【課題を解決するための手段】
【0012】
〔第1発明〕
そこで、上記の課題を解決するために、本願の第1発明に係るアース装置は、
電流に含まれる高周波成分を除去可能なアース機能材料として圧電効果を示すトルマリンとフェライトの混合物を焼結したものを用い、任意の電気機器と導線接続されるアース端子を介してアース機能材料に電流を流入させるアース装置であって、
アース機能材料からなる円柱形状または多角柱形状に成形されたアース部材と、
銅その他の金属を構成材料とする棒状部材であってアース部材のなかに同アース部材の軸方向に平行に埋設される芯部材と、
芯部材に接続された金属材料からなる前記アース端子と、
弾性体からなるバネ部材と、を備え、
バネ部材をアース部材の底面に接触させることにより同アース部材を加圧する構成とした。
【0013】
船舶において採用されるジンクを使った従来のアース方式では、継続的に船内電気機器のアースをしている間に、腐食が進行しジンクが消耗してしまう。
しかしながら本願の第1発明に係るアース装置では、圧電効果を示すトルマリン(電気石)に着目し、これに加圧してコンデンサとして振舞わせることでアース機能を実現している。
ここで「圧電効果」とは、格子状の結晶に外部から圧力が加わったときに結晶内に配置されている陽イオンと陰イオンの相対的な位置ずれが大きくなることに起因する、加わった圧力に比例した分極現象のことをいう。
トルマリンは鉱物であるためイオン化傾向の大きいジンクとは異なり、船内電気機器からの電流が流入しても消耗による減量が起こらない。そのため、高寿命かつ耐久性の高いアース装置を実現できる。
さらに第1発明のアース装置は、落雷により船舶に突発的に大量の電荷が発生したり、帯電した海面に多量の電荷が存在する場合であっても、船内電気機器もしくは船舶部品のイオン化・溶解を防止できる。
【0014】
また本願の第1発明によればアース機能材料に含まれるフェライトは、船内電気機器から芯部材12に流入した電流Iにより発生する磁界H(磁気エネルギー)に対して磁気損失を生じさせる役割を果たす(
図5参照)。
すなわち磁気損失により磁気エネルギーが発熱により消費され、ひいては船内電気機器における高周波成分による雑音の影響を低減することができる。
【0015】
なお第1発明のアース装置は、漁船・プレジャーボート・客船・貨物船・タンカーにおける船舶用アースとしての用途はもちろん、広く電子機器・通信機器・医療機器・産業機械・自動車・航空機・発電所における高周波成分による雑音を低減させる目的でも使用可能である。
なおアース装置の装置規模(サイズ)は、当該アース装置に接続される電気機器の容量に応じて適宜変更すればよい。
【0016】
〔第2発明〕
また上記の課題を解決するために、本願の第2発明に係るアース装置は、本願の第1発明に係るアース装置であって、
ネオジム・鉄・ホウ素を主成分とする希土類磁石、をさらに備え、
アース部材の表面近傍に希土類磁石を配置することにより当該希土類磁石の磁力をアース部材に作用させる構成とした。
【0017】
第2発明によれば、アース部材11の表面近傍に希土類磁石15を配置することにより(
図4参照)、アース機能材料に含まれるフェライトの振動を促し、ひいては圧電効果を示すトルマリンのアース機能の活性化をも図っている。
【0018】
〔第3発明〕
また上記の課題を解決するために、本願の第3発明に係るアース装置は、本願の第1または第2発明に係るアース装置であって、
円柱形状または多角柱形状に成形したアース部材の側面部すべてを覆う絶縁材料からなる薄膜状の側面カバー部材と、
アース部材の2つの底面部を覆う絶縁材料からなる底面カバー部材と、
矩形の帯形状を有する薄膜状の希土類磁石と、を備え、
希土類磁石の長手方向がアース部材の軸方向と一致するように希土類磁石を側面カバー部材に貼付することにより、希土類磁石をアース部材の表面近傍に配置する構成とした。
【0019】
第3発明によれば、帯状の希土類磁石をアース部材の軸方向に貼付することにより、円柱形状または多角柱形状のアース部材にまんべんなく希土類磁石が発する磁界を作用させることができる。
また第3発明によれば、アース部材を覆う側面カバー部材に帯状の希土類磁石を貼付することにより、希土類磁石をアース部材の近くに安定的に配置することができる。
【0020】
〔第4発明〕
また上記の課題を解決するために、本願の第4発明に係るアース装置は、本願の第1〜第3発明に係るアース装置であって、
芯部材の一部がアース部材から突出しており、当該芯部材の突出部分がアース端子として機能する構成とした。
【0021】
第4発明によれば、芯部材12のうちアース部材11から突出している部分がアース端子13を兼ねるため(
図4参照)、構造が単純化されアース装置100の生産効率を向上できるとともに、部品点数が少なくなることから製造原価の低コスト化を図ることができる。
【0022】
〔第5発明〕
また上記の課題を解決するために、本願の第5発明に係るアース装置は、本願の第1〜第4発明に係るアース装置であって、
トルマリンに代えて、その他の圧電体である水晶・石英・トパーズ・セラミック・酒石酸ナトリウムカリウムのいずれかをフェライトと混合してアース機能材料を作製する構成とした。
【0023】
第5発明によればフェライトと混合する材料として、トルマリンに代えて、トルマリン以外の圧電体である水晶・石英・トパーズ・セラミック・ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)のいずれかに置換える。
このように第4発明は、第1発明における一部構成要素(トルマリン)と置換可能な実質的に同一原理の技術的特徴を有するため、第1発明と同様の効果を奏する。
【0024】
〔第6発明〕
上記の課題を解決するために、本願の第6発明に係るアース方法は、
電流に含まれる高周波成分を除去可能なアース機能材料として圧電効果を示すトルマリンとフェライトの混合物を焼結したものを用い、任意の電気機器と導線接続されるアース端子を介してアース機能材料に電流を流入させるアース方法であって、
アース機能材料からなる円柱形状または多角柱形状に成形されたアース部材をあらかじめ作製する行程と、
銅その他の金属を構成材料とする棒状部材であってアース部材のなかに同アース部材の軸方向に平行に埋設される芯部材をあらかじめ作製する行程と、
芯部材に接続された金属材料からなる前記アース端子をあらかじめ作製する行程と、
弾性体からなるバネ部材をアース部材の底面に接触させることにより同アース部材を加圧する行程と、を有する構成とした。
【0025】
第6発明によれば、第1発明に対応する技術的特徴を有するため、第1発明と同様の効果を奏する。
【0026】
〔第7発明〕
また上記の課題を解決するために、本願の第7発明に係るアース方法は、本願の第6発明に係るアース方法であって、
ネオジム・鉄・ホウ素を主成分とする希土類磁石をアース部材の表面近傍に配置することにより、当該希土類磁石の磁力をアース部材に作用させる行程、をさらに有する構成とした。
【0027】
第7発明によれば、第2発明に対応する技術的特徴を有するため、第2発明と同様の効果を奏する。