特許第6836992号(P6836992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836992少なくとも一種の金属酸化物のペレットを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836992
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】少なくとも一種の金属酸化物のペレットを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/62 20060101AFI20210222BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   G21C3/62 300
   G21C3/62 700
   C04B35/50
【請求項の数】25
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-532148(P2017-532148)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公表番号】特表2018-505394(P2018-505394A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】EP2015080266
(87)【国際公開番号】WO2016097171
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】1462740
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508313895
【氏名又は名称】オラノ サイクル
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーデ,ステファン
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−077095(JP,A)
【文献】 特開2012−088317(JP,A)
【文献】 国際公開第01/003143(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0201003(US,A1)
【文献】 特開2010−190842(JP,A)
【文献】 特開平09−236680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/62
C04B 35/50
C04B 35/51
C04B 35/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物の少なくとも一種の圧縮された粉末を焼結する方法であって、
前記方法は、希ガス、二水素及び水を含む雰囲気中において炉内において行われる以下の連続ステップ(a)〜(c)を含み:
(a)温度を初期温度Tから1400〜1800℃の範囲の温度である保持温度Tに上昇させるステップ;
(b)温度を前記保持温度Tに1〜10時間保持するステップ;及び
(c)温度を前記保持温度Tから最終温度Tに下降させるステップ、
前記方法は以下の特徴を備えている:
前記雰囲気における水の分圧P(HO)に対する二水素の分圧P(H)の比率が以下の通りである:
−前記ステップ(a)においてTから1000℃とTとの間の温度である第1の中間温度Ti1に達するまでの期間は500<P(H)/P(HO)≦50000、及び
−少なくとも前記ステップ(c)における期間であってTと1000℃との間の温度である第2の中間温度Ti2から最終温度Tに達するまでの期間はP(H)/P(HO)≦500。
【請求項2】
前記第1の中間温度Ti1が1000℃とTとの間の温度であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の中間温度Ti2がTと1300℃との間の温度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記比率P(H)/P(HO)≦500は前記温度が前記第1の中間温度Ti1に達した直後に実施され次いで前記温度が前記最終温度Tに達するまで継続的に実施されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
更にステップ(a)と(b)との間に以下の連続ステップ(a)〜(a)を含み:
(a) 温度を前記保持温度Tに1〜10時間保持するステップ、
(a) 温度を前記保持温度Tから第3の中間温度(Ti3)に下降させるステップ、
(a) 温度を前記第3の中間温度Ti3から前記保持温度Tに上昇させるステップ、
ここで前記雰囲気中の比率P(H)/P(HO)は以下の通りである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法:
− 前記ステップ(a)、(a)、(a)の期間においては、 500<P(H)/P(HO)≦50000、
− 前記ステップ(a)、(b)、(c)の期間においては、 P(H)/P(HO)≦500。
【請求項6】
前記第3の中間温度Ti3が20〜500℃の範囲の温度であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記保持温度Tが1700℃であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記初期温度T及び前記最終温度Tのうち少なくとも一方が室温であることを特徴
とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)における温度の上昇を30℃/h〜400℃/hの間の速度で行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)における温度の下降を100℃/h〜900℃/hの間の速度で行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(c)の実施後に酸化熱処理を更に含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記希ガスがアルゴン、ヘリウム及び窒素よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記希ガスがアルゴンであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記希ガスと二水素の体積比が90/10〜98/2の範囲の比率であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記希ガスと二水素の体積比が95/5であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属Mがアクチニドであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属MがU、Pu及びThよりなる群から選択されるアクチニドであることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記金属MがU及びPuよりなる群から選択されるアクチニドであることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記金属Mがランタニドであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属MがCeであることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記圧縮された粉末が更にスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物を少なくとも一種含み、前記金属Mは前記金属Mとは異なる金属であり、これにより前記ステップ(c)実施後にMとMとを含む混合酸化物が得られることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記金属Mがアクチニドであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属MがU、Pu及びThよりなる群から選択されるアクチニドであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記金属MがU及びPuよりなる群から選択されるアクチニドであることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物の少なくとも一種を含むペレットを製造するための方法であって、以下の連続的ステップを含むことを特徴とする方法:
(1)前記金属Mの酸化物の少なくとも一種の粉末を調製するステップ、
(2)前記調製した粉末をペレットの形状に圧縮するステップ、及び
(3)請求項1〜24のいずれか一項に記載の焼結法により圧縮された粉末のペレットに熱処理を行うステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペレット、特にウラン・プルトニウム混合酸化物(U,Pu)Oなどの少なくとも一種の金属酸化物のペレットを製造する方法に関する。
【0002】
前記製造方法は特に、単一金属酸化物を、あるいは少なくとも二種の金属を含む混合酸化物をも、対応する単一金属酸化物を含む圧縮された粉末から製造可能とする焼結法を実施し、前記単一金属酸化物又は混合金属酸化物は、出発原料である単一酸化物が微量の炭素酸化物を含有していたとしても向上した見掛比重と見掛比重の熱安定性とを有する。
【0003】
このような単一金属酸化物又は混合金属酸化物及びペレットは、特に軽水炉や高速中性子炉など種々の原子炉用の燃料の製造において大きな関心を集めている。
【背景技術】
【0004】
原子力産業の分野において用いる金属酸化物のうち、核燃料の製造において最も一般的に用いられる金属酸化物の一部としては、酸化ウラン、数種のウラン系混合酸化物及び特にウラン・プルトニウム混合酸化物(U,Pu)Oがある。
【0005】
実際、プルトニウムは多くの場合ウランとの混合物であり、加圧水炉(Pressurized−Water Reactor:PWR)、沸騰水型原子炉(Boiling−Water Reactor:BWR)を含む軽水炉(Light−Water Reactor:LWR)、または高速中性子炉(Fast Neutron Reactor:FNR)などの各種原子炉において、利用可能なエネルギー物質である。
【0006】
圧縮・焼結ペレットとして核燃料の製造に従来より使用されている混合金属酸化物は、多くの要件を満たしていなければならない。これら要件の一つとして、このような核燃料ペレットは十分高い見掛比重を有していなければならず、また後述のような基準に基づく安定性をも有していなければならない。
【0007】
ペレットの最終見掛比重は、当該ペレットの材料となる金属酸化物の粉末が均質であることや不純物含有量が少ないあるいは不純物を全く含んでいないことなどの特性ばかりではなく、当該ペレットを製造する方法におけるパラメーター、特に焼結ステップにおけるパラメーターにも依存する。
【0008】
混合酸化物(U,Pu)Oを含む核燃料ペレット(「MOX核燃料」又は「MOX燃料」ともいう)を製造する現在の方法は通常、およそ以下のステップを含む従来技術、いわゆる「粉末冶金」法に基づく:
−酸化ウランUO及びプルトニウム酸化物PuOの粉末を製造するステップ、このステップには特に、前記粉末を合成、混合及び/又は微粉砕することを含む、
−上記のように製造した粉末をペレットに成形するステップ、及び
−前記成形粉末を、特に焼結などの熱処理により高密度化するステップ。
【0009】
前記成形ステップは通常、300〜500MPaの成形圧力の印加による加圧及び/又は圧縮により行われる。
【0010】
従来技術において、あらかじめ成形された粉末を高密度化するステップは、炉内において以下の熱サイクルを行うことによりなされる焼結により行われる:
−例えば室温から1700℃の保持温度まで温度を上昇させるステップ、
−温度を前記1700℃の保持温度に4時間保持するステップ、及び
−前記1700℃の保持温度から室温まで温度を低下させるステップ。
【0011】
上記熱サイクルは、炉入口において制御されアルゴンと二水素と水との混合物(体積比Ar/H=95/5)を含む雰囲気中で行われる。
【0012】
前記雰囲気中に水が存在することにより、焼結における当該雰囲気の酸素ポテンシャルの制御が可能となり、これにより投入する燃料が要する化学量論的組成が得られる。この化学量論的組成は、金属のモル含有量Mに対する酸素のモル含有量Oの比率に相当する、比率O/Mにより定義される。
【0013】
この比率O/Mは、実際、核燃料ペレットを後に用いる原子炉の種類によって変化し得る。
【0014】
従って、Puの原子含有率がウラン原子とプルトニウム原子の合計含有率に対し15〜30%である混合酸化物(U,Pu)Oを含むペレットは、FNR型原子炉に用いために、少なくとも1.94、更に一般的には約1.98のO/M比を有していなければならない。
【0015】
このような比率O/Mの値を得るために、高密度化ステップを行うために適用される熱サイクルの間に炉内で優勢となる、体積比Ar/Hが95/5である水素・アルゴン混合雰囲気は以下の含水量を有する:
−ウラン原子とプルトニウム原子の含有率との合計に対しPuの原子含有率が約15%である場合、10〜200ppm、及び
−ウラン原子とプルトニウム原子との含有量の合計に対しPuの原子含有率が約30%である場合、100〜500ppm。
【0016】
LWR型原子炉に用いるために、Puの原子含有率がウラン原子とプルトニウム原子との含有量の合計に対し12%以下である混合酸化物(U,Pu)Oのペレットは、少なくとも2.00の比率O/Mを有していなければならない。上記値は、炉内に形成した二水素の体積が5%である水素−アルゴン雰囲気中において、含水率1000ppm以上の場合に得られる。
【0017】
このように、従来の粉末冶金法によれば、シャモット(廃土を再利用する際に生じた残部から生成される混合酸化物(U,Pu)O)を混合物として含んで良い酸化ウランUOの粉末とプルトニウム酸化物PuOの粉末とから混合酸化物(U,Pu)Oを含むペレットが得られる。
【0018】
混合酸化物(U,Pu)Oを含むペレットは、目標基準のうち、特に以下の2つの基準を満たさなければならない:
−見掛比重が理論比重に対して94.5%以上であること(密閉気孔率6.5%未満に相当する)、及び
−前記見掛比重の熱安定性を生じさせるべきペレットに脱緻密化が生じないこと、この熱安定性が焼結において等温線の維持(従来技術においては1700℃で24時間加熱することにより行う)による効果によっても低下しないこと。
【0019】
しかしながら、粉末冶金法により製造した混合酸化物(U,Pu)Oの焼結ペレットの大部分が上記基準の両方を満たす場合であっても、当該ペレットのいくつかについては、要求される特定の見掛比重及び/又は見掛比重の熱安定性が得られない場合がある。
【0020】
このことは、質量含有率が典型的には炭素当量で500ppm以上の炭素である「極微量」ともいう少量の炭素種を含む酸化ウランUO及びプルトニウム酸化物PuOの粉末から前記粉末冶金法により製造される混合酸化物(U,Pu)Oを含むペレットの場合に特に当てはまる。発明者らは実際、このような焼結ペレットにおいて、焼結のために等温線を1700℃で24時間維持することの効果により脱緻密化を生じること、及びその結果上述の見掛比重の第2の熱安定性基準を満たさないことを見いだした。このようなUO粉末及びPuO粉末が極微量の炭素種を含む場合に見られる脱緻密化現象は、ペレットの多孔質化による膨張を生じさせ、これにより当該ペレットを原子炉における使用に適さないものとさせてしまう。
【0021】
混合酸化物(U,Pu)Oを含む焼結ペレットの見掛比重及び/又は見掛比重の熱安定性に対して有害となるような含有量の炭素種は、粉末冶金法において行う酸化ウランUO粉末及び/又はプルトニウム酸化物PuO粉末の合成工程自体に由来して生じる。
【0022】
このようなUO粉末及びPuO粉末は、従来技術では気体通路又は液体通路において合成される。液体通路における合成においては特に、沈殿ステップ、濾過ステップ、次いで仮焼ステップを行うことが必要である。しかしながら、仮焼ステップは、それにより生じるUO粉末及びPuO粉末中に存在する炭素種の含有量と性質とを著しく条件付けてしまう。従来技術においてはこの仮焼ステップは、濾過により得た沈殿物を炭素種に含まれる炭素を酸化させる雰囲気中において1000℃未満の温度で仮焼することにより、沈殿物を後に前記粉末冶金法により処理する酸化物へと変換するために行う。
【0023】
しかしながら、この仮焼ステップにおける金属酸化物中における炭素種の最終含有量の低減に有利な温度条件と雰囲気条件とは、技術的理由(炉内の構成要素のいくつかの抵抗の問題など)、安全上の理由(爆発の危険性)、及び/又は得られる製品の性質の制御に関する理由(比率O/Mの変更及び/又は金属酸化物の結晶構造の変更など)により必ずしも満たされるものではない。
【0024】
これら酸化ウランUO粉末及びプルトニウム酸化物PuO粉末に対する炭素種による汚染は、それらUO粉末及びPuO粉末の合成中に添加する添加物(結合剤、有機潤滑剤)など他の汚染源によっても生じる。またこの汚染は前記合成工程における操作条件(雰囲気条件、研磨容器、輸送容器)によっても発生し得る。
【0025】
酸化ウランUOの粉末及び/又はプルトニウム酸化物PuOの粉末における、特に当該炭素種の炭素当量含有量が500ppm以上となるようなこれら炭素種の存在という問題を解決するために、炭素種及びそれらの副産物の分解及び/又は揮発を促進するように(成形済みの)UO粉末とPuO粉末とを高密度化するステップを例えば水を加えるなどして炭素をより酸化させる条件下における雰囲気中において行うことが示唆されている。
【0026】
しかしながら、このようなより酸化させる条件下において焼結を行ったとしても、ペレットが予想外に脱緻密化される場合もあるので、満足な結果が得られるわけではない。
【0027】
すなわち、酸化率がより高い条件下において焼結を行う従来の粉末冶金法により製造したペレットの気孔率は10容量パーセントまでの範囲の値をとる。このように、気孔率は、基本的に密閉気孔率となるため、高密度化(焼結)ステップにおける1700℃の保持温度における保持時間を長くすることなどのパラメーターの変更によっては低減させることはできない。
【0028】
従って本発明の目的は、上述の課題を解決することと、UO及びPuOを含む圧縮された粉末を焼結する方法であって、特に前記圧縮された粉末が500ppm以上の炭素当量含有率による炭素種を含む場合において以下の基準の両方を満たし混合酸化物(U,Pu)Oを特にペレットの形態で得ることを可能とする方法を提供することとにある:
−見掛比重が理論比重に対して94.5%以上であること、及び
−1700℃で24時間の焼結等温式の効果の下のこの見掛比重の熱安定性、
−焼結のために等温線を1700℃で24時間維持することによる効果により熱安定性が低下しないこと。
【0029】
本発明の他の目的は、対応する混合酸化物(U,Pu)Oを得るためのUO及びPuOを含む圧縮された粉末の焼結ステップに限らず、以下の焼結ステップをも含む焼結法を提供することにある:
−前記対応する混合金属酸化物を得るための少なくとも二種の異なる金属酸化物を含む圧縮された粉末を焼結するステップ、ここで前記各金属はアクチニド及びランタニドより成る群から選択される;及び
−金属酸化物を含む圧縮された粉末を焼結するステップ、ここで前記金属はアクチニド及びランタニドより成る群から選択される、
前記方法において、前記ステップにより得られた前記混合金属酸化物又は単一金属酸化物は、前記圧縮された粉末が質量含有率が典型的には炭素当量で500ppmの炭素である極微量の炭素種を含む場合であっても向上した見掛比重と見掛比重の熱安定性とを有する。
【0030】
本発明の他の目的は、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属から核燃料ペレットなどのペレットを製造する方法であって、前記ペレットは任意に極微量の炭素種を含みかつ向上した見掛比重と見掛比重の熱安定性とを有しており、かつ混合金属酸化物を含むペレットにおける相分散、例えば混合酸化物(U,Pu)OにおけるU−Pu相の分散が均質であることを特徴とする微細構造を備えていることを特徴とする方法を提供することにある。
【発明の詳細な説明】
【0031】
本発明の上記目的及び他の目的はまず、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物の少なくとも一種の圧縮された粉末を焼結する方法により達成される。前記方法は、希ガス、二水素及び水を含む雰囲気中において炉内において行われる以下の連続ステップ(a)〜(c)を含む:
(a)温度を初期温度Tから1400〜1800℃の範囲の温度である保持温度Tに上昇させるステップ;
(b)温度を前記保持温度Tに1〜10時間保持するステップ;及び
(c)温度を前記保持温度Tから最終温度Tに下降させるステップ。
【0032】
本発明において、前記雰囲気における水の分圧P(HO)に対する二水素の分圧P(H)の比率は以下の通りである:
−ステップ(a)においてTから1000℃とTとの間の温度である第1の中間温度Ti1に達するまでの期間は500<P(H)/P(HO)≦50000、及び
−少なくともステップ(c)における期間であってTと1000℃との間の温度である第2の中間温度から最終温度Tに達するまでの期間はP(H)/P(HO)≦500。
【0033】
本発明に係る焼結法によれば、仮定値である金属酸化物の理論比重に対して94.5%以上の見掛比重を有する金属酸化物を得ることができ、前記見掛比重の熱安定性を向上させることができる。
【0034】
ここで「アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物の少なくとも一種」という文言は、圧縮された粉末が、前記金属Mの単一の酸化物からだけでなく、前記金属Mの酸化物の2種以上から作られていてもよく、また前記金属Mは2つ以上の異なる酸化度を有していてよいことを意味する。
【0035】
本発明に係る焼結法を行うことにより、二酸化ウランUO、二酸化プルトニウムPuO、二酸化セリウムCeO(セリアともいう)などが得られ、それらの単一金属酸化物は大幅に向上した見掛比重及び見掛比重の熱安定性を有するという特徴を備える。
【0036】
本発明の特に有利な変形例において、前記圧縮された粉末は更に、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物の少なくとも一種を含み、ここでMはMとは異なる金属であり、これによりステップ(c)実施後にMとMとを含む混合酸化物が得られる。
【0037】
上述の金属Mの場合と同様に、「スカンジウム、イットリウム、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの酸化物の少なくとも一種」という文言は、前記圧縮された粉末が金属Mの酸化物を一種のみ含んでいてよく、そればかりか、この金属Mが異なる酸化度を有し、金属Mの酸化物を複数含んでいてよいことを意味する。
【0038】
本発明に係る焼結法のこのような変形例によれば、金属Mの酸化物とMの酸化物とから、仮定値である金属酸化物の理論比重に対して94.5%以上の見掛比重を有する金属MとMとを含む混合酸化物が得られ、この場合見掛比重は更に熱的に安定であり、これにより焼結工程後に得られる前記焼結混合酸化物の膨張も生じない。
【0039】
本発明に係る焼結法の実施は、例えば、ウラン・プルトニウム混合酸化物(U,Pu)O及びセリウム・イットリウム混合酸化物(イットリア化セリウム(Ce,Y)Oともいう)を得ることを可能にし、これらの金属混合酸化物は、顕著に改善された見掛比重及び見掛比重の熱安定性によっても特徴付けられる。
【0040】
この結果は、予想外に驚くべきことに、以下の2つの異なる段階の実施により得られた:
−前記比率P(H)/P(HO)が500<P(H)/P(HO)≦50000である、炭素種に含有される炭素の還元条件下であるいわゆる「水素化」雰囲気中において行われる焼結に対応する第1の段階。この第1の段階は、温度上昇ステップ(a)、より正確には初期温度Tから1000℃と前記保持温度Tの間にある第1の中間温度Ti1まで温度を上昇させるステップ(a)において行われるものである;
−前記比率P(H)/P(HO)がP(H)/P(HO)≦500である、前記第1の段階と比べて炭素種に含有される炭素の還元率がより低く酸化率がより高い条件下で行われる焼結に対応する第2の段階。この第2の段階は、少なくとも温度下降ステップ(c)における期間、すなわちTと1000℃との間の温度である第2の中間温度Ti2から最終温度Tに達するまでの期間において行われる。
【0041】
上記のように、これら第1及び第2の熱処理段階は、分圧比率P(H)/P(HO)の値が異なることにより互いに区別される。これらの比の値は、水又は二水素との反応して水を生成する二酸素のいずれかの適した量を炉に投入することにより調整することができる。
【0042】
これら異なる段階は両方とも同一の熱サイクルにおいて又はそれぞれを2つの連続的な熱サイクルにおいて実施され得る。
【0043】
添付の図1A及び1Bは、同一の熱サイクルにおいてこれら2つの異なる段階を行う第1のケースを実施するための2つの形態の例を示す。
【0044】
添付図1Aを参照すると、500<P(H)/P(HO)≦50000である第1の段階とP(H)/P(HO)≦500である第2の段階とを含む前記熱サイクルは、温度を初期温度Tから保持温度Tに上昇させるステップ(a)と、温度を前記保持温度Tに保持するステップ(b)と、温度を前記保持温度Tから最終温度Tに下降させるステップ(c)とから成る。
【0045】
図1Aに示すように、温度上昇ステップ(a)は前記初期温度Tと前記保持温度Tと間の温度である第1の中間温度Ti1を含んでおり、この第1の中間温度Ti1は1000℃とTの間の温度である。
【0046】
更に、温度下降ステップ(c)は、前記保持温度Tと前記最終温度Tとの間の温度である第2の中間温度Ti2を含んでおり、この第2の中間温度Ti2はTと1000℃との間の温度である。
【0047】
図1Aにおいて、TとTi1とを結ぶ破線は500<P(H)/P(HO)≦50000である第1の段階を示し、Ti2とTとを結ぶ太線はP(H)/P(HO)≦500である第2の段階を示す。
【0048】
このように、本発明に係る焼結法は、熱サイクルの一部を前記炭素及び出発金属酸化物を還元する雰囲気中において行い、前記出発金属酸化物は金属Mの酸化物の少なくとも一種、必要に応じて金属Mの酸化物の少なくとも一種に対応し、前記比率P(H)/P(HO)は500<P(H)/P(HO)≦50000であるという特徴を備えているため、分解及び/又は揮発によりこれら炭素種を除去する従来の方法とは明らかに相違するものである。前記第1の段階は温度上昇ステップ(a)において、少なくともTからTi1までの期間に行うが、あるいはTからTの期間に行っても良い。
【0049】
また、本発明に係る焼結法の熱サイクルは従来の方法に従い行う部分も含んでおり、当該部分は、熱サイクルの前記一部分と比べて還元率がより低く(あるいは酸化率がより高い)かつ含水率をP(H)/P(HO)を高めてP(H)/P(HO)≦500とした条件下において行う。この第2の段階は、少なくとも温度下降ステップ(c)の期間、すなわち、少なくとも温度Ti2からTに達するまでの期間あるいは温度TからTに達するまでの期間において行う。
【0050】
すなわち、この第2の段階を行うことにより、前記単一又は混合金属酸化物の比率O/Mを、得られる前記金属酸化物を用いるFNRやLWRなどの原子炉の種類の関数とする所望の値とすることが可能となる。
【0051】
特に、前記比率O/Mを高めるため、含水率をP(H)/P(HO)≦500とするこの熱サイクルの第2の段階は、有利には、温度下降ステップ(c)の全期間、すなわち前記保持温度TからTまでの期間において行って良いが、これに限らず、温度を前記保持温度Tに保持するステップ(b)の全期間又は一部の期間において行っても良い。
【0052】
添付図1Bは、温度を前記保持温度Tに保持するステップ(b)及び前記保持温度Tから前記最終温度Tまで温度を下降させるステップ(c)の全期間に渡り前記熱サイクルの第2の段階を行う場合を示す。
【0053】
本発明に係る焼結法の一変形例において、温度上昇ステップ(a)における第1の中間温度Ti1は、1300℃〜Tの範囲の温度である。
【0054】
前記比率P(H)/P(HO)を500<P(H)/P(HO)≦50000とする前記熱サイクルの第1の段階は特に、図1Bに示すようにTから前記保持温度Tまでの期間、すなわち温度上昇ステップ(a)の全期間に渡り行って良い。
【0055】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、温度下降ステップ(c)における第2の中間温度Ti2はT〜1300℃の範囲の温度である。
【0056】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、前記比率P(H)/P(HO)をP(H)/P(HO)≦500とする前記熱サイクルの第2の段階は、温度が第1の中間温度Ti1に達した直後に開始し次いで温度が前記最終温度Tに達するまで継続的に行って良く、この場合の第1の中間温度Ti1は1000℃〜保持温度Tの範囲の温度である。すなわち、この変形例においては、Ti1=Tである場合を除き、前記比率P(H)/P(HO)≦500を、温度上昇ステップ(a)の一部の期間、すなわち温度が前記第1の中間温度Ti1と前記保持温度Tとの範囲にある期間において適用し、また温度を前記保持温度Tに保持するステップ(b)と温度が前記保持温度Tから最終温度Tの範囲にある温度下降ステップ(c)との全期間にわたり適用する。
【0057】
図1Bに示すような特にTi1=Tである場合は:前記比率P(H)/P(HO)≦500は、前記保持温度Tを保持するステップ(b)の期間及び前記保持温度Tから最終温度Tまでの温度を下降させるステップ(c)の期間において適用する。
【0058】
このように、前記焼結熱サイクルの第2の段階は前記第1の段階終了直後に開始して良い。しかしながら、本発明に係る焼結法のステップ(a)は温度を前記第1の中間温度Ti1に保持する中間保持ステップを含むよう構成してもよく、この場合の中間保持温度により熱サイクルの第1及び第2の段階が区別される。
【0059】
添付図2は、2つの異なる段階を2つの連続的熱サイクルにより行う第2の例の実施形態を示す。
【0060】
2つの異なる段階を2つの連続熱サイクルにより行う本実施形態において、本発明に係る焼結法は更に、ステップ(a)と(b)との間に行う以下の連続ステップ(a)〜(a)を含む:
(a) 温度を前記保持温度Tに1〜10時間保持するステップ、
(a) 温度を前記保持温度Tから第3の中間温度(Ti3)に下降させるステップ、
(a) 温度を前記第3の中間温度Ti3から前記保持温度Tに上昇させるステップ、
ここで前記雰囲気の含水率P(H)/P(HO)は以下の通りである:
ステップ(a)、(a)、(a)の期間においては500<P(H)/P(HO)≦50000、
−ステップ(a)、(b)、(c)の期間においてはP(H)/P(HO)≦500。
【0061】
添付図2を参照して、前記比率P(H)/P(HO)を500<P(H)/P(HO)≦50000とし「水素化された」雰囲気中において行う焼結に対応する第1の段階を、温度をTからTに上昇させるステップ(a)と、温度を前記保持温度Tに保持するステップ(a)と、温度をTからTi3に下降させるステップ(a)とを含む第1の熱サイクルに対応する点線として示した。
【0062】
また、前記比率P(H)/P(HO)をP(H)/P(HO)≦500とし前記第1の段階と比べて炭素種に含有される炭素の還元率がより低く酸化率がより高い条件下で行われる焼結に対応する第2の段階を、温度をTi3から保持温度Tに上昇させる温度上昇ステップ(a)と、温度をTに保持するステップ(b)と、温度をTからTに下降させるステップ(c)とを含む第2の熱サイクルに対応する太線として示した。
【0063】
有利な一変形例において、前記第3の中間温度Ti3は、20〜500℃の範囲の温度である。
【0064】
図2に示す2つの連続的な熱サイクルにより行われる本発明に係る焼結法は同一の焼結路において行うことができるが、あるいは、より有利には、2つの異なる焼結炉において行うことができ、この場合具体的には、前記比率P(H)/P(HO)により定義した操作条件を各炉に対し適用する。
【0065】
以下に説明する焼結法の各具体的変形例は、1つの熱サイクルを行うか2つの熱サイクルを行うかに関わらず適用可能である。
【0066】
本発明の焼結法の一変形例、特に前記比率O/Mを増大可能とする一変形例において、この焼結法は、ステップ(c)の後に行う制御酸化処理などの酸化熱処理を更に含んでいて良い。
【0067】
このような酸化熱処理は、例えば以下の連続したステップを含んで成っていて良い:
−温度を室温から、例えば900〜1400℃の範囲の保持温度まで上昇させるステップ、
−温度を前記保持温度に1〜10時間保持するステップ、及び
−次いで温度を前記保持温度から室温まで下降させるステップ。
【0068】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、前記保持温度Tは1700℃である。
【0069】
ステップ(a)について上述したのと同様、本発明に係る焼結法のステップ(c)は温度を第2の中間温度Ti2に保持するための中間保持ステップを含んでいて良く、この中間保持ステップにより熱サイクルの第1の段階と第2の段階とが区別されて良い。
【0070】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、ステップ(a)の初期温度T及び/又はステップ(c)の最終温度Tは室温に対応する。
【0071】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、ステップ(a)及び任意にステップ(a)における温度の上昇は30℃/h〜400℃/hの範囲の速度で行う。
【0072】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、ステップ(c)及び任意にステップ(a)における温度の下降は100℃/h〜900℃/hの範囲の速度で行う。
【0073】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、焼結炉に充填した雰囲気中の希ガスはアルゴン、ヘリウム及び窒素よりなる群から選択される。有利には、この希ガスはアルゴンである。
【0074】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、希ガスの二水素に対する体積比は90/10〜98/2の範囲とする。
【0075】
特に有利には、この希ガス/Hの体積比は、95/5である。このような希ガス/H体積比を95/5とする条件の場合、炉内に充填した雰囲気中、水は以下の量で存在する:
−本発明に係る焼結法の熱サイクルの第1の段階、すなわち前記比率P(H)/P(HO)を500<P(H)/P(HO)≦50000とする場合においては厳密に100ppm未満の量、より正確には、1ppm(以上)〜100ppm(未満)の範囲の量、及び
−本発明に係る焼結法の熱サイクルの第2の段階、すなわち前記比率P(H)/P(HO)をP(H)/P(HO)≦500とする場合においては100ppm以上の量。
【0076】
本発明に係る焼結法の他の有利な変形例において、M又はMがアクチニドである場合、前記アクチニドはウラン(U)、プルトニウム(Pu)、トリウム(Th)及びアメリシウムAmよりなる群から選択されるものであり、有利にはU、Pu及びThよりなる群から選択されるものであり、優先的にはU及びPuよりなる群から選択されるものである。
【0077】
本発明に係る焼結法の他の変形例において、M又はMがランタニドである場合、前記ランタニドはセリウム(Ce)である。
【0078】
本発明の第2の実施形態は、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの少なくとも一種の酸化物を含むペレットを製造する方法に関し、特に核燃料ペレットを製造する方法に関する。
【0079】
本発明によれば、この製造方法は、以下の連続的ステップを含む:
−金属Mの前記少なくとも一種の酸化物の粉末を調製するステップ、
−前記調製した粉末をペレットの形状に成形するステップ、及び
−上述の通り定義した焼結法により成形した粉末ペレットを熱処理するステップ、より有利にはこの焼結法の特徴は単独で又は組合せにより適用して良い。
【0080】
すなわち、アクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの少なくとも一種の酸化物を含むペレットを製造するこの方法は、以下の連続的ステップを含む:
(1)金属Mの前記少なくとも一種の酸化物の粉末を調製するステップ、
(2)前記調製した粉末をペレットの形状に成形するステップ、
(3)前記ペレット形状に成形した粉末を希ガス、二水素及び水を含む雰囲気の炉内に投入するステップ、
(4)温度を初期温度Tから1400℃〜1800℃の範囲の温度である保持温度Tまで温度を上昇させるステップ、
(5)温度を前記保持温度Tに1〜10時間保持するステップ、及び
(6)前記保持温度Tから最終温度Tまで温度を下降させるステップ、
前記雰囲気において含水比率P(H)/P(HO)は以下の通りである:
−ステップ(4)の期間、すなわち温度をTから1000℃〜の範囲の温度である第1の中間温度Ti1まで上昇させる期間においては500<P(H)/P(HO)≦50000、及び
−少なくともステップ(6)の間、すなわち温度を〜1000℃の範囲の温度である第2の中間温度Ti2からTまで下降させる期間においてはP(H)/P(HO)≦500。
【0081】
このように、本発明に係る製造方法によれば、仮定値である酸化物の理論比重の94.5%以上の見掛比重を有する金属酸化物のペレットを得ることが可能となり、この場合前記見掛比重の熱安定性は更に向上し、これにより前記熱処理ステップ(6)後に得られる焼結ペレットの膨張を回避することができる。
【0082】
金属Mの前記少なくとも一種の酸化物の粉末を調製するステップ(1)は特に、以下よりなる群から選択されるステップを含んでいて良い:金属Mの前記酸化物を合成するステップ、金属Mの前記酸化物を粉砕して粉末とするステップ、金属Mの前記酸化物の粉末を超微粉砕するステップ、及び金属Mの前記酸化物の粉末と添加物とを混合するステップ。
【0083】
特に、前記成形した粉末がMと異なりアクチニド及びランタニドよりなる群から選択される金属Mの少なくとも一種の酸化物を更に含む場合は、前記粉末を調製するステップ(1)はまた、金属Mに関して行う少なくとも一つの前記ステップを含んでいて良く(すなわち金属Mの酸化物を合成するステップ、金属Mの前記酸化物を粉砕して粉末とするステップ、金属Mの前記酸化物の粉末を超微粉砕するステップ、及び金属Mの前記酸化物の粉末と添加物とを混合するステップ)、更に、金属Mの酸化物の粉末と金属Mの酸化物の粉末との混合物を調製するステップを含んでいて良い。
【0084】
本発明の第3の実施形態は、上述の通り定義した製造方法を実施することにより製造される金属Mの少なくとも一種の酸化物を含むペレットの使用に関し、この場合、この製造方法の有利な特徴は単独又は組合せにより適用可能である。
【0085】
本発明によれば、金属Mの前記少なくとも一種の酸化物を含むペレットは原子力分野において使用可能である。
【0086】
本発明の有利な一実施形態において、金属Mの前記少なくとも一種の酸化物を含むペレットは高速中性子炉又は加圧水原子炉若しくは沸騰水型原子炉などの軽水炉用核燃料として使用可能である。
【0087】
本発明の更なる特徴及び効果は以下の補足説明を読むことでより明らかとなるであろう。以下の補足説明は本発明にかかるウラニウム・プルトニウム混合酸化物の製造方法の2つの実施例に関するものであり、このうち一方の実施例においてはPuの原子含有率は10%(実施例1)であり、他方の実施例においてはPuの原子含有率は30%(実施例2)であり、ここでPuの原子含有率はPu原子含有率とU原子含有率の合計に対する比率である。
【0088】
特に図3A、3B、4A及び4Bを参照する以下の補足説明は本発明の目的を説明するためのみのものであり、本発明の目的はそれらに限定されると解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1A及び1Bは本発明に係る焼結法において1つの熱サイクルを実施する場合の各ステップを模式的に示す。
【0090】
図2は、本発明に係る焼結法において2つの連続的な熱サイクルを実施する場合の各ステップを模式的に示す。
【0091】
図3A及び3Bは光学顕微鏡により撮像した写真を示し、前記焼結法実施後に得られたペレットのUO侵襲後における微細構造F1.1図3A)及びF1.3図3B)を示す。
【0092】
図4A及び4Bは光学顕微鏡により撮像した写真を示し、前記焼結法実施後に得られたペレットのUO侵襲後における微細構造F2.1図4A)及びF2.2図4B)を示す。
【0093】
図1A、1B及び2は前章において上述した通りである。
【実施例】
【0094】
実施例1:
化学式(U0.9023,Pu0.0977)Oにより表されるウラン・プルトニウム混合酸化物のペレットの製造
【0095】
圧縮された粉末のペレットの調製
本実施例1は、酸化ウランUOの粉末とプルトニウム酸化物PuOの粉末との混合物を出発材料として実施した。この混合物は、1850ppm+/−100ppmの炭素含有ばかりでなく、PuとUの全原子の含有量に対して44%のPu原子含有率を有する。
【0096】
この混合物に対しシャモット(リサイクルされた製造廃棄物由来の混合酸化物(U,Pu)O)の粉末)を加え、一次混合物を調製した。このシャモットは、この一次混合物中のPu原子含有率とU原子含有率との合計に対しPuの原子含有率を44%から28%に減少させることが可能となる量で添加される。
【0097】
次いでこの一次混合物を粉砕し、その後篩い分けし、いわゆる「マスターバッチ」を得た。
【0098】
次いでこのマスターバッチに酸化ウランUOの粉末を加えてプルトニウム希釈し、U/Pu原子比率が90.23/9.77である粉末の最終混合物を得た。この最終混合物は円筒状錠剤の形状を有するペレットに圧縮された。
【0099】
1.1、F1.2及びF1.3は3つの異なる焼結法を示し、これら方法を上記により得たペレットに対し実施し、化学式(U0.9023,Pu0.0977)Oにより表されるウラン・プルトニウム混合酸化物を含む焼結ペレットを得た。
【0100】
焼結法F1.1(基準)
第1のペレット群を以下の熱サイクルを行う焼結炉に投入した:
(a1.1)温度を120℃/hの速度で室温から1700℃の保持温度に上昇させるステップ、
(b1.1)この1700℃の保持温度を4時間保持するステップ、及び
(c1.1)次いで温度を300℃/hの速度で1700℃の保持温度から20℃の室温まで下降させるステップ。
【0101】
上述した熱サイクルのこれら3つのステップ(a1.1)、(b1.1)及び(c1.1)を、体積比Ar/Hを95/5、含水率P(H)/P(HO)=42とするアルゴン、二水素及び水を含む雰囲気中において行った。この含水率42は、炉に充填した雰囲気中における1200ppmの水量に相当する。
【0102】
焼結法F1.2(本発明に係る方法)
第2のペレット群を以下の熱サイクルを行う焼結炉に投入した:
(a1.2)温度を120℃/hの速度で室温から1500℃の第1の中間温度に上昇させるステップ、
(a’1.2)温度を120℃/hの速度で第1の中間温度1500℃から1700℃の保持温度に上昇させるステップ、
(b1.2)この1700℃の保持温度を4時間保持するステップ、及び
(c1.2)次いで温度を300℃/hの速度で1700℃の保持温度から20℃の室温まで下降させるステップ。
【0103】
上述した熱サイクルのこれら4つのステップ(a1.2)、(b1.2)、(a’1.2)及び(c1.2)を、体積比Ar/Hを95/5とするアルゴン・二水素混合雰囲気中において、含水率P(H)/P(HO)を以下のようにした条件下で行った:
・ステップ(a1.2)においては含水率P(H)/P(HO)を1000〜5000、すなわち前記雰囲気中における水量50〜10ppmに相当する量、及び
・次いでステップ(b1.2)、(a’1.2)及び(c1.2)においては含水率P(H)/P(HO)を42、すなわち前記雰囲気中における水量1200ppmに相当する量。
【0104】
ステップ(a1.2)おいて雰囲気中で使用される水の量は、関与する少量を考慮し、間隔をおいて供給される。
【0105】
焼結法F1.3(本発明に係る方法)
第3のペレット群を以下の熱サイクルを行う焼結炉に投入した:
(a1.3)温度を120℃/hの速度で室温から1700℃の保持温度に上昇させるステップ、
(b1.3)この1700℃の保持温度を4時間保持するステップ、及び
(c1.3)次いで温度を300℃/hの速度で1700℃の保持温度から20℃の室温まで下降させるステップ。
【0106】
上述した熱サイクルのこれら3つのステップ(a1.3)〜(c1.3)を、体積比Ar/Hを95/5とするアルゴン、二水素及び水を含む雰囲気中で、
・ステップ(a1.3)においてはP(H)/P(HO)比を1000〜5000、すなわち前記雰囲気中における水量50〜10ppmに相当する、及び
・次いでステップ(b1.3)及び(c1.3)においては(H)/P(HO)比を42、すなわち前記雰囲気中における水量1200ppmに相当、
のようにした条件下で行った。
【0107】
化学式(U0.9023,Pu0.0977)Oにより表される混合酸化物を含むペレットの特性決定
焼結法F1.1、F1.2及びF1.3の実施後に得られた混合酸化物(U0.9023,Pu0.0977)Oを含むペレットの3つの群はそれぞれ無疵であった。
【0108】
以下に記載するプロトコルに従い、これらの3つの群の焼結ペレットの特徴を決定し、各群の比率O/M及び見掛比重値(これらの値に基づき開放気孔率及び密閉気孔率値も推算した)並びに微細構造及び熱安定性を決定した。
【0109】
特性決定プロトコル
比率O/Mは熱重量分析により、水飽和二水素雰囲気中、温度約950℃にて測定した。得られた値の不確定度は超低(典型的には0.003未満)であった。
【0110】
理論比重に対する百分率として表す見掛比重Dhは、アルキメデスの原理を適用することにより、静水力学的計量法により、静水力学的計量装置を用いてブロモベンゼン中における比重を測定した。
【0111】
開放気孔率Po、密閉気孔率Pfは下記式により、見掛比重Dhの値から推算した:
【0112】
【数1】
【0113】
ここでDth及びDgはそれぞれ理論比重と幾何比重である。
【0114】
各焼結ペレットを長手方向断面と半径方向断面とから光学顕微鏡を用いて観察し、微細構造を分析した。UOの化学腐食によりUO及びUPuOの島が存在が明らかになった。COFRAC N°74541B又は74541Aによる認定対物ミクロメーターを予め較正したところ、寸法測定における相対的不確定度は典型的には10%未満であった。
【0115】
焼結ペレットの3つの群の見掛比重の熱安定性を決定するために、これらペレットに対する熱処理は、各ペレットを炉に、アルゴン・二水素混合物(Ar/H体積比を95/5とした)を形成された雰囲気下で1700℃で24時間置くことにより行われた。この処理開始から24時間経過時点で、炉出口におけるこれらペレットの見掛比重を静水力学的計量法により測定した。各焼結ペレットの状態は「良好」と思われた。すなわち、各焼結ペレットは十分な熱安定性を備えた見掛比重を備えており、1700℃で24時間処理後の各焼結ペレットの見掛比重の変動率は0〜1.9%であった。
【0116】
各焼結ペレットを溶解させた後、Sylab社製アナライザー(モデル名:CSBOX−HF)を用いてIR分光測光方法により炭素分を測定した。
【0117】
焼結ペレットの特性決定
焼結法F1.1、F1.2及びF1.3により得られた各ペレット全ての比率O/Mは2.00であった。この時の条件は、温度を1700℃の保持温度に維持するステップ(b1.1)、(b1.2)及び(b1.3)の期間及び温度を1700℃から20℃に下降させるステップ(c1.1)、(c1.2)及び(c1.3)の期間においては、含水率P(H)/P(HO)=42により設定した酸素ポテンシャルを適用した。
【0118】
焼結法F1.1、F1.2及びF1.3実施後のこれら各ペレットの他の(上述の各プロトコルに従い決定した)特性データを下表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
表1から分かるように、焼結法F1.1から焼結法F1.3へと切り替えると各焼結ペレットの見掛比重が増加する反面、それぞれの密閉気孔率は減少した。
【0121】
より正確には、基準焼結法F1.1を実施した各ペレットの気孔率は密閉気孔性のものが多く(6.1%)、マスターバッチ塊に見られた。図3Aから分かるように、これらマスターバッチ塊の寸法は50μm〜100μmの範囲であった。一方、焼結法F1.1を実施した各ペレットの見掛比重の熱安定性は基準に満たないものであった。見掛比重の変動は−1%であったが、このことはペレットが1700℃で24時間の熱処理の後に膨張し脱緻密化されたことを意味するからである。
【0122】
本発明に係る焼結法F1.3を実施した各ペレットの見掛比重値はDthの97.1%と最も高かった。更に、図3Bから明らかである通り、これら焼結ペレットの微細構造中におけるプルトニウムの分散はより均質であり、その結果、ウラン含有相に比べプルトニウム含有相の体積比の方が高くなっていた。更に、図3Aと3Bとを比較すると、焼結法F1.3を実施した各ペレットに存在するマスターバッチ塊の気孔率は、焼結法F1.1を実施した各ペレットに存在するマスターバッチ塊の気孔率より低かった。
【0123】
実施例2:
化学式(U0.7,Pu0.3)Oにより表されるウラン・プルトニウム混合酸化物のペレットの製造
圧縮された粉末を含むペレットの調製
本実施例2は、酸化ウランUOの粉末とプルトニウム酸化物PuOの粉末との混合物を出発材料として実施した。この混合物においてPuの原子含有率は30%とした。この原子含有率は、Pu原子含有率とU原子含有率とを合わせたものと炭素分3500ppm+/−100ppmとの合計に対する比率である。
【0124】
この混合物を成形して円筒状錠剤の形状を有するペレットを得た。
【0125】
得られた各ペレットに対し3つの異なる焼結法F2.1、F2.2及びF2.3を実施し、化学式(U0.7,Pu0.3)Oにより表されるウラン・プルトニウム混合酸化物の各焼結ペレットを得た。
【0126】
焼結法F2.1(基準)
第1のペレット群を以下の熱サイクルを行う焼結炉に投入した:
(a2.1)温度を速度50℃/hで室温から1700℃の保持温度に上昇させるステップ、
(b2.1)この1700℃の保持温度を4時間保持するステップ、及び
(c2.1)次いで温度を300℃/hの速度で1700℃の保持温度から20℃の室温まで下降させるステップ。
【0127】
上述した熱サイクルのこれら3つのステップ(a2.1)、(b2.1)及び(c2.1)を、体積比Ar/Hを95/5とするアルゴン・二水素混合雰囲気中において、含水率P(H)/P(HO)≦500とした条件下で行った。この含水率は、熱サイクルの全期間に渡り炉に充填した雰囲気中における100ppm以上の水量に相当する。
【0128】
焼結法F2.2(本発明に係る方法)
第2のペレット群を以下の熱サイクルを行う焼結炉に投入した:
(a2.2)温度を50℃/hの速度で室温から1700℃の保持温度に上昇させるステップ、
(b2.2)この1700℃の保持温度を4時間保持するステップ、及び
(c2.2)次いで温度を300℃/hの速度で1700℃の保持温度から20℃の室温まで下降させるステップ。
【0129】
上述した熱サイクルのこれら3つのステップ(a2.2)、(b2.2)及び(c2.2)を、体積比Ar/Hを95/5とするアルゴン・二水素混合雰囲気中において、含水率P(H)/P(HO)を以下のようにした条件下で行った:
・ステップ(a2.2)においては含水率P(H)/P(HO)を1000〜10000、すなわち前記雰囲気中における水量50〜5ppmに相当する量、及び
・次いでステップ(b2.2)及び(c2.2)においては含水率P(H)/P(HO)をP(H)/P(HO)≦500、すなわち前記雰囲気中における水量150ppmに相当する量。
【0130】
上述の条件の下で得られた各焼結ペレットは、比率O/Mが約1.94という特性を有していた。
【0131】
焼結法F2.2を実施した各ペレットの第1の部分又はバッチ1を分別しその特性を決定した。焼結法F2.2を実施した各ペレットの第2の部分又はバッチ2に対し更に制御酸化を実施した。
【0132】
焼結法F2.3(本発明に係る方法)
第3のペレット群は、上記焼結法F2.2を実施して得られた各焼結ペレットのバッチ2を含む。
【0133】
これら焼結ペレットのバッチ2を焼結炉に戻し、バッチ2に対し、上記ステップ(c2.2)後に実施する以下の連続的ステップを含む制御酸化熱処理を行った:
(d2.3)温度を50℃/hの速度で室温から950℃の保持温度に上昇させるステップ、
(e2.3)この950℃の保持温度を4時間保持するステップ、及び
(f2.3)次いで温度を300℃/hの速度で950℃の保持温度から20℃の室温まで下降させるステップ。
【0134】
上述の条件の下で得られた各焼結ペレットは、比率O/Mが約1.97という特性を有していた。
【0135】
化学式(U0.7,Pu0.3)Oにより表される混合酸化物のペレットの特性決定
焼結法F2.1、F2.2及びF2.3実施後のこれら各ペレットの他の(上述の各プロトコルに従い決定した)特性データを下表2に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
上記の場合と同様、表2から分かるように、焼結法F2.1から焼結法F2.3へと切り替えると各焼結ペレットの見掛比重が増加する反面、それぞれの密閉気孔率は減少した。
【0138】
基準焼結法F2.1を実施した各ペレットの気孔率は密閉気孔性のものが多かった(9%)。図4Aから分かるように、F2.1を実施した各ペレットの微細構造には数百μmの寸法の少数のマクロ孔と多数の微小孔とが見られた。一方、焼結法F2.1を実施した各ペレットの見掛比重の熱安定性は、これら各ペレットの密閉気孔率が高過ぎるため、基準に満たないものであった。
【0139】
本発明に係る焼結法F2.2を実施した各ペレットの見掛比重値はDthの97.9%と最も高く、見掛比重の熱安定性の基準を満たしていた。これら各ペレットの比率O/Mは1.94であった。なお、ステップ(b2.2)において実施する意図的加湿を行わない場合、比率O/Mは1.92となった。図4Bを参照し、焼結法F2.2を実施した各ペレットは、焼結法F2.1を実施した各ペレットに比べて向上した均質性、低下した気孔率、及び向上した見掛比重という特性を有することが観察された。
【0140】
焼結法F2.2を実施して得られた各ペレットに対し次いで更なる熱処理ステップをステップ(b2.2)及び(c2.2)と同様の含水量である雰囲気中において焼結法F2.3を実施して得られた各ペレットは、焼結法F2.2を実施した各ペレットと比べて含水率O/Mが高いという特性を有していた。すなわち、焼結法F2.2のステップ(b2.2)及び(c2.2)におけるアルゴン・二水素混合雰囲気(Ar/H=5%)中の含水量を特に100ppmから300ppmに増加させることにより、比率O/Mを1.94から1.97まで向上させることが可能となると言うことができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B