(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記投与器が、30mg以上の乾燥粉末で2以上の00カプセルを充填し、かつ、全カプセル内に充填された粉末の量における相対標準偏差が4%未満である、請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係るカプセルは、吸入装置において使用されるためのものであり、1つまたは複数の生理学的に許容される賦形剤が混合されたレボドパを、吸入可能粉末として含む。なお、この粉末は、約100g/L以下(約0.1g/cm
3以下とも表現され得る)の作業密度(本明細書では「バルク密度」とも呼称される)を有することを特徴とする。レボドパは高服用量薬剤であり、多量のレボドパを肺に供給することが困難であるため、低密度粉末を有することが望まれるであろう。低密度粉末は、平均的密度の粉末よりも、単位カプセルあたりのレボドパの服用量を顕著に増やすことを可能にし得る。難点は、カプセル内への充填作業の容易性を保ちながら、低密度のレボドパ粉末を達成することが困難である点である。1つの実施形態では本発明は、レボドパを含む吸入可能粉末を含むカプセルを提供する。なおこのカプセルは、吸入器と併せて使用されるとき、作動時に粉末をカプセルから供給する際に優れた排出特性を有する。カプセルからの優れた排出性は、レボドパを含む吸入可能粉末を含むカプセルの重要な特性である。
【0008】
本発明に係る吸入用カプセルは、レボドパを含む吸入可能粉末で充填される。なお当該粉末は約0.1g/cm
3より小さい作業密度を有し、好適には約0.02g/cm
3〜0.08g/cm
3の作業密度を有する。
【0009】
本明細書で使用される「作業密度」という用語は、「バルク密度」という用語と相互交換可能であり、本明細書では、粉末の重量(m)を当該粉末が占める体積(Vo)で除算した値と定義され、本明細書では、メスシリンダ内での測定により決定された単位リットルあたりのグラム(g/L)として表される。簡潔には、メスシリンダを最初に重量測定した後、メスシリンダは、密集させることなく粉末で充填され、必要に応じて密集させることなく水平化され、再び重量測定される。未定着状態の見かけ上の体積は最も近い段階的単位により測定される。作業密度は公式m/Voにより計算される。作業密度は例えば単位立方センチメートルあたりのグラム(g/cm
3)で表される場合もある。1つの実施形態では作業密度は0.1g/cm
3より小さい。1つの実施形態では作業密度は約0.02g/cm
3〜約0.05g/cm
3の範囲である。
【0010】
1つの実施形態ではカプセルは、約0.03g/cm
3〜約0.06g/cm
3の範囲の作業密度を有する粉末を含む。他の実施形態ではカプセルは、約0.04g/cm
3〜約0.05g/cm
3の範囲の作業密度を有する粉末を含む。さらなる実施形態ではカプセルは約0.04g/cm
3の作業密度を有する粉末を含む。さらなる実施形態ではカプセルは約0.045g/cm
3の作業密度を有する粉末を含む。さらなる実施形態ではカプセルは約0.05g/cm
3の作業密度を有する粉末を含む。さらなる実施形態ではカプセルは約0.035g/cm
3の作業密度を有する粉末を含む。さらなる実施形態ではカプセルは約0.03g/cm
3の作業密度を有する粉末を含む。1つの実施形態ではカプセルは、約0.03g/cm
3〜約0.05g/cm
3の範囲の作業密度を有する粉末を含む。他の実施形態ではカプセルは、約0.04g/cm
3〜約0.06g/cm
3の範囲の作業密度を有する粉末を含む。他の実施形態ではカプセルは、約0.05g/cm
3〜約0.06g/cm
3の範囲の作業密度を有する粉末を含む。他の実施形態ではカプセルは、約0.06g/cm
3〜約0.07g/cm
3の範囲の作業密度を有する粉末を含む。
【0011】
本発明のカプセルに含まれる吸入可能粉末は、粉末中に固体重量で少なくとも50重量%の固体のレボドパを含む。いくつかの実施形態では本発明のカプセル内の吸入可能粉末は、乾燥重量で少なくとも60%、70%、80%、90%以上のレボドパを含み得る。1つの実施形態では吸入可能粉末は、乾燥重量で約75%以上のレボドパを含み得る。1つの実施形態では吸入可能粉末は、乾燥重量で約85重量%以上のレボドパを含み得る。1つの実施形態ではカプセル内の吸入可能粉末は、乾燥重量で約90重量%以上のレボドパを含み得る。1つの実施形態ではカプセル内の吸入可能粉末は、粉末内に乾燥重量で80〜95%の固体のレボドパを含み得る。1つの実施形態ではカプセル内の吸入可能粉末は、粉末中に乾燥重量で85〜95%の固体のレボドパを含み得る。1つの実施形態ではカプセル内の吸入可能粉末は、粉末中に乾燥重量で88〜92%の固体のレボドパを含み得る。
【0012】
吸入粉末は追加的な賦形剤を含み得る。賦形剤の例としては、塩化ナトリウム(NaCl)、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、および塩化カリウムなどの塩と、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、不飽和ホスファチジルコリン(DSPC)などのリン脂質と、が挙げられる。1つの実施形態ではカプセルは、粉末中の固体の%で測定して、90%のレボドパ、8%のジパルミトイルホスファチジルコリン、および2%の塩化ナトリウムを含む。1つの実施形態ではカプセルは、90:8:2の乾燥重量比のレボドパ:DPPC:NaClを有する吸入可能粉末を含む。他の実施形態ではカプセルは、90:5:5の乾燥重量比のレボドパ:DPPC:NaClを有する吸入可能粉末を含む。
【0013】
吸入可能粉末を含む本発明のカプセルは、レボドパを肺系統、特に肺の深部に供給するにあたり有用である。本発明のカプセル内に含まれる吸入可能粉末は、微粒子割合(FPF)、幾何学的粒度、ならびに空気力学的粒度により、および以下でさらに説明する他の特性により、特徴付けられる。
【0014】
カスケードインパクタを使用する重量分析は空気中の粒子の粒度分布を測定する方法である。アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)は空気力学的粒度に基づいてエアロゾルを9つの異なる部分に分離することが可能な8ステージ式インパクタである。各ステージの粒度遮断はACIが操作される流速に依存する。好適にはACIは60L/分に較正される。1つの実施形態では、2ステージ折り畳み式ACI(two−stage collapsed ACI)が粒子最適化のために使用される。2ステージ折り畳み式ACIは、8ステージ式ACIのステージ0、ステージ2、およびステージFからなり、2つの別個の粉末部分を捕集することが可能である。各ステージでエアロゾルストリームはノズルを通過し、その表面に吹き付けられる。十分に大きい慣性力を有するエアロゾルストリーム中の粒子はプレートに衝突するであろう。プレートに衝突する十分な慣性力を有さないより小さい粒子はエアロゾルストリーム内に留まり、次のステージに運ばれるであろう。
【0015】
ACIは、第1ステージに捕集される粉末の部分が本明細書では「微粒子割合」または「FPF」と呼称されるよう、較正される。FPFは、5.6μmより小さい空気力学的粒径を有する粒子のパーセンテージに対応する。ACIの第1ステージを通過して捕集フィルタ上に付着した粉末の部分は「FPF(3.4)」と呼称される。これは3.4μmより小さい空気力学的粒径を有する粒子のパーセンテージに対応する。
【0016】
FPF部分は、患者の肺に付着する粉末の部分に相関することが実証されている一方で、FPF(3.4)は患者の肺の深部に到達する粉末の部分に相関することが実証されている。本発明によれば、カプセルに含まれる名目上の服用量の吸入可能粉末のFPF(すなわち5.6μmより小さい空気力学的粒径を有するカプセルに含まれる粉末における粒子のパーセンテージ)は約40%以上である。1つの実施形態ではカプセルに含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量のFPFは約50%、60%、または70%、または80%、または90%である。1つの実施形態ではFPFは、吸入器に含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量の約50%〜約60%である。1つの実施形態ではFPFは、吸入器に含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量の約55%〜約65%である。1つの実施形態ではFPFは、吸入器に含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量の約50%〜約70%である。1つの実施形態ではFPFは、吸入器に含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量の約57%〜約62%である。1つの実施形態ではFPFは、吸入器に含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量の約50%〜約69%である。1つの実施形態ではFPFは、吸入器に含まれる吸入可能粉末の名目上の服用量の約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、または65%である。
【0017】
本明細書で使用する「名目上の粉末服用量」という用語はカプセル内に保持される粉末の総量である。本明細書で使用する「名目上の薬剤服用量」という用語は名目上の粉末服用量に含まれるレボドパの総量である。名目上の粉末服用量は、粉末内の薬剤の装填パーセントによる名目上の薬剤服用量に関連する。
【0018】
1つの実施形態では名目上の粉末服用量は乾燥重量で25〜50mgである。さらなる実施形態では名目上の粉末服用量は乾燥重量で25〜40mgである。さらなる実施形態では名目上の粉末服用量は、乾燥重量で30〜35mg、または乾燥重量で32〜38mgである。
【0019】
空気中の粒子の粒度分布を測定するための他の方法は多段液インピンジャー(MSLI)である。多段液インピンジャー(MSLI)は、アンダーセンカスケードインパクタ(ACI)と同一の原理で作動するが、MSLIでは8つのステージに代わって5つのステージが存在する。加えて、各ステージが固体プレートからなることに代わって、各MSLIステージはメタノールで湿潤されたガラスフリットからなる。湿潤ステージは、跳ね返された後に再度捕集される現象(ACIを使用した場合には生じ得る)を防止するために使用される。MSLIは粉末の流速依存度を示すために使用される。これは、MSLIを30、60、および90L/分で動作させ、ステージ1および捕集フィルタ上に捕集された粉末の部分を測定することにより、達成される。各ステージ上の部分が異なる流速にわたって比較的一定であるならば、粉末は流速非依存に近づきつつあると考えられる。
【0020】
1つの実施形態では本発明の吸入可能粉末は約0.4g/cm
3より小さいタップ密度を有する。例えば粒子は、約0.3g/cm
3より小さいタップ密度、または約0.2g/cm
3より小さいタップ密度、約0.1g/cm
3より小さいタップ密度を有する。タップ密度は、デュアルプラットフォーム・マイクロプロセッサ制御タップ密度テスタ(Dual Platform Microprocessor Controlled Tap Density Tester)(ナースカロライナ州のVankel社製)またはGEOPYC(登録商標)計器(ジョージア州ノークロス30093のMicrometrics Instrument社製)などの当業者に周知の計器を使用することにより測定され得る。タップ密度はエンベロープ質量密度の標準測定値である。タップ密度は、USP Bulk Density and Tapped Density,United States Pharmacopia convention,Rockville,Md.,10
th Supplement,4950−4951,1999の方法を使用して判定され得る。低タップ密度に寄与し得る特徴は不規則表面テクスチャおよび多孔性構造を含む。等方性粒子のエンベロープ質量密度は、粒子の質量を、その中に当該粒子を包囲し得る最小の球状エンベロープ体積で除算した値として定義される。本発明の1つの実施形態では、粒子は約0.4g/cm
3より小さいエンベロープ質量密度を有する。
【0021】
本発明の吸入可能粉末は、好適な粒径(例えば少なくとも1ミクロン(μm)の幾何学的体積中位粒径(VMGD:volume median geometric diameter)を有する。噴霧乾燥された粒子の粒径(例えばVMGD)は、レーザ回折機器(例えばニュージャージー州プリンストンのSympatec社製のHelos)を使用して測定が可能である。粒径測定用の他の器具も当該技術分野で周知である。試料中の粒子の粒径は粒子の組成および合成の方法などの要因に応じて上下するであろう。試料中の粒子の粒度分布は、気道内の標的部位への最適な付着が可能となるよう選択され得る。
【0022】
本発明の吸入可能粉末の粒子は好適には、約1μm〜約5μmの範囲の、または約1μm〜約5μmの範囲内に含まれる任意の部分範囲の、「空気力学的質量中位径」(MMAD)(本明細書では「空気力学的粒径」とも呼称される)を有する。例えばMMADは、必ずしもこの範囲に限定されるわけではないが、約1μm〜約3μmの範囲にあり、または約3μm〜約5μmの範囲にある。実験的に空気力学的粒径は重力沈下方法を用いることにより判定され得る。なおこの重力沈下方法では、粉末粒子の集団が特定距離だけ沈下するために要する時間が粒子の空気力学的粒径を直接的に推測するために使用される。空気力学的質量中位径(MMAD)を測定するための間接的方法は、多段液インピンジャー(MSLI)である。空気力学的粒径、d
aer、は以下の式:
d
aer=d
g√ρ
tap
から計算され得る。式中、d
gは幾何学的粒径(例えばMMGD)であり、ρは粉末密度である。
【0023】
1つの実施形態では粒子は、約5μm〜約18μmの範囲の幾何学的質量中位径(MMGD:mass mean geometric diameter)を有する。他の実施形態では粒子は、約5μm〜約12μmの範囲の幾何学的質量中位径(MMGD)を有する。他の実施形態では粒子は、約8μm〜約10μmの範囲の幾何学的質量中位径(MMGD)を有する。他の実施形態では粒子は、約8μm〜約15μmの範囲の幾何学的質量中位径(MMGD)を有する。
【0024】
本発明のカプセル内で使用するための粉末は通常、噴霧乾燥により作られる。いくつかの場合では噴霧乾燥は極度に乾燥された粒子を作ることが可能である。係る乾燥粒子は取り扱い適性が低く、カプセル内に稠密に密集させることは困難となり得る。特定の湿度レベルを有する窒素源が、特定の含水量を乾燥粉末に加えるために、乾燥粉末の上方を、乾燥粉末を横切って、または乾燥粉末を通過して、飛ばされ得る。係る湿度は、粉末の望ましい作業密度を提供し得る。本発明に係る噴霧乾燥方法は、本明細書の実施例において、および米国特許第6,848,197号および米国特許第8,197,845号において、説明される。これらの特許文献は参照することにより本明細書に援用される。
【0025】
上述のレボドパを含む吸入可能粉末は、吸入器における使用に好適なカプセルを充填するために使用される。本明細書で使用される「カプセル物質」という用語は、吸入用カプセルのシェルの原料となる物質を指す。1つの実施形態では本発明に係るカプセル物質は、ゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、および合成プラスチックの中から選択される。
【0026】
ゼラチンがカプセル物質として使用される場合、本発明に係る事例は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG3350、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、PEO−PPOブロックコポリマー、および他の多価アルコールならびにポリエーテルの中から選択され得る。セルロース誘導体がカプセル物質として使用される場合、本発明に係る事例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースの中から選択され得る。合成プラスチックがカプセル物質として使用される場合、本発明に係る事例は、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレートの中から選択され得る。1つの実施形態ではカプセル物質は二酸化チタンをさらに含む。1つの好適な実施形態ではカプセルはHPMCおよび二酸化チタンを含む。1つの実施形態ではカプセルはカラギーナンを含む。さらなる実施形態ではカプセルは塩化カリウムを含む。さらなる実施形態ではカプセルはHPMC、カラギーナン、塩化カリウム、および二酸化チタンを含む。1つの実施形態ではカプセルサイズは000、00、0、1、または2から選択される。特定的な実施形態ではカプセルサイズは00である。
【0027】
1つの特定的な実施形態ではカプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルである。他の特定的な実施形態ではカプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロース・サイズ00カプセルである。1つの好適な実施形態ではカプセル物質はHPMCおよび二酸化チタンを含み、カプセルサイズは00である。
【0028】
1つの実施形態では00カプセルは乾燥重量で15〜50グラムの範囲のレボドパを含む。他の実施形態では00カプセルは乾燥重量で20〜40グラムのレボドパを含む。他の実施形態では00カプセルは乾燥重量で25〜35グラムのレボドパを含む。他の実施形態では00カプセルは乾燥重量で約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40グラムのレボドパを含む。
【0029】
本発明の1つの態様では粉末は低い静電気的帯電を有し、なおこの低い静電気的帯電はカプセルからの高い分散を十分に可能にする。
【0030】
本発明は、低密度・高流動性の粉末を、高い精度および反復性をもって、高い目標充填重量でカプセル内に吐出するための方法および投与装置をさらに提供する。
図4を参照すると、本発明の投与器20について説明される。本発明の吐出器は、メッシュスクリーン26において測定された投与器チャンバの内径が大きい(約0.280〜0.315インチ、好適には0.286インチである)ため、本明細書では「全内径投与器」とも呼称される。これは標準サイズの投与器(通常0.250インチの直径を有する)の投与器チャンバの内径よりも大きい。本発明の投与器の投与器チャンバの内径がより大きいため、粉末による圧力低下により、より大量の粉末が保持されることが可能となる。
【0031】
引き続き
図4を参照すると、投与器20は好適にはチューブの形状である。なおこのチューブ形状は、投与器の頂部50から投与器の底部56までテーパし、長尺キャビティを形成する軸方向通路をチューブ内に有する。固定プランジャ22がキャビティ内に配置される。πd
2/4(式中、dはメッシュスクリーンにおいて測定された投与器チャンバの内径)に等しい面積と、乾燥粉末の質量中央径(D
50)より小さいメッシュサイズと、を有する着脱可能メッシュスクリーン26が、固定プランジャ22と投与器の底部56との間に配置される。事前決定された高さの投与器チャンバ27は、メッシュスクリーン26と投与器の底部56との間の空間により画成される。なお投与器チャンバ27は、粉末源から粉末を受け取り、粉末がカプセルに放出されるまで粉末を保持するためのものである。1つの実施形態では投与器チャンバの高さは5mm〜20mmの範囲である。投与器チャンバの高さは、カプセルの要求される充填重量が収容されるよう、選択され得る。少なくとも1つの真空ポンプがポート24などのリンク手段を介して動作可能にリンクされる。この真空ポンプは、粉末源から投与器チャンバ27に乾燥粉末を引き込むことと、事前決定されたバルク密度を有する粉末の小塊へと粉末を密集させた後に粉末の小塊がカプセル内に放出されることと、を行うことが可能である。かくして少なくとも1つの正圧源が、投与器に動作可能にリンクされ、粉末小塊が投与器から放出されるよう、正圧を提供することが可能となる。
【0032】
メッシュスクリーン26は、着脱可能および交換可能となるよう設計され、幾何学的形状および形質に基づいて粉末が充填されることが可能となるよう設計される。メッシュスクリーン26は、投与器に動作可能にリンクされた真空ポンプに向かって上向きに粉末が移動してシステムを詰まらせることを防止するために、必要である。これにより、充填作業の経路の全域を通して一定の真空が保持され、その結果、目標充填重量の精度が保たれることとなる。粉末がメッシュスクリーン26を通過するならば、充填重量は、充填作業が進行するにつれて低下し続けるであろう。スクリーン26のメッシュサイズは、粉末が管を詰まらせることがないよう、所与の粉末のD
50よりも小さい。粒径がより大きい場合、抵抗が最小化されそれにより充填重量が最大化されるよう、より大きいメッシュが使われ得る。1つの実施形態ではメッシュスクリーンは2ミクロンメッシュスクリーンである。1つの実施形態ではメッシュスクリーンは5ミクロンメッシュスクリーンである。
【0033】
1つの実施形態では投与器20は少なくとも1つの真空ポンプに動作可能にリンクされる。1つの実施形態では投与器は少なくとも2つの真空ポンプに動作可能にリンクされる。投与器20は、例えば1つまたは複数のポート24を介して、1つまたは複数の真空ポンプにリンクされ得る。
【0034】
1つの実施形態では投与器20は、投与器チャンバ27からカプセル内に小塊を放出するための正圧を印加するにあたり好適な正圧源にリンクされる。1つの実施形態では正圧源は窒素タンクなどの窒素を含む供給源である。
【0035】
ここで
図5を参照すると、本発明の全内径投与器を動作させるために、粉末がホッパに装填され、空気を除去し充填作業を通して粉末床高さ51を保持するためにオーガを介してボウル52に搬送される。床高さ51は投与器のストローク高さの2倍の高さに保持される。本明細書で使用される「ストローク高さ」という用語は投与器の底部56からメッシュスクリーン26までの測定値を意味する。
【0036】
マニホールド60は、使用される負圧システムおよび正圧システムの両方に共通である。1つの実施形態では真空が2つの真空ポンプにより生成され、1atm(−98KPa)より低い圧力が達成される。低い圧力により、メッシュスクリーン26全面に大きい圧力差(ΔP)が生成される。
【0037】
本発明によれば、大きい真空および大きい内径の設計により、所与の粉末に対して高い充填重量を達成することが可能となる。粉末が充填された投与器20がカプセル62(好適にはサイズ00のカプセル)上で位置合わせされると、ただちにマニホールド60が正圧へと遷移され、小塊64が投与器からカプセル62内に放出される。本明細書で使用される「小塊」という用語は、
図5の要素64に示すように、投与器を通して真空が印加された後に密集された粉末を指す。生成される「推進」圧力は、粉末を投与器20から移動させるにあたり過不足のない圧力である。圧力が過剰に高いと小塊64は粉末の密度および流動性により分裂しカプセル62から放出されてしまう。圧力が過小に低いと、小塊64は投与器からの放出が不十分となってしまう。
【0038】
床高さ、真空、および推進圧力は高い充填重量の達成を可能にする。精度はストローク高さを調節することにより達成される。係る調節により、意図される充填重量に戻すための細かい調節がなされる。
【0039】
本発明の改善された投与器の特長は、真空投与構成により、低密度・高流量粒子(例えば互いに付着することがない粒子)が、高い精度および反復性をもって、高い目標充填重量で充填されることが可能となる点である。各作業に対して、90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl粉末などのレボドパ粉末の充填に対する相対標準偏差(RSD)は、00カプセルを使用する32mgカプセル充填に対して、4%よりも小さい。使用される高い真空(−1気圧未満)により低密度粉末が密集され、50mgもの粉末をサイズ00のHPMCカプセル内に充填することが可能となる。
図6は、本発明の投与器にしたがって使用される様々なゼラチンカプセルに対する代表的な技術仕様を示す表である。
【0040】
したがって1つの実施形態では、本発明は、本発明の投与器を使用してカプセルを充填する方法を含み、この方法は、投与器内に低圧真空を形成するステップと、粉末が充填されたボウルに投与器を配置し、粉末を投与器チャンバ内に吸い込むステップと、低圧真空を用いて粉末を投与器チャンバ内に保持し、それにより事前決定されたバルク密度を有する粉末の小塊を形成し、その粉末の小塊をカプセル内に放出するステップと、を含む。
【0041】
1つの実施形態では粉末小塊のバルク密度は約0.02g/cm
3〜約0.05g/cm
3の範囲である。1つの実施形態ではカプセルは00サイズのカプセルである。1つの実施形態では粉末小塊は約15〜50ミリグラムの範囲の粉末を含む。1つの実施形態では粉末小塊は約25〜35ミリグラムの範囲の粉末を含む。
【0042】
1つの実施形態では少なくとも1つの真空ポンプが約−1気圧(atm)の圧力を達成する。1つの実施形態では少なくとも2つの真空ポンプが約−1atmの圧力を達成する。
【0043】
1つの実施形態ではメッシュスクリーンにおいて測定された投与器チャンバの直径は0.280〜0.315インチの範囲である。1つの実施形態ではメッシュスクリーンにおいて測定された投与器チャンバの直径は0.286インチである。1つの実施形態ではホッパは、投与器のストローク高さの2倍となる床高さが達成されるよう、粉末で充填される。
【0044】
1つの実施形態では投与器は約25〜50mgの粉末で00カプセルを充填する。1つの実施形態では投与器は少なくとも30mgの乾燥粉末で00カプセルを充填する。
【0045】
1つの実施形態では投与器は2つ以上の00カプセルを約30mg以上の乾燥粉末で充填する。なお全カプセルに充填された粉末の量における相対標準偏差は4%より小さい。
【0046】
本発明のカプセルは、レボドパを含む乾燥粉末組成物を例えばレボドパによる治療を必要とするパーキンソン病を患う患者に供給するために、乾燥粉末吸入器における使用に対して特に好適である。治療を必要とする患者は、パーキンソン病に起因する急性現象および/またはすくみ現象の場合に必要となり得る、パーキンソン病に対する維持療法またはパーキンソン病に対する救援療法を必要とし得る。1つの実施形態ではカプセルは、米国特許第6,858,199号および米国特許第7,556,798号に説明されるように、効果的分量の乾燥粉末組成物を1回の呼吸で患者に供給するために、乾燥粉末吸入器において使用される。なおこれらの特許文献は参照することにより本明細書に援用される。
【0047】
本明細書で使用される「効果的分量」は、所望の効果または効力を達成するために必要とされる分量を意味する。薬剤の実際の効果的分量は、利用される特定の薬剤または薬剤の組み合わせ、配合された特定の組成、服用の様式、ならびに患者の年齢、体重、状況、および治療対象となる現象の重大さに応じて変動し得る。ドーパミン前駆体、ドーパミン前駆体の作用薬または組み合わせの場合、療法を必要とするパーキンソン病の徴候を低減するのは分量である。特定患者に対する服用量についてここで説明する。係る服用量は、従来の考慮を使用して(例えば適切な従来の薬理学的な手続きにより)当業者により決定され得る。例えばレボドパの効果的分量は約50ミリグラム(mg)〜約500mgの範囲である。多くの事例では、一般的な持続的(経口)レボドパ治療スケジュールは100mgを1日に8回である。
【0048】
2つ以上のドーパミン前駆体、ドーパミン前駆体の作用薬または組み合わせ、特にレボドパ、カルビドパ、アポモルヒネ、および他の薬剤、の服用は、同時に、または時間的に順次に、提供され得る。例えばカルビドパまたはベンセラジドが、周辺部のカルボキシラーゼ活性を完全に阻害するために、しばしば投与される。筋肉内投与、経皮投与、経口投与、および他の投与経路が用いられ得る。1つの実施形態ではこれらの他の薬品が肺系統に供給される。これらの化合物または組成物は、前に、後に、または同時に、投与され得る。好適な実施形態では、気道に投与される粒子はレボドパおよびカルビドパの両方を含む。本明細書で使用される「同時投与」という用語は、特定のドーパミン前駆体、ドーパミン前駆体の作用薬または組み合わせ、および/または他の組み合わせが、現象、ならびに本明細書で説明される基礎症状を治療するために、投与されることを意味するために使用される。
【0049】
1つの実施形態では、習慣的レボドパ療法は、経口カルビドパと併せてレボドパを肺に供給するために乾燥粉末吸入器における本発明のカプセルを使用することを含む。他の実施形態では、レボドパを肺に供給することは現象の間に提供される。その一方で、習慣的治療では、レボドパ/カルビドパの従来の経口投与が用いられ得る。さらなる実施形態では、習慣的レボドパ療法は、経口ベンセラジドと併せてレボドパを肺に供給するために乾燥粉末吸入器において本発明のカプセルを使用することを含む。他の実施形態では、レボドパを肺に供給することは、現象の間に提供される一方で、習慣的療法では、レボドパ/ベンセラジドの従来の経口投与が用いられ得る。
【0050】
本発明は、他の非限定的な事例を参照することにより、さらに理解されるであろう。
【0051】
実施例
実施例1
この実施例では、本明細書では「90:8:2」と呼称される90:8:2のレボドパ:ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC):塩化物(NaCl)組成物を生成するための噴霧乾燥動作に対して実施された改変例を調査するための一連の研究についてまとめられる。レボドパを含む粉末の初期ロットを生成するために開発された90:8:2噴霧乾燥動作は、約4%の含水量、5.4ミクロンより小さい50〜60%の範囲の微粒子割合、およびサイズ00カプセルあたり約23mgの最大カプセル充填重量を有する完全に非晶質である90:8:2レボドパ:DPPC:NaCl粉末の生成を伴った。特性のこの組み合わせにより、供給された最大レボドパ服用量(レボドパの微粒子量)は約12mgであった。なおこれらの粉末は、高い静電気帯電と、低いバルク密度(通常0.01〜0.02g/cc)と、タップ密度(通常0.02〜0.04g/cc)とを示した。これにより、これらの粉末をサイズ00カプセルに再現性をもって充填することは極めて困難なものとなった。これに基づいて、単位カプセルあたり供給されるレボドパ服用量を17mg以上に増加させるよう試みることが望まれた。加えて90:8:2粉末の物理的安定性を増大させることも望まれた。なぜなら、いくつかの粉末ロットは、特に実験室湿度が制御されない状態で充填されたロットに対して、保管時に非晶質−結晶質変換が生じ、その結果、これらのロットが高い湿度にさらされる可能性が生じたことが観察されたからである。
【0052】
噴霧乾燥動作の間、製品フィルタのフィルタバッグ上に捕集される粉末は、水蒸気が噴霧乾燥ユニットから製品フィルタバッグの全域で排出管に向かって移動するため、製品フィルタの湿気を多く含んだ環境にさらされる。この粉末が捕集のためにフィルタバッグからふるい落とされたとき、粉末は、粉末が製品フィルタにおいて捕捉した残留湿度を保持する傾向を有する。この傾向は、即時の、または保管中のいずれかの時点における非晶質形態から結晶形態への固定変換を支援するよう作用し得る。この変換を防止するにあたっては、捕集の前に粉末が効果的に乾燥されることが必要である。係る効果的な乾燥は、製品フィルタと捕集容器との間にパージストリームとして乾燥窒素を導入することにより達成される。しかしこの乾燥動作の間、粉末は、おそらく流入する窒素パージガスの乾燥状態により、静電気的に帯電する。この静電気的帯電は粉末のバルク密度を低下させ、それによりカプセル内に充填され得る粉末量が低下することとなる。その結果、単位カプセルあたりの微粒子量(FPM)が低下する。粉末上の静電気的帯電を排除すること、および/または固体変換を発生する傾向を粉末に持たせることなく粉末のバルク密度を増加させること、によりFPMを増加するための以下で示す方法および改変が実行および評価された。
【0053】
したがって本明細書で説明する研究は、(1)単位カプセルあたりの微粒子量(FPM)の最適化と、(2)カプセル充填重量の増加と、(3)バルク噴霧乾燥された90:8:2の非晶質固体構造の安定化と、を目的として実行された。プロセスパラメータ、ユニット動作、および調合変更が、評価項目(1〜3)を達成する上での有効性に対して実行および評価された。
【0054】
変更の種類
3種類の変更すなわち(1)ユニット動作変更と、(2)プロセスパラメータ変更と、(3)調合変更と、が評価された。
【0055】
(1)ユニット動作変更
2種類のユニット動作変更すなわち(i)加湿パージガスと、(ii)インライン・イオン化と、についての研究がなされた。静電気的帯電の低下と、カプセルの最大充填重量の増加と、に関して、これら2つのうち加湿パージガスの使用が最善の結果を示した。この変更の詳細について以下で説明する。
【0056】
空気中の湿気により空気の伝導性が増大し、それによりガスの放出が可能となるため、加湿環境に曝露することは、物質に蓄えられた静電気的帯電を減少させることを支援する。粉末を乾燥させるためのパージガスとして使用される乾燥窒素が90:8:2粉末に静電気的帯電を発生させる根本原因であると考えられため、パージガスの加湿化により、帯電の消失が可能となり、粉末粒子の表面に蓄えられた静電気的帯電を解消することが支援され得る。それによりバルク密度が大きくなり、その結果、単位カプセルあたりの微粒子量が大きくなる。
【0057】
パージガスの加湿化は、2種類の流入パージガス構成、すなわち(i)
図2Aに示す標準的流入構成(この構成ではパージガスが製品フィルタの底部において水平に流入した)と、(ii)
図2Bに示す傾斜流入構成(この構成ではパージガスが製品フィルタの底部において垂直軸に対して傾斜した状態で流入した)と、を使用して実行された。
【0058】
標準構成においては製品フィルタバッグからふるい落とされた粉末が乾燥パージガスと接触する時間は、係る構成ではパージガスの狭い流れが流入するため、ほんの一瞬にすぎない。傾斜流入構成の場合のようにパージガス流入の角度を変化させることにより、バッグからふるい落とされた粉末が流入する乾燥パージガスに曝露される時間を長くすることが可能である。この構成は、加湿パージガスが標準的水平流入口を通って流入する構成とは対照的に、静電気的帯電をより効果的に排除することを支援し得る。それにより、微粒子量は増大され、粉末の静電気的帯電は軽減され得る。
【0059】
図1を参照するとパージガスの加湿は、洗浄用の水2が充填された圧力ポット1にガスを通すことにより、実行された。制御バルブ8を有するバイパス管3が圧力ポット1と平行に取り付けられた。圧力ポット1を通過する窒素量と圧力ポット1をバイパスする窒素量との比を制御することにより、結果的に生成されるパージガスの相対湿度(RH)の制御が可能である。流出するパージガスの湿度は加湿圧力ポット1装置の下流側に直列に取り付けられた露点計4を使用して測定された。
【0060】
次にパージガスは回転流量計5を通過する。この回転流量計5は、製品フィルタへのパージガスの流れを制御するよう機能し、最終的粉末の含水量を調節することを支援する。バタフライバルブ31は、捕集容器7を交換するときに製品フィルタを環境から分離するよう機能する。バタフライバルブ32は、捕集容器から最適な温度および相対湿度で保管された保持容器に製品を移送ステップの間に、環境から捕集容器を分離するよう機能する。
【0061】
次に加湿パージガスは、(i)標準的水平パージ流入構成(
図2A)または(ii)傾斜パージ流入構成(
図2B)を通して製品フィルタ装置6の底部に導入された。
【0062】
傾斜流入構成(
図2B)では、標準的水平流入口10(
図2A)とは対照的に、指向性流入口9がパージガスストリームに対して使用された。この指向性流入口9は流入口9自体の軸に沿って回転可能であり、したがって
図1および
図3A〜
図3Dに示すように、製品フィルタ6に向かって、または捕集容器7に向かって、指向され得る。
【0063】
使用される指向性流入口9の構成は、下向き0°(
図3A)と、上向き0°(
図3B)、下向き傾斜25〜30°(
図3C)と、上向き傾斜25〜30°(
図3D)と、を含んだ。なお括弧内の項目は、製品フィルタの垂直軸に対する角度を示す。
【0064】
加えてパージガス流入口が垂直軸に対して0°の状態で、異なる噴霧ガス流速(25g/分〜55g/分)が評価された。
【0065】
実験条件
パージガスは異なる相対湿度レベルに加湿された。パージガス流入口に対する回転流量計は3.5g/分または20scfhに設定された。
【0066】
結果
標準的構成
異なるRHに加湿された窒素パージガスを使用して生成された粉末が、0%の相対湿度の標準的パージガス条件下で製造された粉末と対比して同様の粒径および微粒子割合を有することが観察された(表1)。
【表1】
【0067】
一方、粉末を視覚的に観察したかぎり、粉末は、標準的粉末と比較すると遥かに稠密であった。加えてこれらの粉末のX線粉末回折(XRPD)分析では、10%を越えるパージガス加湿で生成された粉末に対して結晶ピークが形成を開始する証拠が示された。結晶相のこの初期量がさらに、保管時におけるこれらの粉末の再結晶化に対して触媒作用を及ぼすであろうことが期待される。このことによりFPFおよび含水量において望ましくない減少がもたられたことが観察されている。したがって5〜10%RHの範囲におけるパージガス加湿が、標準的構成を利用して噴霧乾燥された粉末の静電気的帯電を減少させることに関して最適であることが判定された。
【0068】
傾斜構成
異なる配向のパージガス流入口と、一定の噴霧ガス流速と、の使用から得られた結果について、以下の表2にまとめる。
【表2】
【0069】
下向き傾斜配向で生成された粉末は、サンプリングために捕集容器を開いたとき極めて高い静電気的帯電が存在したため、サンプリングできなかった。
【0070】
単一配向のパージガス流入口と、異なる噴霧ガス流速と、の使用から得られた結果について、以下の表3にまとめる。
【表3】
【0071】
視覚的に、下向き傾斜配向で生成された粉末を除いて全粉末は、標準的パージガス流入口配向で生成された粉末と比較して、遥かに稠密であり且つ比較的少量の静電気的帯電を有するものと見受けられた。
【0072】
結果
パージガスの加湿により、FPFおよび含水量が同一に保持される一方で粉末が稠密化されることが観察されたが、これらの調合は、いくつかの場合では、特に10%を越えるパージガス加湿に対して、XRPDによる結晶相の形成の証拠を示すことが観察された。結果として、10%RHを越えて加湿されたパージガスの使用は、実行可能な選択肢ではないことが判定された。なお5〜10%の範囲のパージガス相対湿度を使用することにより、粉末の静電気的帯電の軽減と、粉末FPFの減少または非晶質−結晶質変換を生じさせることなく粉末密度の増大と、をもたらすための機構が提供された。
【0073】
(2)調合変更
90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl粉末に対する代替的な調合が、FPF、充填重量、および固体安定性の最適化における有効性に関して評価された。
【0074】
DPPC:塩化ナトリウム比の変更
DPPC:NaClの代替的な比を有する粉末が、90%レボドパ粉末の密度の増大化および静電気的帯電の低減化における効率に関して評価された。粉末の塩含有量の増大化が粉末の静電気的帯電を解消させ、それにより静電気的帯電を低減させることを支援するよう機能するのではないかという仮説が立てられた。
【0075】
実験計画:
4:6のDPPC:NaCl比が当初、多量の塩化ナトリウムが90:8:2粉末のFPFおよび密度に対して及ぼす影響を評価するための開始点として選択された。パージガス相対湿度が0%および10%の両方に維持された。
【0076】
結果:
90:8:2調合に対する標準的条件を利用して生成された90:4:6のレボドパ:DPPC:NaClロットの物理的特性および空気力学的特性を表4に示した。
【表4】
【0077】
表4に見られるように、生成された90:4:6のレボドパ:DPPC:NaCl粉末は、同様の条件(通常、バルク密度に対して0.02g/cc、およびタップ密度に対して0.04g/cc)を使用して作られた90:4:6のレボドパ:DPPC:NaCl粉末に対して見られるバルク密度およびタップ密度よりも、実質的に高いバルク密度およびタップ密度を有した。この試行により、FPFおよびgPSDに対する好適な結果とともに好適なバルク密度およびタップ密度の結果がもたらされたため、2:8および6:4の追加的な代替的DPPC:NaCl比を評価し、それらの結果を4:6の粉末および対照(8:2)粉末と比較することが決定された。90:8:2調合に対する標準的条件を利用して生成された粉末に対する結果を表5に示した。
【表5】
【0078】
4:6のDPPC:NaCl比が高いFPFおよび高いバルク密度/タップ密度の両方を生成することが観察されたため、この調合は再現可能性をチェックするために反復された。90:4:6のレボドパ:DPPC:NaCl調合に対する反復実行に対する結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0079】
レボドパ:DPPC:NaCl調合。
これらの結果に基づいて、5:5のDPPC:NaCl比も生成および分析された。この調合の3回の実行に対する微粒子割合、バルク密度/タップ密度、および幾何学的粒径を以下の表7にまとめる。
【表7】
【0080】
90:5:5のレボドパ:DPPC:NaCl調合は、標準的な90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl調合と同一の範囲にある非常に望ましいFPF値を示し、同時に望ましいバルク密度値およびタップ密度値も示す。なお係る望ましいバルク密度値およびタップ密度値は、90:8:2調合と比較すると実質的により大きく、以前に評価された90:4:6のレボドパ:DPPC:NaCl調合の範囲内にある。
【0081】
L−ロイシン、クエン酸ナトリウム、または塩化カルシウムの添加
賦形剤または賦形剤の代表品の添加も、90:8:2粉末のFPMおよびバルク密度の最適化に向かう潜在的な経路として調査された。賦形剤であるL−ロイシン、クエン酸ナトリウム、および塩化カルシウム(これらは組織内で入手可能である)が、添加物として、または現在の90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl調合における賦形剤の代表品として、使用および評価された。
【0082】
実験設定
クエン酸ナトリウムが塩化ナトリウムに対する潜在的な代替物として評価され、塩化カルシウムが、現在の調合に対する他の潜在的な塩添加物として調査され、L−ロイシンがDPPCに対する潜在的な代替物として評価された。塩化カルシウムが使用されたとき、レボドパの量は90%から50%に減少された。噴霧乾燥されるための溶液に対する固体濃度は1g/Lに維持された。
【0083】
観察: L−ロイシン、クエン酸ナトリウム、および塩化カルシウムが添加物として、または調合における代用品として使用されたときに観察された結果を以下の表8にまとめる。
【表8】
【0084】
考察
L−ロイシンの添加により粉末のタップ密度およびバルク密度は大きくなったが、FPFは、標準的な90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl調合のFPFよりも顕著に小さくなった。
【0085】
同一の比率で塩化ナトリウムをクエン酸ナトリウムで代用することにより、カプセル充填重量は27.3mgとなった。粉末のXRPD分析では、粉末が非晶質状態を保持したことが結論された。しかし歩留まりが顕著に低いものであったため、それ以外の試験は実施できなかった。
【0086】
DPPCの装填を増加させレボドパの装填を減少させることに加えてクエン酸ナトリウムおよび塩化カルシウムを添加すること(50:25:15:10のレボドパ:DPPC:クエン酸ナトリウム:CaCl
2)により、粉末のFPFが65%に増加したことが観察された。一方、粉末をXPRD分析することにより、結晶成長が存在したことが結論された。
【0087】
実施例2 カプセル充填動作の最適化
標準的な90:8:2調合粉末は高い静電気的帯電を有する低密度粉末である。低密度90:8:2粉末が大きい体積を占有するため、その空気力学的性能を影響することなくカプセル内に充填され得る粉末の量は大きく制限される。係る低密度粉末が高い静電気的帯電を有する場合、帯電した粉末がカプセルおよび充填用機材の壁部と常に相互作用することにより、カプセルの充填重量に高程度の変動性が見られ得る。係る粉末に対するカプセル充填動作(同時に低い充填重量と高い重量変動とを示す)は、一連の特異的な難題を提示した。これらの難題の全部は、充填機材の変更を必要とした。係る変更は、粉末の物理的特性および化学的特性に影響を及ぼすことなく充填重量目的の達成を支援した。
【0088】
この事例では、実験および変更により、90:8:2粉末をサイズ00のカプセルに充填するためにHarro Hofliger KFM III−Cカプセル充填機械を使用して実施された粉末充填動作が最適化されたことがまとめられる。
【0089】
異なるKFM III−C変量および調合組成物が、異なる90:8:2調合に関して最適且つ再現可能な充填重量を達成することにおけるそれぞれの有効性に関して、異なる真空構成下で評価された。3つの真空構成、すなわち(i)投与器に対して真空を印加しない、(ii)投与器に対して事前設置されたKFM真空を使用する、および(iii)投与器に対して外部真空を使用する、が使用された。90:8:2活性粉末に対して、外部真空により支援されるサイズ00の全内径真空投与器が、KFM III−Cカプセル充填機械上で正確且つ再現可能な充填重量を達成するにあたり最適な構成であることが判定された。この構成の分析について以下で説明する。
【0090】
投与器上に外部真空を使用する充填
この真空構成では、Gast真空ポンプ(モデル#1023−101Q−G608X)が、KFM機械に搭載された真空に代わって、投与器に対する真空として使用された。
【0091】
外部真空を使用するカプセル充填の精度および再現可能性に関して評価された投与器構成および調合変量は、
(i)90:4:6のレボドパ:DPPC:NaClを含む、標準的なサイズ00の真空投与器と、
(ii)90:8:2のレボドパ:DPPC:NaClを含む、標準的なサイズ00真空投与器と、
(iii)90:5:5のレボドパ:DPPC:NaClを含む、標準的なサイズ00真空投与器と、
(iv)90:8:2のレボドパ:DPPC:NaClを含む、全内径サイズ00の真空投与器と、
(v)ラクトース1水和物NFを含む、全内径サイズ00の真空投与器、サイズ4プランジング投与器、およびサイズ5プランジング投与器と、
を含んだ。
【0092】
90:4:6のレボドパ:DPPC:NaClを含む標準的サイズ00真空投与器:
この実験に対して、標準的サイズ00投与器が、90:4:6のレボドパ:DPPC:NaCl調合を噴霧乾燥することにより得られた粉末を充填するために使用された。この実験において充填重量精度に関して評価された変量は、(i)粉末床に対する水平ブレード体プラットフォーム、および(ii)低対高の粉末床高さ、を含んだ。この実験に対する結果を以下の表9にまとめる。
【表9】
【0093】
90:8:2のレボドパ:DPPC:NaClを含む、標準的なサイズ00真空投与器:
この実験では、標準的なサイズ00投与器が90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl調合を充填するために使用された。充填重量精度に対して評価された変量は、(i)低粉末床高さ、(ii)粉末床における粉末を分冊するためにブレードおよびレーキの使用、および(iii)高対低の投与器真空、を含んだ。この実験に対する結果を表10にまとめる。
【表10】
【0094】
90:5:5のレボドパ:DPPC:NaClを含む標準的サイズ00真空投与器:
この実験では、標準的なサイズ00投与器が90:5:5のレボドパ:DPPC:NaCl調合を充填するために使用された。この実験では、1つのみの変量、すなわち低い投与器真空対高い投与器真空、が充填重量精度に対して評価された。この実験に対する結果を以下の表11にまとめる。
【表11】
【0095】
90:8:2および90:5:5のレボドパ:DPPC:NaClを含む、全内径サイズ00の真空投与器
ここで
図4を参照すると、全内径投与器20は、標準的な投与器チャンバの通常の内径である0.250インチと比較して、メッシュスクリーン26における投与器チャンバの内径が0.286インチに増大化されるよう変更された標準的真空投与器である。投与器20は、
図5に示すように、投与器プランジャ22が静止状態に留まり、真空を印加することにより粉末が投与器20内に引き込まれ、噴出圧力を印加することにより粉末が投与器20から排出されるようにも、変更された。真空は適切な配管を用いてポート24において投与器20に取り付けられたポンプにより生成された。粉末が定位置を越えて侵入し真空ポンプおよび配管と干渉することを防止するために、2ミクロンのメッシュスクリーン26がプランジャ22の底部に追加された。噴出圧力は外部貯蔵タンクから加圧された窒素源により提供された。
【0096】
この実験では、全内径真空投与器が、水相に対して窒素ガスオーバーレイを使用して生成された90:8:2粉末を充填するために使用された。前述のように90:5:5および90:8:2の粉末調合は、バルク密度値およびタップ密度値が大きくなったために元の充填重量の2倍の充填重量を有することが観察された。全内径真空投与器を使用することにより、標準的な90:8:2 90:8:2粉末を使用して同様に高い充填重量を生成することが可能となった。
【0097】
目標カプセル充填重量を達成するために投与器チャンバ高さは、望ましい充填重量の十分な精度および再現可能性を有するカプセルが生成されるまで、−15”Hgの標準的な真空に調整された。室温はおよそ20℃に保持され、部屋の相対湿度はおよそ20%R.H.に保持された。
【0098】
90:8:2のレボドパ:DPPC:NaClの1つのロットが試行充填のために充填され、その後、同一組成の他のロットが充填された。これらの2つのロットが生成された後、90:5:5のレボドパ:DPPC:NaClを含む第3ロットが充填された。3つのロットの全部は、精密且つ再現可能性を有する充填重量を生成することにおけるKFMの有効性に関して評価された。
【0099】
この実験に対する結果を以下の表12にまとめる。
【表12】
【0100】
90:8:2調合に対する以前の試行は結果として、単位カプセルあたり23ミリグラムという最大充填重量をもたらした。全内径真空投与器を使用して得られた充填重量は以前の試行よりも顕著に大きい。例えば28〜40mgの充填重量が達成され得る。充填重量の例としては28〜32mg、30〜34mg、または35〜40mgが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0101】
ラクトース1水和物NFを含む、全内径サイズ00真空投与器、サイズ4プランジング投与器、およびサイズ5プランジング投与器:ラクトース1水和物NFが90:8:2調合に対するプラセボ薬として使用された。ラクトースの目標充填重量は10mgであった。
【0102】
結論
通常、多量粉末の充填は肺用製品に対しては一般的ではない。出願者らは、経肺供給用のカプセルに多量の粉末を充填することを可能にする新規パラメータおよび処理を特定した。90:8:2の活性粉末に対して、外部真空により支援されるサイズ00全内径真空投与器は、90:8:2粉末に対して見られた23mgの以前の最大充填重量と比較して、より高い最大充填重量(最大で38mg以上)と、KFM III−Cカプセル充填機械上での精度および再現可能性を有する充填重量と、を達成するために使用され得る。
【0103】
加えて、この構成を使用して評価された粉末の3つの比率のうち、90:8:2のレボドパ:DPPC:NaCl比を有する粉末は、90:5:5および90:4:6の比と比較して、遥かに高い精度および再現可能性を持って目標充填重量に充填されることが可能である。
【0104】
ラクトースプラセボ薬粉末に対して、外部真空により支援されるサイズ5プランジャ投与器は、精度および再現可能性をもって望ましい目標重量を達成するための選択の構成である。
【0105】
実施例3−カプセル物質および放出された服用量の分析
特定種類のカプセルが放出される粉末の服用量を増加させる上で有用ではないかという仮説が立てられた。HPMC「透明」カプセルとHPMC/二酸化チタン「白色」カプセルが選択された。放出服用量管で構成された吸入器を有する2つの作業台が提供された。透明または白色のカプセルが、実質例1により目標装填量まで調合され吸入器内に配置された吸入可能レボドパ粉末(レボドパ:DPPC:NaClが90:8:2の乾燥重量比)で28mgまで充填された。分析者が各ステーションに割り当てられ、28.3L/分で4.2秒間にわたり吸入器をEDチューブに作動させ、内容物を洗滌した。内容物のFPFが標準的な手順を使用して測定された。分析者は、作業台を切り替え、それぞれ他の吸入器技法を使用した。結果を以下の表13〜表20に示す。表13および表14は、透明カプセル(二酸化チタンを含まない)と、シオノギ製の白色カプセルと、の比較を示す。表15および表16は、同一研究を示すが、分析者は作業台を切り替えて、それぞれ他の吸入器技法を使用した。表17および表18は、表15および表16からの結果の編集である。表19および表20は透明カプセル(二酸化チタンを含まない)と、Capsugel社製の白色カプセルと、の比較を示す。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【0106】
考察
カプセル物質に二酸化チタンを含まない透明カプセルから放出された粉末と比較して、より多量の粉末が、HPMCおよび二酸化チタンを含むカプセル物質を有する白色カプセルから放出されたことが、データにより示される。このデータは驚くべきである。いかなる理論にも限定されるものではないが、カプセル物質中に存在する二酸化チタンが、カプセルから放出する際にカプセル壁部に固着する粉末の量を減少させたものと考えられる。
【0107】
実施例4 安定性の研究
目的
重量測定ACI−3およびXRPDを使用して75%の相対湿度および25℃に15分間、30分間、および60分間曝露された機械充填されたカプセル内の90/8/2および90/5/5のレボドパ粉末を特徴付けること。追加的な時間ポイントが曝露の240分および360分において加えられ、白色カプセルおよび透明カプセルはロット41021(90/8/2)を用いてテストされた。
【0108】
実験設計:ロット28100(90/8/2)およびロット28109(90/5/5)が加湿チャンバ内で前述の条件に曝露された後、ただちに分析された。
【表21】
【表22】
【0109】
物質および方法
1.物質
・白色および透明のHPMCカプセルに封入された手動充填90%L−ドパ
1回の引き込みあたり4カプセル
・ロット41018で充填された
2.テストスケジュール
・カプセルは以下の表23に列挙した時間にわたり25℃/75%RHチャンバに保管される。カプセルは、曝露の間カプセルキャップが装着された状態で、各種類のカプセルに対して曝露の間キャップが装着されない状態で、テストされる。
【表23】
【0112】
c.%FPF<5.6μm
【表26】
【0113】
本明細書で参照された特許文献および科学文献は、当業者に入手可能な知識を確立する。本明細書で引用された米国特許および公開または未公開の米国特許出願の全部は参照することにより援用される。本明細書で引用された、外国の特許および特許出願の全部は参照することにより本明細書に援用される。本明細書で引用された他の公開された参考文献、文書、原稿、および科学文献は参照することにより本明細書に援用される。
【0114】
本発明について、本明細書の好適な実施形態を参照して説明してきたが、形態および詳細における様々な変更が添付の請求項により含まれる本発明の範囲から逸脱することなく可能であることは当業者により理解されるであろう。本明細書で説明した実施形態が相互排他的ではないこと、および様々な実施形態に含まれる特徴が全体的に、または部分的に、本明細書にしたがって組み合わされ得ることも理解されるべきである。