特許第6837122号(P6837122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6837122-電気化学セル 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837122
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20210222BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20210222BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01M4/86 U
   H01M8/12 101
   H01M8/12 102A
   H01M8/12 102C
   H01M8/12 102B
   C01G51/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-239292(P2019-239292)
(22)【出願日】2019年12月27日
(65)【公開番号】特開2020-123567(P2020-123567A)
(43)【公開日】2020年8月13日
【審査請求日】2019年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2019-14745(P2019-14745)
(32)【優先日】2019年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】前川 友理
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/021423(WO,A1)
【文献】 特開2017−017011(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/167889(WO,A1)
【文献】 特開2011−051809(JP,A)
【文献】 特開平07−073886(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/168071(WO,A1)
【文献】 特開2018−026337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86−4/98
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極と、
空気極と、
前記燃料極と前記空気極との間に配置される固体電解質層と、
を備え、
前記空気極は、前記固体電解質層側の表面から3μm以内の第1層と、前記固体電解質層側の表面から3μm超の第2層とを含み、
前記第1層および前記第2層は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物を主成分として含み、
前記第2層は、さらに(La,Sr)CoOを含み、
前記第2層の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率は、0.5%以上5.5%以下である、
電気化学セル。
【請求項2】
前記第1層は、さらに(Co,Fe)を含み、
前記第1層の断面における(Co,Fe)の面積占有率は、0.2%以上である、
請求項1に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題及びエネルギー資源の有効利用の観点から、電気化学セルの一種である燃料電池に注目が集まっている。燃料電池は、一般的に、燃料極と、空気極と、燃料極及び空気極の間に配置される固体電解質層とを有する。
【0003】
空気極は、例えば(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)などのペロブスカイト型酸化物によって構成することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−32132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発電を繰り返すうちに燃料電池の出力が低下する場合がある。本発明者らは、出力の低下の原因の1つが空気極の劣化によるものであり、この空気極の劣化は空気極のうち固体電解質層側表面から3μm超の領域に(La,Sr)CoOを導入することによって緩和されることを新たに見出した。
【0006】
本発明は、このような新たな知見に基づくものであって、出力の低下を抑制可能な電気化学セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気化学セルは、燃料極と、空気極と、燃料極と空気極の間に配置される固体電解質層とを備える。空気極は、固体電解質層側の表面から3μm以内の第1層と、固体電解質層側の表面から3μm超の第2層とを含む。第2層は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物(ただし、(La,Sr)CoOを除く)と、(La,Sr)CoOとを含む。第2層の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率は、0.5%以上である。
電気化学セル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出力の低下を抑制可能な電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る燃料電池の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(燃料電池10の構成)
本実施形態に係る電気化学セルの一例として、燃料電池10の構成について図面を参照しながら説明する。燃料電池10は、いわゆる固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。燃料電池10は、縦縞型、横縞型、平板型、或いは円筒型などの様々な形態を取りうる。
【0011】
図1は、燃料電池10の構成を模式的に示す断面図である。燃料電池10は、燃料極20、固体電解質層30、バリア層40及び空気極60を備える。
【0012】
燃料極20は、燃料電池10のアノードとして機能する。燃料極20は、図1に示すように、燃料極集電層21と燃料極活性層22を有する。
【0013】
燃料極集電層21は、ガス透過性に優れる多孔質体である。燃料極集電層21を構成する材料としては、従来SOFCの燃料極集電層に用いられてきた材料を用いることができ、例えばNiO(酸化ニッケル)-8YSZ(8mol%のイットリアで安定化されたジルコニア)やNiO‐Y(イットリア)が挙げられる。燃料極集電層21がNiOを含んでいる場合、燃料電池10の作動中においてNiOの少なくとも一部はNiに還元されていてもよい。燃料極集電層21の厚みは、例えば0.1mm〜5.0mmとすることができる。
【0014】
燃料極活性層22は、燃料極集電層21上に配置される。燃料極活性層22は、燃料極集電層21より緻密な多孔質体である。燃料極活性層22を構成する材料としては、従来SOFCの燃料極活性層に用いられてきた材料を用いることができ、例えばNiO‐8YSZが挙げられる。燃料極活性層22がNiOを含んでいる場合、燃料電池10の作動中においてNiOの少なくとも一部はNiに還元されていてもよい。燃料極活性層22の厚みは、例えば5.0μm〜30μmとすることができる。
【0015】
固体電解質層30は、燃料極20と空気極60の間に配置される。本実施形態において、固体電解質層30は、燃料極20とバリア層40に挟まれている。固体電解質層30は、空気極60で生成される酸化物イオンを燃料極20側に透過させる。固体電解質層30は、燃料極20や空気極60よりも緻密質である。
【0016】
固体電解質層30は、ZrO(ジルコニア)を主成分として含んでいてもよい。固体電解質層30は、ジルコニアの他に、Y(イットリア)及び/又はSc(酸化スカンジウム)等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、安定化剤として機能する。固体電解質層30において、安定化剤のジルコニアに対するmol組成比(安定化剤:ジルコニア)は、3:97〜20:80程度とすることができる。従って、固体電解質層30の材料としては、例えば、3YSZ、8YSZ、10YSZ、或いはScSZ(スカンジアで安定化されたジルコニア)などが挙げられる。固体電解質層30の厚みは、例えば3μm〜30μmとすることができる。
【0017】
本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。
【0018】
バリア層40は、固体電解質層30と空気極60との間に配置される。バリア層40は、固体電解質層30と空気極60の間に高抵抗層が形成されることを抑制する。バリア層40は、燃料極20や空気極60よりも緻密質である。バリア層40は、GDC(ガドリニウムドープセリア)やSDC(サマリウムドープセリア)などのセリア系材料を主成分とすることができる。バリア層40の厚みは、例えば3μm〜20μmとすることができる。
【0019】
空気極60は、バリア層40上に配置される。空気極60は、固体電解質層30を基準として燃料極20の反対側に位置する。空気極60は、燃料電池10のカソードとして機能する。空気極60は、多孔質体である。空気極60の気孔率は特に制限されないが、20%〜60%とすることができる。空気極60の気孔率は、アルキメデス法により測定することができる。空気極60の厚みは特に制限されないが、5μm〜100μmとすることができる。
【0020】
空気極60は、図1に示すように、第1層61と第2層62とを含む。
【0021】
(1)第1層61
第1層61は、空気極60の固体電解質層側表面60Sから3μm以内の領域である。本実施形態では、燃料電池10がバリア層40を備えているため、第1層61は、固体電解質層30側の表面60Sにおいてバリア層40と接している。固体電解質層側表面60Sは、バリア層40と空気極60との界面である。ただし、燃料電池10がバリア層40を備えていない場合、第1層61は、表面60Sにおいて固体電解質層30と接することになる。
【0022】
第1層61は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物(ただし、(La,Sr)CoOを除く)を含む。
【0023】
第1層61の断面において、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の面積占有率は、84%以上99.8%以下とすることができる。AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の面積占有率の算出方法については後述する。
【0024】
第1層61は、(Co,Fe)を含んでいることが好ましい。第1層61の断面において、(Co,Fe)の面積占有率は、0.2%以上であることが好ましい。これにより、第1層61の焼結性が改善されるため、第1層61の多孔質骨格構造を強化することができる。その結果、空気極60のうち固体電解質層30との熱膨張係数差の影響を受けやすい第1層61にクラックが生じることを抑制できる。(Co,Fe)の面積占有率の算出方法については後述する。
【0025】
第1層61の断面において、(Co,Fe)の平均円相当径は特に制限されないが、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。これによって、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことをより抑制できる。平均円相当径とは、FE−SEM画像(倍率10000倍)から無作為に選出した50個の(Co,Fe)それぞれと同じ面積を有する円の直径の算術平均値である。
【0026】
第1層61は、(La,Sr)CoOを含んでいなくてもよいし、(La,Sr)CoOを含んでいてもよい。第1層61が(La,Sr)CoOを含んでいる場合、第1層61の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率は特に制限されないが、0.5%以上であることが好ましい。これにより、第1層61の反応活性を向上させることができるため、第1層61の劣化をより抑制できる。(La,Sr)CoOの面積占有率の算出方法については後述する。
【0027】
第1層61の断面において、(La,Sr)CoOの面積占有率は、5.5%以下であることが好ましい。これにより、第1層61内に導電性の異なる領域が形成されることを抑制できるため、通電中に第1層61内に生じる電流密度分布によって第1層61が局所的に劣化することを低減できる。その結果、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことを抑制できる。
【0028】
第1層61の断面において、(La,Sr)CoOの平均円相当径は特に制限されないが、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましい。これによって、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことをより抑制できる。平均円相当径とは、FE−SEM画像(倍率10000倍)から無作為に選出した50個の(La,Sr)CoOそれぞれと同じ面積を有する円の直径の算術平均値である。
【0029】
(2)第2層62
第2層62は、空気極60の固体電解質層側表面60Sから3μmを超える領域である。第2層62は、空気極60のうち第1層を除いた領域である。
【0030】
第2層62は、一般式ABOで表され、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物(ただし、(La,Sr)CoOを除く)を含む。
【0031】
第2層62の断面において、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の面積占有率は、84%以上99.5%以下とすることができる。AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の面積占有率の算出方法については後述する。
【0032】
第2層62は、(La,Sr)CoOを含んでいる。第2層62の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率は、0.5%以上である。これにより、第2層62の反応活性を向上させることができるため、第2層62の劣化をより抑制できる。(La,Sr)CoOの面積占有率の算出方法については後述する。
【0033】
第2層62の断面において、(La,Sr)CoOの面積占有率は、5.5%以下であることが好ましい。これにより、通電中に導電性が異なることで生じる電流密度分布による第2層62の局所的な劣化を低減できるため、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことを抑制できる。
【0034】
第2層62の断面において、(La,Sr)CoOの平均円相当径は特に制限されないが、0.05μm以上2.0μm以下であることが好ましい。これによって、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことをより抑制できる。平均円相当径とは、FE−SEM画像(倍率10000倍)から無作為に選出した50個の(La,Sr)CoOそれぞれと同じ面積を有する円の直径の算術平均値である。
【0035】
第2層62は、(Co,Fe)を含んでいなくてもよいし、(La,Sr)CoOを含んでいてもよい。第2層62が(La,Sr)CoOを含んでいる場合、第2層62の断面における(Co,Fe)の面積占有率は特に制限されないが、0.2%以上であることが好ましい。これにより、第2層62の焼結性が改善されるため、第2層62にクラックが生じることを抑制できる。(Co,Fe)の面積占有率の算出方法については後述する。
【0036】
第2層62の断面において、(Co,Fe)の平均円相当径は特に制限されないが、0.05μm以上0.5μm以下であることが好ましい。これによって、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことをより抑制できる。平均円相当径とは、FE−SEM画像(倍率10000倍)から無作為に選出した50個の(Co,Fe)それぞれと同じ面積を有する円の直径の算術平均値である。
【0037】
(面積占有率の算出方法)
第2層62の断面において、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物、(La,Sr)CoO、及び(Co,Fe)それぞれの面積占有率を算出する方法について説明する。
【0038】
まず、第2層62の断面を精密機械研磨した後に、株式会社日立ハイテクノロジーズのIM4000によってイオンミリング加工処理を施す。
【0039】
次に、インレンズ二次電子検出器を用いたFE−SEM(Field Emission Scanning Electron Microscope:電界放射型走査型電子顕微鏡)により、第2層62の断面を倍率10000倍で拡大したSEM画像を取得する。
【0040】
次に、SEM画像の輝度を256階調に分類することによって、主相、副相、及び気相それぞれの明暗差を3値化する。例えば、主相を薄灰色、副相を濃灰色、気孔を黒色に表示させることができる。主相と副相は、固相である。主相には、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物相と(La,Sr)CoO相とが含まれている。副相は、(Co,Fe)相である。
【0041】
次に、EDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分光法)を用いて、主相の位置におけるEDXスペクトルを取得する。そして、EDXスペクトルを半定量分析することによって、主相の位置に存在する元素を同定する。これにより、SEM画像上において、主相を、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の領域と、(La,Sr)CoOの領域とに分ける。
【0042】
次に、MVTec社(ドイツ)製の画像解析ソフトHALCONを用いて、SEM画像を画像解析することによって、(La,Sr)CoOと(Co,Fe)とが強調表示された解析画像を取得する。
【0043】
次に、解析画像における(La,Sr)CoOの合計面積を固相の全面積で除することによって、(La,Sr)CoOの面積占有率が求められる。
【0044】
同様に、解析画像における(Co,Fe)の合計面積を固相の全面積で除することによって、(Co,Fe)の面積占有率が求められる。
【0045】
さらに、固相の全面積から(La,Sr)CoOの合計面積と(Co,Fe)の合計面積とを引いた値を固相の全面積で除することによって、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の面積占有率が求められる。
【0046】
以上、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物、(La,Sr)CoO、及び(Co,Fe)それぞれの第2層62における面積占有率の算出方法について説明したが、第1層61においても同様にそれぞれを算出することができる。
【0047】
(空気極材料)
空気極60のうち第1層61の作製に用いられる粉体材料(以下、「第1層用材料」という。)には、一般式ABOで表されるペロブスカイト型酸化物粉末を用いることができる。空気極材料には、所望により(Co,Fe)粉末及び(La,Sr)CoO粉末の少なくとも一方を混合してもよい。
【0048】
第1層用材料における(Co,Fe)の添加量は、0.18重量%以上であることが好ましい。これによって、第1層61の断面における(Co,Fe)の面積占有率を0.2%以上にすることができるため、上述のとおり、第1層61にクラックが生じることを抑制できる。
【0049】
第1層用材料における(La,Sr)CoOの添加量は、0.45重量%以上であることが好ましい。これによって、第1層61の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率を0.5%以上にすることができるため、上述のとおり、第1層61の劣化を抑制できる。
【0050】
第1層用材料における(La,Sr)CoOの添加量は、4.95重量%以下であることが好ましい。これによって、第1層61の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率を5.5%以下にすることができるため、上述のとおり、通電中に導電性が異なることで生じる電流密度分布による第1層61の局所的な劣化を低減できる結果、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことを抑制できる。
【0051】
なお、(Co,Fe)粉末の粒度及び比表面積を調整することによって、第1層61の断面における(Co,Fe)の面積占有率を調整することができる。
【0052】
同様に、(La,Sr)CoO粉末の粒度及び比表面積を調整することによって、第1層61の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率を調整することができる。
【0053】
空気極60のうち第2層62の作製に用いられる粉体材料(以下、「第2層用材料」という。)には、一般式ABOで表されるペロブスカイト型酸化物粉末と(La,Sr)CoO粉末との混合材料を用いることができる。第2層用材料には、所望により(Co,Fe)粉末を混合してもよい。
【0054】
第2層用材料における(La,Sr)CoOの添加量は、0.45重量%以上である。これによって、第2層62の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率を0.5%以上にすることができるため、上述のとおり、第2層62の劣化を抑制できる。
【0055】
第2層用材料における(La,Sr)CoOの添加量は、4.95重量%以下であることが好ましい。これによって、第2層62の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率を5.5%以下にすることができるため、上述のとおり、通電中に導電性が異なることで生じる電流密度分布による第2層62の局所的な劣化を低減できる結果、通電中に燃料電池10の出力が低下してしまうことを抑制できる。
【0056】
第2層用材料における(Co,Fe)の添加量は、0.18重量%以上であることが好ましい。これによって、第2層62の断面における(Co,Fe)の面積占有率を0.2%以上にすることができるため、上述のとおり、第2層62にクラックが生じることを抑制できる。
【0057】
なお、(La,Sr)CoO粉末の粒度及び比表面積を調整することによって、第2層62の断面における(La,Sr)CoOの面積占有率を調整することができる。
【0058】
同様に、(Co,Fe)粉末の粒度及び比表面積を調整することによって、第2層62の断面における(Co,Fe)の面積占有率を調整することができる。
【0059】
(燃料電池10の製造方法)
次に、燃料電池10の製造方法の一例について説明する。
【0060】
まず、燃料極集電層用粉末(例えば、NiO粉末とYSZ粉末)と造孔剤(例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂))との混合物にバインダー(例えば、ポリビニルアルコール)を添加して燃料極集電層用スラリーを作製する。次に、燃料極集電層用スラリーをスプレードライヤーで乾燥・造粒することによって燃料極集電層用粉末を得る。次に、金型プレス成形法で燃料極用粉末を成形することによって、燃料極集電層21の成形体を形成する。この際、金型プレス成形法に代えてテープ積層法を用いてもよい。
【0061】
次に、燃料極活性層用粉末(例えば、NiO粉末とYSZ粉末)と造孔剤(例えばPMMA)との混合物にバインダー(例えば、ポリビニルアルコール)を添加して燃料極活性層用スラリーを作製する。次に、燃料極活性層用スラリーを印刷法で燃料極集電層21の成形体上に印刷することによって、燃料極活性層22の成形体を形成する。これによって、燃料極20の成形体が形成される。この際、印刷法に代えてテープ積層法や塗布法等を用いてもよい。
【0062】
次に、固体電解質層用粉末(例えば、YSZ粉末)に水とバインダーの混合物をボールミルで混合することによって固体電解質層用スラリーを作製する。次に、固体電解質層用スラリーを燃料極20の成形体上に塗布・乾燥させることによって、固体電解質層30の成形体を形成する。この際、塗布法に代えてテープ積層法や印刷法等を用いてもよい。
【0063】
次に、バリア層用粉末(例えば、GDC粉末)に水とバインダーの混合物をボールミルで混合することによってバリア層用スラリーを作製する。次に、バリア層用スラリーを固体電解質層30の成形体上に塗布・乾燥させることによって、バリア層40の成形体を形成する。この際、塗布法に代えてテープ積層法や印刷法等を用いてもよい。
【0064】
次に、燃料極20、固体電解質層30及びバリア層40それぞれの成形体の積層体を共焼成(1300〜1600℃、2〜20時間)することによって、燃料極20、固体電解質層30及びバリア層40の共焼成体を形成する。
【0065】
次に、上述した第1層用材料と水とバインダーをボールミルで混合することによって第1層用スラリーを作製する。次に、第1層用スラリーをバリア層40上に塗布・乾燥させることによって、第1層61の成形体を形成する。
【0066】
次に、上述した第2層用材料と水とバインダーをボールミルで混合することによって第2層用スラリーを作製する。次に、第2層用スラリーを第1層61の成形体上に塗布・乾燥させることによって、第2層62の成形体を形成する。
【0067】
次に、第1層61及び第2層62の成形体を電気炉(酸素含有雰囲気)で焼成(1000℃〜1100℃、1時間〜10時間)することによって、バリア層40上に空気極60を形成する。
【0068】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0069】
上記実施形態では、電気化学セルの一例として燃料電池10について説明したが、本発明は、燃料電池のほか、固体酸化物型の電解セルなどの電気化学セルに適用可能である。
【0070】
上記実施形態において、燃料電池10は、燃料極20、固体電解質層30、バリア層40及び空気極60を備えることとしたが、これに限られるものではない。燃料電池10は、燃料極20、固体電解質層30及び空気極60を少なくとも備えていればよい。従って、燃料電池10は、バリア層40を備えていなくてもよいし、燃料極20と固体電解質層30との間、或いは、固体電解質層30と空気極60との間に、他の層が介挿されていてもよい。
【実施例】
【0071】
以下において本発明に係るセルの実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0072】
(サンプルNo.1〜No.24の作製)
以下のようにして、サンプルNo.1〜No.24に係る燃料電池10を作製した。
【0073】
まず、金型プレス成形法で厚み500μmの燃料極集電層(NiO:8YSZ=50:50(Ni体積%換算))を成形し、その上に厚み20μmの燃料極活性層(NiO:8YSZ=45:55(Ni体積%換算))を印刷法で形成した。
【0074】
次に、燃料極活性層上に8YSZ層とGDC層の成形体を塗布法で順次形成して共焼成(1400℃、2時間)した。
【0075】
次に、表1に示す空気極の主成分を含む第1層用材料を準備した。サンプルNo.1〜6,13〜16,20〜22では、第1層用材料として空気極の主成分のみを用いた。サンプルNo.7,12,19,24では、第1層用材料として空気極の主成分と(La,Sr)CoO粉末との混合物を用いた。サンプルNo.8〜11,17,18,23では、第1層用材料として空気極の主成分と(Co,Fe)粉末との混合物を用いた。サンプルNo.12,19,24では、第1層用材料として空気極の主成分と(La,Sr)CoO粉末と(Co,Fe)粉末との混合物を用いた。
【0076】
次に、第1層用材料と水とバインダーとをボールミルで混合した第1層用スラリーをバリア層40上に塗布・乾燥させることによって、第1層の成形体を形成した。
【0077】
次に、表1に示す空気極の主成分を含む第2層用材料を準備した。サンプルNo.1〜24では、第2層用材料として空気極の主成分と(La,Sr)CoO粉末との混合物を用いた。サンプルNo.6,16では、第2層用材料として空気極の主成分と(La,Sr)CoO粉末と(Co,Fe)粉末との混合物を用いた。
【0078】
次に、第2層用材料と水とバインダーとをボールミルで混合した第2層用スラリーを第1層の成形体上に塗布・乾燥させることによって、第2層の成形体を形成した。
【0079】
次に、第1層及び第2層の成形体を電気炉(酸素含有雰囲気、1000℃)で1時間焼成することによって空気極を形成した。
【0080】
(面積占有率の測定)
まず、第1層及び第2層それぞれの断面を精密機械研磨した後に、株式会社日立ハイテクノロジーズのIM4000によってイオンミリング加工処理を施した。
【0081】
次に、インレンズ二次電子検出器を用いたFE−SEMにより、第1層及び第2層それぞれの断面を倍率10000倍で拡大したSEM画像を取得した。
【0082】
次に、第1層及び第2層それぞれのSEM画像の輝度を256階調に分類することによって、主相、副相、及び気相それぞれの明暗差を3値化した。具体的には、主相を薄灰色、副相を濃灰色、気孔を黒色に表示した。
【0083】
次に、EDXを用いて、主相の位置におけるEDXスペクトルを取得し、EDXスペクトルを半定量分析することによって、第1層及び第2層それぞれのSEM画像上において、主相を、AサイトにLa及びSrの少なくとも一方を含むペロブスカイト型酸化物の領域と、(La,Sr)CoOとに分けた。
【0084】
次に、画像解析ソフトHALCONを用いて、第1層及び第2層それぞれのSEM画像を画像解析することによって、(La,Sr)CoOと(Co,Fe)とが強調表示された解析画像を取得した。
【0085】
次に、第1層及び第2層それぞれの解析画像における(La,Sr)CoOの合計面積を固相の全面積で除することによって、第1層及び第2層それぞれにおける(La,Sr)CoOの面積占有率を求めた。
【0086】
同様に、第1層及び第2層それぞれの解析画像における(Co,Fe)の合計面積を固相の全面積で除することによって、第1層及び第2層それぞれにおける(Co,Fe)の面積占有率を求めた。
【0087】
さらに、固相の全面積から(La,Sr)CoOの合計面積と(Co,Fe)の合計面積とを引いた値を固相の全面積で除することによって、第1層及び第2層それぞれにおけるペロブスカイト型酸化物(すなわち、主成分)の面積占有率を求めた。
【0088】
(出力測定とクラック観察)
各サンプルの燃料極側に窒素ガス、空気極側に空気を供給しながら750℃まで昇温し、750℃に達した時点で燃料極に水素ガスを3時間供給することによって還元処理した。
【0089】
次に、定格電流密度を0.2A/cmに設定して、セル電圧を測定しながら1000時間発電した。そして、1000時間当たりの電圧降下率を劣化率として算出した。表1では、劣化率が0.7%以下のサンプルを「A」と評価し、劣化率が0.7%超0.8%以下のサンプルを「B」と評価し、劣化率が0.8%超1.0%以下のサンプルを「C」と評価し、劣化率が1.0%超のサンプルを「D」と評価した。
【0090】
また、1000時間発電した後に、第1層の断面を電子顕微鏡で観察することによって、第1層のうちバリア層との界面付近におけるクラックの有無を観察した。表1では、長さ5μm以下のクラックが観察されたサンプルに「有」と表示し、クラックが観察されなかったサンプルに「無」と表示してある。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、第2層における(La,Sr)CoOの面積占有率を0.5%以上としたサンプルNo.2〜12,14〜19,21〜24では、第2層における(La,Sr)CoOの面積占有率を0.5%未満としたサンプルNo.1,13,20に比べて、空気極の劣化率を抑制することができた。このような結果が得られたのは、(La,Sr)CoOの添加によって、第2層の反応活性を向上させられたからである。
【0093】
さらに、第2層における(La,Sr)CoOの面積占有率を0.5%以上としたサンプルのうち、(La,Sr)CoOの面積占有率を5.5%以下としたサンプルNo.2〜4,6〜12,14,16〜19,21,23,24では、空気極の劣化率をより抑制することができた。このような結果が得られたのは、(La,Sr)CoOの添加量を抑えることで通電中に生じる電流密度分布が低減されることによって、第2層の局所的な劣化を抑制できたからである。
【0094】
なお、以上の効果が、第1層への(Co,Fe)の添加の有無や第2層への(La,Sr)CoO及び(Co,Fe)の添加の有無の影響を受けないことは、表1から明らかである。
【0095】
また、第2層における(La,Sr)CoO面積占有率を0.5%以上としたサンプルのうち、第1層に(Co,Fe)を添加したサンプルNo.8〜12,17〜19,23,24では、第1層にクラックが生じることを抑制できた。このような結果が得られたのは、(Co,Fe)の添加によって第1層の多孔質骨格構造を強化できたからである。
【0096】
なお、従来、空気極を劣化させるおそれのある物質としてSrSO、Co、CoO、SrOなどが知られているが、これらの物質を空気極(第1層及び第2層のうち少なくとも一方)が含有していても上記効果を得られることは実験的に確認済みである。
【符号の説明】
【0097】
10 燃料電池
20 燃料極
21 燃料極集電層
22 燃料極活性層
30 固体電解質層
40 バリア層
60 空気極
61 第1層
62 第2層
図1