(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記構成単位(2A)と前記構成単位(4A)との合計の含有量が、前記構成単位(2)と前記構成単位(2A)と前記構成単位(4)と前記構成単位(4A)との合計に対して80〜100モル%である請求項2に記載のアリル基含有樹脂。
前記マレイミド化合物のマレイミド基と前記アリル基含有樹脂のアリル基とのモル比(マレイミド基/アリル基)が、0.5〜1.5である、請求項4に記載の樹脂ワニス。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪第一の態様のアリル基含有樹脂≫
本発明の第一の態様のアリル基含有樹脂(以下、「アリル基含有樹脂(i)」ともいう。)は、下記式(1)で表される構成単位(1)および下記式(2)で表される構成単位(2)のいずれか一方または両方と、下記式(3)で表される構成単位(3)および下記式(4)で表される構成単位(4)のうちの少なくとも前記構成単位(4)と、を有する。「構成単位」は、重合体を構成する単位を示す。
【0019】
【化5】
[式中、Arはベンゼン環またはナフタレン環を示し、Rは下記式(r1)または(r2)で表される基を示し、pおよびqはそれぞれ独立に0または1を示し、−*および−**はそれぞれ結合手を示す。−*は、他の構成単位に結合し、−(R)
p−**の−**は、pが0である場合は他の構成単位または水素原子に結合し、pが1である場合は他の構成単位に結合し、−(R)
q−**の−**は、qが0である場合は他の構成単位または水素原子に結合し、qが1である場合は他の構成単位に結合する。]
【0021】
アリル基含有樹脂(i)は、構成単位(1)〜(4)に由来して、複数のArを含む。アリル基含有樹脂(i)において複数のArは、1つのRを介して互いに結合しており、直接結合しない。
【0022】
したがって、構成単位(1)または(2)のRから伸びる結合手(−*)は、構成単位(3)または(4)のArから伸びる結合手に結合する。
構成単位(3)または(4)のArから伸びる結合手は、構成単位(1)もしくは(2)のRから伸びる結合手、pおよびqの少なくとも一方が1である別の構成単位(3)もしくは(4)のRから伸びる結合手、または水素原子に結合する。
pおよびqの少なくとも一方が1である構成単位(3)または(4)のRから伸びる結合手は、別の構成単位(3)もしくは(4)のArから伸びる結合手に結合する。
ここで、構成単位(3)または(4)において、Arから伸びる結合手とは、−*、pが0である(R)
p−**およびqが0である(R)
q−**のいずれかである。Rから伸びる結合手とは、pが1である(R)
p−**およびqが1である(R)
q−**のいずれかである。
【0023】
前記式(1)〜(4)中、Arは、ベンゼン環でもよくナフタレン環でもよく、ベンゼン環が好ましい。
Rは、前記式(r1)で表される基でもよく、前記式(r2)で表される基でもよい。
前記式(r1)中、ビフェニレン環における2つのメチレン基の結合位置はそれぞれ特に限定されないが、アリル基含有樹脂(i)を後述する製造方法(I)により製造する場合、式(r1)で表される基に対応する架橋剤(B)のモノマー(A)との反応性が良好である点から、4位および4’位であることが好ましい。
前記式(r2)中、ベンゼン環における2つのメチレン基の結合位置はそれぞれ特に限定されないが、アリル基含有樹脂(i)を後述する製造方法(I)により製造する場合、式(r1)で表される基に対応する架橋剤(B)のモノマー(A)との反応性が良好である点から、パラ位であることが好ましい。
アリル基含有樹脂(i)に含まれる複数のArはそれぞれ同じでもよく異なってもよい。アリル基含有樹脂(i)がRを複数含む場合、この複数のRはそれぞれ同じでもよく異なってもよい。
【0024】
構成単位(1)として具体的には、下記式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される構成単位が挙げられる。これらの中でも式(1−1)で表される構成単位が好ましい。
【0026】
式(1−1)で表される構成単位のベンゼン環における−R−*、アルデヒド基それぞれの結合位置は特に限定されない。
式(1−2)または(1−3)で表される構成単位のナフタレン環における−R−*、アルデヒド基それぞれの結合位置は特に限定されない。例えば式(1−2)中、ヒドロキシ基が結合した位置を1位とした場合、−R−*やアルデヒド基が結合するのは2〜8位のいずれでもよい。式(1−3)中、ヒドロキシ基が結合した位置を2位とした場合、−R−*やアルデヒド基が結合するのは1、3〜8位のいずれでもよい。
構成単位(1)としては、式(1−1)で表され、アルデヒド基の結合位置が、ヒドロキシ基に対してオルソ位である構成単位が好ましい。かかる構成単位であれば、アリル基含有樹脂(i)を後述する製造方法(I)により製造する場合に、式(1−1)で表される構成単位に対応するモノマー(A)の架橋剤(B)との反応性が良く、また、モノマー(A)を容易に回収リサイクルできる。
アリル基含有樹脂(i)に含まれる構成単位(1)は1種でも2種以上でもよい。
【0027】
構成単位(2)として具体的には、前記式(1−1)、(1−2)または(1−3)におけるヒドロキシ基(−OH)が−O−CH
2−CH=CH
2に変換された構造の構成単位が挙げられる。これらの中でも式(1−1)におけるヒドロキシ基(−OH)が−O−CH
2−CH=CH
2に変換された構造の構成単位が好ましい。アルデヒド基の好ましい結合位置は前記と同様である。
アリル基含有樹脂(i)に含まれる構成単位(2)は1種でも2種以上でもよい。
【0028】
構成単位(3)として具体的には、下記式(3−1)、(3−2)または(3−3)で表される構成単位が挙げられる。これらの中でも式(3−1)で表される構成単位が好ましい。
【0030】
式(3−1)で表される構成単位のベンゼン環における−*、−(R)
p−**、−(R)
q−**、アルデヒド基それぞれの結合位置は特に限定されない。
式(3−2)または(3−3)で表される構成単位のナフタレン環における−*、−(R)
p−**、−(R)
q−**、アルデヒド基それぞれの結合位置は特に限定されない。例えば式(3−2)中、ヒドロキシ基が結合した位置を1位とした場合、−R−*やアルデヒド基が結合するのは2〜8位のいずれでもよい。式(3−3)中、ヒドロキシ基が結合した位置を2位とした場合、−R−*やアルデヒド基が結合するのは1、3〜8位のいずれでもよい。
構成単位(3)としては、式(3−1)で表され、アルデヒド基の結合位置が、ヒドロキシ基に対してオルソ位である構成単位が好ましい。かかる構成単位であれば、アリル基含有樹脂(i)を後述する製造方法(I)により製造する場合に、式(3−1)で表される構成単位に対応するモノマー(A)の架橋剤(B)との反応性が良く、また、モノマー(A)を容易に回収リサイクルできる。
アリル基含有樹脂(i)に含まれる構成単位(3)は1種でも2種以上でもよい。
【0031】
構成単位(4)として具体的には、前記式(3−1)、(3−2)または(3−3)におけるヒドロキシ基(−OH)が−O−CH
2−CH=CH
2に変換された構造の構成単位が挙げられる。これらの中でも式(3−1)におけるヒドロキシ基(−OH)が−O−CH
2−CH=CH
2に変換された構造の構成単位が好ましい。アルデヒド基の好ましい結合位置は前記と同様である。
アリル基含有樹脂(i)に含まれる構成単位(4)は1種でも2種以上でもよい。
【0032】
アリル基含有樹脂(i)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(1)、構成単位(2)、構成単位(3)および構成単位(4)以外の構成単位をさらに有していてもよい。
【0033】
アリル基含有樹脂(i)において、構成単位(2)と構成単位(4)との合計の含有量は、構成単位(1)と構成単位(2)と構成単位(3)と構成単位(4)との合計(100モル%)に対して50〜100モル%であり、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%が特に好ましい。この割合は、アリル基含有樹脂(i)中のArの総モル数(100モル%)に対するアリル基のモル数の割合(モル%)に等しい。この割合が50モル%以上であれば、アリル基含有樹脂(i)をマレイミド硬化剤として用いた時に、硬化速度が良好である。また、得られる硬化物が、高ガラス転移温度、高熱分解温度、低誘電率、低誘電正接、高密着性を示す。
【0034】
アリル基含有樹脂(i)において、アリル基含有樹脂(i)を構成する重合体1分子あたりの構成単位(1)と構成単位(2)と構成単位(3)と構成単位(4)との合計数は、2〜62が好ましい。この合計数が上記上限値以下であれば、アリル基含有樹脂(i)の質量平均分子量(Mw)が低くなることで、アリル基含有樹脂(i)を容易に極性溶剤に溶解して樹脂ワニスとすることができる。
【0035】
アリル基含有樹脂(i)の質量平均分子量(Mw)は、300〜8000が好ましく、2000〜5000がより好ましい。Mwが上記上限値以下であると、アリル基含有樹脂(i)の溶液粘度が充分に低くなる。Mwが上記下限値以上であると、アリル基含有樹脂(i)の結晶性を抑えることができ、溶剤に溶解する際の溶解性が優れる。
アリル基含有樹脂(i)の分散度(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.20〜5.00が好ましい。
本発明において、MwおよびMnは、標準物質をポリスチレンとしたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0036】
<アリル基含有樹脂(i)の製造方法>
アリル基含有樹脂(i)の製造方法としては、例えば、以下の製造方法(I)が挙げられる。
製造方法(I):モノヒドロキシベンズアルデヒドおよびモノヒドロキシナフトアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(A)と、下記式(b1)で表される化合物および下記式(b2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)とを反応させて、前記構成単位(1)と前記構成単位(3)とを含むアルデヒド基含有樹脂を得る工程と、
前記アルデヒド基含有樹脂と、前記アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基に対して50モル%以上のハロゲン化アリルとを反応させてアリル基含有樹脂(i)を得る工程と、
を有するアリル基含有樹脂の製造方法。
【0037】
【化9】
[式中、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子である。]
【0038】
(モノマー(A))
モノヒドロキシベンズアルデヒドとしては、オルソヒドロキシベンズアルデヒド、パラヒドロキシベンズアルデヒド、メタヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
モノヒドロキシナフトアルデヒドとしては、1−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド、6−ヒドロキシ−2−ナフトアルデヒド等が挙げられる。
これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
モノマー(A)としては、架橋剤(B)との反応性が良い点、反応で残留したモノマーを容易に回収リサイクル可能である点から、オルソヒドロキシベンズアルデヒドが好ましい。
【0039】
(架橋剤(B))
前記式(b1)または(b2)中、Xのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
前記式(b1)で表される化合物としては、4,4’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、2,4’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル、2,2’−ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル、2,4’−ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル等(ただし、アルコキシ基の炭素数は1〜4である。)が挙げられる。
前記式(b2)で表される化合物としては、パラキシリレングリコールジアルキルエーテル、メタキシリレングリコールジアルキルエーテル、1,4−ビス(ハロゲン化メチル)ベンゼン等(ただし、アルキル基の炭素数は1〜4である。)が挙げられる。
これらは1種単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
架橋剤(B)としては、上記のなかでも、比較的安価であり、モノマー(A)との反応性が良好である点から、4,4’−ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル、パラキシリレングリコールジアルキルエーテル、1,4−ビス(ハロゲン化メチル)ベンゼンが好ましい。
【0040】
(モノマー(A)と架橋剤(B)との反応)
モノマー(A)と架橋剤(B)との反応では、複数のモノマー(A)のArが架橋剤(B)によって架橋され、前記構成単位(1)と前記構成単位(3)とを有するアルデヒド基含有樹脂が生成する。
【0041】
モノマー(A)と架橋剤(B)との反応において、モノマー(A)に対する架橋剤(B)のモル比(架橋剤(B)/モノマー(A))は、0.01〜0.99であることが好ましく、0.05〜0.60であることがより好ましい。モノマー(A)に対する架橋剤(B)の比率が低すぎると、歩留まりが低下するおそれがある。モノマー(A)に対する架橋剤(B)の比率が高すぎると、モノマー(A)と架橋剤(B)との反応に時間がかかり、生産性が低下するおそれがある。
【0042】
モノマー(A)と架橋剤(B)との反応は、酸性触媒の存在下で行ってもよい。前記反応を酸性触媒下で行うと、モノマー(A)と架橋剤(B)との反応速度が向上する。特に架橋剤(B)が有するXがアルコキシ基の場合は、酸性触媒の存在下で行うことが好ましい。
架橋剤(B)が有するXがハロゲン原子の場合は、酸性触媒を別途加えなくてもよい。Xがハロゲン原子の場合、反応させる際の熱によりハロゲン原子が脱離しHXとなる。このHXが酸性触媒として機能するため、酸性触媒を別途加えなくても反応速度が充分に速くなる。
【0043】
酸性触媒としては、反応が進行すれば特に制限はなく、例えば無機酸、有機酸、アルカリ性金属化合物等が挙げられる。具体例としては、塩酸、硫酸、リン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、3フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化亜鉛等が挙げられる。酸性触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
酸性触媒の使用量は、モノマー(A)に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.10〜1.00質量%がより好ましい。酸性触媒の使用量が少なすぎると、反応速度の向上効果が不充分になるおそれがあり、使用量が多すぎると、反応が急激に進み反応をコントロールすることが難しくなる。
【0045】
モノマー(A)と架橋剤(B)との反応温度は、10〜250℃が好ましく、60〜200℃がより好ましい。反応温度があまりに低いと反応は進まず、あまりに高すぎると反応をコントロールすることが難しくなり、目的のアルデヒド基含有樹脂を安定的に得ることが難しくなる。
反応の終了時、得られた反応生成物にアルカリを添加して酸性触媒を中和してもよい。
【0046】
モノマー(A)と架橋剤(B)との反応により得られた反応生成物は、構成単位(1)と構成単位(3)とを有するアルデヒド基含有樹脂を含む。
この反応生成物はそのまま、または必要に応じて、蒸留等による未反応の原料の除去、濃縮、精製(洗浄、カラムクロマトグラフィー、等)等の処理を行って、次の工程(アルデヒド基含有樹脂とハロゲン化アリルと反応させる工程)に供される。
【0047】
(ハロゲン化アリル)
ハロゲン化アリルとしては、例えば塩化アリル、臭化アリル、フッ化アリル、ヨウ化アリル等が挙げられる。コストの点から、塩化アリルが好ましい。
【0048】
(アルデヒド基含有樹脂とハロゲン化アリルとの反応)
モノマー(A)と架橋剤(B)との反応により生成したアルデヒド基含有樹脂と、ハロゲン化アリルとを反応させると、アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基(構成単位(1)、(3)のヒドロキシ基)が−O−CH
2−CH=CH
2に変換される。構成単位(1)のヒドロキシ基が−O−CH
2−CH=CH
2に変換されると構成単位(2)が生成し、構成単位(3)のヒドロキシ基が−O−CH
2−CH=CH
2に変換されると構成単位(4)が生成する。
【0049】
上記反応において、アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基(100モル%)に対して50モル%以上のハロゲン化アリルを反応させることで、アリル基含有樹脂(i)が生成する。アルデヒド基含有樹脂と反応させるハロゲン化アリルの量は、アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基に対して70モル%以上が好ましく、80モル%以上が特に好ましい。
アルデヒド基含有樹脂と反応させるハロゲン化アリルの量は、アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基に対して過剰(100モル%超)であってもよく、該量の上限は特に限定されないが、コスト、生産性の点では、200モル%以下が好ましく、120モル%以下が特に好ましい。
したがって、アルデヒド基含有樹脂とハロゲン化アリルとの反応において、アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基に対するハロゲン化アリルのモル比(ハロゲン化アリル/ヒドロキシ基)は、0.5以上であり、0.5〜2.0が好ましく、0.5〜1.2がより好ましく、0.7〜1.2がさらに好ましく、0.8〜1.2が特に好ましい。
【0050】
アルデヒド基含有樹脂とハロゲン化アリルとの反応は通常、触媒の存在下で行われる。
触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属類、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチルアミン等のアミン類、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウムジイソプロピルアミド、ケイ素−塩基性アミン、リチウムテトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらの中でも、比較的安価であり、副反応が起こりにくい点で、アルカリ金属類、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセンが好ましい。触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
触媒の使用量は、ハロゲン化アリルの使用モル量に対して0.8〜1.0倍モルが好ましい。触媒の使用量が少なすぎると、反応速度が遅く、使用量が多すぎると、余剰のアルカリを除去しなくてはならなくなり、生産性が低下する。
【0051】
アルデヒド基含有樹脂とハロゲン化アリルとの反応温度は、アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基とハロゲン化アリルとが反応する温度であれば特に限定されず、例えば10〜150℃であってよく、30〜130℃であってよい。
【0052】
アルデヒド基含有樹脂とハロゲン化アリルとの反応により得られた反応生成物は、アリル基含有樹脂(i)を含む。
反応後、必要に応じて、反応生成物に対し、蒸留等による未反応の原料の除去、濃縮、精製(洗浄、カラムクロマトグラフィー、等)等の処理を行ってもよい。
【0053】
<作用効果>
アリル基含有樹脂(i)は、アリル基を有するため、マレイミド化合物を硬化させるための硬化剤(マレイミド硬化剤)として用いることができる。マレイミド化合物の硬化は、加熱により行うことができる。
また、アリル基含有樹脂(i)を用いてマレイミド化合物を硬化させた硬化物は、マレイミド化合物を用いているために、高ガラス転移温度、高熱分解温度、低熱線膨張率を示す。また、アリル基含有樹脂(i)を用いているために、マレイミド化合物をアリルフェノール樹脂で硬化させた硬化物に比べて、低誘電率、低誘電正接であり、また、他部材(例えば銅張積層板に用いられる銅箔や、ガラスクロス等の繊維質基材等)との密着性に優れる。
【0054】
アリル基含有樹脂(i)は、アリル基とアルデヒド基とを有し、場合によってはヒドロキシ基も有する。
そのため、アリル基含有樹脂(i)を用いてマレイミド化合物を硬化させる際には、以下の(1)〜(4)の反応が生じて硬化していると考えられる。
(1)マレイミド基とアリル基との反応。
(2)マレイミド基同士の反応。
(3)アリル基同士の反応。
(4)マレイミド基とヒドロキシ基との反応。
樹脂中にアルデヒド基を含有していることが、密着性の向上に寄与していると考えられる。
【0055】
さらに、アリル基含有樹脂(i)は、一般的にマレイミド化合物を溶解させるために用いられているような溶剤に対する溶解性に優れる。したがって、アリル基含有樹脂(i)およびマレイミド化合物が共に溶剤に溶解した樹脂ワニスを得ることができる。
前記の溶剤としては、メチルエチルケトンのような極性のあるものが一般的である。
【0056】
なお、アリル基含有樹脂(i)は、マレイミド化合物と組み合わせなくても、上記(3)、(4)の反応により、単独で硬化させることができる。しかし、マレイミド化合物と組み合わせることで、単独で硬化させる場合に比べて、硬化温度を低くすることができ、ガラス転移温度を高めることができる。そのため、マレイミド化合物と組み合わせて硬化反応に供することが好適である。
【0057】
アリル基含有樹脂(i)の用途としては、特に制限はない。例えば公知の熱硬化性成形材料の用途と同様であってよく、例えば封止材料、フィルム材料、積層材料等が挙げられる。より具体的な用途の例としては、半導体封止材料、電子部品の封止用樹脂材料、電気絶縁材料、銅張り積層板用樹脂材料、ビルドアップ積層板材料、レジスト材料、液晶のカラーフィルター用樹脂材料、塗料、各種コーティング剤、接着剤、繊維強化プラスチック(FRP)材料等が挙げられる。
【0058】
≪第二の態様のアリル基含有樹脂≫
本発明の第二の態様のアリル基含有樹脂(以下、「アリル基含有樹脂(ii)」ともいう。)は、下記式(1)で表される構成単位(1)、下記式(2)で表される構成単位(2)および下記式(2A)で表される構成単位(2A)のうちの少なくとも1種と、下記式(3)で表される構成単位(3)、下記式(4)で表される構成単位(4)および下記式(4A)で表される構成単位(4A)のうちの少なくとも前記構成単位(4A)と、を有する。
【0060】
各式中、Ar、R、p、q、−*および−**はそれぞれ前記と同義であり、好ましい態様も同様である。
構成単位(1)、(2)、(3)、(4)はそれぞれ前記と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0061】
構成単位(2A)は、典型的には、構成単位(2)におけるアリル基が転位し、Arに結合して形成された構成単位である。
構成単位(2A)として具体的には、前記式(1−1)におけるベンゼン環に−CH
2−CH=CH
2が結合した構造の構成単位、前記式(1−2)または(1−3)におけるナフタレン環に−CH
2−CH=CH
2が結合した構造の構成単位等が挙げられる。各構成単位において、アルデヒド基の好ましい結合位置は前記と同様である。−CH
2−CH=CH
2の結合位置は、典型的には、ヒドロキシ基に対してオルソまたはパラ位である。
構成単位(2A)としては、上記の中でも、式(1−1)におけるベンゼン環に−CH
2−CH=CH
2が結合した構造の構成単位が好ましい。
アリル基含有樹脂(ii)に含まれる構成単位(2A)は1種でも2種以上でもよい。
【0062】
構成単位(4A)は、典型的には、構成単位(4)におけるアリル基が転位し、Arに結合して形成された構成単位である。
構成単位(4A)として具体的には、前記式(3−1)におけるベンゼン環に−CH
2−CH=CH
2が結合した構造の構成単位、前記式(3−2)または(3−3)におけるナフタレン環に−CH
2−CH=CH
2が結合した構造の構成単位等が挙げられる。各構成単位において、アルデヒド基の好ましい結合位置は前記と同様である。−CH
2−CH=CH
2の結合位置は、典型的には、ヒドロキシ基に対してオルソまたはパラ位である。
構成単位(4A)としては、上記の中でも、式(3−1)におけるベンゼン環に−CH
2−CH=CH
2が結合した構造の構成単位が好ましい。
アリル基含有樹脂(ii)に含まれる構成単位(4A)は1種でも2種以上でもよい。
【0063】
アリル基含有樹脂(ii)は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(1)、構成単位(2)、構成単位(2A)、構成単位(3)、構成単位(4)および構成単位(4A)以外の構成単位をさらに有していてもよい。
【0064】
アリル基含有樹脂(ii)において、構成単位(2)と構成単位(2A)と構成単位(4)と構成単位(4A)との合計の含有量は、構成単位(1)と構成単位(2)と構成単位(2A)と構成単位(3)と構成単位(4)と構成単位(4A)との合計(100モル%)に対して50〜100モル%であり、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%が特に好ましい。この割合は、アリル基含有樹脂(ii)中のArの総モル数(100モル%)に対するアリル基のモル数の割合(モル%)に等しい。この割合が50モル%以上であれば、アリル基含有樹脂(ii)をマレイミド硬化剤として用いた時に、硬化速度が良好である。また、得られる硬化物が、高ガラス転移温度、高熱分解温度、低誘電率、低誘電正接、高密着性を示す。
【0065】
アリル基含有樹脂(ii)中、構成単位(2A)と構成単位(4A)との合計の含有量は、構成単位(2)と構成単位(2A)と構成単位(4)と構成単位(4A)との合計に対して80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%が特に好ましい。
なお、アリル基含有樹脂(ii)は、典型的には、後述する製造方法(II)により製造される。つまりアリル基含有樹脂(i)の構成単位(2)、(4)のアリル基の一部または全部を転位させ、構成単位(2A)、構成単位(4A)に変換することにより製造される。この場合、上記の構成単位(2A)と構成単位(4A)との合計の含有量は、アリル基の転位率に等しい。
【0066】
アリル基含有樹脂(ii)において、アリル基含有樹脂(ii)を構成する重合体1分子あたりの構成単位(1)と構成単位(2)と構成単位(2A)と構成単位(3)と構成単位(4)と構成単位(4A)との合計数は、2〜62が好ましい。この合計数が上記上限値以下であれば、アリル基含有樹脂(ii)の質量平均分子量(Mw)が低くなることで、アリル基含有樹脂(ii)を容易に極性溶剤に溶解して樹脂ワニスとすることができる。
【0067】
アリル基含有樹脂(ii)の質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)それぞれの好ましい範囲は、アリル基含有樹脂(i)と同様である。
【0068】
<アリル基含有樹脂(ii)の製造方法>
アリル基含有樹脂(ii)の製造方法としては、例えば、以下の製造方法(II)が挙げられる。
製造方法(II):モノヒドロキシベンズアルデヒドおよびモノヒドロキシナフトアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(A)と、下記式(b1)で表される化合物および下記式(b2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)とを反応させて、前記構成単位(1)と前記構成単位(3)とを含むアルデヒド基含有樹脂を得る工程と、
前記アルデヒド基含有樹脂と、前記アルデヒド基含有樹脂のヒドロキシ基に対して50モル%以上のハロゲン化アリルとを反応させてアリル基含有樹脂(i)を得る工程と、
前記アリル基含有樹脂(i)のアリル基を転位反応させてアリル基含有樹脂(ii)を得る工程と、
を有するアリル基含有樹脂の製造方法。
【0069】
アルデヒド基含有樹脂を得る工程、アリル基含有樹脂(i)を得る工程はそれぞれ、前記の製造方法(I)と同様にして行うことができる。
【0070】
(アリル基含有樹脂(i)のアリル基の転位反応)
アリル基含有樹脂(i)のアリル基は、構成単位(2)、(4)におけるアリル基である。構成単位(2)のアリル基が転位すると構成単位(2A)が生成し、構成単位(4)のアリル基が転位すると構成単位(4A)が生成する。
アリル基含有樹脂(i)のアリル基の転位反応は、例えば、アリル基含有樹脂(i)を加熱することにより実施できる。アリル基含有樹脂(i)を加熱すると、Arに結合した−O−CH
2−CH=CH
2のアリル基がArのオルソまたはパラ位に転位する、いわゆるクライゼン転位反応が生じる。加熱条件は、例えば120〜200℃で1〜20時間とすることができる。このときの加熱条件によって、アリル基の転位率を調整できる。加熱は、N
2等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0071】
アリル基の転位反応により得られた反応生成物は、アリル基含有樹脂(ii)を含む。
反応後、必要に応じて、反応生成物に対し、水洗等の処理を行ってもよい。
【0072】
<作用効果>
アリル基含有樹脂(ii)は、アリル基含有樹脂(i)と同様に、アリル基を有するため、マレイミド硬化剤として用いることができる。
また、アリル基含有樹脂(ii)を用いてマレイミド化合物を硬化させた硬化物は、マレイミド化合物を用いているために、高ガラス転移温度、高熱分解温度、低熱線膨張率を示す。また、アリル基含有樹脂(ii)を用いているために、アリル基含有樹脂(i)を用いている場合と同様に、マレイミド化合物をアリルフェノール樹脂で硬化させた硬化物に比べて、低誘電率、低誘電正接であり、また、他部材(例えば銅張積層板に用いられる銅箔や、ガラスクロス等の繊維質基材等)との密着性に優れる。
アリル基含有樹脂(ii)を用いてマレイミド化合物を硬化させる際には、アリル基含有樹脂(i)の場合と同様に、前記(1)〜(4)の反応が生じて硬化していると考えられる。また、アリル基含有樹脂(i)の場合と同様に、樹脂中にアルデヒド基を含有していることが、密着性の向上、溶剤への溶解性の向上に寄与していると考えられる。
アリル基含有樹脂(ii)は、アリル基含有樹脂(i)と同様に、マレイミド化合物と組み合わせなくても単独で硬化させることができるが、マレイミド化合物と組み合わせて硬化反応に供することが好適である。
アリル基含有樹脂(ii)の用途としては、特に制限はなく、アリル基含有樹脂(i)と同様の用途に使用できる。
【0073】
≪樹脂ワニス≫
本発明の樹脂ワニス(以下、「本樹脂ワニス」ともいう。)は、マレイミド基を2以上有するマレイミド化合物と、本発明のアリル基含有樹脂と、溶剤とを含む。
ここで、本発明のアリル基含有樹脂とは、アリル基含有樹脂(i)およびアリル基含有樹脂(ii)のいずれか一方または両方を示す。
アリル基含有樹脂は、マレイミド硬化剤として機能する。「マレイミド硬化剤」とは、前記マレイミド化合物を硬化させるための硬化剤を意味する。
本樹脂ワニスにおいては、マレイミド化合物のマレイミド基の一部と、アリル基含有樹脂のアリル基またはヒドロキシ基の一部とが反応した状態になっていてもよい。
本樹脂ワニスは、硬化反応触媒をさらに含むことができる。
本樹脂ワニスは、前記マレイミド化合物、前記アリル基含有樹脂、溶剤および硬化反応触媒以外の他の成分をさらに含むことができる。
【0074】
<マレイミド化合物>
マレイミド化合物としては、マレイミド基を2以上有する化合物であれば特に限定されず、例えばビスマレイミド化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等が挙げられる。
ビスマレイミド化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(例えば大和化成工業株式会社品のBMI−1100)、アルキルビスマレイミド、ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールA ジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
ポリフェニルメタンマレイミドは、マレイミド基が置換した3以上のベンゼン環がメチレン基を介して結合した重合体であり、例えば大和化成工業株式会社品のBMI−2300が挙げられる。
マレイミド化合物としては、本発明のアリル基含有樹脂との相溶性が良い点、硬化物の耐熱性、密着性がより優れる点、比較的安価である点から、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミドが好ましい。
これらのマレイミド化合物は1種単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0075】
本樹脂ワニス中のマレイミド化合物の含有量は、マレイミド化合物のマレイミド基と本発明のアリル基含有樹脂のアリル基とのモル比(マレイミド基/アリル基)が、0.2〜1.4となる量が好ましい。マレイミド基/アリル基は、0.3〜1.2がより好ましく、0.4〜1.1がさらに好ましい。マレイミド基/アリル基が前記範囲の下限値以上であれば、本樹脂ワニスの硬化温度を低く、例えば200℃以下にすることができる。マレイミド基/アリル基が前記範囲の下限値以上であれば、本樹脂ワニスの硬化物が、より高ガラス転移温度、高熱分解温度、低線膨張係数、低誘電率、低誘電正接を示すものとなる。
【0076】
<溶剤>
溶剤としては、本樹脂ワニスに含まれる成分(マレイミド化合物、本発明のアリル基含有樹脂、必要に応じて硬化反応触媒等)を溶解するものであれば特に制限はない。
溶剤として典型的には、極性溶剤が用いられる。極性溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶剤はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。上記の中でも、ケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0077】
本樹脂ワニス中の溶剤の含有量は本樹脂ワニスの固形分濃度に応じて適宜設定される。
本樹脂ワニスの固形分濃度は、用途によっても異なるが、30〜80質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましい。
本樹脂ワニスの固形分濃度は、本樹脂ワニスの全質量に対する、本樹脂ワニスから溶剤を除いた質量の割合である。
【0078】
<硬化反応触媒>
硬化反応触媒(硬化促進剤)としては、例えば、アリル基とマレイミド基との反応を促進する作用を有するものを用いることができる。このような作用を有する硬化反応触媒としては、例えば、イミダゾール化合物、有機過酸化物等が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノメチル−2−メチル−イミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。有機過酸化物としては、例えばケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイドにおいて、アルキル基は、フェニル基等で置換されていてもよい。
上記のうち、イミダゾール類では、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましく、有機過酸化物類では、ジアルキルパーオキサイドのジクミルパーオキサイドがより好ましい。これらは高温で比較的安定であり、溶剤溶解性もよく、取り扱いも容易である。
【0079】
これらの硬化反応触媒はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
本樹脂ワニス中の硬化反応触媒の含有量は、マレイミド化合物に対し、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0080】
<他の成分>
他の成分としては、例えば、無機フィラー(例えばカーボンブラック、ガラスクロス、シリカ等)、ワックス、難燃剤、カップリング剤等、本発明のアリル基含有樹脂以外のマレイミド硬化剤(以下、他の硬化剤ともいう。)、充填材(フィラー)、離型剤、表面処理剤、着色剤、可撓性付与剤等が挙げられる。
他の硬化剤としては、マレイミド硬化剤として従来公知のものを用いることができ、例えばアリルノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型樹脂等が挙げられる。
本樹脂ワニス中の他の硬化剤の含有量は、本発明の効果の点では、本樹脂ワニスの固形分(100質量%)に対し、10質量%以下が好ましく、0質量%が特に好ましい。
本樹脂ワニスの固形分は、本樹脂ワニスから溶剤を除いた部分である。
【0081】
充填材(フィラー)としては、カーボンブラック、結晶性シリカ粉、溶融性シリカ粉、石英ガラス粉、タルク、ケイ酸カルシウム粉、ケイ酸ジルコニウム粉、アルミナ粉、炭酸カルシウム粉等が挙げられ、結晶性シリカ粉、溶融性シリカ粉が好ましい。
離型剤としては、例えばカルナバワックス等の各種ワックス類等が挙げられる。
表面処理剤としては、公知のシランカップリング剤等が挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。
可撓性付与剤としては、シリコーン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリルゴム等が挙げられる。
【0082】
<樹脂ワニスの製造方法>
本樹脂ワニスは、例えば、マレイミド化合物と本発明のアリル基含有樹脂と溶剤とを混合することにより製造できる。各成分の混合は、常法により行うことができる。
マレイミド化合物は、市販品を用いることができる。
本発明のアリル基含有樹脂は、前記の製造方法(I)又は(II)により製造できる。
マレイミド化合物と本発明のアリル基含有樹脂と溶剤とを混合する際に、または混合した後、必要に応じて、硬化反応触媒や他の成分をさらに混合してもよい。
マレイミド化合物と本発明のアリル基含有樹脂と溶剤との混合の後、マレイミド化合物とアリル基含有樹脂を前反応させてもよい。上記の混合によって得られたワニス状態の混合物について前反応を行うことで、結晶性が高いマレイミド化合物が樹脂ワニスから析出するのを抑制することができる。
前反応を行う際の反応温度は50〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましく、80〜120℃がさらに好ましい。反応温度があまりに低いと反応は進まず、あまりに高すぎると反応をコントロールすることが難しくなり、目的の本樹脂ワニスを安定的に得ることが難しくなる。
【0083】
本樹脂ワニスは、マレイミド化合物と本発明のアリル基含有樹脂とを含むため、加熱することによって硬化させ、硬化物とすることができる。
本樹脂ワニスを硬化させる際の加熱温度(硬化温度)は60〜250℃が好ましい。
硬化操作の一例としては、前記の好適な温度で30秒間以上1時間以下の前硬化を行い、溶剤を除去し、その後さらに、前記の好適な温度で1〜20時間の後硬化を行う方法が挙げられる。
【0084】
<作用効果>
本樹脂ワニスにあっては、マレイミド化合物を用いているために、本樹脂ワニスの硬化物が高ガラス転移温度、高熱分解温度、低熱線膨張率を示す。また、本樹脂ワニスの硬化物は、硬化剤として本発明のアリル基含有樹脂を用いているため、マレイミド化合物をアリルフェノール樹脂で硬化させた硬化物に比べて、他部材(例えば銅張積層板に用いられる銅箔や、ガラスクロス等の繊維質基材等)との密着性に優れ、低誘電率、低誘電正接である。
【0085】
本樹脂ワニスの用途としては、特に制限はない。例えば公知の熱硬化性成形材料の用途と同様であってよく、例えば封止材料、フィルム材料、積層材料等が挙げられる。より具体的な用途の例としては、半導体封止材料、電子部品の封止用樹脂材料、電気絶縁材料、銅張り積層板用樹脂材料、ビルドアップ積層板材料、レジスト材料、液晶のカラーフィルター用樹脂材料、塗料、各種コーティング剤、接着剤、繊維強化プラスチック(FRP)材料等が挙げられる。
本樹脂ワニスから得られる硬化物は、高ガラス転移温度、高熱分解温度、低熱膨張率、低誘電率、低誘電正接であり、耐熱性、絶縁性に優れる。また、他部材(例えば銅張積層板に用いられる銅箔や、ガラスクロス等の繊維質基材等)との密着性に優れる。そのため、本樹脂ワニスは、電子部品に用いられる積層板の製造用の材料として有用である。
【0086】
≪積層板の製造方法≫
本発明の積層板の製造方法では、本樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させ、本樹脂ワニスが含浸した繊維質基材を加熱加圧し、硬化させて積層板を得る。
【0087】
本発明の積層板の製造方法により製造される積層板は、繊維質基材と本樹脂ワニスの硬化物とを含む繊維強化樹脂層を備える。前記積層板が備える繊維強化樹脂層の数は1層でもよく2層以上でもよい。
前記積層板は、前記繊維強化樹脂層以外の他の層をさらに備えてもよい。他の層としては、例えば銅箔等の金属箔層が挙げられる。
【0088】
繊維質基材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ステンレス繊維等の無機繊維;綿、麻、紙等の天然繊維;ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の合成有機繊維;等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
繊維質基材の形状は特に限定されず、例えば短繊維、ヤーン、マット、シート等が挙げられる。
【0089】
本発明の積層板の製造方法の一実施形態として、本樹脂ワニスを繊維質基材に含浸させ、乾燥(溶剤を除去)してプリプレグを得て、必要に応じて前記プリプレグを複数枚積層し、必要に応じて前記プリプレグまたはその積層物の片面又は両面にさらに金属箔を積層し、加熱加圧して硬化させる方法が挙げられる。
【0090】
繊維質基材に含浸させる本樹脂ワニスの量としては、特に限定されない。例えば、本樹脂ワニスの固形分量が、繊維質基材(100質量%)に対して30〜50質量%程度とされる。
本樹脂ワニスが含浸した繊維質基材を加熱加圧する際の加熱温度は、前述の硬化温度が好ましい。加圧条件としては、2〜20kN/m
2が好ましい。
【0091】
<作用効果>
本発明の積層板の製造方法により得られる積層板は、繊維質基材と本樹脂ワニスの硬化物とを含む繊維強化樹脂層を備えており、かかる繊維強化樹脂層は、前記硬化物が高ガラス転移温度、高熱分解温度、低熱膨張率、低誘電率、低誘電正接であることから、耐熱性、絶縁性に優れる。また、金属箔層を備える場合の金属箔層と繊維強化樹脂層との間の密着性や、繊維強化樹脂層内での繊維質基材と本樹脂ワニスの硬化物との間の密着性に優れる。
【実施例】
【0092】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下の各例において「%」は、特に限定のない場合は「質量%」を示す。
以下の各例で用いた測定方法を以下に示す。
【0093】
[樹脂の質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)]
下記のGPC装置及びカラムを使用し、標準物質をポリスチレンとして測定した。
GPC装置:東ソー社製のHLC8120GPC。
カラム:TSKgel G3000H+G2000H+G2000H。
【0094】
[樹脂の軟化点]
JIS K 6910:1999に従って軟化点(℃)を測定した。
【0095】
[樹脂の溶融粘度]
150℃に設定した溶融粘度計(ブルックフィールド社製CAP2000 VISCOMETER)により、150℃における溶融粘度(P)を測定した。
【0096】
[硬化物のガラス転移温度]
得られた成形物(硬化物)を幅10.0mm×長さ5.5mm×厚さ1.5mmの大きさに加工し、測定試料とした。この測定試料について、粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製 DMA7100)を用いて2℃/分の昇温速度で30℃〜400℃の範囲でtanδを測定し、ガラス転移温度(℃)を求めた。硬化物のガラス転移温度は、300℃以上が好ましい。
【0097】
[硬化物の5%熱分解温度]
得られた成形物を微粉砕し、測定試料とした。この測定試料について、示差熱熱重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ社製 TG/DTA6300)により、エアー雰囲気下で10℃/分の昇温速度で30〜800℃の範囲で熱重量減量を測定し、5%熱分解温度(℃)を求めた。硬化物の5%熱分解温度は、365℃以上が好ましい。
【0098】
[硬化物の比誘電率、誘電正接]
得られた成形物を幅50.0mm×長さ50.0mm×厚さ1.5mmの大きさに加工し、測定試料とした。この測定試料について、空洞共振摂動法により周波数1GHzにおける比誘電率(ε
r)および誘電正接(tanδ)を求めた。硬化物の比誘電率は、4.00以下が好ましい。硬化物の誘電正接は、0.01以下が好ましい。
【0099】
[硬化物の線膨張係数]
得られた成形物を幅5.0mm×長さ5.0mm×厚さ1.5mmの大きさに加工し、測定試料とした。この測定試料について、熱機械分析装置(日立ハイテクサイエンス社製 TMA7100)を用いて2℃/分の昇温速度で30℃〜400℃の範囲で測定し、常温線膨張係数(ppm)を求めた。常温線膨張係数は、30℃での線膨張係数を示す。硬化物の常温線膨張係数は、50ppm以下が好ましい。
【0100】
[引張り接着強さ]
JIS K 6849:1994に準拠した方法にて、接着剤として熱硬化性成形材料を用い、被着材として幅10.0mm×長さ50.0mm×厚さ1.0mmの銅板を用いて、220℃で2時間の条件で硬化させたものについて、引張り接着強さ(N/mm
2)を測定した。
【0101】
<アルデヒド基含有樹脂の製造>
〔合成例1〕
(オルソヒドロキシベンズアルデヒドと4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニルの反応;モル比=0.40)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lの反応容器にオルソヒドロキシベンズアルデヒド850g(6.967モル)、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル674.5g(2.787モル)、パラトルエンスルホン酸8.5g(オルソヒドロキシベンズアルデヒドに対して1%)を仕込み、160℃まで昇温し、4時間反応を行った。反応で副生するメタノールは、系外へ除去した。反応終了後、中和、水洗を行い、未反応オルソヒドロキシベンズアルデヒドを除去し、アルデヒド含有ビフェニル樹脂を得た。得られた樹脂の軟化点は81℃、150℃における溶融粘度は1.2Pであった。ゲル浸透クロマトグラフ分析(以下、GPCと略記することもある。)による質量平均分子量(Mw)は815、分散度(Mw/Mn)は1.48であった。
【0102】
〔合成例2〕
(オルソヒドロキシベンズアルデヒドとパラキシレングリコールジメチルエーテルの反応;モル比=0.40)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた内容量1Lの反応容器にオルソヒドロキシベンズアルデヒド850g(6.967モル)、パラキシレングリコールジメチルエーテル462.6g(2.787モル)、パラトルエンスルホン酸8.5g(オルソヒドロキシベンズアルデヒドに対して1%)を仕込み、160℃まで昇温し、4時間反応を行った。反応で副生するメタノールは、系外へ除去した。反応終了後、中和、水洗を行い、未反応オルソヒドロキシベンズアルデヒドを除去し、アルデヒド含有キシリレン樹脂を得た。得られた樹脂の軟化点は80℃、150℃における溶融粘度は1.7Pであった。GPCによる質量平均分子量(Mw)は756、分散度(Mw/Mn)は1.44であった。
【0103】
〔実施例1〕
(アルデヒド基含有ビフェニル樹脂のアリルエーテル化;変性率約50モル%)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器に、合成例1で得たアルデヒド含有ビフェニル樹脂100.0g、ノルマルブタノール50.0g、ジアザビシクロウンデセン33.8gを仕込み50℃まで昇温して溶解した。次に、40℃まで温度を下げ、塩化アリル20.4gを発熱に注意しながら2時間かけて添加した。その後、1時間エージングし、110℃まで昇温した後、2時間エージングを行った。次に、メチルイソブチルケトン(MIBK)を100g添加し、反応で発生した塩を水洗で除去した。水洗後、使用したノルマルブタノール、MIBKを130℃で除去し、アリル基含有樹脂A(アリルエーテル化フェノールビフェニレン樹脂)を得た。
アリル基含有樹脂Aの軟化点は65.2℃、150℃における溶融粘度は1.8Pであった。ゲル浸透クロマトグラフ分析(以下、GPCと略記することもある。)による質量平均分子量(Mw)は1678、分散度(Mw/Mn)は1.81であった。核磁気共鳴分析(NMR)によるアリルエーテル化率は51%であった。
アリルエーテル化率は、樹脂中のフェノール性水酸基とアリルオキシ基との合計に対するアリルオキシ基の割合(モル%)を示す。アリルエーテル化率を変性率ともいう。
【0104】
(樹脂ワニスおよび成形物(硬化物)の製造)
上記アリル基含有樹脂Aの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−1100(4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、マレイミド当量179g/eq)の34.4g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.3gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスAを得た。マレイミド化合物のマレイミド基とアリル基含有樹脂のアリル基とのモル比(マレイミド基/アリル基)は1であった。
上記樹脂ワニスAをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Aを得た。樹脂分とは、成形物の総質量に対する樹脂の割合を示す。
【0105】
〔実施例2〕
(アルデヒド基含有ビフェニル樹脂のアリルエーテル化;変性率約70モル%)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器に、合成例1で得たアルデヒド含有ビフェニル樹脂100.0g、ノルマルブタノール50.0g、ジアザビシクロウンデセン47.3gを仕込み50℃まで昇温して溶解した。次に、40℃まで温度を下げ、塩化アリル28.6gを発熱に注意しながら2時間かけて添加した。その後、1時間エージングし、110℃まで昇温した後、2時間エージングを行った。次に、MIBKを100g添加し、反応で発生した塩を水洗で除去した。水洗後、使用したノルマルブタノール、MIBKを130℃で除去し、アリル基含有樹脂B(アリルエーテル化フェノールビフェニレン樹脂)を得た。
アリル基含有樹脂Bの軟化点は61.5℃、150℃における溶融粘度は1.2Pであった。GPCによる質量平均分子量(Mw)は1569、分散度(Mw/Mn)は1.76であった。NMRによるアリルエーテル化率は70%であった。
【0106】
(樹脂ワニスおよび成形物(硬化物)の製造)
上記アリル基含有樹脂Bの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−1100の48.2g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.5gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスBを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスBをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Bを得た。
【0107】
〔実施例3〕
(アルデヒド基含有ビフェニル樹脂のアリルエーテル化;変性率約100モル%)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器に、合成例1で得たアルデヒド含有ビフェニル樹脂100.0g、ノルマルブタノール50.0g、ジアザビシクロウンデセン60.8gを仕込み50℃まで昇温して溶解した。次に、40℃まで温度を下げ、塩化アリル36.7gを発熱に注意しながら2時間かけて添加した。その後、1時間エージングし110℃まで昇温した後、2時間エージングを行った。次に、MIBKを100g添加し、反応で発生した塩を水洗で除去した。水洗後、使用したノルマルブタノール、MIBKを130℃で除去し、アリル基含有樹脂C(アリルエーテル化フェノールビフェニレン樹脂)を得た。
アリル基含有樹脂Cの軟化点は58.9℃、150℃における溶融粘度は0.8Pであった。GPCによる質量平均分子量(Mw)は1480、分散度(Mw/Mn)は1.62であった。NMRによるアリルエーテル化率は98%であった。
【0108】
(樹脂ワニスおよび成形物(硬化物)の製造)
上記アリル基含有樹脂Cの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−1100の68.8g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.7gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスCを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスCをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Cを得た。
【0109】
別途、上記アリル基含有樹脂Cの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−2300(ポリフェニルメタンマレイミド、マレイミド当量186g/eq)の71.5g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.7gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスDを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスDをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Dを得た。
【0110】
〔実施例4〕
(アルデヒド基含有キシリレン樹脂のアリルエーテル化;変性率約70モル%)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器に、合成例2で得たアルデヒド含有キシリレン樹脂100.0g、ノルマルブタノール50.0g、ジアザビシクロウンデセン73.4gを仕込み50℃まで昇温して溶解した。次に、40℃まで温度を下げ、塩化アリル44.3gを発熱に注意しながら2時間かけて添加した。その後、1時間エージングし110℃まで昇温後、2時間エージングを行った。次に、MIBKを100g添加し、反応で発生した塩を水洗で除去した。水洗後、使用したノルマルブタノール、MIBKを130℃で除去し、アリル基含有樹脂D(アリルエーテル化フェノールキシリレン樹脂)を得た。
アリル基含有樹脂Dの軟化点は軟化点60.5℃、150℃における溶融粘度は1.1Pであった。GPCによる質量平均分子量(Mw)は1426、分散度(Mw/Mn)は1.73であった。NMRによるアリルエーテル化率は72%であった。
【0111】
(樹脂ワニスおよび成形物(硬化物)の製造)
上記アリル基含有樹脂Dの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−1100の66.1g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.7gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスEを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスEをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Eを得た。
【0112】
〔実施例5〕
(アルデヒド基含有ビフェニル樹脂のアリルエーテル化およびアリル基転位;変性率約100モル%)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器に、合成例1で得たアルデヒド含有ビフェニル樹脂100.0g、ノルマルブタノール50.0g、ジアザビシクロウンデセン60.8gを仕込み50℃まで昇温して溶解した。次に、40℃まで温度を下げ、塩化アリル36.7gを発熱に注意しながら2時間かけて添加した。その後、1時間エージングし110℃まで昇温後、2時間エージングを行った。次に、MIBKを100g添加し、反応で発生した塩を水洗で除去した。水洗後、使用したノルマルブタノール、MIBKを130℃で除去しながら180℃まで昇温した。次に、N
2雰囲気下、180℃で5時間反応(転位反応)を行い、アリル基含有樹脂E(アリルエーテル化後、アリル基を転位させたフェノールビフェニレン樹脂)を得た。
アリル基含有樹脂Eの軟化点は67.8℃、150℃における溶融粘度は2.1Pであった。GPCによる質量平均分子量(Mw)は1921、分散度(Mw/Mn)は1.91であった。NMRによるアリルエーテル化率(アリル基転位前)は98%、アリル基転位率は99%であった。
【0113】
(樹脂ワニスおよび成形物(硬化物)の製造)
上記アリル基含有樹脂Eの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−1100の48.2g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.5gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスFを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスFをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Fを得た。
【0114】
別途、上記アリル基含有樹脂Eの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−2300の50.1g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.5gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスGを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスGをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Gを得た。
【0115】
〔実施例6〕
(アルデヒド基含有キシリレン樹脂のアリルエーテル化およびアリル基転位;変性率約70モル%)
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器に、合成例2で得たアルデヒド含有キシリレン樹脂100.0g、ノルマルブタノール50.0g、ジアザビシクロウンデセン73.4gを仕込み50℃まで昇温して溶解した。次に、40℃まで温度を下げ、塩化アリル44.3gを発熱に注意しながら2時間かけて添加した。その後、1時間エージングし110℃まで昇温後、2時間エージングを行った。次に、MIBKを100g添加し、反応で発生した塩を水洗で除去した。水洗後、使用したノルマルブタノール、MIBKを130℃で除去しながら180℃まで昇温した。次に、N
2雰囲気下、180℃で5時間反応(転位反応)を行い、アリル基含有樹脂F(アリルエーテル化後、アリル基を転位させたフェノールキシリレン樹脂)を得た。
アリル基含有樹脂Fの軟化点は65.5℃、150℃における溶融粘度は1.8Pであった。GPCによる質量平均分子量(Mw)は1689、分散度(Mw/Mn)は1.88であった。NMRによるアリルエーテル化率(アリル基転位前)は71%、アリル基転位率は99%であった。
【0116】
(樹脂ワニスおよび成形物(硬化物)の製造)
上記アリル基含有樹脂Fの100g(固形分)、大和化成工業株式会社製のBMI−1100の66.1g、硬化反応触媒としてジクミルパーオキサイドの1.7gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスHを得た。マレイミド基/アリル基のモル比は1であった。
上記樹脂ワニスHをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃で10分間乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Hを得た。
【0117】
〔比較例1〕
アリルフェノール樹脂として、群栄化学工業株式会社製の製品名:XPL−4437E(アリルフェノールホルムアルデヒド樹脂)を用いた。この樹脂は常温で液状であり、25℃での粘度はE型粘度計で31Pa・sであった。
上記アリルフェノール樹脂の100g、大和化成工業株式会社製のBMI1100の120.9g、硬化促進剤としてジクミルパーオキサイドの2.2gをメチルエチルケトンに固形分60%になるように溶解し、樹脂ワニスIを得た。
上記樹脂ワニスIをガラスクロス(Eガラス)に、樹脂分40%になるように含浸し、100℃10分乾燥させ、溶剤を除去してプリプレグを得た。このプリプレグを6枚重ねて200℃でプレス成形し、その後、220℃で2時間アフターベークを行い、厚さ1.5mmの成形物Iを得た。
【0118】
上記成形物A〜Iについて、ガラス転移温度、5%熱分解温度、常温線膨張係数、比誘電率、誘電正接を測定した。また、各成形物に用いた樹脂ワニスを用いて、引張り接着強さを測定した。結果を表1〜2に示した。
樹脂成形物A〜Iに用いたアリル基含有樹脂、マレイミド化合物、硬化反応触媒それぞれの種類、アリル基含有樹脂に用いたアルデヒド基含有樹脂、アリル基の形態、変性率を表1〜2に併記した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
樹脂ワニスA〜Hから得た成形物A〜Hは、樹脂ワニスIから得た成形物Iに比べて、引張り接着強さが強く、密着性に優れていた。また、比誘電率、誘電正接が低かった。さらに、ガラス転移温度、5%熱分解温度、常温線膨張係数も充分に優れていた。