特許第6837249号(P6837249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837249
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 5/04 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   A63F5/04 601B
   A63F5/04 699
   A63F5/04 602D
   A63F5/04 601C
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-87168(P2020-87168)
(22)【出願日】2020年5月19日
(62)【分割の表示】特願2018-240551(P2018-240551)の分割
【原出願日】2018年12月25日
(65)【公開番号】特開2020-127814(P2020-127814A)
(43)【公開日】2020年8月27日
【審査請求日】2020年5月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390026620
【氏名又は名称】山佐株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 卓
【審査官】 森田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−337271(JP,A)
【文献】 特開2006−081562(JP,A)
【文献】 特開2006−288874(JP,A)
【文献】 特開2017−225753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 5/04
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技の進行に関する制御を担う制御装置を備える遊技機において、
前記制御装置による前記制御に関する信号を扱う複数の配線が形成された制御基板と、
前記制御基板の実装面に実装され、遊技機の設定値を変更する際に使用される設定変更用押しボタンと、
前記制御基板を覆う基板ケースとを備え、
前記複数の配線は、前記設定変更用押しボタンからの信号を扱う第1配線と、前記設定変更用押しボタンを除くスイッチからの信号を扱う第2配線とを含み、
前記設定変更用押しボタンは、押下されることにより前記制御装置に信号が送信され、
前記基板ケースには、前記設定変更用押しボタンの押下を可能とする開口部が形成され、
前記制御基板には、前記設定変更用押しボタンに近接して金属板が配設され、
前記金属板は、前記実装面に対して垂直な方向から見たときに、前記開口部に重なる領域と、前記開口部よりも広がる領域とを有し、
前記制御基板のうち、前記実装面に対して垂直な方向から見たときに、前記開口部と重なる領域には、全層に亘って前記第2配線が形成されず、かつ、前記金属板と重なる領域には、全層に亘って前記第2配線が形成されていない
ことを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技の制御を司る制御基板を収納する基板ケースを備える遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技機の一つであるスロットマシンでは、遊技の進行や演出に関する制御を行う制御基板が搭載され、該制御基板が基板ケースに収納されている。また、この種の制御基板には、例えばリセットスイッチなどの押しボタンが実装される場合がある。例えば、特許文献1に記載の遊技機では、制御基板に押しボタンが実装され、押しボタンが制御基板とともに基板ケースに収納される。基板ケースには、押しボタンの真上の部分に開口部が設けられ、押しボタンの押下が可能となっている。この構成によれば、基板ケースの開口部から容易に不正治具を進入させることができるため、不正行為が行われるおそれがある。そこで、特許文献1に記載の遊技機では、基板ケースの制御基板の収納空間側に押しボタンを囲むように内壁を設け、他の実装部品と押しボタンとを隔離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−47377号公報(段落0035〜0038、図12等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の遊技機では、基板ケースの構造が複雑になり、基板ケースのコストが増大する。また、内壁により他の実装部品に直接のアクセスは防止できるものの、押しボタンの周囲や真下の制御基板に制御信号が伝送される配線が形成される場合は、依然、不正行為が行われるおそれがあり、不正行為対策としては十分とは言えない。さらに、押しボタンそのものは押下操作が必要になるため、例えば嵌め殺し窓のようなカバーを押しボタンに付けるなど、厳重に保護した場合は、押しボタンの利便性が低下するという弊害もある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、押しボタンが実装された制御基板が基板ケースに収納される場合において、基板ケースの構造を複雑とすることなく、押しボタンを押下するために設けられた開口部からの不正を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明にかかる遊技機は、遊技の進行に関する制御を担う制御装置を備える遊技機において、前記制御装置による前記制御に関する信号を扱う複数の配線が形成された制御基板と、前記制御基板の実装面に実装された設定変更用押しボタンと、前記制御基板を覆う基板ケースとを備え、前記複数の配線は、前記設定変更用押しボタンからの信号を扱う第1配線と、その他の信号を扱う第2配線とを含み、前記設定変更用押しボタンは、押下されることにより前記制御装置に信号が送信され、前記基板ケースには、前記設定変更用押しボタンの押下を可能とする開口部が形成され、前記制御基板には、前記設定変更用押しボタンに近接して金属板が配設され、前記金属板は、前記実装面に対して垂直な方向から見たときに、前記開口部に重なる領域と、前記開口部よりも広がる領域とを有し、前記制御基板のうち、前記実装面に対して垂直な方向から見たときに、前記開口部と重なる領域には、全層に亘って前記第2配線が形成されず、かつ、前記金属板と重なる領域には、全層に亘って前記第2配線が形成されていないことを特徴としている。
【0007】
この構成によると、押しボタンを押下するために設けられた開口部に重なる領域には、押しボタン以外の制御に関する信号を扱う信号配線が形成されないため、該信号配線を対象とした不正行為を防止することができる。また、基板ケースに不正防止用の内壁を設ける必要がないため、基板ケースの製造コストを抑えることができる。また、例えば、金属板を接地しておけば、針金等の不正治具を押しボタンの周囲に進入させて、不正信号を送信しようとしても、金属板に当たると、放電してしまい、制御装置にまで不正信号が達することが無いため、この種の不正行為を確実に防止することができる。また、押しボタンを押下したときに発生した静電気を金属板により放電できるため、制御基板の実装部品や配線パターンへのダメージを防止できる。さらに、不正治具が進入したときに、物理的な防御板として機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる遊技機の一例であるスロットマシンの斜視図である。
図2図1のスロットマシンの電気的構成を示すブロック図である。
図3】中継基板の平面図である。
図4】押しボタンの断面図である。
図5】他の実施形態における押しボタンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本発明の一実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0010】
(構成)
本実施形態に係る遊技機の一例であるスロットマシン1は、予め設定された複数の遊技状態のうちのいずれかの遊技状態において、メダルなどの遊技媒体が規定数(例えば、3枚)投入され、後述するスタートスイッチ19が操作されることを条件に一回の遊技が実行開始されるものであり、図1のように構成されている。
【0011】
筐体3の前面は、前面扉5により開閉自在に閉塞され、この前面扉5のほぼ中央高さの位置に操作板7が配設される。操作板7の上方に正面板9が配設されている。正面板9には横長矩形の表示窓11が設けられている。また、表示窓11の内側には、複数種類の図柄を予め定められた順序で可変表示する左・中・右リール13L,13M,13Rが配置されている。左・中・右リール13L,13M,13Rには、複数種類の図柄(例えば、「7」「BAR(バー)」「R(リプレイ)」「BE(ベル)」「WM(スイカ)」「CH(チェリー)」)が合計20個、所定の配列でそれぞれ設けられている。
【0012】
また、各図柄には、0番から19番までのコマ番号が順に付されている。この場合、例えば、コマ番号0番から19番までの図柄が印刷されたリールテープが各リール13L,13M,13Rの周面に貼り付けられている。そして、各リール13L,13M,13Rが回転すると、コマ番号19番、18番、…、0番、19番、…の予め定められた順に複数の図柄がそれぞれ表示窓11に変動表示される。表示窓11からは、各リール13L,13M,13Rの回転が停止すると、図柄が上段、中段および下段にそれぞれ1個の合計3個ずつ覗くように設定されている。すなわち、3個すべてのリール13L,13M,13Rが停止すると、縦3列横3行に配列された合計9個の図柄が表示窓11に停止表示されるようになっている。なお、この実施形態では、入賞判定に使用される表示窓11内の入賞ラインとして、左リール13Lの中段、中リール13Mの中段、右リール13Rの中段により構成されるいわゆる中段ラインが設定されている。
【0013】
また、各リール13L,13M,13Rを独立して回転駆動できるように、各リール13L,13M,13Rそれぞれには、ステッピングモータで構成されるリールモータ14L,14M,14R(図2参照)が連結されている。
【0014】
更に、操作板7には、内部に貯留されているクレジットメダルから1枚ずつのメダル投入を指示するためのベットスイッチ15、クレジットメダルから1ゲーム(遊技)あたりの最大投入枚数(ここでは3枚に設定されている)のメダル投入を指示するための最大ベットスイッチ17、各リール13L,13M,13Rを回転させて各図柄の可変表示を開始させるレバー状のスタートスイッチ19、左・中・右リール13L,13M,13Rの回転をそれぞれ停止させて各図柄の可変表示を停止させる左・中・右ストップスイッチ21L,21M,21R、クレジットメダルを払い出すための精算スイッチ23、およびメダル投入口25が設けられている。なお、この実施形態では、1ゲームに必要なメダル投入数(規定数)は、3枚の1種類が設定されている。また、各リール13L,13M,13Rにより複数種類の図柄を可変表示する複数の可変表示列が形成されており、各ストップスイッチ21L,21M,21Rは、各リール13L,13M,13Rそれぞれに対応して設けられている。
【0015】
また、正面板9の上方のほぼ中央には、動画などを表示して遊技者に当選や入賞などを告知したり、各ストップスイッチ21L,21M,21Rの操作態様を報知したりする演出を行うための液晶表示器27が設けられている。液晶表示器27のすぐ上方には、各種の入賞図柄が表示された説明パネル29が設けられ、液晶表示器27および説明パネル29の左右、並びに、後述するメダル払出口39の左右には、音楽や音声などによる演出を行うためのスピーカ31L,31Rがそれぞれ設けられている。また、説明パネル29およびスピーカ31L,31Rの上辺には中央ランプ部33Mが配設され、その左右には左・右ランプ部33L,33Rがそれぞれ配設されている。各ランプ部33M,33L,33Rには、それぞれ発光ダイオードなどの光源が配設されている。これらのランプ部33M,33L,33Rは一体的に形成され、遊技者に当選や入賞を告知するなどの演出を行うための上部ランプ部33を構成している。
【0016】
また、操作板7の下方には、装飾画などが表示された下部パネル35が設けられ、この下部パネル35の左右には、それぞれ複数の光源が例えば2列に並んで配置された下部ランプ部37L,37Rが設けられている。また、下部パネル35の下方には、メダルのメダル払出口39や、このメダル払出口39から払い出されるメダルを受けるメダル受け41が設けられている。また、正面板9には入賞ラインが描かれ、正面板9の左下隅にはクレジットメダルの貯留枚数を表示するクレジット表示器45が配設されている。このクレジット表示器45は、例えば2個の7セグメントLEDで構成され、2桁の貯留枚数(最大で50枚)が表示可能になっている。
【0017】
また、クレジット表示器45の下方には、入賞時のメダルの払い出し枚数を表示するためのペイアウト表示器46が配設される。このペイアウト表示器46は、クレジット表示器45と同様、2個の7セグメントLEDで構成されている。なお、ペイアウト表示器46は、エラー情報の表示に兼用される。
【0018】
また、正面板9の表示窓11の下方には、左ストップスイッチ21L,中ストップスイッチ21M,右ストップスイッチ21Rを操作する順番や、役抽選の結果など、メイン制御基板63の制御に関する情報を報知(表示)するための報知用表示器60が配設されている。報知用表示器60は、例えば2個の7セグメントLEDを備えている。したがって、両7セグメントLEDそれぞれが有する各セグメントの点灯態様を変化させることによって、例えば、各ストップスイッチ21L,21M,21Rの操作順序や操作タイミング等の操作様態を報知できるように構成されている。
【0019】
また、各リール13L,13M,13Rを支持する支持枠体が、筐体3内の後壁に固定されている。筐体3内の支持枠体の下方には、メダルをメダル払出口39に排出するためのホッパーユニット43(図2参照)が配設されている。また、メダル投入口25付近の裏面側には、メダル投入口25に投入されたメダルが正規のものか否かを選別して正規のメダルのみをホッパーユニット43に導くメダルセレクタ48(図2参照)が配設されている。また、スロットマシン1の正面から見てホッパーユニット43の左側には、操作ボックス49(図2参照)が筐体3内の左側壁に固定されている。この操作ボックス49には、電源のON、OFFを切り換える電源スイッチ50(図2参照)が設けられるとともに、設定変更処理用のキーシリンダからなる設定変更キースイッチ52(図2参照)が設けられている。後述する中継基板83(本発明の「制御基板」に相当)の実装面830には、設定変更時の設定値の切り換えを行うのに用いられる設定変更ボタン56(図2参照)が実装されている。なお、設定変更ボタン56は、エラーが発生した際のエラー解除のためのスイッチとしても用いられる。
【0020】
続いて、スロットマシン1の電気的な構成について図2を参照して説明する。
【0021】
図2に示すように、投入センサ53が、筐体3内部のメダル投入口25近傍であってメダルセレクタ48部分に設けられ、メダル投入口25に投入されたメダルを1枚ずつ検出する。払出センサ54が、ホッパーユニット43の出口に設けられ、メダル払出口39に払い出されるメダルを1枚ずつ検出する。
【0022】
左・中・右位置センサ55L,55M,55Rは、左・中・右リール13L,13M,13Rの回転位置をそれぞれ検出するもので、例えば左・中・右リール13L,13M,13Rにそれぞれ設けられた突起部を検出するフォトインタラプタからなり、左・中・右リール13L,13M,13Rが回転すると、一周ごとに突起部を検出してその検出信号をメイン制御基板63に出力する。この実施形態では、例えば左・中・右位置センサ55L,55M,55Rが上記突起部を検出したときに、それぞれコマ番号19番の図柄が表示窓11の中段に位置するように構成されている。
【0023】
ホッパーモータ57は、ホッパーユニット43に配設されて、その駆動によりメダルをメダル払出口39に向けて払い出す。
【0024】
また、スロットマシン1には、遊技の進行に関する制御を行うメインCPU61が実装されたメイン制御基板63と、メイン制御基板63から送信された情報に基づき遊技の進行に合わせた演出の制御を行うサブCPU71が実装されたサブ制御基板73とが別々に設けられ、メイン制御基板63からサブ制御基板73に対して一方向に各種のデータが送信される。
【0025】
また、各種センサから送信される検出信号の一部は、中継基板83を介してメイン制御基板63に送信される。この実施形態では、投入センサ53の検出信号、各ストップスイッチ21L,21M,21Rが押下された旨を示す信号、ベットスイッチ15が押下された旨を示す信号、最大ベットスイッチ17が押下された旨を示す信号、スタートスイッチ19が操作された旨を示す信号、設定変更ボタン56が操作された旨を示す信号は、中継基板83を介してメイン制御基板63に送信される。また、中継基板83には、押しボタン式の設定変更ボタン56(本発明の「押しボタン」に相当)が実装されている。
【0026】
なお、メイン制御基板63およびサブ制御基板73は、外部から不正にアクセスすることができないように、基板ケース内に厳重に封印された状態で筐体3の内部に設置されている。また、基板ケースには、不正に解放されたことを確実に視認することができるように、種々の対策が講じられている。また、中継基板83も、基板ケース84に収納された状態で筐体3の内部に設置される。また、この実施形態では、メイン制御基板63およびサブ制御基板73は、それぞれ基板ケースに収納された状態で、筐体3の背板の上部に固定されているのに対して、中継基板83は前面扉5の裏側であって、操作板7と略同じ高さ位置に固定されている。
【0027】
なお、メイン制御基板63を収納する基板ケースおよびサブ制御基板73を収納する基板ケースは、例えば、制御基板63,73を固定するケース体と、ケース体の開放部を閉塞する蓋体とで構成され、これらがかしめ構造などにより封印されている。また、中継基板83を収納する基板ケース84も、メイン制御基板63、サブ制御基板73を収納する基板ケースと同様の構造を有していてもよい。また、基板ケース84は、中継基板83の実装面830を覆うが裏面840は覆わないものであってもよい。この場合は、例えば、中継基板83の裏面840を筐体3の内壁面や前面扉5の裏側の面に対向するように配置した状態で、中継基板83をネジ止め等により筐体3または前面扉5に固定する。そして、基板ケース84が、筐体3の内壁面または前面扉5の裏側の面にネジ止めで固定されることで、筐体3の内壁面または前面扉5の裏側の面と、基板ケースとで中継基板83を密封しているものなど、実装面は基板ケースで覆われているが、実装面以外は基板ケース以外で覆われ、結果として制御基板が密封されている構造が考えられる。
【0028】
また、図2に示すように、メイン制御基板63のRWM65は、メインCPU61内部の記憶容量であり、スロットマシン1の遊技状態などの遊技に関するデータを一時的に記憶するものであって、役抽選結果や、出玉率を決める設定値などを記憶する。また、メイン制御基板63のROM67は、メインCPU61内部の記憶容量であり、例えば、役抽選の当否を決定するために用いられる役抽選テーブルや、役抽選結果と各ストップスイッチ21L,21M,21Rの操作タイミングに応じて、回転しているリール13L,13M,13Rの停止位置を決定するための停止テーブルなどを含むスロットマシン1用のプログラム(遊技機用プログラム)を格納する。
【0029】
メイン制御基板63のメインCPU61は、タイマ割込などの割込機能を有し、ROM67に記憶された遊技機用プログラムを実行することにより、遊技の進行に関する処理を行う。このメインCPU61は、役抽選結果に関するデータ、各ストップスイッチ21L,21M,21R、スタートスイッチ19等の遊技者により操作される操作器具の操作に関するデータなどの種々のデータを、所定のコマンド形式でサブ制御基板73(サブCPU71)に送信する。
【0030】
サブ制御基板73のメモリ75は、各種データを一時的に記憶するRAM部と、演出用の各種プログラムなどを記憶するROM部とを備えている。また、サブ制御基板73のサブCPU71は、タイマ割込などの割込機能を有し、サブCPU71は、メインCPU61から送信されるスロットマシン1に関する各種のデータ(役抽選結果、各ストップスイッチ21L,21M,21R、スタートスイッチ19等の操作器具が操作されたか、などに関するデータ)に基づいてメモリ75に格納されたプログラムを実行し、遊技者に対する遊技に関連する演出の内容を決定する。また、サブ制御基板73のサブCPU71は、決定された演出の内容に基づいて、サブ制御基板73が有するI/Oポートを介して、液晶表示器27やスピーカ31L,31Rなどの演出機器の制御を行う。
【0031】
(遊技の概略)
ここで、スロットマシン1において実行される遊技の概略について説明する。
【0032】
スロットマシン1は、3枚のメダルの投入により1回のゲーム(遊技)が行われるように構成され、投入センサ53、ベットスイッチ15または最大ベットスイッチ17により3枚のメダルのスロットマシン1への投入が検出されると、表示窓11の中央(中段)の水平な入賞ライン(センターライン)が有効となる。ここでスタートスイッチ19が操作されると、乱数を使用した抽選処理により、予め設定された役抽選結果のいずれかが役抽選手段による抽選処理により選択される。また、左・中・右リール13L,13M,13Rの全ての回転が開始すると、表示窓11に表示される各リール13L,13M,13Rの図柄の判別が各リール13L,13M,13Rの回転角に基づいて開始される。
【0033】
その後、左・中・右リール13L,13M,13Rが加速して、すべてのストップスイッチ21L,21M,21Rの操作が有効となり、すべてのストップスイッチ21L,21M,21Rの操作が有効となった後、左ストップスイッチ21Lの操作が検出されると左リール13Lが停止され、中ストップスイッチ21Mの操作が検出されると中リール13Mが停止され、右ストップスイッチ21Rの操作が検出されると右リール13Rが停止される。このように、各ストップスイッチ21L,21M,21Rの操作により、各ストップスイッチ21L,21M,21Rに対応する左・中・右リール13L,13M,13Rの回転が停止される。
【0034】
3個すべての左・中・右ストップスイッチ21L,21M,21Rのすべてが操作されると、左・中・右リール13L,13M,13Rの回転が停止される。このとき、所定の図柄が有効となった表示窓11の中段の入賞ライン上の所定の位置に停止すると、すなわち、各リール13L,13M,13Rの図柄が役への入賞に係る図柄組合せで表示窓11に表示されると入賞となり、入賞態様に応じた枚数のメダルが、クレジットされるか、メダル払出口39から払い出される。なお、メダルの払い出しに代えて、あるいはメダルの払い出しとともに、遊技者に対して所定の利益(特典)が付与されることもある。この所定の利益としては、例えば、ボーナス役の入賞によるボーナス遊技状態への移行や再遊技役の入賞による新たなメダルを投入することなく当該入賞遊技と同じ賭数で次遊技を行うために自動的に設定される賭数および遊技状態の移行等が挙げられる。
【0035】
ベットスイッチ15、最大ベットスイッチ17、スタートスイッチ19、投入センサ53、各ストップスイッチ21L,21M,21Rは、いずれもメイン制御基板63の設置位置よりも中継基板83の設置位置に近い位置(例えば、いずれも中継基板83と同じ前面扉5の裏側)に配設されている。そして、これらのセンサやスイッチからの信号は、当該センサ(またはスイッチ)と中継基板83(コネクタ83b)とを繋ぐ配線、中継基板83の内部の配線(例えば、配線パターンP2)、中継基板83(コネクタ83a)とメイン制御基板63とを繋ぐ配線を介して、メイン制御基板63に送信される。また、クレジット表示器45およびペイアウト表示器46もメイン制御基板63の設置位置よりも中継基板83の設置位置に近い位置(例えば、いずれも中継基板83と同じ前面扉5の裏側)に配設されている。そして、メイン制御基板63からの信号は、メイン制御基板63と中継基板83(コネクタ83a)とを繋ぐ配線、中継基板83の内部の配線、中継基板83(コネクタ83b)とクレジット表示器45またはペイアウト表示器46とを繋ぐ配線を介して、クレジット表示器45またはペイアウト表示器46に送信される。
【0036】
中継基板83は、図3に示すように、複数のコネクタ83a,83bと、設定変更ボタン56と、7セグメントLED83cとが実装されている。この実施形態では、各コネクタ83a,83bは、いずれもコネクタヘッダーであり、コネクタ83a(以下、第1コネクタ83aという場合もある。)が、中継基板83とメイン制御基板63とを接続する配線群が配置されたコネクタソケットと嵌合する。
【0037】
一方、各コネクタ83bは、例えば、ベットスイッチ15に接続された配線と最大ベットスイッチ17に接続された配線とがまとめられたコネクタソケットが嵌合するものや、左ストップスイッチ21Lに接続された配線、中ストップスイッチ21Mに接続された配線、右ストップスイッチ21Rに接続された配線がまとめられたコネクタソケットが嵌合するものや、電源系の配線がまとめられたコネクタソケットが嵌合するものや、投入センサ53に接続された配線とスタートスイッチ19に接続された配線とがまとめられたコネクタソケットが嵌合するものや、クレジット表示器45に接続された配線(例えば、制御信号用と電源用)がまとめられたコネクタソケットが嵌合するものや、ペイアウト表示器46に接続された配線(例えば制御信号用と電源用)がまとめられたコネクタソケットが嵌合するものがある。以下、各コネクタ83bを第2コネクタ83bという場合もある。
【0038】
中継基板83は例えば、ガラスエポキシ樹脂で形成された多層基板であり、実装面830や、該実装面830と反対側の裏面840、内層などに配線パターンが形成される。また、異なる層に形成された配線パターンは、スルーホール導体やビア導体などの層間接続導体により接続される。
【0039】
各スイッチやセンサからの信号が入力される第2コネクタ83bのピンと、第1コネクタ83aの所定のピンとが中継基板83に形成された配線パターン(例えば、配線パターンP2:本発明の「信号配線」に相当)により接続される。これにより、投入センサ53の検出信号、各ストップスイッチ21L,21M,21Rが押下された旨を示す信号、ベットスイッチ15が押下された旨を示す信号、最大ベットスイッチ17が押下された旨を示す信号、スタートスイッチ19が操作された旨を示す信号、設定変更ボタン56が操作された旨を示す信号が、スイッチまたはセンサと中継基板83とを繋ぐ配線(コネクタ83b+ハーネス)、中継基板83に形成された配線パターン、第1コネクタ83aとメイン制御基板63のコネクタとを繋ぐ配線(コネクタ83a+ハーネス)とからなる伝送路を通ってメイン制御基板63に送信される。
【0040】
また、メイン制御基板63からの信号(クレジット表示器45への制御信号)が入力される第1コネクタ83aのピンと、クレジット表示器45に繋がる第2コネクタ83bのピンとが中継基板83に形成された配線パターン(本発明の「信号配線」に相当)により接続される。これにより、メイン制御基板63からのクレジット表示器45用の制御信号が、クレジット表示器45と中継基板83とを繋ぐ配線(コネクタ83b+ハーネス)、中継基板83に形成された配線パターン、第1コネクタ83aとメイン制御基板63のコネクタとを繋ぐ配線(コネクタ83a+ハーネス)とからなる伝送路を通ってクレジット表示器45に送信される。
【0041】
また、メイン制御基板63からの信号(ペイアウト表示器46への制御信号)が入力される第1コネクタ83aのピンと、ペイアウト表示器46に繋がる第2コネクタ83bのピンとが中継基板83に形成された配線パターン(本発明の「信号配線」に相当)により接続される。これにより、メイン制御基板63からのペイアウト表示器46用の制御信号が、ペイアウト表示器46と中継基板83とを繋ぐ配線(コネクタ83b+ハーネス)、中継基板83に形成された配線パターン、第1コネクタ83aとメイン制御基板63のコネクタとを繋ぐ配線(コネクタ83a+ハーネス)とからなる伝送路を通ってペイアウト表示器46に送信される。
【0042】
また、設定変更ボタン56も、中継基板83に形成された配線パターン(配線パターンP1)により第1コネクタ83aの所定のピンに接続されており、当該設定変更ボタン56からの信号も第1コネクタ83aとメイン制御基板63のコネクタとを繋ぐ配線とからなる伝送路を通ってメイン制御基板63に送信される。
【0043】
(設定変更)
スロットマシン1では、出玉率(総払出枚数÷総投入枚数×100[%])が異なる複数の設定値(例えば、設定1〜設定6)が設けられており、遊技管理者の設定変更操作により、所望の出玉率が設定できるようになっている。例えば、設定値ごとに、小役の当選確率などが異なる役抽選テーブルが設けられ、設定値に応じた役抽選テーブルにより役抽選が行われる。
【0044】
ここで、設定値を変更するための設定変更操作の一例について説明する。例えば、スロットマシン1の電源が投入される前に設定変更キーを鍵穴に差し込み、設定変更キーを時計回りに約60°回転させると、設定変更キースイッチ52(本発明の「モード変更操作手段」に相当)がON状態となる。この状態で、電源を投入すると、遊技の進行が不可能であって、設定変更が可能な設定変更モードに移行し設定変更処理が開始される。すなわち、設定変更モードへの移行は、遊技管理者のみ操作できるスイッチ(設定変更キースイッチ52、電源スイッチ50)の操作が必要となる。
【0045】
設定変更モードで、設定変更ボタン56(リセットスイッチ)を1回押すと、電源投入前に設定された設定値から1つ上位の設定値に仮設定される(例えば、設定3から設定4に仮設定)。仮設定値は、メインCPU61のROM67に設定された仮設定値記憶領域に記憶される。その後は、設定変更ボタン56を押す度に1つ上位の設定値に仮設定される。このとき、設定変更ボタン56を押す度に仮設定値記憶領域に記憶されている仮設定値が新たな値に書き換えられる。
【0046】
但し、仮設定値が6の場合に設定変更ボタン56を押すと、設定値が1に戻って仮設定される。そして、最後に、スタートスイッチ19のON操作により設定値が確定し、そのときの仮設定値がスロットマシン1の設定値になる。このとき、メイン制御基板63のRWM65の設定値記憶領域の記憶内容が変更後の設定値に書き換えられる。なお、設定変更モードにおいて、仮設定値が中継基板83に実装された7セグメントLED83cに表示されることで、設定した仮設定値を確認できるようになっている。
【0047】
設定変更後は、設定変更キーを鍵穴に差し込んだ状態で、反時計回りに約60°回転させると、設定変更キースイッチ52をOFF状態となる。これにより設定変更モードから遊技を行うことが可能な通常モードに切り替わる。
【0048】
なお、設定変更キースイッチ52は、筐体3の内部に配設された操作ボックス49に配置されているため、前面扉5を開けなければ操作できない。したがって、設定変更は遊技管理者のみが行えるようになっている。一方、電源スイッチ50がONの状態で設定変更キースイッチ52をON状態にした場合は、そのときの設定値が7セグメントLED83cに表示され、設定値の確認ができるようになっている。なお、設定変更を行うためには、設定変更キースイッチ52と設定変更ボタン56の両方の操作が必要となるが、設定変更キースイッチ52は操作ボックス49に配設され、設定変更ボタン56は操作ボックス49とは異なる中継基板83に配設される。つまり、これらのスイッチ52やボタン56は、物理的に離れて配置されているため、設定変更に対するセキュリティ性が担保されている。
【0049】
(エラー処理)
遊技の進行に支障をきたすような事象(エラー)が発生した場合は、報知音によりその旨が報知される。エラーの中には、遊技の中断を要するエラーと、遊技の進行な可能なエラーとがある。各種エラー内容は、ペイアウト表示器46の2つの7セグメントLEDを用いて報知される。例えば、メダル投入エラーは、メダルが投入センサ53を異常通過した状態であり、エラーコードとしてE1が設定されている。払出メダルエラー1は、一定時間以上継続して払出センサ54のONを検出した状態であり、エラーコードとしてE2が設定されている。払出メダルエラー2は、メダルの払出時以外のときに払出センサ54のONを検出した状態であり、エラーコードとしてE3が設定されている。メダル切れエラーは、ホッパーモータ57を動作させてもメダルが払出センサ54を通過しない状態であり、エラーコードとしてE4が設定されている。その他、メイン制御基板63のRWM65に異常が発生している状態であるRWMエラー、リール13L,13M,13Rの回転等に異常が発生している状態であるリールエラー、ホッパーユニット43の補助タンクがメダルで満杯になっている状態であるオーバーフローエラーなどがあり、それぞれ固有のエラーコードが設定されている。
【0050】
そして、エラー発生時には、ペイアウト表示器46の2つの7セグメントLEDにエラーコードが表示されることで、エラー内容が報知される。エラー事象を取り除いた後は、設定変更ボタン56の押下により通常の遊技に復帰する。
【0051】
上記したように、設定変更ボタン56は、設定変更用のスイッチと、エラーが発生した際のエラー解除のためのスイッチに兼用されることがある。ここで、メイン制御基板63のメインCPU61は、遊技の進行が不能な設定変更モードの場合と、遊技の進行が可能な通常モードの場合とで、設定変更ボタン56からの信号に対して異なる処理を実行する。
【0052】
メインCPU61は、設定モードでは、設定変更ボタン56からの信号を受信すると、RWM65に記憶されている仮設定値記憶領域の仮設定値を+1した仮設定値に書き換えるという処理を実行する。一方、通常モードでは、設定変更ボタン56からの信号を受信すると、エラーを解除するための処理を実行する。すなわち、ペイアウト表示器46に表示されているエラーコードの表示をデフォルトに戻す処理や、エラー警告音を停止すべくサブ制御基板73にエラー復帰を通知するコマンドを送信する処理、メダルの投入の受付禁止を解除する処理等を実行する。
【0053】
中継基板83は、基板ケース84に収納されているが、基板ケース84の各コネクタ83a,83bそれぞれに対応する位置には、それぞれ開口部(図示省略)が形成されている。また、基板ケース84の設定変更ボタン56に対応する位置にも、開口部84a(図3図4参照)が形成されている。ここで、対応する位置とは、中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときに、基板ケース84の、各コネクタ83a,83b、設定変更ボタン56それぞれに重なる部分である。
【0054】
各コネクタ83a,83bに対応する開口部は、対応する第1コネクタ83a(コネクタヘッダー)の外形と略同じ横長矩形状であって、当該対応する第1コネクタ83aの外形よりも若干大きく形成されている。そして、中継基板83が基板ケース84に収納された状態において、各コネクタ83a,83bはいずれも露出しており、中継基板83を基板ケース84から取り出さずに、コネクタソケットの着脱が可能となっている。
【0055】
また、図3および図4を示すように、この実施形態では、設定変更ボタン56は、中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときに、円形をなす円柱状に形成されている。また、基板ケース84の設定変更ボタン56に対応する開口部84a(図3の一点鎖線で形成された円)は、当該設定変更ボタン56の中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときの形成(円形)と同じ円形であり、設定変更ボタン56が成す円よりも、若干大きな円で形成されている。そして、中継基板83が基板ケース84に収納された状態において、設定変更ボタン56は、露出しており、中継基板83を基板ケース84から取り出さずに、押下が可能となっている。
【0056】
また、この実施形態では、押下される前の設定変更ボタン56は、図4に示すように、中継基板83の実装面830からの高さH1が、基板ケース84の当該実装面830からの高さH2よりも若干高く形成される。一方、設定変更ボタン56は、押下された状態では、実装面830からの高さH3が、基板ケース84の高さH2よりも低くなるように形成されている。そのため、設定変更ボタン56が押下されると、基板ケース84の開口部84aから、中継基板83に対するアクセスが容易となる。ここで、中継基板83の開口部84aに対応する領域(実装面830に対して垂直な方向から見たときに開口部84aと重なる領域)に、各スイッチやセンサからの信号を伝送する配線(例えば、配線パターンP2)の一部を形成すると、開口部84aと設定変更ボタン56との隙間に不正治具を挿入させることにより、当該配線に対して不正信号を送ることが可能となる。例えば、クレジット表示器45やペイアウト表示器46の表示を不正に変えたり、メダルセレクタ48からの信号が伝送する配線パターンから不正信号を送り、メダルが投入されていないのにもかかわらず、メイン制御基板63にメダルの投入を誤認させたりするなどの不正行為が行われるおそれがある。
【0057】
そこで、この実施形態では、中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときに、中継基板83における、設定変更ボタン56用の開口部84aと重なる領域を含む所定領域Aが、信号伝送用の配線パターンの形成禁止領域に設定されている。この実施形態では、所定領域Aは、実装面830に対して垂直な方向から見たときに、開口部84aと重なる領域(開口部84aと同じサイズ)に設定されている。なお、当該所定領域A(形成禁止領域)の範囲は、開口部84aよりも大きい範囲であれば適宜変更できる。
【0058】
特に、メイン制御基板63への信号を伝送する、ベットスイッチ15、最大ベットスイッチ17、スタートスイッチ19、投入センサ53、各ストップスイッチ21L,21M,21Rからの信号が入力される第2コネクタ83bの端子(ピン)それぞれと、これらに対応する第1コネクタ83aの所定の端子(ピン)とを接続する各配線パターンは、中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときに、いずれも開口部84aの内側領域を通らず、迂回して形成される。また、メイン制御基板63からの制御信号(クレジット表示器45、ペイアウト表示器46)を伝送する配線パターンも、中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときに、いずれも開口部84aの内側領域を通らず、迂回して形成される。なお、この実施形態では、これらの制御信号系の配線パターン(例えば配線パターンP2)だけでなく、配線パターンP1および電源系統の配線パターンを除く全ての配線パターンが、所定領域A(形成禁止領域)を避けて形成されている。
【0059】
例えば、図3に示すように、ベットスイッチ15、最大ベットスイッチ17、スタートスイッチ19、投入センサ53、各ストップスイッチ21L,21M,21Rからの信号の一つが入力される第2コネクタ83bの当該端子(ピン)と、当該信号をメイン制御基板63に送信するための第1コネクタ83aの所定の端子(ピン)とを接続する配線パターンP2は、中継基板83の実装面830に対して垂直な方向から見たときに、所定領域A(形成禁止領域)を交差する経路の方がより配線長を短くできる場合であっても、所定領域A(形成禁止領域)を迂回する経路で形成される。
【0060】
このとき、中継基板83が多層構造であり、配線パターンP2が複数の層に亘って形成されている場合は、実装面830、各内層、実装面830と反対側の裏面840のいずれに形成される部分も、所定領域A(形成禁止領域)に重ならないように形成される。
【0061】
ただし、設定変更ボタン56とこれに対応する第1コネクタ83aの端子とを接続する配線パターンP1、および、電源系統の配線パターンについては、当該所定領域A(形成禁止領域)と重なる領域に形成されていてもよい。つまり、設定変更ボタン56と、該設定変更ボタン56とメイン制御基板63に送信するための第1コネクタ83aの端子とを接続する配線パターンP1、7セグメントLED83cに電源を供給するための配線パターンなどは、一部または全部を所定領域A(形成禁止領域)に形成してもよい。
【0062】
なお、設定変更ボタン56とこれに対応する第1コネクタ83aの端子とを接続する配線パターンP1、配線パターンP2の全て(または一部)は、実装面830に対して垂直な方向から見たときに、7セグメントLED83cと重なる領域を避けて形成されるのが好ましい。さらに、7セグメントLED83cと重なる領域は、7セグメントLED83cに関する信号を扱う配線パターン以外の配線パターンを形成しないのがより好ましい。このようにすると、7セグメントLED83cの真下に不正ICを隠して、メイン制御基板63による制御に関わる信号に不正を働こうとしても、当該不正ICと、配線パターンとの接続箇所が視認可能となるため、発見が容易となる。
【0063】
したがって、上記した実施形態によれば、中継基板83には、投入センサ53の検出信号、各ストップスイッチ21L,21M,21Rが押下された旨を示す信号、ベットスイッチ15が押下された旨を示す信号、最大ベットスイッチ17が押下された旨を示す信号、スタートスイッチ19が操作された旨を示す信号、設定変更ボタン56が操作された旨を示す信号など、メイン制御基板63の遊技の進行に関わる信号が、入力される第2コネクタ83bと、メイン制御基板63にこれらの信号を送信するための第1コネクタ83aとが実装され、さらに、入力側の第2コネクタ83bの端子と、出力側の第1コネクタ83aの端子とが、中継基板83に形成された配線パターン(例えば、配線パターンP2)により接続される。また、中継基板83には、メイン制御基板63の遊技の進行に関わる他の信号である、設定変更を指示する信号やエラー解除信号を送信するための設定変更ボタン56が実装される。そして、当該信号を出力するための端子が第1コネクタ83aに設けられ、設定変更ボタン56と、当該端子とが中継基板83に形成された配線パターンにより接続される。
【0064】
ここで、実装面830に対して垂直な方向から見たときに、中継基板83の基板ケース84の開口部84aと重なる領域(所定領域A)には、設定変更ボタン56とこれに対応する第1コネクタ83aの端子とを接続する配線パターンを除き、メイン制御基板63による遊技の進行に関する信号が伝送される配線パターンが形成されない。このようにすると、設定変更ボタン56を押下することにより拡大した、設定変更ボタン56と開口部84aとの隙間から不正治具を進入させ、メイン制御基板63による遊技の進行に関する信号の伝送路に不正信号を送信するという不正行為を防止することができる。また、このような不正行為を防止するために、基板ケース84に不正防止用の内壁を設ける必要がないため、基板ケース84の製造コストの削減を図ることができる。
【0065】
また、当該不正行為を防止する方策として、例えば、設定変更ボタン56を中継基板83の端部に実装するなどして、中継基板83内において、設定変更ボタン56からの信号を伝送するための配線パターンを形成する領域と、その他の信号を伝送するための配線パターンを形成する領域とに分けることが考えられる。しかしながら、この場合は、中継基板83の実装部品等の配置の自由度が低下する。一方、この実施形態によれば、当該不正行為を防止するのに、設定変更ボタン56からの信号を伝送するための配線パターンを形成する領域と、その他の信号を伝送するための配線パターンを形成する領域とに分ける必要がないため、実装部品等の配置の自由度が向上する。
【0066】
また、メイン制御基板63による遊技の進行に関する信号が伝送される配線パターン(設定変更ボタン56の配線パターンを除く)は、実装面830に対して垂直な方向から見たときに、開口部84aと交差しないように迂回して設けられるため、これらの信号伝送用の配線パターンを容易に開口部84aと重なる領域(所定領域A)から避けて形成することができる。
【0067】
また、設定変更ボタン56からの信号伝送用の配線パターンは、開口部84aと重なる領域(所定領域A)に形成されるため、設定変更に関する不正行為が行われるおそれがある。しかしながら、この実施形態では、メインCPU61は、遊技管理者によって操作が可能な設定変更キースイッチ52をONに設定し、設定変更モードとなっている状態でのみ、設定変更ボタン56からの信号を設定変更指示信号として処理するため、設定変更ボタン56から送信される信号に対するセキュリティ性を向上させることができる。また、設定変更ボタン56からの送信信号のセキュリティ性を担保できることで、利便性を重視して設定変更ボタン56やこれに繋がる配線パターンP1を露出して設置することができる。
【0068】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、図5に示すように、上記した実施形態において、設定変更ボタン56の周囲に金属板85を配置してもよい。この場合、例えば、中継基板83に、矩形状の金属板の設定変更ボタン56の配置部分を円形状にくり抜いたものを金属板85として実装し、設定変更ボタン56の周囲に金属板85を配置する。金属板85は、例えば、実装面830上の接地された配線(例えば、グランド電極)と接続する。これにより、金属板85がアース板として機能する。なお、金属板85は、実装面830に対して垂直な方向から見たときに、開口部84aよりも広い範囲に形成するのが好ましい。また、金属板85は、全体が金属で形成されている必要はなく、例えば、上面に金属板が配置された樹脂ブロックを実装面830に実装し、実装面830上の接地された配線と、当該金属板とを導体により接続する構成であってもよい。
【0069】
このようにすると、設定変更ボタン56を押下したときに発生した静電気を金属板85により放電できるため、中継基板83の実装部品や配線パターンへのダメージを防止できる。また、不正治具が進入したときに、物理的な防御板として機能させることができる。さらに、例えば、針金等の不正治具を設定変更ボタン56の周囲に進入させて、不正信号を送信しようとしても、金属板85に接触すれば放電するため、この種の不正行為を確実に防止することができる。なお、金属板85から放電があった際、それが静電気へノイズによるものなのか、不正信号によるものなのかを判断する手段を設けてもよい。この場合、不正信号と判断した場合は、その旨を報知したり、遊技不能状態に制御したりして、それ以降の不正行為が行えないようにしてもよい。
【0070】
また、設定変更ボタン56と開口部84aとの隙間から不正治具を進入させた状態は、設定変更ボタン56が押下された状態になる。さらに、前面扉5が閉状態で設定変更ボタン56が押下された状態になる場合もある。そのため、例えば、設定変更ボタン56が押下されている状態が一定時間以上となっているか否かや、前面扉5が閉状態で設定変更ボタン56が押下されているか否かを判定する手段を設け、これらの状況が生じていると判定した場合は、それ以降の不正行為が行えないような制御をメイン制御基板63で行うようにしてもよい。また、メイン制御基板63は、設定変更ボタン56の押下信号と、その他の信号を同時に受信した場合など、通常では発生しない状態を検出した場合に不正行為が行われたと判定し、それ以降の不正行為が行えないようにしてもよい。
【0071】
また、この実施形態では、中継基板83に実装された設定変更ボタン56を例として説明したが、本発明は、例えば、メイン制御基板63やサブ制御基板73など、基板ケースに収納されたその他の基板等の押しボタンに広く適用することができる。
【0072】
また、この実施形態では、設定変更ボタン56が、実装面830に対して垂直な方向からみたときの形状が円形をなす、円柱状としたが、例えば、実装面830に対して垂直な方向からみたときの形状が矩形をなす角柱状とするなど、適宜変更可能である。
【0073】
また、図4に示すように、設定変更ボタン56の押下前の高さ(H1)は、基板ケース84の高さ位置(H2)よりも高くてもよいし、同じであってもよく(H1=H2)、あるいは、低くてもよい(H1<H2)。
【0074】
また、この実施形態では、メイン制御基板63による制御に関する信号を送信する押しボタンとして、設定変更ボタン56を例として説明したが、メイン制御基板63による制御に関する信号を送信する押しボタンであれば、これに限定しない。
【0075】
そして、遊技の進行に関する制御を担う制御装置と、該制御装置による制御に関する信号を扱う配線が形成された制御基板と、制御基板に実装された押しボタンと、制御基板を覆う基板ケースとを備えた遊技機に本発明を広く適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…スロットマシン(遊技機)、52…設定変更キースイッチ(モード変更操作手段)、56…設定変更ボタン(押しボタン)、83…中継基板(制御基板)、83a…第1コネクタ、83b…第2コネクタ、83c…7セグメントLED、84…基板ケース、84a…開口部、85…金属板、830…実装面、P2…配線パターン(信号配線)
図1
図2
図3
図4
図5