【実施例】
【0014】
[A]部品装着機の構成
実施例の部品装着機は、
図1に示す部品装着システムに組み込まれており、そのシステムは、システムベース10と、そのシステムベース10に並んで配置された2つの部品装着機12とを含んで構成される。その2つの部品装着機12は、互いに同じ構成を有しており、その1つ1つが、実施例の対基板作業機としての部品装着機である。
【0015】
部品装着機12は、ベース14と、そのベース14上に配設されたフレーム16とによって構成される本体を備えている。ベース14上の前後方向における中央部には、コンベア装置18が配設され、前方部には、それぞれが部品供給装置として機能する複数の部品フィーダ20が左右方向に並んで配設されている。また、フレーム16には、対基板作業装置としての部品装着装置22が支持されている。部品装着装置22は、部品保持デバイスである吸着ノズルを有する装着ヘッド24と、その装着ヘッド24を前後左右および上下に移動させるヘッド移動装置26とを含んで構成されている。
【0016】
コンベア装置18は、前後2レーンにおいて基板を左右に搬送する装置で、それぞれのレーンに対して、前後に対向するように立設されてそれぞれがコンベアベルト(図示を省略)を周回可能に支持する1対の支持板28と、その1対の支持板28の間に配設されて下方から基板を持ち上げるための昇降台30とを備えている。コンベアベルトによって、基板Sは左右方向に搬送され、部品装着作業に際し、設定された位置にまで搬送されてきた基板Sは、昇降台30が上昇させられることによって、1対の支持板28の各々の上端に係止された状態で固定される。つまり、コンベア装置18は、部品装着作業の際に基板Sを固定する基板固定装置として機能するものとされている。
【0017】
部品装着作業は、ヘッド移動装置26によって、装着ヘッド24が、部品フィーダ20とコンベア装置18によって固定された基板Sとの間を移動させられつつ行われる。詳しく言えば、装着ヘッド24は、部品フィーダ20から供給される部品を吸着ノズルにおいて保持し、その保持した部品をコンベア装置18によって固定された基板S上に載置するのである。部品装着作業におけるコンベア装置18,部品フィーダ20,部品装着装置22等の制御は、操作パネルが一体化された制御装置32によって行われる。
【0018】
後に詳しく説明するが、コンベア装置18と部品フィーダ20との間には、部品カメラ34が設けられ、装着ヘッド24に保持された部品はその部品カメラ34によって撮像され、撮像によって得られた画像に対する処理によって、部品の保持位置のズレ量が取得され、そのズレ量を考慮しつつ、基板Sへの部品の載置が行われる。一方、基板Sの表面を撮像する基板カメラ36が装着ヘッド24と併設され、ヘッド移動装置26によって装着ヘッド24と一体的に移動させられるようになっている。撮像装置としての基板カメラ36は、部品装着作業に際し、基板Sに設けられた基準マークを撮像し、その得られた画像の処理によって、固定された基板Sの位置のズレ量、つまり、固定位置のズレ量が取得され、そのズレ量を考慮しつつ、基板Sへの部品の載置が行われる。それらの画像処理,ズレ量の取得も、制御装置32によって行われる。
【0019】
[B]基板とそれに設けられた基準マーク
部品装着機12において部品装着作業が行われる基板は、例えば、
図2(a),(b)に示すようなものである。
図2に示す基板Sは、いわゆるマルチ基板と呼ばれるものであり、複数の子基板が集合したようなものである。言い換えれば、基板Sは、回路パターンが互いに同じとされた複数の部分領域が設けられたものである。具体的には、
図2(a)に示す基板Sには、縦2×横2のマトリクス状に4つの部分領域Aが設けられており、
図2(b)に示す基板Sには、縦6×横8のマトリクス状に48の部分領域Aが設けられている。
【0020】
先に説明したように、コンベア装置18によって固定された基板Sに、部品装着装置22によって、部品が載置されるのであるが、コンベア装置18によって固定された基板Sの位置、すなわち、固定位置は、コンベア装置18による搬送の際の停止精度,前後方向のクリアランス等の関係で、ばらつきが生じる。具体的には、前後方向位置においても左右方向位置においてもズレが生じ、また、回転方向位置(回転位相,方位)においてもズレが生じる。そのズレを考慮して部品装着作業を行う必要があるため、基板Sには、基準マークが設けられている。
【0021】
具体的には、
図2(a),(b)のいずれの基板Sにも、当該基板Sの右上の角,左下の角に1対の基準マークFM1が設けられており、部分領域Aごとに、当該部分領域Aの左上の角,右下の角に1対の基準マークFM2が設けられている。基準マークFM1は、基板Sの全体の位置を把握するためのものであり、全体基準マークと呼ぶことのできるものである。一方、基準マークFM2は、部分領域Aに載置される部品の基準となるマークであり、部分領域基準マークと呼ぶことのできるものである。部分領域基準マークFM2は、部分領域Aにおける部品の装着位置の精度を向上させるために設けられている。
【0022】
[C]基準マークの認識
基準マークの認識ための処理は、コンベア装置18によって基板が固定された後、部品がその基板に載置される前に行われる。詳しく言えば、
図3に示すフローチャートに示す基準マーク認識プログラムを、制御装置32が実行することによって行われる。
【0023】
上記プログラムに従った処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様である。)において、1対の全体基準マークFM1の一方が撮像される。基準マークの撮像は、具体的には、ヘッド移動装置26によって、基板カメラ36が基準マークの上方に移動させられて行われる。基板カメラ36の移動位置は、基準マークが存在すべき理論上の位置(以下、「マーク正規位置」と言う場合がある)が基板カメラ36の視野の中心に位置する位置である。全体基準マークFM1の場合は、つまり、基板が正規の位置(理論上の位置)に固定されたと仮定した場合においてその全体基準マークFM1が存在すべき位置が、マーク正規位置となり、その場合において基板カメラ36によって撮像される画像は、例えば、
図4に示すようなものとなる。
【0024】
次いで、S2において、S1において撮像された画像のデータに基づいて、全体基準マークFM1が特定され、その全体基準マークFM1のマーク正規位置からの左右方向(以下、「X方向」と言う場合がある)および前後方向(以下「Y方向」という場合がある)における位置X,Yとともに位置ズレ量ΔX,ΔYが取得されれる。ちなみに、
図4に示す場合について説明すれば、位置X,Yは、当該部品装着機12に対して設定されている基準位置を基準とした位置であり、また、位置ズレ量ΔX,ΔYは、図に示すようなものとなる。なお、基準マークの特定は、予め登録されているその基準マークの形状,大きさ等に基づいて、画像の中から、その基準マークに相当する形状,大きさの撮像対象を見つけることによって行われる。
【0025】
図4から解るように、基板には、基準マークだけでなく、配線パターンP(「ランド」と呼ぶこともできる)も設けられており、基準マーク以外の物も、撮像対象として撮像され得る。図では、配線パターンPのターミナルTが、形状,大きさとも、全体基準マークFM1に類似しており、そのターミナルTが、全体基準マークFM1として誤認識される可能性がある。そのこと等を考慮して、上記位置ズレ量ΔX,ΔYに対して公差TΔXΔX1,TΔY1が設定されており、続くS3において、それら位置ズレ量ΔX,ΔYが設定公差TΔX1,TΔY1のY1の範囲内にあるか否かが判断される。判断の結果、位置ズレ量ΔX,ΔYのいずれかが設定公差TΔX1,TΔY1の範囲内でない場合には、S4において、基準マークを誤認識した旨が報知され、当該部品装装着機12の作動が停止させられる。
【0026】
全体基準マークFM1の位置ズレ量ΔX,ΔYの両者が設定公差TΔX1,TΔY1の範囲内にある場合にには、S5の処理を経て、1対の全体基準マークFM1の他方について、S1〜S3の処理が行われる。1対の全体基準マークFM1の両方について、位置ズレ量ΔX,ΔYが設定公差TΔX1,TΔY1の範囲内にあにあると判断された場合には、S6の処理が行われる。
【0027】
S6では、1対の全体基準マークFM1の離間距離L(
図2参照)が、S2において取得されたそれぞれの位置X,Yに基づいて取得され、それとともに、その離間距離Lと正規の離間距離との差である離間距離差ΔLが、1対の全体基準マークFM1の相対位置に関するズレ量(相対位置ズレ量)として取得される。ここの離間距離差ΔLについても公差TΔL1が設定されており、続くS7において、離間距離差ΔLが設定公差TΔL1の範囲内にあるか否かが判断される。判断の結果、離間距離差ΔLが設定公差TΔL1の範囲内でない場合には、S4において、基準マークを誤認識した旨が報知され、当該部品装着機12の作動が停止させられる。離間距離差ΔLが設定公差TΔL1の範囲内にあると判断された場合には、S8の処理理が行われる。
【0028】
S8では、S2で取得された1対の全体基準マークFM1の位置X,Yに基づいて、その基板に対する基準座標が設定される。基準座標は、基板の固定位置のズレを考慮して設定された座標であり、S9以下の処理は、その基準座標に基づいて実行される。具体的には、例えば、部分領域基準マークFM2の上記マーク正規位置も、基準座標に従った位置となる。
【0029】
S10以下の処理は、部分領域基準マークFM2についての処理であり、S9では、複数の部分領域AのうちのS10以下の処理を行う1つの領域が、設定された順位に従って、未だS10以下の処理が行われていない領域の中から特定される。そして、その特定された部分領域Aについて、S10〜S15の処理が行われる。このS10〜S15の処理は、先に説明したS1〜S7の処理と同様の処理であり、簡単に言えば、1つの部分領域Aの上記基準座標に従った部分領域基準マークFM2の位置X,Y,位置ズレ量ΔX,ΔY,離間距離差ΔLが取得され、それら位置ズレ量ΔX,ΔYが設定公差TΔX2,TΔY2の範囲内にあるか否か,離間距離差ΔLが設定公差TΔL2の範囲内にあるか否かが判断され、範囲内にない場合には、基準マークを誤認識した旨が報知される。
【0030】
S16において、全ての部分領域Aについての処理が行われたか否かが判断され、全ての部分領域AについてS10〜15の処理が繰り返される。全ての基準マークの認識処理が良好に行われた場合に、取得された各部分領域Aにおける部分領域基準マークFM2の位置X,Yに基づいて、各部分領域Aに対する部品装着作業が実行される。
【0031】
上述した基準マークの認識のための処理においては、基準マークの位置ズレ量ΔX,ΔY,相対位置ズレ量である離間距離差ΔLに基づいて、それらに対する設定公差TΔX1,TΔY1,TΔX2,TΔY2,設定公差TΔL1,TLΔ2を利用して、認識されるべき基準マークが認識されたことを確認するための処理が行われている。具体的には、S3,S7,S12,S15が基準マークの確認処理であり、それら確認処理において利用されている設定公差TΔX1,TΔY1,TΔX2,TΔY2,設定公差TΔL1,TΔL2に関して言えば、本部品装着機12では、部分領域基準マークFM2の確認のための設定公差TΔX2,TΔY2,TΔL2が、全体基準マークFM1の確認のための設定公差TΔX1,TΔY1,TΔL1よりも小さくされている。そのことによって、本部品装着機12においては、上記確認のための処理が、前述したように、的確に行われることになる。
【0032】
なお、
図2から解るように、部分領域Aの数等に起因して、基板によって1対の部分領域基準マークFM2の離間距離Lが異なる。本部品装着機12では、先に説明したような理由から、1対の部分領域基準マークFM2の離間距離Lに応じて、設定公差TΔLが、離間距離Lが大きい程大きく、離間距離Lが小さいほど小さく設定されている。このことは、基準マークの確認処理をより的確なものとすることに貢献している。