【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る漏液検知システムは、
機器からの液漏れを検出するための漏液検知システムであって、
前記機器から漏洩した漏液を撮像するための撮像装置と、
前記撮像装置によって取得された画像データを用いて前記液漏れの発生を検出するためのコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記画像データ中において、前記機器外において変色剤との接触により変色した前記漏液の色に対応する画素数が閾値以上であるか否かを判定し、
前記画素数が前記閾値以上である場合に前記液漏れが発生したと判定するように構成されている。
機器から漏洩した漏液は、種々の変色剤と接触することで特定の色に変色し、周囲と識別し得る程度に変色するとその存在が視覚的に認識され得る。このように、変色剤との接触で変色する漏液の性質を利用し、上記(1)の構成では、撮像装置で取得された画像データ中において、変色した漏液の色に対応する画素数が閾値以上であることをコントローラが判定することにより、液漏れの発生を検出することができる。このように構成された漏液検知システムを用いれば、機器からの液漏れを無人で常時監視することができ、オペレータは随時、機器からの液漏れの有無を遠隔地で監視できる。そして、仮に液漏れが発生した際には自動的に液漏れ警報を通知することでその後の対応を迅速に行うことができる。例えば油や水との接触で変色する変色材の色に対応する画素数が閾値以上であることをコントローラが判定することにより、油漏れ又は水漏れの発生を検出することができる。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の構成において、
前記コントローラは、前記撮像装置からの距離に応じて設定された距離係数を用いて前記画素数を補正するように構成される。
撮像装置の配置により、被写体には遠近何れの対象物も含まれ得る。そして、取得された画像データにおいては、撮像装置の設置場所から遠くの対象物が小さく、近くの対象物が大きな領域を占めて描写される。この点に鑑み、上記(2)の構成によれば、撮像装置からの距離に応じて設定された距離係数を用いて画素数が補正されるから、撮像装置から近い位置に対応する画像領域で計数された画素数と、撮像装置から遠い位置に対応する画像領域で計数された画素数とが相対的に同程度の尺度で扱われるように補正することができる。これにより、液漏れ検出の判定精度を向上させることができる。
【0008】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の構成において、
前記距離係数は、前記撮像装置からの距離が大きいほど大きな値に設定される。
上記(2)で述べたように、液漏れの発生をより正確に判定するには、画像データ中で近くの対象物が占める画素数すなわち面積と、遠くの対象物が占める画素数(面積)とが、実際の寸法に則して扱われるように補正することが好ましい。
この点、上記(3)の構成によれば、撮像装置からの距離が大きいほど距離係数が大きな値に設定されるから、撮像装置から遠い対象物ほど画像中の画素数(面積)を大きな値で補正することができる。そして、このように、実際の面積比に近づけるようにして補正された画素数を用いて液漏れを判定することにより、液漏れ検出の判定精度を向上させることができる。
【0009】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の構成において、
前記コントローラは、前記画像データの撮像領域毎に各々独立に設定された重要度係数を用いて前記画素数を補正するように構成される。
上記(4)の構成によれば、撮像領域毎に各々独立に重要度係数を設定することができる。すなわち、一の撮像領域について他の撮像領域の影響を考慮せず任意に重要度係数を設定することができる。例えば、撮像装置で撮像された画像データの中に、液漏れの可能性が高い撮像領域や、逆に液漏れが発生する可能性が低い撮像領域が含まれる場合などに、各撮像領域内で検出された画素数を、各々の撮像領域について独立に設定された重要度係数を用いて補正することができる。
【0010】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、
前記重要度係数は、前記機器からの前記液漏れのリスクが高い前記撮像領域ほど大きな値に設定される。
液漏れのリスクが高い撮像領域において、変色した漏液の色に対応する画素が検出された場合、仮に現時点で検出された画素数が少なくてもその後に液漏れが継続する可能性も考えられる。よって、このような撮像領域で液漏れが検出された場合は早期に対応する必要性が高いといえる。
この点、上記(5)の構成によれば、機器からの液漏れのリスクが高い撮像領域ほど重要度係数が大きい値に設定されるから、このような撮像領域で変色した漏液の色に対応する画素が検出された場合は、液漏れが発生していることを早期に判定することができる。
【0011】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)及び(5)の何れか一方に記載の構成において、
前記コントローラは、前記液漏れの判定に関する除外領域以外の前記撮像領域で検出された画素値のみに基づき、前記液漏れの発生を判定するように構成される。
上記(6)の構成によれば、撮像された画像において、例えば、無視し得る不要な領域や重要度の低い領域については液漏れの判定対象領域から除外される除外領域に設定することができる。これにより、検出対象を、着目したい撮像領域で生じた液漏れだけに絞り込むことができるので、例えば、上記液漏れと同系統の色が除外領域に存在する場合等の誤検知を低減して、液漏れの検出精度を向上させることができる。
【0012】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の何れか一つに記載の構成において、
前記液漏れがないときの前記画素数をオフセット量として設定するための設定部をさらに備え、
前記コントローラは、前記設定部により設定された前記オフセット量を用いて前記画素数をオフセット処理するように構成される。
上記(7)の構成によれば、例えば、漏液が変色した際の色と同系色の部材や、機器からの油漏れとは無関係に誤って付着させてしまった液等が画像内に含まれる場合に、それらを液漏れの判定対象から除くように設定部で予め設定することができる。これにより、検出対象としたい機器からの実際の液漏れのみに対応する画素数を用いて判定することができるから、誤検知を低減して検出精度を向上させることができる。
【0013】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の構成において、
前記コントローラは、前記画素数が前記閾値以上の場合に前記液漏れの発生を報知する報知部をさらに備える。
上記(8)の構成によれば、液漏れが検出された際にその旨を種々の方式で上記漏洩検知システムのオペレータ等に報知することができる。これにより、例えば液漏れ発生後の対応等を迅速に行うことができる。
【0014】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の構成において、
前記変色剤は空気中の酸素である。
上記(9)の構成によれば、機器からの漏液が空気中の酸素との反応により酸化されて変色し、変色した漏液が撮像装置によって撮像される。従って、空気中の酸素以外の変色剤を必要とすることなく、機器からの液漏れを検出することができる。
【0015】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の構成において、
前記変色剤は前記漏液との接触により変色する顔料を含み、
前記撮像装置の撮像範囲には、前記機器の外周又は下方の少なくとも一部において前記顔料が塗布された顔料塗布領域が含まれる。
上記(10)の構成によれば、機器の外周又は下方の少なくとも一部に顔料塗布領域を備えることにより、機器からの漏液が発生した際には漏液が顔料と接触して変色する。つまり、漏液の酸化による変色を待つことなく、液漏れが発生してから変色するまでのタイムラグを低減することができるから、液漏れ発生から該液漏れの発生を検知するまでの時間を大幅に短縮することができる。例えば、液漏れの発生をリアルタイムに検出することもできる。また、機器に使用されている特定の液と反応した際にのみ発色するような顔料を選択的に用いることにより、撮像された画像内で液漏れを特定し易くなり、液漏れ発生の検出精度を向上させることができる。
【0016】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(10)の何れか一つに記載の構成において、
前記撮像装置の撮像範囲には、前記油圧機器の下方に配置された吸液部材が含まれる。
上記(11)の構成によれば、機器からの漏液は概して下方に落下するから、機器の下方に吸液部材を配置し、該吸液部材に付着した漏液の色を撮像装置で撮像することにより、機器からの液漏れの発生をより適切に検出することができる。さらに、例えば、機器自体やその周囲に死角がある場合でも、吸液部材を撮像し得る位置に撮像装置を配置することで液漏れを検出できるから、少ない数の撮像装置で適切に漏液を検出可能な漏液検知システムを低コストで構成することができる。
【0017】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の構成において、
前記撮像装置で撮像された画像と、前記画素数の経時変化履歴又は前記コントローラによる判定結果との少なくとも一方を表示する表示部をさらに備える。
上記(12)の構成によれば、機器からの漏液を含む画像と、画素数の経時変化履歴又はコントローラによる判定結果との何れかの組み合わせを表示部に表示することができるから、機器からの液漏れの発生の有無やその程度、進行速度などをオペレータが視覚的に監視することができる。
【0018】
(13)本開示の少なくとも一実施形態に係る漏液検知方法は、
機器からの液漏れを検出するための漏液検知方法であって、
前記機器からの漏液を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで取得された画像データを用いて前記液漏れの発生を検出する検出ステップと、を備え、
前記検出ステップでは、
画像データ中において、前記機器外において変色剤との接触により変色した前記漏液の色に対応する画素数が閾値以上であるか否かを判定し、
前記画素数が前記閾値以上である場合に前記液漏れが発生したと判定する。
上記(13)の方法によれば、上記(1)で述べたように、撮像ステップで取得された画像データ中において、変色した漏液の色に対応する画素数が閾値以上であることを検出ステップで判定することにより、液漏れの発生を検出することができる。
【0019】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)に記載の方法において、
前記画素数が前記閾値以上の場合に液漏れの発生を報知する報知ステップをさらに備える。
上記(14)の方法によれば、上記(8)で述べたように、液漏れが検出された際にその旨を種々の方式で上記漏洩検知システムのオペレータ等に報知することができる。これにより、例えば液漏れ発生後の対応等を迅速に行うことができる。
【0020】
(15)幾つかの実施形態では、上記(13)及び(14)の何れか一つに記載の方法において、
前記撮像ステップで撮像された画像と、前記画素数の経時変化履歴又は前記検出ステップにおける判定結果との少なくとも一方を表示する表示ステップをさらに備える。
上記(15)の方法によれば、上記(12)で述べたように、機器からの漏液を含む画像と、画素数の経時変化履歴又は検出ステップにおける判定結果との何れかの組み合わせを表示部に表示することができるから、機器からの液漏れの発生の有無やその程度、進行速度などをオペレータが視覚的に監視することができる。