(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
  以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
 
【0011】
  また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
 
【0012】
  さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
 
【0013】
  同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
 
【0014】
  また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
 
【0015】
  <基準電圧生成回路の構成例>
  
図1は、基準電圧生成回路の構成例を示す回路図である。
図1に示す基準電圧生成回路は、電源線VLと、接地線GLと、2つの抵抗素子R1と抵抗素子R2とからなる抵抗群100と、3つのダイオードQ1〜Q3からなるダイオード群200と、5つの電界効果トランジスタM1〜M5と、から構成されている。そして、
図1に示す基準電圧生成回路では、5つの電界効果トランジスタM1〜M5のうち、電界効果トランジスタM1と電界効果トランジスタM3は、nチャネル型電界効果トランジスタから構成されている。一方、電界効果トランジスタM2と電界効果トランジスタM4と電界効果トランジスタM5は、pチャネル型電界効果トランジスタから構成されている。
 
【0016】
  ここで、例えば、基準電圧生成回路を1つの半導体チップに集積する場合、ダイオードQ1〜Q3は、npnバイポーラトランジスタのベースとコレクタとを短絡した構成が採用されることが多く、ダイオードQ2の占有面積は、ダイオードQ1の占有面積やダイオードQ3の占有面積の「K倍」だけ大きくなっている。このとき、
図1に示す基準電圧生成回路では、ダイオードQ1〜Q3のそれぞれのカソードは、基準電位が供給される接地線GLと接続される。
 
【0017】
  さらに、
図1に示す基準電圧生成回路においては、電界効果トランジスタM1と電界効果トランジスタM3とがnチャネルカレントミラー回路を構成し、かつ、電界効果トランジスタM2と電界効果トランジスタM4とがpチャネルカレントミラー回路を構成している。そして、
図1に示す基準電圧生成回路では、電界効果トランジスタM1と電界効果トランジスタM3とから構成されるnチャネルカレントミラー回路と、電界効果トランジスタM2と電界効果トランジスタM4とから構成されるpチャネルカレントミラー回路とが2段直列に積み重ねられている。カレントミラー回路は、電源線VLから同一電流を供給する回路であり、電界効果トランジスタM1のゲート電極と、電界効果トランジスタM3のゲート電極とに共通電位が供給される構成になっていることから、
図1に示す点Aの電位と点Bの電位とは等しくなる。この結果、抵抗群100とダイオード群200とから構成される回路に印加される電圧を等しくすることができる。特に、電界効果トランジスタM5のゲート電極は、電界効果トランジスタM2のゲート電極と電界効果トランジスタM4のゲート電極と短絡されていることから、電界効果トランジスタM5は、電流源として機能し、電界効果トランジスタM2を流れる電流や電界効果トランジスタM4を流れる電流と同じ電流値の電流を出力端子OTに供給することができる。
 
【0018】
  このように構成されている基準電圧生成回路から出力される出力電圧Vrefは、以下に示す式(1)で表すことができる。
 
【0019】
  Vref=V
BE3+(kT/q)×(r2/r1)×ln(K)      ・・・式(1)
  ここで、「V
BE3」は、ダイオードQ3のベース−エミッタ間電圧を表し、「k」は、ボルツマン定数を表し、「T」は、絶対温度を表し、「q」は素電荷を表している。また、「r1」は、抵抗素子R1の抵抗値を示し、「r2」は、抵抗素子R2の抵抗値を示している。さらに、「K」は、ダイオードQ1の占有面積に対するダイオードQ2の占有面積の面積比を示している。
 
【0020】
  次に、
図1に示す基準電圧生成回路における負荷電流について説明する。負荷電流は、基準電圧生成回路の消費電力に影響を与える因子であり、例えば、以下に示す式(2)で表すことができる。
 
【0021】
  I=(kT/q)×ln(K)/r1      ・・・式(2)
  この式(2)より、
図1に示す基準電圧生成回路における負荷電流は、抵抗素子R1の抵抗値「r1」と、ダイオードQ1の占有面積に対するダイオードQ2の占有面積の面積比である「K」により決定されることがわかる。ただし、面積比である「K」の設計範囲は、狭いため、負荷電流は、主に、抵抗素子R1の抵抗値「r1」によって調整される。例えば、基準電圧生成回路の消費電力を低減するために、負荷電流を1μA以下にする場合、基準電圧生成回路を使用する温度範囲にも依存するが、抵抗素子R1の抵抗値r1は、数十kΩ〜数百kΩに設計される。
 
【0022】
  このように、式(2)によって、負荷電流を決定すると、式(1)より、出力電圧Vrefは、実質的に抵抗素子R2の抵抗値r2によって調整されることになる。
 
【0023】
  <実施の形態における第1基本思想>
  上述したように、基準電圧生成回路から出力される出力電圧Vrefは、式(1)によって表される。このとき、ダイオードQ3のベース−エミッタ間電圧である「V
BE3」は、pn接合のビルトインポテンシャル(順方向電圧VF)に依存するため、負の温度特性を有する。すなわち、高温になるほど、ビルトインポテンシャルは小さくなることから、ダイオードQ3のベース−エミッタ間電圧である「V
BE3」は、小さくなるのである。
 
【0024】
  この点に関し、本実施の形態における基本思想は、式(1)の第一項に示される「V
BE3」の温度依存性を、式(2)の第二項に示される「(kT/q)×(r2/r1)×ln(K)」での温度依存性でキャンセルすることにより、基準電圧生成回路から出力される出力電圧Vrefの温度依存性を小さくする思想である。
 
【0025】
  ここで、式(2)によって負荷電流を決定すると、式(1)における「K」と「r1」が決定されてしまうことから、式(1)の第二項の調整は、実質的に、抵抗素子R2の抵抗値「r2」だけによって調整されることになる。そして、式(1)の第二項で、式(1)の第一項の温度依存性をキャンセルするためには、式(1)の第一項が負の温度特性を有していることを考慮すると、式(1)の第二項も、負の温度特性を有している必要がある。なぜなら、高温になると、式(1)の第一項の「V
BE3」に影響を与えるビルトインポテンシャルは小さくなる結果、「V
BE3」は小さくなるが、式(2)の第二項の分子に存在する抵抗素子R2の抵抗値r2が負の温度特性を有しているからである。つまり、式(2)の第二項の分子に存在する抵抗素子R2の抵抗値r2が負の温度特性を有しているということは、
図1に示す基準電圧生成回路において、温度が高くなるほど、抵抗素子R2に流れる電流が大きくなることを意味し、これによって、ダイオードQ3に流れる電流が大きくなることになる。そして、ダイオードQ3に流れる電流が大きくなるということは、オームの法則によって、ダイオードQ3の順方向電圧が大きくなることを意味し、この順方向電圧の増加によって、「V
BE3」のビルトインポテンシャルの低下が補填される結果、基準電圧生成回路からの出力電圧Vrefの温度依存性が小さくなるのである。
 
【0026】
  したがって、本実施の形態における第1基本思想を実現するためには、抵抗素子R2として負の温度特性を有する抵抗素子から構成する必要があるのである。このように、本実施の形態における第1基本思想は、式(1)の第一項に示される「V
BE3」の温度依存性を、式(2)の第二項に示される「(kT/q)×(r2/r1)×ln(K)」での温度依存性でキャンセルする思想であり、この第1基本思想を具現化するために、抵抗素子R2は、負の温度特性を有する抵抗素子から構成する必要がある。
 
【0027】
  <第1基本思想を具現化するための検討>
  上述したように、本実施の形態における第1基本思想を具現化するためには、負の温度特性を有する抵抗素子R2を採用する必要がある。したがって、抵抗素子R2として金属からなる抵抗素子を使用することはできない。なぜなら、金属からなる抵抗素子は、正の温度特性を有しているからである。次に、例えば、抵抗素子R2として、ポリシリコン膜からなるポリシリコン抵抗素子を採用することが考えられるが、ポリシリコン抵抗素子は、ユニポーラデバイスであり、高温になると格子振動による電子散乱の影響が大きくなる。この結果、ポリシリコン抵抗素子は、温度が高くなるほど抵抗値が高くなるという正の温度特性を有するため、抵抗素子R2として採用することはできない。同様の理由から、シリコンからなる半導体領域を構成要素とする拡散抵抗も使用することができない。
 
【0028】
  この点に関し、炭化珪素を使用する半導体装置では、事情が一変する。すなわち、炭化珪素からなる半導体領域を構成要素とする拡散抵抗素子は、シリコンからなる半導体領域を構成要素とする拡散抵抗素子とは、温度特性が相違する。つまり、炭化珪素からなる半導体領域を構成要素とする拡散抵抗素子は、負の温度特性を有するのである。
 
【0029】
  <炭化珪素に導電型不純物を導入した拡散抵抗素子が負の温度特性を有する理由>
  このように炭化珪素に導電型不純物を導入した拡散抵抗素子が負の温度特性を有する理由は、炭化珪素からなる半導体領域に導入される導電型不純物の活性化率が、大きな温度依存性を有するからである。
図2は、温度と活性化率との関係を示すグラフである。
図2において、破線は、炭化珪素からなる半導体領域にn型不純物(ドナー)である窒素(N)を導入した場合の窒素の活性化率の温度依存性を示している。一方、
図2において、実線は、炭化珪素からなる半導体領域にp型不純物(アクセプタ)であるアルミニウム(Al)を導入した場合のアルミニウムの活性化率の温度依存性を示している。このとき、例えば、アクセプタの活性化率は、ドナーの活性化率よりも小さくなっている。
 
【0030】
  図2に示すように、ドナーである窒素とアクセプタであるアルミニウムのいずれにおいても、温度が高くなるに連れて、活性化率が大きくなることがわかる。この結果、例えば、炭化珪素に窒素が導入されたn型半導体領域からなる拡散抵抗素子においては、温度が高くなると、窒素の活性化率が大きくなって、ドナーである窒素から炭化珪素の伝導帯に供給される電子が多くなる結果、n型半導体領域からなる拡散抵抗素子の抵抗値が低くなる。したがって、炭化珪素に窒素が導入されたn型半導体領域からなるn型拡散抵抗素子は、負の温度特性を有することになる。
 
【0031】
  一方、例えば、炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子においても、温度が高くなると、アルミニウムの活性化率が大きくなって、アクセプタであるアルミニウムが炭化珪素の価電子帯に充填されている電子を捕獲する量が多くなり、価電子帯に正孔が多く生成される。この結果、p型拡散抵抗素子の抵抗値が低くなる。したがって、p型拡散抵抗素子も、負の温度特性を有することになる。
 
【0032】
  以上のメカニズムによって、炭化珪素に導電型不純物を導入した拡散抵抗素子(n型拡散抵抗素子とp型拡散抵抗素子の両方)は、負の温度特性を示すことになるのである。
 
【0033】
  <p型拡散抵抗素子を採用する理由>
  ここで、
図2に示すように、n型不純物(ドナー)である窒素の活性化率の温度依存性よりも、p型不純物(アクセプタ)であるアルミニウムの活性化率の温度依存性のほうが大きくなっていることがわかる。これは、n型不純物(ドナー)である窒素のドナー準位と炭化珪素の伝導帯の下端との間のエネルギー差が0.09eVであるのに対し、p型不純物(アクセプタ)であるアルミニウムのアクセプタ準位と炭化珪素の価電子帯の上端との間のエネルギー差が0.19eVであるからである。すなわち、p型不純物(アクセプタ)であるアルミニウムのアクセプタ準位は、n型不純物(ドナー)である窒素のドナー準位よりも深い準位となっており、p型不純物(アクセプタ)を活性化させるためのエネルギーは、n型不純物(ドナー)を活性化させるためのエネルギーよりも大きくなる。
 
【0034】
  このことは、炭化珪素の価電子帯に存在する電子がp型不純物(アクセプタ)のアクセプタ準位に捕獲されるためのエネルギーが、n型不純物(ドナー)のドナー準位から炭化珪素の伝導帯までに達するエネルギーよりも大きくなることを意味する。これにより、
図2に示すように、n型不純物(ドナー)である窒素の活性化率は、比較的低い温度で飽和傾向を示すのに対し、p型不純物(アクセプタ)であるアルミニウムの活性化率は、比較的高温まで飽和しにくい傾向を示すことになる。
 
【0035】
  このとき、活性化率の温度依存性が大きくなるほど、低温での抵抗値と高温での抵抗値の差が大きくなる。このことから、温度変化に対して、p型拡散抵抗素子の抵抗値の変動幅は、n型拡散抵抗素子の抵抗値の変動幅よりも大きくなる。
 
【0036】
  以上のことから、n型拡散抵抗素子とp型拡散抵抗素子のいずれも負の温度特性を有する点で、上述した本実施の形態における第1基本思想を具現化するための要件を満たしている。ただし、上述した本実施の形態における第1基本思想を実現する観点からは、抵抗値の調整幅が大きくなるほうが望ましいことから、本実施の形態では、例えば、
図1に示す抵抗素子R2として、p型拡散抵抗素子を採用することにしている。
 
【0037】
  図3は、炭化珪素にアクセプタ濃度(N
A)が3×10
17cm
−3でアルミニウムを導入したp型拡散抵抗素子において、温度とシート抵抗との関係を示すグラフである。
図3において、温度が高くなるにつれて、p型拡散抵抗素子のシート抵抗が小さくなっていることがわかる。すなわち、炭化珪素にアルミニウムを導入したp型拡散抵抗素子は、負の温度特性を有していることがわかる。具体的には、
図3に示すように、温度が約40℃のときに、シート抵抗が140kΩ
□であるのに対し、温度が約300℃になると、シート抵抗が30kΩ
□に大幅に低下していることがわかる。
 
【0038】
  <実施の形態における第1特徴点>
  以上のことをまとめると、本実施の形態における第1特徴点は、上述した式(1)の第一項に示される「V
BE3」の温度依存性を、式(2)の第二項に示される「(kT/q)×(r2/r1)×ln(K)」での温度依存性でキャンセルするという本実施の形態における第1基本思想を具現化するために、例えば、
図1に示す抵抗素子R2を負の温度特性を有する抵抗素子から構成する点にある。具体的に、本実施の形態における第1特徴点は、例えば、
図1に示す抵抗素子R2を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成する点にある。これにより、上述した本実施の形態における第1基本思想が具現化される結果、本実施の形態によれば、基準電圧生成回路からの出力電圧Vrefの温度依存性が小さくすることができる。
 
【0039】
  本実施の形態における半導体装置は、炭化珪素を主成分とし、かつ、基準電圧生成回路が形成された半導体チップを備える。このとき、基準電圧生成回路は、抵抗素子とダイオードとを含み、抵抗素子は、アクセプタが導入された拡散抵抗素子から構成される。
 
【0040】
  <ダイオードにおける検討事項>
  次に、
図1に示すダイオードQ1〜Q3は、例えば、ドナーが導入されたn型コレクタとアクセプタが導入されたp型ベースとが短絡されたnpn型バイポーラトランジスタから構成される。このとき、npn型バイポーラトランジスタのp型ベースは、炭化珪素基板に形成された拡散領域から構成されることになる。つまり、
図1に示すダイオードQ1〜Q3においても、上述したp型拡散抵抗素子と同じ導電型の拡散領域から構成されるp型ベースを有することになる。ここで、例えば、p型拡散抵抗素子に導入されているアクセプタと、p型ベースに導入されているアクセプタとは、同じ種類の元素である。具体的には、p型拡散抵抗素子に導入されているアクセプタは、アルミニウムであり、p型ベースに導入されているアクセプタも、アルミニウムである。
 
【0041】
  したがって、
図1に示すダイオードQ1〜Q3におけるp型ベースにおいても、p型拡散抵抗素子と同様に、p型不純物(アクセプタ)であるアルミニウムの活性化率の温度依存性が大きくなる(
図2参照)。そして、p型不純物(アクセプタ)の活性化率の温度依存性が大きくなることに起因して、炭化珪素を使用したダイオードのI−V特性(電流−電圧特性)は、シリコン(珪素)を使用したダイオードのI−V特性と相違することになる。以下に、この点について説明する。
 
【0042】
  図4は、シリコンを使用したダイオードのI−V特性を模式的に示すグラフである。
図4において、横軸は、カソード電圧を示しており、縦軸は、アノード電流を示している。
図4に示すように、シリコンを使用したダイオードのI−V特性は、温度が高くなるほど、アノード電流が立ち上がる立ち上がり電圧(順方向電圧)が低くなる一方、立ち上がり電圧以降のアノード電流の傾きは、温度が高くなるほど小さくなる。
 
【0043】
  一方、
図5は、炭化珪素を使用したダイオードのI−V特性を模式的に示すグラフである。
図5において、横軸は、カソード電圧を示しており、縦軸は、アノード電流を示している。
図5に示すように、炭化珪素を使用したダイオードのI−V特性は、温度が高くなるほど、アノード電流が立ち上がる立ち上がり電圧(順方向電圧)が低くなる一方、立ち上がり電圧以降のアノード電流の傾きは、シリコンを使用したダイオードと異なり、温度が高くなるほど大きくなる。これは、npn型バイポーラトランジスタを使用したダイオードのp型ベースにおいて、温度が高くなると、p型不純物(アクセプタ)の活性化率が大きくなる結果、少数キャリアの注入が促進されて、電気抵抗が小さくなったためと考えられる。このように、炭化珪素を使用したダイオードのI−V特性は、p型ベースを構成する拡散領域に導入されているp型不純物(アクセプタ)の活性化率の温度依存性に起因して、シリコンを使用したダイオードのI−V特性と相違することになる。
 
【0044】
  これにより、炭化珪素を使用したダイオードの順方向電圧の温度依存性は、シリコンを使用したダイオードの順方向電圧の温度依存性と相違することになる。具体的に、
図6は、負荷電流が1μAである場合において、炭化珪素を使用したダイオードの順方向電圧の温度依存性を示すグラフである。
図6において、横軸は、温度を示しており、縦軸は、順方向電圧VFを示している。
図6に示すように、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数は、−3.7mV/℃であり、シリコンを使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数である−1.5mV/℃〜−2.0mV/℃と比べて、約2倍程度大きくなる。このとき、順方向電圧の温度係数が大きくなるということは、式(1)におけるベース−エミッタ間電圧「V
BE3」の温度依存性が大きくなることを意味する。そして、式(1)におけるベース−エミッタ間電圧「V
BE3」の温度依存性が大きくなるということは、式(1)の第一項に示される「V
BE3」の温度依存性を、式(2)の第二項に示される「(kT/q)×(r2/r1)×ln(K)」での温度依存性でキャンセルするという第1基本思想における抵抗素子R2の抵抗値「r2」の温度依存性を大きくする必要があることを意味している。このことは、抵抗素子R2の抵抗値「r2」の変動幅が大きくなることを意味し、抵抗素子R2の抵抗値「r2」の変動幅が大きくなるということは、抵抗素子R2のサイズを大きくする必要が生まれることを意味している。このことは、基準電圧生成回路を形成する半導体チップの大型化に繋がり、製造コストの増加を招くことになる。そこで、本実施の形態では、さらに、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数を小さくする工夫を施している。
 
【0045】
  <実施の形態における第2基本思想>
  本実施の形態における第2基本思想は、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数を小さくするために、順方向電圧が電流密度によって増減することを利用する思想である。すなわち、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数は、「負」であることから、低温における順方向電圧は、相対的に高い一方、高温における順方向電圧は、相対的に低くなる。これに対し、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧は、ダイオードに流れる電流が小さいときには、相対的に小さくなる一方、ダイオードに流れる電流が大きくなると、相対的に大きくなる。したがって、本実施の形態における第2基本思想は、低温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を小さくすることによって、低温における順方向電圧を下げる方向にシフトさせる一方、高温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を大きくすることによって、高温における順方向電圧を上げる方向にシフトさせる思想である。このような本実施の形態における第2基本思想によれば、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数を小さくする(傾きをなだらかにする)ことができる。
 
【0046】
  このような本実施の形態における第2基本思想を採用することにより、抵抗素子R2の抵抗値「r2」の温度依存性を大きくする必要性が低減されることになり、これによって、抵抗素子R2のサイズを大きくする必要性が低減されることになる。この結果、本実施の形態における第2基本思想を採用することは、基準電圧生成回路を形成する半導体チップの大型化を抑制できることに繋がり、引いては、基準電圧生成回路を含む半導体装置の製造コストの削減を図ることができることになる。
 
【0047】
  <実施の形態における第2特徴点>
  続いて、上述した本実施の形態における第2基本思想を具現化した第2特徴点について説明する。本実施の形態における第2特徴点は、例えば、
図1に示す抵抗素子R2だけでなく、
図1に示す抵抗素子R1についても、負の温度特性を有する抵抗素子から構成する点にある。具体的に、本実施の形態における第2特徴点は、例えば、
図1に示す抵抗素子R1を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成する点にある。
 
【0048】
  ここで、上述した式(2)より、負荷電流は、抵抗素子R1の抵抗値「r1」に反比例することになる。そして、本実施の形態では、抵抗素子R1を負の温度特性を有する抵抗素子から構成している。この結果、低温における負荷電流は、相対的に、抵抗素子R1の抵抗値「r1」が大きくなることから、小さくなる。一方、高温における負荷電流は、相対的に、抵抗素子R1の抵抗値「r1」が小さくなることから、大きくなる。このようにして、自動的に、低温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を小さくすることによって、低温における順方向電圧を下げる方向にシフトさせる一方、高温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を大きくすることによって、高温における順方向電圧を上げる方向にシフトさせるという第2基本思想を実現することができる。この結果、本実施の形態における第2特徴点によれば、基準電圧生成回路を形成する半導体チップの大型化を抑制できることになり、引いては、基準電圧生成回路を含む半導体装置の製造コストの削減を図ることができることになる。
 
【0049】
  具体的に、
図7は、
図1に示す抵抗素子R1を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成する場合における温度と負荷電流との関係を示すグラフである。
図7において、横軸は、温度を示しており、縦軸は、負荷電流を示している。
図7に示すように、
図1に示す抵抗素子R1を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成することによって、室温(25℃)における負荷電流値に対して、500℃における負荷電流値は、24倍にも増加することがわかる。このようにして、低温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を小さくすることによって、低温における順方向電圧を下げる方向にシフトさせる一方、高温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を大きくすることによって、高温における順方向電圧を上げる方向にシフトさせるという第2基本思想を実現可能なように構成できることがわかる。
 
【0050】
  具体的に、
図8は、負荷電流を一定に制御した場合の温度と順方向電圧VFとの関係を示すグラフと、
図7に示すように負荷電流を変化させた場合の温度と順方向電圧VFとの関係を示すグラフとを示す図である。
図8において、横軸は、温度を示しており、縦軸は、順方向電圧VFを示している。
図8に示すように、負荷電流を一定(1μA)にした場合の温度係数は、−3.7mV/℃であるのに対し、
図7に示すように負荷電流を変化させた場合の温度係数は、−3.0mV/℃となって、なだらかになっていることがわかる。
 
【0051】
  <第2基本思想の斬新性>
  上述したように、本実施の形態における第2基本思想は、炭化珪素を使用したダイオードにおける順方向電圧の温度係数を小さくするために、順方向電圧が電流密度によって増減することを利用する思想である。
 
【0052】
  ダイオードの順方向電圧は、温度依存性を有するとともに、電流密度依存性も有している。この点に関し、これまでの基準電圧生成回路では、負荷電流を一定に制御することに設計する。なぜなら、ダイオードの順方向電圧の温度依存性だけを顕在化させるためである。ただし、炭化珪素を使用したダイオードにおいて、負荷電流を一定に制御すると、
図6に示すように、順方向電圧の温度係数の傾きが大きくなってしまう。そこで、本実施の形態では、順方向電圧の温度係数の傾きをなだらかにするため、順方向電圧が電流密度によって増減することを利用する。具体的に、本実施の形態では、低温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を小さくすることによって、低温における順方向電圧を下げる方向にシフトさせる一方、高温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を大きくすることによって、高温における順方向電圧を上げる方向にシフトさせる。このように、本実施の形態では、負荷電流を一定に制御するのではなく、低温時においては負荷電流を相対的に小さくし、かつ、高温時においては負荷電流を相対的に大きくするように負荷電流を変動させる。この点において、本実施の形態における技術的思想は、負荷電流を一定に制御することを前提とするこれまでの技術に対して、斬新性を有するのである。そして、このような本実施の形態における第2基本思想を具現化する手段として、例えば、
図1に示す抵抗素子R1を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成している。この結果、p型拡散抵抗素子が負の温度特性を有していることに起因して、自動的に、低温における負荷電流は、相対的に、抵抗素子R1の抵抗値「r1」が大きくなることから、小さくなる。一方、高温における負荷電流は、相対的に、抵抗素子R1の抵抗値「r1」が小さくなることから、大きくなる。このようにして、本実施の形態における第2特徴点を採用することにより、自動的に、低温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を小さくすることによって、低温における順方向電圧を下げる方向にシフトさせる一方、高温においては、炭化珪素を使用したダイオードに流れる電流を大きくすることによって、高温における順方向電圧を上げる方向にシフトさせるという第2基本思想を実現することができる。つまり、本実施の形態では、単純に、
図1に示す抵抗素子R1を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成することによって、わざわざ、負荷電流の増減を制御する大掛かりな制御回路を設ける必要がなくなる。すなわち、
図1に示す抵抗素子R1を炭化珪素にアルミニウムが導入されたp型半導体領域からなるp型拡散抵抗素子から構成するという本実施の形態における第2特徴点によれば、わざわざ、負荷電流の増減を制御する大掛かりな制御回路を設けることなく、本実施の形態における第2基本思想を実現できる点で、有用な技術的思想であることがわかる。
 
【0053】
  <実施の形態における効果>
  次に、本実施の形態における効果について説明する。
図9は、例えば、
図1に示す基準電圧生成回路の出力端子OTから出力される出力電圧Vrefの温度依存性を示すグラフである。
図9において、横軸は、温度を示しており、縦軸は、出力電圧Vrefを示している。
図9に示すように、本実施の形態における第1基本思想を具現化する第1特徴点と、本実施の形態における第2基本思想を具現化する第2特徴点とを採用することにより、例えば、
図1に示す基準電圧生成回路から出力される出力電圧Vrefの温度依存性を小さくすることができることがわかる。
 
【0054】
  <デバイス構造>
  続いて、本実施の形態における半導体装置のデバイス構造について説明する。
図10は、本実施の形態における半導体装置のデバイス構造を説明する断面図である。
図10において、領域A1には、
図1に示す基準電圧生成回路の構成要素である抵抗素子R1や抵抗素子R2のデバイス構造が図示されている。一方、領域A2には、
図1に示す基準電圧生成回路の構成要素であるダイオードQ1〜Q3のデバイス構造が図示されている。
 
【0055】
  まず、
図10の領域A1に形成されているp型拡散抵抗素子のデバイス構造について説明する。
図10に示すように、半導体チップの領域A1には、n型炭化珪素基板1Sと、n型炭化珪素基板1S上に設けられたp型半導体層PSLと、p型半導体層PSL上に設けられたn型半導体層EPIとが形成されている。そして、n型炭化珪素基板1Sの裏面(下面)には、裏面電極BEが形成されている。一方、n型半導体層EPIには、n型半導体層EPIに内包されるp型半導体領域PR1が形成されており、このp型半導体領域PR1がp型拡散抵抗素子として機能する。さらに、n型半導体層EPIの表面と、p型半導体領域PR1の表面とにわたって、層間絶縁膜ILが形成されている。そして、この層間絶縁膜ILには、層間絶縁膜ILを貫通して、p型半導体領域PR1の表面を露出する開口部OP1と開口部OP2とが形成されている。p型半導体領域PR1と電気的に接続し、かつ、開口部OP1内から層間絶縁膜IL上にわたって配線WL1と配線WL2とが形成されている。以上のようにして、半導体チップの領域A1には、p型拡散抵抗素子が形成されていることになる。
 
【0056】
  続いて、
図10の領域A2に形成されているダイオードのデバイス構造について説明する。
図10に示すように、半導体チップの領域A2には、n型炭化珪素基板1Sと、n型炭化珪素基板1S上に設けられたp型半導体層PSLと、p型半導体層PSL上に設けられたn型コレクタとなるn型半導体層EPIとが形成されている。そして、n型炭化珪素基板1Sの裏面(下面)には、裏面電極BEが形成されている。一方、n型半導体層EPIには、n型半導体層EPIを貫通して、p型半導体層PSLに達するトレンチTRが形成されており、このトレンチTRの内部には、例えば、p型半導体層からなる埋め込み層BSLが埋め込まれている。そして、平面視において、n型半導体層EPIは、トレンチTRに埋め込まれた埋め込み層BSLで囲まれている。このとき、埋め込み層BSLで囲まれたn型半導体層EPIには、p型ベースとなるp型半導体領域PR2と、平面視においてp型半導体領域PR2に内包され、かつ、n型エミッタとなるn型半導体領域NR2とが形成されている。さらに、トレンチTRに埋め込まれた埋め込み層BSLと、p型半導体領域PR2と、n型半導体領域NR2とが形成されたn型半導体層EPI上には、層間絶縁膜ILが形成されている。ここで、層間絶縁膜ILには、層間絶縁膜ILを貫通し、かつ、n型半導体領域NR2の表面を露出する開口部OP3と、層間絶縁膜ILを貫通し、かつ、p型半導体領域PR2の表面を露出する開口部OP4と、層間絶縁膜ILを貫通し、かつ、n型半導体層EPIの表面を露出する開口部OP5とが形成されている。そして、n型半導体領域NR2と電気的に接続し、かつ、開口部OP3から層間絶縁膜IL上にわたって配線WL3が形成されている。同様に、p型半導体領域PR2と電気的に接続し、かつ、開口部OP4から層間絶縁膜IL上にわたるとともに、n型半導体層EPI2と電気的に接続し、かつ、開口部OP5から層間絶縁膜IL上にわたる配線WL4が形成されている。このようにして、
図10の領域A2には、n型半導体層EPIをn型コレクタとし、かつ、p型半導体領域PR2をp型ベースとし、かつ、n型半導体領域NR2をn型エミッタとするnpnバイポーラトランジスタのp型ベースとn型コレクタとを短絡した構成を有するダイオードが形成されていることになる。
 
【0057】
  図10の領域A2に形成されているダイオードは、埋め込み層BSLとp型半導体層PSLとによって、電源電位が印加されるn型炭化珪素基板1Sと分離されている。したがって、
図10の領域A2に形成されているダイオードのn型半導体層EPIの電位を任意の電位にすることができるため、
図10の領域A2に形成されているダイオードのデバイス構造によって、
図1に示す基準電圧生成回路のダイオードQ1〜Q3を実現できる。
 
【0058】
  <変形例1>
  
図11は、本変形例1における基準電圧生成回路の回路構成を示す図である。
図11において、ダイオードQ1〜Q3のアノードは、電源電位が供給される電源線VLと電気的に接続されている。このように構成されている基準電圧生成回路では、出力端子OTから負バイアスの出力電圧を出力することができる。
 
【0059】
  ここで、
図12は、本変形例1における半導体装置のデバイス構造を説明する断面図である。
図12において、領域A1には、
図11に示す基準電圧生成回路の構成要素である抵抗素子R1や抵抗素子R2のデバイス構造が図示されている。一方、領域A2には、
図11に示す基準電圧生成回路の構成要素であるダイオードQ1〜Q3のデバイス構造が図示されている。
図12においては、n型炭化珪素基板1S上に、n型半導体層EPIが形成されており、このn型半導体層EPIに内包されるように、p型半導体領域PR2が形成され、かつ、このp型半導体領域PR2に内包されるように、n型半導体領域NR2が形成されている。
図12の領域A2に形成されているダイオードは、
図10の領域A2に形成されているダイオードとは異なり、ダイオードがn型炭化珪素基板1Sと分離されていない。なぜなら、n型炭化珪素基板1Sには、電源電位が印加され、かつ、
図11に示す基準電圧生成回路の構成要素となるダイオードのアノードにも、電源電位が供給されることから、ダイオードのアノードとなるn型半導体層EPIとn型炭化珪素基板1Sとを分離する必要がないからである。これにより、本変形例1におけるダイオードのデバイス構造が簡素化されることになる。
 
【0060】
  <変形例2>
  
図13は、本変形例2における半導体装置のデバイス構造を説明する断面図である。
図13において、領域A1には、
図1に示す基準電圧生成回路の構成要素である抵抗素子R1や抵抗素子R2のデバイス構造が図示されている。一方、領域A2には、
図1に示す基準電圧生成回路の構成要素であるダイオードQ1〜Q3のデバイス構造が図示されている。
図13においては、
図10とは異なり、トレンチTRに絶縁層OXLが埋め込まれている。例えば、
図10に示すデバイス構造においては、p型半導体領域PR2をp型エミッタとし、かつ、n型半導体層EPIをn型ベースとし、かつ、埋め込み層BSLをn型コレクタとする寄生pnp型バイポーラトランジスタが形成される。これに対し、
図13に示すデバイス構造では、トレンチTRに埋め込まれている層が埋め込み層(p型半導体層)BSLではなく、絶縁層OXLであるため、寄生pnp型バイポーラトランジスタが形成されない。これにより、本変形例2における半導体装置によれば、寄生pnp型バイポーラトランジスタに起因する誤点弧を防止することができ、これによって、半導体装置の信頼性を向上することができる。
 
【0061】
  なお、トレンチTRの内部に絶縁層OXLを埋め込むことによって、寄生pnp型バイポーラトランジスタの形成を防止するという本変形例2の技術的思想は、これに限らず、例えば、
図14に示すように、トレンチTRの内壁に絶縁膜OXFを形成し、かつ、トレンチTRの内部に絶縁膜OXFを介して、埋め込み層BSLを埋め込んでもよい。また、例えば、
図15に示すように、
図14に示すデバイス構造に対して、トレンチTRの底部に形成されている絶縁膜OXFを除去する構成でも、寄生pnp型バイポーラトランジスタの形成を防止するという本変形例2の技術的思想を具現化できる。
 
【0062】
  以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
 
【0063】
  例えば,
図1に示す基準電圧生成回路では、n型カレントミラー回路とp型カレントミラー回路とを直列に接続する構成例を示したが、前記実施の形態における技術的思想は、これに限らず、オペアンプを用いた基準電圧生成回路に適用することもできる。また、前記実施の形態では、基準電圧生成回路について説明したが、同じ原理で動作する基準電流生成回路にも、前記実施の形態における技術的思想を適用することができる。
 
【0064】
  前記実施の形態では、npnバイポーラトランジスタのp型ベースとn型コレクタとを短絡した構成を有するダイオードを例に挙げたが、前記実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、単純なpn接合ダイオードにも適用することができる。ただし、npnバイポーラトランジスタのp型ベースとn型コレクタとを短絡した構成を有するダイオードを採用する利点は、n型炭化珪素基板の表面側(半導体チップの表面側)からすべての端子(アノード端子とカソード端子)とを取り出すことができるため、半導体装置の実装構成が容易となる利点が得られる。