特許第6836900号(P6836900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836900部分フッ素化エラストマー並びにその製造方法及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836900
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】部分フッ素化エラストマー並びにその製造方法及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20210222BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20210222BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20210222BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210222BHJP
   F16L 11/04 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08J3/20 ZCEW
   C08K5/00
   C09K3/10 M
   F16L11/04
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-511832(P2016-511832)
(86)(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公表番号】特表2016-516880(P2016-516880A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】US2014036114
(87)【国際公開番号】WO2014179432
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2017年4月17日
【審判番号】不服2019-2717(P2019-2717/J1)
【審判請求日】2019年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/818,660
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】福士 達夫
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 安田 周史
【審判官】 佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−015676(JP,A)
【文献】 特開2002−006667(JP,A)
【文献】 特開2012−017431(JP,A)
【文献】 特表2012−512264(JP,A)
【文献】 特開2012−031889(JP,A)
【文献】 特開2011−064287(JP,A)
【文献】 特開2010−100680(JP,A)
【文献】 Kautsch Gummi Kunstst,2012,Vol.65,No.5,pp.26−32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L27/12-27/24
C08K5/00-5/59
C08J3/20-3/22
F16L11/00-11/26
C09K3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、
(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、0重量%より多く10重量%未満のイオン性液体と、を含む、
押出によるホースまたはガスケット成形用組成物。
【請求項2】
前記部分フッ素化ポリマーが、ガラス転移温度を有し、前記イオン性液体の添加による前記ガラス転移温度の変化が±3℃未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イオン性液体の量が、前記イオン性液体及び前記部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、0.01重量%超且つ1.0重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記イオン性液体の量が、前記イオン性液体及び前記部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、1.0重量%超且つ10.0重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を含む、押出によるホースまたはガスケット成形用物品
【請求項6】
硬化した請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を含む、ホースまたはガスケット
【請求項7】
(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、0重量%より多く10重量%未満のイオン性液体と、をブレンドして前記イオン性液体と前記部分フッ素化エラストマーゴムとが相溶した混合物を得ることと、得られた混合物を押出成形してホースまたはガスケットを製造することと、を含む、ホースまたはガスケットの製造方法。
【請求項8】
(i)部分フッ素化ポリマーを含む硬化した部分フッ素化エラストマーと、
(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、0重量%より多く10重量%未満のイオン性液体と、を含
押出によるホースまたはガスケット成形用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
部分フッ素化エラストマーゴム及びイオン性液体を含む組成物について、その製造方法及び使用方法と共に記載する。
【背景技術】
【0002】
フッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー及びテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー等の部分フッ素化エラストマーは、様々な用途に用いられている。過酸化物硬化系、アミン硬化系、及びポリオール硬化系等の硬化系を用いて、部分フッ素化エラストマーゴムを架橋させることができる。
【0003】
圧縮永久歪み耐性は、力によって変形させ、力を除去したときにその元の形状/大きさを保持する物質の能力である。架橋密度は、部分フッ素化エラストマーの圧縮永久歪みに影響を及ぼす1つの要因である。架橋剤(例えば、ビスフェノールAF、又はそのベンジルトリフェニルホスホニウムクロリドとの複合体)を用いてもよいが、架橋剤の量が増加するにつれて、硬化速度が低下する。
【0004】
ムーニー粘度は、部分フッ素化エラストマーの圧縮永久歪みに影響を及ぼす別の要因である。ポリオール硬化系では、典型的に、より高いムーニー粘度を有する部分フッ素化エラストマーは、より低い圧縮永久歪みを有する。しかし、ムーニー粘度が高くなるにつれて、部分フッ素化エラストマーゴムを加工することが困難になり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
フルオロエラストマーの最終特性(例えば、圧縮永久歪み等)のバランスをとりながら、良好な加工特性(例えば、硬化速度、ムーニー粘度等)を有する硬化性フルオロエラストマーを含む組成物が必要とされている。1つの実施形態では、揮発性溶媒等の溶媒を含まない組成物を有することが望ましい。
【0006】
1つの態様では、(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10重量%未満のイオン性液体と、を含む組成物を提供する。
【0007】
1つの実施形態では、イオン性液体の量は、イオン性液体及び部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、0.01重量%超且つ1.0重量%未満である。
【0008】
別の実施形態では、イオン性液体の量は、イオン性液体及び部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、1.0重量%超且つ10.0重量%未満である。
【0009】
別の態様では、(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10重量%未満のイオン性液体と、を含む硬化性組成物を含む物品を提供する。
【0010】
別の態様では、(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10重量%未満のイオン性液体と、(iii)硬化剤と、を含む硬化物品を提供する。
【0011】
上記発明の概要は、各実施形態を説明することを目的とするものではない。また、本発明の1つ又は2つ以上の実施形態の詳細についても、以下の説明に記載する。他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では以下の用語を使用する。
「a」、「an」、及び「the」は、互換的に使用され、1つ又は2つ以上を意味する。
「及び/又は」は、述べられている場合の一方又は両方が生じ得ることを示すために用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
「コポリマー」は、2つ又は3つ以上の異なるモノマー単位に由来するポリマーを意味し、例えば、ターポリマー、クアドポリマー等が挙げられる。
【0013】
また、本明細書においては、端点による範囲の記載には、その範囲内に含まれる全ての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等が含まれる)。
【0014】
また、本明細書においては、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)。
【0015】
液体状態の塩であるイオン性液体は、高いイオン伝導率、広い電気化学的安定性、良好な熱安定性、広い温度液体範囲、及び環境に優しい性質を含むその独自の特性により、多くの用途が見出されている。
【0016】
イオン性液体は、リチウム電池、超コンデンサ、燃料電池等において電解質として使用するためにポリマーのイオン伝導率を改善するために、ゲルポリマー電解質、又はPVDF/HFPコポリマー若しくは商標名「NAFION」として入手可能なスルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー等のイオン伝導性ポリマーに添加されている。一般的に、多くのイオン性液体を用いるほど、得られる組成物のイオン伝導率が高くなるので、イオン性液体は、典型的に、ポリマーに対して少なくとも0.4〜1の重量比で添加される。例えば、Fuller,J.et al.,J.Electrochem.Soc.,vol.144,no.4,2007,p.L67−L−69を参照。
【0017】
特開2007−281048号(Mutsuakiら)には、イオン性液体及びゲル化剤を含む熱放散のためのゲル組成物であって、前記ゲル化剤が、2重量(wt)%超且つ50重量%未満であるゲル組成物が開示されている。ゲル組成物が2重量%未満である場合、組成物のゲル化が不十分になると言われており、ゲル化剤が50重量%を超える場合、ゲル組成物の弾性及び可撓性が失われると言われており、組成物が硬くなる。
【0018】
本開示では、部分フッ素化エラストマーゴムに少量(例えば、10重量%未満)のイオン性液体を添加することによって、特に、改善された硬化速度、より低いムーニー粘度、及び/又は改善された圧縮永久歪みを有する組成物を得ることができることを見出した。
【0019】
本開示の1つの実施形態では、また、例えば、ビスフェノールAF(架橋剤)及び/又はベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(架橋助剤)等の硬化系の成分を可溶化するためにイオン性液体を用いることができることも見出し、このことにより、1つの実施形態では、硬化剤の分散を改善することができる。
【0020】
イオン性液体は、約100℃以下において液体状態であり、無視できるほどの蒸気圧及び高い熱安定性を有する珍しい塩である。イオン性液体は、カチオン及びアニオンからなり、一般的に、約100℃以下(すなわち、約100℃以下で液体である)、約95℃以下、又は更には約80℃以下の融点を有する。特定のイオン性液体は、その融点が室温よりも低いので、周囲温度でさえも溶融状態で存在し、したがって、時に、周囲温度溶融状態塩と呼ばれる。イオン性液体のカチオン及び/又はアニオンは、比較的立体的に嵩高く、典型的に、これらイオンの一方及び/又は両方が有機イオンである。イオン性液体は、公知の方法によって、例えば、アニオン交換又はメタセシスプロセス等のプロセスによって、あるいは酸−塩基又は中和プロセスを介して合成することができる。
【0021】
本開示のイオン性液体のカチオンは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等であってよく、様々な非局在化複素環式芳香族カチオンが挙げられるが、これに限定されない。アンモニウムイオンとしては、アルキルアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ピロリニウム、ピラジニウム、ピリミジニウム、トリアゾニウム、トリアジニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、インドリニウム、キノキサリニウム、ピペリジニウム、オキサゾリニウム、チアゾリニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるアンモニウムイオンが挙げられる。ホスホニウムイオンの例としては、テトラアルキルホスホニウム、アリールホスホニウム、アルキルアリールホスホニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるホスホニウムイオンが挙げられる。スルホニウムイオンの例としては、アルキルスルホニウム、アリールスルホニウム、チオフェニウム、テトラヒドロチオフェニウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるスルホニウムイオンが挙げられる。窒素原子、リン原子、又は硫黄原子に直接結合しているアルキル基は、少なくとも1、2、又は更には4個、且つ8、10、12、15、又は更には20個以下の炭素数を有する直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基であってよい。アルキル基は、任意で、鎖中又は鎖の末端(例えば、末端−OH基)にO及びN及びS等のヘテロ原子を含有してよい。窒素原子、リン原子、又は硫黄原子に直接結合しているアリール基は、少なくとも5、6、又は更には8個、且つ12、15、又は更には20個以下の炭素数を有する単環式又は縮合環式のアリール基であってよい。このようなカチオンを構成する構造における任意の部位を、アルキル基、アリケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アシル基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、ニトロ基、ニトリル基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、ハロゲン原子等によって更に置換してもよく、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びケイ素原子等のヘテロ原子が、カチオンを構成する構造の主鎖又は環に含有されていてもよい。
【0022】
カチオン部分の具体例としては、N−エチル−N’−メチルイミダゾリウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリプロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリス(メトキシエチル)アンモニウム、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−メトキシエチルアンモニウム、N,N−ジメチル−N,N−ジブチルアンモニウム、N−メチル−N,N−ジブチル−N−メトキシエチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、1−プロピル−テトラヒドロチオフェニウム、1−ブチル−テトラヒドロチオフェニウム、1−ペンチル−テトラヒドロチオフェニウム、1−ヘキシル−テトラヒドロチオフェニウム、グリシジルトリメチルアンモニウム、N−エチルアクリロイル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、N−エチル−N−メチルモルホニウム、N,N,N−トリオクチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−オクチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
官能基又は反応性を示す部分(例えば、反応活性を有する不飽和結合)を含有しないカチオンは、耐熱性を考慮して有利であり、このようなカチオンの例としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム及びN,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムが挙げられる。カチオンを構成する基は、フルオロポリマーとの良好な相溶性が予測されるので、フッ素原子で置換することが有利である。
【0024】
本開示のイオン性液体のアニオンは、例えば、硫酸イオン(R−OSO)、スルホン酸イオン(R−SO)、カルボン酸イオン(R−CO)、リン酸イオン((RO)P(=O)O)、以下の式によって表されるホウ酸イオン:BR(例えば、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)及びテトラアルキルホウ酸イオン)、以下の式によって表されるリン酸イオン:PR(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)及びヘキサアルキルリン酸イオン)、イミドイオン(R)、メチドイオン(R)、硝酸イオン(NO)、又は亜硝酸イオン(NO)であってよい。式中、各Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールアルキル、アシル、又はスルホニル基等であってよい。酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等のヘテロ原子が、基Rの主鎖又は環に含有されていてもよく、基Rの炭素原子における水素原子の一部又は全てをフッ素原子で置換してもよい。複数のR’がアニオン中に存在する場合、これらR’は、同じであっても異なっていてもよい。一般にフルオロポリマーとの相溶性が良好であるので、アニオン中の基Rの炭素原子における水素原子の一部又は全てをフッ素原子で置換することが有利であり、また、アニオンがペルフルオロアルキル基を含有することが有利である。
【0025】
有利に用いることができるペルフルオロアルキル基を含有するアニオンの例としては、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミド((RfSO)、ペルフルオロアルキルスルホネート(RfSO)、及びトリス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチド((RfSO)(式中、Rfは、ペルフルオロアルキル基を表す)が挙げられる。ペルフルオロアルキル基の炭素数は、例えば、少なくとも1、2、3、又は更には4、最大8、10、12、15又は更には20であってよい。ビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドの具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、及びビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドが挙げられる。ペルフルオロアルキルスルホネートの具体例としては、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネート、及びノナフルオロブタンスルホネートが挙げられる。トリス(ペルフルオロアルキルスルホニル)メチドの具体例としては、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチド、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチド、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
上記カチオン及びアニオンからなるイオン性液体については、優れた耐熱性及びフルオロポリマーとの良好な相溶性により、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−エチル−N’−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びN−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを有利に用いることができる。芳香環を含まないN−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びN−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミドが、非着色用途に特に適している。
【0027】
本開示の組成物を形成するために部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムとイオン性液体とをブレンドする。
【0028】
本明細書で使用するとき、ポリマーとは、反復モノマー単位に由来する巨大分子であって、20,000グラム/モル超の分子量を有する巨大分子を指す。本明細書で使用するとき、部分フッ素化ポリマーは、ポリマーの炭素骨格に沿って水素原子及びフッ素原子を含む。部分フッ素化ポリマーは、ポリマーの炭素骨格に沿って少なくとも50重量%、60重量%、又は更には70重量%の量のフッ素原子、及びポリマーの炭素骨格に沿って最大75重量%又は76重量%の量のフッ素原子を含まなければならない。また、部分フッ素化ポリマーは、ポリマーの炭素骨格に沿って少なくとも0.1重量%であるが、40重量%、25重量%、10重量%、5重量%、又は更には1重量%以下の水素原子を含まなければならない。
【0029】
部分フッ素化ポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン(CTFE)、ペルフルオロビニルエーテル(ペルフルオロアルキルビニルエーテル及びペルフルオロアルコキシビニルエーテルを含む)、ペルフルオロアルキルエーテル(ペルフルオロアルキルアリルエーテル及びペルフルオロアルコキシアリルエーテルを含む)、ペルフルオロアルキルビニルモノマー、及びこれらの組み合わせ等の1つ又は2つ以上のフッ素化モノマーに由来し得る。
【0030】
好適なペルフルオロアルキルビニルモノマーは、以下の一般式に対応する:CF=CF−R又はCH=CH−R(式中、Rは、1〜10又は更には1〜5個の炭素原子のペルフルオロアルキル基を表す)。
【0031】
本開示で用いることができるペルフルオロビニルエーテルの例としては、以下の式に対応するものが挙げられる:CF=CF−O−R(式中、Rは、0、1つ又は2つ以上の酸素原子及び最大12、10、8、6、又は更には4個の炭素原子を含有してよい全フッ素化脂肪族基を表す)。例示的な全フッ素化ビニルエーテルは、以下の式に相当する:CF=CFO(RO)n(RO)(式中、R及びRは、1〜6個の炭素原子、特に2〜6個の炭素原子の異なる直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0〜10であり、Rは、1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキル基である)。全フッ素化ビニルエーテルの具体例としては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル(PPVE−1)、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE−2)、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、及びCF−(CF−O−CF(CF)−CF−O−CF(CF)−CF−O−CF=CFが挙げられる。
【0032】
本開示で用いることができるペルフルオロアルキルエーテルの例としては、以下の式に対応するものが挙げられる:CF=CF(CF)−O−R(式中、Rは、0、1つ又は2つ以上の酸素原子及び最大10、8、6、又は更には4個の炭素原子を含有してよい全フッ素化脂肪族基を表す)。全フッ素化アリルエーテルの具体例としては、CF=CF−CF−O−(CFF(式中、nは、1〜5の整数である)及びCF=CF−CF−O−(CF−O−(CF−F(式中、xは、2〜5の整数であり、yは、1〜5の整数である)が挙げられる。
【0033】
少量の他の共重合性モノマー(フッ素置換を含有していてもいなくてもよい、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等)を添加することによって、その形成中に、部分フッ素化ポリマーを修飾することが当業者に周知である。これら追加モノマー(すなわち、コモノマー)の使用は、本開示の範囲内である。一般的に、これら追加モノマーは、フルオロポリマーの25モルパーセント未満、好ましくは10モルパーセント未満、更には3モルパーセント未満で用いられる。
【0034】
1つの実施形態では、部分フッ素化ポリマーは、コポリマーである。例示的な部分フッ素化ポリマーとしては、TFE/プロピレンコポリマー、TFE/プロピレン/VDFコポリマー、VDF/HFPコポリマー、TFE/VDF/HFPコポリマー、TFE/エチルビニルエーテル(EVE)コポリマー、TFE/ブチルビニルエーテル(BVE)コポリマー、TFE/EVE/BVEコポリマー、VDF/CF=CFOCコポリマー、エチレン/HFPコポリマー、CTFE/VDFコポリマー、TFE/VDFコポリマー、TFE/VDF/PMVEコポリマー、VDF/TFE/プロピレンコポリマー、TFE/VDF/PMVE/エチレンコポリマー、及びTFE/VDF/CF=CFO(CFOCFコポリマーが挙げられる。1つの実施形態では、部分フッ素化ポリマーは、VDF/HFPコポリマーではない。
【0035】
例示的なフルオロポリマーとしては、例えば、3M Co.,(St.Paul,MN)によって製造されているもの;FE 5522X、FE 5730、FE 5830Q、FE 5840Q、FLS 2530、FLS 2650、FPO 3740、FPO 3741、FT 2320、FT 2350、FT 2430、FT 2481、FC 2110Q、FC 2120、FC 2121、FC 2122、FC 2123、FC 2144、FC 2145、FC 2152、FC 2170、FC 2174、FC 2176、FC 2177D、FC 2178、FC 2179、FC 2180、FC 2181、FC 2182、FC 2211、FC 2230、FC 2260、FC 2261Q、FE 5520X、FE 5542X、FE 5610、FE 5610Q、FE 5620Q、FE 5621、FE 5622Q、FE 5623、FE 5640Q、FE 5641Q、FE 5642、FE 5643Q、FE 5660Q、FG 5630Q、FG 5661X、FG 5690Q、FX 3734、FX 3735、及びFX 11818が挙げられる。
【0036】
本開示では、部分フッ素化ポリマーを連鎖移動剤及び/又は硬化部位モノマーの存在下で重合させて、フルオロポリマーに硬化部位を導入してよい。
【0037】
例示的な連鎖移動剤としては、ヨード連鎖移動剤、ブロモ連鎖移動剤、又はクロロ連鎖移動剤が挙げられる。例えば、重合において好適なヨウ素連鎖移動剤としては、式RIが挙げられ、式中、(i)Rは3〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、(ii)x=1又は2である。ヨード連鎖移動剤は、全フッ素化ヨード化合物であってよい。例示的なヨード−ペルフルオロ化合物としては、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8−ジヨードフルオロオクタン、1,10−ジヨードペルフルオロデカン、1,12−ジヨードペルフルオロドデカン、2−ヨード−1,2−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロエタン、4−ヨード−1,2,4−トリクロロペルフルオロブタン及びこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態では、臭素は、以下の式の臭素化連鎖移動剤に由来する:RBr(式中、(i)Rは、3〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり;(ii)x=1又は2である)。連鎖移動剤は、全フッ素化ブロモ化合物であってよい。
【0038】
硬化部位モノマーは、用いられる場合、臭素、ヨウ素、及び/又は窒素硬化部位のうちの少なくとも1つを含む。
【0039】
1つの実施形態では、硬化部位モノマーは、以下の式の1つ又は2つ以上の化合物に由来し得る:a)CX=CX(Z)(式中、(i)各Xは、独立して、H又はFであり;(ii)Zは、I、Br、R−U(式中、U=I又はBrであり、R=任意でO原子を含有する全フッ素化又は部分全フッ素化アルキレン基である)又はb)Y(CFY(式中、(i)Yは、Br又はI又はClであり、(ii)q=1〜6である)。加えて、非フッ素化ブロモ又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。幾つかの実施形態では、硬化部位モノマーは、CH=CHI、CF=CHI、CF=CFI、CH=CHCHI、CF=CFCFI、ICFCFCFCFI、CH=CHCFCFI、CF=CFCHI、CF=CFCFCFI、CH=CH(CFCHCHI、CF=CFOCFCFI、CF=CFOCFCFCFI、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFCFOCHCHI、CF=CFO(CF−OCFCFI、CH=CHBr、CF=CHBr、CF=CFBr、CH=CHCHBr、CF=CFCFBr,CH=CHCFCFBr,CF=CFOCFCFBr,CF=CFCl,CF=CFCFCl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は2つ以上の化合物に由来する。
【0040】
別の実施形態では、硬化部位モノマーは、窒素含有硬化部分を含む。有用な窒素含有硬化部位モノマーとしては、ペルフルオロ(8−シアノ−5−メチル−3,6−ジオキサ−1−オクテン);CF=CFO(CFCN(式中、Lは、2〜12の整数である);CF=CFO(CFOCF(CF)CN(式中、uは、2〜6の整数である);CF=CFO[CFCF(CF)O](CFO)yCF(CF)CN若しくはCF=CFO[CFCF(CF)O](CFOCF(CF)CN(式中、qは、0〜4の整数であり、yは、0〜6の整数である);又はCF=CF[OCFCF(CF)]O(CFCN(式中、rは、1又は2であり、tは、1〜4の整数である);並びにこれらの誘導体及び組み合わせ等のニトリル含有フッ素化オレフィン及びニトリル含有フッ素化ビニルエーテルが挙げられる。ニトリル含有硬化部位モノマーの例としては、CF=CFO(CFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)CN、CF=CFOCFCFCFOCF(CF)CN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
部分フッ素化ポリマーは、一般的に、1種又は2種以上のモノマーを重合させることによって得られる部分フッ素化エラストマーゴムである。部分フッ素化エラストマーゴムは、架橋されていてもされていなくてもよい。部分フッ素化エラストマーゴムの架橋は、一般的に、過酸化物、ポリオール、又はポリアミン硬化系(又は硬化剤)を用いて実施することができる。
【0042】
過酸化物硬化剤としては、有機過酸化物又は無機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物、特に動的混合温度で分解しないものが好ましい。
【0043】
過酸化物を用いる架橋は、一般的に、架橋剤として有機過酸化物を用い、必要に応じて、グリセリンのジアリルエーテル、トリアリルリン酸、アジピン酸ジアリル、ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリ−トリアリルイソシアヌレート(ポリ−TAIC)、キシリレン−ビス(ジアリルイソシアヌレート)(XBD)、及びN,N’−m−フェニレンビスマレイミド等の架橋助剤を用いることによって実施することができる。有機過酸化物の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルクロロへキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート(TBIC)、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t−アミルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート、カルボノペルオキソ酸、O,O’−1,3−プロパンジイルOO,OO’−ビス(1,1−ジメチルエチル)エステル、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、過酸化ラウレル、及び過酸化シクロヘキサノンが挙げられる。他の好適な過酸化物硬化剤は、米国特許第5,225,504号(Tatsuら)に列挙されている。使用する過酸化物硬化剤の量は、一般に、フルオロポリマー100重量部当たり、0.1〜5、好ましくは1〜3重量部である。他の従来のラジカル反応開始剤は、本開示で使用するのに好適である。
【0044】
ポリオールを用いる架橋は、一般的に、架橋剤としてのポリオール化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、及びイミニウム塩等の架橋助剤、並びにマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛等の二価金属の水酸化物又は酸化物を用いることによって実施される。ポリオール化合物の例としては、ビスフェノールAF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキノン、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン、4,4’−チオジフェノール、及びこれらの金属塩が挙げられる。
【0045】
ポリアミンを用いる架橋は、一般的に、架橋剤としてのポリアミン化合物、及びマグネシウム、カルシウム、又は亜鉛等の二価金属の酸化物を用いることによって実施される。ポリアミン化合物又はポリアミン化合物の前駆体の例としては、ヘキサメチレンジアミン及びそのカルバメート、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン及びそのカルバメート、並びにN,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0046】
二価金属の水酸化物、酸化物等からなるこの架橋剤、架橋助剤、及び酸受容剤は、それぞれ、従来公知の量で用いてよく、用いられる量は、フルオロポリマーとの混和性、架橋フルオロポリマーの機械的強度、収益性等を考慮しながら、当業者が適切に決定することができる。架橋に関与するこれら各成分の用いられる量は、例えば、フルオロポリマー100質量部当たり、約1質量部以上、約5質量部以上、約10質量部以上、又は約15質量部以上、且つ約60質量部以下、約40質量部以下、約30質量部以下、又は約20質量部以下であってよい。架橋に関与する成分の合計量は、例えば、フルオロポリマー100質量部当たり、約1質量部以上、約5質量部以上又は約10質量部以上、且つ約60質量部以下、約40質量部以下、又は約30質量部以下であってよい。
【0047】
本開示では、少量のイオン性液体(すなわち、部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10、8、6、5、3、2、又は更には1重量%未満のイオン性液体)が組成物中に存在する。しかし、イオン性液体が存在しないときに対して、本開示の組成物において幾つかの改善(加工に関してであろうと最終製品の特性に関してであろうと)を誘発するために、十分な量のイオン性液体(すなわち、部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、0.0005重量%超のイオン性液体)を用いなければならない。
【0048】
1つの実施形態では、イオン性液体の量は、イオン性液体及び部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、0.010、0.020、0.050、0.070、0.01、0.20、又は更には0.50重量%超且つ1.0、0.90、0.80、又は更には0.60重量%未満である。
【0049】
別の実施形態では、イオン性液体の量は、イオン性液体及び部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、1.0、2.0、又は更には4.0重量%超且つ10.0、9.0、8.0、又は更には6.0重量%未満である。
【0050】
本開示は、イオン性液と部分フッ素化ポリマーとの混和性ブレンドを含む組成物を目的とする。本明細書で使用するとき、混和性ブレンドとは、イオン性液体及び部分フッ素化ポリマーのブレンドが、分子レベルで分散体であることを意味し、これは、ミクロ相分離又は分散体、例えば、ゲルとは異なり、混和性ブレンドは、一成分として挙動する。言い換えれば、混和性ブレンドは、単一のガラス転移温度(T)を有する。本開示では、混和性ブレンドの単一のTは、部分フッ素化ポリマーのTと実質的に同じである。イオン性液体及びフルオロポリマーのブレンドが不混和性である場合、2つのTが観察され、そのTのうちの少なくとも1つは、フルオロポリマーのTと同じである。
【0051】
ガラス転移温度(T)は、ポリマーが非晶質状態からガラス質状態に移行する温度である。Tは、当業者に公知の任意の技術に従って測定することができる。例えば、示差走査熱量測定(DSC)、又は動的機械分析機を用いて損失弾性率(G’’)を貯蔵弾性率(G’)で除することによって計算されるtan δ(tan δ=G’’/G’)のピーク温度を決定することを用いて、ガラス転移温度を決定することができる。同じ測定技術を用いるとき、本開示に係る混和性ブレンド(部分フッ素化ポリマー(硬化しているか又はしていない)及びイオン性液体を含む)のTは、部分フッ素化ポリマー(硬化しているか又はしていない)のTと実質的に同じである。言い換えれば、イオン性液体を部分フッ素化ポリマーに添加するとき、イオン性液体とブレンドした部分フッ素化ポリマーのTは、部分フッ素化ポリマー自体のTとは3、2、1℃未満、又は更には0℃異なる。
【0052】
部分フッ素化エラストマーゴムに少量のイオン性液体を添加することによって、エラストマーゴムを含む組成物は、特に、改善された硬化速度、より低いムーニー粘度、及び/又は改善された圧縮永久歪みを有することができることを見出した。
【0053】
イオン性液体は、イオン伝導性液体として知られている。例えば、Masayoshi Watanabe and Tomoo,Solid State Ionics,vol.86〜88(1996)353〜356を参照。部分フッ素化ポリマーに対して少量(例えば、10重量%未満)のイオン性液体しか用いられていないので、1つの実施形態では、イオン性液体は、部分フッ素化ポリマーのイオン特性を実質的に変化させない。少量のイオン性液体を添加することによりフルオロポリマーゴムの伝導性を変化させることができるが、本明細書で使用するとき、実質的に変化させるとは、部分フッ素化ポリマーにイオン性液体を添加しても、前記部分フッ素化ポリマーが非伝導性物質(すなわち、10−8S/cm未満)から半伝導性(すなわち、10−8S/cm〜10S/cm)又は伝導性物質(すなわち、10S/cm超)になることも、前記部分フッ素化ポリマーが半伝導性物質から伝導性物質になることもないことを意味する。
【0054】
本開示の1つの実施形態では、組成物が非伝導性であるとは、組成物が、約1×10−8S/cm、1×10−9S/cm、又は更には1×10−10S/cm未満の伝導性を有することを意味する。
【0055】
用いられるイオン性液体の量及び得られる組成物に与える影響は、用いられるイオン性液体、部分フッ素化ポリマー組成物、及び使用される硬化系に基づいて変動し得る。例えば、1つの実施形態では、少量のイオン性液体を用いたとき、圧縮永久歪みが増大する。別の実施形態では、少量のイオン性液体を用いたとき、圧縮永久歪みは変化しないか又はわずかに低くなるが、硬化時間は短くなる。別の実施形態では、少量のイオン性液体を用いたとき、ムーニー粘度が低下する。
【0056】
理論に縛られるものではないが、1つの実施形態では、ポリマー及び硬化剤に対して可溶性を有し得るイオン性液体は、組成物の均質性を改善し、それによって、例えば、硬化速度及び/又は圧縮永久歪みを改善することができると考えられる。
【0057】
費用及び/又は環境上の理由から製造業者が溶媒から離れているので、1つの実施形態では、ポリマーに配合したときに固体硬化剤を溶解又は分散させるために用いられてきた従来の揮発性溶媒(例えば、エタノール又はメタノール)をイオン性液体を用いて置き換えることができる。
【0058】
1つの実施形態では、固体硬化剤(又は硬化剤)は、23℃で1時間2.4rpm(毎分回転数)にて回転させたとき、イオン性液体に可溶性(すなわち、無色透明又は曇っている)である。1つの実施形態では、固体硬化剤(又は硬化剤)は、40℃で16時間2.4rpmにて回転させたとき、イオン性液体に可溶性(すなわち、無色透明又は曇っている)である。
【0059】
例えば、強度を高めたり機能性を付与したりする目的のために、従来の補助剤、例えば、酸受容体、加工助剤、又は着色剤等を組成物に添加してよい。
【0060】
このような充填剤としては、粘土、シリカ(SiO)、アルミナ、ベンガラ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、珪灰石(CaSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、フッ化カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、及びカーボンブラック充填剤等の有機又は無機充填剤が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン粉末、PFA(TFE/ペルフルオロビニルエーテルコポリマー)粉末、導電性充填剤、熱放散充填剤等を任意成分として組成物に添加してもよい。当業者は、硬化処理された化合物において所望の物理的特徴を達成するのに必要な量の特定の充填剤を選択することができる。充填剤成分から、より低温(TR−10)において収縮等の所望の特性を保持しながら、伸び及び引張強さの値によって示される通り、好ましい弾性及び物理的引張性を保持することができる化合物を得ることができる。
【0061】
1つの実施形態では、組成物は、40、30、20、15、又は更には10重量%未満の無機充填剤を含む。
【0062】
また、得られる組成物の特性を強化するために、従来の補助剤を本開示の化合物に配合してもよい。例えば、化合物の硬化及び熱安定性を促進するために酸受容体を用いてよい。好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、アルカリステアレート、シュウ酸マグネシウム、又はこれらの組合せを挙げることができる。酸受容体は、好ましくは、ポリマー100重量部当たり約1〜約20重量部の量で使用される。
【0063】
部分フッ素化エラストマーゴム、イオン性液体、及び上記他の成分を含有する溶液又は液体分散液は、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、及びエステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)等の溶媒を用いて調製することができ、調製された溶液又は液体分散液は、紙、繊維、フィルム、シート、テープ、板、チューブ、パイプ、タンク、及び容器等の基材の表面にコーティングしてよく、溶媒は、乾燥によって除去してよい。この方法では、組成物層及び基材を含有する物品を形成することができる。
【0064】
部分フッ素化エラストマーゴム、イオン性液体、及び上記他の成分を混合する方法は、例えば、ゴム用二本ロール、圧力混練機、又はBanburyミキサーを使用する混練が挙げられる。
【0065】
次いで、本開示の組成物からなるシート、ホース、ホースの裏層、o−リング、ガスケット、又はシール等の様々な形状の物品を形成するために、押出成形又は成形等によって混合物を加工及び成形してよい。次いで、成形物品を加熱して、ゴム組成物を硬化させ、硬化エラストマー物品を形成することができる。
【0066】
配合した混合物の加圧(すなわち、プレス硬化)は、典型的には約120〜220℃、好ましくは約140〜200℃の温度で、約1分間〜約15時間、通常は約1〜15分間実施される。約700〜20,000kPa、好ましくは約3400〜約6800kPaの圧力が、組成物の成形で典型的に使用される。最初に、成形型を離型剤でコーティングし、予備焼成してよい。
【0067】
成形された硬化物は、サンプルの断面厚みに依存して、約140〜240℃、好ましくは約160〜230℃の温度で、約1〜24時間以上、オーブン内で後硬化させてよい。厚みのある部分では、後硬化中の温度は、通常、範囲の下限から所望の最高温度まで次第に上昇する。用いられる最高温度は、好ましくは約260℃であり、この値で約1時間以上保持する。
【0068】
本開示の組成物は、ホース、ガスケット、又はシール等の物品で用いることができる。組成物は、硬化してもよく、しなくてもよい。
【0069】
本開示の例示的な実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
実施形態1.組成物であって、
(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、
(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10重量%未満のイオン性液体と、を含む組成物。
【0070】
実施形態2.前記部分フッ素化ポリマーが、ガラス転移温度を有し、前記イオン性液体の添加によって前記ガラス転移温度が実質的に変化しない、実施形態1に記載の組成物。
【0071】
実施形態3.前記イオン性液体の量が、前記イオン性液体及び前記部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、0.01重量%超且つ1.0重量%未満である、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0072】
実施形態4.前記イオン性液体の量が、前記イオン性液体及び前記部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、1.0重量%超且つ10.0重量%未満である、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0073】
実施形態5.前記部分フッ素化ポリマーが、コポリマーである、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の組成物。
【0074】
実施形態6.前記イオン性液体が、約100℃以下の融点を有する、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の組成物。
【0075】
実施形態7.前記部分フッ素化ポリマーが、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルアリルエーテル、ペルフルオロアルコキシビニルエーテル、及びペルフルオロアルコキシアリルエーテルのうちの少なくとも1つから選択される1つ又は2つ以上のフッ素化モノマーに由来する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の組成物。
【0076】
実施形態8.前記部分フッ素化ポリマーが、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/プロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/PMVEコポリマー、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/プロピレンコポリマー、クロロトリフルオロエチレン/フッ化ビニリデンコポリマー、又はエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーである、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【0077】
実施形態9.前記部分フッ素化ポリマーが、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーではないということを条件とする、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の組成物。
【0078】
実施形態10.前記イオン性液体のアニオンが、ペルフルオロアルキル基を含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の組成物。
【0079】
実施形態11.前記イオン性液体のカチオン部分が、N−エチル−N’−メチルイミダゾリウムN−メチル−N−プロピルピペリジニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリプロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−メトキシエチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリス(メトキシエチル)アンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、1−プロピル−テトラヒドロチオフェニウム、1−ブチル−テトラヒドロチオフェニウム、グリシジルトリメチルアンモニウム、N−エチル−N−メチルモルホニウム、N,N,N−トリオクチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチル−N−オクチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【0080】
実施形態12.前記イオン性液体のアニオン部分が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリス(ペンタフルオロエタンスルホニル)メチド、トリス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)メチド、トリス(ノナフルオロブタンスルホニル)メチド、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の組成物。
【0081】
実施形態13.前記部分フッ素化ポリマーが、硬化部位を更に含み、前記硬化部位が、臭素、ヨウ素、及び窒素硬化部分のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の組成物。
【0082】
実施形態14.前記硬化部位が、以下のうちの少なくとも1つに由来する硬化部位モノマーから選択される、実施形態13に記載の組成物:CF=CFBr、CF=CHBr、ICFCFCFCFI、CH、BrCFCFBr、CF=CFO(CF−OCFCFBr、CF=CFOCFCFBr、CH=CHCFCFBr、CH=CHCFCFI、CF=CFCl、CH=CHI、CF=CHI、CF=CFI、CH=CHCHI、CF=CFCFI、CF=CFCHCHI、CF=CFCFCFI、CH=CH(CFCHCHI、CF=CFOCFCFI、CF=CFOCFCFCFI、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFCFOCHCHI、CF=CFO(CF−OCFCFI、CH=CHBr、CH=CHCHBr、CF=CFCFBr、CF=CFO(CFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)CN、CF=CFOCFCFCFOCF(CF)CN、及びCF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN。
【0083】
実施形態15.前記部分フッ素化エラストマーゴムが、過酸化物硬化性である、実施形態13又は14に記載の組成物。
【0084】
実施形態16.過酸化物、及び任意で架橋助剤を更に含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の組成物。
【0085】
実施形態17.前記過酸化物が、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ジクミル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、及び2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン−3、過酸化ラウレルのうちの少なくとも1つから選択される、実施形態16に記載の組成物。
【0086】
実施形態18.前記部分フッ素化エラストマーゴムが、ビスフェノール又はアミン硬化性である、実施形態13又は14に記載の組成物。
【0087】
実施形態19.ビスフェノールAを更に含む、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の組成物。
【0088】
実施形態20.無機充填剤を更に含む、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の組成物。
【0089】
実施形態21.前記無機充填剤が、カーボンブラック、グラファイト、粘土、シリカ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、珪灰石、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、酸化チタン、及び酸化鉄のうちの少なくとも1つから選択される、実施形態20に記載の組成物。
【0090】
実施形態22.20重量%未満の前記無機充填剤を含む、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の組成物。
【0091】
実施形態23.PTFE粉末及びPFA粉末のうちの少なくとも1つから選択される有機充填剤を更に含む、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の組成物。
【0092】
実施形態23.非伝導性である、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の組成物。
【0093】
実施形態24.実施形態1〜23のいずれか1つに記載の組成物を含む、物品。
【0094】
実施形態25.実施形態1〜23のいずれか1つに記載の組成物を含む、硬化物品。
【0095】
実施形態26.ホース、ガスケット、又はシールである、実施形態25に記載の硬化物品。
【0096】
実施形態27.(i)部分フッ素化ポリマーを含む部分フッ素化エラストマーゴムと、(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10重量%未満のイオン性液体とをブレンドすることを含む方法。
【0097】
実施形態28.前記部分フッ素化ポリマーが、ガラス転移温度を有し、前記イオン性液体の添加によって前記ガラス転移温度が実質的に変化しない、実施形態27に記載の方法。
【0098】
実施形態29.前記イオン性液体の量が、前記イオン性液体及び前記部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、0.01重量%超且つ1.0重量%未満である、実施形態27又は28に記載の方法。
【0099】
実施形態30.前記イオン性液体の量が、前記イオン性液体及び前記部分フッ素化ポリマーの総重量に基づいて、1.0重量%超且つ10.0重量%未満である、実施形態27又は28に記載の方法。
【0100】
実施形態31.前記部分フッ素化ポリマーが、コポリマーである、実施形態27〜30のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態32.前記イオン性液体が、約100℃以下の融点を有する、実施形態27〜31のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態33.前記部分フッ素化ポリマーが、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーではないということを条件とする、実施形態27〜32のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態34.前記イオン性液体のアニオンが、ペルフルオロアルキル基を含む、実施形態27〜33のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態35.過酸化物系、ポリオール系、及びポリアミン系のうちの少なくとも1つから選択される硬化系で前記部分フッ素化エラストマーゴムを硬化させることを更に含む、実施形態27〜34のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態36.ホース、ガスケット、又はシールとしての、実施形態25に記載の硬化物品の使用。
【0106】
実施形態37.組成物であって、
(i)部分フッ素化ポリマーを含む硬化した部分フッ素化エラストマーと、
(ii)前記部分フッ素化ポリマー及びイオン性液体の総重量に基づいて、10重量%未満のイオン性液体と、を含む組成物。
【0107】
実施形態38.前記硬化した部分フッ素化ポリマーが、ガラス転移温度を有し、前記イオン性液体の添加によって前記ガラス転移温度が実質的に変化しない、実施形態37に記載の組成物。
【実施例】
【0108】
本開示の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に説明するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これら実施例では、全ての百分率、割合及び比率は、特に指示しない限り重量による。
【0109】
別途記載されるか又は明らかでない限り、全ての材料は、例えばSigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から市販されているか又は当業者に公知のものである。
【0110】
これら略記を以下の実施例で用いる:dNm=デシニュートンメートル;g=グラム、kg=キログラム、min=分、mol=モル、cal=カロリー、cc=立方センチメートル、cm=センチメートル、min=分;mm=ミリメートル;mL=ミリリットル、L=リットル、N=ニュートン、psi=圧力/平方インチ、MPa=メガパスカル、rad/s=ラジアン/秒、及びwt=重量、MU=ムーニー単位、PAVE=ペルフルオロアルキルビニルエーテル、E#=実施例番号及びCE#=比較例番号、S=シーメンス、及びphr=ゴム100重量部当たりの重量部。
【0111】
【表1】
【0112】
試験
ムーニー粘度
配合処方のムーニー粘度は、ASTM D−1646−07「Standard Test Method for Rubber−Viscosity,Stress Relaxation,and Pre−Vulcanization Characteristics(Mooney Viscometer)」に開示されている通りの手順に従って試験した。予熱時間は、121℃で1分間であり、試験時間は、121℃で10分間であった。
【0113】
MDR
配合したフルオロエラストマーゴムサンプルの硬化レオロジーは、MDR(Moving Die Rheometer)モードのAlpha Technology RPA 2000及びASTM D 5289−95に記載の手順を用いて、177℃、予熱なし、経過時間12分、並びに0.5℃最小トルク(ML)及び最大トルク(MH)で、未硬化の配合混合物を試験することによって調べた。すなわち、プラトー又は最大値が得られないときに特定の期間内に得られる最高トルクを報告した。また、以下についても報告した:Ts2(トルクがMLを超えて2単位増加するのにかかる時間)、T50(トルクがML+0.5[MH−ML]に達するのにかかる時間)、及びT90(トルクがML+0.9[MH−ML]に達するのにかかる時間)。
【0114】
物性
硬化したフルオロエラストマーゴム(硬化したシート)の物性は、破断後の引張永久歪み(tensile set after break)(Tb)及び破断時の伸長率(Eb)については、ASTM D 412−06a「Standard Test Methods for Vulcanized Rubber and Thermoplastic Elastomers−Tension」、及びショアA硬さ(HS)についてはASTM D 2240−05「Standard Test Method for Rubber Property−Durometer Hardness」に開示されているのと同様の手順に従って試験した。
【0115】
圧縮永久歪み
硬化したフルオロエラストマーゴム(硬化したボタン)の圧縮永久歪みは、ASTM D 395−03「Standard Test Methods for Rubber Property−Compression Set」Method Bに開示されているのと同様の手順に従って試験した。
【0116】
ガラス遷移温度
ガラス転移温度は、ASTM D 6204−07「Standard Test Method for Rubber−Measurement of Unvulcanized Rheological Properties Using Rotorless Shear Rheometers」に従って、動的機械分析機AR 2000EX(TA Instruments(New Castle,DE)製)を用いて、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)から計算されるtan δのピーク温度によって決定した。環境試験チャンバ(ETC)を備えるねじり矩形クランプをジグとして用いた。矩形サンプルの大きさは、おおよそ厚み2mm、幅6.4mm、及び長さ24.5mmであった。貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G’’)は、5℃/分の速度、周波数(ω)1.0Hz(6.3rad/s)及び5%の歪みにて、−60℃〜25℃の温度掃引によって測定した。
【0117】
抵抗率及び伝導率
サンプルの体積抵抗率及び伝導率は、ASTM D 257−07「Standard Test Methods for DC Resistance or Conductance of Insulating Materials」に記載されているのと同様の手順に従って、10ボルトで、プローブを備える抵抗/抵抗率計(Model 803Bプローブを備えるModel 872「Wide Range Resistance Meter」としてElectro−Tech Systems,Inc.(Glenside,PA)から入手可能)を用いて、後硬化したシートを試験することによって調べた。
【0118】
実施例1A〜8B(E1A〜E8B)及び比較例1〜8(CE1〜CE8)。
【0119】
実施例及び比較例のフルオロエラストマーゴムの調製において用いられる材料の量を以下の表1〜4に示す。ここでは、量を重量部で記載する。
【0120】
フルオロエラストマーゴムを調製するために、フルオロポリマー、イオン性液体、及び硬化物1、硬化物2、又は硬化物3(用いる場合)を直径6インチ(152mm)のオープンロールミルで配合した。混合物が均質になった後、上記「ムーニー粘度」方法を用いてムーニー粘度を測定した。サンプルのムーニー粘度を以下の表5〜8に示す。次いで、用いる場合、炭素、硬化物4、助剤、MgO、及びCa(OH)を、ポリマーバンドの中心に置き、再度二本ロールミルで配合した。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
次いで、上記配合したフルオロエラストマーゴムサンプルを、上記「MDR」方法に従って硬化特性について試験した。結果を以下の表5〜8に示す。
【0126】
物性測定については、配合したフルオロエラストマーゴムサンプルを、表5〜8に示す温度及び時間で、15×15cm、厚み2mmの成形型を用いてプレス硬化した。次いで、プレス硬化したシートを、表5〜8に示す温度及び時間で後硬化した。物性用のダンベルを、ASTMダイDを用いて硬化したシートから切り取った。プレス硬化し、次いで後硬化した後のサンプルを、上記「物性」方法を用いて物性について試験した。また、後硬化したシートサンプルを、上記「ガラス転移温度」及び「抵抗率及び伝導率」方法を用いて試験した。結果を表5〜8に示す。
【0127】
圧縮永久歪み試験については、配合したフルオロエラストマーゴムサンプルを、表5〜8に示す温度及び時間で、直径1インチ(25mm)、厚み0.5インチ(12.5mm)の成形型を用いてプレス硬化した。次いで、プレス硬化したボタンを、表5〜8に示す温度及び時間で後硬化した。プレス硬化及び後硬化したサンプルを、上記「圧縮永久歪み」方法を用いて、圧縮永久歪み耐性について試験した。結果を表5〜8に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
【表9】
【0132】
実施例9〜14
イオン性液体中の硬化剤の可溶性を調べた。下記の通り、硬化剤及びイオン性液体をガラスジャーに入れた。次いで、特に指定しない限り、23℃で1時間ガラスジャーをローラー(2.4rpm)上に置いた。ガラスジャーを取り除き、内容物を目視検査した。用いた硬化剤及びイオン性液体の量、並びに目視検査の結果を以下に示す。
【0133】
実施例9:0.1グラムのビスフェノールAF(固体)を用いて作製した1%溶液を、ガラスジャー内の9.9グラムのIL#1に添加した。得られた溶液は、無色透明であった。
【0134】
実施例10:1.0グラムのビスフェノールAF(固体)を用いて作製した10%溶液を、ガラスジャー内の9.0グラムのIL#1に添加した。得られた溶液は、無色透明であった。
【0135】
実施例11:2.0グラムのビスフェノールAF(固体)を用いて作製した20%溶液を、ガラスジャー内の8.0グラムのIL#1に添加した。ローラー上において40℃で16時間後、得られた溶液は、無色透明であった。
【0136】
実施例12:0.1グラムのベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(固体)を用いて作製した1%溶液を、ガラスジャー内の9.9グラムのIL#1に添加した。ローラー上において40℃で16時間後、得られた溶液は、無色透明であった。
【0137】
実施例13:1.0グラムのベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(固体)を用いて作製した10%溶液を、ガラスジャー内の9.0グラムのIL#1に添加した。得られた溶液は、白色で曇っており、これは、硬化剤が完全には溶解しなかったことを示す。
【0138】
実施例14:ガラスジャー内において、IL#1中0.1グラムの硬化物2を用いて1%溶液を作製した。ローラー上において40℃で16時間後、得られた溶液は、無色透明であった。
【0139】
実施例15:ガラスジャー内において、IL#1中トリフェニルベンジルホスホニウムとビスフェノールAF(固体)との1:1複合体0.1グラムを用いて1%溶液を作製した。ローラー上において40℃で16時間後、得られた溶液は、無色で曇っており、これは、硬化剤がほとんど完全に溶解したことを示す。
【0140】
実施例16(E16)、実施例17(E17)、及び比較例(CE7):実施例1Aの通り混合物を作製した。実施例及び比較例のフルオロエラストマーゴムの調製に用いられる材料の量を以下の表9に示す。ここでは、量を重量部で記載する。次いで、上記配合したフルオロエラストマーゴムサンプルを、上記「MDR」方法に従って硬化特性について試験した。結果を以下の表10に示す。
【0141】
【表10】
【0142】
【表11】
【0143】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には自明であろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される実施形態に限定されるべきものではない。