(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837013
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】軟質皮膜用組成物およびこれの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20210222BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20210222BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20210222BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L23/20
C08L23/04
B29C45/00
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-564400(P2017-564400)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公表番号】特表2018-524431(P2018-524431A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016036173
(87)【国際公開番号】WO2016200783
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/174,871
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510145211
【氏名又は名称】クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライト,キャスリン・ジェイ
【審査官】
齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−518156(JP,A)
【文献】
特表2007−511805(JP,A)
【文献】
特表2016−503441(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0056721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を製造するための組成物であって、
50から70重量%のブロックコポリマー、
15から25重量%の少なくとも1種のブテンのホモポリマーまたはコポリマーおよび
12から24重量%の少なくとも1種のポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマー
を含み、
前記ブロックコポリマーが、0.85g/ccを超える比重を有する水素添加低ビニルポリブタジエン末端ブロックを有し、およびポリアルケニルアレーン/水素添加ジエンの制御分布中間ブロックを有し、ならびに前記組成物の総重量が100重量%に等しい、組成物。
【請求項2】
前記ブロックコポリマーが、C−A/B−Cまたは(C−A/B)nXの構造を有し、式中、Cは水素添加低ビニル半結晶性ポリブタジエンブロックであり、A/Bは高ビニル含量を有するモノアルケニルアレーンおよびブタジエンの制御分布ポリマー中間ブロックであり、Xはカップリング剤の残基であり、ならびにnは2から6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマーが、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリブテンコポリマーまたはこれらの2種以上の混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルケニルアレーンが、スチレン、アルファメチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、パラ−ブチルスチレンまたはこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記水素添加ジエンが、水素添加ブタジエン、水素添加イソプレンまたはこれらの混合物の群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロックコポリマーが、C−S/EB−Cであり、式中、Cは水素添加低ビニル半結晶性ポリブタジエンブロックであり、ならびにS/EBはスチレンおよび水素添加ブタジエンの制御分布ポリマー中間ブロックである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記ブロックコポリマーが、2.16kgの重量で230℃にて1から50g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
230℃および2.16kgにて、5から400g/10分のメルトフローレート範囲を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
回転成形、射出成形、押出、カレンダー加工、熱成形またはスラッシュ成形のいずれかにより、組成物から物品を形成することを含む、物品を製造する方法であって、前記組成物が、
50から70重量%のブロックコポリマー、
15から25重量%の少なくとも1種のブテンのホモポリマーまたはコポリマーおよび
12から24重量%の少なくとも1種のポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマー
を含み、前記ブロックコポリマーが、0.85g/ccを超える比重を有する水素添加低ビニルブタジエン末端ブロックを有し、およびポリアルケニルアレーン/水素添加ジエンの制御分布中間ブロックを有し、ならびに前記組成物の総重量が100重量%に等しく、および前記組成物を、物品の形成のステップ前に溶融混合する、方法。
【請求項10】
前記ポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマーが、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、ポリブテンコポリマーまたはこれらの2種以上の混合物である、請求項9に記載の物品を製造する方法。
【請求項11】
前記アルケニルアレーンが、スチレン、アルファメチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、パラ−ブチルスチレンまたはこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の物品を製造する方法。
【請求項12】
前記水素添加ジエンが、水素添加ブタジエン、水素添加イソプレンまたはこれらの混合物の群から選択される、請求項9に記載の物品を製造する方法。
【請求項13】
布地、発泡体または硬質シート基材を組成物でコーティングする方法であって、
押出またはカレンダー加工によって、布地、発泡体または硬質シート基材をコーティングし、物品を製造することを含み、前記組成物が
50から70重量%のブロックコポリマー、
15から25重量%の少なくとも1種のブテンのホモポリマーまたはコポリマー、
12から24重量%の少なくとも1種のポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマー
を含み、
前記ブロックコポリマーが、0.85g/ccを超える比重を有する水素添加低ビニルポリブタジエン末端ブロックを有し、およびポリアルケニルアレーン/水素添加ジエンの制御分布中間ブロックを有し、ならびに前記組成物の総重量が100重量%に等しく、および前記組成物を、前記布地、発泡体または硬質シート基材をコーティングするステップの前に溶融混合する、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を含む物品であって、物品が、射出成形、押出、熱成形、回転成形またはスラッシュ成形のいずれかにより形成される、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月12日に出願された米国仮特許出願第62/174,871号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし
【0003】
本開示は、溶融加工法によって製造され得て、耐ディーゼル性特性を有するブロックコポリマー組成物を提供する。該組成物は、例えば自動車市場向けの、耐ディーゼル燃料性の物品を製造するための、回転成形、スラッシュ成形、射出成形、押出成形もしくは圧縮成形、または熱成形もしくはカレンダー加工などのための多くの用途で有用であり得る。
【背景技術】
【0004】
クレイトンポリマーズに譲渡された米国特許出願公開第2010/0056721号は、ポリエチレン末端ブロック、スチレンブロックポリマー、ブタジエンブロックポリマー、スチレンブロックポリマーおよびポリエチレン末端ブロック(PE−S−B−S−PE)を有するペンタブロックコポリマーを開示している。該ポリマーは、回転成形に好適である。該組成物は高いメルトフローレート(MFR)を有し、該ブロックコポリマーはディーゼル燃料に耐性ではない。
【0005】
クレイトンポリマーに譲渡された欧州特許第1,474,458号は、スチレン−スチレン/ブタジエン−スチレン(S−S/B−S)制御分布中間ブロックポリマーを開示している。この特許は、「制御分布」を定義する目的で、参照により本明細書に組み入れられている。
【0006】
スラッシュ成形可能な組成物は、クレイトンポリマーズに譲渡された米国特許出願公開第2012/0070665号に開示されている。これに開示されているブロックコポリマーは、好ましくはスチレン−スチレン/エチレン−ブタジエン−スチレン(S−S/EB−S)のトリブロックコポリマーであり、中間ブロック成分EBは水素添加ブタジエンである。中間ブロックは、共重合され、次いで主にブタジエンに影響を及ぼす方法で水素添加されている、スチレンおよびブタジエンの制御分布物である。このブロックコポリマーはディーゼル燃料に耐性がない。
【0007】
耐ディーゼル燃料性であり、これに限定されるわけではないが、自動車産業などの消費者用途向けの、射出成形、押出、回転成形もしくはスラッシュ成形、カレンダー加工、または熱成形技術などの任意の溶融加工技術によって製造できるブロックコポリマー組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0056721号明細書
【特許文献2】欧州特許第1,474,458号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0070665号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書で提供する成分組成物は、耐ディーゼル燃料性である。該組成物の主成分は、主にトリブロックコポリマーC−A/B−Cまたは(C−A/B)nXであり、式中、Cは、制御分布中間ブロックA/Bを有する、閉じ込められた結晶性または半結晶性ポリオレフィンの水素添加低ビニルポリブタジエン末端ブロックを表し、ここで、Aはポリアルケニルアレーンを表し、Bは水素添加ジエンを表す。ポリアルケニルアレーンの中間ブロック成分は、スチレン、アルファメチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、パラブチルスチレンまたはこれらの2つ以上の混合物であることができる。中間ブロックの水素添加ジエン成分は、水素添加ブタジエン、水素添加イソプレンまたはこれの混合物であってよい。ブロックコポリマーは、当分野で既知であるように、逐次重合によってまたは分岐もしくはアニオン重合法によるカップリングによって製造することができる。該組成物はまた、ブテンのホモポリマーまたはコポリマーの第2の成分を含む。組成物の第3の成分は、トリブロックコポリマーのC末端ブロックとは別個の、オレフィンのホモポリマーまたはコポリマーである。オレフィンのホモポリマーまたはコポリマーは、LDPE、LLDPE、HDPE、ホモPP、多くのポリプロピレンコポリマー(エチレン−プロピレン、プロピレン−オクテン、プロピレンブテンなど)またはこれらの2種以上の混合物であってよい。該組成物のこれらの3種の成分であるトリブロックコポリマー、ブテンのホモポリマーまたはコポリマーおよびオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーは、一般に組成物全体の約93から99重量%を含む。組成物の総重量が100重量%となるように、他の成分が残りの1から7重量%を含む。
【0010】
組成物は、耐ディーゼル燃料性の物品を製造するための、回転成形、スラッシュ成形、射出成形、押出もしくは圧縮成形、熱成形またはカレンダー加工に有用であり得る。従って、物品を製造する方法は、ブロックコポリマーの成分を混合して組成物の均一な混合物を形成し、ある量の組成物を溶融工程に導入して、最終物品または物品の部品を形成することを含む。組成物の均一混合物は、溶融工程に供する前に、ペレットまたは粉末の形態であってよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最も広い意味では、本開示は、回転成形またはスラッシュ成形または射出成形または押出もしくは圧縮成形または熱成形もしくはカレンダー加工によって物品を製造するための組成物であって、
i)約50から約70重量%のブロックコポリマー、
ii)約15から約25重量%の少なくとも1種のブテンのホモポリマーまたはコポリマー、
iii)約12から約24重量%の少なくとも1種のポリオレフィンホモポリマーまたはポリオレフィンコポリマーおよび
iv)約0.3から約3重量%の少なくとも1種の安定剤
を含み、
v)ここで、前記ブロックコポリマーが、0.85g/ccを超える比重を有する水素添加低ビニルブタジエン末端ブロックを有し、およびポリアルケニルアレーン/水素添加ジエンの制御分布中間ブロックを有し、ここで、組成物の前記総重量が100重量%に等しい、組成物を提供する。
【0012】
最も広い意味で、本開示は、物品を製造する方法であって、
i)組成物から物品を回転成形またはスラッシュ成形または射出成形または押出もしくは圧縮成形または熱成形もしくはカレンダー加工することを含み、組成物が、約50から約70重量%のブロックコポリマー、
ii)約15から約25重量%の少なくとも1種のブテンのホモポリマーまたはコポリマー、
iii)約12から約24重量%の少なくとも1種のポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーおよび
iv)約0.3から約3重量%の少なくとも1種の安定剤を含み、
v)ここで、前記ブロックコポリマーが、0.85g/ccを超える比重を有する水素添加低ビニルブタジエン末端ブロックを有し、およびポリアルケニルアレーン/水素添加ジエンの制御分布中間ブロックを有し、ここで、組成物の前記総重量が100重量%に等しく、前記組成物が、前記回転成形またはスラッシュ成形または射出成形または押出もしくは圧縮成形または熱成形もしくはカレンダー加工のステップ前に、ペレット、マイクロペレットまたは粉砕粉末形態で溶融混合され、押出され、冷却される、方法にも関する。
【発明の効果】
【0013】
最後に、本明細書中に示すコポリマーは、コポリマー特性に悪影響を及ぼさない他の任意の成分と配合してよい。追加成分として使用され得る例示的な材料としては、顔料、酸化防止剤、着色剤、界面活性剤、ワックスおよび流動促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。ペースト形態または粉末形態の均一組成物に散布剤を添加してよい。ポリマーは、例えば成形品および押出品を含む広範囲の用途に有用であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、ブロックコポリマー、ブテンのホモポリマーまたはコポリマーおよびポリオレフィン(ホモポリマーまたはコポリマー)を含む組成物に関する。場合により、一次または一次および二次安定剤を組成物中に組み入れてよい。ブロックコポリマーは、逐次的にまたはカップリングによって形成され得る。該ブロックコポリマーはトリブロックコポリマーとして好ましい逐次または結合直鎖構造を有するが、少なくとも3本以上のアームを有する分枝または放射状結合コポリマーであり得ることが検討される。ブロックコポリマーは、アニオン重合によって形成される。
【0015】
ポリマーを調製する方法に関して、アニオン重合工程は、リチウム開始剤を用いて溶液中で好適なモノマーを重合することを含む。重合ビヒクルとして使用される溶媒は、生成ポリマーのリビングアニオン鎖末端と反応せず、市販の重合装置での取扱いが容易であり、生成物ポリマーに適切な溶解特性を与える、いずれの炭水化物でもよい。例えば非極性脂肪族炭化水素は、一般にイオン化水素原子が欠けていて、特に好適な溶媒となる。頻繁に使用されるのは環式アルカン、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンであり、このすべてが比較的、非極性である。他の好適な溶媒は、所与の一連の処理条件で有効に機能するように選択され得て、重合温度は考慮される主要な因子の1つである。
【0016】
リチウム開始剤としては、ジ開始剤(di−initiator)、例えばm−ジイソプロペニルベンゼンのジ−sec−ブチルリチウム付加体を含む、例えばアルキルリチウム化合物および他の有機リチウム化合物、例えばs−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、アミルリチウムなどが挙げられる。他のこのようなジ開始剤は、米国特許第6,492,469号明細書に記載されている。多様な重合開始剤のうち、s−ブチルリチウムが好ましい。開始剤は、所望のポリマー鎖1本に付き開始剤1分子に基づいて計算した量で、重合混合物(モノマーおよび溶媒を含む。)中にて使用され得る。リチウム開始剤方法は、米国特許第4,039,593号明細書およびRe.27,145に記載され、この記載は参照により本明細書に組み入れられている。
【0017】
本明細書に記載するブロックコポリマーを調製するための重合条件は通例、一般にアニオン重合に使用される重合条件と似ている。重合は、好ましくは約−30℃から約150℃の、さらに好ましくは約10℃から約100℃の、および最も好ましくは、工業的な制約の観点から、約30℃から約90℃の温度で行われる。重合は不活性雰囲気、好ましくは窒素中で行い、約0.5から約10バールの範囲内の圧力下で達成することもできる。この共重合は一般に、約12時間未満が必要であり、温度、モノマー成分の濃度および所望であるポリマーの分子量に応じて約5分から約5時間で達成され得る。
【0018】
別の重要な態様は、低ビニルポリブタジエン末端ブロック中および制御分布中間ブロック中の共役ジエンの微細構造またはビニル含量を制御することである。このように制御するのは、低ビニルブロックが結晶化する傾向があり、これにより半結晶質熱可塑性樹脂に特有な他の特性の中でも耐溶剤性特性が付与されるためである。一方、ペンダントビニル基は結晶性を破壊する傾向があることで、これらのブロックのゴム状の性質を保持するため、ゴム状ブロックにおいてはビニル含量が高いことが望ましい。用語「ビニル」は、1,3−ブタジエンが1,2付加機構によって重合される場合に生成されるポリマー生成物を説明するために使用されている。結果は、ポリマー骨格に吊り下がった一置換オレフィン基、即ちビニル基である。イソプレンのアニオン重合の場合、3,4付加機構によるイソプレンの挿入によって、ポリマー骨格に吊り下がったジェミナルジアルキルC=C部分が得られる。イソプレンの3,4付加重合のブロックコポリマーの最終的な特性に対する影響は、ブタジエンの1,2付加による影響と類似している。一般に、共役ジエンモノマーの使用について言う場合、好ましいビニル含量は、プロトンNMR分析によって決定される約5から80モル%の縮合共役ジエン単位である。
【0019】
ビニル含量(共役ジエンの添加様式)は、重合溶媒の種類、重合温度および微細構造改質剤の選択によって効果的に制御される。微細構造改質剤として有用な、非キレート形成およびキレート形成極性化合物のどちらも使用され得る。
【0020】
非キレート形成微細構造改質剤の例は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、テトラメチレンオキシド(テトラヒドロフラン)、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンおよびキノリンならびにこれの混合物である。
【0021】
「キレート形成エーテル」という用語は、本明細書で使用する場合、式R(OR’)
m(OR”)
oORによって例示されるような1個を超える酸素を有するエーテルを示し、ここで、式中、各Rは、1から8個の、好ましくは2から3個の炭素原子アルキル基より個別に選択され、R’およびR”は、1から6個の、好ましくは2から3個の炭素原子アルキレン基より個別に選択され、ならびにmおよびoは、1から3の、好ましくは1から2の、独立して選択される整数である。好ましいエーテルの例としては、ジエトキシプロパン、1,2−ジオキシエタン(ジオキソ)および1,2−ジメトキシオキシエタン(グリム)である。他の好適な材料としては、CH
3OCH
2、CH
2OCH
2、CH
2OCH
3(C
6H
14O
3−ジグリム)およびCH
3CH
2、OCH
2、CH
2、OCH
2CH
2およびOCH
2CH
3が挙げられる。「キレート形成アミン」は、1個を超える窒素を有するアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラメチレンジアミンを意味する。
【0022】
極性微細構造改質剤の量は、共役ジエンブロック中の所望のビニル含量を得るために制御される。微細構造改質剤のリチウムポリマー鎖端に対する好適な比は、米国特許第Re.27,145号で開示されている。極性改質剤は、リチウム化合物1モルに付き少なくとも0.1モルの量で、リチウム化合物1モルに付き好ましくは1−50モルの、より好ましくは2−25モルの促進剤が使用され得る。または濃度は、溶媒およびモノマーの総重量に基づいて重量ppmで表すことができる。この基準に基づいて、10ppmから約1重量%、好ましくは100ppmから2000ppmが使用される。しかし、幾つかの好ましい改質剤はきわめて少量で非常に効果的であるため、この量は広範に変化することがある。この一方で、特により効果の低い改質剤では、改質剤自体が溶媒となることがある。これらの技術は、例えばWinklerの米国特許第3,686,366号明細書(1972年8月22日)、Winklerの米国特許第3,700,748号明細書(1972年10月24日)およびKoppesらの米国特許第5,194,535号明細書(1993年3月16日)に開示され、これの開示は参照により本明細書に組み入れられている。
【0023】
重合ビヒクルとして使用される溶媒は、生成ポリマーのリビングアニオン鎖末端と反応せず、市販の重合装置での取扱いが容易であり、生成物ポリマーに適切な溶解特性を与える、いずれの炭水化物でもよい。例えば非極性脂肪族炭化水素は、一般にイオン化水素がなく、特に好適な溶媒となる。頻繁に使用されるのは環式アルカン、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンであり、このすべてが比較的、非極性である。他の好適な溶媒は、所与の一連の処理条件で有効に機能するように選択され得て、温度は考慮される主要な因子の1つである。
【0024】
放射状(分枝)ポリマー(C−A/B)
nXの調製には、「カップリング」と呼ばれる重合後ステップが必要である。上の選択的水素添加ブロックコポリマーの放射状の式において、「C」は水素添加低ビニルポリブタジエンブロックであり、「A」はポリアルケニルアレーンブロックポリマーであり、「B」は水素添加ジエンブロックポリマーであり、「n」は2から約15、好ましくは約2から約6の整数であり、および「X」はカップリング剤の残部または残基である。多種多様のカップリング剤として、例えばジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能性エポキシド、シリカ化合物、1価アルコールのカルボン酸とのエステル(例えばアジピン酸ジメチル)およびエポキシ化油が挙げられ得る。星形ポリマーは、例えば米国特許第3,985,830号;同第4,391,949号;および同第4,444,953号;カナダ国特許第716,645号に開示されているように、ポリアルケニルカップリング剤を用いて調製される。好適なポリアルケニルカップリング剤としては、ジビニルベンゼンおよび好ましくはm−ジビニルベンゼンが挙げられる。好ましいのは、テトラ−アルコキシシラン、例えばテトラ−エトキシシラン(TEOS)およびテトラ−メトキシシラン、アルキル−トリアルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン(MTMS)、脂肪族ジエステル、例えばアジピン酸ジメチルおよびアジピン酸ジエチルならびにジグリシジル芳香族エポキシ化合物、例えばビス−フェノールAおよびエピクロロヒドリンの反応から誘導されるジグリシジルエーテルである。
【0025】
カップリング効率はブロックコポリマーの合成できわめて重要であり、このコポリマーは結合技術によって調製される。非常に高いカップリング効率は、本明細書中に示すものなどの、高強度のカップリングされたブロックコポリマーを製造するための鍵である。
【0026】
好ましい実施形態において、ブロックコポリマーは、AおよびBのコポリマーの制御分布中間ブロックによって分離された3つの別個の領域、即ちC末端ブロックを有し、中間ブロックにおいて、Bが豊富な領域は中間ブロックの末端にあり、ポリアルケニルアレーンが豊富な領域は中間ブロックの中間または中心付近にある。ブロックコポリマー中のポリアルキルアレーンは、約5から約40重量%で存在する。通例、C末端ブロックに隣接する領域は、中間ブロックの最初の15から25重量%(間のすべての点)を含み、(複数の)ジエンが豊富な領域Bを含み、中間ブロックの残りの部分は、ポリアルケニルアレーンが豊富な領域Aと見なされる。「ジエンが豊富な」という用語は、アレーンが豊富な領域よりも、ジエンのアレーンに対する比が測定可能なほどより高い領域を意味し、この逆も同様である。望ましいのは、ポリアルケニルアレーン/共役水素添加ジエン制御分布ブロックコポリマーの中間ブロックである。ここで、ポリアルケニルアレーン単位の割合が徐々に上昇して中間ブロックの中間または中心付近で最大に達し(トリブロック構造を説明する場合)、次にポリマー中間ブロックが再びジエンが豊富な領域となり、完全に重合されるまで徐々に低下する。この構造は、従来技術で論じられたテーパードおよび/またはランダム構造とは別個で異なっている。
【0027】
提示された制御分布ブロックコポリマーは、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第7,169,848号にてBeningによって記載されている。Beningの制御分布ブロックコポリマーは、ポリアルケニルアレーン末端ブロック、およびポリアルケニルアレーンおよび共役ジエンの特有の中間ブロックを含む。驚くべきことに、(1)モノマー添加の特有の制御と、(2)溶媒の成分としてのジエチルエーテルまたは他の改質剤(「分配剤」と呼ばれる。)の使用とを組み合せることにより、2つのモノマーのある特徴的な分布(本明細書では「制御分布」、即ち「制御分布」構造を生じる重合と呼ぶ。)が生じ、ポリマー中間ブロック中にあるポリアルケニルアレーンが豊富な領域およびある共役ジエンが豊富な領域の存在も生じる。「制御分布」という用語は、本明細書で使用する場合、以下の属性:(1)低ビニル半結晶性ポリオレフィン「C」末端ブロック、水素添加共役ジエン単位−B単位が豊富な(即ち平均量より多く有する。)低ビニル半結晶性ポリオレフィン末端ブロックに隣接する末端領域、(2)ポリアルケニルアレーン単位−A単位が豊富な(即ち平均量よりも多く有する。)低ビニル半結晶性ポリオレフィンC末端ブロックに隣接しない1つ以上の領域および(3)比較的低いブロック性を有する全体の構造を有する分子構造を指すものとして定義される。この目的のために、「豊富」とは、平均量より多い、好ましくは平均量より5重量%多いとして定義される。この比較的低いブロック性は、示差走査熱量測定法(「DSC」)(熱)法を使用してもしくは機械的方法によって分析した場合、いずれかのモノマー単独のTg間の単一(「Tg」)中間体の存在によって、またはプロトン核磁気共鳴(「H−NMR」)法をよって示されるように、示すことができる。潜在的ブロック性は、中間ブロックの重合中にポリスチリルリチウム末端基の検出に好適な波長範囲におけるUV−可視吸光度の測定から推測することもできる。この値の急激で実質的な上昇は、ポリスチリルリチウム鎖末端の実質的な増加を示す。この方法において、このことは、制御分布重合を維持するために共役ジエン濃度が臨界レベル以下に降下する場合にのみ生じる。この時点で存在するスチレンモノマーはいずれもブロック状に増加する。プロトンNMRを使用して当業者が測定するように、「スチレンブロック性」という用語は、ポリマー鎖上に2個の最近隣Sを有するポリマー中のS単位の割合であると定義される。スチレンブロック性は、以下に示すように、
1H−NMRを用いて2種類の実験値を測定した後に決定される。
【0028】
最初に、スチレン単位の総数(即ち、比をとると相殺される、任意機器単位である。)を、
1H−NMRスペクトルの7.5から6.2ppmのスチレン芳香族シグナルをすべて積分し、各スチレン芳香環上に5個の芳香族水素があることを考慮して、この量を5で除することによって決定する。
【0029】
次に、ブロック状スチレン単位を、
1H−NMRスペクトルの6.88と6.80の間の最小シグナルから6.2ppmまでの芳香族シグナルの部分を積分し、ブロック状スチレンの各芳香環上に2個のオルト位の水素があることを考慮して、この量を2で除することによって決定する。このシグナルが、2個の最近隣スチレンを有するスチレン単位の環上の2個のオルト位の水素に帰属されることが、F.A.Bovey,High Resolution NMR of Macromolecules(Academic Press,New York and London, 1972),Ch.6に報告されている。
【0030】
スチレンブロック性は、単に、総スチレン単位に対するブロック状スチレンのパーセンテージ:ブロック状%=100倍(ブロック状スチレン単位/総スチレン単位)である。
【0031】
この制御分布構造が、生じるコポリマーの強度およびTgを維持するのに非常に重要であるのは、制御分布構造が、異なるTgを有するが実際には化学的に互いに結合している2種のモノマーの相の分離が実質的に存在しないことを、即ちモノマーが分離した「ミクロ相」として実際に残っているブロックコポリマーとは対照的に、確実にするためである。この制御分布構造によって、1つのTgがのみ存在するようになり、従って生じるコポリマーの熱性能が確実に予測可能となり、実際に予め決定できるようになる。さらに、そのような制御分布構造を有するコポリマーをジブロック、トリブロックまたはマルチブロックコポリマー中の1個のブロックとして使用する場合、適切に構成された制御分布コポリマー領域の存在によって実現される比較的より高いTgは、流動性および加工性を向上させる傾向にある。特定の他の特性の改質もまた達成可能である。
【0032】
本発明の新規制御分布コポリマー(C−A/B−Cまたは(C−A/B)
nX)を調製するための出発物質は、開始モノマーを含む。低ビニル半結晶性「C」末端ブロックは、0.85g/ccを超える比重を有する低ビニル結晶性ポリジエンの群から選択され得る。好ましくは、Cブロックは水素添加された低ビニル含量のポリブタジエンである。「C」ブロックの低いビニル含量は、ブタジエンまたはイソプレンそれぞれのための1,2付加または3,4付加でポリマー鎖に付加されたペンダント炭素間二重結合の量である。本発明の文脈において、「低ビニル」とは、ブタジエンまたはイソプレンそれぞれのための1,2付加または3,4付加において、15%以下、好ましくは10から12%、より好ましくは8から9%の炭素間二重結合を意味する。いずれの場合でも、ビニル含量は、Cブロックが相分離し、A/Bブロックコポリマーから結晶化するのに十分な量であるべきである。結晶性の好ましい特性を示すと同時に、ポリマーの製造可能性を促進するためには。「C」ブロックのモル重量は、1kg/molを超え、好ましくは3kg/molピーク分子量を超えるが、20kg/mol未満である。「高ビニル」は、Bブロックに存在するように、「低ビニル」量を超える量を意味し、一般に微細構造改質剤の使用によって実現される。
【0033】
中間ブロック中のモノアルケニルアレーンは、スチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、オルト−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンおよびパラ−ブチルスチレンまたはこれの混合物より選択できる。これらのうち、スチレンが最も好ましく、多様な製造者から比較的安価に市販されている。中間ブロックの総重量は、5から40重量%のモノアルケニルアレーン、例えばスチレンを含む。前述のように、これらのアルケニルアレーンモノマーは、次いで重合される。本明細書で使用するための共役ジエンは、1,3−ブタジエンおよび置換ブタジエン、例えばイソプレン、ピペリレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンおよび1−フェニル−1,3−ブタジエンまたはこれの混合物である。これらのうち、1,3−ブタジエンが最も好ましい。本明細書で使用する場合および特許請求の範囲において、「ブタジエン」は具体的には「1,3−ブタジエン」を示す。前述のように、これらの共役ジエンモノマーは、次いで重合される。重合後、中間ブロック中の共役ジエンを水素添加する。ブタジエンを水素添加すると、このブタジエンはエチレンブテンと呼ばれる。中間ブロック中の水素添加共役ジエンは、中間ブロックの総重量の60から95重量%を含む。
【0034】
水素添加は、従来技術で公知の幾つかの水素添加または選択的水素添加工程のいずれかによって行うことができる。例えばこのような水素添加は、例えば米国特許第3,595,942号;同第3,634,549号;同第3,670,054号;同第3,700,633号;およびRe.27,145で開示されたものなどの方法を使用して達成され、これの開示は参照により本明細書に組み入れられている。これらの方法は、芳香族またはエチレン性不飽和を含有するポリマーに水素添加するよう機能して、好適な触媒の作用に基づいている。このような触媒または触媒前駆体は、好ましくは、好適な還元剤、例えばアルミニウムアルキルまたは元素周期律表の第I−A族、第II−A族および第III−B族より選択される金属、特にリチウム、マグネシウムもしくはアルミニウムの水素添加物と組み合された第VIII族金属、例えばニッケルまたはコバルトを含む。この調製は、好適な溶媒または希釈剤中で約20℃から約80℃の温度にて達成することができる。有用である他の触媒としては、チタンベース触媒系が挙げられる。
【0035】
ブロックコポリマーは選択的に水素添加され、選択的水素添加工程により、C末端ブロックおよびA/B制御分布中間ブロック中の不飽和ジエン二重結合が変換される。ポリモノアルケニルアレーン単位は、選択的水素添加工程中に水素添加されない。選択的水素添加は、幾つかの水素添加または選択的水素添加工程のいずれかによって行うことができる。例えばこのような水素添加は、例えば米国特許第3,494,942号、第3,634,594号、第3,670,054号、第3,700,633号および第Re.27,145号に記載されたものなどの方法を使用して達成されている。水素添加は、共役ジエン二重結合の少なくとも約90パーセントが還元され、およびアレーン二重結合の0から10パーセントが還元されるような条件下で行われ得る。好ましい範囲は、共役ジエン二重結合の少なくとも約95パーセントが還元され、およびさらに好ましくは、共役ジエン二重結合の約98パーセントが還元されている。
【0036】
ブロックコポリマーは、230℃および2.16kg質量にて、1から100g/10分、好ましくは1から50g/10分、より好ましくは1から40g/10分のメルトフローレートを有する。メルトフローレートは、ASTM D1238に従って実施した。
【0037】
本明細書に記載の組成物において、ブロックコポリマーは、該組成物の約50から約70重量%を含む。組成物はまた、該組成物の総重量%に対して15から25重量%のブテンのホモポリマーまたはコポリマーも含む。該組成物の第3の主要成分は、該組成物の総重量%に対して12から24重量%の少なくとも1種のポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマー(ブロックコポリマーの一部ではない。)を含む。該組成物のメルトフローレートは、230℃および2.16kg質量にて好ましくは5から400g/10分であり、好ましくは5から300g/10分である。メルトフローレートは、ASTM D−1238に従って実施した。
【0038】
ブテンのホモポリマーの第2の成分(「PBホモポリマー」)またはブテンのコポリマー(「PBコポリマー」)は、2から20個の炭素原子を有する別のα−オレフィンまたはこれの組合せを少量含有し得る。好ましくは、第2の成分は、ホモポリマーおよびコポリマー(これの定義はターポリマーを含む。)の組合せである。第2の成分は、約15から25重量%、より好ましくは18から23重量%の量で存在することができる。ホモポリマーとコポリマーとの組合せの場合には、コポリマーに対するホモポリマーの重量/重量比は、好ましくは約1:1から約10:1、より好ましくは約2:1から約3:1である。
【0039】
PBホモポリマーまたはコポリマーのメルトフローレート(MFR(E):ASTM D1238)は、2.16kgの重りを用いて190℃にて測定して、好適には約0.1から500g/10分、好ましくは約0.5から250g/10分、より好ましくは約200g/10分の範囲である。好適なPBホモポリマーは、ライオンデルバセル(LyondellBasell)製の半結晶性ホモポリマーであるポリブテン−1グレードPB0800Mである。
【0040】
ブテンコポリマーを考慮すると、共重合される別のα−オレフィンの割合は20モル%以下、好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。共重合される別のα−オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、ヘキセン、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、オクタデセン−1などが挙げられる。好ましいPBコポリマーは、商標Koattro、グレードKT AR03またはKT AR05(ライオンデルバセル製)で販売されているプラストマーである。このコポリマーは、約890kg/m
3の密度(ISO 1183による)、約114℃の溶融温度(DSCによって測定)および約0.8g/10分のMFR(E)(190℃/2.16kg)を有する。
【0041】
ポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーの第3成分としては、これに限定されるわけではないが、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリエチレン−プロピレンコポリマー、ポリエチレン−オクテンコポリマー、ポリエチレン−ブテンコポリマーおよびこれの混合物が挙げられる。
【0042】
当分野で既知の安定剤を組成物に包含させてもよい。安定剤は、最終製品の寿命の間、例えば酸素、オゾンおよび紫外線などから保護するためである。これらの安定剤はまた、高温加工中の熱酸化劣化に対して安定化させるためでもあり得る。好ましいUV抑制剤は、ベンゾトリアゾール化合物などのUV吸収剤である。配合物中の安定剤の量は、製品の企図された用途に大きく依存する。加工および耐久性の要件が中程度である場合には、配合物中の安定剤の量は1phr未満である。
【0043】
また、任意の添加剤を本明細書に示す組成物に配合してよい。一次酸化防止剤、二次酸化防止剤および炭素ラジカル捕捉剤は、一般に本発明において望ましい成分であるが、必須ではない。大半の酸化防止剤が一次または二次酸化防止剤のカテゴリに含まれ、異なる化学構造のために異なる機能を有する。一次酸化防止剤は通例、ヒンダードフェノールまたはアリールアミンである。一次酸化防止剤は、アルコキシ基およびペルオキシ基を捕捉する。スチレン系ブロックコポリマーと相溶性である多くの一次酸化防止剤は、本発明の組成物中に包含され得る。BASFから商品名イルガノックスで販売されている一次酸化防止剤、例えば1010、1076および1330が好適であり得る。
【0044】
二次酸化防止剤も、一次酸化防止剤と共に使用され得る。二次酸化防止剤は、通例、ホスファイトおよびチオ相乗剤である。二次酸化防止剤は、熱および酸素に暴露されたポリマーの自動酸化サイクル中に発生するヒドロペルオキシドを捕捉する。高性能有機ホスファイト安定剤に相当するイルガフォス(R)の商品名で販売されている組成物が好適であり得て、同様にBASFによって製造されている。例えば、加水分解安定性ホスファイト処理安定剤であるイルガフォス168(R)などが好適であり得る。
【0045】
炭素ラジカル捕捉剤は、第3のカテゴリの抗酸化剤であると見なされる。さらに、炭素ラジカル捕捉剤、例えば住友化学製の商品名スミライザーを使用してよい。以下の例ではスミライザーGSを使用する。
【0046】
最終的な最終使用用途に光学的透明性が要求されない場合には、好適な充填剤を本発明の組成物に包含させてもよい。好適な充填剤の例としては、これに限定されるわけではないが、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック、フライアッシュ、スレートダスト、石灰石、ドロマイトならびに粘土、雲母および他のシート状シリケートなどのシリカ質充填剤が挙げられる。異なる充填剤の混合物が使用され得る。好ましくは、炭酸カルシウムまたはタルクを充填剤として使用してよい。充填剤の量は、ブロックコポリマー組成物および充填剤の総重量に対して、好ましくは0重量%から好適には8重量%未満である。
【0047】
本明細書に示すポリマーブレンドは、本発明の範囲から逸脱することなく、他のポリマー、油、充填剤、補強剤、酸化防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤ならびに他のゴムおよびプラスチック配合成分とさらに配合され得る。散布剤は、貯蔵または輸送中にポリマーブレンドのペレットおよび/または粉末が凝集するのを最小限にするためにも使用され得る。
【0048】
本明細書で使用する場合には、耐ディーゼル燃料性は、1分間の暴露後の光沢の変化が最小限であり、1分間の暴露後にテクスチャの変化またはワイプへの色移りがないことを示す。使用するワイプは標準実験用のキムワイプである。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
組成物1から4の調製
表1に記載の成分から組成物1から4を調製した。組成物1、2および4のスチレンブロックコポリマーを、0.85g/ccを超える比重を有する水素添加低ビニルポリブタジエン末端ブロックを含むブロックコポリマーに代えた。組成物1および2は、良好な耐油性、耐燃料性および耐化学薬品性を必要とする用途においてポリウレタンが頻繁に使用されるため、芳香族または脂肪族の熱可塑性ポリウレタンのどちらかを含んでいた。組成物1および2は、スチレンブロックコポリマーと熱可塑性ポリウレタンとの間の相溶性を改善するために、機能的に改質したS−S/EB−Sを組成物中に包含した。組成物1および2は、LDPEまたはHDPEのどちらかを追加成分として包含した。すべての組成物は、同量の一次安定剤および二次安定剤を有していた。キャボット(Cabot)プラバック(Plaback)は不活性顔料である。ポリマーAは、選択的に水素添加した制御分布スチレンブロックコポリマーであるMD6951であり、35重量%のポリスチレン含量ならびに230℃および2.16kgにて約48g/10分のメルトフローレートを有する。ポリマーAは、ガラス状スチレン末端ブロックおよび著しい結晶性を有さない高ビニル含量ゴムブロックを有する。ポリマーBは、半結晶性低ビニル末端ブロックおよび著しい結晶性を有さない高いビニル含量のゴム状ブロックを有するC−S/EB−Cトリブロックである。
【0050】
【表1】
【0051】
[実施例2]
組成物の調製および試験
表2に組成物5および6を開示する。組成物5の場合には、ポリマーEDF9975(C−S/EB−C)は、低ビニル半結晶性末端ブロックおよび高ビニルゴム中間ブロックを有するトリブロックコポリマーであり、2.16kg質量の下で230℃にて11.5g/10分のメルトフローレートを有していた。組成物6の場合、ポリマーEDF9938(C−S/EB−C)は、低ビニル半結晶性末端ブロックおよび高ビニルゴム中間ブロックを有するトリブロックコポリマーであり、2.16kg質量の下で230℃にて17g/10分のメルトフローレートを有していた。組成物3、組成物5および組成物6の複数の特性の試験結果を、組成物1、2および4と共に表3に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
表3は、ショアA硬度(ASTM D2240による)ならびにディーゼル燃料スポット試験および24時間のディーゼル浸漬試験の試験データを示す。表3において、幾つかの組成物を、ASTM D1238によるメルトフローレート、ASTM D412による引張強度ならびにASTM D412による伸びおよび弾性率について、すべてミニD試験片ダイを使用して、さらに試験した。
【0054】
組成物3、組成物5および組成物6は、9から22g/10分の広い範囲のMFRを示すC−A/B−Cまたは(C−A/B)
nXの分子構造を有するブロックコポリマーを主成分とし、これにより広範囲の溶融加工技術に好適となることに留意されたい。組成物3、組成物5および組成物6はすべて、1分間のスポット試験に供すると、ディーゼル燃料に対して良好な耐性を示した。組成物3は、わずかな光沢変化のみを示し、テクスチャまたはワイプへの色移りはなかった。組成物5および組成物6も、同様の良好な耐ディーゼル燃料性を示し、光沢の変化はなかった。組成物3、組成物5および組成物6の耐ディーゼル燃料性はすべて、組成物1、組成物2および組成物4よりも著しく優れ、組成物1、組成物2および組成物4は、少なくとも著しい光沢変化を示し、場合によってはテクスチャの変化およびワイプへの色移りがあった。TPUは、良好な耐化学薬品性を必要とする用途に産業で通例使用されるので、組成物3、組成物5および組成物6の優れた性能は著しい改善である。
【0055】
このため、上記の目的、目標および利点を十分に満足する軟質TPE物品を製造するための組成物および方法が提供されたことは明らかである。具体的な実施形態を本明細書で示したが、多くの改変、修正および変形が、上述の説明に照らして、当業者に明らかになることは明白である。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるこのような改変、修正および変動はすべて、含まれることを企図する。