特許第6836892号(P6836892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836892油中水分除去装置、油中水分除去方法及び真空ポンプシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836892
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】油中水分除去装置、油中水分除去方法及び真空ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/022 20060101AFI20210222BHJP
   B01D 17/04 20060101ALI20210222BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B01D17/022 502F
   B01D17/04 501D
   F04C25/02 F
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-244288(P2016-244288)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-94530(P2018-94530A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591268623
【氏名又は名称】アルバック機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】大坂 常男
(72)【発明者】
【氏名】中村 静雄
(72)【発明者】
【氏名】大坂 泰介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真宏
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−064403(JP,A)
【文献】 特開平06−193564(JP,A)
【文献】 特開2016−064392(JP,A)
【文献】 特開昭63−156508(JP,A)
【文献】 特開平05−309206(JP,A)
【文献】 特開2015−123419(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/087341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/022−04、39/
F04B 39/02
F04C 25/02、29/02
C02F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を使用する機器から採取され、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化することにより、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させることが可能な第1の油水分離部と、
第1の収容室と、前記第1の収容室の少なくとも一部の上に位置し前記第2の液体が供給されることが可能な第2の収容室と、前記第1の収容室と前記第2の収容室との間に配置され、前記第2の液体中の水を選択的に通過させることが可能であって水平面に対して斜めに配置された親水撥油シートと、を有する第2の油水分離部と、
前記第2の液体を前記第1の油水分離部から前記第2の油水分離部の前記第2の収容室に移動させることが可能な第1のポンプと
を具備する油中水分除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油中水分除去装置であって、
前記第1の収容室に接続され、前記第1の収容室に収容された水を排水することが可能なドレーンと、
前記第2の収容室に収容された油を前記機器に移動させることが可能な第2のポンプと
をさらに具備する油中水分除去装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の油中水分除去装置であって、
前記第1のポンプは、前記第1の油水分離部の下流に設けられ、前記第2の油水分離部の上流に設けられている
油中水分除去装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の油中水分除去装置であって、
前記第1の収容室及び前記第2の収容室は、大気に開放されている
油中水分除去装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の油中水分除去装置であって、
前記第1の油水分離部において、前記フィルタは、
前記第1の液体を前記第2の液体に変化させることが可能な第1のフィルタと、
前記第1の液体に含まれるスラッジを取り除くことが可能な第2のフィルタと
を有し、
前記第2のフィルタは、前記第1のフィルタの上流に設けられている
油中水分除去装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の油中水分除去装置であって、
前記第2の収容室は、前記第2の液体が供給される供給口と、前記第2の液体中の油が排出される排油口と、を有し、
前記供給口は、前記排油口よりも高い位置に設けられ、
前記親水撥油シートを上面視したとき、前記親水撥油シートは、前記供給口から前記排油口に向かう方向を長手方向とする矩形状である
油中水分除去装置。
【請求項7】
油を使用する機器から採取され、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化することにより、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させることが可能な第1の油水分離部と、
第1の収容室と、前記第1の収容室の少なくとも一部の上に位置し前記第2の液体が供給されることが可能な第2の収容室と、前記第1の収容室と前記第2の収容室との間に配置され、前記第2の液体中の水を選択的に通過させることが可能な親水撥油シートと、を有する第2の油水分離部と、
前記第2の液体を前記第1の油水分離部から前記第2の油水分離部の前記第2の収容室に移動させることが可能な第1のポンプと
を具備し、
前記第2の油水分離部は、前記親水撥油シート上での前記第2の液体の滞留を抑制する滞留抑制機構をさらに有し、
前記滞留抑制機構は、前記親水撥油シートを貫通する回転軸と、前記親水撥油シート上に設けられ、前記回転軸を中心に回転可能な複数のフィンとを有し、
前記第2の収容室に供給される前記第2の液体によって前記複数のフィンの側面が押され前記複数のフィンが前記回転軸を中心に回転することにより前記第2の液体が前記複数のフィンの回転方向に移動し、前記親水撥油シート上での前記滞留が抑制される
油中水分除去装置。
【請求項8】
油を使用する機器から採取され、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化することにより、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させ、
前記第2の液体中の水を選択的に通過させることが可能であって水平面に対して斜めに配置された親水撥油シートを用い、前記第2の液体中の前記水を第1の収容室に、前記第2の液体中の油を第2の収容室に、それぞれ振り分ける
油中水分除去方法。
【請求項9】
真空ポンプと、
前記真空ポンプから採取され、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化することにより、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させることが可能な第1の油水分離部と、
第1の収容室と、前記第1の収容室の少なくとも一部の上に位置し前記第2の液体が供給されることが可能な第2の収容室と、前記第1の収容室と前記第2の収容室との間に配置され、前記第2の液体中の水を選択的に通過させることが可能であって水平面に対して斜めに配置された親水撥油シートと、を有する第2の油水分離部と、
前記第2の液体を前記第1の油水分離部から前記第2の油水分離部の前記第2の収容室に移動させることが可能な第1のポンプと、
前記第1の収容室に接続され、前記第1の収容室に収容された水を排水することが可能なドレーンと、
前記第2の収容室に収容された油を前記真空ポンプに移動させることが可能な第2のポンプと
を具備する真空ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水分除去装置、油中水分除去方法及び真空ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
油を使用する機器の代表なものに、油潤滑式の油回転真空ポンプがある。この真空ポンプにおいては、空気とともに水蒸気が真空ポンプ内に吸引されて、水蒸気が真空ポンプ内で凝縮液化する。凝縮液化によって真空ポンプ内に溜った水は、例えば、真空ポンプに設けられた水抜き用のバルブを開放し抜くことができる。しかし、油と水とが乳化すると、油と水とがそれぞれ連続層となって分離せず、水を真空ポンプから取り除くことが難しくなる。
【0003】
このような状況の中、真空ポンプ内で発生した乳化液を真空ポンプ外で油と水とに分離し、乳化液中の油を真空ポンプに戻す方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、乳化液を油水分離フィルタに通過させることによって、乳化液中の水を大きな水滴に成長させる。そして、大きく成長した水滴と、油との比重差を利用し、油と水とを分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−193564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の方法では、油水分離フィルタが油を収容する容器内に設けられ、この容器内にも水滴が分散している。従って、この容器から油を回収すると、油中に分散している水滴が同時に回収される可能性がある。また、この容器内において、油の下に水の連続層が安定して形成されるには長い時間を要する。従って、この方法では油を簡便に回収できない。
このように、上記の方法では、乳化液から油を高い回収率で簡便に回収できない状況にある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、乳化液から油を高い回収率で簡便に回収できる油中水分除去装置、油中水分除去方法及び真空ポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る油中水分除去装置は、第1の油水分離部と、第2の油水分離部と、第1のポンプとを具備する。
前記第1の油水分離部は、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化する。ここで、前記第1の液体は、油を使用する機器から採取される。そして、前記第1の油水分離部は、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させることができる。
前記第2の油水分離部は、第1の収容室と、第2の収容室と、親水撥油シートとを有する。前記第2の収容室は、前記第1の収容室の少なくとも一部の上に位置し前記第2の液体が供給されることができる。前記親水撥油シートは、前記第1の収容室と前記第2の収容室との間に配置され、前記第2の液体中の水を選択的に通過させることができる。
前記第1のポンプは、前記第2の液体を前記第1の油水分離部から前記第2の油水分離部の前記第2の収容室に移動させることができる。
これにより、油を使用する機器から採取された乳化液中の油が高い回収率で簡便に回収される。
【0008】
上記の油中水分除去装置は、ドレーンと、第2のポンプとをさらに具備してもよい。
前記ドレーンは、前記第1の収容室に接続され、前記第1の収容室に収容された水を排水することができる。
前記第2のポンプは、前記第2の収容室に収容された油を前記機器に移動させることができる。
これにより、油を使用する機器から採取された乳化液中の油が高い回収率で簡便に機器に戻される。
【0009】
上記の油中水分除去装置においては、前記第1のポンプは、前記第1の油水分離部の下流に設けられ、前記第2の油水分離部の上流に設けられてもよい。
これにより、第1の液体が直接、第1のポンプを通過せず、第1のポンプが劣化しにくくなる。
【0010】
上記の油中水分除去装置においては、前記第1の収容室及び前記第2の収容室は、大気に開放されてもよい。
これにより、第2の液体に含まれる水が自重によって第1の収容室に収容され、油が第2の収容室に収容される。
【0011】
上記の油中水分除去装置においては、前記第1の油水分離部において、前記フィルタは、第1のフィルタと、第2のフィルタとを有してもよい。前記第2のフィルタは、前記第1のフィルタの上流に設けられてもよい。前記第1のフィルタは、前記第1の液体を前記第2の液体に変化させることができる。前記第2のフィルタは、前記第1の液体に含まれるスラッジを取り除くことができる。
これにより、第1の液体に含まれるスラッジが第2のフィルタによって除去され、親水撥油シートにスラッジの少ない第2の液体を滴下することができる。
【0012】
上記の油中水分除去装置においては、前記第2の収容室は、前記第2の液体が供給される供給口と、前記第2の液体中の油が排出される排油口と、を有してもよい。前記供給口は、前記排油口よりも高い位置に設けられてもよい。前記親水撥油シートを上面視したとき、前記親水撥油シートは、前記供給口から前記排油口に向かう方向を長手方向とする矩形状である。
これにより、第2の液体中の油が親水撥油シート上で流れる方向が親水撥油シートの長手方向と実質的に同じになり、親水撥油シートの使用面積が充分に確保される。
【0013】
上記の油中水分除去装置においては、前記親水撥油シートは、水平面に対して斜めに配置されてもよい。
これにより、第2の液体中の油が親水撥油シート上でさらに溜りにくくなり、第2の液体中の水が親水撥油シートに接触する面積が充分に確保される。
【0014】
上記の油中水分除去装置においては、前記第2の油水分離部は、前記親水撥油シート上での前記第2の液体の滞留を抑制する滞留抑制機構をさらに有してもよい。
これにより、第2の液体中の油が親水撥油シート上でさらに溜りにくくなり、第2の液体中の水が親水撥油シートに接触する面積が充分に確保される。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る油中水分除去方法は、油を使用する機器から採取され、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化することにより、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させることを含む。
前記第2の液体中の水を選択的に通過させることが可能な親水撥油シートが用いられ、前記第2の液体中の前記水を第1の収容室に、前記第2の液体中の油を第2の収容室に、それぞれ振り分けられる。
これにより、油を使用する機器から採取された乳化した液体について、油が高い回収率で簡便に回収される。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空ポンプシステムは、真空ポンプと、第1の油水分離部と、第2の油水分離部と、第1のポンプと、ドレーンと、第2のポンプとを具備する。
前記第1の油水分離部は、油と水とが乳化された状態にある第1の液体をフィルタに通過させて解乳化する。ここで、前記第1の液体は、真空ポンプから採取される。そして、前記第1の油水分離部は、前記第1の液体を油と水とに分離された状態にある第2の液体に変化させることができる。
前記第2の油水分離部は、第1の収容室と、第2の収容室と、親水撥油シートとを有する。前記第2の収容室は、前記第1の収容室の少なくとも一部の上に位置し前記第2の液体が供給されることができる。前記親水撥油シートは、前記第1の収容室と前記第2の収容室との間に配置され、前記第2の液体中の水を選択的に通過させることができる。
前記第1のポンプは、前記第2の液体を前記第1の油水分離部から前記第2の油水分離部の前記第2の収容室に移動させることができる。
前記ドレーンは、前記第1の収容室に接続され、前記第1の収容室に収容された水を排水することができる。
前記第2のポンプは、前記第2の収容室に収容された油を前記真空ポンプに移動させることができる。
これにより、真空ポンプから採取された乳化した液体について、油が高い回収率で簡便に回収され、この油が真空ポンプに戻される。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、乳化液から油が高い回収率で簡便に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る油中水分除去装置の構成を示す概略的ブロック図である。
図2図Aは、本実施形態に係る第1の油水分離部を示す概略的断面図である。図Bは、第1の油水分離部に通過される前の乳化液の様子を模式的に表す図である。図Cは、第1の油水分離部を通過した後の乳化液の様子を模式的に表す図である。
図3図Aは、本実施形態に係る第2の油水分離部の断面を示す概略的断面図である。図Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部の上面を示す概略的上面図である。
図4図A及び図Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部の動作を示す概略的断面図である。
図5】本実施形態に係る油中水分除去方法を示す概略的フロー図である。
図6図Aは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第1変形例を示す概略的断面図である。図Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第2変形例を示す概略的断面図である。
図7図Aは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第3変形例を示す概略的断面図である。図Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第3変形例を示す概略的上面図である。
図8】本実施形態に係る第2の油水分離部の第4変形例を示す概略的断面図である。
図9】本実施形態に係る第2の油水分離部の第5変形例を示す概略的断面図である。
図10】本実施形態に係る第2の油水分離部の第6変形例を示す概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。
【0020】
[油中水分除去装置の構成]
図1は、本実施形態に係る油中水分除去装置1の構成を示す概略的ブロック図である。
図1に示す油中水分除去装置1は、油水分離部10(第1の油水分離部)と、油水分離部20A(第2の油水分離部)と、ポンプ31(第1のポンプ)と、ポンプ32(第2のポンプ)と、流路41(第1の流路)と、流路42(第2の流路)と、流路43(第3の流路)と、ドレーン50を具備する。また、図1には、油中水分除去装置1が使用される対象であって、油を使用する機器60が示されている。
【0021】
まず、油中水分除去装置1の全体的な概要について説明する。
【0022】
油中水分除去装置1において、流路41、油水分離部10、流路42、油水分離部20A及び流路43は、この順に直列状に接続されている。流路41は、機器60と油水分離部10との間に接続されている。流路42は、油水分離部10と油水分離部20Aとの間に接続されている。流路43は、油水分離部20Aと機器60との間に接続されている。流路41、42、43は、例えば、樹脂製または金属製であり、フレキシブル性のパイプで構成されてもよい。油中水分除去装置1において、流路41が最上流の流路であり、流路43が最下流の流路である。図1では、油中水分除去装置1内を流れる液体の向きが矢印で示されている。
【0023】
ポンプ31は、流路42の途中に設けられる。例えば、ポンプ31は、油水分離部10の下流であって油水分離部20Aの上流に設けられる。ポンプ32は、流路43の途中に設けられる。例えば、ポンプ32は、油水分離部20Aの下流に設けられる。ポンプ31、32は、例えば、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ及びバイモルポンプ等の液体移送ポンプである。流路42については、ポンプ31より上流を流路部42a、ポンプ31より下流を流路部42bとする。流路43については、ポンプ32より上流を流路部43a、ポンプ32より下流を流路部43bとする。
【0024】
流路41は、機器60で乳化した液体(以下、乳化液1e(第1の液体))を採取する最初の流通路である。ここで、乳化液1eとは、油と水とが乳化された液体である。乳化液1eは、目視で見て、例えば白濁している。そして、ポンプ31、32が起動すると、流路42を介して油水分離部10が吸引され、乳化液1eが機器60から流路41を介して油水分離部10内に移動する。乳化液1eが油水分離部10に供給されると、乳化液1eは油水分離部10によって解乳化され、透明液1t(油相と水相)となって、油水分離部10から流路42を経由し、流路42の最下流にまで移動する。透明液1tは、目視で見て、例えば透き通っている。
【0025】
ここで、流路42の途中に設けられたポンプ31は、吸入時の水1wの粒度分布を保持して水1w及び油1oを排出することができる。すなわち、ポンプ31は、流路部42aにおける水1wの粒度分布を保持しつつ、水1w及び油1oを流路部42aから流路部42bに移送する。例えば、ポンプ31を通過した水1wにおいて、新たに1mm以下の水粒子が発生したとしても、1mm以下の水粒子の粒度分布は、流路部42bにおける水1wの粒径分布の1%以下である。例えば、ポンプ31の上流から下流に、1000個以上の水1wの母集団が流れた場合、ポンプ31の下流において、任意に1000個の水1wの母集団を採取した場合、粒径が1mm以下の水1wが存在する率は、下流における母集団の中、1%以下(1000個中、10個以下)である。同様に、ポンプ31を通過した油1oにおいて、新たに1mm以下の油粒子が発生したとしても、1mm以下の油粒子の粒度分布は、流路部42bにおける油1oの粒径分布の1%以下である。例えば、ポンプ31の上流から下流に、1000個以上の油1oの母集団が流れた場合、ポンプ31の下流において、任意に1000個の油1oの母集団を採取した場合、粒径が1mm以下の油1oが存在する率は、下流における母集団の中、1%以下(1000個中、10個以下)である。このような水1wまたは油1oの粒径分布は、例えば、レーザ回折法により求められる。
【0026】
透明液1tが油水分離部20Aに供給されると、透明液1tに含まれる油1oと水1wとがそれぞれ油水分離部20A内の収容室21,22に振り分けられる。そして、ポンプ32の作動により、油1oが流路43を介して油水分離部20A内の収容室22から機器60に戻される。一方、水1wは、油水分離部20A内の収容室21からドレーン50を介して排水される。なお、油水分離部20A及び流路43が機器60よりも高い位置に設けられている場合、油1oは、自重によって油水分離部20A内の収容室22から流路43を介して機器60に戻すことができる。この場合、油中水分除去装置1からポンプ32を除くことができる。
【0027】
機器60は、例えば、錆防止、潤滑、振動防止、冷媒、冷却、作動等のために油を使用する機器である。油は、例えば、シールする目的で使用される油、摺動部に使用される潤滑油、酸化腐食を抑制する油、油圧機器に使用される作動油等である。一例として、機器60は、油潤滑式の油回転真空ポンプである。機器60が油潤滑式の油回転真空ポンプの場合、油としては、鉱物油、合成油等があげられる。
【0028】
また、機器60が油潤滑式の油回転真空ポンプの場合、機器60と油中水分除去装置1とを合わせると、真空ポンプシステムが構成される。例えば、真空ポンプ内で発生した乳化液1eが油中水分除去装置1に採取されると、油中水分除去装置1内で油1oと水1wとに分離され、油1oが油回転真空ポンプに戻される。そして、乳化液1eに含まれる水1wは、ドレーン50を介して排水される。
【0029】
また、油中水分除去装置1において、ポンプ31が流路42の途中ではなく、流路41の途中に設けられてもよい。但し、ポンプ31は、乳化液1eに含まれるスラッジ1sが油水分離部10によって予め除かれるので(後述)、流路42の途中に設けられることが好ましい。これにより、スラッジ1sを含む乳化液1eが直接、ポンプ31を通過せず、ポンプ31が劣化しにくくなる。
【0030】
また、乳化液1eは、油よりも比重が高いため、機器60内においては、油よりも下に滞留する。これにより、乳化液1eを吸引する流路41は、機器60の底部に接続させ、油を戻す流路43は、機器60の上部に接続させることが望ましい。
【0031】
次に、油中水分除去装置1を構成する油水分離部10(第1の油水分離部)及び油水分離部20A(第2の油水分離部)の構成の詳細について説明する。
【0032】
図2Aは、本実施形態に係る第1の油水分離部10を示す概略的断面図である。図2Bは、第1の油水分離部10に通過される前の乳化液1eの様子を模式的に表す図である。図2Cは、第1の油水分離部10を通過した後の乳化液1eの様子を模式的に表す図である。矢印は、液体が流れる向きを表している。
【0033】
図2Aに示すように、油水分離部10は、円筒状の筒部15aと、円板状の上蓋15bと、円板状の下蓋15cと、フィルタ部材14を有する。フィルタ部材14は、フィルタ12(第1のフィルタ)と、フィルタ11(第2のフィルタ)と、フィルタ13(第3のフィルタ)とを有する。フィルタ11、フィルタ12及びフィルタ13は、Z軸方向においてこの順に並ぶ。例えば、フィルタ11は、フィルタ12の上流に設けられ、フィルタ12は、フィルタ13の上流に設けられている。フィルタ部材14の中、フィルタ13は、フィルタ11と同じ材料のため、フィルタ13については、適宜除くことも可能である。
【0034】
下蓋15cは、流路41に接続されている。上蓋15bは、流路部42aに接続されている。筒部15aは、上蓋15b及び下蓋15cに接続されている。上蓋15b及び下蓋15cのそれぞれは、筒部15aに脱着可能である。上蓋15b及び下蓋15cのそれぞれと、筒部15aとの間には、適宜Oリングが設けられてもよい。
【0035】
油水分離部10において、筒部15a、上蓋15b及び下蓋15cは、収容ケースとして機能する。上蓋15b及び下蓋15cのいずれかを筒部15aから外すことにより、筒部15a内に収容されたフィルタ11、12、13のいずれかを新品なものに簡便に交換することができる。なお、図示された収容ケースの形状は、一例であり、この例に限らない。
【0036】
フィルタ11、13は、例えば、ポリウレタン樹脂を含む。このポリウレタン樹脂は、例えば、発砲ポリウレタンである。フィルタ12、例えば、メラミン樹脂を含む。このメラミン樹脂は、例えば、メラミンフォームである。
【0037】
図2Bに示すように、油水分離部10の上流である流路41内には、機器60から採取された直後の乳化液1eが存在している。乳化液1eは、乳化液1eのほかに、スラッジ1sを含んでいる。ここで、スラッジ1sとは、機器60内で発生した錆び粉、磨耗された金属粉、油酸化物、カーボン粉、ダスト等である。このスラッジ1sは、油水分離部10中のフィルタ11によって予め除去される。これにより、フィルタ11の下流では、乳化液1e中のスラッジ1sが極めて少なくなる。
【0038】
さらに、フィルタ11は、乳化液1eを筒部15a内でX軸方向及びY軸方向に広げる層としても機能する。例えば、フィルタ11がなく、流路41の直下流にフィルタ12が配置された場合は、乳化液1eは、流路41内で形成された流束の影響を受けて、フィルタ12の中心部付近を通過してしまう。
【0039】
一方、フィルタ11がフィルタ12と流路41との間に配置された油水分離部10では、流路41から流出した乳化液1eがフィルタ11内でX軸方向及びY軸方向に一旦広がる。そして、フィルタ12には、X軸方向及びY軸方向に広がった乳化液1eが流入する。これにより、乳化液1eは、フィルタ12内において満遍なく広がり、フィルタ12における充分な使用体積が得られる。なお、フィルタ11によって除去されなかったスラッジ1sは、フィルタ13によって除去される。フィルタ13内の孔径は、フィルタ11内の孔径よりも小さく構成されてもよい。
【0040】
乳化液1eがフィルタ12に到達すると、例えば、乳化液1e中に分散されている微小の水粒子がフィルタ12のメラミン樹脂の繊維に捕捉され、擬集し、やがて微小の水粒子よりも径が大きい水滴に成長する。そして、フィルタ12を通過し、流路部42aにまで到達した液体は、油1oと、玉状の水1wとに分離された状態である透明液1t(第2の液体)になる(図2C)。
【0041】
このように、乳化液1eが油水分離部10のフィルタ12を通過すると、乳化液1eが解乳化されて、乳化液1eが油1oと水1wとに分離された透明液1tに変化する。そして、透明液1tは、ポンプ31の作動によって油水分離部10から流路部42aを経由し、流路部42bの最下流にまで移動する。流路部42bの最下流にまで移動した透明液1tは、この後、水と油との比重差を利用して同じ容器内で分離されるではなく、次に説明する親水撥油シート23sを用いて油1oと水1wとがそれぞれ別の収容室21,22に分離される。
【0042】
図3Aは、本実施形態に係る第2の油水分離部20Aの断面を示す概略的断面図である。図3Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部20Aの上面を示す概略的上面図である。
【0043】
図3Aに示すように、油水分離部20Aは、親水撥油シート23sと、筐体25と、傾斜板26と、支持板27と、供給口24aと、排油口24bと、排水口24cとを有する。親水撥油シート23sは、筐体25内に収容されている。親水撥油シート23sは、その外周がフレーム23fにより保持されている。親水撥油シート23sは、例えば、網により支えられてもよい。親水撥油シート23sとフレーム23fとをまとめて、フィルタカードリッジとする。また、筐体25を上面視したときの形状は、矩形状になっている(図3B)。筐体25の形状は、矩形状に限らず、円形状であってもよい。
【0044】
親水撥油シート23sは、例えば、透明液1t中の水1wを選択的に通過させることができるシートである。フレーム23fは、親水撥油シート23sを支持するとともに、それ自体が筐体25の係止部25l及び支持板27に支持されている。フレーム23fと支持板27とが接触する部分からは、供給口24aに向かって傾斜板26が設けられている。
【0045】
また、油水分離部20Aは、筐体25と支持板27と親水撥油シート23sとにより囲まれた収容室21(第1の収容室)と、筐体25と傾斜板26と親水撥油シート23sとにより囲まれた収容室22(第2の収容室)とを有する。収容室22は、収容室21の少なくとも一部の上に位置している。図3Aの例では、収容室21全域上に収容室22が設けられている。収容室21及び収容室22は、大気に開放されている。親水撥油シート23sは、収容室21と収容室22との間に配置されている。ポンプ31が作動すると、透明液1tが油水分離部10から流路42を経由し収容室22にまで移動する。
【0046】
また、油水分離部20Aは、筐体25と傾斜板26と支持板27とに囲まれた空間28を有する。空間28については、例えば、支持板27に開口を設けて、収容室21と繋ぐことも可能である。この場合、収容室21と空間28とをまとめて収容室21としてもよい。
【0047】
供給口24aは、収容室22に設けられている。供給口24aは、流路部42bに接続されている。すなわち、流路部42bは、供給口24aを介して収容室22に接続されている。また、供給口24aは、排油口24b及び傾斜板26よりも高い位置に位置している。例えば、供給口24aの下端は、傾斜板26の上端よりも高い位置に位置する。流路部42bにまで到達した透明液1tは、ポンプ31の作動によって供給口24aを介して収容室22に供給される。
【0048】
排油口24bは、収容室22に設けられている。排油口24bは、流路部43aに接続されている。すなわち、流路部43aは、排油口24bを介して収容室22に接続されている。排油口24bは、ドレーン50及び親水撥油シート23sよりも上に位置している。例えば、排油口24bの下端は、親水撥油シート23sの上面と同じ高さになるように位置する。
【0049】
排水口24cは、ドレーン50に接続されている。ドレーン50は、排水口24cを介して収容室21に接続されている。例えば、排水口24cの下端は、筐体25の底部25bの上面と同じ高さになるように位置する。
【0050】
親水撥油シート23sは、親水性且つ撥油性を有するシートである。例えば、親水撥油シート23sは、基材としてのガラス繊維、PET(Poly-Ethylene-Terephthalate)繊維等に、親水性且つ撥油性を有する材料(例えば、特開2015−187220号公報参照)がコーティングされたシートである。例えば、水は、親水撥油シート23sの親水性によって親水撥油シート23s内を浸透することができる。一方、油は、親水撥油シート23sの撥油性によって、その表面で弾かれ、親水撥油シート23s内を浸透できない。
【0051】
親水撥油シート23sを上面視したとき、親水撥油シート23sは、供給口24aから排油口24bに向かう方向を長手方向とする矩形状(例えば、長方形)になっている。すなわち、親水撥油シート23sの長手方向は、供給口24aから排油口24bに向かう方向(Y軸方向)と一致する。これにより、透明液1tが親水撥油シート23s上で流れる方向が親水撥油シート23sの長手方向(Y軸方向)と実質的に同じになり、親水撥油シート23sの使用される面積が充分に確保される。仮に、透明液1tが親水撥油シート23s上で流れる方向が親水撥油シート23sの長手方向と直交してしまうと、親水撥油シート23sの短手方向において透明液1tが親水撥油シート23sの中心部付近を横切ることになり、親水撥油シート23sの使用される面積が充分に確保できない。
【0052】
図4A及び図4Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部20Aの動作を示す概略的断面図である。
【0053】
例えば、図4Aに示すように、供給口24aから透明液1tが収容室22に供給されると、透明液1tは、傾斜板26に沿って流れ落ちる。傾斜板26付近の親水撥油シート23s上には透明液1tが滴下される。これにより、透明液1tは、傾斜板26近傍の親水撥油シート23sに接触する。ここで、透明液1t中の水1wは、油1oよりも比重が大きい。これにより、水1wは、油1oの下側に移動し、油1oよりも優先的に親水撥油シート23sに接触する。そして、水1wが親水撥油シート23sに接触すると、水1wの自重によって透明液1t中の水1wが選択的に親水撥油シート23sを通過し、水1wが収容室22から収容室21に移動する。すなわち、透明液1t中の水1wは、収容室21に収容される。
【0054】
一方、油1oは、撥油性の親水撥油シート23sを通過できず、親水撥油シート23s上に残留する。これにより、透明液1t中の油1oは、収容室22に収容される。なお、親水撥油シート23sは、油1oに対して撥油効果がある。これにより、油1oは、親水撥油シート23sに濡れずに、油1oに力が加えられると、油1oは、親水撥油シート23s上で動き得る状態になっている。
【0055】
このように、本実施形態においては、同じ収容室内に油1oと水1wとを収容させ、油と水との比重差を利用して同じ収容室内で油1oと水1wを分離するのではなく、油1oと水1wとを親水撥油シート23sによって分離し、油1oと水1wとをそれぞれを別の収容室21,22に収容する。なお、親水撥油シート23s上に乳化液1eを直接滴下しても、親水撥油シート23s下に水が落下しないことが判明している。
【0056】
続いて、図4Bに示すように、新たな透明液1tが供給口24aから収容室22に供給されると、新たな透明液1t中の水1wは、親水撥油シート23sを介して、収容室22から収容室21に移動し、油1oは、親水撥油シート23s上に残留する。さらに新たな油1oは、既に親水撥油シート23s上に残留している油1oに対して押圧力を与える。この結果、収容室22に残留する油1oは、供給口24aから排油口24bに向かう方向に流れ、収容室22から排油口24bを介して流路部43aに排出される。そして、収容室22内の油1oは、ポンプ32の作動により流路部43aを介して吸引されて、流路部43bの最下流にまで移動する。さらに、ポンプ32の作動によって、この油1oは、機器60にまで移動する。一方、収容室21に収容された水1wは、排水口24cを介してドレーン50に排出される。
【0057】
本実施形態においては、同じ容器内で油層の下に連続した水の層(水滴が合一した層)を形成して、この容器から油を回収するのではなく、油水分離部10で分離された油1o及び水1wをともに油水分離部20Aに供給し、油水分離部20Aにおいて、油1o及び水1wを親水撥油シート23sによりそれぞれ別の収容室21、22に振り分けている。これにより、油層の下に連続した水の層を形成させる工程を省くことができ、さらに純度の高い油を高い回収率で回収することができる。また、ドレーン50に排水される水1wの純度も高く、ドレーン50に排水される水1wから再び油を除く処理も要しない。
【0058】
また、油中水分除去装置1においては、油水分離部20Aの収容室21、22が大気に開放されており、透明液1t中の水1wが自重で収容室22から収容室21に移動する。すなわち、透明液1t中の水1wは、収容室22が加圧されることなく収容室22から収容室21に移動する。
【0059】
例えば、収容室22を加圧して強制的に水1wを収容室22から収容室21に移動させると、透明液1t中の油1oも水1wとともに親水撥油シート23sを通過することがある。これに対し、油中水分除去装置1においては、収容室21、22が大気に開放され、水1wを自重で収容室22から収容室21に移動させている。これにより、油1oは、親水撥油シート23sを通過せずに、確実に収容室22に収容される。さらに、油中水分除去装置1においては、収容室21、22内の圧力を調整する複雑な機構を要しない。
【0060】
このように、油中水分除去装置1を用いれば、油を使用する機器60から採取された乳化液中の油が高い回収率で簡便に回収される。
【0061】
また、油水分離部10、20Aはともに小型であり、油水分離部10内のフィルタ11、12、13及び油水分離部20A内の親水撥油シート23sは、簡便に交換される。これにより、油中水分除去装置1のメンテナンスも容易になる。
【0062】
[油中水分除去方法]
以上説明した油中水分除去装置1を用いた油中水分除去は、次に示すステップに従う。図5は、本実施形態に係る油中水分除去方法を示す概略的フロー図である。
【0063】
まず、油を使用する機器60から採取された乳化液1eをフィルタ12に通過させて解乳化することにより、乳化液1eを油1oと水1wとに分離された状態にある透明液1tに変化させる(ステップS10)。
次に、透明液1t中の水1wを選択的に通過させることが可能な親水撥油シート23sを用い、透明液1t中の水1wを収容室21に、透明液1t中の油1oを収容室22に、それぞれ振り分ける(ステップS20)。
次に、収容室22に収容された油1oを機器60に戻し、収容室21に収容された水1wを廃棄する(ステップS30)。
このような方法により、機器60から採取された乳化液1eについて、油1oが高い回収率で簡便に回収される。
【0064】
[第2の油水分離部の変形例]
図6Aは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第1変形例を示す概略的断面図である。図6Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第2変形例を示す概略的断面図である。
【0065】
図6Aに示す油水分離部20Bにおいては、親水撥油シート23sが水平面(X−Y平面)に対して斜めに配置されている。例えば、親水撥油シート23sは、供給口24aから排油口24bに向かう方向において、下り傾斜面を構成するように配置されている。このような構造であれば、油1oは、親水撥油シート23s上で動きやすくなり、親水撥油シート23s上に溜りにくくなる。これにより、水1wが親水撥油シート23sに接触する面積が充分に確保され、親水撥油シート23sの使用効率が増加する。
【0066】
図6Bに示す油水分離部20Cにおいても、親水撥油シート23sは、供給口24aから排油口24bに向かう方向において、下り傾斜になるように配置されている。但し、油水分離部20Cにおいては、傾斜板26及び支持板27が設けられていない。油水分離部20Cにおいては、空間28はなくなり、親水撥油シート23s下の空間が収容室21になっている。このような構造であれば、油水分離部20Bと同じ効果を奏するとともに、構成が油水分離部20Bよりもさらに簡便になる。
【0067】
なお、油水分離部20Bまたは油水分離部20Cを有する油中水分除去装置1においては、水平面に対して親水撥油シート23sが確実に斜めに配置されていることが確認できるレベルゲージが設けられてもよい。
【0068】
また、第2の油水分離部は、親水撥油シート23s上での透明液1tの滞留を抑制する滞留抑制機構をさらに有してもよい。以下に、その具体例について説明する。
【0069】
図7Aは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第3変形例を示す概略的断面図である。図7Bは、本実施形態に係る第2の油水分離部の第3変形例を示す概略的上面図である。
【0070】
図7A及び図7Bに示す油水分離部20Dは、親水撥油シート23s上に設けられた複数のフィン100と、回転軸101と有する。油水分離部20Dにおける親水撥油シート23sの外形は、例えば、円状である。回転軸101は、筐体25の底部25bから親水撥油シート23sに向かって延伸し、親水撥油シート23sを貫通している。回転軸101は、親水撥油シート23sに対して垂直に設けられている。
【0071】
複数のフィン100は、回転軸101を中心に回転可能である。複数のフィン100のそれぞれは、回転軸101を中心に等間隔で配置されている。複数のフィン100のそれぞれは、X−Y平面において円弧状に歪曲している(図7B)。複数のフィン100のそれぞれは、切り欠かれた孔部100hを有する。但し、孔部100hが設けられていない構成も本実施形態に含まれる。フィン100は、撥水撥油性を有する。孔部100hは、親水撥油シート23sに対向する。複数のフィン100のそれぞれは、親水撥油シート23sに接していない。例えば、親水撥油シート23sとフィン100とは、油1oが親水撥油シート23s上で滞留しない程度に離れている。
【0072】
供給口24aは、フィン100の上端よりも低い位置に設けられている。また、図7A、Bの例では、排油口24bは、供給口24aと対向する位置に設けられる。この配置は一例であり、例えば、供給口24aと回転軸101とを結ぶ線と、排油口24bと回転軸101とを結ぶ線とのなす角は、180度より小さくてもよい。
【0073】
油水分離部20Dにおいて、供給口24aから透明液1tが供給されると、透明液1tが複数のフィン100のいずれかの側面を押し、複数のフィン100が回転軸101を中心に回転する。複数のフィン100が回転すると、回転方向において隣り合うフィン100間に挟まれた油1oも回転方向に動き、排油口24bにまで移動する。この後、油1oは、排油口24bを介して流路部43aに排出される。一方、水1wは、自重により親水撥油シート23sを通過して、収容室21に収容される。さらに、水1wは、排水口24cを介して、ドレーン50に排水される。
【0074】
また、油水分離部20Dにおいては、複数のフィン100のそれぞれが孔部100hを有し、複数のフィン100が回転すると、フィン100の下では油1oの渦流が発生する。これにより、油1oは、親水撥油シート23s上でさらに滞留しにくくなっている。
【0075】
このような機構を有することにより、油1oは、親水撥油シート23s上でさらに動きやすくなり、親水撥油シート23s上にさらに溜りにくくなる。これにより、水1wが親水撥油シート23sに接触する面積が充分に確保され、親水撥油シート23sの使用効率がさらに増加する。なお、複数のフィン100については、外部に設けられた駆動源により回転することも可能である。
【0076】
図8は、本実施形態に係る第2の油水分離部の第4変形例を示す概略的断面図である。
【0077】
図8に示す油水分離部20Eにおいては、親水撥油シート23sが筒状になっている。筒状の親水撥油シート23sの両端は、環状のホルダ103a、103bによって支持されている。筒状の親水撥油シート23s内には、回転軸102が貫通している。回転軸102は、筐体25に支持されている。回転軸102は、水平面に対して斜めになるように配置されている。例えば、回転軸102は、供給口24aから排油口24bに向かう方向において、下るように配置されている。これにより、筒状の親水撥油シート23sも供給口24aから排油口24bに向かう方向において、下るように配置されている。筒状の親水撥油シート23sの中心軸と回転軸102の中止軸とは一致する。また、筒状の親水撥油シート23sは、回転軸102に付設された骨組み(不図示)によって、その内部から支持されている。
【0078】
油水分離部20Eにおいては、収容室21と収容室22とが筒状の親水撥油シート23sにより分けられている。すなわち、油水分離部20Eでは、筒状の親水撥油シート23s内が収容室22になっている。そして、回転軸102は、油水分離部20E外に設けられた駆動源によって、回転軸102の中心軸を中心に回転する。これにより、筒状の親水撥油シート23sは、親水撥油シート23sの中心軸を中心に回転する。
【0079】
また、油水分離部20Eにおいては、供給口24aの一部が筒状の親水撥油シート23s内に挿入されている。例えば、供給口24aの一部は、回転軸102と接触しないように筒状の親水撥油シート23sに挿入される。また、排油口24bの一部が筒状の親水撥油シート23s内に挿入されている。排油口24bの一部は、例えば、斜めに傾いた筒状の親水撥油シート23sにおいて最も低い位置付近に挿入されている。
【0080】
供給口24aから透明液1tが筒状の親水撥油シート23s(収容室22)内に供給されると、油1oは、親水撥油シート23sを通過せず、傾斜し且つ回転する親水撥油シート23s内を沿って排油口24bにまで移動する。この後、油1oは、排油口24bを介して流路部43aに排出される。油水分離部20Eにおいては、親水撥油シート23sが傾斜し且つ回転しているので、油1oが筒状の親水撥油シート23s内で溜りにくい構成になっている。なお、筒状の親水撥油シート23sの角速度は、油1oが遠心力によって親水撥油シート23sを通過しない程度に調整される。
【0081】
一方、水1wは、自重または遠心力により親水撥油シート23sを通過して、収容室21に収容される。そして、水1wは、排水口24cを介して、ドレーン50に排水される。油水分離部20Eにおいては、水1wに自重のほか遠心力を持たせることにより、水1wの親水撥油シート23sに対する接触性がより向上する。これにより、親水撥油シート23sによって油1oと水1wとがさらに効率よく分離される。
【0082】
図9は、本実施形態に係る第2の油水分離部の第5変形例を示す概略的断面図である。
【0083】
図9に示す油水分離部20Fは、斜めに傾いた筒状の親水撥油シート23sの中に螺旋状のスクリュー105が設けられている。スクリュー105は、筒状の親水撥油シート23sを支持する骨組み及び回転軸102に支持されている。すなわち、筒状の親水撥油シート23sが回転すると、スクリュー105も一緒に回転する。ここで、供給口24aからスクリュー105を見た場合、スクリュー105は、時計周りに回転する。また、スクリュー105を構成する羽根は、撥水撥油性を有する。回転軸102の一部は、排油口24bに嵌合されている。また、ホルダ103b周辺の回転軸102においては、油1oを排油口24bに排出する孔構造及び中空構造を有する。
【0084】
供給口24aから透明液1tが筒状の親水撥油シート23s内に供給されると、油1oは、親水撥油シート23sを通過できない。さらに、油1oは、筒状の親水撥油シート23s内で、スクリュー105の羽根で区切られた空間を旋回する。その後、油1oは、筒状の親水撥油シート23sの下流であるホルダ103b付近に到達する。そして、油1oは、回転軸102内を経由して、排油口24b、流路部43aに排出される。
【0085】
油水分離部20Fにおいては、親水撥油シート23sが傾斜し且つ回転しているので、油1oが筒状の親水撥油シート23s内で溜りにくい構成になっている。さらに、スクリュー105の回転により油1oが筒状の親水撥油シート23s内で強制的に動き、油1oがさらに溜りにくくなる。一方、水1wは、自重または遠心力により親水撥油シート23sを通過して、収容室21に収容される。そして、水1wは、排水口24cを介して、ドレーン50に排水される。これにより、油1oと水1wとがさらに効率よく分離される。
【0086】
図10は、本実施形態に係る第2の油水分離部の第6変形例を示す概略的断面図である。
【0087】
図10に示す油水分離部20Gにおいては、スクリュー105を有する筒状の親水撥油シート23sが水平面に対して垂直になるように配置されている。すなわち、スクリュー105を有する筒状の親水撥油シート23sの長手方向は、上下方向(Z軸方向)に一致している。
【0088】
供給口24aは、筐体25の上部25uに設けられている。回転軸102は、筐体25の上部25uに支持されている。回転軸102の一部は、筐体25の底部25bに設けられた排油口24bに嵌合されている。また、ホルダ103b周辺の回転軸102においては、油1oを排油口24bに排出する孔構造及び中空構造を有する。
【0089】
供給口24aから透明液1tが筒状の親水撥油シート23s内に供給されると、油1oは、親水撥油シート23sを通過せず、筒状の親水撥油シート23s内で、スクリュー105の羽根で区切られた空間を旋回する。そして、油1oは、筒状の親水撥油シート23sの下流であるホルダ103b付近に到達する。この後、油1oは、回転軸102内を経由して、排油口24b、流路部43aに排出される。
【0090】
油水分離部20Gにおいては、親水撥油シート23sが回転しているので、油1oが筒状の親水撥油シート23s内で溜りにくい構成になっている。さらに、スクリュー105の回転により油1oが筒状の親水撥油シート23s内で強制的に動き、油1oがさらに溜りにくくなる。一方、水1wは、遠心力により親水撥油シート23sを通過して、収容室21に収容される。そして、水1wは、排水口24cを介して、ドレーン50に排水される。これにより、油1oと水1wとがさらに効率よく分離される。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
1…油中水分除去装置
1e…乳化液
1s…スラッジ
1o…油
1w…水
1t…透明液
10…油水分離部
11、12、13…フィルタ
14…フィルタ部材
15a…筒部
15b…上蓋
15c…下蓋
20A、20B、20C、20E、20D、20F、20G…油水分離部
21、22…収容室
23s…親水撥油シート
23f…フレーム
24a…供給口
24b…排油口
24c…排水口
25…筐体
25b…底部
25u…上部
25l…係止部
26…傾斜板
27…支持板
28…空間
31、32…ポンプ
41、42、43…流路
42a、42b、43a、43b…流路部
50…ドレーン
60…機器
100…フィン
100h…孔部
101、102…回転軸
103a、103b…ホルダ
105…スクリュー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10