制振構造4(図3参照)と、を備えている。
【0027】
テーブル2の上面20には、搬送対象物として、例えば、加工対象となるワークや、工作機械用のツール等が取り付けられる。そのため、テーブル2が転がりガイド3によって構成される進路に沿って移動すると、該テーブル2とともに前記上面20に載せている搬送対象物が平行移動するようになっている。
【0028】
転がりガイド3は、図2図3に示すように、長尺なガイドレール30と、ガイドレール30に案内されることでガイドレール30の延びる方向に沿って移動可能である可動部31と、ガイドレール30と可動部31との間に配置される複数の転動体32と、を有する。
【0029】
各転がりガイド3のガイドレール30は、テーブル2を平行移動させる進路に沿って延びるように形成されている。また、各転がりガイド3のガイドレール30は、それぞれが直線状に形成されており、互いに平行な姿勢となるようにして構造物S、より具体的には、建物の床や、床に設置されたベース等の基礎部S1に設置されている。なお、基礎部S1は、各ガイドレール30の上下方向における位置を揃えることができるようになっていればよい。
【0030】
各転がりガイド3の可動部31は、テーブル2の下面21に固定されている(図3参照)。また、本実施形態において、転動体32は、球状に形成されているが、自身が回転することにより可動部31を送ることができれば球状以外の形状であってもよい。
【0031】
制振構造4は、図3に示すように、制振梁40と、テーブル2に取り付けられるとともに、テーブル2が平行移動する方向に対して直交する方向(本実施形態では上下方向)で制振梁40に圧接する圧接構造41と、を備えている。
【0032】
制振梁40の長手方向における基端部は、転がりガイド3を設置している構造物S(基礎部S1)に固定されている。また、制振梁40は、長手方向をテーブル2の移動方向(進路が延びる方向)に沿わせた状態で、配置されている。
【0033】
本実施形態に係る制振梁40は、図4に示すように、基礎部S1に立設された台部S2に固定される固定部400と、上述の長手方向をテーブル2の移動方向(進路が延びる方向)に沿わせて設置された梁本体部401と、固定部400と梁本体部401とを接続し且つ固定部400を起点として梁本体部401の厚み方向での動きを許容するように弾性変形可能である弾性接続部402と、を有する。なお、本実施形態の制振梁40は、平板状の梁本体部401(制振梁40の基端部よりも先端側の部分)の厚み方向を上下方向に合わせて配置された平置制振梁40Aである。
【0034】
固定部400は、制振梁40の基端部を構成している。また、固定部400は、基礎部S1に立設された台部S2によって、基礎部S1に固定されている。なお、台部S2とは、構造物Sに含まれる構成である。
【0035】
梁本体部401は、真っ直ぐに延びる平板状(長方形状)に形成されている。また、本実施形態の制振梁40は平置制振梁40Aであるため、梁本体部401は、厚み方向を上下方向に合わせ且つ幅方向を横方向に合わせた状態で配置されている。そのため、梁本体部401では、厚み方向における一方側の板面が上面401a、厚み方向における他方側の板面が下面401bとなっている。
【0036】
梁本体部401の上面401aと下面401bのそれぞれは、テーブル2の水平移動時に圧接構造41の後述する対向摺動平面410a,411aに対して相対的に摺動する梁側摺動平面401a,401bとなっている。本実施形態では、上向きに配置された一方の梁側摺動平面401aを上向梁側摺動平面401a、下向きに配置された他方の梁側摺動平面401bを下向梁側摺動平面401bと称して以下の説明を行うこととする。この上向梁側摺動平面401aと下向梁側摺動平面401bとは、テーブル2が平行移動する方向に対して直交する方向において相反する方向に向くように形成された面である。
【0037】
弾性接続部402は、梁本体部401の厚み方向(本実施形態では上下方向)に弾性変形可能である。本実施形態の平置制振梁40Aでは、固定部400、弾性接続部402、梁本体部401のそれぞれが平板状の同一の部材によって一体的に形成されており、弾性接続部402は、固定部400及び梁本体部401よりも厚みが薄くなるように形成されている。これにより、弾性接続部402は、厚み方向には弾性変形する一方で、幅方向には変形しにくくなるように構成されている。なお、本実施形態の弾性接続部402は、制振梁40の長手方向における中央部側に向かうにつれて厚みが徐々に薄くなるように形成されている。このように、制振梁40は、テーブル2が平行移動する方向に直交し且つ梁側摺動平面401a,401bにも直交する方向での動きが許容されるとともに、テーブル2が平行移動する方向に直交し且つ梁側摺動平面401a,401bに平行な方向での動きが拘束された状態で支持されている。
【0038】
圧接構造41は、図3に示すように、梁本体部401の上向梁側摺動平面401aに圧接させた状態で、テーブル2の水平移動時に上向梁側摺動平面401aに対して摺動する対向摺動平面410a(以下、上側対向摺動平面410aと称する)を含む一方側圧接部410と、梁本体部401の下向梁側摺動平面401bに圧接させた状態で、テーブル2の水平移動時に下向梁側摺動平面401bに対して摺動する対向摺動平面411a(以下、下側対向摺動平面411aと称する)を含む他方側圧接部411と、を有する。
【0039】
一方側圧接部410は、梁本体部401の上面401aに圧接している状態と、梁本体部401の上面401aへの圧接を解除している状態とに切替可能に構成されており、本実施形態では、梁本体部401の上面401aに対向するようにしてテーブル2の下面21に固定されたシリンダ410bと、シリンダ410bに挿通された状態で往復動可能なピストン410cと、シリンダ410b内に対してピストン410cを往復動させる駆動系410dと、を有する。
【0040】
ピストン410cは、梁本体部401の上面401aに接離する方向において往復動可能であり(すなわち、進出する方向への移動と退避する方向への移動が可能であり)、先端面が圧接構造41の上側対向摺動平面410aを構成している。
【0041】
駆動系410dは、油圧駆動によりピストン410cを往復動させるように構成されている。本実施形態の駆動系410dは、テーブル2の内部に形成され且つシリンダ410bの内部に連通する油路410daと、該油路410daを介してシリンダ410bの内部への作動油の供給と、シリンダ410b内の作動油の排出とを行う油圧ポンプ(図示しない)と、を有する。
【0042】
他方側圧接部411は、梁本体部401を介して圧接構造41と対向するように配置されており、本実施形態では、梁本体部401よりも下方に配置されている。また、本実施形態の他方側圧接部411は、上面が梁本体部401の下向梁側摺動平面401bと対向しており、この上面により下側対向摺動平面411aが構成されている。
【0043】
以上のように、圧接構造41は、梁本体部401の厚み方向における一方側の面(上向梁側摺動平面401a)を押し下げるように構成された下押機構41Aであり、制振構造4は、平置制振梁40Aを下押機構41Aによって他方側圧接部411に向けて押し付けるように構成された押下型制振構造4Aである。
【0044】
本実施形態に係る搬送装置1の構成は、以上の通りである。続いて、搬送装置1の動作を説明する。
【0045】
搬送装置1において、制振機能を有効にするには、一方側圧接部410のピストン410cを梁本体部401に向けて進出させて上側対向摺動平面410aで上向梁側摺動平面401aを押し下げる。このようにすると、梁本体部401に下向きの荷重がかかり、弾性接続部402が弾性変形し、梁本体部401が下側に動き、上向梁側摺動平面401aが上側対向摺動平面410aに圧接し、下向梁側摺動平面401bが下側対向摺動平面411aに圧接した状態になる。
【0046】
この状態で、テーブル2に振動が加わると、テーブル2と共に上側対向摺動平面410aと下側対向摺動平面411aも振動し、これに伴い、上側対向摺動平面410aと上向梁側摺動平面401aとが摺動し、下側対向摺動平面411aと下向梁側摺動平面401bとが摺動する。
【0047】
そのため、上側対向摺動平面410aと上向梁側摺動平面401aとの間と、下側対向摺動平面411aと下向梁側摺動平面401bとの間には摩擦力が発生し、この摩擦力によりテーブル2の振動が減衰する。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る搬送装置1は、テーブル2が振動した際に、制振梁40の上向梁側摺動平面401aと圧接構造41の上側対向摺動平面410a、制振梁40の下向梁側摺動平面401bと圧接構造41の下側対向摺動平面411aを互いに摺動させてテーブル2の振動を減衰(吸収)することによって、搬送対象物を載せるテーブル2の振動を抑制できるようになっている。
【0049】
また、本実施形態の搬送装置1では、テーブル2の水平移動を転がりガイド3によってガイドすることを前提としたうえで、制振梁40の上向梁側摺動平面401aと圧接構造41の上側対向摺動平面410a、制振梁40の下向梁側摺動平面401bと圧接構造41の下側対向摺動平面411aを圧接させた状態と非圧接の状態とに切り替えることができるため、テーブル2を水平移動させる際の状況に応じて制振機能を発揮させるか否かを選択することも可能である。
【0050】
本実施形態では、テーブル2の振動を抑える必要がある場合は、制振梁40の上向梁側摺動平面401aと圧接構造41の上側対向摺動平面410a、制振梁40の下向梁側摺動平面401bと圧接構造41の下側対向摺動平面411aを圧接させることによってテーブル2の振動を抑える機能を発揮させ、テーブル2の振動を抑える必要のない場合は、制振梁40の上向梁側摺動平面401aと圧接構造41の上側対向摺動平面410a、制振梁40の下向梁側摺動平面401bと圧接構造41の下側対向摺動平面411aを非圧接の状態にして転がりガイドの特徴である高速移動を可能にしてテーブル2を素早く水平移動させるように使い分けることが可能となる。
【0051】
なお、本発明に係る搬送装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0052】
上記実施形態の搬送装置1は、制振構造4として、平置きにされている平置制振梁40Aを下押機構41Aで押し下げる押下型制振構造4Aを備えていたが、この構成に限定されない。例えば、搬送装置1は、図5図6に示すように、制振構造4として、厚み方向を横方向に合わせて配置した制振梁40である縦置制振梁40Bと、縦置制振梁40Bに横向きに圧接する圧接構造41である横押機構41Bとを有する横押型制振構造4Bを備えていてもよい。
【0053】
かかる構成の搬送装置1では、制振梁40の一方の梁側摺動平面401aと圧接構造41の一方の対向摺動平面410a、制振梁40の他方の梁側摺動平面401bと圧接構造41の他方の対向摺動平面411aが横方向(2つの転がりガイド3が並ぶ方向)で圧接することになるため、テーブル2に振動が加わると、制振梁40の一方の梁側摺動平面401aと圧接構造41の一方の対向摺動平面411a、制振梁40の他方の梁側摺動平面401bと圧接構造41の一方の対向摺動平面411aが上下方向において摺動する。
【0054】
従って、制振梁40と圧接構造41のそれぞれが、テーブル2が平行移動する方向に直交する方向のうち、梁側摺動平面401a、401bに直交する方向において互いに圧接する梁側摺動平面401aと対向摺動平面410aや、梁側摺動平面401bと対向摺動平面411aを有するように構成されている場合は、梁側摺動平面401aと対向摺動平面410aや、梁側摺動平面401bと対向摺動平面411aの間に生じる摩擦力により上下方向でのテーブル2の振動を減衰させることができる。
【0055】
上記実施形態の搬送装置1は、1つの制振構造4を備えるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、搬送装置1は、複数の制振構造4を備えるようにしてもよい。
【0056】
また、この場合においては、複数の制振構造4に押下型制振構造4Aと横押型制振構造4Bとが含まれていてもよい。より具体的に説明すると、搬送装置は、図7図8に示すように、押下型制振構造4Aと横押型制振構造4Bとを備えるように構成されていてもよい。
【0057】
なお、押下型制振構造4Aと横押型制振構造4Bとは少なくとも一つずつ備えていればよいが、押下型制振構造4Aと横押型制振構造4Bの何れか一方の両側に押下型制振構造4A、横押型制振構造4Bの何れか他方が一つずつ配置されていることが好ましい。このように、搬送装置1が押下型制振構造4Aと横押型制振構造4Bとを備えていると、テーブル2の水平方向での振動と、上下方向での振動を抑えることが可能となる。
【0058】
上記実施形態において、一方側圧接部410は、ピストン410cの往復動により、制振梁40の上向梁側摺動平面401aに上側対向摺動平面410aを圧接させるように構成されていたが、この構成に限定されない。すなわち、上記実施形態では、一方側圧接部410の上側対向摺動平面410aは、制振梁40の上向梁側摺動平面401aに接離する方向での移動により制振梁40の上向梁側摺動平面401aに圧接している状態と制振梁40の上向梁側摺動平面401aに対して非圧接の状態とに切り替わるように構成されていたが、例えば、一方側圧接部410の上側対向摺動平面410aは、制振梁40の上向梁側摺動平面401a側への弾性変形により制振梁40の上向梁側摺動平面401aに圧接している状態と制振梁40の上向梁側摺動平面401aに対して非圧接の状態とに切り替わるように構成されていてもよい。
【0059】
この場合、圧接構造41は、図9図10に示すように、一方側圧接部410が、内部に作動油の供給及び排出が可能である油室410eが形成された油室形成部410fを有し、油室形成部410fが制振梁40の上向梁側摺動平面401aに対向配置され且つ制振梁40の上向梁側摺動平面401aに接離する方向において弾性変形可能な弾性変形領域410faが含まれる対向面を含み、圧接構造41の上側対向摺動平面410aが弾性変形領域410faにより構成されるようにしてもよい。
【0060】
また、図11図12に示すように、他方側圧接部411も同様に、内部に作動油の供給及び排出が可能である油室411bが形成された油室形成部411cを有し、油室形成部411cが制振梁40の下向梁側摺動平面401bに対向配置され且つ制振梁40の下向梁側摺動平面401bに接離する方向において弾性変形可能な弾性変形領域411caが含まれる対向面を含み、この弾性変形領域411caが他方側圧接部411の下側対向摺動平面411aとなるように構成されていてもよい。
【0061】
なお、図9図10図11図12には、下押機構41Aに上記構成が採用された搬送装置を図示しているが、図5図6に示した横押機構41Bにも上記構成を採用することは可能である。
【0062】
上記実施形態において、一方側圧接部410の上側圧接部410aは、弾性変形体により構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、一方側圧接部410の上側圧接部410aは、図13に示すように、液体(油)で構成されていてもよい。図13に示す搬送装置1では、一方側圧接部410が、制振梁40の上向梁側摺動平面401aに対向配置される対向面で開口する油室410hが形成された油室形成部410gと、環状であり、且つ油室410hの開口を取り囲んだ状態で制振梁40の上向梁側摺動平面401aと油室形成部410gの対向面とに密接するように配置されるシール部410iと、を有し、一方側圧接部410の上側圧接部410aは、油室410h内に供給された油の油面で構成されている。なお、他方側圧接部411にも、一方側圧接部410と同様に上記の構成を採用することが可能である。
【0063】
上記実施形態では、制振梁40全体のうち、弾性接続部402のみが弾性変形する(撓む)用に構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、制振梁40は、例えば、長手方向の全長に亘って薄板状に形成されている場合は、梁本体部401も弾性変形するように構成されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、制振梁40は、長手方向における基端部のみを構造物Sに固定していたが、この構成に限定されない。例えば、制振梁40は、長手方向における先端部と前記基端部の2ヶ所の両端部403を台部S2によって支持されていても良い。但し、圧接構造41が制振梁40を圧接する方向での制振梁40の動きを許容し、且つ圧接構造41が制振梁40を圧接する方向に直交する方向での制振梁40の動きとテーブル2が移動する方向での制振梁40の動きが規制する必要がある。
【0065】
上記実施形態において、制振梁40は、先端側の厚みを部分的に薄くすることで撓むように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、制振梁40は、図14(a)、図14(b)に示すように、先端側に平行ばねを設けることで撓むように構成されていてもよい。この場合、梁本体部401は変形せずに姿勢を真っ直ぐに保ったまま上下に移動する。
【0066】
上記実施形態において、制振梁40は、長手方向における一端部のみが支持されていたが、この構成に限定されない。例えば、図15に示すように、制振梁40は、長手方向における両端部が支持されるように構成されていてもよい。
【0067】
図15に示す制振梁40では、長手方向における両端部403の横幅が該両端部403の間の中部404の横幅よりも小さくなっており、中部404の端面(長手方向における端面)が端部403の側面から幅方向外側に延出する肩部404aとなっている。
【0068】
また、台部S2には、台部S2には下方に向かって凹状となる凹溝S20がテーブル2が平行移動する方向と同方向における一端から他端に亘って連続するように形成されており、凹溝S20の底面(底面の中央部)には上方に向かって突出する突出部S21が形成されている。
【0069】
制振梁40の両端部403は、台部S2の凹溝S20に嵌め込まれるように構成されており、制振梁40の両端部403が台部S2の凹溝S20に嵌め込まれた状態においては、制振梁40の両端部403と台部S2の凹溝S20との間に隙間が生じないようになっている。また、制振梁40の肩部404aは、台部S2の側面に突き当てられた状態になっている。
【0070】
これにより、制振梁40は、自身の長手方向(テーブル2が平行移動する方向)での動きと、幅方向(2つの転がりガイド3が並ぶ方向)での動きとが規制される一方で、上下方向での動きが許容された状態になっているため、この制振梁40に対して圧接構造41をテーブル2が平行移動する方向に対して直交する方向で圧接させれば、上記実施形態の搬送装置1と同様にテーブル2の振動を抑制する効果が得られる。
【0071】
上記実施形態では、一つの制振梁40に対して一つの圧接構造41が設けられる態様を一例に挙げて搬送装置1の説明を行ったが、この構成に限定されない。例えば、搬送装置1は、一つの制振梁40に対して複数の圧接構造41が設けられていてもよい。
【0072】
このようにすれば、テーブル2の振動を抑制する効果をよりいっそう高めることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…搬送装置、2…テーブル、3…ガイド、4…制振構造、4A…押下型制振構造、4B…横押型制振構造、20…上面、21…下面、30…ガイドレール、31…可動部、32…転動体、40…制振梁、40A…平置制振梁、40B…縦置制振梁、41…圧接構造、41A…下押機構、41B…横押機構、400…固定部、401…梁本体部、401a…上向梁側摺動平面、401b…下向梁側摺動平面、402…弾性接続部、403…両端部、404…中部、404a…肩部、410…一方側圧接部、410a…上側対向摺動平面、410b…シリンダ、410c…ピストン、410d…駆動系、410da…油路、410e…油室、410f…油室形成部、410fa…弾性変形領域、410g…油室、410h…油室形成部、410i…シール部、411…他方側圧接部、411a…下側対向摺動平面、411b…油室、411c…油室形成部、411ca…弾性変形領域、S…構造物、S1…基礎部、S2…台部、S20…凹溝、S21…突出部
【要約】
【課題】搬送対象物を載せるテーブルの振動を抑制できる搬送装置を提供することを課題とする。
【解決手段】搬送対象物を載せるテーブル2と、互いに平行に配置された複数の転がりガイド3と、複数の転がりガイド3用の制振構造4とを備え、制振構造4は、テーブル2の平行移動方向で延び且つ該平行移動方向に直交する直交方向で反対向きに配置される一対の梁側摺動平面401a,401bを有する制振梁40と、テーブル2に取り付けられた状態で、別々の梁側摺動平面401a,401bに対向配置され且つテーブル2の平行移動時に梁側摺動平面401a,401bに圧接した状態で相対的に摺動する一対の対向摺動平面410a,411aを有する圧接構造41とを備え、制振梁40は梁側摺動平面401a,401bに平行な方向の動きのみが拘束された状態で支持される搬送装置1。
【選択図】図1
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