【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。なお、例中、%及び部はいずれも重量基準を意味する。
【0033】
(食用油脂Aの作製方法)
表1記載の脂肪酸組成の油脂を調整した。調整後、ナトリウムメチラートによりランダムエステル交換を行った。得られたエステル交換油を常法に従い精製して食用油脂Aを得た。食用油脂Aの分析値を表1に示す。なお、食用油脂Aの由来原料は、パーム油と菜種油であった。
【0034】
(食用油脂B)
食用油脂Bとして、精製ヒマワリ油を用いた。分析値を表1に示す。
【0035】
(食用油脂C)
食用油脂Cとして、精製パームオレインを用いた。分析値を表1に示す。
【0036】
(食用油脂D)
食用油脂Dとして、精製菜種油を用いた。分析値を表1に示す。
【0037】
(食用油脂E)
食用油脂Eとして、精製大豆油を用いた。分析値を表1に示す。
【0038】
(チョコレート配合中 植物油脂部の調整方法)
食用油脂A〜食用油脂Eを適宜配合して、各実施例および比較例におけるチョコレート配合中の植物油脂部を調整した。
【0039】
・上昇融点は日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.2.4.2(上昇融点)に規定の方法に準じて測定した。
・油脂の脂肪酸組成は日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.4.1.2メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)に規定の方法に準じて測定した。なお、食用油脂A〜食用油脂Eには、炭素数8〜10の脂肪酸は含まれていなかった。
【0040】
【表1】
【0041】
(評価方法)
下記方法に従い評価した。
(1) 乾き性評価
・ 被覆チョコレートの固化速度は、チョコレートを完全融解した後50℃に調整し、市販されているドーナツもしくはパンに被覆し、室温(20‐25℃)で固化するまでの時間を計測することで評価した。この時間を乾き時間という。
3点 : 全ての箇所で指にチョコレートが付着しなくなるまでの時間が10分以下
2点 : 〃10分以上15分以下
1点 : 〃15分以上
(2) 外観評価
・ (1)でコーティングしたチョコレート製品を20℃で1日保管後、表面状態を観察することで評価した。
3点 : 表面のツヤがよく、触れてもベタつかない。また汗かきもしていない。
2点 : 表面にツヤがない、もしくは若干汗かきをおこしている。
1点 : 触れるとベタつく。もしくは汗かきをおこしている。
(3) 食感評価
・ (1)でコーティングしたチョコレート製品を20℃で1日保管後、食することで評価した。
[口どけ]
3点 : 口どけがよく、後残りは感じられない。
2点 : 口どけがよく、後残りはほとんど感じられない。
1点 : 口どけが悪く、後残りが感じられる。
[剥がれ]
3点 : 喫食時にチョコレートがほとんど剥がれない。
2点 : 喫食時にチョコレートが若干剥がれる。
1点 : 喫食時にチョコレートが剥がれる。(従来製品レベル)
(4) 耐熱性評価
・ (1)でコーティングしたチョコレート製品を20℃で1日保管後、30℃の恒温器で1時間保存した後の表面のべたつきを評価した。
3点 : 表面に触れてもベタつかない。
2点 : 表面に触れてもほとんどベタつかないが、表面に若干油っぽさを感じる。
1点 : 表面に触れるとベタベタする。
(5) 総合評価
・評価点数を平均した点数を総合評価とした。また総合評価2.5点以上を合格とした。
(6) 硬さ測定
・50℃で溶解したチョコレート製品を容器に入れ、20℃で1日固化後FUDOHレオメーター(株式会社レオテック)で5mmプランジャーで測定を行った。
【0042】
(実施例1、2、3、4比較例1)
(油脂調製)
下記配合に従いそれぞれ植物油脂部分の調製を行った。ただし実施例4は実施例1と同配合で調製した。油脂配合、HPLC法によるトリグリセリド組成分析結果、トランス酸含量およびC12含量を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
(チョコレート試作)
次に下記配合に従い、常法によってチョコレートを試作した。
実施例1〜3と比較例1は配合する植物油脂部のみが異なる同一配合であり、実施例4はショ糖脂肪酸エステルの有無以外は実施例1と同一で試作を行った。
試作したチョコレートを上記評価方法に従いドーナツにコーティングし評価した。
実施例1、2はいずれも常温で速やかに固まり、良好な外観と口どけを有していた。また、喫食時の剥がれが従来製品と比較して低減されており、耐熱性も問題なかった。
SU2が30重量%を超え、UUUが10重量%未満である実施例3は常温で速やかに固まり、良好な外観・口どけ・耐熱性を有していたが、喫食時の剥がれが実施例1、2と比較してわずかに劣った。
SSS含量が15重量%を超える比較例1は常温で速やかに固まるが、外観・口どけ・剥がれ・耐熱性が実施例と比較して劣っていた。実施例4は実施例1と油脂組成が同一であるが、外観・口どけ・剥がれが実施例1と比較してやや劣った。チョコレート配合と評価結果を表3にまとめる。
【0045】
【表3】
【0046】
(実施例5、6、7、比較例2)
(油脂調製)
下記配合に従い、それぞれ植物油脂部分の調製を行った。油脂配合、HPLC法によるトリグリセリド組成分析結果、トランス酸含量およびC12含量を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
(チョコレート試作)
次に下記配合に従い、常法によってチョコレート試作を実施した。
実施例5、6、7と比較例2は配合する植物油脂部のみが異なる同一配合で試作を行った。
試作したチョコレートを上記評価方法に従いパンにコーティングし評価した。
SSS含量が6.0重量%以上である実施例5、6はいずれも常温で速やかに固まり、良好な外観と口どけを有していた。また、喫食時の剥がれが低減されており、耐熱性も問題なかった。
SSS含量が5.1重量%である実施例7は常温で速やかに固まり、良好な外観・口どけを有していたが、耐熱性が実施例5、6と比較してわずかに劣った。
SSS含量が3.3重量%である比較例2は常温で固まりが悪いことと耐熱性が低いことから、コーティング用途として不適であった。チョコレート配合と評価結果を表5にまとめる。
【0049】
【表5】
【0050】
(実施例8、9)
(油脂調製)
下記配合に従い、それぞれ植物油脂部分の調製を行った。油脂配合、HPLC法によるトリグリセリド組成分析結果、トランス酸含量およびC12含量を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
(チョコレート試作)
次に下記配合に従い、常法によってチョコレート試作を実施した。
実施例8と9は油脂組成のみが異なる同一配合で試作を行った。
試作したチョコレートを上記評価方法でドーナツにコーティングし評価した。
実施例8、9は、SU2が30重量 %以下、及びUUUが10重量%以上である。
OOOを5重量%以上含有する実施例8は常温で速やかに固まり、良好な外観と口どけを有していた。また、喫食時の剥がれが低減されており、耐熱性も問題なかった。
OOOを3.5重量%含有する実施例9は常温で速やかに固まり、良好な口どけを有していたが、外観が若干であるが汗かきをおこしており、耐熱性が実施例8と比較してわずかに劣った。チョコレート配合と評価結果を表7にまとめる。
【0053】
【表7】
【0054】
(実施例10、11、12)
(チョコレート試作)
下記配合に従い、常法によってチョコレート試作を実施した。
実施例10〜12は乳化剤の種類以外は実施例1と同一で試作を行った。試作したチョコレートを上記評価方法に従いドーナツにコーティングし評価した。
実施例10〜12は常温で速やかに固まり、良好な外観と口どけを有していた。また、喫食時の剥がれが実施例4と比較して低減されており、耐熱性も問題なかった。チョコレートの硬さを測定したところ、実施例1(ショ糖脂肪酸エステル使用)が最も柔らかく良好であった。チョコレート配合と評価結果を表8にまとめる。
【0055】
【表8】
【0056】
(被覆チョコレート用油脂組成物の調整例)
食用油脂Bを50重量部、パームステアリン(ヨウ素価31.6)を40重量部、およびパーム油を10重量部調合することで、エステル交換等の加工することなく、上昇融点が35℃以上の油脂としてパームステアリン(ヨウ素価31.6)、および室温で液状の油脂である食用油脂Bを含有する、本発明の被覆チョコレート用油脂組成物を得ることができる。パームステアリンの分析値を表9、被覆チョコレート用油脂組成物のHPLC法によるトリグリセリド組成分析結果、トランス酸含量およびC12含量を表10に示す。
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
・調整例の被覆チョコレート用油脂組成物は、下記(a)〜(d)を全て満たす。
(a)SSSが6〜15重量%
(b)S2U が7〜35重量%
(c)SU2+UUUが40〜70重量%、SU2が30重量 %以下、UUUが10重量%以上、およびOOOが5重量%以上
(d)SSS100重量部に対して、PPP+P2Stが70重量部以上