(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る車両用表示装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。この車両用表示装置は、自動車、オートバイ等の車両に搭載され、車速等の車両情報を表示するメータ装置である。
図1に示すように、車両用表示装置1は、複数のアナログ式の指針71,72,73が図示しない目盛及び数字に対して回転することにより、車速、エンジン回転数及び残燃料等の車両情報を表示する。また、車両用表示装置1は、表示素子10の表示面10aに画像を表示することにより、指針71,72,73とは異なる情報、例えば、車両走行距離等を表示する。
【0010】
詳しくは、車両用表示装置1は、
図1に示すように、表示素子10と、表示板20と、上ケース40と、指針71,72,73と、
図2に示すように、回路基板30と、中ケース45と、下ケース46と、
図3に示すように、導電部材60と、を備える。
なお、以下では、車両用表示装置1を視認する視認者から見て、左右方向がX方向と規定され、上下方向がY方向と規定され、表裏方向がZ方向と規定される。表方向は視認者に近づく方向であり、裏方向は視認者から離れる方向である。
【0011】
図2に示すように、下ケース46は、樹脂により形成され、表側に開口する箱状に形成される。下ケース46内には、回路基板30及び中ケース45が収容される。下ケース46には、下ケース46の開口部を閉じるように上ケース40が装着される。
【0012】
上ケース40は、樹脂により形成され、下ケース46の上端に装着可能な枠状をなす。上ケース40は、
図1及び
図2に示すように、表示板20の上方を囲む鍔部41とレンズカバー29を備える。
【0013】
図2に示すように、レンズカバー29は、透明な樹脂又はガラスにより板状に形成され、下ケース46及び鍔部41の開口部を覆う。レンズカバー29は、表示板20の表側に位置し、表示板20に対面する。レンズカバー29は、視認者から見て、下方向に向かうにつれて、表示板20に近づくように傾斜している。このため、車両用表示装置1の正面視で下側に位置する表示素子10の位置では、レンズカバー29と表示素子10の距離が近く、レンズカバー29が帯びた静電気が表示素子10に加わりやすい。また、上ケース40の鍔部41により囲まれた空間には、静電気が溜まりやすい。これによっても、車両用表示装置1の正面視で外周側に位置する表示素子10の位置では、静電気が表示素子10に加わりやすい。
【0014】
図3に示すように、回路基板30は、光源35及び図示しない制御部が実装されるプリント基板を含む。回路基板30は下ケース46内に設置されている。光源35は、LED(Light Emitting Diode)であり、表示板20及び指針71,72,73を照明する。
【0015】
中ケース45は、樹脂により形成され、下ケース46内における回路基板30の上面に設置される。
図5に示すように、中ケース45は、表示素子10を収容する表示素子収容部45aと、導電部材60を収容する導電部材収容部45bと、光源35を収容する光源収容部45cと、指針71(
図1参照)の回転軸75及び光源35を収容する軸収容部45dと、を備える。
【0016】
図2に示すように、表示素子収容部45aは、回路基板30に向けて開口する凹状に形成される。表示素子収容部45aは、表示素子10の左右の両端で表示素子10を支持する。表示素子収容部45aは、収容される表示素子10のリード端子13が回路基板30に接続可能となるように回路基板30に向けて貫通する貫通部45a1を有する。
【0017】
図5に示すように、光源収容部45cは、中ケース45をZ方向に貫通した貫通孔を有し、回路基板30に実装される光源35を囲む。光源収容部45cは、光源35が放射した光を表示板20に向けて導く。
【0018】
図3に示すように、軸収容部45dは、中ケース45をZ方向に貫通した貫通孔を有し、指針71(
図1参照)の回転軸75及び光源35を囲む。回転軸75は、回路基板30を貫通し、回路基板30の裏面に実装される図示しないモータに接続される。このモータが駆動することにより、
図1に示す指針71は回転軸75を中心に回転する。軸収容部45dに収容される光源35は光を放射することにより指針71を点灯させる。
【0019】
図5に示すように、導電部材収容部45bは、中ケース45をZ方向に貫通した貫通孔を有し、導電部材60が収容される。
図3に示すように、導電部材収容部45bは、導電部材60の後述する第1端部61を下側から支持する支持面45b1を有する。導電部材収容部45b内にはグランド端子65が収容される。
【0020】
図2に示すように、表示素子10は、情報を表示する表示面10aを有する。表示素子10は、中ケース45の表示素子収容部45aに収容される。表示面10aは、X方向に長い長方形をなし、表示素子10の表側の面に位置する。
表示素子10は、セグメント型のLCD(Liquid Crystal Display)11と、LCD11を照明するバックライト12と、を備える。バックライト12は、複数のLEDを備え、回路基板30の表側の面に実装される。LCD11においてはセグメント毎にバックライト12からの光の透過と非透過が切り替えられる。これにより、表示素子10の表示面10aに情報が表示される。
【0021】
また、
図5に示すように、表示素子10は複数のリード端子13を備える。複数のリード端子13は、表示素子10の下側の側面に位置し、X方向に沿って並べられる。リード端子13は金属により略L字状に形成される。リード端子13の先端が回路基板30に接触する。リード端子13は表示素子10と回路基板30の間を電気的に接続する。リード端子13には、表示素子10と回路基板30の間で授受される制御信号等の各種信号が通過する。
【0022】
図2に示すように、表示板20は、板状に形成され、中ケース45の表面に設置される。
図4に示すように、表示板20には、表示素子10の表示面10aを露出させる露出孔20hと、回転軸75(
図5参照)が挿通される軸通孔20iと、が形成される。
軸通孔20iは円形をなし、露出孔20hの右側部分の上方に位置する。なお、本明細書において、露出とは、光学的な露出を言う。例えば、透明板が露出孔20h内に位置していても、露出孔20hから表示面10aが露出した状態となる。
露出孔20hは、X方向に長い略長方形をなし、表示面10aを含むように、表示面10aよりも小さいサイズをなす。
図1に示すように、露出孔20hは、表示板20の下端側、例えば、表示板20の左下の角部に位置する。
【0023】
図2に示すように、表示板20は、基板22と、導電層21と、絶縁層25と、遮光層28と、を備える。
基板22は、ポリカーボネート等の樹脂からなる透光性の基板である。
遮光層28は、基板22の表面に形成され、例えば、遮光性を有する黒色のインクからなる。遮光層28は、基板22の表面において、図示しない数字及び目盛に対応する透過部を除く全域にわたって形成される。この透過部においては基板22が露出される。表示板20は、光源35からの光を受けて透過部を点灯させる。遮光層28は基板22の表側の面に印刷により形成される。
【0024】
導電層21は、導電性材料、例えば、銀又は銅により形成され、基板22の裏面における露出孔20hの周囲に形成される。導電層21は、基板22の裏面に、金属製のペーストを含有したインクが印刷されることにより形成される。導電層21は、表示板20に帯電した静電気を、導電部材60を介して、回路基板30の後述するグランド端子65に放電する。
【0025】
図4に示すように、導電層21は、露出孔20hの周囲に形成される孔縁部21eと、孔縁部21eから導電部材60(
図5参照)に向けて延びる放電部21dと、を備える。孔縁部21eは、露出孔20hの周囲のうち3辺を囲む辺部21a,21b,21cを備える。辺部21aは露出孔20hの右辺に対応して位置する。辺部21bは露出孔20hの左辺に対応して位置する。辺部21cは露出孔20hの上辺に対応して位置し、辺部21a,21bの上部を連結する。辺部21a,21b,21cは下方向に開口する略コの字状をなす。導電層21は、露出孔20hの下辺に対応する位置、すなわち、表示素子10のリード端子13(
図5参照)のZ方向に対向する位置には形成されない。
【0026】
放電部21dは、辺部21aに連続するように辺部21aの上方に位置する。
図3に示すように、放電部21dは、導電部材収容部45bに収容される導電部材60にZ方向に対向して位置する。放電部21dは導電部材60に対して静電気を放電可能な位置に設けられる。
【0027】
図2に示すように、絶縁層25は、基板22の裏面に、絶縁性材料、例えば、黒色のインクにより形成される。絶縁層25は、遮光層28と同様に、基板22の表面において、図示しない数字及び目盛に対応する透過部を除く全域にわたって形成される。絶縁層25は基板22の裏面に印刷により形成される。絶縁層25は、導電層21を外部から隠すように、導電層21の裏側に積層される。導電層21は、絶縁層25により外部から隠されるため、酸化又は硫化することを抑制できる。
【0028】
図3に示すように、絶縁層25は、導電層21の放電部21dと導電部材60の間に位置する介在部25aを備える。介在部25aは導電層21の放電部21dを外部から隠す。介在部25aの厚さは、静電気が導電層21から導電部材60へ放電可能な程度に設定される。
例えば、介在部25aの厚さが厚すぎる場合には、静電気が導電層21から導電部材60へ放電することが困難となる。一方、介在部25aの厚さが薄すぎる場合には、導電層21が外部に露出しやすく、導電層21が酸化又は硫化するおそれがある。このような観点から、介在部25aの厚さは、例えば、10μm〜30μm、より好ましくは、20μmに設定される。
【0029】
図3に示すように、導電部材60は、金属等の導電性材料からなり、中ケース45の導電部材収容部45bに収容される。導電部材60は、第1端部61と、第2端部62と、連結部63と、を備える。第1端部61及び第2端部62はX方向に延びる。連結部63はY方向に延びる。連結部63の上端に第1端部61が連結され、連結部63の下端に第2端部62が連結される。第1端部61及び第2端部62は、X方向において、互いに離れる方向に延びる。第1端部61は導電部材収容部45bの支持面45b1に設置され、表面側が表示板20の絶縁層25に密着する。連結部63は導電部材収容部45bの側壁に沿って延びる。第2端部62は回路基板30の後述するグランド端子65の上面に沿って延びる。第2端部62は回路基板30の後述するグランド端子65に接触する。
【0030】
図3に示すように、回路基板30はグランド端子65を備える。グランド端子65は、例えば全体がZ型形状の金属製オンボードコンタクトからなる。グランド端子65は、Z方向に伸縮する弾性を有し、半田付けによって回路基板30の上面に固定されている。
【0031】
表示板20に帯電した静電気は、導電層21の孔縁部21e→放電部21d→導電部材60→グランド端子65の順に放電される。静電気に伴う微弱電流が導電層21の孔縁部21eを流れる際、孔縁部21eと表示素子10の表示面10aの間に絶縁層25が存在するため、静電気が表示素子10に加わることが抑制される。このため、表示素子10の誤動作が抑制される。
【0032】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)車両用表示装置1は、露出孔20hが形成される表示板20と、露出孔20hを通じて露出する表示面10aを有する表示素子10と、表示素子10の表示面10aと反対側の裏側に位置し、表示素子10に電気的に接続される回路基板30と、回路基板30のグランド端子65に接続される導電部材60と、を備える。表示板20は、露出孔20hの周縁に沿って形成される孔縁部21e、及び孔縁部21eに繋がり、静電気を放電可能な距離にて導電部材60に対向する放電部21dを有し、表示板20の裏側に形成される導電層21と、導電層21を外部から隠すように、導電層21の裏側に形成される絶縁層25と、を備える。
この構成によれば、絶縁層25は、導電層21から表示素子10に静電気が加わることを抑制する。よって、静電気により表示素子10が誤作動することが抑制される。
【0033】
(2)表示素子10は、回路基板30に接続され、露出孔20hの周囲のうち一辺である下辺に対向して位置する複数のリード端子13を備える。導電層21の孔縁部21eは、露出孔20hの周囲のうち一辺以外の他辺である右辺、左辺及び上辺に沿って形成される。
この構成によれば、導電層21は、複数のリード端子13に対向する位置に形成されない。よって、表示板20に帯電した静電気が導電層21からリード端子13に放電されることが抑制される。これにより、表示素子10と回路基板30の間で送受信される信号にノイズが重畳することが抑制される。
【0034】
(3)絶縁層25は、導電部材60に接触するように導電層21の放電部21dと導電部材60の間に位置し、表示板20が帯びる静電気を導電層21から導電部材60に放電可能な程度の厚さに設定される介在部25aを備える。
この構成によれば、介在部25aが導電層21の放電部21dを隠すため、放電部21dが酸化又は硫化することが抑制される。
また、表示板20が帯びる静電気は、導電層21の放電部21dから介在部25aを介して導電部材60に放電される。よって、介在部25aが導電層21の放電部21dと導電部材60の間に存在しても、静電気の放電が阻害されづらい。
【0035】
(4)車両用表示装置1は、表示板20の表側に位置し、下方向に向かうにつれて表示板20に近づくように傾斜し、表示板20に対面するレンズカバー29を備える。露出孔20hは、表示板20の下側に位置し、矩形状をなす。
この構成によれば、表示素子10とレンズカバー29の間の距離が近いため、レンズカバー29に帯電した静電気が表示素子10に加わりやすい。このため、導電層21を介して静電気を外部に放電することが特に有益である。
【0036】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0037】
(変形例)
上記実施形態における導電層21の一部は表示板20の表面に露出させ、これにより、導電層21の一部は加飾部として利用されてもよい。
詳しくは、
図6に示すように、導電層21は、辺部21a,21b,21cに加えて、延長部21fを備える。延長部21fは、辺部21cに繋がるように辺部21cの上側に形成される。延長部21fは、
図1に示す指針71の回転方向に沿う円弧状に形成される。遮光層28には、
図6及び
図7に示すように、導電層21の一部を表側から視認可能に露出させる加飾用孔28i,28gが形成されている。加飾用孔28iは辺部21cに沿って延びる。加飾用孔28iは右側に向けて尖った形状をなす。加飾用孔28gは
図1に示す指針71の回転方向に沿う円弧状に形成される。加飾用孔28gは延長部21fに含まれるように形成される。本例では、加飾用孔28i,28gはそれぞれ独立して形成されている。なお、本例に限らず、加飾用孔28gの下端は加飾用孔28iに繋がっていてもよい。
加飾用孔28i,28gから導電層21の一部が露出することにより、金属調のデザインを実現できる。また、延長部21fにより導電層21の面積が大きくなる。これにより、表示板20の広範囲にわたる静電気が外部に放電される。
加飾用孔28i,28gの数、形状は適宜変更可能である。例えば、加飾用孔は数字及び目盛に対応する形状をなしていてもよい。
【0038】
上記実施形態においては、表示素子10は、LCD11及びバックライト12を備えていたが、これに限らず、有機EL(Electro-Luminescence)等の自発光型の表示素子であってもよい。
【0039】
上記実施形態においては、孔縁部21eは、露出孔20hの周囲の3辺を囲む略コの字状をなしていたが、これに限らず、露出孔20hの全周を囲む矩形状をなしていてもよい。
【0040】
上記実施形態においては、絶縁層25の介在部25aは絶縁性材料で形成されていたが、これに限らず、導電性材料で形成されてもよい。
また、介在部25aが省略され、導電層21の放電部21dが外部に露出していてもよい。この場合、放電部21dと導電部材60が直接に接触してもよいし、放電部21dと導電部材60の間に導電性材料又は絶縁性材料で形成される両面接着テープが設けられていてもよい。両面接着テープが絶縁性材料で形成される場合、両面接着テープの厚さは、静電気が導電層21から導電部材60へ放電可能な程度に設定される。
【0041】
上記実施形態においては、表示面10aを露出させる露出孔20hは、表示板20の角部に設けられていたが、露出孔20hの位置はこれに限定されない。例えば、表示面10a及び露出孔20hは、指針72又は指針73の下方に位置していてもよい。
【0042】
上記実施形態においては、絶縁層25は、基板22の裏面の全域にわたって形成されていたが、これに限らず、導電層21に対応する領域のみに形成されていてもよい。