【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸受洗浄方法は上記課題を解決するために、
互いに相対的に回転可能な内輪及び外輪を備え、10度以内の傾きを有する略水平方向に沿って延在する回転軸を回転可能に支持するグリース潤滑式の軸受の洗浄方法であって、
前記軸受に設けられた第1供給部から前記軸受の内部に第1洗浄剤を供給し、前記内輪及び前記外輪を相対的に回転させた後、前記軸受のうち前記第1供給部より下方側に設けられた排出部から前記第1洗浄剤及びグリースを含む第1混合物を排出する第1洗浄工程を備える。
【0009】
上記(1)の方法によれば、グリース潤滑式の軸受に対して、第1供給部から軸受の内部に第1洗浄剤が供給される。この状態で軸受の内輪を回転させることで、軸受内部でグリースと第1洗浄剤とが混合され、第1混合物が形成される。その後、軸受の排出部から第1混合物を排出することで、汚れたグリースは第1洗浄剤とともに外部に取り出される。排出部は第1供給部より下方側に設けられるため、軸受内に存在する第1混合物が重力作用によってスムーズに排出される。このような手法を採用することで、軸受に使用されているグリースを効果的に洗浄でき、また大がかりなカバーなどの装置を装着する必要もなく作業負担を小さくすることができる。
尚、第1供給部は、例えば、通常のメンテナンスでグリースが給脂される場所を利用可能である。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の方法において、
前記第1洗浄工程を複数回繰り返す。
【0011】
上記(2)の方法によれば、上述の第1洗浄工程を繰り返し実施することで、軸受の内部に存在するグリースを的確に外部に排出できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の方法において、
前記第1洗浄工程では、前記軸受を第1供給部を除いてシールした状態で、吸引機を用いて前記第1混合物を吸引することにより前記第1混合物を排出する。
【0013】
上記(3)の方法によれば、第1混合物を排出する際に吸引機を用いることで、負圧を利用して第1混合物の効率的な排出が可能となる。この際、第1供給部はシールされていないため吸引の空気の通り道として機能し、スムーズな吸引が可能となる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では上記(3)の方法において、
前記吸引機は、フレキシブルチューブを介して前記排出部に接続される。
【0015】
上記(4)の方法によれば、第1混合物を排出する際に用いられる吸引機が、排出部に対してフレキシブルチューブを介して接続される。そのため、限られた作業エリアにおいて、吸引機の位置を柔軟に変更することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか一方法において、
前記第1洗浄工程の後、第2洗浄剤を前記軸受の側面に設けられた第2供給部から前記軸受の内部に吹き付け、前記排出部から前記第2洗浄剤と前記グリースとの第2混合物を排出する第2洗浄工程を更に備える。
【0017】
上記(5)の方法によれば、第1洗浄工程で洗浄された軸受に対して、軸受の側面に設けられた第2供給部から第2洗浄剤が吹き付けられる。これにより、軸受の内部には第1洗浄工程とは異なる角度から第2洗浄剤が吹き付けられ、軸受の内部に残存するグリースをより効果的に排出することができ、また大がかりなカバーなどの装置を装着する必要もなく作業負担を小さくすることができる。また、このような第2供給部を軸受の両側面に設けると、両側から作業することができるので、より効果的である。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では上記(5)の方法において、
前記第2洗浄工程における前記第2洗浄剤の吹き付けは、前記第1洗浄工程における前記第1洗浄剤の供給より速い流速で行われる。
【0019】
上記(6)の方法によれば、第2洗浄工程では、第1洗浄工程より速い流速で洗浄剤を供給することで、軸受の内部に残存するグリースをより効果的に排出することができる。尚、このように速い流速を有する洗浄剤は、例えば、スプレー機による噴射や、ポンプを用いた加圧、ノズルのような細い先端からの噴射によって実現できる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では上記(5)又は(6)の方法において、
前記第2供給部は、前記内輪及び前記外輪の間に設けられたオイルシール部材を取り外すことで外部からアクセス可能な前記回転軸の周方向に沿って延在する隙間であり、
前記第2洗浄剤の吹き付けは、前記隙間の周方向に沿った少なくとも一つの位置に対して実施される。
【0021】
上記(7)の方法によれば、第2洗浄工程では、オイルシール部材を取り外すことで軸受の内輪及び外輪の間に形成される隙間に対して第2洗浄剤の吹き付けが行われる。このような第2洗浄剤の吹き付けは、隙間に対して周方向に沿った任意の位置に対して実施されることで、軸受の内部に残存しているグリースを、より効果的に洗浄できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では上記(5)から(7)のいずれか一方法において、
前記第2洗浄工程では、吸引機を用いて前記第2混合物を吸引することにより前記第2混合物を排出する。
【0023】
上記(8)の方法によれば、第2混合物を排出する際に吸引機を用いることで、負圧を利用して第2混合物の効率的な排出が可能となる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では上記(8)の方法において、
前記吸引機は、フレキシブルチューブを介して前記排出部に接続することもできる。
【0025】
上記(9)の方法によれば、第2混合物を排出する際に用いられる吸引機が、排出部に対してフレキシブルチューブを介して接続することもできる。そのため、限られた作業エリアにおいて、吸引機の位置を柔軟に変更することができる。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では上記(1)から(9)のいずれか一方法において、
前記第1洗浄工程及び/又は前記第2洗浄工程では、前記排出部の下方側をフレキシブルカバーで導きながら、前記第1混合物及び/又は前記第2混合物を排出する。
【0027】
上記(10)の方法によれば、排出部の下方側をフレキシブルカバーで導くことで、排出部の下方側から排出される第1混合物及び/又は第2混合物が周囲に飛散することを防止できる。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では上記(10)の方法において、
前記フレキシブルカバーは、前記内輪及び前記外輪の間に設けられたオイルシール部材の固定用ボルトによって前記軸受の側面に取り付けられる。
【0029】
上記(11)の方法によれば、既存構成であるオイルシール部材の固定用ボルトを利用してフレキシブルカバーを取り付けられるため、構成の複雑化を抑制できる。
【0030】
(12)幾つかの実施形態では上記(11)の方法において、
前記フレキシブルカバーは、前記軸受のうち前記軸受の中心部を通る水平ラインより下側に取り付けられる。
【0031】
上記(12)の方法によれば、軸受の下側半分においてオイルシール部材に沿ってフレキシブルカバーを取り付けることで、排出部の下方側から排出される第1混合物及び/又は第2混合物が周囲に飛散することを効率的に防止できる。
【0032】
(13)幾つかの実施形態では上記(1)から(12)のいずれか一方法において、
前記第1洗浄剤及び/又は前記第2洗浄剤は前記グリースより基油の粘度が低い。
【0033】
上記(13)の方法によれば、粘度が低い第1洗浄剤及び/又は第2洗浄剤を既存のグリースに供給することで、既存のグリースを効果的に軟化できる。
【0034】
(14)幾つかの実施形態では上記(1)から(13)のいずれか一方法において、
前記軸受は、単列円筒コロ軸受、複列円筒コロ軸受、単列円すいコロ軸受、複列円すいコロ軸受又は自動調心コロ軸受である。
【0035】
上記(14)の方法によれば、潤滑剤としてグリースが用いられる単列円筒コロ軸受、複列円筒コロ軸受、単列円すいコロ軸受、複列円すいコロ軸受又は自動調心コロ軸受を好適に洗浄できる。
【0036】
(15)幾つかの実施形態では上記(1)から(14)のいずれか一方法において、
前記軸受は、前記回転軸として風車の主軸を回転可能に支持する主軸軸受である。
【0037】
上記(15)の方法によれば、風車の主軸を回転可能に支持するグリース潤滑式の主軸軸受を好適に洗浄できる。