特許第6836873号(P6836873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836873ブレース取付け構造及びブレース取付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836873
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ブレース取付け構造及びブレース取付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/20 20060101AFI20210222BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   E04B1/20 F
   E04B1/58 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-197113(P2016-197113)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-59319(P2018-59319A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】二木 秀也
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】梶本 宗一郎
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−161071(JP,A)
【文献】 特開2014−088657(JP,A)
【文献】 特開2002−213017(JP,A)
【文献】 特開2010−156125(JP,A)
【文献】 特開平09−221830(JP,A)
【文献】 特開2003−082793(JP,A)
【文献】 米国特許第04441289(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38−61
E04B 1/18、20、30
E01D 6/00
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁との接合部が鉄筋コンクリート製とされた柱梁架構と、
前記柱梁架構の構面内に取付けられ、端面にプレートが接合された鉄骨ブレースと、
前記柱と前記梁が交わる入隅部に固定され、前記プレートが当接する平面部が形成された台座部と、
前記台座部及び前記柱と前記梁との接合部に埋め込まれ、前記台座部と前記プレートとを固定する固定部材と、
を有するブレース取付け構造。
【請求項2】
前記鉄骨ブレースは補剛管へ挿入されている、請求項1に記載のブレース取付け構造。
【請求項3】
前記台座部を補強する補強筋が、前記柱の内部から、前記台座部の内部を介して、前記接合部の内部にかけて埋設されている、請求項1又は請求項2に記載のブレース取付け構造。
【請求項4】
柱と梁との接合部が鉄筋コンクリート製とされた柱梁架構と、
前記柱梁架構の構面内に取付けられ、端面にプレートが接合された鉄骨ブレースと、
前記柱梁架構における柱と梁が交わる入隅部に固定され、前記プレートが当接する平面部が形成された台座部と、
前記台座部及び前記柱と前記梁との接合部に埋め込まれ、前記台座部と前記プレートとを固定する固定部材と、を備え、
前記台座部は、前記柱梁架構を形成するコンクリートと一体的に打設して形成される、ブレース取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレース取付け構造及びブレース取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、鉄筋コンクリート造の架構内に制震ダンパーを設置する制震構造が示されている。この制震構造では、梁の内部に鉄骨梁部材を内蔵し、この鉄骨梁部材にプレート状の取り付け部材が溶接されている。そして、この取り付け部材の端部を鉄筋コンクリートから突出させて、制震ダンパーの端部を取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−179981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された制震構造では、鉄骨梁部材や取り付け部材を施工する際に、コンクリートに埋設される柱鉄筋や梁鉄筋との干渉を避ける必要があるため、施工に手間がかかり、工期が長期化する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、プレート状の取り付け部材を用いる場合と比較して工期を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のブレース取付け構造は、柱と梁との接合部が鉄筋コンクリート製とされた柱梁架構と、前記柱梁架構の構面内に取付けられ、端面にプレートが接合された鉄骨ブレースと、前記柱と前記梁が交わる入隅部に固定され、前記プレートが当接する平面部が形成された台座部と、前記台座部及び前記柱と前記梁との接合部に埋め込まれ、前記台座部と前記プレートとを固定する固定部材と、を有する。
【0007】
請求項1のブレース取付け構造によると、鉄骨ブレース端面のプレートが、柱と梁の入隅部に固定された台座部に固定される。鉄骨ブレースからプレートに作用する圧縮力は台座部を介して柱梁架構の入隅部へ伝達される。
【0008】
また、鉄骨ブレース端面のプレートは、台座部に埋め込まれた固定部材によって台座部に固定される。鉄骨ブレースに作用する引張力は固定部材を介して入隅部に固定された台座部に伝達され、柱梁架構の入隅部へ伝達される。
【0009】
このように、請求項1のブレース取付け構造では、鉄骨ブレース端部を固定するためのプレート状の取付け部材を柱梁架構内に埋め込まなくても、圧縮力及び引張力を、柱梁架構と鉄骨ブレースとの間で伝達できる。このため、プレート状の取付け部材をコンクリートの内部に埋設する場合と比較して、柱梁架構内の配筋作業がやりやすく、工期を短縮できる。
【0010】
なお、プレートが平面部に「当接する」とは、プレートと平面部とが直接接触している場合のほか、プレートと平面部との密着性を高めるためにプレートと平面部との間に無収縮モルタルなどが挟まれた状態を含むものとする。
【0011】
また鉄骨ブレース端部は、鉄骨ブレース端面のプレートと台座部の平面部とが当接しているため、柱梁架構との間で「面」を介して圧縮力を伝達する。このため大きな圧縮力を受けても破壊しにくい。
【0012】
請求項2のブレース取付け構造は、前記鉄骨ブレースは補剛管へ挿入されている。
【0013】
請求項2のブレース取付け構造では、鉄骨ブレースは補剛管へ挿入されている。このため鉄骨ブレースの座屈が抑制され、通常のブレースと比較して大きな圧縮力を負担することができる。
請求項3のブレース取付け構造は、前記台座部を補強する補強筋が、前記柱の内部から、前記台座部の内部を介して、前記接合部の内部にかけて埋設されている。
【0014】
請求項4のブレース取付け方法は、柱と梁との接合部が鉄筋コンクリート製とされた柱梁架構と、前記柱梁架構の構面内に取付けられ、端面にプレートが接合された鉄骨ブレースと、前記柱梁架構における柱と梁が交わる入隅部に固定され、前記プレートが当接する平面部が形成された台座部と、前記台座部及び前記柱と前記梁との接合部に埋め込まれ、前記台座部と前記プレートとを固定する固定部材と、を備え、前記台座部は、前記柱梁架構を形成するコンクリートと一体的に打設して形成される、ブレース取付け方法。
【0015】
請求項4のブレース取付け構造では、鉄骨ブレース端面のプレートが、柱と梁の入隅部に固定された台座部に接合される。鉄骨ブレースからプレートに作用する圧縮力は台座部を介して柱梁架構の入隅部へ伝達される。
【0016】
また、鉄骨ブレース端面のプレートは、台座部に埋め込まれた固定部材によって台座部に接合される。鉄骨ブレースに作用する引張力は固定部材を介して入隅部に固定された台座部に伝達され、柱梁架構の入隅部へ伝達される。
【0017】
このように、請求項4のブレース取付け構造では、鉄骨ブレース端部を固定するためのプレート状の取付け部材を柱梁架構内に埋め込まなくても、圧縮力及び引張力を、柱梁架構と鉄骨ブレースとの間で伝達できる。
【0018】
このため、プレート状の取付け部材をコンクリートの内部に埋設する場合と比較して、柱梁架構内の配筋作業がやりやすく、工期を短縮できる。
【0019】
また、台座部は、柱梁架構を形成するコンクリートと一体的に打設して形成される。このため、工期を短縮できる。さらに、台座部の固定強度が大きくなる。
【0020】
本発明に係るブレース取付け構造及びブレース取付け方法によると、プレート状の取り付け部材を用いる場合と比較して、工期を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るブレース取付け構造が適用された柱梁架構を示す立面図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレース取付け構造を示す部分拡大立断面図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係るブレース取付け構造が適用される柱梁架構を示す部分拡大立面図であって、フーチング、基礎梁及び柱の鉄筋を配筋した状態を示し、(B)はフーチングと基礎梁にコンクリートを打設した状態を示し、(C)は柱の鉄骨をフーチングの上部に立設した状態を示し、(D)は柱の柱脚部及び台座部にコンクリートを打設した状態を示している。
図4】(A)は本発明の実施形態に係るブレース取付け構造が適用される柱梁架構を示す部分拡大立面図であって、台座部にブレースの下端部材を取り付ける前の状態を示し、(B)は台座部にブレースの下端部材を取り付けた状態を示し、(C)はブレースの下端部材及び上端部材に中央部材を接合した状態を示している。
図5】本発明の実施形態に係るブレース取付け構造を示す部分拡大立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ブレース取付け構造)
図1に示すように、本実施形態に係るブレース取付け構造10は、鉄筋コンクリート製のフーチング12及び基礎梁14と、フーチング12の上部に構築された鉄骨製の柱22及び梁24を備えた柱梁架構20と、で形成された構面Hに、鉄骨ブレース40を配置することで形成される。柱22は柱脚部が根巻式とされた鉄骨柱であり、柱脚部が鉄筋コンクリートで被覆される。このため、柱梁架構20において柱22と基礎梁14との接合部は鉄筋コンクリート製とされている。
【0023】
(フーチング)
図2に示すように、フーチング12には、フーチング主筋12M、ベース筋12B、補強筋12Rが埋設され、基礎梁14及び柱22が接合されている。
【0024】
(基礎梁)
基礎梁14には梁主筋14M、あばら筋14Rが埋設されており、梁主筋14Mはフーチング12の内部まで延設されてコンクリートに定着されている。
【0025】
(柱)
柱22は根巻式の鉄骨柱であり、鉄骨製の芯材22Aの下端面に溶接されたベースプレート22Cが、フーチング12に埋設されたアンカーボルト22Fによってフーチング12に固定されている。また、芯材22Aの下端部(ベースプレートから概ね芯材22Aの幅寸法の2.5倍以上の高さの部分)が、フーチング12と一体化されたコンクリート(被覆部22B)によって被覆されている。
【0026】
柱22の被覆部22Bには柱主筋22M、フープ筋22Rが埋設されており、柱主筋22Mはフーチング12の内部まで延設されて定着されている。
【0027】
(台座部)
図1に示すように、柱22における被覆部22Bの側面と基礎梁14の上面とが交わる入隅部Dには、鉄筋コンクリート製の台座部30が形成されている。台座部30は立面視で直角三角形状とされており、柱22の側面から基礎梁14の上面へかけて斜めに形成された平面部30Aを備えている。
【0028】
図2に示すように、台座部30には本発明における固定部材の一例としてのアンカーボルト50が埋設されている。アンカーボルト50の一方の端部は平面部30Aから突出しており、後述する鉄骨ブレース40のプレート44Aを平面部30Aへ固定している。また、アンカーボルト50の他方の端部はフーチング12の内部に埋設され、機械式定着具52が装着されている。なお、他方の端部には機械式定着具52を装着せず、鉤状に折り曲げることもできる。
【0029】
また、台座部30を補強する補強筋30Rは、柱22の被覆部22Bの内部から、フーチング12の内部にかけて埋設されている。
【0030】
(ブレース)
図1に示すように、鉄骨ブレース40は、柱22の芯線CL1と基礎梁14の芯線CL2とが交わる点J12と、上部の梁24の芯線CL3と柱22のスパン中央線CL4とが交わる点J34とを結んだ直線CL5上に配置されている。
【0031】
なお、本実施形態において鉄骨ブレース40の芯線である直線CL5は、梁24の芯線CL3と柱22のスパン中央線CL4とが交わる点J34を通るものとされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば図1に示す右側のブレースの芯線と梁24の芯線CL3との交点を通るものや、右側の柱の芯線と梁24の芯線CL3との交点を通るものとしてもよい。すなわち、鉄骨ブレース40の上端部が接合される場所は任意である。
【0032】
鉄骨ブレース40は、H形鋼の本体部材42、下端部材44及び上端部材46と、本体部材42が挿入された角型鋼管の補剛管48と、を備えて構成されている。補剛管48は本体部材42の座屈を抑制する部材であり、補剛管48を備えない構成と比較して鉄骨ブレース40の圧縮耐力が高められているが、適宜省略することもできる。本体部材42と、下端部材44及び上端部材46との接合方法については後述する。なお、鉄骨ブレース40を形成する鋼材としては、アングル材、チャンネル材、フラットバー等任意のものを選定できる。
【0033】
図2に示すように、下端部材44の端面には直線CL5と略直交するプレート44Aが溶接されており、このプレート44Aは、台座部30の平面部30Aに面接されアンカーボルト50で固定されている。
【0034】
(ブレース取付け方法)
次に、鉄骨ブレース40を取付けるフーチング12、基礎梁14、柱22、台座部30の構築方法について図3(A)〜(D)を用いて説明する。
【0035】
まず、図3(A)に示すように、フーチング12の内部に埋設されるフーチング主筋12M、ベース筋12B、補強筋12Rを配筋する。また、基礎梁14の内部に埋設される梁主筋14M、あばら筋14Rを配筋する。また、柱22における被覆部22Bの柱主筋22Mを配筋し、芯材22A(図3(C)参照)を固定するためのアンカーボルト22Fを配置する。さらに、台座部30の補強筋30Rを配筋し、アンカーボルト50を配置する。
【0036】
次に、図3(A)に点線で示したフーチング12と基礎梁14の外形線に沿って型枠を設置し、図3(B)に示すようにフーチング12と基礎梁14にコンクリートを打設する。
【0037】
フーチング12と基礎梁14のコンクリートの硬化後、図3(C)に示すように、柱22の芯材22Aの端面に接合されたベースプレート22Cを基礎梁14の上面にアンカーボルト22Fで固定し、柱22のフープ筋22Rを配筋する。
【0038】
次に、図3(C)に点線で示した被覆部22Bと台座部30の外形線に沿って型枠を設置し、図3(D)に示すように、柱22の被覆部22Bを形成するコンクリートと、台座部30を形成するコンクリートとを一体的に打設する。これにより、柱22における被覆部22Bの側面と基礎梁14の上面とが交わる入隅部Dに、台座部30が形成される。
【0039】
次に、フーチング12及び基礎梁14と、柱22及び梁24を備えた柱梁架構20と、で形成された構面Hに、鉄骨ブレース40を配置する方法について図4(A)〜(C)を用いて説明する。
【0040】
まず、図4(A)に示すように、柱22における被覆部22Bの側面と基礎梁14の上面とが交わる入隅部Dに形成された台座部30へ、鉄骨ブレース40を構成する下端部材44を設置する。下端部材44の端面には、貫通孔44AHが形成されたプレート44Aが溶接されている。この貫通孔44AHへ、台座部30の平面部30Aから突出しているアンカーボルト50を挿通させるようにして、下端部材44を平面部30Aへ取付ける。
【0041】
平面部30Aには予め均しモルタルが敷設されており、均しモルタルの表面はプレート44Aが密着するように平滑に仕上げられている。
【0042】
なお、本実施形態においてはプレート44Aの固定に先行して、平面部30Aへ均しモルタルを敷設しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば平面部30Aへスペーサーを介してプレート44Aを固定し、鉄骨ブレース40の建て方を調整した後で、平面部30Aとプレート44Aとの間にモルタルを充填してもよい。また、平面部30Aの平滑性及び角度に精度が確保できれば、平面部30Aとプレート44Aとの間にはモルタルを敷設しなくてもよい。
【0043】
次に、図4(B)に示すように、下端部材44を平面部30Aへナットを用いて固定する。鉄骨ブレース40の上端部材46は、予め柱梁架構20の梁24に接合されている。
【0044】
次に、図4(C)に示すように、本体部材42を下端部材44、上端部材46へ固定する。本体部材42の両端部は補剛管48で覆われておらず、H型鋼が露出している。このH型鋼のフランジと、下端部材44及び上端部材46のフランジとをスプライスプレートで接合し、また、本体部材42のウェブと、下端部材44及び上端部材46のウェブとをスプライスプレートで接合する。
【0045】
以上の方法により、フーチング12及び基礎梁14と、柱22及び梁24を備えた柱梁架構20と、で形成された構面Hに、鉄骨ブレース40が取付けられる。
【0046】
(作用・効果)
図5に示すように、本実施形態におけるブレース取付け構造10では、鉄骨ブレース40の端面のプレート44Aが、台座部30を貫通してフーチング12に埋め込まれたアンカーボルト50によって、柱22における被覆部22Bと基礎梁14の入隅部Dに固定された台座部30に固定される。
【0047】
このため、鉄骨ブレース40からプレート44Aに作用する圧縮力Cは台座部30を介して、入隅部Dへ伝達される。具体的には、鉄骨ブレース40の軸方向(直線CL5)に沿った方向の圧縮力Cが、台座部30を介して柱22、基礎梁14の軸方向(芯線CL1、CL2)に直交する方向の分力C1、C2に分解されて、分力C1、C2がそれぞれ柱22の側面と基礎梁14(フーチング12)の上面を押圧する。
【0048】
また、鉄骨ブレース40に作用する引張力Tはアンカーボルト50を介してフーチング12の内部へ伝達される。具体的には、鉄骨ブレース40の軸方向に沿った方向の引張力Tが複数のアンカーボルト50へ分力T1、T2に分解されて、機械式定着具52に発生する支圧力がフーチング12を形成するコンクリートを押圧する。
【0049】
このように、本実施形態のブレース取付け構造10では、台座部30とアンカーボルト50とを備えた構成により、鉄骨ブレース40に作用する圧縮力C及び引張力Tは柱22、基礎梁14及びフーチング12へ伝達され、コンクリートの圧縮耐力により抵抗することができる。
【0050】
また、本実施形態のブレース取付け構造10では、図2に示したように、フーチング12の内部には、フーチング12を補強するフーチング主筋12M、ベース筋12B及び補強筋12Rの他、梁主筋14M、柱主筋22M、アンカーボルト22F、補強筋30R、図示しないひび割れ補強筋などが埋設されている。また、図示は省略されているが梁主筋14M、柱主筋22Mの端部は定着強度を増すために折り曲げられたり、機械式定着具が接合されている。このように、柱22と基礎梁14との接合部であるフーチング12には多くの鉄筋が埋設されている。
【0051】
本実施形態のブレース取付け構造10では、鉄骨ブレース40を取付けるためにアンカーボルト50をフーチング12に埋設しているが、このアンカーボルト50は各種鉄筋の隙間を縫って埋設することができるので、施工が容易である。
【0052】
これに対して、例えば図2に2点鎖線で示したような鉄骨梁部材200やプレート状の取付け部材210を基礎梁14及びフーチング12に埋設する場合、鉄骨梁部材200及び取付け部材210との干渉を避けて配筋を検討する必要があるため設計が困難であり、また施工にも手間がかかる。さらに、基礎梁14の構築段階で鉄骨を用いる必要があるので、鉄骨の納期管理や工程管理も煩雑となる。
【0053】
なお、本実施形態のブレース取付け構造10は、図2に示すように、基礎梁14と柱22とがフーチング12に接合される部分に適用されたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばフーチング12が無い基礎梁14と柱22との接合部に適用することもできるし、建物の2階以上における梁と柱の接合部に適用することもできる。
【0054】
また、本実施形態において、柱22は根巻き式の柱脚構造を持つ鉄骨柱とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば柱22は、鉄骨を備えない鉄筋コンクリート柱であってもよい。柱22が鉄筋コンクリート柱とされていれば、図3(C)における芯材22Aの建て方工事を省略できるので、図3(A)における鉄筋配筋工程のあと、基礎梁14、柱22、フーチング12、台座部30のコンクリートを一体的に打設することができる。これにより工期を短縮することができる。さらに、台座部30と基礎梁14、台座部30と柱22それぞれの間にコンクリートの打ち継ぎ目地が発生しないので、台座部30の固定強度を大きくすることができる。
【0055】
または、根巻き式の柱脚とされた柱22に変えて、露出柱脚の鉄骨柱を用いることもできる。この場合、鉄骨柱の下端面とフーチング12との間に、台座部30と一体化させるコンクリート製の立ち上げ部を形成する。そしてこの立ち上げ部の上面に、鉄骨柱のベースプレートを固定すればよい。あるいは、立ち上げ部を形成せず、フーチング12の上面に鉄骨柱のベースプレートを直接固定してもよい。この場合は、台座部30を形成するコンクリートは単独で打設される。
【0056】
台座部30の固定強度が大きくなれば、例えば補強筋30Rを省略することができる。また、アンカーボルト50をフーチング12の内部まで挿入せず、台座部30のみに埋設するものとすることができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、固定部材として、コンクリートの打設前に施工するアンカーボルト50を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばアンカーボルトではなくアンカーナットを埋め込んでおき、このアンカーナットにボルトを捩じ込んで、下端部材44を台座部30に固定することができる。あるいは、台座部30を構成するコンクリートの硬化後に穿孔して後施工アンカーを埋め込み、この後施工アンカーを用いて下端部材44を台座部30に固定してもよい。
【0058】
このように、鉄骨ブレース40を台座部30に固定し、鉄骨ブレース40からの引張力を柱22における被覆部22Bと基礎梁14の接合部(入隅部D)に伝達できるものであれば、固定部材の種類は問わない。
【0059】
また、本実施形態において、台座部30は鉄筋コンクリート製とされ、柱22の被覆部22Bと一体的に打設されるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば鉄骨ブレース40から圧縮力を受けて破壊されない程度の圧縮強度を備えていれば、金属塊、樹脂ブロック、木材等を用いてもよい。これらの部材を用いる場合は、フーチング12、基礎梁14、柱22を構成するコンクリート硬化後に、接着剤などを用いて固定することができる。
【符号の説明】
【0060】
22 柱
14 基礎梁(梁)
20 柱梁架構
30 台座部
30A 平面部
40 鉄骨ブレース
44A プレート
48 補剛管
50 アンカーボルト(固定部材)
図1
図2
図3
図4
図5