【実施例】
【0140】
本発明は、Tプロスタノイド受容体、または略してTPとも呼ばれるヒトトロンボキサン(TX)A2受容体のTPαおよび/またはTPβ(イソ)型のアンタゴニストとして作用する様々な化合物(NTP42〜NTP49と呼ばれる新しい化学的実体)の合成および生物学的評価を提供する。これらのTPアンタゴニストは、TPを活性化する(TPのアゴニストまたは部分アゴニストとして作用する)、トロンボキサン(TX)A
2、およびフリーラジカル由来のイソプロスタンである8−イソ−プロスタグランジン(PG)F
2α、およびすべての他の偶発的作用物質(例えば、エンドペルオキシドPGG
2/PGH
2および20−HETE)の作用を阻害する(拮抗する)。TPは、体中の様々な細胞型において発現し、本明細書に記載の化合物(TPアンタゴニスト)は、それらの細胞型のすべてにおいて発現したTP(TPαおよび/またはTPβを含む)を標的とする。さらに、TPの発現の変化は、様々な疾患状況において生じ、本明細書に記載の化合物(TPアンタゴニスト)は、それらの細胞型のすべて、ならびに炎症およびがんを含めた異なる疾患状況において発現したTP(TPαおよび/またはTPβを含む)を標的とする。さらに、化合物は、任意の薬物型式(例えば、それに限定されるものではないが、経口、i.v、i.p、皮膚、経皮送達系、または医療デバイス上、例えば薬物溶出ステント上のステント上)に使用することができる。式NTP4およびTP20を有する化合物を参照し、巻末の表5も参照されたい。
【化43】
【0141】
ここで本発明者らは、メトキシ基を、ジフルオロメトキシ(NTP42において)、トリフルオロメトキシ(NTP43において)、ジフルオロ(NTP44)、トリフルオロ(NTP45)、第二級アミド(−C(=O)NHMe;NTP47)、第三級アミド(−C(=O)N(Me)2;NTP48)またはニトリル(NTP49)基で置き換えることによって、NTP4の有効性を増大することに成功し、それらから、3つの新しく非常に強力で有効な望ましいリードであるNTP42、NTP43およびNTP48を同定した。これらの例は、合成され、生物活性についてスクリーニングされた化合物(例えば、NTP42〜NTP49)を示しており、化合物NTP4およびTP20は、参照または対照化合物として働いた。本発明者らは、追加の高度に集中的な医薬品化学を行って、NTP4の有効性を、選択的TPアンタゴニストとしてのその特異性を保持しながら、さらに改善した。TP特異的アンタゴニストとしてのリード化合物の特異性は、アゴニスト誘導性細胞内カルシウム動員を阻害するそれらの能力を介して、ex vivoアッセイにおいて血小板凝集を阻害するそれらの能力を介する有効性アッセイにより確認されている。より具体的には、その結果によって、TP20およびNTP4と同様に、NTP42、NTP43、およびNTP48のいずれも、TPイソ型と同様に血小板活性化にも関与する他のプロスタノイド(プロスタグランジン(PG)D
2受容体、DP;PGE
2受容体EP1、EP2、EP3およびEP4;PGF
2α受容体、FP;PGI
2/プロスタサイクリン受容体、IP)、ならびにプリン(ADP)受容体およびトロンビン(PAR1)受容体を含めた非プロスタノイド受容体を介するシグナル伝達に対して、いかなる効果も示さなかったことが確立された。NTP42、NTP43およびNTP48は、それぞれ、DP−、EP1−EP4−、FP−またはIP−媒介性シグナル伝達に対していかなる効果も示さないことが確認された。データによって、NTP42およびNTP43およびNTP48が、最小限の毒性および好ましい細胞透過性を示すことが確認された。
【0142】
本発明者らは、新規な一連の高度に特異的なTP(TPα−およびTPβ−選択的)アンタゴニストであるNTP42〜NTP49を開発し、それらを生物学的に評価した。式IIIは、NTP42〜NTP49化合物の一般構造を示しており、式中、R1は、7種の新しく非常に強力で有効な望ましいリードを産生するための、ジフルオロメトキシ(NTP42において)、トリフルオロメトキシ(NTP43において)、ジフルオロ(NTP44において)、トリフルオロ(NTP45において)、第二級アミド(−C(=O)NHMe;NTP47において)、第三級アミド(−C(=O)N(Me)2;NTP48において)またはニトリル(NTP49において)基のいずれかであり得る。
【0143】
様々なCV疾患の処置のためのTPアンタゴニストの主要な適用に加えて、本発明者らのTPアンタゴニスト技術を使用および商業開発するための、奇病名を有する疾患を含めた数々の他の疾患の適応が存在する。例えば、これらのTPアンタゴニストは、トロンボキサン(TX)A
2、およびフリーラジカル由来のイソプロスタンである8−イソ−プロスタグランジン(PG)F
2α、およびTPを活性化する(TPのアゴニストまたは部分アゴニストとして作用する)すべての他の偶発的作用物質(例えばエンドペルオキシドPGG
2/PGH
2、20−HETE)の作用を阻害する。前述の通り、TPは、体中の様々な細胞型において発現し、本明細書に記載の化合物(TPアンタゴニスト)は、それらの細胞型のすべてにおいて発現したTP(TPαおよび/またはTPβを含む)を標的とする。さらに、TPの発現の変化は、様々な疾患状況において生じ、本明細書に記載の化合物(TPアンタゴニスト)は、それらの細胞型のすべて、ならびに炎症およびがんを含めた異なる疾患状況において発現したTP(TPαおよび/またはTPβを含む)を標的とする。さらに、化合物は、任意の薬物型式(例えば、それに限定されるものではないが、経口、i.v、i.p、皮膚、経皮送達系、または医療デバイス上、例えば薬物溶出ステント上のステント上)に使用することができる。
【0144】
(実施例1:NTP42〜NTP49の評価)
NTP4のノーザン群改変体であるNTP42〜NTP49を、それぞれHEK.TPαおよびHEK.TPβ細胞と呼ばれる、トロンボキサン(TX)A
2受容体、α(TPα)およびβ(TPβ)イソ型を過剰発現する専売のHEK293細胞を使用して、カルシウム動員アッセイによって評価した。初期スクリーニングには、IC
50値を決定するための、用量応答アッセイ(使用濃度0.0001μM(TPβだけ)、0.001μM、0.1μM、1μMおよび10μM(TPαおよびTPβ))、その後、より集中的な総用量応答アッセイ(濃度範囲:0.00001〜10μM)が含まれており、TXA
2模倣薬U46619(1μM)に応答して動員されたカルシウムに対する化合物の効果を、非常に重要なリード化合物TP20およびNTP4と並行比較した。結果を、
図1〜4および表1(n≧4)に示す。
【0145】
結論:
(A)初期試験:カルシウム動員アッセイ:用量応答カルシウム動員アッセイで決定される通り、新しい化合物NTP42〜NTP49は、TPαおよびTPβ媒介性カルシウム動員を強力に阻害し、NTP42およびNTP48は、TP20よりも高い効力を示す。さらなる詳細については、
図1〜4、および表1を参照されたい。2種の細胞株における効力の序列を、以下に示す。
TPα:NTP48>NTP42>NTP43>TP20>>NTP4
TPβ:NTP48>NTP42>TP20≧NTP43>NTP4 。
(B)ex vivo血小板凝集アッセイ:PAP−8E血小板凝集計を使用して実施した予備的な血小板凝集アッセイにおいて、NTP42、NTP43およびNTP48は、U46619媒介性の血小板凝集の阻害に効力を有することが実証され、その序列は、
血小板:NTP48>NTP42>TP20>NTP43≧NTP4
となる。さらなる詳細については、
図5および6、ならびに表2を参照されたい。
(C)特異性(さらなる詳細については、
図7、8および11〜17を参照されたい):新しい化合物の特異性を決定するための予備的なアッセイでは、NTP42〜NTP49は、IP/シカプロストまたはEP/PGE
2媒介性カルシウム動員に対する効果を示さなかった。具体的には、NTP42〜NTP49は、hIP/シカプロスト媒介性またはEP/PGE
2媒介性カルシウム応答に対して効果がないことが見出された。現在まで、NTP46を除き、化合物NTP44〜NTP49を、PGI
2受容体、IPおよびPGE
2受容体/EPによるシグナル伝達に対するそれらの効果について試験したが、新しい化合物NTP42、NTP43およびNTP48は、TP20およびNTP4と同様に、IP媒介性、EP媒介性シグナル伝達に対して効果を示さないことが確認された。データによって、新しいリード化合物NTP42、NTP43およびNTP48が、最小限の毒性および好ましい細胞透過性を示すことが確認された。
【0146】
さらに、さらなる特異性試験は、NTP42およびNTP48のいずれも、TPイソ型と同様に血小板活性化にも関与する他のプロスタノイド受容体(プロスタグランジン(PG)D
2受容体、DP;PGE
2受容体EP1、EP2、EP3およびEP4;PGF
2α受容体、FP;PGI
2/プロスタサイクリン受容体、IP)、ならびにプリン(ADP)受容体およびトロンビン(PAR1)受容体を含めた非プロスタノイド受容体を介するシグナル伝達に対して、いかなる効果も示さなかったことが確立された。NTP42、NTP43およびNTP48は、それぞれ、DP−、EP1−EP4−、FP−またはIP−媒介性シグナル伝達に対していかなる効果も示さないことが確認された。データによって、NTP42およびNTP43およびNTP48が、最小限の毒性および好ましい細胞透過性を示すことが確認された。
(A)初期試験:U46619媒介性カルシウム動員に対するNTP42〜NTP49の効果
【0147】
前述の通り、NTP42〜NTP49を、それぞれトロンボキサン(TX)A
2受容体、α(TPα)およびβ(TPβ)イソ型を過剰発現するHEK.TPαおよびHEK.TPβ細胞を使用して、カルシウム動員アッセイによってスクリーニングした。初期スクリーニングには、用量応答アッセイが含まれており、化合物を、0.0001μM(TPβだけ)、0.001μM、0.1μM、1μMおよび10μM(TPαおよびTPβ)で使用して、TXA2模倣薬U46619(1μM)を阻害するそれらの能力について評価した。化合物を、既に同定された非常に重要なリード化合物TP20およびNTP4との並行アッセイで試験した。結果を以下に示す。
【0148】
図1は、HEK TPα細胞(単離株HR番号4)におけるU46619媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。Fluo−4を予め負荷したHEK.TPα(HR番号4)細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43、NTP44、NTP45、NTP47、NTP48およびNTP49と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り0.001μM、0.1μM、1μMおよび10μMで使用した)、その後、1μMのU46619で刺激した。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、細胞を二連で処理した少なくとも4回の独立した実験から得られたデータを表す。
【0149】
図2は、HEK TPβ細胞におけるU46619媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。Fluo−4を予め負荷したHEK.TPβ(EM番号8)細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43、NTP44、NTP45、NTP47、NTP48およびNTP49と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り0.0001μM、0.001μM、0.1μM、1μMおよび10μMで使用した)、その後、1μMのU46619で刺激した。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、細胞を二連で処理した少なくとも4回の独立した実験から得られたデータを表す。
【0150】
コメント:
先のデータと一致して、参照化合物/リードTP20およびNTP4は、HEK.TPαおよびHEK.TPβ細胞においてU46619媒介性カルシウム動員を阻害する。同様に、新しいノーザン群の改変体(NTP42〜NTP49)は、様々な度合いだが、両方の細胞株においてU46619媒介性応答を阻害する。さらにほとんどの場合、阻害レベルは、NTP4について観測されたレベルを超える。先のデータから、最も活性な新しい化合物には、NTP42、NTP43およびNTP48が含まれる。これらの化合物を、総用量応答アッセイによってさらに調査して、阻害に関するIC50値を決定した。
【0151】
図3は、HEK TPα細胞(単離株HR番号4)におけるU46619媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。
【0152】
Fluo−4を予め負荷したHEK.TPα(HR番号4)細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43およびNTP48と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り0.00001〜10μMで使用した)、その後、1μMのU46619で刺激した。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、細胞を二連で処理した少なくとも3回の独立した実験から得られたデータを表す。
【0153】
図4は、HEK TPβ細胞におけるU46619媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。Fluo−4を予め負荷したHEK.TPβ(EM番号8)細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43およびNTP48と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り0.00001〜10μMで使用した)、その後、1μMのU46619で刺激した。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、細胞を二連で処理した少なくとも4回の独立した実験から得られたデータを表す。
【表1】
【0154】
コメント:
先のSAR研究から、TP20およびNTP4は、非常に重要なリード化合物として同定された。このことと一致して、TP20およびNTP4は、共に、HEK.TPαおよびHEK.TPβ細胞におけるU46619媒介性カルシウム動員を強力に阻害し、TPβ媒介性応答の阻害に関するIC
50値は、ナノモル濃度範囲内にあることが決定付けられた(各細胞株における化合物毎の具体的な図については、表1を参照されたい)。同様に、化合物NTP42〜NTP49は、両方の細胞株において、U46619媒介性応答を強力に阻害した。特に、化合物NTP42、NTP43およびNTP48は、最も有効であり、これらを、より詳細な分析およびIC
50値の決定のために選択した。IC
50値は、NTP42、NTP43およびNTP48が、NTP4よりも有効にTPαおよびTPβの応答に拮抗し、すなわち、メトキシ基を、ジ−、トリ−フルオロメトキシまたは第三級アミドで置き換えることによって、有効性が改善されたことを示している。3種の化合物、NTP42、NTP43およびNTP48を、カルシウムおよび血小板凝集アッセイの両方によって、さらに特徴付けた。
(B)U46619媒介性血小板凝集に対するNTP42〜NTP49の効果:
【0155】
第2の独立したアッセイにおいてNTP42〜NTP49を評価するために、U46619媒介性血小板凝集アッセイに対する化合物の効果を調査した。有効性の観点から、このアッセイは明らかに重要なアッセイであり、生理的に治療標的に関してより関連性が高い。
【0156】
初期スクリーニングには、用量応答アッセイが含まれており、化合物を、7.8125nM、15.625nM、31.25nM、62.5nMおよび125nMで使用して、TXA2模倣薬U46619(1μM)によって誘導された血小板凝集を阻害するそれらの能力について評価した。化合物を、PAP−8E血小板凝集計を使用して、既に同定された非常に重要なリード化合物TP20との並行アッセイで試験した。結果を以下に示す。
【0157】
図5は、U46619媒介性血小板凝集に対するNTP42〜NTP49の効果を示す。健康なボランティアから採血した血液を、3.8%クエン酸ナトリウムおよび10μMインドメタシンを含有するシリンジに、抗凝固剤と血液の最終的な比が1:9になるように入れて、PRPを調製した。PRPのアリコート(300μl)を、TPアンタゴニスト、TP20、NTP42、NTP43、NTP44、NTP45、NTP47、NTP48およびNTP49と共に10分間プレインキュベートし、0.25μMからの2倍連続希釈物を、それぞれについて調製した後、血小板を1μMのU46619で刺激し、37℃で撹拌しながらインキュベートした。結果は、PAP−8E血小板凝集プロファイラーを使用して光透過の経時的変化によって決定される通り、凝集百分率(平均±S.E.M.)として提示され、4回の独立した実験から得られたデータを表す(n=4)。
【0158】
コメント:
参照化合物TP20と同様に、新しいNTP42〜NTP49化学的実体は、ex vivoでヒト血小板のU46619媒介性凝集を強力に阻害し、NTP42、NTP43およびNTP48は、最も有効である。したがって、その後のアッセイでは、U46619媒介性血小板凝集に対するNTP42、NTP43およびNTP48、ならびに参照化合物としてのTP20およびNTP4の効果を、PAP−8E血小板凝集計を使用して並行比較した。
【0159】
図6は、U46619媒介性血小板凝集に対するNTP42、NTP43およびNTP48の効果を示す。健康なボランティアから採血した血液を、3.8%クエン酸ナトリウムおよび10μMインドメタシンを含有するシリンジに、抗凝固剤と血液の最終的な比が1:9になるように入れて、PRPを調製した。PRPのアリコート(300μl)を、TPアンタゴニスト、TP20、NTP4、NTP42、NTP43およびNTP48と共に10分間プレインキュベートし、1μMからの2倍連続希釈物を、それぞれについて調製した後、血小板を1μMのU46619で刺激し、37℃で撹拌しながらインキュベートした。結果は、PAP−8E血小板凝集プロファイラーを使用して光透過の経時的変化によって決定される通り、凝集百分率(平均±S.E.M.)として提示され、少なくとも3回の独立した実験から得られたデータを表す(n≧3)。
【表2】
【0160】
コメント:
化合物NTP42、NTP43およびNTP48は、U46619媒介性応答を阻害し、NTP42およびNTP48は、共に、TP20またはNTP4のいずれかよりも強力であった。NTP43は、U46619媒介性応答を阻害するのにNTP4と等しい効力を示した。
(C)特異性試験:hIP媒介性およびEP3媒介性カルシウム動員に対するNTP42〜NTP49の効果
【0161】
新しいNTP42〜NTP49化合物の特異性を確認するために、hIP(シカプロスト)媒介性およびEP(PGE
2)媒介性応答に対するそれらの効果を、それぞれHEK.hIPおよびHEL92.1.7細胞で調査した。化合物を10μMで試験し、結果を以下に示す。
【0162】
図7は、HEK.hIP細胞におけるシカプロスト媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。Fluo−4を予め負荷したHEK.hIP細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43、NTP45、NTP47、NTP48およびNTP49と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り10μMで使用した)、その後、1μMのシカプロストで刺激した。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、細胞を三連で処理した少なくとも3回の独立した実験から得られたデータを表す。HEK.hIP細胞。
【0163】
図8は、HEL92.1.7細胞におけるEP/PGE
2媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。Fluo−4を予め負荷したHEL92.1.7細胞を、TP20、NTP4、NTP42およびNTP43と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り10μMで使用した)、その後、1μMのシカプロストで刺激した。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、細胞を三連で処理した3回の独立した実験から得られたデータを表す。1μMのPGE
2。
【0164】
コメント:本明細書で、データは、NTP42〜NTP49が、特異性に関して全く問題がなく、TP/U46619媒介性応答の拮抗作用に対して高度に特異的であることが実証されたことを示す。
【0165】
(実施例2:(PG)F
2α拮抗作用)
イソプロスタンである8−イソ−プロスタグランジン(PG)F
2αの作用に拮抗するNTP42、NTP43およびNTP48、ならびに参照としてのNTP4およびTP20の能力の実証。
8−イソ−PGF2α媒介性カルシウム動員に対するNTP42〜NTP48の効果
【0166】
さらに、U46619媒介性応答に拮抗する化合物を評価するために、部分TPアゴニストである8−イソ−PGF
2αを阻害するNTP42およびNTP43の能力を、HEK.TPαおよびHEK.TPβ細胞におけるカルシウム動員アッセイを介して調査した。
【0167】
図9および10は、HEK TPβ細胞における8−イソ−PGF
2α媒介性カルシウム動員に対するTPアンタゴニストの効果を示す。
【0168】
図9は、Fluo−4を予め負荷したHEK.TPα細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43およびNTP48と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り0.00001〜10μMで使用した)、その後、10μMの8−イソ−PGF
2αで刺激した後の結果を示す。
【0169】
図10は、Fluo−4を予め負荷したHEK.TPβ細胞を、TP20、NTP4、NTP42、NTP43およびNTP48と共にインキュベートし(各アンタゴニストを、示されている通り0.00001〜10μMで使用した)、その後、10μMの8−イソ−PGF
2αで刺激した後の結果を示す。データは、ビヒクル処理細胞におけるアゴニスト誘導性応答の平均(±S.E.M.)百分率(対照に対する百分率;%)として提示され、NTP48を除き、細胞を二連で処理した少なくとも3回の独立した実験から得られたデータを表す。
【0170】
表3は、HEK.TPαおよびHEK.TPβ細胞における8−イソ−PGF
2α媒介性カルシウム動員の阻害に関する推定IC
50値を表し、TPアンタゴニストがない状態の部分アゴニストは、112±3.26(n=12)および96.1±2.52(n=8)の応答をそれぞれ媒介した。
【表3】
【0171】
結論:
データによって、新しい非常に重要なリード化合物、すなわちNTP42、NTP43およびNTP48は、8−イソ−PGF
2α媒介性カルシウム応答の強力な阻害剤であることが確認された。さらに、データ(先に提示)によって、NTP42、NTP43およびNTP48は、TP20およびNTP4よりも強力であることが確認される。各細胞株におけるTPアンタゴニストによる8−イソ−PGF
2α媒介性カルシウム動員の阻害に関する序列は、以下の通りである。
TPα:NTP42>NTP48≧NTP43>TP20>NTP4
TPβ:NTP42≧NTP43>NTP48>TP20>NTP4 。
【0172】
(実施例3:特異性)
図11〜17は、さらなる特異性試験の例であり、NTP42およびNTP48のいずれも、その他のプロスタノイド受容体(すなわち、プロスタグランジン(PG)D
2受容体、DP;PGE
2受容体EP1、EP2、EP3およびEP4;PGF
2α受容体、FP;PGI
2/プロスタサイクリン受容体、IP)を介するシグナル伝達に対していかなる効果も示さなかったことを示している。
【0173】
図11は、NTP42およびNTP48が、DP
1受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0174】
図12は、NTP42およびNTP48が、EP
1受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0175】
図13は、NTP42およびNTP48が、EP
2受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0176】
図14は、NTP42およびNTP48が、EP
3受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0177】
図15は、NTP42およびNTP48が、EP
4受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0178】
図16は、NTP42およびNTP48が、FP
1受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0179】
図17は、NTP42およびNTP48が、IP受容体に対して効果を示さないことを示す。
【0180】
NTP42およびNTP48は、それぞれ、DP−、EP1−EP4−、FP−またはIP媒介性シグナル伝達に対していかなる効果も示さなかったことが確認された。
【0181】
NTP42およびNTP48のいずれかの存在下で観測された非TP媒介性シグナル伝達の大部分は、阻害されないか、または最小限にしか阻害されない。シグナル伝達の阻害が存在している場合、10μM濃度のみで観測される。例えば、NTP42は、ほんの10μMでDP
1、EP
1、EP
4およびIPを最大限阻害し、応答における百分率の低下は、それぞれ<30%、約55%、40%および50%である。NTP48は、NTP42と比較して、非TPプロスタノイド受容体のシグナル伝達に対する効果が少なく、したがって、この文脈ではより好ましいとみなすことができる。
【0182】
図18は、TP媒介性またはU44069媒介性シグナル伝達に対する、阻害に関するIC
50値を含めたNTP42およびNTP48の効果を示す(CEREPは、U46619ではなく関連のU44069を使用する)(表4も参照されたい)。それらの効果は、NTP42およびNTP48が、U46609またはTPの強力なアンタゴニストであることを示す。IC
50値の差異は、細胞型、アゴニスト、カルシウム指示薬などの差異を含めた、アッセイの特定条件の差異に起因し得る。
【0183】
表4は、代替TPアゴニストU46609による細胞の刺激後の、TP媒介性[Ca
2+]
i動員に拮抗するNTP42およびNTP48のIC
50値の一例である。
【表4】
【0184】
(実施例4:有効性)
図19〜23は、ラットの肺動脈高血圧(PAH)のモノクロタリン(monocrotoline)(MCT)誘導性モデルにおけるNTP42の有効性を示す。手短には、雄性Wistar/Kyotoラットに、単回用量のMCT(60mg/kg、皮下)を与え、次に薬物ビヒクル、試験物質NTP42(0.25mg/kg/用量、BID)または参照化合物であるシルデナフィル(50mg/kg/用量、BID)またはTP20(0.25mg/kg/用量、BID)のいずれかで1日2回の用量(経口投薬)で28日間処置した。対照として、一群のラットを、未処置のままにし、すなわちMCTも治療薬物も与えなかった。MCT誘導後の28日目に、ラットを、心臓外科手術のために麻酔し、血行動態パラメータを記録した。その後、気管、心臓および肺をひとまとめに取り出し、心臓および肺の湿重量を記録し、次に肺を組織病理学のために回収し、固定し、処理した。
【0185】
図19は、拡張期肺動脈圧(dPAP)に対する試験物質の効果を示す。
【0186】
図20は、平均肺動脈圧(mPAP)に対する試験物質の効果を示す。
【0187】
図21は、平均全身動脈圧(mAP)に対する試験物質の効果を示す。
【0188】
図22は、Fulton指数に対する試験物質の効果を示す。
【0189】
図19〜22では、対照(Ctr)は、MCTでも試験/参照化合物でも処置しなかった動物を指し、陰性対照(N.C.)は、PAHを誘導するためにMCTで処置したが、試験/参照化合物では処置しなかった動物を指す。
【0190】
図23は、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色し、Aperio画像取込みシステムを使用して走査した後のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)肺組織切片を示す。代表的な画像は、肺血管再構築(上パネル、白色矢印)および肺胞気腔(下パネル)の程度を示す。各画像の横スケールバーは、100μMに相当し、すべての画像を、20倍の拡大率で取り込んだ。
【0191】
Aperio製ImageScopeを使用して、H&E染色し、デジタル的に走査した肺切片を分析し、下部、中間部および上部の肺組織切片1つ当たり10の無作為な正方形(およそのサイズまたは各正方形=1×10
6μm
2)を、分析のために選択した。各正方形内の、すべての血液細動脈(各正方形内の完全な細動脈、ならびに右および下に接触するものを評価したが、正方形の左または上は評価しなかった)を、管腔および全血管径についてImageScopeで測定し、内腔 対 全血管径の比を、細動脈毎に決定した。
【0192】
図24〜27は、すべての細動脈(全体)、ならびにサイズ:小、<50μmの全直径、中、50〜100μmおよび大、>100μmによって分類された細動脈の、平均(±S.E.M.)内腔:全血管径の比に対する試験物質の効果を示す。
【0193】
図24〜27は、MCT誘導性PAHにおける血管再構築に対するNTP42の効果の形態計測分析を示す。
【0194】
図24は、全細動脈の平均(±SEM)内腔:全血管径の比を表すデータを示す。
【0195】
図25は、小細動脈(<50μm)の平均(±SEM)内腔:全血管径の比を表すデータを示す。
【0196】
図26は、中細動脈(50〜100μm)の平均(±SEM)内腔:全血管径の比を表すデータを示す。
【0197】
図27は、大細動脈(>100μm)の平均(±SEM)内腔:全血管径の比を表すデータを示す。
図24〜27では、アスタリスクは、MCTで処置した群の内腔:全血管径の比が、偽対照/非MCT群から統計的に低下していることを示し、ハッシュマークは、シルデナフィル、TP20およびNTP42で処置した動物の内腔:全血管径の比が、MCTだけで処置した動物から著しく増大していることを示し、
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**/##、p<0.01および
***/###、p<0.0001である。
【0198】
図28では、FFPE肺組織切片を、H&Eで染色し、デジタル的に走査した(Aperio Slide Scanner)。代表的画像は、小、中および大細動脈における肺血管再構築の程度を示す。横スケールバーは、50μm(小および中細動脈)および100μm(大細動脈)に相当し、画像を、40倍の拡大率で取り込んだ。
図28の代表的画像は、小、中および大血管における肺血管再構築の程度を示す。各画像の横スケールバーは、50μm(小および中血管)または100μm(大血管)に相当し、すべての画像を、40倍の拡大率で取り込んだ。
【0199】
図28は、血管再構築または筋性動脈化(muscularization)を評価する独立した尺度としての、血管壁における平滑筋細胞を検出するために抗アルファ平滑筋アクチン抗体を使用する免疫組織化学的検査(IHC)後のFFPE肺組織切片を示す。染色されたスライドを、Aperio画像取込みシステムを使用して走査し、上パネルの代表的画像は、中細動脈(直径50〜100μm)における肺血管再構築の程度を示す。各画像の横スケールバーは、50μmに相当し、すべての画像を、20倍の拡大率で取り込んだ。下パネルは、ImageScopeのPositive Pixelアルゴリズムv9.0によって決定された通り、陽性(黄色から赤色)および陰性(青色)染色の強度を示す。
【0200】
結論として、
図19〜28のNTP42によって例示される本発明の化合物は、MCT−PAHに対する動物被験体の血行動態特徴および組織学的特徴の測定によって示される通り、MCT誘導性PAHモデルにおいて有効である。
【0201】
(実施例5:血管再構築)
図29は、α−SMAのIHCによって評価したMCT誘導性PAHにおける血管再構築に対するNTP42の効果を示す。FFPE肺組織切片を、抗α平滑筋アクチン(α−SMA;上の図、褐色染色)抗体で免疫染色し、ヘマトキシリン(上の図、青色の核)で核対比染色し、その後、デジタル走査(Aperio Slide Scanner)を行った。上の代表的画像は、細動脈の周りの平滑筋層のα−SMA(褐色)免疫染色を示し、中(直径50〜100μm)細動脈における肺血管再構築の程度を示す。下の図は、Aperio製のImageScopeのPositive Pixelアルゴリズムv9.0を使用して評価した通り、陰性(青色)または陽性染色(黄色/赤色)の強度を示す。横スケールバーは、50μmに相当し、画像を、20倍の拡大率で取り込んだ。
【0202】
付録
表5は、NTP参照名と式の番号の対応である。左欄の任意の項目は、右欄の式と定義され、その逆も同様である。
【表5】