(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836842
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ロータおよびこれを含むモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20060101AFI20210222BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20210222BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
H02K1/27 501A
H02K1/27 501K
H02K1/27 501M
H02K21/14 M
H02K1/22 A
H02K1/27 501G
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-76694(P2016-76694)
(22)【出願日】2016年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-226262(P2016-226262A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0073825
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513276101
【氏名又は名称】エルジー イノテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン チョル
【審査官】
佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−524757(JP,A)
【文献】
特開2001−268830(JP,A)
【文献】
特開2013−135506(JP,A)
【文献】
特開2001−008390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 1/22
H02K 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向にマグネット接触面が複数設けられる第1ロータコア;
前記マグネット接触面と向かい合うように位置する複数の第2ロータコア;
前記第1ロータコアと前記第2ロータコアの間に位置する複数のマグネット;および
相互隣接する前記マグネットの間に配置され、前記第2ロータコアおよび前記マグネットを固定し、前記第2ロータコアの外周面に密着するヘッド部を含む隔壁部;
を含み、
前記ヘッド部の前記マグネットと半径方向に接触しない非接触部分が前記第2ロータコアの外周面に密着し、
前記第2ロータコアは、前記非接触部分と前記マグネットとに半径方向に挟まれる部分を有する、ロータ。
【請求項2】
前記隔壁部は、
一端部が前記第1ロータコアに結着する結着部;および
前記結着部から延びて、相互隣接するマグネットの一側を支持する支持部;
を含む、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記結着部は、
前記第1ロータコアに設けられる結合溝に挿入される、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記結着部は、
前記結着部と前記支持部の境界面の第1幅を基準として、
前記第1幅よりも広い第2幅を具備する断面を有する形状である、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記結着部は、
前記第1ロータコアの中心部に向かうほど幅が広くなる構造である、請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
前記隔壁部は非磁性体で形成される、請求項2に記載のロータ。
【請求項7】
前記ヘッド部は、
相互隣接する前記第2ロータコアの外周面の一領域を覆う構造である、請求項2に記載のロータ。
【請求項8】
前記第1ロータコアの中心を基準として、前記ヘッド部の外周面が具現する曲率半径(R2)が
前記第1ロータコアの中心で前記第2ロータコアの外周面が具現する曲率半径(R1)以下に具現される、請求項7に記載のロータ。
【請求項9】
前記第1ロータコアおよび前記第2ロータコアは非積層型焼結構造物である、請求項1に記載のロータ。
【請求項10】
モータハウジング;
前記モータハウジングに配置されるステータ;
前記ステータの内側に配置されるロータ;および
前記ロータの中心を貫通するシャフト;を含み、
前記ロータは、
周方向にマグネット接触面が複数設けられる第1ロータコア;
複数の前記マグネット接触面と向かい合うように位置する第2ロータコア;
前記第1ロータコアと前記第2ロータコアの間に位置する複数のマグネット;および
相互隣接する前記マグネットの間に配置され、前記第2ロータコアおよび前記マグネットを固定し、前記第2ロータコアの外周面に密着するヘッド部を含む隔壁部;
を含み、
前記ヘッド部の前記マグネットと半径方向に接触しない非接触部分が前記第2ロータコアの外周面に密着し、
前記第2ロータコアは、前記非接触部分と前記マグネットとに半径方向に挟まれる部分を有する、モータ。
【請求項11】
前記モータは、
前記隔壁部の一端部が前記第1ロータコアに挿入される結着部と前記結着部から延びて、相互隣接するマグネットの一側を支持する支持部および
前記支持部と連結されるヘッド部を含む構造である、請求項10に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は隔壁構造を利用するロータおよびこれを含むモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用モータが次第に高トルク、高速仕様に進化するにつれて、モータに適用されるロータ(rotor)構造に対するロバスト設計が必須として要求されている。
【0003】
一般的に、IPMモータ(Interior Permanant Magnet Motor)に適用されるロータの構造は、複数のディスク形状を有するロータコア部材を積層して形成する積層ロータコアを形成し、このようなロータコアにマグネットを挿入する構造で形成される。
【0004】
この場合、ロータコアに挿入されるマグネットは、電気鋼板をプレス加工して作った複数のロータコア部材の積層構造で形成されるロータコア内に設けられる挿入ホールに接着剤などの物質で圧入固定される。
【0005】
しかし、単純に接着剤を利用する固定方式は、長期間モータを使用したり、高温状態で長時間使用する場合、マグネットを固定している接着剤の接着力が弱まり、マグネットが最初の装着位置から動いたり、接着剤の剥離現象による異物の発生、高温でのガラス転移現象によってマグネットを固定することが不可能な状態となる問題が発生する。
【0006】
さらに、隣接して配置されるマグネットとロータコアの間の部分の磁束漏洩現象が深化してモータの出力減少が発生する問題も発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例は、前述した問題を解決するために案出されたもので、特にロータコアを内部と外部のユニットに分離し、その間にマグネットを安着した後、各構造物を固定することができる非磁性体の隔壁構造物を通じて固定することによって、固定の信頼性を確保することができることはもちろん、漏洩磁束の問題を一掃することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための手段として、本発明の実施例は、長さ方向である第1方向にマグネット接触面が複数設けられる第1ロータコアと複数の前記マグネット接触面と向かい合うように位置する第2ロータコア、前記第1ロータコアと前記第2ロータコアの間に位置する複数のマグネットおよび相互隣接するマグネットの間に配置され、前記第2ロータコアおよび前記マグネットを固定する隔壁部を含むロータを提供することができる。
【0009】
合わせて、前述した本発明の実施例に係るロータは、モータハウジングと前記モータハウジングに配置されるステータ、前記ステータの内側に配置されるロータおよび前記ロータの中心を貫通するシャフトを含んでモータとして具現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施例によれば、ロータコアを内部と外部のユニットに分離し、その間にマグネットを安着した後、各構造物を固定できる非磁性体の隔壁構造物を通じて固定することによって、固定の信頼性を確保することができることはもちろん、漏洩磁束を顕著に削減してモータの出力減少を予防することができる。
【0011】
さらに、ロータコアを具現する積層型構造物を具現して圧着する構造ではなく、焼結加工などの方式を通じてロータコアを具現することによって、プレス加工を通じて整列し、これを圧着する工程の遅延問題を解消して、材料費の節減を具現することができる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ロータの構造および磁束漏洩の概念を説明するための概念図。
【
図2】
図1のロータコアの構造でマグネットの磁束(magnetic flux)の流れを図示した図面。
【
図3】
図1のロータコアの構造でマグネットの磁束(magnetic flux)の流れを図示した図面。
【
図4】本発明の実施例に係るロータの構造を図示した概念図。
【
図5】
図4の構造で具現される本発明の実施例に係る隔壁部を具備したロータの構造で漏洩磁束密度を図示したイメージ。
【
図6】本発明の実施例に係るロータの構造(
図4)を適用したモータのシャフトに結合する具現例を図示したイメージ。
【
図7】本発明の実施例に係るロータを適用してモータを具現する場合、比較構造(
図1の構造)と実施例の構造(
図4)を適用して製造したモータの性能をテストした結果を示したグラフ。
【
図8】本発明の実施例に係るロータを適用してモータを具現する場合、比較構造(
図1の構造)と実施例の構造(
図4)を適用して製造したモータの性能をテストした結果を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付した図面を参照して本発明に係る構成および作用を具体的に説明する。添付図面を参照して説明するにおいて、図面符号にかかわらず同一の構成要素は同一の参照符号を付与し、これに対する重複説明は省略する。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するために用いることができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されるものではない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられる。
【0014】
図1はロータの構造および磁束漏洩の概念を説明するための概念図である。
【0015】
図1を参照すれば、モータに適用されるロータコア10は複数の積層構造物が積層される構造を有し、永久磁石のようなマグネット30が挿入される挿入ホール20が形成される。
【0016】
この場合、前記マグネット30の離脱を防止するために、挿入ホールとマグネットの間に接着剤を利用して接着力を強化する方式を取っている。この場合、ロータコアの外殻部12bとロータコアの内部12aは、
図1に図示された構造のように、狭い幅のブリッジ12cの構造を有する。このようなブリッジ12cの構造物は、ロータコアに具現されるマグネット挿入ホール20を具現する構造でロータコア自体の機構的な一体性を強化する機能を遂行しているが、マグネットとマグネットの境界部に漏洩磁束を発生させる要因として作用する。このような現象を防止するために、この境界部を薄くする方法も取り得るが、これでも漏洩磁束の増加を防止することはできない。
【0017】
図2および
図3は
図1のロータコアの構造でマグネットの磁束(magnetic flux)の流れを図示したものである。特に
図2および
図3部分のブリッジ部分(Y)に均一な磁束の流れに発生する漏洩磁束が発生することを明確に確認することができる。
【0018】
図4は、このような漏洩磁束の発生問題を解消するための本発明の実施例に係るロータの構造を図示したものである。
図4を参照すれば、本発明の実施例に係るロータは、長さ方向である第1方向にマグネット接触面120が複数設けられる第1ロータコア112と複数の前記マグネット接触面120と向かい合うように位置する複数の第2ロータコア114、前記第1ロータコア112と前記第2ロータコア114の間に位置する複数のマグネット130および相互隣接するマグネット130の間に配置され、前記第2ロータコア114および前記マグネット130を固定する隔壁部200を含むことができる。すなわち、本発明の実施例に係るロータは、第1ロータコア112と第2ロータコア114の分離構造で具現され、前記第1ロータコア112と第2ロータコア114の間にマグネット130が配置され、その後、第1ロータコア112と第2ロータコア114およびマグネット130を隔壁部200を利用して固定する構造で具現することができる。
【0019】
前記隔壁部200は非磁性体材質で具現することができ、これはマグネットとマグネットの間の空間で発生する漏洩磁束の現象を防止することができる。合わせて、前記隔壁部200は、従来は挿入ホール内に圧入方式で挿入されたマグネットを、
図4に示されたように第1ロータコア112と第2ロータコア114の間に密着配置し、その後前記隔壁部200を
図4の構造のように上部から下部に嵌め込む方式で固定することができるようにして、全体的にマグネットの安定した固定を具現することができるようにする。
【0020】
このため、前記隔壁部200は、一端部が前記第1ロータコア112に結着する結着部230と前記結着部230で延びて、相互隣接するマグネットの一側を支持する支持部220および前記支持部220と連結され前記第2ロータコア114の外周面に密着するヘッド部210を含むことができる。
【0021】
前記結着部230は第1ロータコア112と結合する。一実施例として、結着部230は
図4に示されたように、第1ロータコア112の外周面に具現される結合溝に嵌め込み可能な構造で具現され、隔壁部200自体の離脱を防止するために、図示されたように、結合部分が前記結着部230と前記支持部220の境界面の第1幅(a)を基準として、前記第1幅(a)よりも広い第2幅(b)を具備する断面を有する形状で具現され得る。また、前記結着部230は、前記第1ロータコアの中心部に向かうほど幅が広くなる構造で具現され得る。このような例としては、
図4に示されたように、結着部230の断面形状を台形構造のような構造で具現したり、多角形、円形、楕円形の断面を有する立体構造で具現することができる。
【0022】
前記支持部220は、両側に隣接するマグネット130の側面を支持するために、
図4に示されたように外部に行くほど幅が広くなる構造で具現することができる。前記支持部220の末端にはヘッド部210を具備して第2ロータコア114の外部面を強く加圧して固定することができるようにする。
【0023】
特に、前記ヘッド部210は、相互隣接する第2ロータコアの外周面の一領域を覆う構造で具現され得る。したがって、前記隔壁部200の一端は第1ロータコア112の外周面に挿入されて結着される構造で配置され、同時に他端は第2ロータコア114の外部面を加圧して密着することができるようにして、全体的に第1ロータコア112に第2ロータコア114を固定することができるようにする。さらに、前記第1ロータコア112と第2ロータコア114および前記隔壁部200を通じてマグネット130が固定される空間を具現することができるようになる。
【0024】
本実施例では、前記第1ロータコア112の中心(X)を基準として、前記ヘッド部の外周面が具現する曲率半径(R2)が前記第1ロータコアの中心で前記第2ロータコアの外周面が具現する曲率半径(R1)以下に具現されるようにして、全体的なロータの構造で回転力の抵抗を減少させ、同時に漏洩磁束を軽減することができるようにする。
【0025】
特に、本実施例での前記第1ロータコア112と第2ロータコア114は、
図1でのように、電気鋼板の積層構造物形態で具現するのではなく、磁性体を焼結(sintering)してそれぞれ一体型の構造物で、一定の長さを有するように具現することができる。したがって、従来の電気鋼板を切断して複数のディスク形態のロータコア部材を準備した後、これを整列させて圧延することによって積層構造物に具現する方式に比べて、製造工程が非常に単純となり、磁性材料の焼結方式で所望の構造を具現するところ、プレス加工切断によって捨てられる材料の損失がないので工程費用を顕著に節減することができる。
【0026】
図4のようなロータコアの製造工程の一実施例は第1ロータコア112を磁性体焼結工程で具現する。この場合、第1ロータコア112の中心部はシャフトのような回転軸が貫通するように開口された構造で具現し、外周面には前述した隔壁部200の嵌め込み可能な構造で結合溝が具現され得るようにする。その後、マグネットを前記第1ロータコア112に形成されるマグネット接触面120に配置する。この場合、安定した配置のために接着剤を利用して付着する方式を利用することもできるが、状況によって、マグネット接触面120にマグネットの一部の領域を仮接合した後、第2ロータコア114でマグネットの外周面を覆い、隔壁部200を前記第1ロータコア112と第2ロータコア114の上部から下部に挿入して嵌め込んで組み立てられるようにする。もちろん、後で仮接合に利用されるテープのような部材は嵌め込みを一定部分進行した後、除去することができ、工程を完成して接着剤なしで組立工程を完了することができる。もちろん、接着剤を用いる場合にはより安定的にマグネットの配置を固定することができる長所がある。
【0027】
特に、前記第1ロータコア112と第2ロータコア114を分離構造で具現した後、非磁性体で具現される隔壁部200を具現することによって、マグネットとマグネットの間の磁束漏洩問題を大きく解消することができる。
【0028】
図5は
図4の構造で具現される本発明の実施例に係る隔壁部を具備したロータの構造で漏洩磁束密度を図示したイメージである。
【0029】
図5と
図2および
図3を比較すると、
図5の本発明の実施例の構造では、隔壁部が具現される領域(Z)で磁束密度が非常に均一に具現されることを確認することができ、これは
図3でのブリッジ領域(Y)の漏洩磁束の場合と対比する時、顕著に漏洩磁束が軽減されることを確認することができる。
【0030】
図6は本発明の実施例に係るロータの構造(
図4)を適用したモータのシャフトに結合する具現例を図示したイメージである。
【0031】
図6の構造において、符号'100'に該当する構成がロータであり、このロータの構成は
図4で詳述した本発明の実施例の構造をそのまま適用したものである。
【0032】
図4および
図6を参照すれば、本発明の実施例に係るロータ100の中心を貫通するシャフト300が結合され、前述したロータ100の上部および下部面には固定プレート(A、B)が配置される。すなわち、前記ロータ100は第1ロータコア112および第2ロータコア114が分離して製作され、その間にマグネット130が位置し、この3つの構成を隔壁部200を通じて結合固定させるようにする。このようなロータの構造は、モータのハウジング内に配置されステータと結合して多様なモータに具現することができるようにする。
【0033】
図7および
図8は本発明の実施例に係るロータを適用してモータを具現する場合、比較構造(
図1の構造)と実施例の構造(
図4)を適用して製造したモータの性能をテストした結果を示したグラフである。
【0034】
図7はモータの性能と関連して無負荷逆起電力(EMP)を測定したもので、比較例の場合最大2.75Vであるが、本発明の実施例の構造では3.12Vであり、約13%が向上することを確認することができる。
【0035】
合わせて正格トルク(Rating Torque)の場合、比較例の構造では平均4.84Nmであるが、本実施例の構造では5.32Nmであり、約9.8%が上昇することを確認することができる。これはモータの正格トルクが9.8%上昇したことを意味し、モータのサイズを9.8%縮小させることができることを示唆するものである。
【0036】
前述したような本発明の詳細な説明では具体的な実施例に関して説明した。しかし本発明の範疇から逸脱しない限度内では多様な変形が可能である。本発明の技術的思想は本発明の記述した実施例に限定されて定められるものではなく、特許請求の範囲だけでなくこの特許請求の範囲と均等物などによって定められるべきである。
【符号の説明】
【0037】
100:ロータ、
112:第1ロータコア、
114:第2ロータコア、
130:マグネット、
200:隔壁部、
210:ヘッド部、
220:支持部、
230:結着部。