特許第6837385号(P6837385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6837385ガラスヤーン、ガラスクロス、プリプレグ及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837385
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ガラスヤーン、ガラスクロス、プリプレグ及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/18 20060101AFI20210222BHJP
   B29B 11/16 20060101ALI20210222BHJP
   D03D 15/267 20210101ALI20210222BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20210222BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20210222BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20210222BHJP
【FI】
   D02G3/18
   B29B11/16
   D03D15/12 A
   D03D1/00 A
   H05K1/03 610T
   B29K105:10
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-102942(P2017-102942)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-197411(P2018-197411A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】横澤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤ノ木 朗
(72)【発明者】
【氏名】立花 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕幸
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−079048(JP,A)
【文献】 特開2016−098135(JP,A)
【文献】 特開2015−078079(JP,A)
【文献】 特開2009−263824(JP,A)
【文献】 特開2016−011484(JP,A)
【文献】 特開2018−127748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08 − 15/14
C03B 37/01 − 37/065
C08J 5/04 − 5/10
C08J 5/24
D01F 9/08 − 9/32
D02G 3/18
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径3.5μm以上3.7μm以下でありSiO組成量が99.99質量%〜100質量%であるシリカガラスフィラメントを30本以上49本以下束ねてなるシリカガラスヤーンであって、
前記シリカガラスヤーンの引張破断強度が2.0GPa以上であり、かつシリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの破断開始強度がヤーン全体の破断強度の80%以上であることを特徴とするシリカガラスヤーン。
【請求項2】
前記シリカガラススヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの直径分布の変動率が1.5%以内であり、かつ前記シリカガラスヤーンの長手方向の番手変動率が2.0%以内であることを特徴とする請求項1記載のシリカガラスヤーン。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシリカガラスヤーンを用いて製造されるシリカガラスクロス。
【請求項4】
前記シリカガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の総フィラメント数が、290,000本/m以上400,000本/m以下であることを特徴とする請求項3記載のシリカガラスクロス。
【請求項5】
前記シリカガラスクロスの開口率が、20%以下であることを特徴とする請求項3又は4記載のシリカガラスクロス。
【請求項6】
前記シリカガラスクロスの開口部の平均面積が、20,000μm/個以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載のシリカガラスクロス。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項記載のシリカガラスクロスと、
前記シリカガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを有する、プリプレグ。
【請求項8】
請求項7記載のプリプレグを有する、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスヤーン、ガラスクロス、プリプレグ及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン等の情報端末の高性能化、高速通信化に伴い、使用されるプリント配線板において、高密度化、極薄化とともに、低誘電率化、低誘電正接化が著しく進行している。
【0003】
このプリント配線板の絶縁材料としては、ガラスクロスをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(以下、「マトリックス樹脂」という。)に含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されている。上記の高速通信基板に使用されるマトリックス樹脂の誘電率は3程度であるのに対し、一般的なEガラスクロスの誘電率は6.7程度であり、積層板時の高い誘電率の問題が顕在化してきている。なお、信号の伝送ロスは、Edward A. Wolff式:伝送損失∝√ε×tanδ、が示すように、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)が小さい材料ほど改善されることが知られている。
【0004】
そのため、Eガラスとは異なるガラス組成のDガラス、NEガラス、Lガラス等の低誘電率ガラスクロスが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0005】
しかしながら、今後の5G通信用途等において、これら低誘電率ガラスクロスでは、十分な伝送速度性能を達成する観点から、なお改善の余地があった。ここで、ガラス組成中のSiO配合量をほぼ100%とすることにより、更なる低誘電率化及び低誘電正接化を図ることも考えられる。しかしながら、ガラス組成中のSiOの配合量をほぼ100%に増やすと、ガラスフィラメントが脆く切れ易くなり、毛羽という品質上の欠陥となる。大きな毛羽が数多く生じると、導体部とガラスクロスが接触する確率が上がる。その結果、特に薄い積層板において層間の絶縁信頼性が悪くなる課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−170483号公報
【特許文献2】特開2009−263569号公報
【特許文献3】特開2009−19150号公報
【特許文献4】特開2009−263824号公報
【特許文献5】特開2016−11484号公報
【特許文献6】特開2006−027960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、誘電率が低く、薄く、層間絶縁信頼性に優れた基板(「基板」とは、プリプレグ、プリント配線板、又はこれらの積層板等を含む概念である)を作製する事ができるガラスクロスを提供する為に、発生する毛羽が低減されたシリカガラスクロス、前記シリカガラスクロスを製造することができるシリカガラスヤーン、前記ガラスクロスを用いたプリプレグ、及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に於けるシリカガラスクロスはシリカガラスヤーンを製織して製造される。
シリカガラスヤーンは直径が3.5μm〜3.7μmのシリカガラスフィラメントを30本以上49本以下束ねて撚って製造されている。本発明で解決するべき毛羽とは、クロスを製織した際に、このシリカガラスヤーンを構成するシリカフィラメントの一部が破断した状態を指す。シリカガラスヤーンはシリカガラスフィラメントの複合体である為に、これを構成するシリカガラスフィラメントにはある程度の強度差が存在する。毛羽はシリカガラスヤーンが製織工程、水洗工程、及び開繊工程において張力や加工圧に曝された際に、シリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの一部が、特殊な場合を除けば、強度の弱いフィラメントが破断して生じる。
【0009】
シリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントにおいて強度差を生じる理由は複数あるが、主たる理由は以下の3つで、この順に影響度が高いと考えられる。
第1位にシリカガラスフィラメント間の直径のバラツキ、即ち直径が細いフィラメントが優先的に破断する。
第2位にシリカガラスフィラメント間に存在する歪量のバラツキ、即ち相対的に大きな歪を有するフィラメントが優先的に破断する。
第3位に一部のシリカガラスフィラメントに存在する扱い傷、即ち、傷を有するフィラメントが選択的に破断する。
【0010】
毛羽を引き起こすシリカガラスヤーンに存在するシリカガラスフィラメント内の強度バラツキを生じる第1位の理由であるシリカガラスフィラメント内の直径バラツキは、直径を3.5μm以上3.7μm以下に規定されるバラツキ内に抑え込むことで達成される。
この直径バラツキは製織されるシリカヤーンの全体、全長に渡って維持されている事が重要である。シリカガラスヤーンを構成するフィラメント間の直径のバラツキは直接的にはシリカガラスヤーンを切断して電子顕微鏡にて断面直径を測定する事が出来る。この計測方法にて直接シリカガラスヤーンを構成するフィラメントの直径バラツキが直径3.5μm以上3.7μm以下に規定される値以下であれば良い。
【0011】
一方で、数十キロメートルに及ぶシリカガラスヤーン全体に渡って直径バラツキをこの方法で測定する事は実質的に不可能である。そこで用いられる方法として、シリカガラスヤーンの番手(JISR3420:2013 7.1項、ヤーン1km当りの重量)の変動を計測する方法がある。但し、この方法はシリカガラスヤーンの長手方向のバラツキを計測するに留まり、個々のフィラメント間の直径のバラツキを識別する手段とはなり得ないので、個々のシリカガラスフィラメントの直径を直接計測する方法と組み合わせる事が本願発明の目的を達成する為には重要である。
【0012】
前述した第2位の理由であるシリカガラスフィラメント間に内在する歪量のばらつきについては、本願発明に於けるシリカガラスフィラメントの直径は3.5μm以上3.7μm以下と非常に細いために個々のフィラメントに内在する歪量を個々に計測する方法は実質的に存在しない。
一般的にシリカガラスフィラメントは特許文献5に記載されるように複数のシリカガラスロッドを炉内で均一に加熱して、一方の端部を高速で延伸する事で製造されるが、この際、フィラメントの直径は、シリカガラスロッドとシリカガラスフィラメントの速度差で一義的に決定される。即ち、直径drのシリカガラスロッドを炉内に送り込む速度vrとシリカガラスフィラメントの直径df、線引き速度をvfには、下記式(1)に示される関係性がある。
【0013】
【数1】
【0014】
複数のシリカガラスフィラメントからなるシリカガラスストランド(撚りを掛けていない状態のフィラメントの集合体)は、同一のチャックに把持された複数のシリカガラスロッドから同時に、同一の巻き取り機によって延伸される為に前記式(1)に於けるvf、vrは各々のロッド、フィラメント間で基本的に同一である。ここで、シリカガラスロッド群の直径を一定のバラツキ範囲内に規定する事で、得られるシリカガラスフィラメント群の直径バラツキは一定の範囲に抑え込む事は可能になる。
【0015】
一方で、シリカガラスロッドを延伸する場合に必要な応力は延伸されるシリカガラスロッドの粘度に強く依存する。更にシリカガラスロッドの粘度はシリカガラスロッドの温度に極めて強く依存する為に、炉内の温度の均一性が損なわれた場合、温度の高い部位に置かれたシリカガラスロッドは低い応力で延伸されるのに対して、相対的に温度の低い部位に置かれたシリカガラスロッドは強い応力で延伸され、結果として直径の変動はないものの、後者のシリカガラスフィラメントには前者のシリカガラスフィラメントに比べて大きな歪が残留する事となる。
このような事からシリカフィラメントに内在する歪量のバラツキを制御する為には延伸に際して炉内の温度を極力一定に保つ必要がある事が解る。
【0016】
前述した第3位の理由であるシリカガラスフィラメントに存在する傷については、直径が3.5μm程度の非常に細いシリカガラスフィラメントにとって傷は重要な破断の原因となる。シリカガラスフィラメントは延伸工程、撚糸工程、(撚糸工程以降はシリカガラスヤーンとなるが、)整経工程、製織工程、開繊工程、等全ての工程で治具やあるいは繊維同士の接触によって傷を受ける可能性がある。特に製織工程に掛かる前の生糸の状態での傷は、整経中にヤーンに掛かる応力によってフィラメント破断を生じ、これによって生じた毛羽等で整経工程を阻害することから、ひどい場合には機が織れなくなる可能性を生じる。
これらの傷を完全に無くすことは非常に困難であるが、各々の工程に於いて、丹念に原因を見出して解決することで傷が生じる可能性を極力低減する努力を惜しんではならない。しかしながら、シリカガラスヤーンにおいて表面傷をいちいち検出する手段は殆ど無い。
【0017】
これまで述べてきたように、シリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントにおいて強度差を生じる理由において、ある程度計測が可能な要因はフィラメント径のばらつきのみであり、他の要因については、原因は推察されるものの、実際のヤーンを構成するシリカガラスフィラメント中に破断の原因となる要因がどの程度内在されているかについては具体的に評価出来る手段がない。
【0018】
この問題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、シリカガラスヤーンの破断試験に於けるシリカガラスフィラメントの破断の様子から評価されるシリカガラスヤーンが部分的なフィラメント破断(即ち毛羽の発生)を生じやすいか否かの判定を行えることを見出した。
【0019】
即ち、本発明のシリカガラスヤーンは、直径3.5μm以上3.7μm以下でありSiO組成量が99.99質量%〜100質量%であるシリカガラスフィラメントを30本以上49本以下束ねてなるシリカガラスヤーンであって、前記シリカガラスヤーンの引張破断強度が2.0GPa以上であり、かつシリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの破断開始強度がヤーン全体の破断強度の80%以上であることを特徴とする。
【0020】
本明細書では、シリカガラス繊維とは、シリカガラスを引き伸ばして得られる細い糸状のものを指し、単繊維をシリカガラスフィラメント、シリカガラスフィラメントを束ねたものをシリカガラスストランド、シリカガラスフィラメントを束ねて撚りをかけたものをシリカガラスヤーンと定義する。
【0021】
前記シリカガラススヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの直径分布の変動率が1.5%以内であり、かつ前記シリカガラスヤーンの長手方向の番手変動率が2.0%以内であることが好適である。
【0022】
本発明のシリカガラスクロスは、本発明のシリカガラスヤーンを用いて製造されるシリカガラスクロスである。
【0023】
前記シリカガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の総フィラメント数が、290,000本/m以上400,000本/m以下であることが好適である。
【0024】
前記ガラスクロスの開口率が、20%以下であることが好ましい。
【0025】
前記ガラスクロスの開口部の平均面積が、20,000μm/個以下であることが好適である。
【0026】
本発明のプリプレグは、本発明のシリカガラスクロスと、前記シリカガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを有する、プリプレグである。
【0027】
本発明のプリント配線板は、本発明のプリプレグを有する、プリント配線板である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、誘電率が低く、薄く、層間絶縁信頼性に優れた基板を作製する事ができるガラスクロスを提供する為に、発生する毛羽が低減されたシリカガラスクロス、前記シリカガラスクロスを製造することができるシリカガラスヤーン、前記ガラスクロスを用いたプリプレグ、及びプリント配線板を提供するという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】シリカガラスヤーンの破断試験における応力・歪曲線を示す。
図2図1の実験例3の結果を示すグラフである。
図3】実施例1のシリカガラスフィラメントを製造する方法の模式的説明図である。
図4】実施例1で用いたシリカガラスフィラメント製造炉の炉心管を示す概略説明図である。
図5】実施例1で用いた毛羽測定機の構成を示す模式的説明図である。
図6】比較例1で用いたシリカガラスフィラメント製造炉の炉心管を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0031】
本発明のシリカガラスヤーンは、直径3.5μm以上3.7μm以下でありSiO組成量が99.99質量%〜100質量%であるシリカガラスフィラメントを30本以上49本以下束ねてなるシリカガラスヤーンであって、前記シリカガラスヤーンの引張破断強度が2.0GPa以上であり、かつシリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの破断開始強度がヤーン全体の破断強度の80%以上であることを特徴とする。
【0032】
本発明において、シリカガラスヤーンの引張強度試験は、JISR3420:2013「ガラス繊維一般試験方法」のうち項目7.4「引張強さ」、特に7.4.3「ガラス糸及びロービングの場合」に規定される方法で行われる。本発明者らは7.4.1項に記されている3つの引張試験方法のうち、a}定速伸長型引張試験方法(CRE)を採用しているので、以下の説明も同方法に則った形式で行う。
【0033】
a)引張強さ
JISR3420、7.4.3.6a)項では引張強さの計算方法として10個の試験片の破断力から、破断力の算術平均をニュートン(N)単位で求める事が規定されている。また、同c)項では「番手当たりの引張強さ」として引張強さを糸の番手(tex)で規格化する方法が記載されている。しかしながら、本願発明においては、異なるフィラメント径及び異なるフィラメント本数からなるヤーンの引張強度及び伸び曲線の状態を規定する目的がある為に、JISに於けるこれらの項目を使用する事はせず、単純に引張試験時にヤーンの両端に掛かる張力をヤーンの断面積(ヤーンを構成する各フィラメント断面積の総和)で除して得られる応力として計算している。
【0034】
b)「破断時の伸び」破断時のつかみ間の長さをつかみ間隔で除し、%表記したものが伸び率であるが、本願発明においてはヤーンの破断に到る挙動が重要である為に、破断に到るまでのつかみ間隔の距離をつかみ間隔で除した値を歪%として表記している。尚、本願明細書の実施例における引張試験機のつかみ間隔は250mmである。
【0035】
破断点の説明
シリカガラスヤーンの引張強度試験に於ける応力・歪曲線において、部分的なフィラメントの破断が生じると、応力・歪曲線の傾きが若干小さくなる。これは応力・歪曲線上の変曲点として観察される。本願明細書においては、この変曲点を破断点と称し、最初の破断点(第1の破断点)における破断強度を破断開始強度と称する。
【0036】
図1にシリカガラスヤーンの破断試験における応力・歪曲線を示す。図1は、本願発明に規定される破断点を例示する為の実験例1〜3の結果を示すグラフである。図2は、図1の実験例3の結果を示すグラフである。また、図1のシリカガラスヤーンの応力・歪曲線から求めた破断点における破断強度を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
図1に於ける実験例1はヤーン全体の破断に到るまで、ヤーンを構成する全てのフィラメントが破断しなかった事例である。全てのフィラメントの強度が揃っている場合にこのような破断曲線が得られる。実験例1は第1の破断点で全て破断しており、第1の破断点とヤーン全体の破断点が一致し、表1に示した如く、破断開始強度がヤーン全体の破断強度となり、ヤーン全体の破断強度との比は100%となる。本発明において、実験例1の如く、第1の破断点で全て破断し、ヤーン全体の破断強度との比が100%となるシリカガラスヤーンが最も好適である。
【0039】
図1の実験例2は、応力3.02GPaの部位で応力・歪曲線に折れ曲がりが観察される。この応力・歪曲線の折れ曲がり点はヤーンを構成するフィラメントの一部が破断し、その結果、同じ応力の増加に対する歪の増加率が増大する(曲線の傾きが小さくなる)為に、曲線の折れ目として観察される。実験例2の場合、部分的なフィラメント破断が生じているものの、その強度がヤーンの破断強度と比較して約90%と高いために毛羽を発生しにくいヤーンである事が解った。本願明細書において、この折れ曲がり点を第1の破断点と称し、第1の破断点における破断強度を破断開始強度と称するものである。本願発明者らは、破断開始強度がヤーン全体の破断強度の80%以上、より好ましくは85%以上あれば毛羽特性は良好に維持されることを見出した。
【0040】
図1及び図2に示した実験例3の場合、応力2.09GPaの部分(第1の破断点)と応力2.50GPaの付近(第2の破断点、曲線の形がゆがんでいる為に正確な破断点を特定できない)でフィラメントの部分的な破断が生じている事が解る。第1のフィラメントの破断によって総フィラメント断面積が減少する為に、ヤーンに掛かる応力が実質的に増大するので、残りのフィラメントも切れやすくなる。この為、雪崩的にフィラメントの破断が生じる事がしばしば観察される。
【0041】
重要なのは第1の破断点における破断強度であり、実験例3の場合はこの強度がヤーンの引張強度の80%を下回っている為に、毛羽を発生しやすいヤーンである事が解る。
尚、JISR3240に於いては、引張強度試験は必ず10個の試験片を用いてその平均値から引張強度を算出するように決められているが、本願発明において、第1の破断点の破断強度を求める場合も同様に10個の試験片を用いて測定を行い、各測定に於ける第1の破断点の破断強度が、ヤーンの破断強度に比べて80%以上であるか否かを判別しなくてはならない。但し、前述した実験例1〜3に於いては説明の為に、1本のヤーンの引張試験に於ける応力・歪曲線を用いている。
【0042】
本発明のシリカガラスヤーンに用いられるシリカガラスフィラメントの製造方法は特に制限はなく、公知の紡糸方法を用いることができるが、シリカガラスフィラメントに内在する歪量のバラツキを制御する為に、シリカガラスロッドの延伸に際して炉内の温度を極力一定に保つことが好適である。炉内の温度均一性を確保する方法としては、例えば、炉内に導入される不活性ガスの種類、導入経路、及びガス流量により制御する方法が挙げられる。具体的には、不活性ガスとして、熱伝導性の良いガス、例えば、Heガスを用い、炉内へのガス導入経路を複数個所設け、炉下部から上部に向けて各部位からのガス流量が均一になるようにガスを流すことが好適である。
【0043】
直径3.5μm以上3.7μm以下という、所望の直径のシリカガラスフィラメントを得る方法は特に制限はないが、例えば、前述した式(1)の関係を用い、シリカガラスロッドの直径と、延伸されるシリカガラスロッドの送り速度とシリカガラスフィラメントの線引き速度の制御を行うことにより、所望のフィラメント径が得られる。
【0044】
シリカガラスフィラメントを30本以上49本以下束ねたシリカガラスストランドを、撚糸機を用いて撚糸し、シリカガラスヤーンとすることが好適である。シリカガラスフィラメント数が上記範囲内であることにより、製織工程、水洗工程、開繊工程での、張力や加工圧を抑え、毛羽立ちを抑えながら、厚さ11μm以下のシリカガラスクロスを実現することができる。
【0045】
本発明において、シリカガラスヤーンの撚り数は特に制限はないが、撚り数が少ないとガラスクロスとした後の開繊工程でクロスの厚さを薄くしやすく、かつ通気度を下げやすいが、ヤーンの収束性が低くなりヤーンの破断や毛羽立ちが発生しやすい。また、撚り数が多いとヤーンの収束性が高まり、破断や毛羽立ちは発生しづらいが、ガラスクロスとした後の開繊加工の効果が薄くなり、ガラスクロスが厚く、かつ通気度を下げづらいという性質がある。この事から、撚り数の好ましい範囲は5回転/m〜30回転/mである。
【0046】
また、撚糸に際しては撚糸の為の糸道に於いてヤーンガイド、トラベラー、スネールワイヤーとヤーンが直接、高速で接触するが、シリカガラスは非常に硬いためにこれら治具はヤーンとの接触により傷が発生しやすい。治具の傷はフィラメントの切断原因となるため、注意が必要である。特にトラベラーはプラスチック製なので傷つきやすく、撚糸を行う前には必ず表面状態をチェックして傷のない治具を使用する事が重要である。
【0047】
本発明において、シリカガラススヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの直径分布の変動率が1.5%以内であることが好ましく、1.0%以内であることがより好ましい。また、シリカガラスヤーンの長手方向の番手変動率が2.0%以内であることが好ましく、1.5%以内であることがより好ましい。
【0048】
本発明のシリカガラスクロスは、本発明のシリカガラスヤーンを用いて製造される。シリカガラスクロスの製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【0049】
シリカガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の総フィラメント数は特に制限はないが、290,000本/m以上400,000本/m以下であることが好ましい。該範囲とすることにより、製織工程、水洗工程、及び開繊工程での、ガラスフィラメントにかかる張力や加工圧に対しても、糸切れを生じにくくなり、毛羽立ちを抑制することが可能となる。また、経糸及び緯糸の総ガラスフィラメント数を400,000本/m以下とすることにより、ガラスクロスの厚さを薄くすることができ、厚さの薄い基板を得ることができる。これにより、従来よりも、薄く、より一層誘電率が低く、かつ層間絶縁信頼性に優れた基板を作製できるガラスクロスを提供することができる。総ガラスフィラメント数は、打ち込み密度や、ガラスフィラメント数を調整することによって制御することができる。
【0050】
シリカガラスクロスの開口率は、シリカガラスクロス全体の面積に対する経糸も緯糸も分布しない部分の面積比率を表し、プリプレグ塗工時の樹脂の塗りムラを抑制する観点から、好ましくは20%以下であり、より好ましくは18%以下である。
ガラスクロスの開口率は、打込み密度、開繊度、ガラス糸の番手によって調整すること
ができる。開口率は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
シリカガラスクロスの開口部の平均面積は、経糸も緯糸も分布しない部分単独の面積の平均値を表し、プリプレグ塗工時の樹脂の塗りムラを抑制する観点から、好ましくは20,000μm/個以下であり、より好ましくは15,000μm/個以下である。
ガラスクロスの開口部の平均面積は、打込み密度、開繊度、ガラス糸の番手によって調整することができる。開口部の平均面積は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0052】
シリカガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の打ち込み密度は、各々独立して、好ましくは50〜140本/inchであり、より好ましくは80〜130本/inchである。
【0053】
シリカガラスクロスを構成する経糸及び緯糸の番手(以下、Texともいう。)は、シリカガラスクロスを薄くする観点から、各々独立して、0.5g/1000m以上が好ましく、1.2g/1000m以下であることがより好ましく、0.7g/1000m以上1.0g/1000m以下であることがさらに好ましい。
【0054】
シリカガラスクロスの布重量(目付け)は、好ましくは4〜10g/mであり、より好ましくは5〜9g/mであり、さらに好ましくは6〜8g/mである。
【0055】
シリカガラスクロスの織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造が挙げられ、平織り構造が好ましい。
【0056】
シリカガラスヤーンやシリカガラスクロスは、シランカップリング剤等の公知の表面処理剤で表面処理されることが好適である。
【0057】
本発明のシリカガラスクロスはSiO組成量が99.99質量%〜100質量%であるシリカガラスフィラメントを用いて製織されてなる為、誘電率や誘電正接を低減することができ、3.8以下という低い誘電率とすることができる。
【0058】
本発明のプリプレグは、前記シリカガラスクロスと、前記シリカガラスクロスに含浸されたマトリックス樹脂とを有する。これにより、薄くて、誘電率が低く、上記各理由に関連する絶縁信頼性の向上と耐吸湿性の向上による絶縁信頼性の向上が図られたプリプレグを提供することができる。
マトリックス樹脂としては、特に制限はなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂の何れも使用可能である。
【0059】
本発明のプリント配線板は、前記プリプレグを有する。これにより、誘電率が低く、絶縁信頼性の向上が図られたプリント配線板を提供することができる。本発明のプリント配線板におけるプリプレグは2層以上からなる積層体であってもよい。
【実施例】
【0060】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0061】
(実施例1)
特許文献5及び6に示されるのと同様に電気炉を用いた方法を用いて、シリカガラスフィラメントを製造した。図3は実施例1のシリカガラスフィラメントを製造する方法の模式的説明図であり、図4は実施例1で用いたシリカガラスフィラメント製造炉の炉心管を示す概略説明図である。図3において符号10は紡糸装置である。図3に示す如く、直径20mm、外径公差±0.1mmのシリカガラスロッド20(SiO組成量99.99質量%)を40本同時に治具にセットしてヒータ手段22を備えた最高温度2,000℃の縦型管状電気炉内をゆっくり降下させ、溶融した端部を電気炉下部から高速で引出し、平均直径3.6μmのシリカガラスフィラメント24をワインダー26にて巻取を行った。図3及び図4において、符号12はシリカガラスフィラメント製造炉の炉心管であり、符号14はガス導入管である。また図3において、符号16はサイジング手段であり、符号28はガイド手段である。
【0062】
シリカガラスフィラメントの製造の際、ヒータ保護の為に炉内に導入される不活性ガスの種類、導入経路、ガス流量に特に配慮し、不活性ガスによって炉内の温度均一性が乱されないように特に注意を行った。
具体的には、不活性ガスの種類を通常用いられる窒素ガスに比べて熱伝導性の良い、Heガスとし、かつ炉内への導入経路についても1か所ではなく複数個所(図4に示した如く、本実施例では4個所のガス導入口)から、炉下部から上部に向けて各部位からのガス流量が均一になるように4つのガス導入管14それぞれに独立した圧力調整器と流量計を配してガスを流した。実際に炉内の温度分布を計測する事は技術的に困難であるが、1箇所から導入する従来の方法と比べて、特に導入ガスによる温度分布に配慮した結果、炉内の温度分布は改善されていると考えられる。
【0063】
得られたシリカガラスストランド(40本のシリカガラスフィラメントの集合体)を、撚糸機を用いて撚糸し、シリカガラスヤーンを得た。撚り数として24回転/mを採用した。
【0064】
このように独立して5バッチ(#1〜#5)作製したシリカガラスヤーンを構成するシリカガラスフィラメントの径変動及び番手変動を調査した。
シリカガラスヤーンのサンプリング位置は全長40kmのうち、0km〜1kmの部分である。尚、フィラメント径の計測は電子顕微鏡写真により、番手の計測はJISR3420:2013、7.1に示される方法で測定した。フィラメント径の変動率の計算式はJISには定められていないが、下記式(2)で示される番手変動率の計算式と同じ式(JISR3420:2013、7.1.5 b)を用いて計算を行った。式(2)において、vは番手変動率(%)、tは測定値(tex)、tは番手tの平均値(tex)、nは測定回数を示す。結果を表2に示す。
【0065】
【数2】
【0066】
【表2】
【0067】
更に、#1及び#2のヤーンの長手方向の番手調査を行った。ヤーン全長が40kmのうち、0km〜1km、15km〜16km、30km〜31kmの部分をサンプルとして、フィラメント径及び番手を測定しその変動率を求めた。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
(シリカガラスヤーンの引張試験)
フィラメント径測定で用いた表5の番号欄に記載されている9つのシリカガラスヤーンのサンプルについて、強度及び第1の破断点における破断開始強度を測定した。強度測定方法はJISR3420:2013「ガラス繊維一般試験方法」のうち項目7.4「引張強さ」、特に7.4.3「ガラス糸及びロービングの場合」に規定される方法で行った。
表4に、#1のサンプリング位置0−1kmのサンプルのヤーン破断強度と第1の破断点における強度(破断開始強度)及びその比の個別データ(測定回数n:10回)を示す。また、表5に#1〜#5の各サンプリング位置におけるヤーン破断強度と破断開始強度及びその比の結果を示す。なお、表5は測定回数10回の測定値の平均値を示したものである。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
(毛羽評価)
前記得られたシリカガラスヤーンについて毛羽評価を施した。
ヤーンを製織し、ガラスクロスにして評価するのは非常に時間とコストが掛かる為、ここでは簡便法を用いて評価した。即ち、ヤーンに製織工程及び開繊工程を想定した応力と摩擦を与える事で、ガラスクロスにした際の毛羽性能を評価した。
【0073】
図5は、実施例1で用いた毛羽測定機の構成を示す模式的説明図である。図5に示した如く、ヤーン30をワッシャーテンサー32を一定の速度で通過させることで、ヤーン30に引張り応力と摩擦力を与え、そのヤーン30を毛羽検査装置50により計測した。ワッシャーテンサー32は湯浅糸道工業社製B009011を用い、毛羽検査装置50は大和紡績社製毛羽カウンターDK−103を用いた。図5において符号34はベアリングローラーであり、符号dは設定毛羽長であり、符号Lはレーザー光であり、符号36,38,40,42はローラである。
【0074】
評価においてヤーンに掛かる応力はワッシャーテンサーの皿上に載せるワッシャーの個数で調整するが、本評価に於いてはワッシャー数2枚(ワッシャー1枚の重量3.5g)で行い、得られたテンションは0〜50cNである事を確認した。
また、毛羽測定条件として、ヤーン送り速度:30m/分、測定ヤーン長:10m、設定毛羽長d:2.0mm、測定回数:10回で行い、各カウント数の平均を求め毛羽数とした毛羽評価の結果を表5に示す。表5に示した如く、いずれも毛羽立の少ない良好な結果であった。
【0075】
(クロスでの評価)
前記得られたシリカガラスヤーンを用い、シリカガラスクロスを製織し、かつ開繊工程によりシリカガラスクロスを作製した。即ち、前記得られたシリカガラスヤーンを製織してなるガラスクロス(経糸の打ち込み密度120本/inch、緯糸の打ち込み密度120本/inch、シリカガラスフィラメント総数380,000本/m、厚さ11μm、布重量8g/m、TEX0.9g/1000m)を、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(東レダウコーニング株式会社製;Z6032)を水に分散させた処理液に浸漬し、加熱乾燥した。次にスプレーで高圧水開繊を実施し、加熱乾燥してシリカガラスクロスを得た。
【0076】
シリカガラスクロスの開口率は10%であり、シリカガラスクロスの開口部の平均面積は、5,000μm/個であった。各測定値の測定方法を下記に示す。
【0077】
1)シリカガラスクロスの開口率
シリカガラスクロスの開口率は、光学顕微鏡を用いて、倍率100倍でシリカガラスクロスの表面観察を行い、経糸の幅、及び緯糸の幅を任意で100ヶ所測定し、経糸幅の平均値(Wt)、及び緯糸幅の平均値(Wy)を求め、下記式(3)により算出した。
O=(25.4/Dt×1000−Wt)×(25.4/Dy×1000−Wy)/(25.4/Dt×1000)×(25.4/Dy×1000) ・・・(3)
O:開口率(%)
Dt:経糸打込み密度(本/25.4mm)
Dy:緯糸打込み密度(本/25.4mm)
Wt:経糸幅の平均値(μm)
Wy:緯糸幅の平均値(μm)
【0078】
2)シリカガラスクロスの開口部の平均面積
シリカガラスクロスの開口部の平均面積は、光学顕微鏡を用いて、倍率100倍でシリカガラスクロスの表面観察を行い、経糸の幅、及び緯糸の幅を任意で100ヶ所測定し、経糸幅の平均値(Wt)、及び緯糸幅の平均値(Wy)を求め、次の式(4)により算出した。
Oa=(25.4/Dt×1000−Wt)×(25.4/Dy×1000−Wy) ・・・(4)
Oa:ガラスクロスの開口部の平均面積(μm
Dt:経糸打込み密度(本/25.4mm)
Dy:緯糸打込み密度(本/25.4mm)
Wt:経糸幅の平均値(μm)
Wy:緯糸幅の平均値(μm)
【0079】
3)シリカガラスクロスの厚さの評価方法
JISR3420の7.10に準じて、マイクロメータを用いて、スピンドルを静かに回転させて測定面に平行に軽く接触させる。ラチェットが3回音をたてた後の目盛を読み取る。
【0080】
4)シリカガラスクロスの毛羽評価(耐屈曲性評価)
前記得られたシリカガラスクロスに、ポリフェニレンエーテル樹脂ワニス(変性ポリフェニレンエーテル樹脂30質量部、トリアリルイソシアヌレート10質量部、トルエン60質量部、触媒0.1質量部の混合物)を含浸させ、120℃で2分間乾燥後プリプレグを得た。このプリプレグの樹脂含量を50質量%に調製した。次に任意箇所の100mm×100mmの小片サンプルを切り出し、目視にて突起箇所の数を求めた。プリプレグの毛羽数は2個であった。後述する比較例1の結果との比較から明らかなように、本発明のシリカガラスヤーンを用いて得られるシリカガラスクロスは、発生する毛羽を著しく低減することができた。
【0081】
(比較例1)
紡糸装置における炉心管を図6に示した1個のガス導入管を設けた炉心管に変更し、フィラメントに対して傷を作らない為の特別な配慮は行わずに製造した以外は、実施例1と同様の方法によりシリカガラスヤーンを製造した。得られたシリカガラスヤーンに対し、実施例1と同様の方法によりフィラメント外径、長手方向の番手変動率、引張強度、破断開始強度とヤーンの破断強度との比、毛羽測定を行った。結果を表6に示す。なお、表6は測定回数10回の測定値の平均値を示したものである。
【0082】
【表6】
【0083】
また、得られたシリカガラスヤーンを用いて実施例1と同様の方法によりシリカガラスクロスを製造し、毛羽評価を行ったところ、プリプレグの毛羽数は15個であった。
【符号の説明】
【0084】
10:紡糸装置、12:シリカガラスフィラメント製造炉の炉心管、14:ガス導入管、16:サイジング手段、20:シリカガラスロッド、22:ヒータ手段、24:シリカガラスフィラメント、26:ワインダー、28:ガイド手段、30:ヤーン、32:ワッシャーテンサー、34:ベアリングローラー、36,38,40,42:ローラ、50:毛羽検査装置、d:設定毛羽長、L:レーザー光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6