(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスセンサ素子1000に導入される排気ガスは導入方向Fに沿って第1空間1500から第2空間1600に流れるが、第1空間1500から第2空間1600に流れるこの排気ガス中の酸素濃度は、第1空間1500から第2空間1600に向かって徐々に低くなる濃度勾配Grを有している。
しかしながら、ガスセンサ素子1000の先端側で排気ガスの流速が大きくなることに起因する素子自体の温度勾配や、第1ポンプセル1100の電極1130の劣化によって、濃度勾配Grが濃度勾配Gr1のように変化することがある。この際、酸素濃度検知セル1200の検知電極1210上では、濃度勾配Gr、濃度勾配Gr1ともに酸素濃度が略同等であるにも関わらず、第2空間1600に導入される直前の排気ガス中の酸素濃度は、濃度勾配Grと濃度勾配Gr1とで差異が生じ、NOx濃度の検知精度が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、濃度勾配Grが変化する影響を低減するため、第2空間1600になるべく近い部位に酸素濃度検知セル1200(検知電極1220)を配置することが好ましいことになる。しかしながら、第1空間1500と第2空間1600の間に多孔質体1520が介在する場合、多孔質体1520内では濃度勾配Grが複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する虞がある。例えば、上記特許文献1の
図9には、拡散律速層(多孔質体)内へ検知電極を配置する構成が記載されているが、NOx濃度の検知精度の点で好ましくない。つまり、多孔質体1520を避けて検知電極1220を配置する必要があることが判明した。
【0007】
このようなことから、
図16に示すように、多孔質体1520を取り去り、第2空間1600に隣接する導入路1250に検知電極1220を近付ける、つまり、導入路1250を囲むように、第1空間1500内に検知電極1220を配置することが考えられる。
一方、濃度勾配Grが変化する影響を低減するには、第1空間1500と第2空間1600の寸法を小さくする、つまりガスセンサ素子を小型化することが好ましい。ところが、この場合、
図16の破線で示すように、固体電解質層1210xの幅も狭くなり、導入路1250と第1空間1500の壁面との間隔Dも狭くなる。検知電極1220を印刷等で形成する場合の印刷ズレを考慮すると、間隔Dが狭くなるにつれて導入路1250と第1空間1500の壁面との間に検知電極1220を形成することが困難になり、濃度勾配Grが変化する影響を低減することが難しくなる。
従って、本発明は、小型化を図ると共に、ガスセンサ素子の内部に導入される酸素の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度を精度よく検知できるガスセンサ素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点のガスセンサ素子は、軸線方向に延び、三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、三つ以上の前記セラミック層のうち、第1セラミック層と、第3セラミック層の層間に形成されると共に、外部から被測定ガスが導入される第1空間と、前記第1セラミック層と、第2セラミック層の層間に形成されると共に、前記第1空間と少なくとも一部が積層方向に重なり合う第2空間と、前記第1セラミック層を前記積層方向に貫く空間を形成すると共に、前記第1空間に導入された前記被測定ガスを前記第2空間に導入する1つの導入路と、前記第1空間内の前記被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする第1ポンプセルであり、前記第1空間に隣接する前記第3セラミック層と、前記第3セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された第1内側電極と、該第1内側電極と対をなす第1対電極とを備える第1ポンプセルと、前記第1ポンプセルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度検知セルであり、前記第1空間に隣接する前記第1セラミック層と、前記第1セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された検知電極と、該検知電極と対をなす基準電極とを備える酸素濃度検知セルと、前記酸素濃度検知セルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記第2空間内における前記被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる第2ポンプセルであり、前記第2空間に隣接する前記第2セラミック層と、前記第2セラミック層上に設けられ、前記第2空間内に晒された第2内側電極と、該第2内側電極と対をなす第2対電極とを備える第2ポンプセルと、を有するガスセンサ素子であって、前記導入路よりも前記導入方向上流側に配置され、前記第1空間を形成して前記軸線方向に延びる側壁の少なくとも一方から他の側壁に向かって、両側壁の間に隙間を設けて延び、かつ前記第1空間を前記積層方向に囲む2つの壁面に接続する仕切り壁をさらに備え、前記検知電極は、前記第1空間に露出すると共に、前記軸線方向に見て、前記側壁と前記導入路との間、又は前記他の側壁と前記導入路との間の一方にのみ配置され、前記軸線方向と交差する幅方向に見て、前記検知電極と前記導入路とが重なり、前記軸線に見て、前記仕切り壁と前記検知電極の少なくとも一方が前記導入路と重なると共に、前記導入路よりも前記導入方向上流側で前記仕切り壁と前記検知電極とが隙間を設けずに重なり、前記積層方向に前記導入路と前記第2内側電極とが少なくとも一部で重なることを特徴とする。
【0009】
ガスセンサ素子内を第1空間から第2空間に流れる被測定ガス中の酸素濃度は、第1空間から第2空間に向かって徐々に低くなる濃度勾配を有しているが、この濃度勾配が、ガスセンサ素子自体の温度勾配や、第1ポンプセルの電極の劣化によって変化することがある。そして、この濃度勾配が変化する影響により、第2空間に導入される直前の被測定ガスの酸素濃度に差異が生じ、第2ポンプセルで検知する特定ガス濃度の検知精度が低下するという問題がある。
そして、濃度勾配が変化する影響を低減するには、検知電極を導入路に近付けると共に、検知電極を配置する第1空間と第2空間の寸法を小さくする、つまりガスセンサ素子を小型化することが好ましいが、導入路と第1空間の壁面との間隔も狭くなる。このため、検知電極を印刷等で形成する場合の印刷ズレを考慮すると、間隔が狭くなるにつれて導入路と第1空間の壁面との間に検知電極を形成することが困難になる。
【0010】
そこで、このガスセンサ素子によれば、軸線方向に見て側壁と導入路との間のうち、広幅の一方にのみ検知電極を配置すればよいので、ガスセンサ素子を小型化した場合に、検知電極を印刷で形成する場合の印刷ズレやその他の製造誤差を考慮しても、検知電極を導入路に近接して確実に形成することができる。又、側壁と導入路との間のうち一方にのみ検知電極を形成する場合には、検知電極を形成しない側の側壁と導入路との間に被測定ガスが流れてしまい、反対側の検知電極に被測定ガスが十分に流れずに測定精度が低下する。
そこで、第1空間を仕切り壁で仕切ることで、第1空間を流れる被測定ガスは、必ず仕切り壁の隙間を通って下流側の導入路へ流れる。このとき、軸線方向と交差する幅方向に見て、検知電極が導入路と重なり、かつ軸線方向に見て、導入路よりも上流側で仕切り壁と検知電極とが隙間を設けずに重なるので、被測定ガスが仕切り壁の隙間を通って必ず検知電極に流れるようにすることができる。その結果、ガスセンサ素子内の被測定ガス中の酸素濃度の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度を精度よく検知できる。
【0011】
一方、検知電極が第1空間内に配置されていない場合には、上記濃度勾配が変化する影響を低減することはできるが、第1ポンプセル(第1内側電極)と検知電極との距離が遠くなり過ぎて被測定ガスに対する酸素濃度検知の応答性が低下する。そこで、検知電極を第1空間に配置することで、酸素濃度検知の精度と応答性を両立することができる。
さらに、検知電極が第1空間に露出するようにしている。つまり、検知電極の主面(表面)は、第1空間内で視認可能に配置されており、拡散律速層(多孔質体)の内部には配置されていない。このため、酸素の濃度勾配が複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する拡散律速層(多孔質体)内で酸素濃度を検知することを回避し、特定ガス濃度をより一層精度よく検知できる。
【0012】
さらに、積層方向に第2内側電極と導入路とが少なくとも一部で重なっていることで、第2内側電極が導入路に近付く。これにより、第2内側電極に近い導入路近傍の酸素濃度を検知電極で検知することができ、ガスセンサ素子内を第1空間から第2空間へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響をさらに低減し、特定ガス濃度をさらに精度よく検知できる。
【0013】
本発明の第2の観点のガスセンサ素子は、軸線方向に延び、三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、三つ以上の前記セラミック層のうち、第1セラミック層と、第3セラミック層の層間に形成されると共に、外部から被測定ガスが導入される第1空間と、前記第1セラミック層と、第2セラミック層の層間に形成されると共に、前記第1空間と少なくとも一部が積層方向に重なり合う第2空間と、前記第1セラミック層を前記積層方向に貫く空間を形成すると共に、前記第1空間に導入された前記被測定ガスを前記第2空間に導入する1つの導入路と、前記第1空間内の前記被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする第1ポンプセルであり、前記第1空間に隣接する前記第3セラミック層と、前記第3セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された第1内側電極と、該第1内側電極と対をなす第1対電極とを備える第1ポンプセルと、前記第1ポンプセルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度検知セルであり、前記第1空間に隣接する前記第1セラミック層と、前記第1セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された検知電極と、該検知電極と対をなす基準電極とを備える酸素濃度検知セルと、前記酸素濃度検知セルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記第2空間内における前記被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる第2ポンプセルであり、前記第2空間に隣接する前記第2セラミック層と、前記第2セラミック層上に設けられ、前記第2空間内に晒された第2内側電極と、該第2内側電極と対をなす第2対電極とを備える第2ポンプセルと、を有するガスセンサ素子であって、前記導入路よりも前記導入方向上流側に配置され、前記第1空間を形成して前記軸線方向に延びる側壁の少なくとも一方から他の側壁に向かって、両側壁の間に隙間を設けて延び、かつ前記第1空間を前記積層方向に囲む2つの壁面に接続する仕切り壁をさらに備え、前記検知電極は、前記第1空間に露出すると共に、前記軸線方向
と交差する幅方向に見て、前記導入路と前記仕切り壁の間の領域に配置され、前記軸線方向に見て、前記仕切り壁の前記隙間と前記検知電極とが重なり、前記積層方向に前記導入路と前記第2内側電極とが少なくとも一部で重なることを特徴とする。
【0014】
このガスセンサ素子によれば、軸線方向に見て、検知電極は、導入路と仕切り壁の間の領域に配置されているので、ガスセンサ素子を小型化した場合に、第1空間の側壁と導入路との間が狭くても、これと無関係に(導入路に干渉されずに)第1空間の幅方向に検知電極を広がって形成することができる。そのため、検知電極を印刷で形成する場合の印刷ズレやその他の製造誤差を考慮しても、検知電極を導入路に近接して確実に形成することができる。又、軸線方向に仕切り壁の隙間と検知電極とが重なっているので、被測定ガスは、隙間を通って検知電極に必ず流れ、測定精度の低下を抑制できる。
その結果、ガスセンサ素子内の被測定ガス中の酸素濃度の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度を精度よく検知できる。
【0015】
又、第1の観点のガスセンサ素子と同様に、検知電極を第1空間に配置することで、酸素濃度検知の精度と応答性を両立することができる。
又、第1の観点のガスセンサ素子と同様に、酸素の濃度勾配が複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する拡散律速層(多孔質体)内で酸素濃度を検知することを回避し、特定ガス濃度をより一層精度よく検知できる。
さらに、第1の観点のガスセンサ素子と同様に、第2内側電極に近い導入路近傍の酸素濃度を検知電極で検知することができ、ガスセンサ素子内を第1空間から第2空間へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響をさらに低減し、特定ガス濃度をさらに精度よく検知できる。
【0016】
本発明の第3の観点のガスセンサ素子は、軸線方向に延び、三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、三つ以上の前記セラミック層のうち、第1セラミック層内に第2セラミック層が配置されて複合層を形成し、第3セラミック層と、前記複合層の層間に形成されると共に、外部から被測定ガスが導入される第1空間と、前記第1空間内の前記被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする第1ポンプセルであり、前記第1空間に隣接する前記第3セラミック層と、該第3セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された第1内側電極と、該第1内側電極と対をなす第1対電極とを備える第1ポンプセルと、前記第1ポンプセルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度検知セルであり、前記第1空間に隣接する前記第1セラミック層と、該第1セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された検知電極と、該検知電極と対をなす基準電極とを備える酸素濃度検知セルと、前記酸素濃度検知セルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記第1空間内における前記被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる第2ポンプセルであり、前記第1空間に隣接する前記第2セラミック層と、該第2セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された第2内側電極と、該第2内側電極と対をなす第2対電極とを備える第2ポンプセルと、を有するガスセンサ素子であって、前記第2内側電極よりも前記導入方向上流側に配置され、前記第1空間を形成して前記軸線方向に延びる側壁の少なくとも一方から他の側壁に向かって、両側壁の間に隙間を設けて延び、かつ前記第1空間を前記積層方向に囲む2つの壁面に接続する仕切り壁をさらに備え、前記検知電極は、前記第1空間に露出すると共に、前記軸線方向に見て、前記側壁と前記第2内側電極との間、又は前記他の側壁と前記第2内側電極との間の一方にのみ配置され、前記軸線方向と交差する幅方向に見て、前記検知電極と前記第2内側電極とが重なり、
前記軸線方向に見て、前記仕切り壁と前記検知電極の少なくとも一方が前記第2内側電極と重なると共に、前記第2内側電極よりも前記導入方向上流側で前記仕切り壁と前記検知電極とが隙間を設けずに重なることを特徴とする。
【0017】
このガスセンサ素子によっても、第1の観点のガスセンサ素子と同様に、ガスセンサ素子を小型化した場合に、検知電極を印刷で形成する場合の印刷ズレやその他の製造誤差を考慮しても、検知電極を導入路に近接して確実に形成することができる。そして、被測定ガスは、必ず検知電極を通って下流側の導入路へ流れるので、測定精度の低下を抑制し、ガスセンサ素子内の被測定ガス中の酸素濃度の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度を精度よく検知できる。
【0018】
又、第1の観点のガスセンサ素子と同様に、検知電極を第1空間に配置することで、酸素濃度検知の精度と応答性を両立することができる。
又、第1の観点のガスセンサ素子と同様に、酸素の濃度勾配が複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する拡散律速層(多孔質体)内で酸素濃度を検知することを回避し、特定ガス濃度をより一層精度よく検知できる。
さらに、導入路が無く、導入路の位置に直接第2内側電極が配置されているので、検知電極と第2内側電極がより近接し、濃度勾配が変化する影響をより一層低減し、特定ガス濃度をさらに精度よく検知できる。
【0019】
本発明の第4の観点のガスセンサ素子は、軸線方向に延び、三つ以上のセラミック層を積層してなるガスセンサ素子であり、三つ以上の前記セラミック層のうち、第1セラミック層内に第2セラミック層が配置されて複合層を形成し、第3セラミック層と、前記複合層の層間に形成されると共に、外部から被測定ガスが導入される第1空間と、前記第1空間内の前記被測定ガスに含まれる酸素をポンピングする第1ポンプセルであり、前記第1空間に隣接する前記第3セラミック層と、該第3セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された第1内側電極と、該第1内側電極と対をなす第1対電極とを備える第1ポンプセルと、前記第1ポンプセルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記被測定ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度検知セルであり、前記第1空間に隣接する前記第1セラミック層と、該第1セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された検知電極と、該検知電極と対をなす基準電極とを備える酸素濃度検知セルと、前記酸素濃度検知セルより前記被測定ガスの導入方向下流側に配置され、前記第1空間内における前記被測定ガス中の特定ガス濃度に応じた電流が流れる第2ポンプセルであり、前記第1空間に隣接する前記第2セラミック層と、該第2セラミック層上に設けられ、前記第1空間内に晒された第2内側電極と、該第2内側電極と対をなす第2対電極とを備える第2ポンプセルと、を有するガスセンサ素子であって、前記第2内側電極よりも前記導入方向上流側に配置され、前記第1空間を形成して前記軸線方向に延びる側壁の少なくとも一方から他の側壁に向かって、両側壁の間に隙間を設けて延び、かつ前記第1空間を前記積層方向に囲む2つの壁面に接続する仕切り壁をさらに備え、前記検知電極は、前記第1空間に露出すると共に、前記軸線方向
と交差する幅方向に見て、前記第2内側電極と前記仕切り壁の間の領域に配置され、前記軸線方向に見て、前記仕切り壁の前記隙間と前記検知電極とが重なることを特徴とする。
【0020】
このガスセンサ素子によっても、第2の観点のガスセンサ素子と同様に、ガスセンサ素子を小型化した場合に、検知電極を印刷で形成する場合の印刷ズレやその他の製造誤差を考慮しても、検知電極を導入路に近接して確実に形成することができる。そして、被測定ガスは、必ず検知電極を通って下流側の導入路へ流れるので、測定精度の低下を抑制し、ガスセンサ素子内の被測定ガス中の酸素濃度の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度を精度よく検知できる。
【0021】
又、第2の観点のガスセンサ素子と同様に、検知電極を第1空間に配置することで、酸素濃度検知の精度と応答性を両立することができる。
又、第2の観点のガスセンサ素子と同様に、酸素の濃度勾配が複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する拡散律速層(多孔質体)内で酸素濃度を検知することを回避し、特定ガス濃度をより一層精度よく検知できる。
さらに、導入路が無く、導入路の位置に直接第2内側電極が配置されているので、検知電極と第2内側電極がより近接し、濃度勾配が変化する影響をより一層低減し、特定ガス濃度をさらに精度よく検知できる。
【0022】
本発明の第2、4の観点のガスセンサ素子において、前記軸線方向に見て、前記検知電極と前記仕切り壁とが重なっていてもよい。
仕切り壁が形成された部分には検知電極を形成することができないことから、軸線方向に検知電極を第1ポンプセル(第1内側電極)に近付けるためには、仕切り壁の隙間から検知電極を第1ポンプセル(第1内側電極)側に延ばし、軸線方向に検知電極と仕切り壁とが重なるようにすればよい。
これにより、第1ポンプセル(第1内側電極)と検知電極との距離が近接し、酸素濃度検知の精度と応答性をさらに両立することができる。
【0023】
前記第1セラミック層は絶縁性の材料で形成され、前記検知電極は、前記第1セラミック層内に同一層に配置された固体電解質体の全面と接すると共に、前記検知電極の外周縁は前記固体電解質体の外周縁を覆ってもよい。
このガスセンサ素子によれば、絶縁性の第1セラミック層の中に固体電解質体が必要な部分だけに埋め込まれている形態であるため、コストダウンを実現できる。
【0024】
前記検知電極の外周縁が前記固体電解質体の外周縁よりも0.15mm以上外側に位置してもよい。
検知電極を印刷で形成する時に電極のキワ(端部)がにじんで所定の範囲まで印刷されないことがある。そこで、検知電極の外周縁が、固体電解質体の外周縁よりも所定量以上外側にはみ出すように設計することで、印刷時に検知電極の外周が小さくなっても、固体電解質体が一部露出してしまうことを抑制できる。
【0025】
本発明のガスセンサは、被測定ガス中の特定ガスを検出するガスセンサ素子と、該ガスセンサ素子を保持する主体金具と、を備えるガスセンサであって、前記ガスセンサ素子として、請求項1乃至7に記載のガスセンサ素子を備える。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、小型化を図ると共に、ガスセンサ素子の内部に導入される酸素の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度を精度よく検知できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
<本発明の第1の観点の実施形態>
図1は、本発明の第1の観点の実施形態に係るガスセンサ(NOxセンサ)1の縦断面図(軸線AXに沿って切断した断面図)、
図2は第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10の軸線AXに沿う断面図、
図3はガスセンサ素子10の分解斜視図、
図4はVs−電極122近傍の上面図である。
【0030】
ガスセンサ1は、測定対象ガスである排ガス(被測定ガス)中の特定ガス(NOx)の濃度を検出可能なガスセンサ素子10を備え、内燃機関の排気管(図示なし)に装着されて使用されるNOxセンサである。このガスセンサ1は、排気管に固定するためのネジ部21が外表面の所定位置に形成された筒状の主体金具20を備える。ガスセンサ素子10は、軸線AX方向に延びる細長板状をなし、主体金具20の内側に保持されている。
さらに詳しくは、ガスセンサ1は、ガスセンサ素子10の後端部10k(
図1において上端の部位)が挿入される挿入孔62を有する保持部材60と、この保持部材60の内側に保持された6個の端子部材とを備える。なお、
図1では、6個の端子部材のうち2個の端子部材(具体的には、端子部材75,76)のみを図示している。
【0031】
ガスセンサ素子10の後端部10kには、平面視矩形状の電極端子部13〜18(
図3参照、
図1では、電極端子部14、17のみ図示)が合計6個形成されている。電極端子部13〜18には、それぞれ、前述の端子部材が弾性的に当接して電気的に接続している。例えば、電極端子部14には、端子部材75の素子当接部75bが弾性的に当接して電気的に接続している。また、電極端子部17には、端子部材76の素子当接部76bが弾性的に当接して電気的に接続している。
さらに、6個の端子部材(端子部材75,76など)には、それぞれ、異なるリード線71が電気的に接続されている。例えば、
図1に示すように、端子部材75のリード線把持部77によって、リード線71の芯線が加締められて把持される。また、端子部材76のリード線把持部78によって、他のリード線71の芯線が加締められて把持される。
【0032】
主体金具20は、軸線AX方向に貫通する貫通孔23を有する筒状部材である。この主体金具20は、径方向内側に突出する形態で貫通孔23の一部を構成する棚部25を有している。主体金具20は、ガスセンサ素子10の先端部10sを自身の先端側外部(
図1において下方)に突出させると共に、ガスセンサ素子10の後端部10kを自身の後端側外部(
図1において上方)に突出させた状態で、ガスセンサ素子10を貫通孔23内に保持している。
また、主体金具20の貫通孔23の内部には、環状のセラミックホルダ42、滑石粉末を環状に充填してなる2つの滑石リング43,44、及びセラミックスリーブ45が配置されている。詳細には、ガスセンサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で、セラミックホルダ42、滑石リング43,44、及びセラミックスリーブ45が、この順に、主体金具20の軸線方向先端側(
図1において下端側)から軸線方向後端側(
図1において上端側)にわたって重ねて配置されている。
【0033】
また、セラミックホルダ42と主体金具20の棚部25との間には、金属カップ41が配置されている。また、セラミックスリーブ45と主体金具20のカシメ部22との間には、加締リング46が配置されている。なお、主体金具20のカシメ部22が、加締リング46を介してセラミックスリーブ45を先端側に押し付けるように、加締められている。
主体金具20の先端部20bには、ガスセンサ素子10の先端部10sを覆うように、複数の孔を有する金属製(具体的にはステンレス)の外部プロテクタ31及び内部プロテクタ32が、溶接によって取り付けられている。一方、主体金具20の後端部には、外筒51が溶接によって取り付けられている。外筒51は、軸線AX方向に延びる筒状をなし、ガスセンサ素子10を包囲している。
【0034】
保持部材60は、絶縁性材料(具体的にはアルミナ)からなり、軸線AX方向に貫通する挿入孔62を有する筒状部材である。挿入孔62内には、前述した6個の端子部材(端子部材75,76など)が配置されている(
図1参照)。保持部材60の後端部には、径方向外側に突出する鍔部65が形成されている。保持部材60は、鍔部65が内部支持部材53に当接する態様で、内部支持部材53に保持されている。なお、内部支持部材53は、外筒51のうち径方向内側に向けて加締められた加締部51gにより、外筒51に保持されている。
保持部材60の後端面61上には、絶縁部材90が配置されている。絶縁部材90は、電気絶縁性材料(具体的にはアルミナ)からなり、円筒状をなす。この絶縁部材90には、軸線AX方向に貫通する貫通孔91が合計6個形成されている。この貫通孔91には、前述した端子部材のリード線把持部(リード線把持部77,78など)が配置されている。
【0035】
また、外筒51のうち軸線方向後端部(
図1において上端部)に位置する後端開口部51cの径方向内側には、フッ素ゴムからなる弾性シール部材73が配置されている。この弾性シール部材73には、軸線AX方向に延びる円筒状の挿通孔73cが、合計6個形成されている。各々の挿通孔73cは、弾性シール部材73の挿通孔面73b(円筒状の内壁面)によって構成されている。各々の挿通孔73cには、リード線71が1本ずつ挿通されている。各々のリード線71は、弾性シール部材73の挿通孔73cを通じて、ガスセンサ1の外部に延出している。弾性シール部材73は、外筒51の後端開口部51cを径方向内側に加締めることで径方向に弾性圧縮変形し、これにより、挿通孔面73bとリード線71の外周面71bとを密着させて、挿通孔面73bとリード線71の外周面71bとの間を水密に封止している。
【0036】
一方、
図2に示すように、ガスセンサ素子10は、軸線AX方向に延びる三つの板状の固体電解質体111、121、131と、これらの間に配置された絶縁体140、145とを備え、これらが積層方向に積層された構造を有する。さらに、ガスセンサ素子10には、固体電解質体131の裏面側に、ヒータ161が積層されている。なお、
図2において、積層方向に見て、絶縁層115側を「表面側」と説明し、ヒータ161側を「裏面側」と説明する。又、軸線AX方向に見て、Ip1セル110側を「先端側」と説明し、Ip2セル130側を「後端側」と説明する。
さらに、導入方向Fの上流側及び下流側を、適宜、導入方向Fを省略して「上流側及び下流側」と称する。
【0037】
このヒータ161は、アルミナを主体とする板状の絶縁体162、163と、その間に埋設されたヒータパターン164(Ptを主体としている)とを備えている。
固体電解質体111、121、131は、固体電解質であるジルコニアからなり、酸素イオン伝導性を有する。固体電解質体111、121、131はこの順で積層され、固体電解質体111、121の間に絶縁体140が介装されている。絶縁体140には貫通孔140hが形成され(
図3参照)、この貫通孔140hが二つの固体電解質体111、121の層間に形成された第1空間150となる。
さらに、固体電解質体121、131の間に絶縁体145が介装されている。絶縁体145には貫通孔145cが形成され(
図3参照)、この貫通孔145cが二つの固体電解質体121、131の層間に形成された第2空間160となる。
ここで、固体電解質体111、121、131が特許請求の範囲の「セラミック層」に相当する。
【0038】
そして、積層方向に第1空間150と第2空間160の間に配置された固体電解質体121には、積層方向に円柱状の導入路125が貫通しており、第1空間150と第2空間160とは導入路125を介して連通している。このようにして、第1空間150に導入された被測定ガスは、軸線AX方向に沿って流れた後、積層方向に沿って導入路125を経由して第2空間160に導入される。被測定ガスの導入方向(流れ方向)を符号Fで示す。
なお、
図3に示すように、第1空間150の側方にガス透過性及び透水性を有する第1多孔質体151が設けられており、第1空間150は第1多孔質体151を通じてガスセンサ素子10の外部と連通し、被測定ガスを導入可能になっている。第1多孔質体151は、ガスセンサ素子10の外部との仕切りとして、第1空間150内への排ガスの単位時間あたりの流通量を制限する。
又、本実施形態では、積層方向から見たとき、導入路125が第1空間150及び第2空間160よりも小径であり、第1空間150及び第2空間160よりも導入路125が窄まっている。又、導入路125は、幅方向(軸線AX方向と交差する方向)の中心よりも紙面手前側にずれて配置されている(
図3、
図4参照)。
【0039】
固体電解質体111の表面側には、多孔質のIp1+電極112が設けられている。また、固体電解質体111の裏面側には、多孔質のIp1−電極113が設けられている。又、Ip1+電極112にはIp1+リード112r(
図3参照)が接続されている。又、Ip1−電極113にはIp1−リード113r(
図3参照)が接続されている。この固体電解質体111、Ip1+電極112、及びIp1−電極113によって、Ip1セル110を構成している。
ここで、Ip1+電極112、Ip1−電極113、及びIp1セル110がそれぞれ特許請求の範囲の「第1対電極」、「第1内側電極」、「第1ポンプセル」に相当する。
また、Ip1+電極112とIp1+リード112rの表面側には、アルミナ等からなる絶縁層115が積層され、絶縁層115の先端側にIp1+電極112を取り囲む略矩形の貫通孔が設けられ、この貫通孔に多孔質層190が埋設されている。このようにして、多孔質層190を介してIp1+電極112と外部との間でガスが出入可能になっている。
このIp1セル110は、Ip1+電極112、Ip1−電極113間に流すポンプ電流Ip1に応じて、Ip1+電極112の接する雰囲気(ガスセンサ素子10の外部の雰囲気)とIp1−電極113の接する雰囲気(第1空間150内の雰囲気)との間で酸素の汲み出し及び汲み入れ(いわゆる酸素ポンピング)を行う。
【0040】
固体電解質体121は、絶縁体140を挟んで、固体電解質体111と積層方向に対向するように配置されている。固体電解質体121の表面側には多孔質のVs−電極122が設けられている。より詳細には、Vs−電極122は、第1空間150内において、Ip1−電極113よりも被測定ガスの導入方向Fの下流側(後端側)に設けられている(
図3、
図4参照)。
また、固体電解質体121の裏面側には、多孔質のVs+電極123が設けられている。又、Vs−電極122にはVs−リード122r(
図3参照)が接続され、Vs+電極123にはVs+リード123r(
図3参照)が接続されている。
この固体電解質体121、Vs−電極122、及びVs+電極123によって、Vsセル120を構成している。このVsセル120は、主として、固体電解質体121により隔てられた雰囲気(電極122の接する第1空間150内の雰囲気と、電極123の接する後述する基準酸素室170内の雰囲気)間の酸素分圧差に応じて起電力を発生する。
さらに、詳しくは後述するが、第1空間150を仕切るようにして、第1空間150を積層方向に囲む2つの壁面w1、w2にそれぞれ接続した仕切り壁143が形成されている。この仕切り壁143は絶縁体140の一部をなしている。
ここで、Vs−電極122、Vs+電極123、Vsセル120がそれぞれ特許請求の範囲の「検知電極」、「基準電極」、「酸素濃度検知セル」に相当する。
【0041】
固体電解質体131は、絶縁体145を挟んで、固体電解質体121と積層方向に対向するように配置されている。固体電解質体131の表面側には、多孔質のIp2+電極132と多孔質のIp2−電極133が設けられている。又、Ip2+電極132にはIp2+リード132r(
図3参照)が接続され、Ip2−電極133にはIp2−リード133r(
図3参照)が接続されている。
Ip2+電極132とVs+電極123との間には、孤立した小空間としての基準酸素室170が形成されている。この基準酸素室170は、絶縁体145に形成されている開口部145bにより構成されている。なお、基準酸素室170内には、セラミックス製の多孔質体が配置されている。
また、Ip2−電極133は、第2空間160内に配置されている。
【0042】
固体電解質体131、Ip2+電極132、及びIp2−電極133によって、窒素酸化物(NOx)濃度を検知するためのIp2セル130を構成している。このIp2セル130は、第2空間160内で分解されたNOx由来の酸素(酸素イオン)を、固体電解質体131を通じて、基準酸素室170に移動させる。このとき、電極132及び電極133の間には、第2空間160内に導入された排ガス(被測定ガス)に含まれる窒素酸化物の濃度に応じた電流が流れる。
ここで、Ip2+電極132、Ip2−電極133、Ip2セル130がそれぞれ特許請求の範囲の「第2対電極」、「第2内側電極」、「第2ポンプセル」に相当する。
【0043】
ここで、本実施形態のガスセンサ1によるNOx濃度検知について、簡単に説明する。
ガスセンサ素子10の固体電解質体111、121、131は、ヒータパターン164の昇温に伴い加熱され、活性化する。これにより、Ip1セル110、Vsセル120、及びIp2セル130が動作するようになる。
排気通路(図示なし)内を流通する排ガス(測定対象ガス)は、第1多孔質体151による流通量の制限を受けつつ第1空間150内に導入される。このとき、Vsセル120には、Vs+電極123側からVs−電極122側へ微弱な電流Icpが流されている。このため、排ガス中の酸素は、負極側となる第1空間150内のVs−電極122から電子を受け取ることができ、酸素イオンとなって固体電解質体121内を流れ、基準酸素室170内に移動する。つまり、Vs−電極122、Vs+電極123間で電流Icpが流されることによって、第1空間150内の酸素が基準酸素室170内に送り込まれる。
【0044】
第1空間150内に導入された排ガスの酸素濃度が所定値より薄い場合、Ip+電極112側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、ガスセンサ素子10の外部から第1空間150内へ酸素の汲み入れを行う。一方、第1空間150内に導入された排ガスの酸素濃度が所定値より濃い場合、Ip−電極113側が負極となるようにIp1セル110に電流Ip1を流し、第1空間150内からガスセンサ素子10外部へ酸素の汲み出しを行う。
このように、第1空間150において酸素濃度が調整された被測定ガスは、導入路125を通じて、第2空間160内に導入される。第2空間160内でIp2−電極133と接触した被測定ガス中の特定ガス成分(NOx成分)は、Ip2−電極133、Ip2+電極132間に電圧Vp2を印加されることで、Ip2−電極133上で窒素と酸素に分解(還元)され、分解された酸素は、酸素イオンとなって固体電解質体131内を流れ、基準酸素室170内に移動する。この際、Ip2セル130を流れる電流Ip2を検出し、その電流値に基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を検知することができる。
【0045】
次に、
図4を参照し、Vs−電極122について説明する。
上述のように、導入路125よりも被測定ガスの導入方向Fの上流側(先端側)に仕切り壁143が配置されている。この仕切り壁143は、第1空間150を形成して軸線AX方向に延びる絶縁体140の一方の側壁140s1から他の側壁140s2に向かって延び、側壁140s2との間に隙間GAを有する。又、
図2に示すように、仕切り壁143は、第1空間150を積層方向に囲む2つの壁面w1、w2にそれぞれ接続し、隙間GAを除いて第1空間150と導入路125とを仕切っている。
なお、本例では、Vs−電極122の表面側の一部に、仕切り壁143の側壁140s2側が乗り上げるように積層されている。
【0046】
又、第1空間150を形成して軸線AX方向に見て、導入路125は中心よりも側壁140s1側にずれて配置されており、側壁140s2と導入路125との最小間隔D2の方が、側壁140s1と導入路125との最小間隔D1よりも広い。そして、軸線AX方向に見て、Vs−電極122は、側壁140s1と導入路125との間(導入路125の領域S)には配置されず、より間隔の広い側壁140s2と導入路125との間の領域Sにのみ配置されている。なお、「のみ」とは、間隔D1側の領域SにVs−電極122が存在しないことをいい、領域Sを外れて側壁140s1と導入路125との間隔がD1よりも広い部分にはVs−電極122が形成されてもよいことを意味する。
又、軸線AX方向と交差する幅方向Tに見て、Vs−電極122は、導入路125(領域S)と重なっている。つまり、被測定ガスが流れ込む領域Sのすべてに渡って、Vs−電極122が形成されている。なお、本例ではVs−電極122は、さらに領域Sよりも導入方向Fの上流側に延びて仕切り壁143の先端よりも先端側にはみ出し、仕切り壁143の下流側(後端側)の端部143eに少なくとも接すると共に、導入路125よりも下流側(後端側)まで延びている。このように、領域Sの先後にVs−電極122が延びていると、Vs−電極122に被測定ガスがより確実に接触するので好ましい。特に、幅方向Tに見て、Vs−電極122が仕切り壁143に接していると、より好ましい。
【0047】
一方、軸線AX方向に見て、仕切り壁143とVs−電極122の少なくとも一方(本例では仕切り壁143)が導入路125と重なると共に、導入路125よりも上流側で仕切り壁143とVs−電極122とが隙間を設けずに重なっている(本例では両者が接している)。
さらに、
図2に示すように、積層方向にIp2−電極133と導入路125とが少なくとも一部で重なっている。
【0048】
このように、Vs−電極122が間隔の狭い間隔D1側の領域Sには配置されず、より間隔の広い間隔D2側の領域Sに配置されている。従って、第1空間150及び導入路125の寸法を小さくする、つまりガスセンサ素子10を小型化した場合に、Vs−電極122を印刷で形成する場合の印刷ズレやその他の製造誤差を考慮しても、間隔の広い間隔D2側の領域Sに、Vs−電極122を導入路125に近接して確実に形成することができる。
【0049】
又、このように、間隔D1側と間隔D2側の領域Sの一方にのみVs−電極122を形成する場合には、Vs−電極122を形成しない側の領域Sに被測定ガスが流れて導入路125へ導入されると、反対側のVs−電極122に被測定ガスが十分に流れずに測定精度が低下する。そこで、隙間GAを除く第1空間150を仕切り壁143で仕切ることで、第1空間150の上流側を流れる被測定ガスは、必ず隙間GAを通って下流側の導入路125へ流れる。
【0050】
このとき、本例のように、軸線AX方向に見て仕切り壁143が導入路125と重なっており、隙間GAが導入路125よりも間隔D2側に存在するようにすれば、被測定ガスは隙間GAから必ず間隔D2側の導入路125(の領域S)に流れ、領域Sに重なるVs−電極122に必ず接触する。
一方、軸線AX方向に見て、Vs−電極122が導入路125と重なっている場合には、隙間GAを通った被測定ガスは必ずVs−電極122に接触する。
従って、いずれにせよ、被測定ガスは隙間GAを通って必ずVs−電極122に流れるので、間隔D1側と間隔D2側の領域Sの一方にのみVs−電極122を形成することに起因した測定精度の低下を抑制できる。そして、ガスセンサ素子10内を第1空間150から第2空間160へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度(NOx濃度)を精度よく検知できる。
【0051】
さらに、積層方向にIp2−電極133と導入路125とが少なくとも一部で重なっていることで、特定ガス濃度(NOx濃度)を検知するIp2−電極133が導入路125に近付く。これにより、Ip2−電極133に近い導入路125近傍の酸素濃度をVs−電極122で検知することができ、ガスセンサ素子10内を第1空間150から第2空間160へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響をさらに低減し、特定ガス濃度(NOx濃度)をさらに精度よく検知できる。
【0052】
さらに、本発明においては、Vs−電極122は、第1空間150に露出するようにしている。つまり、Vs−電極122は、第1空間150内で視認可能に配置されており、拡散律速層(多孔質体)の内部にVs−電極122が配置されていない。このため、酸素の濃度勾配Grが複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する拡散律速層(多孔質体)内で酸素濃度を検知することを回避し、特定ガス濃度(NOx濃度)をより一層精度よく検知できる。
なお、Vs−電極122が第1空間150内に配置されていない(例えば、導入路125の壁面にVs−電極122が形成されている)場合には、濃度勾配が変化する影響を低減することはできるが、Ip1−電極113とVs−電極122の距離が遠くなり過ぎて被測定ガスに対する酸素濃度検知の応答性が低下する。そこで、Vs−電極122を少なくとも第1空間150側に配置することで、酸素濃度検知の精度を向上させることができる。
【0053】
なお、
図4の例では、幅方向Tに見て、Vs−電極122と仕切り壁143とが重なっている。仕切り壁143が形成された部分にはVs−電極122を形成することができないことから、上述のように軸線AX方向にVs−電極122をIp1−電極113に近付けるためには、仕切り壁143の隙間GAからVs−電極122をIp1−電極113側に延ばし、幅方向TにVs−電極122と仕切り壁143とが重なるようにすることが好ましい。
これに対し、後述する
図5の例では、幅方向TにVs−電極222と仕切り壁243とが重ならず、
図4の例に比べるとVs−電極122がIp1−電極113から遠くなる。
【0054】
次に、
図5を参照し、本発明の第1の観点の実施形態の変形例について説明する。なお、この変形例は、仕切り壁243及びVs−電極222の構成が異なること以外は、第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10と同一であるので、同一部分の構成については適宜同一符号を付して説明を省略する。
図5の例では、軸線AX方向に見て、仕切り壁243は側壁140s2に向かってさらに延び、
図4の例に比べて隙間GAが狭い。そして、軸線AX方向に見て、Vs−電極222は隙間GAと重ならず、かつ幅方向Tに見て、Vs−電極222は仕切り壁243の端部243eと一部離間して仕切り壁243の下流側に配置されている。この場合も、幅方向Tに見て、導入路125よりも上流側で仕切り壁243とVs−電極222とが隙間を設けずに重なっていることになる。なお、本例では、Vs−電極222は先端側が幅方向Tに対して斜めになっており、Vs−電極222の尖った先端部位が仕切り壁243の端部243eと重なり、それ以外の先端部位は仕切り壁243の端部243eと離間している。このように、Vs−電極222を斜めにして端部243eと一部重なるようにすることで、生産上のバラツキで軸線AX方向にVs−電極222が端部243eと完全に離間してしまうことを抑制できる。又、Vs−電極222を斜めにすることで、Vs−電極222を矩形にして軸線AX方向にVs−電極222を端部243eと完全に重ならせる場合に比べて、Vs−電極222の材料である貴金属の使用量を削減できる。
【0055】
そして、
図5の例でも、軸線AX方向に仕切り壁243が導入路125と重なり、隙間GAが導入路125よりも間隔D2側に存在するので、被測定ガスは隙間GAから必ず間隔D2側の導入路125(領域S)に流れ、Vs−電極222に必ず接触する。その結果、被測定ガスが隙間GAを通って必ずVs−電極122に流れるので、測定精度の低下を抑制できる。
【0056】
なお、
図6のように、軸線AX方向に見て、導入路125よりも上流側で仕切り壁243とVs−電極222とが少なくとも一部で重ならず、隙間G2を設けるようにすると、被測定ガスは隙間GAから隙間G2を通って(Vs−電極222を通らずに)導入路125(領域S)に流れてしまうので、被測定ガスがVs−電極122に十分に流れず、測定精度が低下するので不適である。
【0057】
<本発明の第2の観点の実施形態>
次に、
図7、
図8を参照し、本発明の第2の観点の実施形態について説明する。なお、
図7の例は、仕切り壁343及びVs−電極322の構成が異なることと、導入路125の位置が異なること以外は、第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10と同一であるので、同一部分の構成については適宜同一符号を付して説明を省略する。
図7は第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10Bの軸線AXに沿う断面図、
図8はVs−電極322近傍の上面図である。
【0058】
図7において、ガスセンサ素子10Bは仕切り壁343及びVs−電極322の構成が異なること以外は、第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10と同一である。なお、Vs−電極322を含むVsセルを符号120Bで表す。
【0059】
図8に示すように、導入路125は幅方向Tの中心に配置されており、側壁140s2と導入路125との間隔と、側壁140s1と導入路125との間隔は共にD1である。
又、仕切り壁343は、両方の側壁140s1、140s2から互いに他の側壁に向かって延び、幅方向Tの中央に導入路125の一部と重なる隙間GAを設けている。そして、軸線AX方向に見て、Vs−電極322は、側壁140s1、140s2にそれぞれ接するように延びており、軸線AX方向に見て、仕切り壁343の隙間GAとVs−電極322とが重なっている。
一方、幅方向Tに見て、Vs−電極322は、導入路125と仕切り壁343の間の領域Rに配置されている。なお、Vs−電極322は、領域Rを超えて仕切り壁343及び/又は導入路125と接するように延びていてもよい。
さらに、
図7に示すように、積層方向にIp2−電極133と導入路125とが重なっている。
【0060】
このように、Vs−電極122は導入路125よりも被測定ガスの導入方向Fの上流側に配置されているので、領域Sの間隔D1が狭くても、これと無関係に(導入路に干渉されずに)幅方向Tに広がって形成することができる。従って、第1空間150及び導入路125の寸法を小さくする、つまりガスセンサ素子10を小型化した場合に、Vs−電極122を印刷で形成する場合の印刷ズレやその他の製造誤差を考慮しても、Vs−電極122を導入路125に近接して確実に形成することができる。
【0061】
又、軸線AX方向に見て、仕切り壁343の隙間GAとVs−電極322とが重なっているので、被測定ガスは、隙間GAを通ってVs−電極322に必ず接触する。従って、被測定ガスが隙間GAを通って必ずVs−電極122に流れるので、測定精度の低下を抑制できる。
【0062】
さらに、積層方向にIp2−電極133と導入路125とが重なっていることで、ガスセンサ素子10内を第1空間150から第2空間160へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度(NOx濃度)を精度よく検知できる。
さらに、Vs−電極122は、第1空間150に露出するので、第1の観点の実施形態と同様、酸素の濃度勾配Grが複雑な挙動となって酸素濃度が大きく変動する拡散律速層(多孔質体)内で酸素濃度を検知することを回避し、特定ガス濃度(NOx濃度)をより一層精度よく検知できる。
【0063】
次に、
図9を参照し、本発明の第2の観点の実施形態の変形例について説明する。なお、この変形例は、仕切り壁443及びVs−電極422の構成が異なること以外は、
図8の実施形態と同一であるので、同一部分の構成については適宜同一符号を付して説明を省略する。
図9の例では、
図8の例に比べて仕切り壁443の隙間GAが狭い。さらに、軸線AX方向に見て、Vs−電極422は導入路125よりも内側に形成されつつ、軸線AX方向に見て隙間GAとVs−電極422とが重なっている。
なお、Vs−電極422のVs−リード422は、Vs−電極422の幅方向Tの一端から幅方向Tの外側に延びた後、被測定ガスの導入方向Fの下流側(後端側)に延びている。ここで、電極よりも幅が狭くなった部位をリードとする。
【0064】
図9の例でも、領域Sの間隔D1が狭くても、これと無関係にVs−電極422を幅方向Tに広がって形成することができる。又、軸線AX方向に見て仕切り壁443の隙間GAとVs−電極422とが重なっているので、被測定ガスは、隙間GAを通ってVs−電極322に必ず接触する。従って、被測定ガスが隙間GAを通って必ずVs−電極122に流れるので、測定精度の低下を抑制できる。
なお、
図9の例では、Vs−電極422は領域Sのいずれにも形成されておらず、Vs−電極322に比べて小さいので、電極材料を削減してコストダウンを図ることができる。
【0065】
なお、
図10のように、軸線AX方向に隙間GAとVs−電極422とが重なっていない(隙間GAの少なくとも一部にVs−電極422が形成されていない部分がある)ようにすると、被測定ガスは隙間GAからVs−電極422を通らずに導入路125(領域S)に流れてしまうので、被測定ガスがVs−電極422に十分に流れず、測定精度が低下するので不適である。
【0066】
<本発明の第3の観点の実施形態>
次に、
図11、
図12を参照し、本発明の第3の観点の実施形態について説明する。なお、第3の観点の実施形態は、導入路125を無くし、固体電解質体131Dが固体電解質体121Dに絶縁体147Dを介して埋め込まれて同一層をなす複合層201Dを形成し、固体電解質体131Dの表裏にIp2−電極133とIp2+電極132を対向して配置したこと以外は、
図2の第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10と同一であるので、同一部分の構成については適宜同一符号を付して説明を省略する。
なお、固体電解質体131Dが固体電解質体121Dと同一層でなくてもよい。
図11は第3の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10Dの軸線AXに沿う断面図、
図12はVs−電極122近傍の上面図である。
【0067】
図11において、ガスセンサ素子10Dは、導入路125が無く、固体電解質体131Dが固体電解質体121Dに絶縁体147Dを介して面一に埋め込まれて同一層をなす複合層201Dを形成し、固体電解質体131Dの表裏にIp2−電極133とIp2+電極132を対向して配置したこと以外は、第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10と同一である。
具体的には、
図12に示すように、固体電解質体121Dの所定部位が矩形にくり抜かれ、このくり抜き部分に枠状の絶縁体147Dを介して、矩形の固体電解質体131Dが埋め込まれている。また、孤立した小空間としての基準酸素室170Dは、Vs+電極123の裏側、及び固体電解質体131Dの裏側に形成されたIp2+電極132に対向する絶縁体145をくり抜いて形成されている(
図11参照)。基準酸素室170D内には、セラミックス製の多孔質体が配置されている。
【0068】
なお、Vs−電極122と固体電解質体121Dを含むVsセルを符号120Dで表す。固体電解質体131Dを含むIp2セルを符号130Dで表す。
又、固体電解質体121D、131Dがそれぞれ特許請求の範囲の「第1セラミック層」、「第2セラミック層」に相当する。固体電解質体111が特許請求の範囲の「第3セラミック層」に相当する。
【0069】
図12に示すように、仕切り壁143及びVs−電極122は、
図4の第1の観点の実施形態と同一に配置されている。又、
図4の導入路125と略同一の位置に矩形のIp2−電極133が配置されている。これにより、幅方向Tに見て、Vs−電極122とIp2−電極133とが重なる。
又、仕切り壁143より下流側で、固体電解質体121Dの側壁140s1側に寄った部位が矩形にくり抜かれ、このくり抜き部分に矩形枠状の絶縁体147Dが介装され、絶縁体147Dの内側に矩形の固体電解質体131Dが埋め込まれている。これにより、同一層である複合層201D中で、固体電解質体121D、131Dが絶縁体147Dにより絶縁されている。
【0070】
ガスセンサ素子10Dにおいても、ガスセンサ素子10と同様、ガスセンサ素子内を第1空間150から第2空間160へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度(NOx濃度)を精度よく検知できる。
特に、ガスセンサ素子10Dの場合、導入路125が無く、導入路125の位置に直接Ip2−電極133が配置されているので、Vs−電極122とIp2−電極133がより近接し、濃度勾配が変化する影響をより一層低減できる。
【0071】
<本発明の第4の観点の実施形態>
次に、
図13、
図14を参照し、本発明の第4の観点の実施形態について説明する。なお、第4の観点の実施形態は、導入路125を無くし、固体電解質体131Eが固体電解質体121Eに絶縁体147Eを介して埋め込まれて同一層をなす複合層201Eを形成し、固体電解質体131Eの表裏にIp2−電極133とIp2+電極132を対向して配置したこと以外は、
図7の第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10Bと同一であるので、同一部分の構成については適宜同一符号を付して説明を省略する。
なお、固体電解質体131Eが固体電解質体121Eと同一層でなくてもよい。
図13は第4の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10Eの軸線AXに沿う断面図、
図14はVs−電極322近傍の上面図である。
【0072】
図13において、ガスセンサ素子10Eは、導入路125が無く、固体電解質体131Eが固体電解質体121Eに絶縁体147Eを介して面一に埋め込まれて同一層をなす複合層201Eを形成し、固体電解質体131Eの表裏にIp2−電極133とIp2+電極132を対向して配置したこと以外は、
図7の第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子10Bと同一である。
具体的には、
図14に示すように、固体電解質体121Eの所定部位が矩形にくり抜かれ、このくり抜き部分に枠状の絶縁体147Eを介して、矩形の固体電解質体131Eが埋め込まれている。また、孤立した小空間としての基準酸素室170Eは、Vs+電極123の裏側、及び固体電解質体131Eの裏側に形成されたIp2+電極132に対向する絶縁体145をくり抜いて形成されている(
図13参照)。基準酸素室170E内には、セラミックス製の多孔質体が配置されている。
【0073】
なお、Vs−電極322と固体電解質体121Eを含むVsセルを符号120Eで表す。固体電解質体131Eを含むIp2セルを符号130Eで表す。
又、固体電解質体121E、131Eがそれぞれ特許請求の範囲の「第1セラミック層」、「第2セラミック層」に相当する。固体電解質体111が特許請求の範囲の「第3セラミック層」に相当する。
【0074】
図14に示すように、仕切り壁343及びVs−電極322が
図8の第2の観点の実施形態と同一に配置されている。又、
図8の導入路125と略同一の位置に矩形のIp2−電極133が配置されている。なお、仕切り壁343より下流側で、固体電解質体121Eの幅方向Tの中央部位が矩形にくり抜かれ、このくり抜き部分に矩形枠状の絶縁体147Eが介装され、絶縁体147Eの内側に矩形の固体電解質体131Eが埋め込まれている。これにより、同一層である複合層201E中で、固体電解質体121E、131Eが絶縁体147Eにより絶縁されている。
【0075】
ガスセンサ素子10Eにおいても、ガスセンサ素子10と同様、ガスセンサ素子内を第1空間150から第2空間160へ流れる酸素の濃度勾配が変化する影響を低減し、特定ガス濃度(NOx濃度)を精度よく検知できる。
特に、ガスセンサ素子10Eの場合、導入路125が無く、導入路125の位置に直接Ip2−電極133が配置されているので、Vs−電極322とIp2−電極133がより近接し、濃度勾配が変化する影響をより一層低減できる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
例えば、上記実施形態では、第1空間150と第2空間160との間には、これら空間の仕切りとして、被測定ガスの単位時間あたりの流通量を制限する拡散律速層(多孔質体)が設けられていないが、この拡散律速層を設けてもよい。但し、上述のように拡散律速層内では酸素濃度が大きく変動して酸素濃度の検知精度が低下するため、Vs−電極122、222、322を避けて拡散律速層を設けることが必要である。具体的には、例えば、被測定ガスの導入方向Fに沿って、Ip1−電極113とVs−電極122、222、322の間に拡散律速層を設けたり、Vs−電極122、222、322とIp2−電極133の間に拡散律速層を設けることができる。
又、ガスセンサ素子は三つ以上のセラミック層を積層して構成されていればよく、セラミック層の積層数は三つに限定されない。
又、導入路や各電極の形状は限定されず、例えば、円形、矩形の他、不定形とすることができる。
又、上記実施形態では、第1セラミック層の全てを固体電解質体で形成したが、これに限られず、第1セラミック層をアルミナ等の絶縁体で形成し、一部をくり抜いて固体電解質体を埋め込む構成を採ってもよい。上記構成によれば、ジルコニアよりも価格が安いアルミナを主体として第1セラミック層を形成するため、製造コストのさらなる低減化を図ることができる。
又、このときに検知電極の外周縁が埋め込まれた固体電解質体の外周縁よりも0.15mm以上外側に位置する構成を採ってもよい。上記構成によれば、検知電極の印刷時にキワがにじんだとしても固体電解質体が検知電極から露出してしまうことを抑制することができる。