特許第6837454号(P6837454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6837454ワイヤレス給電床用塗り床構造及びこの施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837454
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電床用塗り床構造及びこの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/12 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   E04F15/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-98537(P2018-98537)
(22)【出願日】2018年5月23日
(65)【公開番号】特開2019-203301(P2019-203301A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年10月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164862
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】鹿毛 俊彦
【審査官】 園田 かれん
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−217033(JP,A)
【文献】 特開2014−181137(JP,A)
【文献】 特開2005−273147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
B60L 1/00−3/12
B60L 7/00−13/00
B60L 15/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地コンクリート表面に、厚み15μm以上50μm以下の金属箔層を備え、該金属箔層の上にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材とから成る厚さ3〜7mmの樹脂モルタル層を備え、該樹脂モルタル層の上に誘電正接が0.05以下の仕上げ塗り床層を備えることを特徴とするワイヤレス給電床用塗り床構造。
【請求項2】
前記仕上げ塗り床層は、エポキシ樹脂塗り床または硬質ウレタン樹脂塗り床から成ることを特徴とする請求項1記載のワイヤレス給電床用塗り床構造。
【請求項3】
前記樹脂モルタル層の骨材は、硅砂又はセルベンから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤレス給電床用塗り床構造。
【請求項4】
床下地コンクリート表面に、厚み15μm以上50μm以下の金属箔を貼着して金属箔層を形成し、該金属箔層の上にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材とから成る樹脂モルタルを3〜7mmに塗布して樹脂モルタル層を形成し、該樹脂モルタル層の上に誘電正接が0.05以下の仕上げ塗床材を塗布して仕上げ塗り床層を形成することを特徴とするワイヤレス給電床用塗り床の施工方法。
【請求項5】
前記仕上げ塗床材はエポキシ樹脂塗床材または硬質ウレタン樹脂塗床材から成ることを特徴とする請求項4記載のワイヤレス給電床用塗り床の施工方法。
【請求項6】
前記樹脂モルタルの骨材は、硅砂又はセルベンから成ることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のワイヤレス給電床用塗り床の施工方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や倉庫等に設置される無人搬送車(以下AGVという)システムの無人搬送車に床から電力をワイヤレスで供給するのに適した塗り床構造及び該塗り床の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、硬化収縮を大きく下げることなく塗膜の収縮による、そり、ひび割れを防止しつつ、耐熱性や物性を保持して塗布作業性や表面外観を損なうことなく、塗膜厚みが1〜4mmの薄膜層であっても、硬化収縮しても反り上がりや表層の亀裂を発生させない水系ウレタンモルタル組成物が、無人搬送車システムのAGVが走行する床に適した塗床材として多く使用され、該水系ウレタンモルタル組成物は、ポリエステルポリオール、イソシアネート及び水硬性モルタルを含む骨材を主成分とすることを特徴としている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−62950号公報
【0004】
しかしながら、該水系ウレタンモルタル組成物が塗布された床は、組成物中に水によって硬化する水硬性モルタルを含み、硬化後の水系ウレタンモルタル組成物には水硬性モルタルの水和に消費されなかった水分や、水和後の結晶水が含まれるため、例えば該床上を走行するAGVに床よりワイヤレスで電力を供給する場合には、電力の伝播効率が低下するという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、AGVの走行に耐久性を有するとともに、床からワイヤレスでAGVに電力を供給する場合にも該電力の伝播効率を高く保持することが出来る、ワイヤレス給電床用塗り床構造及びこの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、床下地コンクリート表面に、厚み15μm以上50μm以下の金属箔層を備え、該金属箔層の上にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材とから成る厚さ3〜7mmの樹脂モルタル層を備え、該樹脂モルタル層の上に誘電正接が0.05以下の仕上げ塗り床層を備えることを特徴とするワイヤレス給電床用塗り床構造を提供する。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、前記仕上げ塗り床層は、エポキシ樹脂塗り床または硬質ウレタン樹脂塗り床から成ることを特徴とする請求項1記載のワイヤレス給電床用塗り床構造を提供する。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、前記樹脂モルタル層の骨材は、硅砂又はセルベンから成ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤレス給電床用塗り床構造を提供する。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、床下地コンクリート表面に、厚み15μm以上50μm以下の金属箔を貼着して金属箔層を形成し、該金属箔層の上にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材とから成る樹脂モルタルを3〜7mmに塗布して樹脂モルタル層を形成し、該樹脂モルタル層の上に誘電正接が0.05以下の仕上げ塗床材を塗布して仕上げ塗り床層を形成することを特徴とするワイヤレス給電床用塗り床の施工方法を提供する。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、前記仕上げ塗床材はエポキシ樹脂塗床材または硬質ウレタン樹脂塗床材から成ることを特徴とする請求項4記載のワイヤレス給電床用塗り床の施工方法を提供する。
【0011】
また、請求項6記載の発明は、前記樹脂モルタルの骨材は、硅砂又はセルベンから成ることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のワイヤレス給電床用塗り床の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のワイヤレス給電床用塗り床構造は、AGVの走行に耐久性を有し、ワイヤレスで床よりAGVに電力を供給するに当たって、電力の伝播効率が高いという効果がある。
【0013】
また本発明のワイヤレス給電床用塗り床の施工方法は、AGVの走行に耐久性を有し、ワイヤレスで床よりAGVに電力を供給するに当たって、電力の伝播効率が高い床構造を形成する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明を構成する金属箔層に使用される金属箔は、銅箔、アルミ箔、ステンレス箔、鉄箔等を使用することができ、厚みは電力伝播効率を良好とするために15μm以上が好ましく、また下地コンクリートに貼着する際の施工性の観点から50μm以下が好ましい。金属箔層は、床からAGVにワイヤレスで電力を供給する際の、電力伝播効率を高く保持することを目的として使用され、厚みが15μm未満では、電力伝播効率が低下する場合があり、特に下地コンクリートの微小な凹凸により、金属箔を下地コンクリート表面に貼着する際等に、該金属箔に孔が空くことで欠損部が生じると、電力伝播効率は大きく低下する場合がある。厚みが50μm超では、該金属箔を下地コンクリート表面に貼着する際の施工作業性が不十分となる。
【0016】
本発明を構成する樹脂モルタル層の形成に使用される、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材とから成る樹脂モルタルにおけるエポキシ樹脂は、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などを単独あるいは併せて用いることができる。
【0017】
これらのエポキシ樹脂のうち、粘度が低く取扱いが容易なビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。樹脂モルタルとしての作業性を良好とするためには、エポキシ樹脂100重量部に対して15〜45重量部の希釈剤を配合する。希釈剤は反応性希釈剤又は非反応性希釈剤を使用することができ、併用することもできる。
【0018】
また、高荷重のAGVの繰り返しの走行に対する耐久性を確保する観点から希釈剤は反応性希釈剤が好ましい。反応性希釈剤のうち1官能の希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、2官能としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、多官能としてはグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどを使用することができる。
【0019】
非反応性希釈剤としては、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ミネラルスピリット、灯油等を使用することができる。
【0020】
本発明に使用されるエポキシ樹脂硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミド、脂環式ポリアミン、変性脂環式ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、3級アミンなどのアミン化合物を使用することができ、例えばポリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、メタキシレンジアミン、2、4、6−トリスジメチルアミノメチルフェノール等を使用することができ、これらは単独又は併用して使用することができる。
【0021】
エポキシ樹脂、又はエポキシ樹脂と希釈剤との混合物に対するエポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ基の数に対する活性水素基の数が、0.7〜1.3となることが好ましい。0.7未満では硬化物の強度が不十分となる場合があり、1.3超ではエポキシ樹脂硬化剤が過剰となって、樹脂モルタル層の上の仕上げ塗り床層と樹脂モルタル層との接着性が不十分となる場合がある。
【0022】
本発明に使用される樹脂モルタルに用いられる骨材としては、AGVにワイヤレスで電力を供給する際に電力伝播効率が低下しない絶縁性が高いものが好ましく、特には硅砂や、陶磁器や碍子などのセラミックスを粉砕したセルベンが好ましい。骨材の粒径は、硅砂では0.075〜0.43mmが好ましく、セルベンでは0.05〜1.5mmが好ましい。硅砂の粒径が0.075mm未満では樹脂モルタルを塗布する際の作業性が低下し、0.45mm超では樹脂モルタル層の強度が不十分となる場合がある。セルベンの粒径が0.05mm未満では樹脂モルタルを塗布する際の作業性が低下し、1.5mm超では樹脂モルタル層の強度が不十分となる。
【0023】
骨材の樹脂モルタル中の配合量は、エポキシ樹脂、またはエポキシ樹脂と希釈剤との混合物と、エポキシ樹脂硬化剤を混合したもの100重量部に対して、40〜80重量部が好ましく、40重量部未満、80重量部超では樹脂モルタルを塗布する際の作業性が低下する。
【0024】
樹脂モルタル層は厚さ3〜7mmが好ましく、3mm未満ではAGVの繰り返し走行等によって割れや剥離が生じる場合があり、7mm超では、樹脂モルタルを施工する際の平滑性が不十分となる場合がある。
【0025】
本発明を構成する仕上げ塗り床層は、その電気エネルギー損失の度合いを示す誘電正接が0.05以下であると共に、AGVの繰り返し走行に対して耐久性を有することが好ましく、特に誘電正接が0.05超となると、床からAGVにワイヤレスで電力を供給する際の電力伝播効率が不十分となる。また、仕上げ塗り床層の厚みは、0.5〜2mmが好ましく、0.5mm未満ではAGVの走行に対する耐久性が不十分となり、2mm超では、電力伝播効率が不十分となる場合がある。
【0026】
誘電正接が0.05以下であって、且つAGVの繰り返し走行に対する耐久性を有する仕上げ塗り床材としては、具体的には本願で示される塗膜のJIS K 7215のタイプDデュロメータ硬さが70以上のエポキシ樹脂塗り床材や硬質ウレタン樹脂塗り床材を使用することができる。エポキシ樹脂塗り床材は上記、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤に炭酸カルシウム等の充填フィラーを配合した、原則として溶剤を含まない塗り床材が好ましく、通常、エポキシ樹脂塗り床材は床下地コンクリート上に厚さ0.8〜1.5mm程度に金鏝等により塗布されて硬化しエポキシ樹脂塗り床となる。
【0027】
硬質ウレタン樹脂塗り床材は、組成としてひまし油ポリオールやひまし油変性ポリオールとメタフェニレンジイソシアネートと水酸化アルミニウム等の充填フィラーを含む、原則として溶剤を含まない塗り床材であり、通常は床下地コンクリート上に厚さ1〜1.5mm程度に金鏝等により塗布され硬化し硬質ウレタン樹脂塗り床となる。
【0028】
以下,実施例及び比較例にて具体的に説明する。
【実施例】
【0029】
[実施例及び比較例]
床下地コンクリート表面に貼着する金属箔として厚さ35μmの銅箔(三井金属社製)を、またこれと比較するためSUS304製平織りメッシュ(線径0.06mm、150Mesh、日本メッシュ工業社製)を使用した。銅箔の床下地コンクリートへの貼着に当たってはエポキシ樹脂接着剤アイカアイボン E5050(商品名、主剤:硬化剤=1:1(重量比)、アイカ工業社製)を使用し、SUS304製平織りメッシュの床下地コンクリート表面への貼着に当たっては、下記ジョリエースJE55H A と 同 Bを100:40で混合したものを使用した。
【0030】
樹脂モルタルに用いるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤としては、ジョリエースJE55H A(商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂及びC10級アルキルモノグリシジルエーテル含有、エポキシ当量:280、粘度0.5Pa・s/23℃、アイカ工業社製)及びジョリエースJE55H B(商品名、変成脂環式ポリアミン及び変成脂肪族ポリアミン含有、活性水素当量:112、粘度0.1Pa・s/23℃、アイカ工業社製)を使用し、ジョリエースJE55H Aと同Bの混合比は重量で100:40にて使用した。樹脂モルタルの骨材として、東北硅砂5号(商品名、粒子径0.106mm〜0.60mm)、東北硅砂6号(商品名、粒子径0.075mm〜0.425mm)、セルベンB(粒子径0.5〜1.5mm)及びセルベンC(粒子径0.05〜0.5mm)を使用し、骨材は東北硅砂5号と東北硅砂6号を重量比で2:1で混合したものを骨材Aとし、セルベンBとセルベンCを2:1で混合したものを骨材Bとした。エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材の配合比は、上記ジョリエースJE55H Aと同Bを混合したもの100重量部に対して骨材600重量部を混合して使用した。
【0031】
また、仕上げ塗り床材として、無溶剤のエポキシ樹脂塗り床材 ジョリエースJE−20G(塗膜厚み1.0mm、商品名、アイカ工業社製)及び、硬質ウレタン樹脂塗り床材 アイカピュールJJ−103(塗膜厚み1.2mm、商品名、アイカ工業社製)を使用し、またこれと比較するため水系ウレタンモルタル組成物から成る水硬性ウレタン樹脂塗り床材 アイカピュールハードJJ−560(塗膜厚み3.0mm、商品名、アイカ工業社製)を使用した。無溶剤のエポキシ樹脂塗り床材及び硬質ウレタン樹脂塗り床材は上記樹脂モルタル層の上に塗布して仕上げ塗り床層とした。水硬性ウレタン樹脂塗り床材を仕上げ塗り床材として使用する場合は、上記樹脂モルタルを塗布することなく、銅箔上に直接塗布した。
【0032】
上記材料を使用し、表1に示す組み合わせにて床下地コンクリート表面に銅箔又はSUS304製平織りメッシュを貼着し、次に樹脂モルタルを塗布して樹脂モルタル層を設け(比較例3については無し)、次に仕上げ塗り床材を塗布して仕上げ塗り床層を設けることにより、実施例1乃至実施例4、比較例1乃至比較例3のワイヤレス給電床用塗り床構造とした。
【0033】
【表1】
【0034】
[評価項目及び評価方法]
【0035】
[電力伝播効率]
縦150mm×横1800mm×厚さ35μmの送電電極(銅箔製)を、上記表1の実施例1乃至実施例4及び比較例1乃至比較例3の仕上げ塗り床層の上に敷設し、送電電極の端部をベクトルネットワークアナライザ MS46122A(Anritsu社製)のポート1に、他端をポート2に接続する。銅箔又はSUS304性平織りメッシュを上記ベクトルネットワークアナライザのグランドと共通化し、ベクトルネットワークアナライザにより測定した2ポートSパラメータから電力伝播効率ηmaxを以下の式により算出した。
ηmax=(|S21|/|S12|)(K−(K−1)1/2
(Kは以下により算出した。K=(1-|S11-|S22+|S11×S22−S12×S21)/(2×|S12×S21|)、
11:ポート1から入力した信号の強さと、該信号がポート1へ反射して戻ってきた際の該信号の強さの比
12:ポート2から入力した信号の強さと、該信号がポート1へ伝達した際の該信号の強さの比
21:ポート1から入力した信号の強さと、該信号がポート2へ伝達した際の該信号の強さの比
22:ポート2から入力した信号の強さと、該信号がポート2へ反射して戻ってきた際の該信号の強さの比
なおηmaxは2ポート回路網の両ポートに無損失かつ最適な整合回路を接続できたときにポート1からポート2へ伝達する電力伝播効率を表わしている。
【0036】
[誘電正接]
上記材料を用いて樹脂モルタル層については厚さ5mm×10cm×10cmの板状の試験体を作製し、仕上げ塗り床層は実施例1乃至実施例4及び比較例1及び比較例2については厚さ1mm×10cm×10cmの試験体を作製し、比較例3については厚さ3mm×10cm×10cmの試験体を作製した。システムについては、実施例1乃至実施例4及び比較例1及び比較例2については樹脂モルタル層を厚さ5mmとし、この上に仕上げ塗り床層を厚さ1mmで塗布して全体として厚さ6mm×10cm×10cmの試験体を作製した。各試験体は23℃にて作成し、23℃7日間養生した。試験体の表面及び底面にアルミ製のテープを接着し、ベクトルネットワークアナライザ MS46122A(Anritsu社製)により直列インピーダンスZを測定し、誘電正接tanδを以下の式で算出した。
tanδ=|Re{Z}/Im{Z}|
Re{Z}はZの実部を、Im{Z}はZの虚部を表わす。
測定に当たっては、測定周波数1.56MHz〜51.56MHzの範囲を0.05MHz刻みで測定し、13.56MHz時のtanδを、ここでいう誘電正接とした。なお比較例3についてのシステムは仕上げ塗り床層の誘電正接値をそのまま表2に記載した。
【0037】
[圧縮強度]
JIS K 6911 5.19 圧縮強さに準拠し、樹脂モルタルまたは水硬性ウレタン樹脂塗り床材を縦12.7mm×横12.7mm×高さ25.4mmの形状にて硬化させて23℃7日間養生する。その後に23℃にてインストロン万能材料試験機(インストロン社製)を用いて載荷速度1mm/分で圧縮し、圧縮強さ(N/mm)を測定した。
【0038】
[デュロメータ硬さ]
エポキシ樹脂塗り床材、硬質ウレタン塗り床材、及び水硬性ウレタン樹脂塗り床材のそれぞれについて40mm×60mm×4mm(厚み)の金型に流し込んで硬化させる。23℃7日間養生後に、JIS K 7215(プラスチックのデュロメータ硬さ)に準拠し、タイプDデュロメータを用いて23℃において測定した。
【0039】
[評価結果]
評価結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
[まとめ]
実施例1乃至実施例4は、電力伝播効率が高く、各層の誘電正接も0.05以下であるため、AGVに床よりワイヤレスで電力を供給する際に電力の伝播効率が高いと判断され、また樹脂モルタル層の圧縮強度は30N/mm以上あり、仕上げ塗り床層としてデュロメータ硬さ(タイプD)が70以上であることよりAGVの走行に耐久性を有すると判断された。