(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車輪を駆動する電動モータと、前記電動モータの回転を減速して出力する減速機と、前記減速機の出力を前記車輪に伝達する車輪ハブ軸受部と、前記減速機を収容するケーシングとを備えたインホイールモータ駆動装置が内部に配置される前記車輪の回転を検出する車輪速検出装置であって、
前記インホイールモータ駆動装置の前記車輪ハブ軸受部は、車幅方向外側に凹むように形成されたハット部を有するブレーキロータと同軸に結合する車輪ハブを含んでおり、
前記ハット部内の車幅方向内側を向く面に、円周方向に磁束変化を生じさせる被検出部を形成し、前記被検出部の磁束変化を読み取ることによって前記ブレーキロータの回転を検出する回転センサを設けたことを特徴とする、車輪速検出装置。
前記ブレーキロータは、前記ハット部の前記内側面を有する第1部材と、前記第1部材とは別体であって、前記第1部材よりも車幅方向内側に位置して前記第1部材の外周部に連結された第2部材とを含む、請求項3に記載の車輪速検出装置。
前記ブレーキロータは、前記ハット部の前記内側面を有する第1部材と、前記第1部材とは別体であって、前記第1部材よりも車幅方向内側に位置して前記第1部材の径方向外側端部に連結された第2部材とを含み、
前記被検出部は、前記第1部材と前記第2部材との間に共締めされた環状部材によって構成されている、請求項2に記載の車輪速検出装置。
前記回転センサは、前記インホイールモータ駆動装置の前記ケーシング、または、前記ケーシングに固定されたナックルに取り付けられている、請求項1〜5のいずれかに記載の車輪速検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車内空間を犠牲にすることなく、インホイールモータ駆動装置と車体の車幅方向外側に形成されるホイールハウスの内壁との干渉を回避するには、インホイールモータ駆動装置の車軸方向長さを短くする必要がある。加えて、インホイールモータ駆動装置を転舵輪に搭載する場合、転舵角を犠牲にすることなく装置を配置するには、非転舵輪に搭載する場合よりもインホイールモータ駆動装置の車軸方向長さをさらに短くする必要がある。
【0006】
特許文献1に開示された車輪速検出装置では、センシング部品が車幅方向内側から車輪ハブに圧入固定され、回転センサがセンシング部品の径方向外側に配置されている。この場合、減速機構の配置に制限が生じるため、インホイールモータ駆動装置の軸方向寸法が大きくなる。したがって、特許文献1の技術では、ホイールハウスの内壁または懸架部品との干渉が生じるおそれがある。
【0007】
これに対し、特許文献2に開示された車輪速検出装置では、ハブフランジの外周面が、被検出面(センサターゲット)となっているため、軸方向寸法の拡大を抑制できる。しかしながら、ハブフランジはブレーキディスクのハット部の内側面(車幅方向内側を向く面)に取り付けられることから、ハブフランジの外周面に対面するように回転センサを配置すると、ハット部の径方向寸法を拡大しなくてはならない。この場合、ブレーキディスク(ブレーキロータ)自体が大径となるため、ばね下重量の増加による車両の乗り心地および走行性能の低下という問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、インホイールモータ駆動装置の軸方向寸法、および、ブレーキロータの径方向寸法の拡大を防止することが可能な車輪速検出装置およびインホイールモータ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従う車輪速検出装置は、インホイールモータ駆動装置が内部に配置される車輪の回転を検出する車輪速検出装置である。インホイールモータ駆動装置は、車輪を駆動する電動モータと、電動モータの回転を減速して出力する減速機と、減速機の出力を車輪に伝達する車輪ハブ軸受部と、減速機を収容するケーシングとを備えており、車輪ハブ軸受部は、車幅方向外側に凹むように形成されたハット部を有するブレーキロータと同軸に結合する車輪ハブを含む。この車輪速検出装置は、ハット部内の車幅方向内側を向く面に、円周方向に磁束変化を生じさせる被検出部を形成し、被検出部の磁束変化を読み取ることによってブレーキロータの回転を検出する回転センサを設けたことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、ハット部は、車輪ハブのフランジ部が接触状態で固定される内側面を有しており、被検出部は、フランジ部よりも径方向外側かつフランジ部と軸方向に重なる位置に形成されている。
【0011】
好ましくは、被検出部は、ハット部の内側面に形成されている。
【0012】
この場合、ブレーキロータは、ハット部の内側面を有する第1部材と、第1部材とは別体であって、第1部材よりも車幅方向内側に位置して第1部材の外周部に連結された第2部材とを含んでいてもよい。
【0013】
あるいは、ブレーキロータが、ハット部の内側面を有する第1部材と、第1部材とは別体であって、第1部材よりも車幅方向内側に位置して第1部材の径方向外側端部に連結された第2部材とを含む場合、被検出部は、第1部材と第2部材との間に共締めされた環状部材によって構成されていてもよい。
【0014】
好ましくは、回転センサは、インホイールモータ駆動装置のケーシング、または、ケーシングに固定されたナックルに取り付けられている。
【0015】
この発明の他の局面に従うインホイールモータ駆動装置は、上記した車輪速検出装置を搭載することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インホイールモータ駆動装置の軸方向寸法、および、ブレーキロータの径方向寸法の拡大を防止することができる。したがって、インホイールモータ駆動装置がホイールハウスの内壁または懸架部品と干渉することを防止するとともに、ばね下重量を軽減することが可能となる。その結果、車両の乗り心地および走行性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0019】
<実施の形態1>
本実施の形態に係る車輪速検出装置は、インホイールモータ駆動装置が内部に配置される車輪の回転を検出する。車輪は、電気自動車またはハイブリッド車両などの乗用自動車の車輪である。
【0020】
(インホイール駆動装置の基本構成例について)
はじめに、
図1を参照して、インホイールモータ駆動装置1の基本構成例およびその周辺構造について説明する。インホイールモータ駆動装置1は、車輪の中心に設けられる車輪ハブ軸受部11と、モータ軸22を回転駆動するモータ部21と、モータ軸22の回転を減速して車輪ハブ軸受部11に伝達する減速部31とを備える。減速部31を構成する減速機は、たとえば3軸の平行軸式歯車減速機である。モータ部21および減速部31は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oからオフセットして配置される。軸線Oは車幅方向に延び、車軸方向と一致する。
【0021】
車輪ハブ軸受部11、減速部31、およびモータ部21は、車輪の内部(内空領域)、すなわち車輪ホイールWの中に収納される。なお、モータ部21の少なくとも一部は、車輪との干渉を回避するために車輪ホイールWよりも車幅方向内側に配置されてもよい。インホイールモータ駆動装置1は車輪ホイールWと連結して車輪を駆動する。車輪は、車輪ホイールWとその外周に嵌合するタイヤとにより構成される。以下の説明において、軸線O方向一方とは車幅方向外側を意味し、軸線O方向他方とは車幅方向内側を意味する。
【0022】
モータ部21の外郭をなすモータハウジング20と、減速部31および車輪ハブ軸受部11の外郭をなす減速機ハウジング30とにより、インホイールモータ駆動装置1全体のケーシング10が構成されている。
【0023】
車輪ハブ軸受部11は、回転要素である内輪12と、固定要素である外輪13と、これら内外輪間の環状隙間に配置される複数の転動体14を有する。外輪13は、外輪筒部材13bと外輪アタッチメント部材13cとを含むように構成されてもよい。外輪筒部材13bは外輪アタッチメント部材13cの貫通孔に圧入固定され、外輪アタッチメント部材13cは外輪フランジとして機能する。
【0024】
外輪筒部材13bの軸線O方向一方端には、外径側に突出する突起13fが形成される。突起13fは外輪アタッチメント部材13cが軸線O方向一方へ相対移動することを規制する。外輪筒部材13bの軸線O方向他方側の外周面には、周方向に延びる周溝が形成され、該周溝にC字状のスナップリング13rが嵌合する。これにより、外輪アタッチメント部材13cは、突起13fおよびスナップリング13rの双方に挟まれて、軸線O方向の移動を禁止される。
【0025】
外輪フランジとしての外輪アタッチメント部材13cには周方向に間隔を空けて雌雌ねじ孔および貫通孔が複数穿設される。例えば雌雌ねじ孔および貫通孔は、周方向所定間隔に交互に設置される。各雌雌ねじ孔および各貫通孔は軸線Oと平行に延び、軸線O方向一方側からボルト83,84がそれぞれ通される。各ボルト83の軸部は、ナックル18の貫通孔を貫通し、外輪アタッチメント部材13cの雌雌ねじ孔に螺合する。各ボルト83の頭部83aは、ナックル18から軸線O方向一方へ突出する。
【0026】
なお、外輪アタッチメント部材13cの外縁には、ナックル18を受け入れて係合する所定形状の切欠き13g,13jが形成される。切欠き13gは外輪アタッチメント部材13cの軸線方向一方端面に形成される。上述の雌雌ねじ孔は切欠き13gの内部に形成されて軸線O方向一方を指向する。これにより外輪13はナックル18に取付固定される。
【0027】
減速機ハウジング30の正面壁部30fは外輪アタッチメント部材13cの軸線O方向他方端面に面接触する。外輪アタッチメント部材13cの中央部には、軸線O方向他方へ突出する円筒の筒状部13eが形成されており、この筒状部13eは、外周面で正面壁部30fに形成される開口に差し込まれて嵌合する。
【0028】
上述の貫通孔は外輪アタッチメント部材13cの外縁に形成された切欠き13jの内部に形成されて軸線O方向に延びる。各ボルト84の軸部は、貫通孔を貫通し、減速機ハウジング30の正面壁部30fに穿設される雌雌ねじ孔に螺合する。これにより外輪13はケーシング10に取付固定される。各ボルト84の頭部は、切欠き13jの内部に位置する。またケーシング10は外輪13を介してナックル18に支持される。
【0029】
内輪12は、外輪13よりも長い筒状体であり、外輪13の中心孔に通される。外輪13から車幅方向外側へ突出する内輪12の軸線O方向一方端部には、フランジ部12fが形成される。フランジ部12fは結合部として機能し、ブレーキディスク5および車輪ホイールWと同軸に結合する。内輪12は、ホイールボルト82によって、車輪と結合し、車輪ハブとして車輪と一体回転する。ホイールボルト82は、フランジ部12fの貫通孔に軸線O方向他方側から通される。
【0030】
ブレーキディスク5は、ブレーキキャリパ81に支持されたブレーキパッド80に挟み込まれるロータ部51と、ロータ部51の内径側端部から車幅方向外側に凹むように形成されたハット部52とを有している。ロータ部51およびハット部52は一体形成されている。
【0031】
ハット部52は、
図2に示されるように、径方向に延在する底壁部53と、底壁部53の外周縁部に連結され、円筒状の内径面を有する外周部54とで構成される。
【0032】
底壁部53は、車幅方向外側を向く外側面53oと車幅方向内側を向く内側面53iとを有している。外側面53oおよび内側面53iは、軸線O方向に直交する面である。外側面53oには車輪ホイールWが面接触し、内側面53iには内輪12のフランジ部12fが面接触する。ハット部52の底壁部53の中心孔部53aが車輪ハブとしての内輪12と嵌合する。底壁部53には複数の貫通孔53bが設けられており、上記したホイールボルト82は、内輪12のフランジ部12fに設けられた貫通孔とこの貫通孔53bとを貫通する。
【0033】
外周部54の中心線は軸線Oと一致しており、外周部54の軸線O方向他方端部においてロータ部51の径方向内側端部と接続されている。ロータ部51もまた、軸線O方向に直交し、車幅方向外側を向く外側面51oと車幅方向内側を向く内側面51iとを有している。
【0034】
モータ部21は、モータ軸(モータ回転軸)22、ロータ23、ステータ24、および上記したモータハウジング20を有し、この順序でモータ部21の軸線Mから外径側へ順次配置される。モータ部21は、インナロータ、アウターステータ形式のラジアルギャップモータであるが、他の形式であってもよい。例えば図示しなかったがモータ部21はアキシャルギャップであってもよい。
【0035】
モータ軸22およびロータ23の回転中心になる軸線Mは、車輪ハブ軸受部11の軸線Oから車両前後方向に離れて軸線Oと平行に延びる。つまり、モータ部21は、車輪ハブ軸受部11の軸線Oからたとえば車両前方に離れるようオフセットして配置される。
【0036】
モータ軸22の両端部は、転がり軸受27,28を介して、モータハウジング20に回転自在に支持される。モータ軸22の軸線O方向一方端には、突出部22pが形成される。突出部22pは軸線Mに沿って延び、減速部31の軸部32sの中心孔32hに差し込まれる。
【0037】
減速部31は、3軸の平行軸式歯車減速機であって、内輪12と同軸に結合される出力歯車36と、モータ部21のモータ軸22と同軸に結合する入力歯車32と、入力歯車32から出力歯車36へ回転を伝達する複数の中間歯車33,35と、上記した減速機ハウジング30とを有する。
【0038】
入力歯車32は小径の外歯歯車であり、軸線Mに沿って配置される軸部32sの軸線方向他方端部外周に形成される多数の歯である。軸部32sの軸線は、軸線Mと一致する。軸部32sの中心孔32hに、モータ軸22の突出部22pが差し込まれることで、軸部32sはモータ軸22と相対回転不可能に嵌合する。
【0039】
軸部32sは入力歯車32の両端側で、転がり軸受32m,32nを介して、減速機ハウジング30に回転自在に支持される。小径の入力歯車32は、大径の外歯歯車になる第1中間歯車33と噛合する。中間歯車33は中間軸34によって小径の外歯歯車になる第2中間歯車35と同軸に結合する。中間軸34の両端部は、転がり軸受34m,34nを介して、減速機ハウジング30に回転自在に支持される。
【0040】
中間軸34の中心を通る軸線Rは、車輪ハブ軸受部11の軸線Oと平行に延び、かつ、車両前後方向において軸線Oと軸線Mとの間に位置する。このように、減速部31は、車輪ハブ軸受部11からオフセットして配置される。減速部31の軸線Rは、軸線Oよりも上方に配置される。
【0041】
小径の第2中間歯車35は大径の出力歯車36と噛合する。出力歯車36は出力軸15に同軸に設けられる外歯歯車である。出力軸15は、出力歯車36よりも軸線O方向一方で、転がり軸受36mを介して減速機ハウジング30の正面壁部30fに回転自在に支持される。また出力軸15は、出力歯車36よりも軸線O方向他方で、転がり軸受36nを介して減速機ハウジング30の背面壁部30bに回転自在に支持される。
【0042】
上述のように、外輪13が従来のようなフランジを含む一体物ではなく、外輪筒部材13bとは別部材の外輪アタッチメント部材13cとして外輪筒部材13bの外周に取り付け固定される場合、外輪アタッチメント部材13cの形状を自由に作成し得る。そのため、外輪アタッチメント部材座部(雌雌ねじ孔,貫通孔,切欠き13g,13j)のレイアウト自由度が大きくなり、従来のようなボルトスペースを解消してインホイールモータ駆動装置1の軸線O方向寸法を従来よりも小さくできる。
【0043】
また、外輪アタッチメント部材13cの外輪アタッチメント部材座部(雌雌ねじ孔,貫通孔,切欠き13g,13j)は、内輪12のフランジ部12f(内輪座部)よりも外径側に設けられる。これにより内輪12のフランジ部12fと外輪アタッチメント部材13cとの間にボルト83,84を受け入れるためのボルトスペースを確保する必要がなくなる。したがって、従来よりも内輪12のフランジ部12fを外輪アタッチメント部材13cに近づけるように配置して、外輪13から突出する内輪12の突出長を短くし、従来よりも小型化されたインホイールモータ駆動装置1を提供することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、外輪13が外輪筒部材13bと外輪アタッチメント部材13cとに分割される例を示したが、一般的な外輪のように、フランジを含む一体物であってもよい。また、車輪ハブ軸受部11は、内輪固定、外輪回転タイプであってもよい。また、本実施の形態では、減速部31が、互いに平行に延びる軸線O,R,Mを有する平行3軸式歯車減速機である例を示したが、減速部31の構成は限定的ではなく、例えば遊星歯車式減速機やサイクロイド式減速機に適用されてもよい。
【0045】
本実施の形態に係る車輪速検出装置6は、車輪ハブとしての内輪12と同軸に結合されたブレーキディスク5の回転を検出することで、車輪の速度を検出する。
【0046】
(車輪速検出装置の配置例および構成例について)
本実施の形態に係る車輪速検出装置6について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る車輪速検出装置6を模式的に示す断面図である。
【0047】
車輪速検出装置6は、回転部分に設けられ、円周方向に磁束変化を生じさせる被検出部61と、固定部分に設けられた回転センサ62とを備える。被検出部61はブレーキディスク5のハット部52内の車幅方向内側を向く面に設けられている。具体的には、被検出部61は、内輪12のフランジ部12fよりも径方向外側かつフランジ部12fと軸線O方向(軸方向)に重なる位置に形成されていることが望ましい。「ハット部52内」とは、ハット部52の底壁部53と外周部54とによって囲まれた領域、すなわちハット部52の内部空間520を表わしている。
【0048】
本実施の形態では、ハット部52の内側面53i自体に、円周方向に沿って一定ピッチで凹凸が設けられることにより、被検出部61が形成されている。つまり、本実施の形態に係る車輪速検出装置6は、ブレーキディスク5を構成として含んでいる。なお、本実施形態では、ディスクタイプのブレーキロータとして、ブレーキディスク5を示しているが、ドラムタイプのブレーキロータであってもよい。つまり、被検出部61は、ブレーキロータのハット部内に設けられていればよい。
【0049】
図2には、ハット部52に一定ピッチで凸部を設けることにより被検出部61が形成される例を示しているが、限定的ではなく、ハット部52に一定ピッチで凹部を設けることにより被検出部61が形成されてもよい。また、ハット部52の内側面53iに窪み部を設け、この窪み部に、内輪12のフランジ部12fが嵌め入れられていてもよい。
【0050】
回転センサ62は、被検出部61に対面するように配置され、被検出部61の磁束変化を読み取ることによってブレーキディスク5の回転を検出する。本実施の形態では、回転センサ62は、インホイールモータ駆動装置1のケーシング10に固定されたナックル18に取り付けられている。回転センサ62は、ブレーキディスク5が回転すると、被検出部61の凹凸に応じて変化する起電力を電圧として出力する。回転センサ62の検出信号は、車体側に設けられた制御装置に送信される。なお、回転センサ62は、ケーシング10に直接固定されていてもよい。
【0051】
回転センサ62の少なくとも先端部62aは、ブレーキディスク5のハット部52の内部空間520に配置されることが望ましい。先端部62aは、被検出部61の凹凸を検出するセンシング部分である。回転センサ62の先端部62aもまた、内輪12のフランジ部12fよりも径方向外側かつフランジ部12fと軸線O方向(軸方向)に重なる位置に形成されていることが望ましい。
【0052】
上述のナックル18固定用のボルト83の頭部83aは、
図2に示されるように、ハット部52の内部空間520に位置している。具体的には、ボルト83の頭部83aは、内輪12のフランジ部12fよりも径方向外側に位置し、かつ、軸線O方向において少なくとも部分的にホイールボルト82の頭部82aと重なっている。
【0053】
回転センサ62は、ボルト83が通されるナックル18の貫通孔の周方向位置とは異なる周方向位置に取り付けられることが望ましい。これにより、軸線O方向一方側(車幅方向外側)から透視した場合に、被検出部61を、ボルト83の頭部83aの少なくとも一部と重なる位置に形成することができる。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、ブレーキディスク5を利用して車輪速を検出するため、インホイールモータ駆動装置1の軸方向寸法を大きくしなくてもよい。また、ブレーキディスク5のハット部52の内側面53iに被検出部61を設けるため、パルサーリングを別途設ける必要がない。したがって、部品点数を低減することができるとともに、車輪速検出装置6の組立を簡易化することができる。
【0055】
また、回転センサ62を軸線O方向に沿って配置することができるため、回転センサ62配置のためにブレーキディスク5のハット部52の外径寸法L1を拡大する必要がない。したがって、ブレーキディスク5の径方向寸法および軸方向寸法を拡大することなく、車輪速検出装置6を配置することが可能である。その結果、車体に必要性能以上に大きな車輪を装着する必要がないため、ばね下重量の増加による車両の乗り心地および走行性能の低下を防止することができる。
【0056】
また、ブレーキディスク5のハット部52の内側面53iに被検出部61としての凹凸を設けるため、ブレーキディスク5の表面積を増やすことができる。したがって、ブレーキディスク5の放熱性能を高めるとともに、熱歪みを防止することができる。さらに、放熱性能の向上に伴って、ブレーキディスク5から車輪ハブ(内輪12)への伝熱を抑制することができ、車輪ハブの損傷を防ぐことができる。
【0057】
さらに、被検出部61の凹凸形状がリブの役割を果たすこともできるため、ハット部52の強度を向上させることができる。また、強度向上に伴って、ハット部52の底壁部53の厚みを減らすことができるため、ブレーキディスク5の軽量化が可能になる。また、強度向上に伴って、ハット部52の熱歪みを防止することもできる。
【0058】
また、車輪速検出装置6の被検出部61が、ロータ部51から離れた位置に配置されるため、ロータ部51とブレーキパッド80との摩擦による温度上昇の影響を受け難くすることができる。したがって、被検出部61の熱歪みによる検出不良を防ぐことができる。
【0059】
また、車輪速検出装置6がハット部52内に配置されるため、泥、雪、ブレーキダスト等の付着による検出不良を防ぐこともできる。
【0060】
なお、車輪速検出装置6を搭載したインホイールモータ駆動装置を提供することもできる。
【0061】
<実施の形態2>
図3〜
図5を参照して、実施の形態2に係る車輪速検出装置6Aについて説明する。車輪速検出装置6Aの基本構成およびその周辺構造は上記実施の形態1と同様である。したがって、実施の形態1と相違する部分のみ以下に説明する。
【0062】
図3は、本発明の実施の形態2に係る車輪速検出装置6Aを模式的に示す断面図である。車輪速検出装置6Aは、実施の形態1で示したブレーキディスク5に代えて、ブレーキディスク5Aを含む。
図4には、ブレーキディスク5Aを車幅方向内側から見た斜視図が示され、
図5には、ブレーキディスク5Aを車幅方向外側から見た斜視図が示されている。
【0063】
実施の形態1と同様に、ブレーキディスク5Aのハット部52の内側面53i自体に被検出部61が設けられているが、本実施の形態では、ブレーキディスク5Aが2部品で構成されている。すなわち、ブレーキディスク5Aは、第1部材71と第2部材72で構成されている。
【0064】
第1部材71は、主にハット部52の底壁部53を構成し、第2部材72は、主にロータ部51を構成する。つまり、第1部材71は、被検出部61が形成された内側面53iを有する円板状の部材である。第2部材72は、第1部材71とは別体の環状部材であって、第1部材71よりも車幅方向内側に位置して第1部材71の径方向外側端縁に連結されている。なお、ハット部52の外周部54は、第1部材71の径方向外側端部と第2部材72の径方向内側端部とによって構成される。
【0065】
具体的には、第1部材71の径方向外側端部には、内側面53iの位置よりも車幅方向内側の位置において径方向外側に向かって突出する円環フランジ状の連結部73が設けられている。第2部材72の径方向内側端部には、径方向内側に向かって突出する複数の突出部74が円周方向に沿って一定間隔で設けられている。複数の突出部74は、軸線O方向に見て連結部73と重なる位置に設けられている。
【0066】
突出部74は軸線O方向に貫通する雌ねじ孔74aを有している。連結部73は、複数の雌ねじ孔74aとそれぞれ対向する位置に設けられた複数の貫通孔73aを有している。連結部73と複数の突出部74とが重ねられた状態で、車幅方向外側から差し込まれる締結ボルト76が貫通孔73aおよび雌ねじ孔74aに通されて、雌ねじ孔74aと螺合する。これにより、第1部材71と第2部材72とが連結される。なお、連結部73と複数の突出部74との間には、たとえば座金75が介在してもよい。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、被検出部61が形成される第1部材71を、ロータ部51を主に構成する第2部材72と別体にすることで、ハット部52の内側面53iへの被検出部61の加工を容易にすることができる。また、ブレーキディスク5Aがこのような2ピース構造とされることにより、ロータ部51からハット部52の底壁部53への伝熱を防ぐことができるため、車輪速の検出精度を向上させることができる。
【0068】
また、仮に、ハット部52の底壁部53の熱歪みにより車輪速の検出不良が生じた場合には、第1部材71のみの交換で済む。逆に、ロータ部51が損傷した場合等においては第2部材72のみの交換で済む。したがって、いずれの場合であっても修理コストを抑えることができる。
【0069】
<実施の形態3>
図6〜
図7を参照して、実施の形態3に係る車輪速検出装置6Bについて説明する。車輪速検出装置6Bの基本構成およびその周辺構造は上記実施の形態2と同様である。したがって、実施の形態2と相違する部分のみ以下に説明する。
【0070】
図6は、本発明の実施の形態3に係る車輪速検出装置6Bを模式的に示す断面図である。車輪速検出装置6Bは、実施の形態2で示したブレーキディスク5Aに代えて、ブレーキディスク5Bを含む。
図7には、ブレーキディスク5Bを車幅方向内側から見た斜視図が示されている。
【0071】
ブレーキディスク5Bは、実施の形態2と同様に、第1部材71と第2部材72とを含むが、被検出部61は第1部材71に設けられていない。被検出部61は、第1部材71と第2部材72との間に共締めされた環状部材、すなわちパルサーリング77によって構成されている。パルサーリング77には、円周方向に沿って一定ピッチで多数の孔77aが形成されている。
【0072】
パルサーリング77の外周縁部には、締結ボルト76が貫通する複数の貫通孔77aが設けられている。これにより、締結ボルト76によって、パルサーリング77の外周縁部を連結部73と複数の突出部74との間に保持することができる。本実施の形態では、パルサーリング77は、ハット部52の内側面53iとの間に間隔をあけて配置されている。
【0073】
本実施の形態のように、被検出部61を有するパルサーリング77を別途設ける場合であっても、パルサーリング77は、内輪12のフランジ部12fよりも径方向外側かつフランジ部12fと軸線O方向(軸方向)に重なる位置に形成されていることが望ましい。このようにすることで、本実施の形態においても、回転センサ62の先端部62aをハット部52内に配置することができるため、ブレーキディスク5Bの軸方向寸法の拡大を防止することができる。
【0074】
本実施の形態においては、ブレーキディスク5Bの材質が、軽量なジュラルミン等、パルサーリング77の材質(たとえば銅)と異なる金属である場合には、パルサーリング77の表面に、ブレーキディスク5Bとの電食を防止するための塗装またはコーティングを施すことが望ましい。
【0075】
なお、本実施の形態においては、第1部材71および第2部材72として、公知のベルハウジングおよびロータをそれぞれ採用してもよい。
【0076】
このように、本実施の形態では、パルサーリング77を用いることで、ブレーキディスク5Bのハット部52内の車幅方向内側を向く面に被検出部61を容易に形成することができる。
【0077】
また、パルサーリング77の外周縁部が、第1部材71と第2部材72とに共締めされる構成であるため、ハット部52内に、パルサーリング取り付け用のボルトを配置する必要がない。そのため、本実施の形態によれば、ハット部52の底壁部53にパルサーリング取り付け用のボルトを通す構成に比べて、ハット部52の外径寸法の拡大を防止することができる。したがって、ブレーキディスク5B全体の外径寸法の拡大を防止することができる。その結果、ばね下重量の増加による車両の乗り心地および走行性能の低下を防止することができる。
【0078】
また、本実施の形態では、被検出部61の熱歪みによる検出不良が生じた場合には、パルサーリング77のみの交換で済むため、実施の形態2よりも修理コストを抑えることができる。
【0079】
なお、各実施の形態では、パッシブ方式の車輪速回転装置について説明したが、アクティブ方式を採用してもよい。その場合、被検出部として、たとえば公知の磁気エンコーダが採用され得る。磁気エンコーダは、円周方向にN極とS極とが繰り返し配置された環状の磁石である。この場合、回転センサ62は、磁気エンコーダの回転に伴う磁気の強弱を読み取る。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。