特許第6837170号(P6837170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6837170
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ハンドカバー
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/08 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   A41D13/08 102
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-74135(P2020-74135)
(22)【出願日】2020年4月17日
【審査請求日】2020年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2020-71817(P2020-71817)
(32)【優先日】2020年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519247903
【氏名又は名称】山内 敏郎
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】山内 敏郎
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−046791(JP,A)
【文献】 米国特許第01714648(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第00292339(GB,A)
【文献】 実開昭63−115017(JP,U)
【文献】 特開2005−281949(JP,A)
【文献】 特開平06−205723(JP,A)
【文献】 米国特許第05636406(US,A)
【文献】 実開平07−031817(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/08
A41D 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップを握るとき、グリップと手の間に介在してグリップから手への汚染を防ぐハンドカバーにおいて、
手の内側全体を覆う本体部(11)と、
この本体部(11)の手に対面する側の先端部に設けられて指先部が差し込み可能になっている袋部(15)とを備え、
この袋部(15)は、指先部の差し込み方向に向かって、指先部より大きく開口するとともに、
袋部(15)は、親指以外の4指(4F)の指先部を差し込む4指袋部(14)を備え、
袋部(15)は、4指袋部(14)に加えて、親指(3)を差し込む親指袋部(13)を備え、
親指袋部(13)は4指袋部(14)を挟んで左右一対で設けられ、
左右の親指袋部(13)と4指袋部(14)との間にそれぞれ破断容易部(17)が設けられていることを特徴とするハンドカバー。
【請求項2】
左右の親指袋部(13)は一方を使用し、他方を不使用にするとともに、使用する親指袋部(13)の破断容易部(17)は破断されて分離部(18)とされ、他方の親指袋部(13)の破断容易部(17)は破断されずそのままとされることを特徴とする請求項1のハンドカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電車の吊り輪などからなるグリップを把持するときに、予め手の内側に装着されてグリップと手の間に介在し、手の内側でグリップを覆うことにより、グリップに付着した汚れが付着して手が汚染されることを防止するハンドカバーに関する。
なお、グリップは、吊り輪や階段の手すりなど手で握る部材である。以下の説明は吊り輪を例示する。
また、ハンドカバーを構成する本体部(後述)は表裏をなす2面を備え、そのうちのグリップへ重ねる面を表面、手のひらが合わせられる面を裏面ということにする。
【背景技術】
【0002】
このようなハンドカバーは公知である(特許文献1参照)。これを図11及び図12に示す。図11に示すように、このハンドカバー100は手のひらに納まるサイズで略方形のシート状をなし、手1へ取付けられて使用される。手すり等のグリップ9(図12参照)を把持するとき、手1とグリップ9の間に介在し、手のひらをグリップ9へ接触させず、グリップ9の汚れが手1へ付着しないように手のひらを保護する。
【0003】
手1は手のひら2(図4のB参照)と、その側部から斜めに側方へ延出する親指3(開いた状態)と、手のひらの上部(指の付け根)から前方へ延出する4指4Fを有する。4指4Fは、人差し指4、中指5、薬指6及び小指7からなる。すなわち親指3以外の4つの指の総称である。手のひらの下部は手首8(図1参照)をなす。
【0004】
親指3と人差し指4の付け根側は股部3aになっている。股部3aは図示の親指3が開いた状態でV字状をなす。
なお、親指3は図示の開いた状態から握り位置へ回動させることができる。
親指3の握り位置は、グリップ時に中指5の付け根側となる手のひら2の上へ間隔を持って重なるように親指3を回動させたときの位置である(図4のB参照)。
グリップ時には、握り位置の親指3と、手のひら2及び4指4Fとの間にグリップ9が挟まれる。
【0005】
ハンドカバー100を手1へ装着する手段はリング110である。図11に示すように、ハンドカバー100の中指5及び薬指6(以下、中指等とする)が重なる略中央部分には指輪様をなすリング110が予め縫合されている。このリング110に中指等を差し込むことにより、ハンドカバー100が手1へ取付けられる。このハンドカバー100を装着した状態でグリップ9を握ると、図12に示すように、ハンドカバー100がグリップ9の外周面に巻回してグリップを覆い、グリップ9と手の間に介在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−150662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハンドカバーは、グリップを握るとき、手をグリップと接触させないようにするためのものである。ところが、グリップと接触する可能性がある部分は、手のひらだけでなく各指も可能性がある。したがって、グリップ時には手のひらのみならず指もグリップへ接触しないようにする必要がある。
しかし、上記ハンドカバー100は、手のひらのみを覆うものであり、指がグリップと接触する可能性があるから、より完全な汚染防止において不十分である。
【0008】
さらに、ハンドカバーは、グリップを握るときだけ手へ装着することが求められる部材である。例えば、電車やバス等の吊り輪を握るとき、乗車時だけ素早く手に装着してグリップを握り、グリップに付着した細菌等の汚れが手のひらへ付着することを回避する。逆に降車時には汚れた面へ触れずに素早く取り外して廃棄することにより、グリップを覆っていたハンドカバーから手への汚染を防止することが必要になる。
【0009】
しかし、上記ハンドカバー100の手に対する装着は、リング110における指の太さ程度の比較的小さな開口へ中指等を差し込むことによるため、装着に比較的手間を要し、さらには取り外しにも手間を要し、迅速な脱着を実現できない。しかも、取り外すときには、グリップの汚れが付着した面に触れることによる汚染を避けるため、グリップを覆っていた面(表面)に接触しないようにして中指等をリング110から抜かなければならないので、ハンドカバーの表面に手を触れないよう慎重に取り外すことが要求された。
【0010】
そのうえ、ハンドカバー100はその略中央部にて指輪のような比較的細い幅の小さなリング110による1点だけで手へ装着されているので、手に対する装着状態が不安定になり、グリップを握る直前において、先端部等が折れ曲がってしまったり、横ずれして一部が手へ重ならなくなる等の不都合が生じ、迅速かつ正確に把持できないおそれがあった。
【0011】
一方、手全体を覆うものとしては手袋の使用も考えられる。しかし、手袋は上記ハンドカバー100以上に脱着に手間を要するとともに、例えば、右手に嵌めた手袋を、左手で脱がそうとするときには、手袋を持つ左手が手袋の表面と接触し易くなり、汚染される可能性がある。したがって、手袋は脱着性が悪く、かつ取り外し時における手袋による汚染を防止しにくい。
そこで、上記を考慮してハンドカバーを、親指袋部と4指袋部を有する構成にするとともに、4指袋部を挟んで左右に親指袋部を設け、同じハンドカバーを右手と左手で共用できるようにするとともに、このような左右共用の構成にしたとき、 親指袋部近傍に設けられた破断容易部を破断して分離部を容易に形成でき、親指袋部の4指袋部に対する異なった動きを容易にすることも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本願発明に係るハンドカバー(10)は、手の内側全体を覆う本体部(11)と、
この本体部(11)の手に対面する側の先端部に設けられて指先部が差し込み可能になっている袋部(15)とを備え、
この袋部(15)は、指先部の差し込み方向に向かって、指先部より大きく開口するとともに、
袋部(15)は、親指以外の4指(4F)の指先部を差し込む4指袋部(14)を備え、
袋部(15)は、4指袋部(14)に加えて、親指(3)を差し込む親指袋部(13)を備え、
親指袋部(13)は4指袋部(14)を挟んで左右一対で設けられ、左右の親指袋部(13)と4指袋部(14)との間にそれぞれ破断容易部(17)が設けられていることを特徴とする。
また、上記構成において、左右の親指袋部(13)の一方を使用し、他方を不使用にするとともに、使用する親指袋部(13)の破断容易部(17)は破断されて分離部(18)とされ、他方の親指袋部(13)の破断容易部(17)は破断されずそのままとすることもできる。
【0013】
このように、ハンドカバーを手に装着する手段として袋部を設けたので、袋部に指先部を差し込むだけで、ハンドカバーを手へ装着できる。しかも、袋部は指先部の差し込み方向に向かって指先部より大きく開口するので、指先部をスムーズに差し込むことができる。したがって、ハンドカバーの装着が迅速かつ簡単になる。
【0014】
袋部は、内部へ入った指先部に係止され、指先部に支持される。このため、ハンドカバーは袋部を介して指先部に支持された状態で手へ安定して装着され、グリップを握るときは、把持に先立って先端部が折れ曲がってしまう等の不都合を生じない。
【0015】
また、グリップ時にはハンドカバーがグリップの周囲を覆い、かつ本体部が手の内側全体を覆うとともに、グリップを握る各指は袋部へ入っているため、グリップと隔離されて汚染から保護される。
その結果、手のひらのみならず指を含めた手の内側全体をグリップへ触れさせずにグリップを握ることができる。
【0016】
グリップの握りを解いてハンドカバーを手から取り外すときは、指先部を袋部から速やかに抜き出すだけで迅速かつ容易に取り外し、迅速に廃棄できる。しかも汚染された本体部の表面へ触れずに取り外すことができる。
また、4指袋部を挟んで親指袋部を左右一対で備えると、左右いずれの手を用いても、4指を共通の4指袋部へ差し込むとともに、親指を左右いずれかの親指袋部へ差し込むことができるので、同じハンドカバーを右手と左手で共用できるようになる。
さらに、左右の親指袋部と4指袋部との間にそれぞれ破断容易部を設けることにより、左右どちらの手を使った場合側でも、使用する側の親指袋部近傍に設けられた破断容易部を破断して分離部を容易に形成でき、親指袋部の4指袋部に対する異なった動きを容易にする。
一方、使用しない親指袋部側の破断容易部をそのままとすることにより、使用しない親指袋部4指袋部に連結して、親指袋部が不用意に折れ曲がるなどの不都合な動きを防止できる。このため、左右いずれの手でもハンドカバーの確実な使用を可能にする。
そのうえ、グリップ時における親指と4指の動きが異なるが、親指が差し込まれた親指袋部と4指袋部との間に分離部を形成すると、親指袋部が4指袋部と独立して動くことを可能にする。このため、親指と4指との機能差に合わせて親指袋部を動かしてグリップを一層容易にする。
【発明の効果】
【0017】
ハンドカバーは、指先部の差し込み方向へ向かって指先部より大きく開口している袋部を備えるので、この袋部へ指先部をスムーズに差し込むことができ、袋部を指先部に係止させることができる。これにより、ハンドカバーを容易かつ迅速に手へ装着できる。
また、袋部が指先部に係止されることにより、ハンドカバーの装着は安定したものになる。このため、グリップを握り、ハンドカバーで迅速かつ正確にグリップを覆うことができる。
【0018】
さらに、袋部が指先を覆い、かつ本体部は手の内側全体を覆うので、グリップ時には、本体部により手のひらのみならず指も含む手の内側全体をグリップへ接触させないようにでき、グリップから手への汚染をより完全に防止できる。
【0019】
グリップの握りを解いてハンドカバーを手から取り外すときは、指先部を袋部から速やかに抜き出すことができるため、ハンドカバーを容易かつ迅速に取り外しできる。
また、汚染された本体部の表面へ手を触れずに取り外すことができるので、より確実な汚染防止を実現できる。
また、4指袋部を挟んで親指袋部を左右一対で備えると、左右いずれの手を用いても、4指を共通の4指袋部へ差し込むとともに、親指を左右いずれかの親指袋部へ差し込むことができるので、同じハンドカバーを右手と左手で共用できるようになる。
さらに、左右の親指袋部と4指袋部との間にそれぞれ破断容易部を設けることにより、左右どちらの手を使った場合側でも、使用する側の親指袋部近傍に設けられた破断容易部を破断して分離部を容易に形成でき、親指袋部の4指袋部に対する異なった動きを容易にすることができる。
一方、使用しない親指袋部側の破断容易部をそのままとすることにより、使用しない親指袋部4指袋部に連結して、親指袋部が不用意に折れ曲がるなどの不都合な動きを防止できる。このため、左右いずれの手でもハンドカバーの確実な使用を可能にすることができる。
そのうえ、グリップ時における親指と4指の動きが異なるが、親指が差し込まれた親指袋部と4指袋部との間に分離部を形成すると、親指袋部が4指袋部と独立して動くことを可能にする。このため、親指と4指との機能差に合わせて親指袋部を動かしてグリップを一層容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1実施例(図1〜7)におけるハンドカバー(左手装着状態)の平面図
図2】上記ハンドカバーの平面図
図3図2の3−3線に沿う断面図
図4】左手でグリップを握った状態を示す図
図5図4の5−5線に沿う断面図
図6】製造工程を示す図
図7】取り外し手順を示す図
図8参考例1ハンドカバーの平面図
図9参考例2ハンドカバーの平面図
図10参考例3に係るハンドカバーの平面図
図11】特許文献1におけるハンドカバーの手に装着する状態を示す図
図12】上記ハンドカバーのグリップ状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に基づいて実施の形態を説明する。まず、図1〜7により第1実施例を説明する。
図1は、手1に装着した状態におけるハンドカバー10の平面図である。なお、図示は左手で使用する状態を示すが、このハンドカバー10は左手及び右手共通である。右手については説明を省略するが、左手と対称にして使用できる。
【0022】
図1に示すように、ハンドカバー10は、手1への装着時に、手のひら側となる手の内側全体を覆う程度のサイズを有する本体部11と、その上面(裏面上)先端側に設けられた袋部15とを有する。
袋部15は、本体部11の先端部上へ重なる重合部15aにより、本体部11との間に形成される袋状の部分であり、親指3が差し込み可能な親指袋部13と、4指4Fの先端部が差し込み可能な4指袋部14を備える。
【0023】
親指袋部13と4指袋部14は袋部15を構成し、それぞれは袋空間を備えるとともに、この袋空間は後方(手首8側、図示では下方)へ向かって開放されている。13a及び14aはそれぞれの開放端部である。すなわち親指袋部13と4指袋部14は、開放端部13a及び14aの位置で開口し、開放端部13a及び14aは開口縁部でもある。
【0024】
開放端部14aは開放端部13aよりも先端側へ入り込んで形成され、手1にハンドカバー10を装着したとき、4指4Fの各第2関節から手1の甲を開放端部14aより後方(手首側)へ露出させ、ハンドカバー10の折り曲げや脱着を容易にするようになっている。
【0025】
4指袋部14内へ差し込まれる4指4Fのうち、人差し指4、中指5及び薬指6がそれぞれ第2関節近傍まで差し込まれている。小指7は差し込まれる部分が全体ではなく一部であるが、第2関節を含むほぼ全長が入っている。
【0026】
4指袋部14内へ差し込まれた4指4Fの各指先部は、指袋部14内にて、差し込み方向(前後方向、図の上下方向)及びこれと直交する2方向、すなわち上下方向(図の紙面に直交方向)、横幅方向(図の左右方向)のいずれにも比較的自由に動き得る遊嵌状態になっている。
【0027】
4指袋部14内へ差し込まれた4指4Fの長さは、4指袋部14内で比較的自由に動き得る状態でありながらも、4指袋部14を脱落させずに安定して係止するに十分な長さであり、指先部の比較的長い差し込み長さとなっている。
但し、この長さは、爪先から第1関節まで、もしくは第2関節まで、さらには第2関節を越えて指の付け根側へまで延びるなど、任意に設定できる。また、比較的長い差し込み長さは、4指4Fのうちの少なくとも1指に設定すればよい。
【0028】
親指袋部13における親指3の差し込み長さは、爪先から第1関節まで程度の比較的短いものであるが、比較的小さな親指袋部13の係止に十分となる。
また、親指袋部13は本体部11の側部に設けられ、4指袋部14よりは後方に位置するが、手のひら部12より先方側へ突出する端部に設けられるので、この位置も本体部の先端部ということにする。
【0029】
なお本例では、親指袋部13が4指袋部14を挟んで手のひら部12の左右に対称で一対設けられ、またハンドカバー10も中心線CLを挟んで左右対称に設けられている。
これにより、ハンドカバー10は左手又は右手の共用を可能にしている。図示のものは左手用としての使用例である。左手用の場合は左の親指袋部13を不使用し、右の親指袋部13を使用する。右手用の場合は逆になる。
【0030】
左右の親指袋部13と4指袋部14との間には破断容易部17が形成されている。但し、この例は左手用のため、使用しない左側の親指袋部13近傍にある破断容易部17は破断されずにそのままであり、親指袋部13と4指袋部14が連続している(丸囲み拡大部L参照)。
一方、使用する右側の親指袋部13近傍は、破断容易部17を破断してスリット状の分離部18になっている(丸囲み拡大部R参照)。親指袋部13が分離部18で4指袋部14と連続しないことにより、グリップ時において、親指袋部13の4指袋部14に対する動きを異ならせ、親指袋部13を指袋部14に対して独立させて動かしてグリップを容易にすることができる。
【0031】
破断容易部17は、この部分で親指袋部13と4指袋部14との境界部を容易に分断できるようにしたものである。破断容易部とは、シート状などをなして連続する部分の一部を手でちぎる等により簡単に破断できるようにした弱体化構造が設けられている部分である。このような構造として、ミシン目などで破断を容易にするものがある。この例もミシン目で構成されている。ミシン目で形成された分離線の両側を持って反対側へ引っ張れば、隣り合うミシン目間の連結部が弱体部となって容易に破断されて、分離線に沿う1本のスリット状をなす分離部18になる。
【0032】
また、使用しない左側の親指袋部13は、この部分の破断容易部17を破断せずそのままにすることで4指袋部14と連続した状態を維持させる。これにより、使用しない左側の親指袋部13がぶらぶらしたり、本体部11から勝手に折れ曲がったりすることで、グリップの握りに際して邪魔になるような事態の発生を避けることができる。
【0033】
一方、ハンドカバー10を右手用にする場合は、左側の破断容易部17を破断して分離部18とし、左側の親指袋部13に左側の親指3を差し込んで使用可能にする。右側の破断容易部17はそのままとし、右側の親指袋部13を4指袋部14と連続させ、不使用時の不用意な変形を防ぐ。
このようにすることで、共通のハンドカバー10を、左右の手で快適に共用できる。
【0034】
但し、ミシン目に代えて複数の長いスリットを一直線上へ断続的に設けたものや、破断容易部17の先端部となる位置に、V字形などの切り込みを入れて切り離し易くしたものでもよい。さらには、重合部15a側だけを分離部18のように予めカットしたようなハーフカット構造でもよい。また、重合部15a側だけでなく、本体部11側まで浅い切り込みを入れたものでもよい。逆に、重合部15a側だけに浅い切り込みを入れたものでもよい。
【0035】
ここで、本体部11と重合部15aの構成を図6のAにより説明する。
図6は1枚の平板なシート状素材から立体的なハンドカバー10を形成するための製造工程を示し、図6のAは当初の原材料であるシート状素材10aを示す。このシート状素材10aは、展開形状にした本体部11と重合部15aとを型取ることができる大きさの平面状部材である。
【0036】
重合部15aは反転した状態で本体部11の先端に折り線10bにて直列に接続されている。また、本体部11と重合部15aは中心線CLに対してそれぞれ左右対称に設けられる。折り線10bは中心線CLに直交する直線状をなす。
但し、本体部11と重合部15aは説明のために記載した仮想線であり、実際のシート状素材10aには記載されない(図6のB〜Dも同様)。
【0037】
シート状素材10aは、厚さが0.1mm〜数mm程度のシート状をなす比較的柔軟な部材である。不織布や織布等の通気性のある布や、ポリエチレンやポリ塩化ビニールなどの適宜な合成樹脂製のフィルム等よりなり、グリップ9(図4)に巻き付けることができる程度の柔軟性を有すれば、種々な材料が利用可能である。なお、フィルムは非通気性が好ましい。
【0038】
本体部11は、手1を重ねることができる大きさ、すなわち手1の内側全体を覆う大きさになっている。より詳細に説明すると、本体部11は、手1(親指が開いた状態)よりも若干大きく形成され、手のひら2を覆う手のひら部12と、これから斜めに突出して開いた状態の親指3を覆う親指部13bと、手のひら部12から上方へ突出する親指以外の4指4Fを覆う4指部14bとを備える。親指部13bは中心線CLを挟んで左右に対称で一対設けられる。
【0039】
図示された重合部15aは、反転した状態であり、折り線10bで本体部11の上へ折り返すと、本体部11の親指部13b及び4指部14bの上に重なる、重合部15a側の親指部13c及び4指部14cを有する。なお重合部15aは、展開した状態では本体部11側の重合部15aが重なる部分より大きめに形成され、本体部11との間に空間を形成するように重合部15aを立体的に曲げた状態で本体部11上へ重ねたとき、平面視で左右方向が本体部11側とほぼ一致して重なるような大きさになっている。
【0040】
図2は、Aにハンドカバー10単独の平面図を示し、図中の丸囲み部に2−2線に沿う拡大断面(略図)を併せて示す。図3図2の3−3線に沿う断面図である。
これらの図に示すように、重合部15aは本体部11の上に重なった状態で周囲を結合される。この結合方法は、圧着、溶着、接着、縫合等種々可能である。本例は圧着であり、符号16は圧着による結合部を示す。
【0041】
重合部15aの4指部14cは、左右と先端を結合部16で本体部11の4指部14bの左右と先端へ圧着される。なお先端側は、重合部15aと本体部11が折り線10bで連続しているので、この部分の圧着を省略してもよい。
【0042】
図中の丸囲み部に示すように、重合部15aの4指部14cと本体部11の4指部14bとの圧着により、両部材間に袋空間14dが形成される。この袋空間14dは開放端部14aにて後方側へ開放され、4指4Fの各先端を揃えて容易に差し込み可能な程度の大きさに設定されている。これにより、重合部15aの4指部14cと本体部11の4指部14bとで、4指袋部14が形成されている。
【0043】
重合部15aにおける左右の各親指部13cは、それぞれ左右及び先端で本体部11の対応する親指部13bの左右及び先端と結合部16にて圧着される。なお先端側の圧着有無は任意である。
【0044】
図中の丸囲み部に示すように、重合部15aの親指部13cと本体部11の親指部13bとの圧着により、両部材間に袋空間13dが形成される。この袋空間13dは開放端部13aにて後方側へ開放され、親指の少なくとも先端を容易に差し込み可能な程度の大きさに設定されている。
これにより、重合部15aの親指部13cと本体部11の親指部13bとで親指袋部13が形成されている。隣接する親指袋部13と4指袋部14との間は結合部16で閉じられることにより、親指袋部13が4指袋部14から独立したものとなっている。
【0045】
破断容易部17は、予め左右の親指袋部13における4指袋部14との境界部にそれぞれ設けられている(図2のA参照)。
この破断容易部17は先端側から後方へ向かって直線状に形成されたミシン目により形成される。この破断容易部17を設けることにより、グリップ時に使用する親指袋部13と4指袋部14の境界部に分離部18を容易に設けて、親指袋部13の動きを容易にする。
【0046】
図4のBは、Aの一部を変更した変型例を示す部分平面図である。この例では、左右の親指袋部13近傍部に破断容易部17でなく分離部18が設けられている。このようにすると、左右いずれの手を用いる場合でも、破断容易部17を破断して分離部18を設ける必要がなく、直ちに親指袋部13のスムーズな動きを可能にすることができる。
【0047】
図3に示すように、袋空間14dの高さは先端側から後方へ向かって次第に増加するように変化し、開放端部14aでの高さが最大となっている。これは指の太さの変化に対応し、指の太さよりも袋空間14dの高さを高くして指との間に十分大きな間隙を設けたものであり、各指先部は、袋空間14d内において比較的自由な動きが許容されている。
【0048】
また、4指袋部14は開放端部14aにおいて開口し、ここで後方へ向かって開放されている。この開口の大きさは、この部分における指先部よりも大きくなっている。
ここで指先部より大きいとは、開口面積が、この部分における指先部の断面積より大きいことであり、差し込まれる指先部が複数の場合は、各断面積の合計よりも開口面積が大きいことである。
【0049】
このようにすると、4指4Fの指先部を抵抗なくスムースに差し込みや抜き出しができる。
したがって、4指袋部14は4指4Fを揃えた状態で余裕をもって差し込みや抜き出しができるようになっている。
【0050】
なお、親指袋部13の袋空間13dも同様であり、親指の指先部が余裕を持って差し込まれ、かつ内部で比較的自由に動けるようになっている。
また、開放端部13aを開口縁部とする開口が形成されており、この開口の大きさも親指の指先部より大きく形成され、親指の差し込みや抜き出しが容易になるように設定されている。
したがって、親指袋部13も親指3の指先部を差し込み及び抜き出すことを容易かつ迅速にできるようになっている。
【0051】
次に、ハンドカバー10によるグリップ9の被覆について説明する。
図4は手1へハンドカバー10を装着した状態でグリップ9を握った状態を示す図である。Aはグリップ9を握った状態の手1を甲側から示す図、Bは反対側から一部を示す図である。
【0052】
Aに示すように、この例のグリップ9は略三角リング状をなし、その底辺相当部が水平な下部9aをなし、ここがハンドカバー10の中央部へ重なり、親指3の股部3aの上を通っている。ハンドカバー10を装着した手1でグリップ9の下部9aを握ることにより、ハンドカバー10を介して下部9aが把持される。
Bに示すように、手1の内側にてハンドカバー10が下部9aに対してその外周を巻くように重なる。なおBにおける親指3は握り位置に回動している状態である。
【0053】
このグリップ9の握りに先だって、ハンドカバー10を装着した手1をグリップ9へ接近させるとき、ハンドカバー10は指先部に係止された袋部15を介して、安定して支持されているので、先端部が垂れて折り曲がるような不都合が生じず、ハンドカバー10の不都合な変形に邪魔されることなく速やかにグリップを握ることができる。このためハンドカバー10の本体部11でグリップの周囲を迅速かつ正確に覆うことができる。
【0054】
また、4指袋部14は4指4Fの指先部に係止され、親指袋部13も親指3の指先部に係止されているので、4指4F及び親指3の各指先部と一緒に曲がるようになり、上記不都合な変形を考慮せずに各指先部を曲げることができる。
【0055】
図5図4の5−5線に沿う断面図であり、4指4Fを下部9aの外周上側に沿うように曲げることにより、下部9aの上側には4指袋部14が重なる。下部9aの側部内側には本体部11の手のひら部12が重なる。また、親指3を手のひら2の上へ重なるように握り位置へ回動することで、下部9aの下方から外側側方へは親指袋部13が重なる。
これにより、グリップ9の下部9aにおける外周部周囲はハンドカバー10でくるまれ、手1の内側がグリップ9の下部9aと接触しなくなる。
【0056】
図6はハンドカバー10の製法を示す。Aは先述した当初のシート状素材10aを示す平面図、Bは重合部側の一部をカットする1次カットの工程を示す図、Cは重合部を折り曲げて本体部に重ねる折り曲げ工程を示す図、Dは重合部を本体部へ圧着しつつ、周囲を最終形状にカットする2次カットの工程を示す図である。
【0057】
Aに示す展開形状のシート状素材10aに対して、Bに示すように、重合部15aの開放端部13a及び14aより先端側のハッチング部分を1次カットする。
次に、Cに示すように、重合部15aを折れ線10bに沿って本体部11の上へ折り返すとともに、左右方向を上方へ凸に湾曲させ、左右方向端部が平面視で、本体部11の親指部13b及び4指部14bの左右端部と重なるようにする。
【0058】
この状態で、Dに示すように、重合部15aの先端及び左右に沿って圧着して結合部16を形成するとともに、周囲のハッチング部分を2次カットし、立体的なハンドカバー10を形成する。
【0059】
このとき、親指部13cの左右も圧着し、親指部13cの内側における結合部16と、これに隣接する4指部14cの左右方向における結合部16を、間隔を持って略平行する略直線状に形成し、これら略平行する2直線の間に先端側から後方の開放端部13aに向かってミシン目の破断容易部17を直線状に形成する。
【0060】
なお、圧着による結合部16の形成と破断容易部17の形成は、2次カットをプレスカットとすることにより同時に形成できる。
このようにすると、平面的なシート状素材から、簡単なプレス加工により、連続して効率よく立体的なハンドカバー10を製造でき、量産性に優れたものになる。
【0061】
図7はハンドカバー10をコンパクトに折りたたんで取り外す手順を説明する図である。
Aはグリップからハンドカバー10を離した状態の断面図であり、ハンドカバー10は袋部15へ指先部を差し込んでいるため手1へ装着された状態を維持されるが、本体部11の手首側は手1から離れて垂れ下がる。
【0062】
Bは、手のひら部12の中間部にて表側を内側にして折り曲げ、垂れ下がった手首側の端部を先端側へ重ねる状態を示す。この折り曲げは、本体部11を4指4Fと親指の間に挟み、親指を手のひら側へ近づけると、表側へ触ることなく容易に2つ折り状態になる。
【0063】
Cは、4指袋部14にて手のひら部12の手首側の端部を固定することを示す。上記Bの状態において、開放端部14aを持って4指袋部14を矢示のように裏返すと、裏返った4指袋部14が手のひら部12の手首側の端部上に重なり、本体部11の先端部と手のひら部12の手首側の端部とが重なった状態で一体化される。
【0064】
このとき、4指4Fの先端は4指袋部14から外へ出ているため、ハンドカバー10はそのまま廃棄可能になる。
しかも、取り外しと廃棄は、グリップにより汚染されている表面へ手1を触れずに、迅速かつ容易におこなわれる。また、4指袋部14を有効に利用してコンパクトに折りたたんで廃棄できる。
【0065】
なお、ハンドカバー10の取り外しと廃棄は、上記のように折りたたまずに、より簡単かつ迅速にすることができる。
すなわち、図7のAにおいて、手1の全体を下に向けると、4指4Fの各指先部が下に向くため、4指袋部14が指先部から脱落し、ハンドカバー10は自重により速やかに落下して廃棄される。この場合、4指4Fの指先部の向きを下向きにするだけで他に何もせず、かつハンドカバー10の表面に手を触れることなく迅速に取り外しと廃棄ができる。
【0066】
次に、本実施例の作用を説明する。
ハンドカバー10を手1へ取付けるには、図1に示すように、手1を本体部11の上に置き、4指4Fの指先部を4指袋部14の中へ差し込み、同時に親指3を親指袋部13の中へ差し込む。このとき、親指袋部13及び4指袋部14の袋状空間13d及び14d並びにそれぞれの開口は十分に大きく、それぞれの間口も十分に大きくなっているので、各指はスムーズに袋部15内へ入ることができる。
これによりハンドカバー10は4指袋部14及び親指袋部13を介して指先に支持された状態で手1へ装着される。その結果、ハンドカバー10を迅速かつ容易に手1へ装着することができる。
【0067】
4指袋部14は、内部へ入った4指4Fの指先部に係止される。このとき4指袋部14は、内部の指先部よりも大きく、これらを比較的自由に動ける状態にするにもかかわらず、指先に袋をかけて覆った状態であり、かつ指先の差し込み長さを比較的長くすることもあって、指先へ脱落することなく確実に支持される。また、親指袋部13も同様に親指3の指先部に係止される。
【0068】
このため、ハンドカバー10は4指袋部14及び親指袋部13を介して指先に支持された状態で手1へ安定して装着される。しかも、ハンドカバー10は各指先部で係止されるので、グリップ9を握るとき、把持に先立って先端部が垂れて折れ曲がってしまう等の不都合を生じない。その結果、グリップ9を握れば、同時にハンドカバー10がグリップ9を迅速かつ正確に覆うことができる。
【0069】
また、図6に示すように、袋部15は本体部11の先端部から延長形成された重合部15aを折り返して形成され、しかも1枚シート状素材10aから形成できるので、袋部15の形成が容易である。そのうえ、重合部15aを本体部11と重ねて圧着するので、周囲をプレスカットするとき一緒に圧着で結合させることができ、効率よくハンドカバー10を製造できる。
【0070】
さらに、図2に示すように、袋部15を、左右一対の親指袋部13と4指袋部14とで構成するとともに、親指袋部13と4指袋部14を一度に効率よく設けることができ、かつ親指袋部13を4指袋部14と独立させて設けて、親指袋部13を独自に動きやすくすることができる。
また、親指袋部13を左右一対で設けることにより、左手と右手の共用を可能にする。
【0071】
次に、本実施例の効果を説明する。
図1〜5に示すように、ハンドカバー10は、指先部の差し込み方向へ向かって指先部より大きく開口している袋部15を備えるので、この袋部15へ指先部をスムーズに差し込むことができ、袋部15を指先部に係止させることができる。これにより、ハンドカバー10を容易かつ迅速に手1へ装着できる。
また、袋部15が指先部に係止されることにより、ハンドカバー10の装着は安定したものになる。このため、グリップ9を握り、ハンドカバー10で迅速かつ正確にグリップ9を覆うことができる。
【0072】
さらに、本体部11は手1の内側全体を覆うので、グリップ時には、本体部11により手のひらのみならず指もグリップ9へ接触させないようにでき、グリップ9からの手1への汚染を防止できる。
【0073】
グリップ9の握りを解いてハンドカバー10を手から取り外すときは、指先部を下方へ向けるだけでハンドカバー10を手1から速やかに脱落させ、直ちに廃棄できる。
したがって、ハンドカバー10の取り外しを容易かつ迅速にできるようにするとともに、汚染された本体部11の表面へ手1を触れずに取り外すことができ、より確実な汚染防止を実現できる。
【0074】
このとき、図7に示すように、汚染された本体部11の表面へ手1を触れることなく、袋部15を利用してコンパクトに折りたたんで簡単かつ迅速に取り外すことができ、その後直ちにかつ容易に廃棄することもできる。
【0075】
また、袋部15に、親指以外の4指4Fの少なくとも一部指先部を差し込む4指袋部14を備えることにより、4指4Fの指先部を4指袋部14へ差し込むことで、ハンドカバー10を安定して装着でき、グリップ時においてもハンドカバー10を扱いやすく、4指4Fに追随して折り曲げ易くすることができ、グリップを迅速かつ正確に覆うことができる。
【0076】
さらに、袋部15が、4指袋部14に加えて親指を差し込む親指袋部13を備えると、動きの異なる親指と4指4Fとの機能差に合わせ、4指袋部14及び親指袋部13を別々に動かすことができるので、グリップを容易にすることができる。
特に、親指袋部13を設けることにより、グリップ9と接触し易い親指3を袋状に覆って保護し、グリップ9と接触させないようにすることができる。なお、4指袋部14も4指4Fの差し込まれた部分を覆って保護する。
【0077】
また、4指袋部14を挟んで親指袋部13を左右一対で備えると、左右いずれの手を用いても、4指4Fを共通の4指袋部14へ差し込むとともに、親指3を左右いずれかの親指袋部13へ差し込むことができるので、同じハンドカバー10を右手と左手で共用できるようになる。
【0078】
さらに、左右の親指袋部13と4指袋部14との間にそれぞれ破断容易部17を設けると、左右どちらの手を使った場合側でも、使用する側の親指袋部13近傍に設けられた破断容易部17を破断して分離部18を容易に形成でき、親指袋部13の4指袋部14に対する異なった動きを容易にする。
【0079】
一方、使用しない親指袋部13側の破断容易部17をそのままとすることにより、使用しない親指袋部13を4指袋部14に連結して、親指袋部13が不用意に折れ曲がるなどの不都合な動きを防止できる。
このため、左右いずれの手でもハンドカバー10の確実な使用を可能にする。
【0080】
さらに、グリップ時における親指3と4指4Fの動きが異なるが、親指が差し込まれた親指袋部13と4指袋部14との間に分離部18を形成すると、親指袋部13が4指袋部14と独立して動くことを可能にする。このため、親指と4指4Fとの機能差に合わせて親指袋部13を動かしてグリップを一層容易にすることができる。
【0081】
また、袋部15が、本体部11の先端部を覆い、本体部11との間に袋部空間14dを形成する重合部15aを備え、この重合部15aを本体部11と圧着により結合すると、全体の外形等をプレスカットするとき、一緒に圧着結合できるので、袋部15を容易に形成でき、ハンドカバーの製造を効率化することができる。
【0082】
このとき、重合部15aが本体部11の先端を延長して形成され、本体部11の先端にて折り返されて本体部11の上に重なるようにすると、平面状のシート素材10aから容易に形成することができ、量産性を高めることができる。
【0083】
図8参考例1に係るハンドカバー10Aの平面図を示す。
このハンドカバー10Aは、実施例に係る図2に示すハンドカバー10から親指袋部13を排除したものに相当する。すなわち、重合部15aAは左右の親指部13cを備えず、4指部14cのみであり、その結果、袋部15Aは4指袋部14のみとなる。
親指3は本体部11の親指部13bの上に重なるだけであり、親指3は袋部を係止していない。
【0084】
このようにしても、袋部15Aとして4指袋部14があり、ここへ4指4Fの指先部を差し込むことにより、ハンドカバー10Aを手1に対して迅速に着脱でき、前記実施例と同様の効果を奏することができる。
なお、親指3は親指袋部に入らず本体部11の上に露出することになるが、グリップ時に親指部13bにより覆われるので、グリップとの接触を回避できる。
【0085】
図9参考例2に係るハンドカバー10Bの平面図を示す。
このハンドカバー10Bは、上記参考例1に係るハンドカバー10Aから左右いずれか一方の親指部13bを削除したものに相当する。図示のものは、右側の親指部13bを削除したことにより、右手専用にしたものである。なお、左側の親指部13bを削除すれば左手専用のものになる。このようにすると、右手及び左手共用にすることはできないが、比較的小型にした簡易なものにすることができる。
【0086】
なお、図2のハンドカバー10から左右いずれか一方の親指袋部13を削除することもできる。この場合は、袋部として4指袋部14と左右いずれか一方の親指袋部13を有する右手又は左手専用のものとすることができる。
【0087】
図10参考例3に係るハンドカバー10Cの平面図を示す。AとBに示すハンドカバー10Cは同じであり、Aは右手で使用する状態、Bは左手で使用する状態を示す。
このハンドカバー10Cは袋部15Cが、親指3と4指4Fの各指先部を単一の袋空間内へ一緒に差し込める幅を有する単一のものになっている。したがって独立した4指袋部と左右の親指袋部が存在しない。袋部15Cの横幅は、開いた状態の親指3と4指4Fを一緒にして収容できる寸法になっており、袋部15Cの開口幅も袋部15Cの横幅とほぼ一致する程度に大きなものになっている。
【0088】
このハンドカバー10Cは中心線CLに対して左右対称に形成され、右手及び左手共用である。すなわち、Aに示すように、中心線CLに対して、右手における4指4Fの中心(すなわち中指5と薬指6の間)を右側に偏らせれば、右手用として袋部15Cへ親指3と4指4Fを収容して使用できる。符号15bは袋部15Cを構成する重合部15aCの開放端部である。開放端部15bは湾曲した曲線状をなし、4指4Fの付け根となる手のひらの上部及び親指3の上に重なる位置に形成されている。
【0089】
また、Bに示すように、中心線CLに対して、左手における4指4Fの中心を左側に偏らせれば、左手用として袋部15Cへ親指3と4指4Fを収容して使用できる。
このようにすれば、袋部の構造をより簡単にして左手及び右手で共通使用できる簡便なハンドカバーを形成できる。
【0090】
図中の仮想線15cは、開放端部15bと異なる位置に設けられた開放端部であって、親指3に重ならないように開放端部15bに対してより先端側に移動して設けられるものを示す。開放端部を15cのようにすると、図8に示す参考例1のように、袋部が親指袋部に相当する部分を備えず、4指袋部のみを有する形式のものにすることができる。
【0091】
なお、本願発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。
例えば、グリップは、吊り輪や階段の手すりなど手で握って姿勢を保持するための部材のみならず、自動車やオートバイ等の乗り物のハンドル、ショッピングカートやキャリヤカート、ショッピング用かご、各種バッグ及びトランク等の運搬用具の握り部、さらにはドアノブなど、手で握る各種の部材を含む。
また、グリップはリング状等の曲線をなすものや、直線的なものも含む。
【0092】
本体部11はシート状に限らず、例えば、指と一緒に折り曲げ自在であるような柔軟なものであれば、ある程度の厚み(例えば、数mm〜数cm程度の厚み)がある素材でもよい。この場合、柔軟で指と一緒に折り曲げ自在であるため、グリップが容易であるとともに、所定の厚さにすることより手の汚染可能性を可及的に少なくすることができる。
【0093】
このような素材は、紙などの天然素材やゴム及び各種樹脂材料などが可能である。
また素材をスポンジにすれば、軽量かつ肌触りが良好で使用感に優れたものになる。なお、このスポンジ材料も種々な樹脂材料が可能である。さらには、非通気性のフィルムやシートにすれば、薄くても細菌等の通り抜けをより確実に阻止できる。
【0094】
4指袋部14に差し込まれる指は、4指同時でなく、少なくともその一部(例えば、中指5)だけでもよい。また、差し込まれる指の先端部の長さは、手1に対して装着できる長さであれば足り、例えば、第1関節まで、もしくは第2関節までなど、自由である。
【0095】
また、重合部15aは本体部11と別体の部材でもよい。例えば、本体部11と別素材を所定形状に形成したものを用意し、これを本体部11上に重ねて結合一体化してもよい。この場合には、重合部15aの形状の自由度を大きくしたり、本体部11と異なる強度等の特性を有するものにして、耐久性や軽量化を図る等が可能になる。
さらには、合成樹脂により、本体部11と袋部15を連続一体に成形したものでもよい。
【符号の説明】
【0096】
1:手 2:手のひら 3:親指 4F:4指 5:中指 9:グリップ 10:ハンドカバー 11:本体部 12:手のひら部 13:親指袋部 14:4指袋部 15:袋部 16:結合部 17:破断容易部 18:分離部
【要約】
【課題】手に対して容易かつ迅速に脱着でき、かつグリップを握ったとき、手をグリップに接触しないよう完全に覆うようにする。
【解決手段】ハンドカバー10は、シート状をなし、手の内側全体覆う本体部11と、この先端側に設けられる袋部15を有する。袋部15は親指の差し込まれる親指袋部13と親指以外の4指4Fの指先部が差し込まれる4指袋部14を有する。親指を親指袋部13へ差し込み、4指4Fの指先部を4指袋部14へ差し込むと、ハンドカバー10は容易かつ迅速に手1へ装着される。また、指先部を下に向ければ、汚染されたハンドカバー10の表面へ触ることなく、ハンドカバー10を手1から容易かつ迅速に脱落させて廃棄することができる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12