特許第6837338号(P6837338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

特許6837338鋼製セグメントのリング継手構造及びその連結方法
<>
  • 特許6837338-鋼製セグメントのリング継手構造及びその連結方法 図000002
  • 特許6837338-鋼製セグメントのリング継手構造及びその連結方法 図000003
  • 特許6837338-鋼製セグメントのリング継手構造及びその連結方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837338
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】鋼製セグメントのリング継手構造及びその連結方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   E21D11/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-5727(P2017-5727)
(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-115443(P2018-115443A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
(72)【発明者】
【氏名】日高 直俊
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−336496(JP,A)
【文献】 特開平09−125883(JP,A)
【文献】 特開平09−287393(JP,A)
【文献】 特開2006−161284(JP,A)
【文献】 米国特許第04830536(US,A)
【文献】 特開2006−291491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁体を構築する鋼製セグメントをトンネル軸方向に連結するための継手であって、
トンネル軸方向に位置する2つのセグメント部材のうち、一方のセグメント部材に設けられた雄継手と、
前記一方のセグメント部材と相対する面に位置する他方のセグメント部材に設けられた雌継手とにより構成され、
前記雄継手および前記雌継手は前記雄継手を前記雌継手に挿通することで嵌合される嵌合構造を有し、
前記雄継手は前記一方のセグメント部材の主桁に設けられた貫通孔に回転可能に挿通された雄部材と、
前記一方のセグメント部材の主桁の前記連結面とは反対側の面に固着されたナットと、を少なくとも具備し、
前記雄部材は前記ナットに螺合によって固定され
前記雄部材の後端部には増し締め可能に多角形状の凹部または凸部が形成されており、
前記雄部材の後部には前記ナットに密接するように緩み止めナットがさらに締め込まれた、
ことを特徴とする鋼製セグメントのリング継手。
【請求項2】
トンネル壁体を構築する鋼製セグメントをトンネル軸方向に連結するためのリング継手の連結方法であって、
トンネル軸方向に位置する2つのセグメント部材のうち、一方のセグメント部材の主桁に設けられた貫通孔に回転可能に挿通され前記連結面とは反対側の面に固着されたナットと該ナットに螺合によって固定された雄部材とを少なくとも具備した雄継手を、
前記一方のセグメント部材と相対する面に位置する他方のセグメント部材に設けられた雌継手に挿通することで嵌合した後、前記雄部材の後端部に形成された多角形状の凹部または凸部を回転することで増し締めを行い、前記ナットに密接するように緩み止めナットをさらに締め込む、ことを特徴とする鋼製セグメントのリング継手の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル壁体を構築する鋼製セグメントをトンネル軸方向に連結するためのリング継手及びその連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からシールドトンネル用のセグメントの多くは、ボルト結合により組み立てられている。しかし近年、セグメントのリング間を連結するリング継手は、挿入だけで嵌合可能なワンパス型の継手が開発され、その実績を増やしている。
【0003】
具体的に特許文献1には、トンネルの軸方向に位置する2つのセグメント部材のうち、一方のセグメント部材に設けられた雄継手と、前記一方のセグメント部材と相対する面に位置する他方のセグメント部材に設けられた雌継手とにより構成され、前記雄継手は、前記雌継手と嵌合する方向に突出した雄継手頭部、雄継手くびれ部、雄継手軸部を有し、前記雄継手軸部を挿通できる大きさの雌継手孔部を有し、該雌継手孔部の背面に板部材固定部、板部材変形部を有する板部材を配設し、前記雄継手が挿入されたときに、該板部材変形部が挿入方向に変形し、かつ前記雄継手頭部が該板部材変形部に挿通後、雄継手くびれ部に掛合するように前記板部材変形部が弾性復帰するリング継手が開示されている。
また特許文献2には、鋼製セグメントの一方のセグメントの端面板の内側に雄部材を設置するための筒を備え、他のセグメントの端面板の内側に前記雄部材を受け入れるための雌部材用の筒を摺動自在に備え、雄部材は、端面板の内側に取り付けたナット筒と、ナット筒にネジ込むネジ棒と、ネジ棒と同軸上に取り付けた割り筒と、割り筒の内部に挿入した円錐棒とより構成し、割り筒には、筒の軸方向に切断線を刻設してあり、円錐棒の割り筒内への進入によって切断線が末広状に拡大する構成であって、雌部材は、端面板の内側に取り付けた筒体であり、拡大した割り筒の外周が契合する寸法の内径を備えた受け筒によって構成したリング継手が開示されている。
さらに特許文献3には、締結すべき部材の各々に雄側継手と雌側継手を固定し、雄側継手は雄側ボルトで構成されており、雌側継手はケーシングと複数の雌側ボルトを有しており、ケーシングの雄側端部近傍における内周面は、そこに当接する雌側ボルトが雄側へ付勢されたならば半径方向内方へ移動する様に傾斜面が形成されており、雄側ボルトと雌側ボルトとが係合するように構成された結合装置において、ケーシングの雄側端部に係合する蓋状部材を備え、蓋状部材の半径方向内方には雄側ボルトが貫入される貫通孔が形成されており、且つ、外周面には、雄ネジが形成されており、ケーシングの雄側端部の内周面には雌ネジが形成され、蓋状部材の外周面に形成された雄ネジがケーシングの雄側端部内周面に形成された雌ネジに螺合するリング継手が開示されている。
【0004】
前記で記載した他、これまで簡易なものから複雑な構造に至るまで様々な形式のリング継手が開発され、実用化されているが、こうしたリング継手は、RCセグメントや中詰めコンクリート鋼製セグメント等への適用がほとんどである。
鋼製セグメントへの適用が少ない理由として、同程度の規模のシールドトンネルに用いられるコンクリート系セグメントと比べ、継手接合方向が主桁材の面外方向であるため変形しやすく、接合面に配置した止水シール材の反発力を封入するために継手箇所数が多くなる傾向にあり、高価なワンパス型継手ではなく、安価なボルト継手が多用されていると考えられる。
また鋼製セグメントは、鋼殻を形成する主桁、継手板、スキンプレート、縦リブといった各種部材同士の接合による溶接ひずみによってセグメント組み立て時にセグメント間に目違い、目開き等が生じたり、シールド掘削機の掘進のためのジャッキ反力や土水圧による荷重履歴によって変形が累積する。このため、変形がある程度落ち着いた段階で、ボルトを増し締めするのが通例である。
したがって、コンクリート系セグメントに比べて、変形しやすい特性を有する鋼製セグメントにワンパス型のリング継手を採用する場合は、セグメント組み立て時はある程度ルーズに、後から増し締めできることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−161284号公報
【特許文献2】特開2009−203684号公報
【特許文献3】特開2011−179209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セグメント組み立て時には継手による接合状態がある程度ルーズに、事後的に増し締め可能な鋼製セグメントのリング継手構造及びその連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼製セグメントのリング継手は、トンネル壁体を構築する鋼製セグメントをトンネル軸方向に連結するための継手であって、トンネル軸方向に位置する2つのセグメント部材のうち、一方のセグメント部材に設けられた雄継手と前記一方のセグメント部材と相対する面に位置する他方のセグメント部材に設けられた雌継手とにより構成され、前記雄継手および前記雌継手は前記雄継手を前記雌継手に挿通することで嵌合される嵌合構造を有し、前記雄継手は前記一方のセグメント部材の主桁に設けられた貫通孔に回転可能に挿通された雄部材と、前記一方のセグメント部材の主桁の前記連結面とは反対側の面に固着されたナットとを少なくとも具備し、前記雄部材は前記ナットに螺合によって固定され、前記雄部材の後端部には増し締め可能に多角形状の凹部または凸部が形成されており、前記雄部材の後部には前記ナットに密接するように緩み止めナットがさらに締め込まれた、ことを特徴とする。
また、本発明の鋼製セグメントのリング継手の連結方法は、トンネル壁体を構築する鋼製セグメントをトンネル軸方向に連結するためのリング継手の連結方法であって、トンネル軸方向に位置する2つのセグメント部材のうち、一方のセグメント部材の主桁に設けられた貫通孔に回転可能に挿通され前記連結面とは反対側の面に固着されたナットと該ナットに螺合によって固定された雄部材とを少なくとも具備した雄継手を、前記一方のセグメント部材と相対する面に位置する他方のセグメント部材に設けられた雌継手に挿通することで嵌合した後、前記雄部材の後端部に形成された多角形状の凹部または凸部を回転することで増し締めを行い、前記ナットに密接するように緩み止めナットをさらに締め込む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鋼製セグメントのリング継手及びその連結方法によれば、セグメント組み立て時には継手による接合状態がある程度ルーズに、事後的に増し締めすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明における鋼製セグメントのリング継手構造。
図2】本発明における鋼製セグメントのリング継手構造の雄部材の回転治具。
図3】(a)本発明における鋼製セグメントのリング継手構造のセグメント組み立て時、(b)本発明における鋼製セグメントのリング継手構造の増し締め時。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の鋼製セグメントのリング継手の実施形態を説明する。
図1は、前記の特許文献3に記載のリング継手構造を参考に、本発明における鋼製セグメントのリング継手の構造の一例を示したものである。
同図より、リング継手構造は、鋼製セグメント主桁Sの所定の位置にそれぞれ固定された雄継手1と雌継手2とからなる。
【0011】
本実施形態によれば、雄継手1は、少なくとも雄部材11と、雄部材11を螺合可能なナット12とからなる。
鋼製セグメント主桁Sには、雄部材11が挿通及び回転可能に設けられた孔S1の中心とナット12の中心が略一致するように、ナット12が鋼製セグメント主桁Sの接合面と反対側に溶接により固着されている。
セグメント組み立て時には、嵌合可能な所定の位置まで雄部材11をナット12に予め螺合しておく。
【0012】
本実施形態によれば、雌継手2は、雄部材11が挿通可能に開口部を有するケース21と、ケース21の開口部に沿ってリング状に束ねられた雌部材22,22・・・と、雄部材11が雌部材22,22・・・挿通時に受ける押圧力を支持するために、雌部材22,22・・・の端部が支持されるように配置されたプレート23と、プレート23が受けた押圧力をケース21に伝達するために弾性体24とから構成される。
雌部材22,22・・・、プレート23及び弾性体24は全てケース21内に収納されている。
鋼製セグメント主桁Sには、雄部材11が挿通及び回転可能に設けられた孔S2の中心とケース21の開口部の中心が略一致するように、ケース21が鋼製セグメント主桁Sの接合面と反対側に溶接により固着されている。
【0013】
図2は、本発明における鋼製セグメントのリング継手構造の雄部材の回転治具の一例を示したものである。
同図(a)より、雄部材11の後端部には、四角形の凹部111を設けており、凹部111へ挿入可能な形状の凸部を有するトルクレンチ(不図示)を用いることで、また同図(b)より、雄部材11の後端部に、四角形の凸部112を設けており、凸部112を挿入可能な形状の凹部を有するトルクレンチ(不図示)を用いることで、増し締めすることが可能となる。
【0014】
図3は、本発明における鋼製セグメントのリング継手構造の連結方法を示したものである。
同図(a)より、雄継手1を雌継手2に嵌合可能でかつ製作精度や施工の組み立て精度およびシール材の封入等を考慮した雄部材11の突出の程度を鋼製セグメントの組み立て時までにあらかじめ調整し、ナット12に雄部材11を螺合しておく。
セグメント組み立て時には、雌継手2に雄継手1を挿通することで互いの継手を嵌合し、仮の連結を行う。
【0015】
同図(b)より、シールド掘削機の掘進のためのジャッキ反力や土水圧による荷重履歴によって累積した変形がある程度落ち着いた段階で、ボルトを増し締めする。増し締めは、雄部材11の後端部をトルクレンチ等を用いて所定のトルク値になるまで増し締めする。増し締め後は、増し締めした雄部材11が緩まないように、不図示の別途ナットで締め込むことが望ましい。
【0016】
本発明の鋼製セグメントのリング継手及びその連結方法によれば、セグメント組み立て時には継手による接合状態がある程度ルーズに、事後的に増し締めすることが可能になる。
【0017】
以上、前記の特許文献3に記載のリング継手構造を参考に、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0018】
1 雄継手
11 雄部材
111 治具用凹部
112 治具用凸部
12 ナット
13 溶接
2 雌継手
21 ケース
22 雌部材
23 プレート
24 弾性体
25 溶接
S 鋼製セグメント主桁
S1 孔
図1
図2
図3