【実施例】
【0029】
[実施例及び比較例]
床下地コンクリート表面に貼着する金属箔として厚さ35μmの銅箔(三井金属社製)を、またこれと比較するためSUS304製平織りメッシュ(線径0.06mm、150Mesh、日本メッシュ工業社製)を使用した。銅箔の床下地コンクリートへの貼着に当たってはエポキシ樹脂接着剤アイカアイボン E5050(商品名、主剤:硬化剤=1:1(重量比)、アイカ工業社製)を使用し、SUS304製平織りメッシュの床下地コンクリート表面への貼着に当たっては、下記ジョリエースJE55H A と 同 Bを100:40で混合したものを使用した。
【0030】
樹脂モルタルに用いるエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤としては、ジョリエースJE55H A(商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂及びC
10級アルキルモノグリシジルエーテル含有、エポキシ当量:280、粘度0.5Pa・s/23℃、アイカ工業社製)及びジョリエースJE55H B(商品名、変成脂環式ポリアミン及び変成脂肪族ポリアミン含有、活性水素当量:112、粘度0.1Pa・s/23℃、アイカ工業社製)を使用し、ジョリエースJE55H Aと同Bの混合比は重量で100:40にて使用した。樹脂モルタルの骨材として、東北硅砂5号(商品名、粒子径0.106mm〜0.60mm)、東北硅砂6号(商品名、粒子径0.075mm〜0.425mm)、セルベンB(粒子径0.5〜1.5mm)及びセルベンC(粒子径0.05〜0.5mm)を使用し、骨材は東北硅砂5号と東北硅砂6号を重量比で2:1で混合したものを骨材Aとし、セルベンBとセルベンCを2:1で混合したものを骨材Bとした。エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤と骨材の配合比は、上記ジョリエースJE55H Aと同Bを混合したもの100重量部に対して骨材600重量部を混合して使用した。
【0031】
また、仕上げ塗り床材として、無溶剤のエポキシ樹脂塗り床材 ジョリエースJE−20G(塗膜厚み1.0mm、商品名、アイカ工業社製)及び、硬質ウレタン樹脂塗り床材 アイカピュールJJ−103(塗膜厚み1.2mm、商品名、アイカ工業社製)を使用し、またこれと比較するため水系ウレタンモルタル組成物から成る水硬性ウレタン樹脂塗り床材 アイカピュールハードJJ−560(塗膜厚み3.0mm、商品名、アイカ工業社製)を使用した。無溶剤のエポキシ樹脂塗り床材及び硬質ウレタン樹脂塗り床材は上記樹脂モルタル層の上に塗布して仕上げ塗り床層とした。水硬性ウレタン樹脂塗り床材を仕上げ塗り床材として使用する場合は、上記樹脂モルタルを塗布することなく、銅箔上に直接塗布した。
【0032】
上記材料を使用し、表1に示す組み合わせにて床下地コンクリート表面に銅箔又はSUS304製平織りメッシュを貼着し、次に樹脂モルタルを塗布して樹脂モルタル層を設け(比較例3については無し)、次に仕上げ塗り床材を塗布して仕上げ塗り床層を設けることにより、実施例1乃至実施例4、比較例1乃至比較例3のワイヤレス給電床用塗り床構造とした。
【0033】
【表1】
【0034】
[評価項目及び評価方法]
【0035】
[電力伝播効率]
縦150mm×横1800mm×厚さ35μmの送電電極(銅箔製)を、上記表1の実施例1乃至実施例4及び比較例1乃至比較例3の仕上げ塗り床層の上に敷設し、送電電極の端部をベクトルネットワークアナライザ MS46122A(Anritsu社製)のポート1に、他端をポート2に接続する。銅箔又はSUS304性平織りメッシュを上記ベクトルネットワークアナライザのグランドと共通化し、ベクトルネットワークアナライザにより測定した2ポートSパラメータから電力伝播効率η
maxを以下の式により算出した。
η
max=(|S
21|/|S
12|)(K−(K
2−1)
1/2)
(Kは以下により算出した。K=(1-|S
11|
2-|S
22|
2+|S
11×S
22−S
12×S
21|
2)/(2×|S
12×S
21|)、
S
11:ポート1から入力した信号の強さと、該信号がポート1へ反射して戻ってきた際の該信号の強さの比
S
12:ポート2から入力した信号の強さと、該信号がポート1へ伝達した際の該信号の強さの比
S
21:ポート1から入力した信号の強さと、該信号がポート2へ伝達した際の該信号の強さの比
S
22:ポート2から入力した信号の強さと、該信号がポート2へ反射して戻ってきた際の該信号の強さの比
なおη
maxは2ポート回路網の両ポートに無損失かつ最適な整合回路を接続できたときにポート1からポート2へ伝達する電力伝播効率を表わしている。
【0036】
[誘電正接]
上記材料を用いて樹脂モルタル層については厚さ5mm×10cm×10cmの板状の試験体を作製し、仕上げ塗り床層は実施例1乃至実施例4及び比較例1及び比較例2については厚さ1mm×10cm×10cmの試験体を作製し、比較例3については厚さ3mm×10cm×10cmの試験体を作製した。システムについては、実施例1乃至実施例4及び比較例1及び比較例2については樹脂モルタル層を厚さ5mmとし、この上に仕上げ塗り床層を厚さ1mmで塗布して全体として厚さ6mm×10cm×10cmの試験体を作製した。各試験体は23℃にて作成し、23℃7日間養生した。試験体の表面及び底面にアルミ製のテープを接着し、ベクトルネットワークアナライザ MS46122A(Anritsu社製)により直列インピーダンスZを測定し、誘電正接tanδを以下の式で算出した。
tanδ=|Re{Z}/Im{Z}|
Re{Z}はZの実部を、Im{Z}はZの虚部を表わす。
測定に当たっては、測定周波数1.56MHz〜51.56MHzの範囲を0.05MHz刻みで測定し、13.56MHz時のtanδを、ここでいう誘電正接とした。なお比較例3についてのシステムは仕上げ塗り床層の誘電正接値をそのまま表2に記載した。
【0037】
[圧縮強度]
JIS K 6911 5.19 圧縮強さに準拠し、樹脂モルタルまたは水硬性ウレタン樹脂塗り床材を縦12.7mm×横12.7mm×高さ25.4mmの形状にて硬化させて23℃7日間養生する。その後に23℃にてインストロン万能材料試験機(インストロン社製)を用いて載荷速度1mm/分で圧縮し、圧縮強さ(N/mm
2)を測定した。
【0038】
[デュロメータ硬さ]
エポキシ樹脂塗り床材、硬質ウレタン塗り床材、及び水硬性ウレタン樹脂塗り床材のそれぞれについて40mm×60mm×4mm(厚み)の金型に流し込んで硬化させる。23℃7日間養生後に、JIS K 7215(プラスチックのデュロメータ硬さ)に準拠し、タイプDデュロメータを用いて23℃において測定した。
【0039】
[評価結果]
評価結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
[まとめ]
実施例1乃至実施例4は、電力伝播効率が高く、各層の誘電正接も0.05以下であるため、AGVに床よりワイヤレスで電力を供給する際に電力の伝播効率が高いと判断され、また樹脂モルタル層の圧縮強度は30N/mm
2以上あり、仕上げ塗り床層としてデュロメータ硬さ(タイプD)が70以上であることよりAGVの走行に耐久性を有すると判断された。