【文献】
"イオン交換クロマトグラフィーを使いこなそう(2)"、[online],2015年 1月24日,[2019年8月20日検索]、インターネット< URL :https://web.archive.org/web/20150124062023/https:www.gelifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/technical_tips/tips52.html>
【文献】
"About ion exchange chromatography"、[online],2007年 5月 8日,[2019年8月22日検索]、インターネット< URL :www.protocol-online.org/biology-forums/posts/27014.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(b)において、50mMのNaClから0.5MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の5〜30倍の範囲の勾配体積で用いることによって溶出が行われる、請求項1に記載の方法。
工程(b)において、50mMのNaClから0.5MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の10〜20倍の範囲の勾配体積で用いることによって溶出が行われる、請求項1または2に記載の方法。
工程(c)において、50mMのNaClから0.35MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の5〜30倍の範囲の勾配体積で用いることによって溶出が行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
工程(a)の終了時に、工程(b)で使用されるクロマトグラフィー担体上におけるrAAV粒子の最適な保持を確実にするために前記rAAV含有清澄化組成物のpHが塩基性のpHに調整される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
rAAV粒子が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、AAV10およびアカゲザル由来血清型(AAVrh10を含む)ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるAAV血清型に属する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、(1)種々のAAV血清型/カプシドバリアントの高純度精製に使用でき、そのままで臨床用途に好適である調製物を作製するのに適している、モジュール式プラットフォームプロセス;および(2)直線的な塩勾配を用いて実施される、少なくとも2つの陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含む、独特な順序のプロセスの工程;という、本発明を現在の「工業規格の」拡張可能なAAV粒子精製プロセスと区別する2つの独特な特徴を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子の精製方法を提供する。
【0025】
驚くべきことに、これらの特徴は、細胞溶解物または培養上清などの出発材料の精製に関して、予想外の拡張性をもたらす。特に、このプロセスは、最適な感染性を有し遺伝子治療に適している精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子を調製するためのpHの最適化に適しているという利点を有する。
【0026】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、rAAV調製物のための所与の陰イオン交換クロマトグラフィー担体の選択性は、通過する生成物の品質に依存し、従って、よりきれいな生成物は、担体上における、より良好な化合物の分離をもたらすことになると発明者等は考えている。従って、2つ以上の、好ましくは連続した、陰イオンクロマトグラフィー工程の使用は、前記担体上における最適な化合物の分離をもたらすことになり、従って、改善された様式でrAAV粒子を単離するのに適している。
【0027】
有利なことに、組成物は、直線的な塩勾配を用いて陰イオン交換クロマトグラフィー担体上で溶出される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、直線的な塩勾配は、段階的な塩勾配と比較して、より効率的な溶出種の分離をもたらすとも発明者等は考えている。その差は、より小さな勾配の傾きにあり、これが、塩濃度の穏やかな増加の形成を可能にし、従って、クロマトグラフィー担体内でのrAAV粒子の最適な分離を可能にする。
【0028】
発明者等の知る限り、これは、直線的な塩勾配を用いる二段階陰イオン交換クロマトグラフィーを伴う、臨床グレードのrAAV粒子(特にAAV4および/またはAAV5の血清型に属するrAAV粒子)を精製するための、初めて説明される「工業規格の」方法である。
【0029】
また、プロセス終了時の残留DNAは、洗浄剤とヌクレアーゼ(DNAseを含む)での処理を行わなくても、臨床基準に合致する。
【0030】
従って、本発明は、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法に関し、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、AAV10およびアカゲザル由来血清型(AAVrh10を含む)ならびにそれらの混合物を含む群またはそれらからなる群において選択されるAAV血清型(特にAAV4およびAAV5、最も好ましくはAAV5)に属するrAAV粒子を精製するのに特に適している。
【0031】
第1の実施形態によれば、本発明は、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)rAAV粒子を産生する細胞から事前に取得された出発材料の深層ろ過を行う工程であって、前記出発材料が、細胞溶解物および培養上清を含む群において選択される、それによりrAAV含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)rAAV含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(c)第1のrAAV濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(d)第2のrAAV濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0032】
出発材料は、AAV4および/またはAAV5の血清型に属するrAAV粒子を含め、1つの血清型に属するrAAV粒子または複数の血清型に属するrAAV粒子のいずれかを含んでよい。
【0033】
代替的な実施形態によれば、本発明は、精製されたAAV4血清型の組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)rAAV粒子を産生する細胞から事前に取得された出発材料の深層ろ過を行う工程であって、前記出発材料が、細胞溶解物および培養上清を含む群において選択される、それによりrAAV4含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)rAAV4含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV4含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV4濃縮組成物が提供される工程と、
(c)第1のrAAV4濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV4含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV4濃縮組成物が提供される工程と、
(d)第2のrAAV4濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製されたAAV4血清型の組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0034】
別の代替的な実施形態によれば、本発明は、精製されたAAV5血清型の組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)rAAV粒子を産生する細胞から事前に取得された出発材料の深層ろ過を行う工程であって、前記出発材料が、細胞溶解物および培養上清を含む群において選択される、それによりrAAV5含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)rAAV5含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV5含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV5濃縮組成物が提供される工程と、
(c)第1のrAAV5濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV5含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV5濃縮組成物が提供される工程と、
(d)第2のrAAV5濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製されたAAV5血清型の組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0035】
本発明の精製されたrAAV粒子は、所望の遺伝子産物をコードする異種核酸を含む。このような産物には、限定されるものではないが、siRNA、アンチセンス分子、miRNA、リボザイム等が包含される。他の産物には、ホルモン、増殖受容体、リガンド、および遺伝子治療に有用なタンパク質、をコードする核酸が包含される。
【0036】
第2の実施形態によれば、本発明は、上記で説明されるような方法の実施によって得られる精製されたrAAV粒子、およびその組成物に関する。
【0037】
第3の実施形態によれば、本発明は、遺伝子治療に使用するための、前記精製されたrAAV粒子およびその組成物に関する。
【0038】
第4の実施形態によれば、本発明は、ヒトPDE6βをコードする発現カセットを含むAAVプラスミド、前記AAVプラスミドでトランスフェクトされた宿主細胞、および前記宿主細胞によって産生されるrAAV粒子(それ自体、ならびに遺伝子治療に使用するためのもの)に関する。
【0039】
本発明によれば、「工程を含む」などにおける「含む」なる表現は、「工程からなる」などにおける「からなる」とも理解される。
【0040】
精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子を得るための方法
本発明は、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)rAAV粒子を産生する細胞から事前に取得された出発材料の深層ろ過を行う工程であって、前記出発材料が、細胞溶解物および培養上清を含む群において選択される、それによりrAAV含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)rAAV含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(c)第1のrAAV濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(d)第2のrAAV濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0041】
一部の実施形態によれば、方法は、洗浄剤および/またはヌクレアーゼ(DNAseを含む)での処理の工程を含まない。
【0042】
一部の他の実施形態によれば、方法は、洗浄剤および/またはヌクレアーゼ(DNAseを含む)での処理の工程を含む。
【0043】
一実施形態によれば、rAAV粒子は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、AAV10およびアカゲザル由来血清型(AAVrh10を含む)ならびにそれらの混合物を含む群において選択されるAAV血清型(特にAAV4およびAAV5、最も好ましくはAAV5)に属する。
【0044】
一実施形態によれば、rAAV粒子は、ヒトPDE6βまたはヒトRPE65をコードする発現カセットを含むDNAを含むrAAV粒子からなる。
【0045】
本発明に適している発現カセットの例は、以下でさらに開示される。
【0046】
特定の一実施形態によれば、rAAV粒子は、ヒトPDE6βをコードする発現カセットを含むDNAを含むrAAV5粒子からなる。
【0047】
前記実施形態によれば、前記発現カセットは配列番号1のものである。
【0048】
一実施形態によれば、rAAV5粒子は、配列番号2を含むDNAを含む。
【0049】
特定の一実施形態によれば、rAAV粒子は、ヒトRPE65をコードする発現カセットを含むDNAを含むrAAV4粒子からなる。
【0050】
「組換えAAVビリオン」、「rAAVビリオン」、「AAV粒子」、「完全なカプシド」および「完全な粒子」なる用語は、本明細書では、両側にAAVのITRが隣接している目的の異種ヌクレオチド配列をカプシドで包んでいる、AAVのタンパク質の殻を含む感染性の複製欠損ウイルスと定義される。rAAVビリオンは、その中にAAVヘルパー機能およびアクセサリー機能が導入された、AAVプラスミドを指定する配列を有している好適な宿主細胞において産生される。このようにして、宿主細胞は、AAVプラスミド(目的の組換えヌクレオチド配列を含む)を後の遺伝子送達のための感染性組換えビリオン粒子にパッケージングするのに必要とされるAAVのポリペプチドをコードすることができるようになる。
【0051】
「組換えウイルス」は、例えば粒子内への異種核酸コンストラクトの添加または挿入によって、遺伝学的に改変されているウイルスを意味する。
【0052】
「AAVビリオン」は、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVカプシドタンパク質外被と結合した直線状の一本鎖AAV核酸ゲノムを含む)など、完全なウイルス粒子を意味する。この点に関して、相補的センス(例えば、「センス」鎖または「アンチセンス」鎖)のいずれかの一本鎖AAV核酸分子が、任意の1つのAAVビリオンにパッケージングされてよく、両方の鎖は、同等に感染性である。
【0053】
「宿主細胞」なる用語は、例えば、AAVヘルパーコンストラクト、AAVプラスミド、アクセサリー機能プラスミドまたは他の導入DNAの一時的または永久的な安定産生細胞株レシピエントとして使用できるか使用されている微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を意味する。この用語には、トランスフェクトされた最初の細胞の子孫が包含される。従って、本明細書で使用される場合、「宿主細胞」は一般に、外因性のDNA配列でトランスフェクトされた細胞を指す。1つの親細胞の子孫は、天然の、偶然の、または意図的な変異に起因して、形態またはゲノムもしくは全DNAの相補物が必ずしも元の親と完全に同一であるわけではない可能性があるということが理解される。
【0054】
「rAAV含有清澄化組成物」なる用語は、細胞溶解物または培養上清などの出発材料の深層ろ過の工程の後に得られる、rAAV粒子を含む任意の組成物を包含する。「rAAV含有清澄化組成物」は、「rAAV濃縮組成物」および/または精製されたrAAV粒子とは異なる。
【0055】
従って、「rAAV含有清澄化組成物」は、深層ろ過された出発材料(細胞溶解物または培養上清など)から直接得られる、濃縮および/または精製の工程にさらに供されていない、rAAV粒子を含む任意の組成物(イオン(例えば陽イオン)交換クロマトグラフィーの工程にさらに供されていないものを含む)を包含してよい。
【0056】
前記実施形態によれば、本発明は、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)細胞溶解物および/または培養上清の深層ろ過を行う工程であって、それによりrAAV含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)rAAV含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(c)第1のrAAV濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(d)第2のrAAV濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0057】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供されるrAAV含有清澄化組成物が、工程(a)の終了時に直接得られる組成物である、方法に関する。従って、前記実施形態によれば、工程(a)と工程(b)は、連続した工程である。
【0058】
「連続した工程」は、クロマトグラフィー(特にイオン(陽イオン)交換クロマトグラフィー)のステップという中間工程は除外される、第1の工程の後に来る任意の工程を意味する。一方、別段の記載がない限り、「連続した工程」は、前記組成物の緩衝液の条件(すなわち、塩濃度、pH)を改変することを目的とした、緩衝液の交換および/または希釈の工程を除外しない。
【0059】
一実施形態によれば、本発明の方法は、陽イオン交換クロマトグラフィーの工程を含まない。
【0060】
一実施形態によれば、本発明の方法は、アパタイトクロマトグラフィーの工程を含まない。
【0061】
好ましい一実施形態によれば、本発明は、本発明の精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程が、連続した工程である、方法に関する。従って、前記実施形態によれば、工程(b)と工程(c)は、連続した工程である。
【0062】
別の実施形態によれば、工程(c)と工程(d)は連続している。
【0063】
別の実施形態によれば、工程(b)と工程(c)と工程(d)は連続している。
【0064】
別の実施形態によれば、工程(a)と工程(b)と工程(c)は連続している。
【0065】
別の実施形態によれば、工程(a)と工程(b)と工程(c)と工程(d)は連続している。
【0066】
前記実施形態によれば、本発明は、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)rAAV粒子を産生する細胞から事前に取得された出発材料の深層ろ過を行う工程であって、前記出発材料が、細胞溶解物および培養上清を含む群において選択される、それによりrAAV含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)工程(a)で得られたrAAV含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(c)工程(b)で得られた第1のrAAV濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(d)工程(c)で得られた第2のrAAV濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0067】
別の実施形態によれば、工程(a)と工程(b)と工程(c)と工程(d)は連続しており、工程(a)における出発材料は、細胞溶解物または培養上清から直接得られる。
【0068】
前記実施形態によれば、本発明は、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法であって、
(a)細胞溶解物および/または培養上清の深層ろ過を行う工程であって、それによりrAAV含有清澄化組成物が提供される工程と、
(b)工程(a)で得られたrAAV含有清澄化組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供する工程であって、それにより第1のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(c)工程(b)で得られた第1のrAAV濃縮組成物を、直線的な塩勾配を用いて溶出が行われrAAV含有画分が回収される、クロマトグラフィー担体上における第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに少なくとも1回供する工程であって、それにより第2のrAAV濃縮組成物が提供される工程と、
(d)工程(c)で得られた第2のrAAV濃縮組成物をタンジェンシャルフローろ過のステップに供する工程であって、それにより、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)が提供される工程と、
を含む方法に関する。
【0069】
上述の方法は全て、少なくとも(1)1回の出発材料の深層ろ過の工程、(2)第1の陰イオン交換クロマトグラフィーの工程、(3)第2の陰イオン交換クロマトグラフィーの工程、および(4)タンジェンシャルフローろ過の工程を含む。個々の工程はそれぞれ、以下でさらに定義される。
【0070】
追加的工程はそれぞれ、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子の拡張性および高純度に寄与するとも発明者等は考えている。
【0071】
深層ろ過
深層ろ過の工程は、混入したDNAおよびタンパク質の大部分を排除することを可能にする。この工程は、rAAV含有清澄化組成物から直接、陰イオン交換クロマトグラフィーによってrAAV粒子を精製することを可能にする。
【0072】
一実施形態によれば、工程(a)で使用される出発材料は、rAAV粒子を産生する細胞の培養物を、少なくとも洗浄剤または界面活性剤(好ましくは洗浄剤)を含む組成物と接触させることによって得られる細胞溶解物である。
【0073】
一実施形態によれば、工程(a)で使用される出発材料は、rAAV粒子を産生する細胞の培養物を、洗浄剤または界面活性剤を含んでも含まなくてもよい組成物と接触させることによって得られる細胞溶解物であるが、この細胞溶解物は、DNAseなどのヌクレアーゼで処理されない。
【0074】
細胞溶解のための好適な洗浄剤の例としては、Triton X−100、Triton X−114、NP−40、Brij−35、Brij−58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、SDS、CHAPSおよびCHAPSOが挙げられる。
【0075】
好ましい一実施形態によれば、工程(a)は、ホウケイ酸ガラスのマイクロファイバーの層とセルロースの混合エステルの層とを含むデプスフィルター膜を用いて行われる。
【0076】
例示的な一実施形態によれば、工程(a)は、Polysep(商標) II(Millipore(登録商標))フィルターを用いて行われる。
【0077】
陰イオン交換クロマトグラフィー
本発明で使用するための好適な陰イオン交換体がいくつか知られており、これらには、限定されるものではないが、MACRO PREP Q(BioRad(Hercules、Calif.)から入手可能な強力な陰イオン交換体)、UNOSPHERE Q(BioRad(Hercules、Calif.)から入手可能な強力な陰イオン交換体)、POROS 50HQ(Applied Biosystems(Foster City、Calif.)から入手可能な強力な陰イオン交換体)、POROS 50D(Applied Biosystems(Foster City、Calif.)から入手可能な弱い陰イオン交換体)、POROS 50PI(Applied Biosystems(Foster City、Calif.)から入手可能な弱い陰イオン交換体)、SOURCE 30Q(GE Healthcare(N.J.)から入手可能な強力な陰イオン交換体)、DEAE SEPHAROSE(GE Healthcare(Piscataway、N.J.)から入手可能な弱い陰イオン交換体)、Q SEPHAROSE(GE Healthcare(Piscataway、N.J.)から入手可能な強力な陰イオン交換体)、Capto QおよびCapto Adhere(GE Healthcare、N.J.)が包含される。
【0078】
一部の実施形態によれば、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法は、3つ以上の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含み、これには、特に3つまたは4つの陰イオンクロマトグラフィー工程が包含される。方法が3つ以上の陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含む場合、前述の工程は、同種の担体上または異なる担体上で達成されてよい。
【0079】
好ましい実施形態によれば、工程(b)で使用されるクロマトグラフィー担体は、工程(c)で使用されるクロマトグラフィー担体と同じである。
【0080】
例示的な実施形態によれば、工程(b)および/または工程(c)におけるクロマトグラフィー担体は、モノリス型クロマトグラフィー担体である。
【0081】
好適なモノリス型クロマトグラフィー担体の例は、当技術分野で公知であり、これらには、非限定的ではあるが、モノリス型カラムCIMmultus(登録商標) QA、CIM(登録商標) QA、CIM DEAEおよびCIMmultus(登録商標) DEAE(Bia Separations)が包含される。
【0082】
クロマトグラフィーモノリスは、融合したマイクロメートルサイズのシリカの小球、またはクロマトグラフィーチューブ内で直接合成できる有機ポリマー、でできた一体型の多孔質固体である。このおかげで、この担体は、非常に耐久性があり、すぐに使用でき、パッケージパラメータ(package parameters)のばらつきがない。
【0083】
モノリスは、相互につながっている流路(perfusion channel)からなる、連続した多孔質ベッドのマトリックスを有する均一なカラムである。これらの流路は、充填ベッド粒子を利用したクロマトグラフィーの典型的な孔径(5〜100nm)と比較すると、比較的大きい(1〜5μm)。これの1つの利点は、接触可能な表面が大きいために、それが、ウイルスなどの巨大分子の潜在的結合容量を増加させるということである。これらの担体は、高流速および低いずり速度においてさえ、低い逆圧を生じさせる。
【0084】
充填ベッドカラムと比較すると、モノリス型担体の向上した物質輸送は、巨大分子の効率的な分離をもたらす。
【0085】
実用的観点からすると、これらのカラムの使用は、流速とは関係なく高い結合容量および良好な分解能を伴いつつ、充填ベッドカラムと比較して高流速でウイルス産物(それが細胞溶解物である場合でも)を扱うことを可能にする。これらの担体の高分解能は、精製工程の削減およびプロセス全体の拡張性に寄与する。
【0086】
一部の実施形態によれば、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)(血清型4または5に属するrAAV粒子など)を得るための方法は、モノリス型クロマトグラフィー担体上における2つまたは3つの陰イオンクロマトグラフィー工程に続いて、以下でさらに説明されるようなタンジェンシャルフローろ過(TFF)の工程を含む。
【0087】
陰イオン交換カラムはまず、標準的な緩衝液を用いて、製造業者の仕様書に従って平衡化される。例えば、カラムは、例えば5〜50mMの、好ましくは7〜20mM(20mMなど)の、Tris緩衝液で平衡化されてよい。次に、サンプルがロードされ、2種類の溶出緩衝液(1種類の低塩濃度緩衝液および1種類の高塩濃度緩衝液)が使用される。
【0088】
塩勾配を生じさせる低塩濃度緩衝液と高塩濃度緩衝液の漸進的混合(progressive mix)に沿って画分が回収され、それらの画分において、溶出された物質が標準的な技術(260nmおよび280nmにおけるUV吸収のモニタリングなど)を用いて検出される。陰イオン交換体を用いる場合、低塩濃度の溶出液に由来するタンパク質のピークはAAVの空のカプシドを含み、高塩濃度の画分はAAV粒子を含む。
【0089】
特に、陰イオン交換カラム上において、AAV粒子は、約pH5〜pH12の、好ましくはpH6〜pH10の、さらに好ましくはpH7〜pH9.5(pH7.1、7.2、7.3、7.4〜8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5〜9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5など)のpHの、または上記の範囲内の任意のpHの、適切な緩衝液を用いてさらに精製されてよい。
【0090】
陰イオン交換カラムで使用するための適切な緩衝液は、当技術分野で周知であり、一般的には陽イオン性または双性イオン性である。このような緩衝液には、限定されるものではないが、以下の緩衝イオンを有する緩衝液が包含される:N−メチルピペラジン、ピペラジン、Bis−Tris、Bis−Trisプロパン、トリエタノールアミン、Tris、N−メチルジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、酢酸等。サンプルを溶出するために、適切なpHで塩(NaCl、KCl、硫酸塩、ギ酸塩または酢酸塩など)を用いて開始緩衝液のイオン強度が高められる。
【0091】
有利なことに、陰イオン交換クロマトグラフィーの間、前または後に使用される緩衝液は全て、緩衝液組成物の総体積の0.0001%〜0.1%(v/v)の範囲の量で非イオン性界面活性剤(例えばPluronic(登録商標) F−68(Gibco))を含み、当該量には、緩衝液組成物の総体積の0.0005%〜0.005%(v/v)の範囲の量が包含され、当該量には、緩衝液組成物の総体積の0.001%(v/v)が包含される。
【0092】
上記で定義されるような、および他の工程における、非イオン性界面活性剤の使用はさらに、方法の効率および拡張性に寄与する。特に、上記で定義されるような、非イオン性界面活性剤の使用は、精製の前、間および後に、rAAV粒子の凝集または接着を防止する。
【0093】
使用される樹脂(すなわち、強力な、または弱い、イオン交換体)の性質ならびに、塩濃度、使用される緩衝液およびpHについての条件は、AAVカプシドバリアント(すなわち、AAVカプシドの血清型または偽型)によって異なるであろう。公知のAAVカプシドバリアントは全て、サイズおよび形状などの特徴が共通しているが、分子トポロジーおよび表面電荷分布という細部において異なる。従って、全てのカプシドバリアントが、陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製に適していると予想され、妥当な方法は、クロマトグラフィーの樹脂および緩衝液のスクリーニング実験を用いて体系的に決定できるが、効率的なAAV粒子の精製を達成するには、AAVカプシドバリアントごとに異なる条件が必要となるであろう。このような条件の決定は、当業者には明白である。
【0094】
有利なことに、工程(a)の終了時に、rAAV含有清澄化組成物のpHは、工程(b)で使用されるクロマトグラフィー担体上におけるrAAV粒子の最適な保持を確実にするために、塩基性のpHに調整される。
【0095】
クロマトグラフィー担体への結合のために工程(b)または工程(c)で使用されるpHは、好ましくは、溶出中に使用されるpHよりも高い。
【0096】
好ましくは、クロマトグラフィー担体上における溶出のpHは、精製されるrAAV粒子に応じて調整される。最適pHでの溶出は、所与のベクターの最適な感染力を維持するという利点を有する。
【0097】
特定の実施形態によれば、工程(a)の終了時に、rAAV含有清澄化組成物の最適pHは、pH8に調整される。
【0098】
特定の実施形態によれば、工程(b)または工程(c)におけるクロマトグラフィー担体へのrAAV粒子の結合のための最適pHは、溶出に使用される最適pHよりも高い。
【0099】
例示的な実施形態によれば、結合のための最適pHは、溶出に使用されるpHよりも約0.5〜1pH単位高いpHである。
【0100】
従って、工程(b)または工程(c)におけるクロマトグラフィー担体からのrAAV粒子の溶出(特に、rAAV5粒子の溶出)は、pH8に調整されてよい。
【0101】
前記実施形態によれば、クロマトグラフィー担体へのrAAV粒子の結合は、pH8.5に調整されてよい。
【0102】
陰イオン交換カラムで使用するための適切な緩衝液は、当技術分野で周知であり、一般的には陽イオン性または双性イオン性である。このような緩衝液には、限定されるものではないが、以下の緩衝イオンを有する緩衝液が包含される:N−メチルピペラジン、ピペラジン、Bis−Tris、Bis−Trisプロパン、トリエタノールアミン、Tris、N−メチルジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、酢酸等。サンプルを溶出するために、適切なpHで塩(NaCl、KCl、硫酸塩、ギ酸塩または酢酸塩など)を用いて開始緩衝液のイオン強度が高められる。
【0103】
特に、クロマトグラフィー担体上における溶出は、直線的な塩勾配を用いて行われる。塩は、NaCl、KCl、硫酸塩、ギ酸塩および酢酸塩からなる群より選択されてよく、好ましくはNaClであってよい。
【0104】
陰イオン交換クロマトグラフィーは、溶出工程に一般的に使用される塩濃度よりも低い塩濃度で担体または陰イオン交換カラムを処理する第1の工程を含んでよい。このような処理は、本明細書では「第1のプレ溶出」工程と呼称されることもある。
【0105】
従って、本発明の一実施形態では、陰イオン交換カラムはまず、低塩濃度(例えば、10〜100mMの塩;特に10〜100mMのNaCl;10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65〜100mM、またはこれらの範囲内の任意の濃度など)で処理される。例えば、「第1のプレ溶出工程」における塩濃度は、最初は、ロード後にrAAV粒子をカラムに結合させるために使用される緩衝液の塩濃度と一致してよい。
【0106】
最初の処理の後、次に、不純物を溶出させるために、より高いNaCl濃度など、より高い塩濃度で、またはより大きなイオン強度を有する別の緩衝液で、カラムが処理される。第2の緩衝液としての使用の一例は、酢酸ナトリウム緩衝液またはTris系緩衝液である。この追加的工程はまた、本明細書では「第2のプレ溶出」工程と呼称されることもある。この場合、塩濃度は、カラムからAAV粒子を溶出させない程度に十分に低いままであるように注意される可能性がある。
【0107】
さらなる不純物をカラムから溶出させた後、次に、溶出工程において、より高い塩濃度を用いてAAV粒子を回収できる。
【0108】
「直線的な塩勾配の傾き」なる用語は、直線的勾配の2つの点(A,B)の間の傾きを指し、以下の式に従って、クロマトグラフィー担体中の塩濃度および経時的に溶出されるカラム体積(CV)の両方に依存する。
傾き(A,B)=(Bにおける塩濃度−Aにおける塩濃度)/(Bにおけるカラム体積−Aにおけるカラム体積)
【0109】
従って、直線的な塩勾配の傾きは、M/CVまたはmM/CVで表すことができ、好ましくは、標準的なプロトコルに従った緩やかな塩勾配である。
【0110】
一実施形態によれば、工程(c)における直線的な塩勾配の傾きは、工程(b)における直線的な塩勾配の傾きと等しいか、それよりも小さい。
【0111】
一実施形態によれば、工程(c)における直線的な塩勾配の傾きは、工程(b)における直線的な塩勾配の傾きの約半分であるか、それよりも小さい。従って、工程(c)における直線的な塩勾配の傾きは、工程(b)における直線的な塩勾配の傾きの1〜70%の範囲であってよく、これには、工程(b)における直線的な塩勾配の傾きの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70%が包含される。
【0112】
一実施形態によれば、工程(b)における傾きは、0.1M/CV以下であり、特に0.015〜0.09M/CVの範囲である。
【0113】
一実施形態によれば、工程(c)における傾きは、0.07M/CV以下であり、特に0.01〜0.06M/CVの範囲である。
【0114】
前記勾配は、同じプロセス中で有利に組み合わされてよい。
【0115】
従って、一実施形態によれば、工程(c)における直線的な塩勾配の傾きは、工程(b)における直線的な塩勾配の傾きと等しいか、それよりも小さく、ここで、工程(b)における傾きは0.1M/CV以下であり、工程(c)における傾きは0.07M/CV以下である。
【0116】
一実施形態によれば、(N+1)回目の陰イオン交換クロマトグラフィー工程の直線的な塩勾配の傾きは、N回目の陰イオン交換クロマトグラフィー工程の直線的な塩勾配の傾きと等しいか、それよりも小さくてよく、ここで、N回目の陰イオン交換クロマトグラフィー工程の傾きは0.1M/CV以下であり、(N+1)回目の陰イオン交換クロマトグラフィー工程の傾きは0.07M/CV以下である。
【0117】
例示的な一実施形態によれば、工程(b)における溶出は、50mMのNaClから0.5MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の5〜30倍(好ましくはカラム体積の10〜20倍)の範囲の勾配体積(gradient volume)で用いることによって行われる。
【0118】
例示的な一実施形態によれば、工程(c)における溶出は、50mMのNaClから0.35MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の5〜30倍(好ましくはカラム体積の10〜20倍)の範囲の勾配体積で用いることによって行われる。
【0119】
一実施形態によれば、工程(c)において、第1のrAAV濃縮組成物は、少なくとも2回の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供され、これには、2回以上の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップが包含され、これには、複数回の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップが包含される。従って、特定の一実施形態によれば、工程(c)において、第1のrAAV濃縮組成物は、2回の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップに供されてよく、これには、2回、3回もしくは4回または5回以上のクロマトグラフィーのステップが包含される。
【0120】
有利なことに、該方法は、少なくとも1回の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップの前または後にrAAV濃縮組成物の希釈という追加的工程を含んでよい。希釈の工程は、例えば、緩衝液の交換の工程の形態であってよい。
【0121】
前記実施形態によれば、工程(c)で行われる陰イオン交換クロマトグラフィーのステップのそれぞれは、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、工程(c)で行われる陰イオン交換クロマトグラフィーのステップのそれぞれは、工程(b)における直線的な塩勾配の傾きと等しいかそれよりも小さい傾きを有する直線的な塩勾配を用いて行われる。
【0122】
工程(c)において2回以上の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップが行われる場合、個々の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップのそれぞれについての直線的な塩勾配の傾きは、同一であっても異なっていてもよい。
【0123】
従って、一実施形態によれば、1回目の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップは、50mMのNaClから0.35MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の5〜30倍(好ましくはカラム体積の10〜20倍)の範囲の勾配体積で用いることによって行われる。次に、2回目の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップは、50mMのNaClから0.35MのNaClまでというNaClの塩勾配をカラム体積の5〜30倍(好ましくはカラム体積の10〜20倍)の範囲の勾配体積で用いることによって行われる。
【0124】
好ましい一実施形態によれば、工程(b)の終了時に、第1のrAAV濃縮組成物は、工程(c)の実施のために使用するまで凍結された形態で保存される。
【0125】
タンジェンシャルフローろ過およびその後の工程
タンジェンシャルフローろ過は、フィルターの細孔を介した濃縮とダイアフィルトレーションのサイクルによって小さな粒子関連の不純物を排除することを可能にする洗練工程である。この洗練工程は、溶出画分の緩衝液の変更およびAAVの濃縮に適しているという別の利点を有する。
【0126】
タンジェンシャルフローろ過は、好ましくは、フィルターとして中空糸フィルターを用いて達成される。
【0127】
一実施形態によれば、工程(d)は、150kDa以下(特に50kDa〜150kDaの範囲)の分子量カットオフ値を有するフィルター膜を用いて行われる。
【0128】
当業者であれば、精製されるrAAV粒子のタイプ、溶出の条件、および特に溶出のpH、に応じて分子量カットオフが調整されなければならないということを理解するであろう。
【0129】
一部の実施形態によれば、塩および/または洗浄剤および/または界面活性剤および/またはヌクレアーゼが、タンジェンシャルフローろ過の間、前または後(特にタンジェンシャルフローろ過の間または前)に添加されてよい。
【0130】
一実施形態によれば、方法は、タンジェンシャルフローろ過の間、前または後に、洗浄剤および/またはヌクレアーゼ(DNAseを含む)での処理の工程をさらに含んでよい。
【0131】
一実施形態によれば、工程(c)または工程(d)で得られる精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)は、追加的な勾配に供され、これは分画遠心法の工程を包含し、これは密度勾配を包含し、特に、塩化セシウム(CsCl)勾配遠心分離、イオジキサノール勾配遠心分離、スクロース勾配遠心分離から選択される。
【0132】
好ましい一実施形態によれば、方法は、前記追加的な勾配の後に、追加的なタンジェンシャルフローろ過の工程をさらに含んでよい。
【0133】
一実施形態によれば、工程(d)で得られる精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)は、滅菌される。
【0134】
一実施形態によれば、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)は、0.2μm以下の孔径を有するフィルター膜による滅菌ろ過の工程に供される。
【0135】
従って、本発明はまた、上記で定義されるような方法の実施によって得られる精製されたrAAV粒子にも関する。
【0136】
精製されたrAAV粒子の特性評価
有利なことに、上述の方法は、遺伝子治療、および/または遺伝子治療のための医薬の調製、に適している精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るために用いることができる。
【0137】
好ましい一実施形態によれば、前記精製されたrAAV粒子は、遺伝子治療に使用するのに適している。
【0138】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子調製物の純度はまた、臨床上の遺伝子導入の安全性および有効性の両方に関して重要な意味を有する。
【0139】
rAAV粒子を精製するために用いられる方法は、宿主細胞のタンパク質の混入の量および完全な粒子/全粒子の比という点で調製物の純度に劇的に影響し得る。
【0140】
ベクター粒子の濃度は、実施例1に示されるように、定量的PCR(ゲノム含有粒子)またはELISA(全ベクター粒子)によって評価できる。
【0141】
調製物の純度は、最も一般的には、実施例1に示されるように、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって評価される。
【0142】
ウイルスの構造(カプシド)タンパク質であるVP1、VP2およびVP3に対応するバンドは染色後に可視化されてよく、それらのサイズおよび相対強度が、混入したタンパク質に対して評価される。参考までに、AAV4およびAAV5の血清型に属するVP1、VP2およびVP3をコードする核酸は、配列番号10〜15の配列のものである。
【0143】
AAV4血清型に属するVP1、VP2およびVP3をコードする核酸は、それぞれ配列番号10〜12の配列のものであってよい。
【0144】
AAV5血清型に属するVP1、VP2およびVP3をコードする核酸は、それぞれ配列番号13〜15の配列のものであってよい。
【0145】
上述の配列は、参考として提示されている。
【0146】
従って、「純度」なる用語は、一般的不純物が存在しないことを指す。純度は、パーセンテージとして表され、クマシーブルーで染色されたポリアクリルアミドゲルにおいて検出されるタンパク質の総量と比較したVP1タンパク質、VP2タンパク質およびVP3タンパク質の総量に関する。
【0147】
「一般的不純物」なる用語は、出発材料中に存在したが粒子関連の不純物とはみなされない不純物を指す。従って、一般的不純物は、宿主細胞に由来するがAAV粒子ではない不純物を包含する。
【0148】
「粒子関連の不純物」なる用語は、真正の組換えAAV粒子以外の全てのタイプのAAV粒子を指す。粒子関連の不純物には、空のAAVカプシド(「空のもの(empties)」または「空の粒子」とも呼称される)、および意図される粒子ゲノム以外のポリヌクレオチド配列を含むAAV粒子(本明細書では「AAVのカプシドで包まれた核酸の不純物」または「AAVのカプシドで包まれたDNAの不純物」とも呼称される)が包含される。
【0149】
残留DNAまたは宿主細胞のDNAは、rAAV調製物中に混入物として存在し得る。残留DNAは悪影響を与え得るため、製造業者は、宿主細胞から得られる最終産物が含む残留DNAが必ず許容レベルであるようにしなければならない。
【0150】
残留DNA試験は、実施例1で説明されるプロトコルを用いて、定量的PCR(リアルタイムPCRを含む)により評価できる。残留DNAは、1用量あたりのngで表される。
【0151】
好ましくは、残留DNAは、qPCRによって、既知量のE1AアンプリコンDNAを用いて確立された検量線と比較して組成物中のE1AアンプリコンDNAの相対量を決定することにより決定される。
【0152】
「用量」は、1×10
12個のベクターゲノム(vg)に相当する調製物の量と定義される。
【0153】
有利なことに、本発明の組成物はさらに、それらの空のrAAV粒子/完全なrAAV粒子の比を特徴とし得る。
【0154】
「空のカプシド」および「空の粒子」なる用語は、AAVのタンパク質の殻を含むが、両側にAAVのITRが隣接している目的の異種ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトの全体または一部を欠いている、AAVビリオンを指す。従って、空のカプシドは、目的の遺伝子を宿主細胞中に導入するようには機能しない。
【0155】
空のrAAV粒子/完全なrAAV粒子の比は、実施例1で説明されるプロトコルを用いて、SDS−PAGEゲルにより評価できる。
【0156】
感染性粒子の濃度はまた、実施例1で説明されるICAのプロトコルを用いて評価できる。
【0157】
従って、本発明の組成物は、上述の方法のうちのいずれか1つを用いた少なくとも1つの精製されたrAAV粒子を含み、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する:
・90%以上(好ましくは99%超または100%)の純度;
・1用量あたり50ng以下の細胞性残留DNAの量。
【0158】
1用量あたり50ng以下の細胞性残留DNAの量には、1用量あたり50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6または5ng以下が包含される。
【0159】
特に、本発明の組成物は、上述の方法のうちのいずれか1つを用いた少なくとも1つの精製されたrAAV粒子を含み、以下の特徴を有する:
・99%以上または100%の純度;および
・1用量あたり10ng以下の細胞性残留DNAの量
【0160】
最も好ましくは、組成物の純度は99%超であり、これには100%の純度が包含される。
【0161】
例示的な実施形態によれば、組成物は、上述の方法のうちの1つから直接得られる。
【0162】
一実施形態によれば、本発明の精製されたrAAV粒子の組成物は、任意選択で非イオン性界面活性剤を追加されていてもよい、本発明に従って精製されたrAAV粒子を含む眼用塩類溶液(Saline Ocular Solution)である。
【0163】
本発明に適している眼用塩類溶液は、BD Medicalから入手されてよい(例えばBD Standard SolutionまたはBD Aqueo Premium(商標)など)。
【0164】
前記例示的な実施形態によれば、非イオン性界面活性剤は、好ましくはPluronic(登録商標) F−68(Gibco(登録商標))である。
【0165】
非イオン性界面活性剤(すなわち、Pluronic(登録商標) F−68)は、組成物の総体積の0.0001%〜0.1%(v/v)の範囲の量で存在してよく、これには、組成物の総体積の0.0005%〜0.005%(v/v)の範囲の量が包含され、これには、組成物の総体積の約0.001%(v/v)が包含される。
【0166】
投与用組成物および/または遺伝子治療に使用される組成物を含め、以下でさらに説明されるような本発明の組成物は、好ましくは無菌である。
【0167】
遺伝子治療に使用するためのrAAV粒子
本発明はさらに、遺伝子治療に使用するための、および/または遺伝子治療に好適な医薬の調製に使用するための、精製された組換えアデノ随伴ウイルス粒子(rAAV)を得るための方法に関する。
【0168】
有利なことに、このようなrAAV粒子およびその組成物はまた、それ自体が、遺伝子治療のための使用および/または遺伝子治療に好適な医薬の調製のための使用に適している。
【0169】
「遺伝子治療」は、疾患の発生の可能性を処置および/または防止および/または低減するために核酸配列を個体に投与することを意味する。当技術分野では、いくつかのアプローチが提唱されている。上記を考慮すると、rAAV粒子は、処置される個体に前記核酸配列を送達するための媒体として使用される。
【0170】
疾患を引き起こす変異した遺伝子を健全な遺伝子のコピーで置き換える可能性がある。
【0171】
不適切に機能している変異した遺伝子を不活化(ノックアウト)する可能性がある。
【0172】
疾患の発生の可能性を処置および/または防止および/または低減するために新しい遺伝子を体内に導入する可能性がある。
【0173】
報告される方法およびプラスミドは、眼疾患(失明、より具体的には桿体特異的な欠損に起因する桿体錐体ジストロフィー、を含む)のための医薬の調製のための使用に特に効果的である。
【0174】
特に、前記疾患は、ホスホジエステラーゼ6(PDE6)関連疾患(PDE6β関連疾患を含む)および網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(Retinal Pigment Epithelium-specific 65 kDa protein)(RPE65)関連疾患から選択されてよい。
【0175】
RPE65関連疾患には、レーバー先天性黒内障および網膜色素変性症が包含される。PDE6関連疾患には、桿体錐体ジストロフィーおよび網膜色素変性症が包含される。
【0176】
処置される個体には、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物が包含される。
【0177】
AAV粒子およびその組成物は、局所投与または非経口投与されてよく、これには、眼窩内投与および眼内投与が包含される。さらに、眼内投与には、硝子体内投与、網膜下投与および角膜内投与が包含される。
【0178】
従って、前記AAV粒子を含む組成物は、好ましくは、局所投与または非経口投与に適しており、これには、眼内投与(好ましくは硝子体内投与および網膜下投与)および角膜内投与が包含される。
【0179】
本発明のrAAV粒子は、好ましくは、以下でさらに説明されるような、ヒトPDE6β遺伝子またはヒトRPE65遺伝子をコードする発現カセット(それぞれ配列番号1および配列番号7の配列のもの)を含む。
【0180】
好ましい一実施形態によれば、精製されたrAAV粒子は、本明細書で説明される方法のうちのいずれか1つを実施することによって得ることができる。精製されたrAAV粒子の組成物は、前記精製されたrAAV粒子のうちの少なくとも1つを含む。精製されたrAAV粒子およびその組成物は、遺伝子治療のための使用に適している。
【0181】
AAVプラスミド
前記rAAV粒子の生産のためのAAVプラスミドが、さらに開示される。
【0182】
感染性の組換えAAV(rAAV)ビリオンの構築は説明されている。例えば、米国特許第5,173,414号および同第5,139,941号;国際公開第92/01070号(1992年1月23日公開)および同第93/03769号(1993年3月4日公開);Lebkowski et al.(1988) Molec.Cell.Biol. 8:3988−3996;Vincent et al.(1990) Vaccines 90 (Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter,B.J.(1992) Current Opinion in Biotechnology 3:533−539;Muzyczka,N.(1992) Current Topics in Microbiol, and Immunol. 158:97−129;ならびにKotin,R.M.(1994) Human Gene Therapy 5:793−801を参照のこと。
【0183】
「AAVプラスミド」は、限定されるものではないがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7およびAAV8、AAV9、AAV10ならびにアカゲザル由来血清型(AAVrh10を含む)を含む、アデノ随伴ウイルス血清型に由来するプラスミドを意味する。AAVプラスミドは、AAVの野生型遺伝子のうちの1つ以上(好ましくはrep遺伝子および/またはcap遺伝子)が全体的または部分的に欠失していてよいが、機能的なフランキングITR配列を保持する。機能的なITR配列は、AAVビリオンのレスキュー、複製およびパッケージングに必要である。従って、AAVプラスミドは、本明細書では、少なくとも、ウイルスの複製およびパッケージングにcisに必要とされるこれらの配列(例えば、機能的なITR)を含むと定義される。ITRは、野生型のヌクレオチド配列である必要はなく、その配列が機能的なレスキュー、複製およびパッケージングをもたらす限りにおいて、例えばヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって変更されてよい。また、「AAV粒子」は、標的細胞の核への核酸の送達のための効果的な媒体を提供する、タンパク質の殻またはカプシドを意味する。
【0184】
好ましくは、前記AAVベクターは、AAV4またはAAV5から選択されるアデノ随伴ウイルスに由来する。
【0185】
「AAVヘルパー機能」は、発現してAAVの遺伝子産物をもたらすことができ、次に当該遺伝子産物が増殖性のAAVの複製のためにtransに機能する、AAV由来のコード配列を指す。従って、AAVヘルパー機能には、主要なAAVのオープンリーディングフレーム(ORF)であるrepおよびcapの両方が包含される。Repの発現産物は、多くの機能(特に、AAVのDNA複製開始点の認識、結合およびニッキング;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の異種)プロモーターからの転写の調節を含む)を有することが示されている。Capの発現産物は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書では、AAVプラスミドが失っているAAV機能をtransに補完するために用いられる。
【0186】
「AAVヘルパーコンストラクト」なる用語は、一般的には、目的のヌクレオチド配列の送達のための形質導入プラスミドを作製するために使用されるべきAAVプラスミドから除去されたAAV機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。AAVヘルパーコンストラクトは一般に、AAVのrep遺伝子および/またはcap遺伝子の一過性または安定な発現を提供してAAVの複製に必要である失われたAAV機能を補完するために用いられる。しかし、ヘルパーコンストラクトは、AAVのITRを欠いており、自身を複製することもパッケージングすることもできない。AAVヘルパーコンストラクトは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルスまたはビリオンの形態であってよい。一般に使用されるプラスミドである、RepおよびCapの発現産物の両方をコードするpAAV/AdおよびpIM29+45など、いくつかのAAVヘルパーコンストラクトが説明されている。例えば、Samulski et al.(1989) J.Virol. 63:3822−3828およびMcCarty et al.(1991) J.Virol. 65:2936−2945を参照のこと。Repおよび/またはCapの発現産物をコードする、いくつかの他のプラスミドが説明されている。例えば、米国特許第5,139,941号および同第6,376,237号を参照のこと。
【0187】
「トランスフェクション」なる用語は、細胞による外来性のDNAの取り込みを指すために使用され、外因性のDNAが細胞膜の内側に導入された場合、細胞は「トランスフェクトされ」ている。当技術分野では、いくつかのトランスフェクション技術が一般的に知られている。例えば、Graham et al.(1973) Virology, 52:456、Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York、Davis et al.(1986) Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier、およびChu et al.(1981) Gene 13:197を参照のこと。このような技術を用いて、好適な宿主細胞内に1つ以上の外因性DNA部分を導入できる。
【0188】
「核酸」、「ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド配列」は、DNAまたはRNAの配列を指す。当該用語は、限定されるものではないが4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル(uracil-5-oxyacetic acid methylester)、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、Bウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシンおよび2,6−ジアミノプリンなど、DNAおよびRNAの公知の塩基類似体のうちのいずれかを含む配列を包含する
【0189】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合にin vivoで、転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)、核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列に対して3’側に転写終結配列が位置する可能性がある。
【0190】
DNA「制御配列」なる用語は、レシピエント細胞におけるコード配列の複製、転写および翻訳を集合的にもたらす、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン(upstream regulatory domain)、複製開始点、配列内リボソーム進入部位(「IRES」)、エンハンサー等を集合的に指す。選択されたコード配列が適切な宿主細胞において複製、転写および翻訳されることが可能である限り、これらの制御配列の全てが常に存在する必要があるわけではない。「プロモーター」なる用語は、本明細書では、その通常の意味で使用され、DNA調節配列を含むヌクレオチドの領域を指し、ここで、この調節配列は、RNAポリメラーゼと結合して下流(3−方向)のコード配列の転写を開始することが可能である遺伝子に由来する。転写プロモーターには、(そのプロモーターに機能可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現がアナライト、コファクター、調節タンパク質等によって誘導される)「誘導性プロモーター」、(そのプロモーターに機能可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現がアナライト、コファクター、調節タンパク質等によって誘導される)「抑制性プロモーター」および「恒常的プロモーター」が包含され得る。
【0191】
「異種」なる用語は、通常はつながっていない、および/または特定の細胞と通常は関連していない、配列を表す。従って、核酸コンストラクトまたはプラスミドの「異種」領域は、天然では他方の分子と結び付いて見出されることのない別の核酸分子内の、またはそれに結合した、核酸のセグメントである。異種核酸を含む導入遺伝子は、いくつかの有用な産物をコードし得る。これらには、例えばsiRNA、アンチセンス分子およびmiRNAが包含され得る。あるいは、導入遺伝子は、ホルモンならびに増殖因子および分化因子をコードし得る。
【0192】
AAVプラスミドは、AAVゲノムの内部部分を全体的または部分的に除去してITRとITRの間に目的のDNA配列を挿入することによって目的の異種ヌクレオチド配列(例えば、治療用タンパク質、アンチセンス核酸分子、リボザイム、miRNA等をコードする選択された遺伝子)を保持するように改変されてよい。このようなプラスミドにおいて、ITRは機能を有したままであり、目的の異種ヌクレオチド配列を含むrAAVの複製およびパッケージングを可能にする。異種ヌクレオチド配列はまた、典型的には、特定の条件下で患者の標的細胞において遺伝子発現を駆動することが可能なプロモーター配列に連結されている。ポリアデニル化部位などの終結シグナルもプラスミドに含まれ得る。
【0193】
「発現カセット」なる用語は、少なくとも1つの目的の遺伝子、1つのオープンリーディングフレームおよび3’非翻訳領域(通常、真核生物ではポリアデニル化部位を含む)を含むDNA核酸配列を指す。
【0194】
従って、一般的な実施形態によれば、本発明による発現カセットは、一般式:
[5’ITR]−[目的の遺伝子]−[PolyA]z−[3’ITR]−
を有するDNA核酸配列を含むか、からなる可能性があり、式中、
[5’ITR]および[3’ITR]は逆方向末端反復(ITR)であり、
[目的の遺伝子]は、目的のタンパク質をコードする任意の遺伝子であり、
[PolyA]はポリアデニル化シグナルであり、zは0または1であり、
[5’ITR]、[目的の遺伝子]、[PolyA]および[3’ITR]はそれぞれ、任意選択で、1つの追加的なリンカー配列で隔てられていてもよい。
【0195】
本発明の意味において、「目的のタンパク質をコードする遺伝子」は、目的のタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸配列、および好ましくは少なくとも1つのプロモーター、を含む。
【0196】
好ましくは、目的の遺伝子は、ヒトPDE−6βまたはヒトRPE65をコードする核酸である。
【0197】
一実施形態によれば、AAVプラスミドは、配列番号1の、ヒトPDE−6βをコードする核酸を含む発現カセットを含む。
【0198】
代替的な一実施形態によれば、AAVプラスミドは、配列番号7の、ヒトRPE65をコードする核酸を含む発現カセットを含む。
【0199】
特定の一実施形態によれば、AAVプラスミドは、配列番号2の、ヒトPDE−6βをコードする核酸を含む。
【0200】
特定の一実施形態によれば、AAVプラスミドは、配列番号7の、ヒトRPE65をコードする核酸を含む。一実施形態によれば、[5’ITR]および[3’ITR]は、AAV−2に由来する逆方向末端反復(特に、それぞれ配列番号3および配列番号4の配列の逆方向末端反復)である。
【0201】
有利なことに、AAVプラスミドは、ポリアデニル化部位とAAV2に由来するITRとヒトPDE6βをコードする発現カセットとを含む。
【0202】
好ましくは、ヒトPDE6β遺伝子の発現は、好ましくは配列番号5の配列の、ロドプシンキナーゼのプロモーターの制御下にある。
【0203】
代替的な実施形態によれば、AAVプラスミドは、ポリアデニル化部位とAAV2に由来するITRとヒトRPE65をコードする発現カセットとを含む。
【0204】
好ましくは、ヒトRPE65遺伝子の発現は、好ましくは配列番号8の配列の、RPE65プロモーターの制御下にある。
【0205】
一実施形態によれば、ポリアデニル化シグナルは、ウシ成長ホルモン(bGH)に由来し、好ましくは配列番号6の配列のものである。
【0206】
上述の実施形態は、個別に、または組み合わせて、考慮されてよい。
【0207】
最も好ましい一実施形態によれば、AAVプラスミドは、上記で開示されるような、および
図1Aに示されるような、PDE6βをコードする核酸を含む発現カセットを含む。
【0208】
代替的な一実施形態によれば、AAVプラスミドは、上記で開示されるような、および
図1Bに示されるような、RPE65をコードする核酸を含む発現カセットを含む。
【0209】
本発明はさらに、上記で定義されるようなAAVプラスミドでトランスフェクトされた宿主細胞、および前記宿主細胞によって産生されるrAAV粒子に関する。
【0210】
本発明はさらに、遺伝子治療に使用するための、宿主細胞によって産生されるrAAV粒子に関する。
【0211】
特に、本発明はさらに、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびアカゲザル由来血清型(AAVrh10を含む)から選択されるrAAV粒子に関する。好ましくは、rAAV粒子は、AAV4および/またはAAV5の血清型に属するrAAV粒子から選択される。
【0212】
特に、本発明は、上記で定義されるようなヒトPDE6βをコードする発現カセットを含むDNAを含むrAAV5粒子に関する。
【実施例】
【0213】
実施例1:rAAV5粒子を精製するための二段階陰イオン交換クロマトグラフィー
【0214】
A.材料および方法
【0215】
A1.細胞溶解物の回収
【0216】
トランスフェクトされた細胞を、CellStack 10(CS10)の全ての面を軽くたたくことによってトランスフェクションから96±5時間後に回収する。全懸濁液をBioProcess Container(BPC)に移す。ウイルス粒子の大部分は上清中に放出される。
【0217】
A2.細胞溶解物の清澄化
【0218】
20個のCS10を用いて得られた全懸濁液を1200mL/分の流速でMilliporeのデプスフィルターPolysep II 1/0.5μm−30’’−に通してろ過し、細胞の残骸を排除する。ろ過工程の終了時に、空気で押すことによってろ過ユニットを空にする。ろ過ユニットを15Lの緩衝液(Tris 20mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH9)でリンスし、この緩衝液を、ろ過した溶解物と合わせる。これが清澄化溶解物である。この工程の間に、DNAおよび可溶性タンパク質の大部分が同様に排除される。パラメータ(pHおよび伝導率)を正しい結合条件に調整するために、清澄化溶解物を30Lの緩衝液(Tris 20mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8.5)で希釈する。インジェクション用緩衝液と比較して、決定的なパラメータ(pHおよび伝導率)を制御する(pH8.5、伝導率6±1mS)。
【0219】
これらの条件は、このカラムへのAAV5ベクターの結合に最適であると決定された。
【0220】
A3.第1の陰イオン交換クロマトグラフィー精製工程
【0221】
この工程は、Unicornソフトウェアによって制御されるAkta Pilot(GE Healthcare)を用いて実現される。100LのBPC中の希釈産物67Lを400mL/分の流速で注入して、緩衝液1(Tris 20mM、NaCl 50mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8.5)で平衡化したMonolith CIMmultus QA(800mL)に通す。この工程の間に、AAVおよび一部の不純物がカラムに結合する。大部分の不純物はカラムに結合せず、フロースルー中に排除される。次に、非特異的に結合した粒子を洗浄するために、15CV(カラム体積)の緩衝液1でカラムをリンスする。溶出工程は、緩衝液2(Tris 20mM、NaCl 50mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8.0)と緩衝液3(Tris 20mM、NaCl 1M、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8.0)との混合の結果である、非常に緩やかな傾きを有するNaClの塩勾配である。勾配の傾きは、15CVにおいて50%の緩衝液3を得るのに適している。塩の緩徐な増加は、AAVおよび他の不純物を徐々に溶出させることを可能にする。
【0222】
pH8.5での結合とは対照的に、カラムに結合した化学種(AAVを含む)の溶出は、8.0というpHで行われる。このpHは、精製工程と精製工程の間の凍結保存中にベクターの感染性を維持するために調整された(pH8.5は、AAV5の感染性に対して特に有害であった)。
【0223】
溶出画分をポリプロピレンのボトルに回収し、次の工程まで−65℃未満または−80℃未満で保存する(通常、約1週間)。この期間中に、ウイルス粒子の存在について、回収した画分をスクリーニングする。
【0224】
A4.第2の陰イオン交換クロマトグラフィー精製工程
【0225】
第2のクロマトグラフィー工程は、勾配がより緩やかであることを除き、第1のものと同様である。この工程の効果は、不純物からAAVをさらに分離することである。
【0226】
AAV粒子を含む、第1のクロマトグラフィー工程からの選択された画分をプールする(1.5〜2L)。パラメータ(pHおよび伝導率)を正しい結合条件に調整するために、4LのTris 20mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8.5および2lのTris 20mM、NaCl 50mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8.5で画分のプールを希釈する。緩衝液1と比較して、パラメータを制御する。溶出が、15CVにおいて30%の緩衝液3を得る勾配であることを除き、第1のクロマトグラフィー分離の全ての工程が、同じカラムであるMonolith CIMmultus QA(800mL)で繰り返される。溶出画分をポリプロピレンのボトルに回収し、次の精製工程まで−65℃未満または−80℃未満で保存する(通常、約2週間)。この期間中に、ウイルス粒子の存在について、回収した画分をスクリーニングする。
【0227】
A5.タンジェンシャルフローろ過(TFF)
【0228】
AAV粒子を含む第2のクロマトグラフィー工程からの選択された画分をプールする(約1L)。100KDaのカットオフを有するmPES中空糸を用いてTFFを行う。AAVを眼用塩類溶液(SS0)に対してダイアフィルトレーションおよび濃縮する。
【0229】
プールされた画分をまず、僅かに濃縮し、10容量の緩衝液に対してダイアフィルトレーションし、最後に、期待される濃度に達するように濃縮する。TFFは、残っている小さな不純物を排除すること、ならびに注射用の正しい緩衝液中にウイルスベクターを配合すること、および正しいレベルまで濃縮すること、を可能にする。ろ過、精製および濃縮されたウイルスベクターは、力価測定まで−65℃未満または−80℃未満で保存する。
【0230】
A6.滅菌ろ過
【0231】
患者への注射に必要とされる正確な濃度を得るためにAAVをSOS(眼用塩類溶液)で希釈し、期待される量に従って最終的な容器に分注する前に0.2μmのPESフィルターで滅菌ろ過する。用量は、注射まで−65℃未満または−80℃未満で保存する。
【0232】
A7.qPCRによるベクターゲノムの濃度(vg/mL)
【0233】
この方法は、導入遺伝子の発現カセット(導入遺伝子、ポリ(A)、ITRまたはプロモーター)を標的とする定量的PCR(qPCR)によるゲノム含有粒子の定量にある。rAAVのサンプルをまず、カプシドで包まれていないDNAを排除するためにDNaseで消化する。その後、プロテイナーゼKでの処理により、AAVカプシドを分解し、その後のqPCRによる定量化のためのウイルスDNAを放出させる。
【0234】
標的とされるアンプリコンを含むベクタープラスミドを用いてqPCR用の検量線を生成する。各アッセイにおいて検量線の安定性および再現性を確実にするために、このプラスミドは、制限エンドヌクレアーゼ消化によって線状化され、分注され、−18℃以下で保存される。
【0235】
1
e10コピーのアンプリコンの算出は、以下の式に基づく:
DNAの量(g)=(660×プラスミドのサイズ(bp)×1
e10コピー)/(6.02×10
e23)
【0236】
ベクターゲノムDNAの相対量は、既知量のアンプリコンDNAを含む検量線から反応あたりのコピー数を外挿することによって割り当てる。
【0237】
結果は、1mLあたりのベクターゲノムで表す。
【0238】
A8.ICAによる感染性粒子の濃度(ip/mL)
【0239】
Infectious Center Assay(ICA)は、rAAVのロット中の感染性粒子の定量化を可能にする。このアッセイは、増加する段階希釈のrAAVベクターで、および野生型のアデノウイルス(5型)で、AAV2のrepおよびcapの配列を安定に保持する許容細胞株(HeLaRC32、ATCC CRL−2972)を感染させることを伴う。従って、細胞内に侵入する感染性のrAAV粒子は複製可能であることになる。次に、複製イベントを、導入遺伝子に特異的なプローブを用いたハイブリダイゼーションの後に化学発光によって検出し、定量化する(Salvetti et al.,Hum Gene Ther, 1998)。
【0240】
感染から26時間後に、細胞を回収し、溶解し、ナイロンメンブレン上にブロットする。フルオレセインで標識した特異的な導入遺伝子用プローブを用いてハイブリダイゼーションを行う。次に、アルカリホスファターゼを結合させた抗フルオレセイン抗体でシグナルを増幅し、化学発光によって検出する。
【0241】
最後に、X線撮影用フィルムへの露光の後にドットを計数することによって複製イベントを定量化する。
【0242】
A9.ELISAによるベクター粒子の濃度(vp/mL)
【0243】
rAAVの全AAV5カプシド濃度を、市販のサンドイッチELISA法(Progen、Cat.# PRAAV5)によって決定する。
【0244】
組換えAAV5ビリオン、またはアデノ随伴ウイルス5の集合した完全な空のカプシド、の定量化のために、独特なマイクロタイタープレート酵素免疫測定法を用いる。捕捉抗体は、集合していないカプシドタンパク質上には存在しない立体構造エピトープを検出する。
【0245】
製剤をまず、希釈し、モノクローナル抗体で被覆したウェルに適用する。次に、ビオチンをコンジュゲートしたモノクローナル抗体を添加した後、ストレプトアビジンとペルオキシダーゼのコンジュゲートおよびTMB発色基質(テトラメチルベンジジン)を添加することによって、捕捉されたAAV5粒子を検出する。特異的に結合した完全なカプシド粒子に比例する得られた呈色反応の生成物を450nmにて測光法で測定する。
【0246】
サンプル中に存在するAAV5カプシドの濃度を検量線から外挿し、適切な希釈係数について補正し、1mLあたりのベクター粒子で表す。
【0247】
A10.SDS−PAGEおよびクマシーブルー染色によるベクターカプシドの純度および識別
【0248】
SDS−PAGE法は、タンパク質とサンプルの他の構成成分とを、それらの分子量およびそれらの電荷に応じて分離する、変性条件下でのポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動である。
【0249】
電気泳動の後、サンプル中のタンパク質だけを定量化するためにクマシーブルー(Imperial Protein Stain)でゲルを染色する。rAAVのタンパク質の識別は、VP1、VP2およびVP3と呼称されるAAVの3種のカプシドタンパク質の存在によって確認される。rAAVのタンパク質の純度は、サンプル中に存在するタンパク質の総量と比較したカプシドタンパク質の相対量として算出される。
【0250】
クマシーブルー染色の後に、CCDカメラを有する発光画像分析器によって電気泳動ゲルを分析する。タンパク質のバンドはそれぞれ、ピークとして検出され、シグナルは分析器によって積分される。次に、各ピークの面積が算出される。100%の純度の生成物は、VP1、VP2およびVP3の3種のタンパク質のバンドしか含まない。
【0251】
A11.SDS−PAGEおよび銀染色によるベクター粒子の定量化
【0252】
Heukeshoven and Dernick(Heukeshoven and Dernick Electrophoresis, 1985)の方法論に基づく銀染色は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離されたタンパク質および核酸の検出を可能にする。
【0253】
検量線に使用されるrAAVと同じゲル上にサンプルをロードする。rAAV8RSM(Ayuso et al, Hum Gene Ther. 2014)と同じように作製および特徴付けされ、100%の完全な粒子を含む、参照対象のrAAVのロットを用いて検量線を生成する。
【0254】
電気泳動の後、CCDカメラを有する画像分析器を用いてゲルを分析し、VP3に対応するバンドのシグナルをレーンごとに積分する。サンプル中に存在する全カプシドの量を検量線から外挿し、1mLあたりの粒子で表す。
【0255】
完全な粒子/全粒子の比は、以下の計算に基づく:
1mLあたりのベクターゲノムの力価/1mLあたりの粒子の力価
【0256】
参考用:Simplified method for silver staining of proteins in polyacrylamide gels and the mechanism of silver staining(Electrophoresis 6(1985) 103−112, Heukeshoven,J. and Dernick,R.)およびManufacturing and Characterization of a recombinant associated virus type 8 reference standard material, Ayuso et al,(Hum Gene Ther. 2014 Oct 2)。
【0257】
A12.qPCRによる残留宿主細胞DNA(HEK293細胞に由来するアルブミンおよびE1A)
【0258】
ヒトアルブミン遺伝子またはアデノウイルス5型E1A遺伝子を標的とするリアルタイム定量的PCR法を用いて、残留ヒト宿主細胞DNAを定量する。
【0259】
特定のアンプリコン(アルブミンおよびE1A)を含むプラスミドを用いてqPCR用の検量線を生成する。各アッセイにおいて検量線の安定性および再現性を確実にするために、このプラスミドは、制限エンドヌクレアーゼ消化によって線状化され、充填され、−18℃以下で保存される。1
e10コピーのアルブミン遺伝子配列の算出は、以下の計算に基づく:
DNAの量(g)=(660×プラスミドのサイズ(bp)×1e10コピー)/(6.02×10e23)
【0260】
アルブミンまたはE1AのアンプリコンDNAの相対量は、既知量のアルブミンまたはE1AのアンプリコンDNAを含む検量線から反応あたりのコピー数を外挿することによって割り当てる。
【0261】
第2の検量線は、1ウェルあたり50pg〜5ngのHEK293細胞株由来ゲノムDNAを用いて実施される。この検量線は、アルブミンまたはE1Aのコピーの量と対応するHEK293のDNAの量(ng)との間の相関を指し示す。
【0262】
B.結果
【0263】
B1.大規模バッチの開発
【0264】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ第1の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップ(
図3Aを参照のこと)および第2の陰イオン交換クロマトグラフィーのステップ(
図3Bを参照のこと)からの、AAV5粒子を含む清澄化上清の溶出プロファイルを示す。
【0265】
精製法は、大規模(22L)で達成される。各工程におけるベクターゲノムの力価測定および最終産物の特性評価は、上述のプロトコルに従って確立され、以下の表に要約される。
【0266】
【表1】
【0267】
【表2】
【0268】
結論:このプロトコルは再現性があり、大規模かつ良好な収率で清澄化上清から臨床グレードのAAV5調製物を精製するのに効果的である。有利なことに、連続する第2の陰イオン交換カラムクロマトグラフィー工程は、ベクターゲノムの力価に中程度に影響するに過ぎない。
【0269】
B2.種々のAAV5ウイルスベクターへの適用
【0270】
このプロセスを、異なる導入遺伝子を含む種々のAAV5ウイルスベクターに適用した。
【0271】
材料および方法のセクションにおいて上述された条件と同じ条件で、各AAV5(異なる3種の導入遺伝子)について、2.2リットルの2つの小規模バッチを作製し、精製した。
【0272】
結果を以下の表3に要約する。ベクターは全て、90%超の純度である。
【0273】
【表3】
【0274】
結論:このプロセスのロバスト性は、最終産物の品質を同じにしつつ、異なる導入遺伝子を含む種々のAAV5血清型にプロセスを適用することを可能にする。
【0275】
実施例2:rAAV4粒子を精製するための二段階陰イオン交換クロマトグラフィー
【0276】
A.材料および方法
【0277】
A1.細胞溶解物の回収
【0278】
トランスフェクトされた細胞を、CellStack 10(CS10)の全ての面を軽くたたくことによってトランスフェクションから97時間後に回収する。室温にて1時間、Triton X−100(終濃度1%v/v)で全懸濁液を処理して、細胞から粒子を放出させるとともに(処理前の上清中のAAVは80%、処理後は98%)、深層ろ過の工程を促進する(より良好な深層ろ過工程の回収率)。
【0279】
A2.細胞溶解物の清澄化
【0280】
得られた細胞懸濁液を90mL/分の流速でMilliporeのデプスフィルターPolysep II 1/0.5μm−2’’−に通してろ過し、細胞の残骸を排除する。ろ過工程の終了時に、空気で押すことによってろ過ユニットを空にする。ろ過ユニットを600mLの緩衝液(Tris 20mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8)でリンスし、この緩衝液を、ろ過した溶解物と合わせる。これが清澄化溶解物である。この工程の間に、DNAおよび可溶性タンパク質の大部分が同様に排除される。パラメータ(pHおよび伝導率)を正しい結合条件に調整するために、清澄化溶解物を1.4Lの緩衝液(Tris 20mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8)で希釈する。インジェクション用緩衝液と比較して、決定的なパラメータ(pHおよび伝導率)を制御する(pH8.0、伝導率6±1mS)。
【0281】
A3.第1の陰イオン交換クロマトグラフィー精製工程
【0282】
この工程は、Unicornソフトウェアによって制御されるAkta Pilot(GE Healthcare)を用いて実現される。3Lの希釈産物を100mL/分の流速で注入して、緩衝液1(Tris 20mM、NaCl 50mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8)で平衡化したMonolith CIMmultus QA(80mL)に通す。この工程の間に、AAVおよび一部の不純物がカラムに結合する。大部分の不純物はカラムに結合せず、フロースルー中に排除される。次に、非特異的に結合した粒子を洗浄するために、吸光度が安定なレベルになるまで緩衝液1でカラムをリンスする。溶出工程は、緩衝液1と緩衝液2(Tris 20mM、NaCl 350mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8)との混合の結果である、非常に緩やかな傾きを有するNaClの塩勾配である。溶出は、10CVにおいて100%の緩衝液2を得るように実現される。塩の緩徐な増加は、AAVおよび他の不純物を徐々に溶出させることを可能にする。
【0283】
溶出画分をポリプロピレンのチューブに回収し、次の工程まで−80℃未満で保存する。ウイルス粒子の存在について、回収した画分をスクリーニングする。
【0284】
A4.第2の陰イオン交換クロマトグラフィー精製工程
【0285】
第2のクロマトグラフィー工程は、勾配がより緩やかであることを除き、第1のものと同様である。この工程の効果は、不純物からAAVをさらに分離することである。
【0286】
AAV粒子を含む、第1のクロマトグラフィー工程からの選択された画分をプールする(350mL)。パラメータ(pHおよび伝導率)を正しい結合条件に調整するために、900mLのTris 20mM、MgCl
2 2mM、CaCl
2 1mM、pH8で画分のプールを希釈する。緩衝液1と比較して、パラメータを制御する。溶出が、40CVにおいて100%の緩衝液2を得る勾配であることを除き、第1のクロマトグラフィー分離の全ての工程が、同じカラムであるMonolith CIMmultus QA(80mL)で繰り返される。溶出画分をポリプロピレンのボトルに回収し、次の精製工程まで−80℃未満で保存する。ウイルス粒子の存在について、回収した画分をスクリーニングする。
【0287】
A5.タンジェンシャルフローろ過(TFF)
【0288】
AAVを含む第2のクロマトグラフィー工程からの選択された画分をプールする(約700mL)。50KDaのカットオフを有するmPES中空糸を用いてTFFを行う。AAVを眼用塩類溶液(SOS)に対してダイアフィルトレーションおよび濃縮する。
【0289】
プールされた画分をまず、僅かに濃縮し、10容量の緩衝液に対してダイアフィルトレーションし、最後に、期待される濃度に達するように濃縮する。ろ過、精製および濃縮されたウイルスベクターは、力価測定まで−80℃未満で保存する。
【0290】
B.結果
【0291】
この実施例のAAV4について得られた結果を以下の表4に要約する。
【0292】
各工程におけるベクターゲノムの力価測定は、上述のプロトコルに従って確立される。
【0293】
【表4】
【0294】
【表5】